説明

青紫色半導体レーザー用感光性組成物

【課題】青紫色半導体レーザーに対して分光感度に優れた増感剤とそれを用いた青紫色半導体レーザー用感光性組成物及び画像形成材を提供すること。
【解決手段】一般式(A)〜(D)で表されるスクアリリウム化合物イオンと水素イオン又は遷移金属イオンとからなるスクアリリウム化合物を含む増感剤と、エチレン性不飽和化合物と、光重合開始剤とを用いて作製した青紫色半導体レーザー用感光性組成物及び画像形成材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクアリリウム化合物を含有することを特徴とする増感剤とそれを用いた青紫色半導体レーザー用感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、露光光源にレーザー光を用いるリソグラフィー分野や印刷分野の研究が活発にされている。
【0003】
レーザー光は、紫外から赤外までの種々の光源が知られているが、画像露光に利用できるレーザー光としては、アルゴンイオンレーザー、ヘリウムネオンレーザー、YAGレーザー、半導体レーザー等の可視から赤外領域の光を発するものが有力視されており、特に最近では、青紫色半導体レーザーが注目されている。
【0004】
しかしながら、青紫色領域で安定的に発振できる半導体レーザーが利用できるようになったものの、その出力が他の可視領域に比して低いこともあって、感光性組成物の感度が必ずしも十分とは言えず、直接描画法においてはもとよりリソグラフィー法においても実用化できるレベルには達していない問題があった。
【0005】
青紫色半導体レーザーの波長領域(350nm〜450nm)での感光性組成物に用いる増感剤としては、ベンゾフェノン系化合物、クマリン系化合物、スクアリリウム化合物が挙げられる(特許文献1,2)。
しかしながら、これらの化合物では十分な感度が得られない欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−086122号公報
【特許文献2】特開2009−042491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、青紫色半導体レーザーに対して感度に優れた増感剤とそれを用いた青紫色半導体レーザー用感光性組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討をした結果、増感剤としてスクアリリウム化合物を用いた青紫色半導体レーザー用感光性組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は以下に示すものである。
【0010】
第一の発明は、下記一般式(A)〜(D)で表されるスクアリリウム化合物イオンと、水素イオン又は遷移金属イオンとからなるスクアリリウム化合物を含有することを特徴とする増感剤である。
【0011】
【化1】

(式(A)中、R〜Rは、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、RとR、RとR、RとR、RとRは連結して炭化水素環を形成してもよい。)
【0012】
【化2】

(式(B)中、Rは、水素又は置換基を有してもよいアルキル基であり、R〜R11は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、RとR、R10とR11は連結して炭化水素環を形成してもよい。)
【0013】
【化3】

(式(C)中、R12〜R14は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示す。)
【0014】
【化4】

(式(D)中、R15〜R19は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、XはO、S、N−R20、C−R2122(R20〜R22は同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示す。)を示す。)
【0015】
第二の発明は、350nm〜450nmに分光感度の極大ピークを有することを特徴とする第一の発明に記載の増感剤である。
【0016】
第三の発明は、第一又は第二の発明に記載の増感剤を含有することを特徴とする青紫色半導体レーザー用感光性組成物である。
【0017】
第四の発明は、エチレン性不飽和化合物を含有することを特徴とする第三の発明に記載の青紫色半導体レーザー用感光性組成物である。
【0018】
第五の発明は、光重合開始剤を含有することを特徴とする第三又は第四の発明に記載の青紫色半導体レーザー用感光性組成物である。
【0019】
第六の発明は、仮支持フィルム上に第三から第五の発明のいずれかに記載の青紫色半導体レーザー用感光性組成物の層が形成されてなることを特徴とする画像形成材料である。
【0020】
第七の発明は、被加工基板上に第六の発明に記載の画像形成材料が感光性組成物層側で積層されてなることを特徴とする画像形成材である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、一般式(A)〜(D)で表されるスクアリリウム化合物を増感剤に用いることで、青紫色半導体レーザーに対し、優れた感度の青紫色半導体レーザー用感光性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の増感剤について説明する。
【0023】
本発明の増感剤は、一般式(A)〜(D)で表されるスクアリリウム化合物と、水素イオン又は遷移金属イオンとからなるスクアリリウム化合物である。
【0024】
【化5】

【0025】
一般式(A)中、R〜Rは、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、RとR、RとR、RとR、RとRは連結して炭化水素環を形成してもよい。
【0026】
【化6】

【0027】
一般式(B)中、Rは、水素又は置換基を有してもよいアルキル基であり、R〜R11は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、RとR、R10とR11は連結して炭化水素環を形成してもよい。
【0028】
【化7】

【0029】
一般式(C)中、R12〜R14は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示す。
【0030】
【化8】

【0031】
一般式(D)中、R15〜R19は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有しても良いアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、XはO、S、N−R20、C−R2122(R20〜R22は同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示す。)を示す。
【0032】
遷移金属イオンとしては、ニッケルイオン、鉄イオン、銅イオン、コバルトイオン、亜鉛イオン、マグネシウムイオン等が挙げられ、特にニッケルイオンが好ましく挙げられる。
【0033】
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子が挙げられる。
【0034】
上記置換基を有してもよいアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数1〜20の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のアルキル基が好ましく挙げられる。
【0035】
上記ハロゲン化アルキル基において、炭素数は1〜12の直鎖又は分岐のハロゲン化アルキル基である。ハロゲン化アルキル基のハロゲン原子としては、スクアリリウム化合物の感度や樹脂との相溶性を向上させる効果に優れる点から、特にフッ素原子、すなわちフッ化アルキル基が好ましい。
【0036】
上記フッ化アルキル基としては、トリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、5,5,5−トリフルオロペンチル基、6,6,6−トリフルオロヘキシル基、8,8,8−トリフルオロオクチル基、2−メチル−3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペルフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、ペルフルオロヘキシル基、ペルフルオロオクチル基、2−トリフルオロメチル−ペルフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0037】
上記シアノアルキル基としては、炭素数1〜10の直鎖又は分岐のシアノアルキル基であることが好ましく、置換されているシアノ基の数は、1〜3個が好ましい。特に好ましくは、プロピオニトリル基、ブチロニトリル基、ペンチルニトリル基、1−メチルプロピオニトリル基、1−メチルブチロニトリル基等が挙げられる。
【0038】
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、2ーメトキシエトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、メトキシヘキシル基、メトキシオクチル基、エトキシエチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、エトキシヘキシル基、エトキシオクチル基、プロポキシメチル基、プロポキシプロピル基、プロポキシヘキシル基、ブトキシエチル基等の炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルコキシ基が挙げられる。
【0039】
上記フェニルアルキル基としては、アルキル基の炭素数が1〜8のものが好ましく、フェニル基は置換基を有してもよく、アルキル基、水酸基、スルホン酸基、アルキルスルホン酸基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、ハロゲン化アルキル基及びハロゲンからなる群から少なくとも1種の置換基を有してもよい。また、フェニルアルキル基として、ベンジル基、フェネチル基、フェニルプロピル基、フェニル−α−メチルプロピル基、フェニル−β−メチルプロピル基、フェニルブチル基、フェニルペンチル基等が挙げられる。
【0040】
上記アルキルスルホン酸基としては、炭素数1〜6個のアルキルスルホン酸基が好ましい。具体例としては、メチルスルホン酸基、エチルスルホン酸基、プロピルスルホン酸基等が挙げられる。
【0041】
スクアリリウム化合物イオンの具体例(化学式(1)〜(24))を以下に示す。
【0042】
【化9】

【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
本発明のスクアリリウム化合物は有機溶媒に対する溶解性が良好であり、青紫色半導体レーザーに対して感光性に優れる特徴を有している。
【0046】
次に、本発明の青紫色半導体レーザー用感光性組成物について説明する。
【0047】
本発明の青紫色半導体レーザー用感光性組成物は、一般式(A)〜(D)で表されるスクアリリウム化合物イオンと、水素イオン又は遷移金属イオンとからなるスクアリリウム化合物を含有する増感剤を少なくとも含有する特徴を有し、光重合開始剤とエチレン性不飽和化合物を混合させて重合させて得た青紫色半導体レーザー用感光性組成物である。
【0048】
必要に応じて、バインダー、添加剤(重合加速剤、熱重合禁止剤、可塑剤等)等を用いることができる。
【0049】
光重合開始剤は、スクアリリウム化合物を含む増感剤との共存下で光照射されたときに、増感剤の光励起エネルギーを受け取って活性ラジカルを発生し、エチレン性不飽和化合物を重合に到らしめるラジカル発生剤であって、例えば、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、チタノセン系化合物、ハロメチル化s−トリアジン誘導体、ハロメチル化1,3,4−オキサジアゾール誘導体、ジアリールヨードニウム塩、有機硼素酸塩、有機過酸化物等が挙げられる。青紫色レーザー用感光性組成物としての感度、基板に対する密着性及び保存安定性等の面から、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物、チタノセン系化合物が好ましく、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が特に好ましく挙げられる。
【0050】
上記エチレン性不飽和化合物とは、青紫色半導体レーザー用感光性組成物が活性光線の照射を受けたときに、光重合開始剤を含む光重合開始系の作用により付加重合し、場合により架橋、硬化するようなラジカル重合性のエチレン性不飽和結合を分子内に少なくとも1個有する化合物である。
【0051】
エチレン性不飽和化合物としては、エチレン性不飽和結合を分子内に1個有する化合物、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和カルボン酸又はそのアルキルエステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、スチレン等が挙げられ、重合性や露光部と非露光部の現像液溶解性の差異を拡大できる等の点から、エチレン性不飽和結合を分子内に2個以上有する化合物であることが好ましく、また、その不飽和結合が(メタ)アクリロイルオキシ基に由来するアクリレート化合物が特に好ましく挙げられる。
【0052】
バインダーとしては、例えば、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルとエチレンとの共重合体、ポリスチレン、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フェノールノボラック樹脂、ポリビニルフェノール、ビニルフェノールとメタクリル酸エステルとの共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリメチルイソプロペニルケトン、メタクリル酸エステルとフェニルイソプロペニルケトンとの共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アセチルセルロース、アセチルブチルセルロース、ニトロセルロース、ポリビニルカルバゾール、ビニルカルバゾールとスチレンとの共重合体、ビニルカルバゾールとメタクリル酸エステルとの共重合体、ビニルカルバゾールとアクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
【0053】
重合加速剤としては、例えば、2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。熱重合禁止剤としては、例えば、p−tert−ブチルカテコール、ハイドロキノン、クロラニル等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、ジエチルヘキシルフタレート、ジイソブチルフタレート、トリクレシルホスフェート、ジエチルヘキシルセバケート、ジエチルヘキシルアジペート等が挙げられる。熱硬化性化合物としては、例えば、エポキシ基を少なくとも一つ以上有するメタクリレートモノマー又はアクリレートモノマー、エポキシ基を少なくとも一つ以上有するスチレンモノマー、他に反応性基を含まないポリグリシジル化合物等が挙げられ、さらにエポキシ基を二つ以上有するポリマー、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ基含有共重合体等がそれぞれ挙げられる。
【0054】
本発明の青紫色半導体レーザー用感光性組成物を製造する際に使用する溶剤としては、各成分に対して良好な溶解性又は良好な分散性を有していることが望まれ、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルソロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メタノール、エタノール、2−プロパノール、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、シクロヘキサン、トルエン等が挙げられる。
【0055】
本発明の青紫色半導体レーザー用感光性組成物における増感剤の使用量は、全組成物100質量部に対して、0.001〜5質量部が好ましく、0.01〜2質量部がより好ましく挙げられる。光重合開始剤は、増感剤1質量部に対して、0.1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましく挙げられる。エチレン性不飽和化合物は、増感剤1質量部に対して、2〜1000質量部が好ましく、20〜200質量部がより好ましく挙げられる。
【0056】
本発明の青紫色半導体レーザー用感光性組成物の好ましい分光感度の極大ピークは、350〜450nmが好ましく、355〜440nmがさらに好ましく、360〜430nmが特に好ましく挙げられる。
350nm未満又は450nm超では、青紫色半導体レーザーに対する感度が低くなる欠点がある。
【0057】
本発明における分光感度の極大ピークとは、基板表面上に光硬化性組成物層を形成した光硬化性画像形成材試料を、分光感度測定装置を用い、キセノンランプの光源から分光した光を横軸方向に露光した後、現像処理することにより、各露光波長の感度に応じた画像が得られ、その画像高さから画像形成可能な露光エネルギーを算出し、横軸に波長、縦軸にその露光エネルギーの逆数をプロットすることにより得られる分光感度曲線における極大ピークを指す。
【0058】
また、遷移金属塩のスクアリリウム化合物を用いることで、溶解度を向上させることができる。溶解させて用いる場合は、遷移金属塩のスクアリリウム化合物を用いると良い。
【0059】
次に画像形成材料について説明する。
【0060】
画像形成材料は、通常、前記各成分を適当な溶剤に溶解させた塗布液として、仮支持フィルム上に塗布し乾燥させ、必要に応じて、作製した感光性組成物層表面を被覆フィルムで覆うことにより形成される。この様な画像形成材料としては、ドライフィルムレジスト材等が挙げられる。
【0061】
また、上記画像形成材料は、本発明の画像形成材を形成するのに用いることができる。
画像形成材料の感光性組成物層側を、被覆フィルムで覆われている場合にはその被覆フィルムを剥離して、被加工基板上に積層することにより作成する方法と、以下の手順で作成する方法がある。
(1)前記の青紫色レーザー感光性組成物の各成分を適当な溶剤に溶解させた塗布液とする。(2)被加工基板上に直接に塗布し乾燥させる。(3)被加工基板上に本発明のネガ型青紫色レーザー感光性組成物の層が形成される。
更に、画像形成材は、以下の画像形成方法に好適に用いられる。即ち、画像形成材の感光性組成物層を、例えば波長340〜430nmのレーザー光により走査露光し、現像処理して画像を現出させる。
【0062】
そのドライフィルムレジスト材等として用いられる場合における仮支持フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の従来公知のフィルムが用いられる。その際、それらのフィルムがドライフィルムレジスト材の作製時に必要な耐溶剤性や耐熱性等を有しているものであるときは、それらの仮支持フィルム上に直接に感光性組成物塗布液を塗布し乾燥させてドライフィルムレジスト材を作製することができ、又、それらのフィルムが耐溶剤性や耐熱性等の低いものであっても、例えば、ポリテトラフルオロエチレンフィルムや離型フィルム等の離型性を有するフィルム上にまず感光性組成物層を形成した後、その層上に耐溶剤性や耐熱性等の低い仮支持フィルムを積層し、しかる後、離型性を有するフィルムを剥離することにより、ドライフィルムレジスト材を作製することもできる。
【0063】
また、塗布液に用いられる溶剤としては、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な成膜性を与えるものであれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤、メタノール、イソプロパノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、トルエン等の芳香族系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の高極性溶剤、更にはこれらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。これらの中で、溶解能、粘度等の点から、メチルエチルケトン、メタノール、イソプロパノール、トルエン等の単独又は混合溶剤が好適である。溶剤の使用割合は、感光性組成物の総量に対して、質量比で0.5〜2倍程度の範囲である。
【0064】
塗布方法としては、例えば、ダイコート法、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、スピンコート法等が挙げられる。その際の塗布量は、画像形成性及びそれに引き続くエッチングやメッキ等の加工性等の面から、乾燥膜厚として、通常5μm以上であり、ドライフィルムレジスト材としては10μm以上であるのが好ましく、15μm以上であるのが更に好ましく、感度等の面から、200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのが更に好ましい。
【0065】
ドライフィルムレジスト材等として用いられる場合には、それが被加工基板に積層されるまでの間、形成された感光性組成物層表面を被覆フィルムで覆うことが好ましく、その被覆フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム等の従来公知のフィルムが用いられる。
【0066】
前記ドライフィルムレジスト材の感光性組成物層側を、被覆フィルムで覆われている場合にはその被覆フィルムを剥離して、加熱、加圧等して積層することにより、又は、前記感光性組成物塗布液を直接に塗布し乾燥させることにより、レジスト画像形成材を作製するにおける被加工基板は、その上に形成される感光性組成物層をレーザー光により露光し現像処理することによって現出された画像をレジストとしてエッチング加工或いはメッキ加工等することにより、その表面に回路や電極等のパターンが形成されるものであり、銅、アルミニウム、金、銀、クロム、亜鉛、錫、鉛、ニッケル等の金属板そのものであってもよいが、通常、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂等の樹脂、紙、ガラス、及び、アルミナ、シリカ、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機物、又は、ガラス布基材エポキシ樹脂、ガラス不織布基材エポキシ樹脂、紙基材エポキシ樹脂、紙基材フェノール樹脂等の複合材料等からなり、その厚さが0.02〜10mm程度の絶縁性支持体表面に、前記金属或いは酸化インジウム、酸化錫、酸化インジウムドープ酸化錫等の金属酸化物等の金属箔を加熱、圧着ラミネートするか、金属をスパッタリング、蒸着、メッキする等の方法により、その厚さが1〜100μm程度の導電層を形成した金属張積層板が、好ましく用いられる。
【0067】
前記感光性組成物塗布液を直接に塗布し乾燥させることにより、画像形成材を作製した場合には、前記被加工基板上に形成された感光性組成物層の酸素による重合禁止作用を防止する等のために、その感光性組成物層上に、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の溶液の塗布、乾燥により形成した保護層が設けられてもよい。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明する。なお、本発明は本実施例によりなんら限定されない。実施例中の「%」は「質量%」を表す。
【0069】
<スクアリリウム化合物の合成>
実施例で用いたスクアリリウム化合物(化合物(a)〜(j))を表1にまとめた。
【0070】
【表1】

【0071】
(スクアリリウム化合物(a)の製造)
冷却管を付けた三ッ口フラスコに3,4−ジクロロ−3−シクロブテン−1,2−ジオン5.0部と、N,N−ジブチルアニリン4.6部を入れ、そこに脱水トルエン80部を加え、24時間室温にて撹拌した。反応終了後、NaHCO水溶液で洗浄、トルエンにより抽出し溶媒を減圧留去した。得られた固体を減圧ろ過にて濾取し、ヘキサン洗浄後、減圧乾燥して3−クロロ−4−〔4−(N,N−ジブチルアミノ)フェニル〕3−シクロブテン−1,2−ジオン5.5部を得た。
【0072】
冷却管を付けた三ッ口フラスコに、3−クロロ−4−〔4−(N,N−ジブチルアミノ)フェニル〕3−シクロブテン−1,2−ジオン5.5部と酢酸:水=4:1混合溶液50部を入れ、100℃にて5時間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却し、析出した固体を減圧ろ過にて濾取した。水で洗浄後、減圧乾燥してスクアリリウム化合物(a)4.1部を得た。
【0073】
(スクアリリウム化合物(b)の製造)
スクアリリウム化合物(a)の製造方法において、N,N−ジブチルアニリンをN、N−ジメチル−1−ナフチルアミンに代えた以外は、スクアリリウム化合物(a)の製造方法と同様にしてスクアリリウム化合物(b)を得た。
【0074】
(スクアリリウム化合物(c)の製造)
冷却管を付けた三ッ口フラスコに3,4−ジクロロ−3−シクロブテン−1,2−ジオン12.3部と、無水塩化アルミニウム10.9部を入れ、そこに無水クロロホルム100mlを入れ、窒素雰囲気下で室温攪拌した。そこに、無水クロロホルム20mlに溶解したアニソール10.0部を室温滴下した。滴下終了後、10時間加熱攪拌した。反応終了後、10℃以下に冷却した状態で水を100ml加えたのち、有機層を水で洗浄し、溶媒を減圧留去した。得られた固体を減圧ろ過にて濾取し、トルエン洗浄後、減圧乾燥して3−クロロ−4−(p−メトキシ−フェニル)−シクロブタ−3−エン−1,2−ジオン11.6部を得た。
冷却管を付けた三ッ口フラスコに、3−クロロ−4−(p−メトキシ−フェニル)−シクロブタ−3−エン−1,2−ジオン11.6部と酢酸:水=1:1混合溶液200部を入れ、100℃にて8時間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却し、溶媒を減圧除去し、析出した固体を減圧ろ過にて濾取した。水で洗浄後、減圧乾燥してスクアリリウム化合物(c)8.6部得た。
【0075】
(スクアリリウム化合物(d)の製造)
三ッ口フラスコに3,4−ジメトキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン6.2部と、3−メチル−1−(3−プロピル)−5−ピラゾロン(ランカスター社製)7.6部を入れ、そこにメタノール500mlを入れて室温攪拌した。そこに、無水炭酸カリウム5.9部を加えて5時間室温攪拌した。反応終了後、固体をろ過し、メタノールで洗浄した。得られた固体に水200mlと炭酸カリウム2.7部を加えて、50℃にて2時間加熱攪拌した。反応終了後、1M塩酸500ml中に注ぎ入れ析出した固体をろ過した。水で洗浄した後、減圧乾燥してスクアリリウム化合物(d)4.3部を得た。
【0076】
(スクアリリウム化合物(e)の製造)
スクアリリウム化合物(d)の製造方法において、N−エチル−2−メチルチアゾリウムアイオダイドに代えた以外は、スクアリリウム化合物(d)の製造方法と同様にしてスクアリリウム化合物(e)を得た。
【0077】
(スクアリリウム化合物(f)の製造)
スクアリリウム化合物(a)4.1部と酸ニッケル・4水和物4.0部を、冷却管を付けた三ッ口フラスコに入れ、そこにTHF100部を加え、60℃にて4時間加熱撹拌した。反応後、室温まで冷却し、析出した固体を減圧ろ過にて濾取した。水で洗浄後、減圧乾燥して3−ヒドロキシ−4−〔4−(N-メチル−N-ブチルアミノ)フェニル〕3−シクロブテン−1,2−ジオン−ニッケル錯体(スクアリリウム化合物(f))8.3部を得た。
【0078】
(スクアリリウム化合物(g)の製造)
スクアリリウム化合物(a)を(b)に代えた以外は、スクアリリウム化合物(f)と同様の方法によってスクアリリウム化合物(g)を得た。
【0079】
(スクアリリウム化合物(h)の製造)
スクアリリウム化合物(a)を(c)に代えた以外は、スクアリリウム化合物(f)と同様の方法によってスクアリリウム化合物(h)を得た。
【0080】
(スクアリリウム化合物(i)の製造)
スクアリリウム化合物(a)を(d)に代えた以外は、スクアリリウム化合物(f)と同様の方法によってスクアリリウム化合物(i)を得た。
【0081】
(スクアリリウム化合物(j)の製造)
スクアリリウム化合物(a)を(e)に代えた以外は、スクアリリウム化合物(f)と同様の方法によってスクアリリウム化合物(j)を得た。
【0082】
比較例の増感剤としてベンゾフェノン化合物、クマリン化合物、スクアリリウム化合物を用いた。比較例に用いた化合物を表2に示す。
【0083】
【表2】

【0084】
(実施例1)
<青紫色半導体レーザー用感光性組成物と画像形成材の製造>
ペンタエリスリトールアクリレート100部、ポリビニルピロリドン100部、2−[2−(フラン−2−イル)ビニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン10部、スクアリリウム化合物(a)0.1部をメチルセロソルブ900部に溶解して青紫色レーザー用感光性組成物を得た。得られた青紫色レーザー用感光性組成物をポリエステルフィルムにスピンコーターを用いて塗布し、乾燥させて、画像形成材(膜厚2μm)を作製した。
【0085】
<分光感度の極大ピーク>
画像形成材を50×60mmの大きさに切り出したサンプルを、回折分光照射装置を用い、キセノンランプを光源として350〜650nmの波長域で分光した光を横軸方向に露光波長が直線的に、縦軸方向に露光強度が対数的に変化するように設定して10秒間照射して露光し、次いで25℃の0.7質量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として0.15MPaとなるように吹き付け、最小現像時間の1.5倍の時間でスプレー現像することにより、各露光波長の感度に応じた画像が得られ、その画像高さから画像形成可能な露光エネルギーを算出し、横軸に波長、縦軸にその露光エネルギーの逆数をプロットすることにより得られる分光感度曲線における極大ピークを読みとった。
【0086】
<露光感度の測定>
得られた感光性組成物層を、中心波長405nm、レーザー出力5mWの青紫色半導体レーザーを用いて、像面照度2mW、ビームスポット径2μmで、ビーム走査間隔及び走査速度を変えながら操作露光し、次いで、30℃の0.7質量%炭酸ナトリウム水溶液を現像液として0.15MPaとなるように吹き付け、最小現像時間の2倍の時間でスプレー現像することによりネガ画像を現出させた。得られた画像について20μmの線幅が再現するのに要する露光量を求め露光感度とした。
【0087】
(実施例2〜10、比較例1〜3)
実施例2〜10、比較例1〜3はそれぞれ表3に示した増感剤を用いて、実施例1と同様に画像形成材を作製し分光感度の極大ピークと露光感度を測定した。
【0088】
分光感度の極大ピークと露光感度の測定結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

【0090】
表3より、比較例1〜3に比べ、実施例1〜10の方が青紫色半導体レーザーに対して優れた感度を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明の増感剤とそれを用いた青紫色半導体レーザー用感光性組成物は、液晶表示素子、プラズマディスプレイ、大規模集積回路、薄型トランジスタ、半導体パッケージ、カラーフィルター、有機エレクトロルミネッセンス、ホログラム記録材料等に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A)〜(D)で表されるスクアリリウム化合物イオンと、水素イオン又は遷移金属イオンとからなるスクアリリウム化合物を含有することを特徴とする増感剤。
【化1】

(式(A)中、R〜Rは、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、RとR、RとR、RとR、RとRは連結して炭化水素環を形成してもよい。)
【化2】

(式(B)中、Rは、水素又は置換基を有してもよいアルキル基であり、R〜R11は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、RとR、R10とR11は連結して炭化水素環を形成してもよい。)
【化3】

(式(C)中、R12〜R14は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示す。)
【化4】

(式(D)中、R15〜R19は、同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示し、XはO、S、N−R20、C−R2122(R20〜R22は同一又は異なってもよい水素、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、ハロゲン化アルキル基、シアノアルキル基、アルコキシ基、フェニルアルキル基、アルキルスルホン酸基を示す。)を示す。)
【請求項2】
350nm〜450nmに分光感度の極大ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の増感剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の増感剤を含有することを特徴とする青紫色半導体レーザー用感光性組成物。
【請求項4】
エチレン性不飽和化合物を含有することを特徴とする請求項3に記載の青紫色半導体レーザー用感光性組成物。
【請求項5】
光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項3又は4に記載の青紫色半導体レーザー用感光性組成物。
【請求項6】
仮支持フィルム上に請求項3から5のいずれかに記載の青紫色半導体レーザー用感光性組成物の層が形成されてなることを特徴とする画像形成材料。
【請求項7】
被加工基板上に請求項6に記載の画像形成材料が感光性組成物層側で積層されてなることを特徴とする画像形成材。

【公開番号】特開2011−184491(P2011−184491A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48496(P2010−48496)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000228349)日本カーリット株式会社 (269)
【Fターム(参考)】