説明

青色発光高分子及びそれを採用した有機電界発光素子

【課題】青色発光高分子及びそれを採用した有機電界発光素子を提供する。
【解決手段】ポリアリーレン主鎖にフェノキサジン系単位が導入された青色発光高分子及び該高分子を採用した有機電界発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青色発光高分子及びそれを採用した有機電界発光素子に係り、より詳細には、ポリアリーレン高分子の主鎖にフェノキサジン系単位を含んでいる青色発光高分子と、これを発光成分として採用して発光効率及び色純度特性が改善された有機電界発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機電界発光素子は、蛍光性または燐光性の有機化合物薄膜(以下、有機膜という)に電流を流した際に、電子とホールとが有機膜で結合することで光が発生する現象を利用した能動発光型表示素子であって、軽量化が可能であり、部品及び製作工程が簡単であり、かつ高画質に広視野角を確保しているという長所を有する。また、動画を表示でき、高色純度の実現が可能であり、低消費電力及び低電圧駆動が可能であり、携帯用電子機器に適した電気的特性を有している。
【0003】
有機電界発光素子は、有機膜の形成材料によって低分子有機電界発光素子と高分子有機電界発光素子とに区分できる。
【0004】
低分子有機電界発光素子は、真空蒸着を利用して有機膜を形成し、発光材料の精製及び高純度化が容易であり、カラー画素を容易に具現できるという長所を有しているが、実用化するためには、量子効率の向上、薄膜の結晶化の防止、及び色純度の向上など、解決すべき問題点が残っている。
【0005】
一方、高分子有機電界発光素子は、スピンコーティングあるいはプリンティング法を利用して有機膜を簡単に形成できるため、その製作過程が簡単であり、低コストであり、かつ有機膜の機械的な特性に優れるという長所を有している。
【0006】
しかし、高分子有機電界発光素子の場合にも、色純度の低下、長寿命化などが問題となっており、現在、このような問題点を克服するための研究が活発に進んでいる。その一例として、特許文献1には、フルオレン含有の高分子を共重合して、電界発光特性を向上させる方法が提案されているが、色純度や長寿命化の改善としては不十分である。
【0007】
また、特許文献2では、フェノキサジン単位がポリアリーレン主鎖に導入された青色電界発光高分子及び前記高分子が含まれた有機膜を有する電界発光素子が開示されているが、依然として色純度の向上及び長寿化において限界があった。
【0008】
フェノキサジン構造を有する新たな単量体の開発によって、既存の寿命を維持しつつ色純度をさらに改善することの可能な有機電界発光素子の開発が望まれている。
【特許文献1】米国特許第6,169,163号明細書
【特許文献2】韓国公開特許第2003−0097658号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前記問題点を解決するために、電荷移動が容易であり、構造的な安定性を有しており、特に、青色領域での色座標の特性が改善された発光化合物及びそれを採用することによって、駆動特性、特に、色純度が改善された有機電界発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を達成するために、本発明は、下記化学式1で示される反復単位と、下記化学式2で示される反復単位とを含み、前記化学式1の反復単位と前記化学式2の反復単位とはモル比で1:99〜99:1の割合で含まれ、平均重合度は、5ないし2,000であるフェノキサジン系高分子を提供する。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
前記化学式1および化学式2において、Ar及びLは、それぞれ独立的に、置換または非置換のC6−C30のアリーレン基及び置換または非置換のC2−C30のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、Xは、O、CH、CH=CH、CH−CHまたはSであり、RないしRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC1−C30アルキル基、置換または非置換のC1−C30アルコキシ基、置換または非置換のC6−C30アリール基、置換または非置換のC6−C30のアリールアルキル基、置換または非置換のC6−C30のアリールオキシ基、置換または非置換のC5−C30のヘテロアリール基、置換または非置換のC5−C30のヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC5−C30のヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC5−C20のシクロアルキル基、および置換または非置換のC5−C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択される。
【0014】
また、前記他の技術的課題を達成するために、本発明は、一対の電極の間に、前記のフェノキサジン系高分子を含む有機膜を備えることを特徴とする有機電界発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のフェノキサジン系高分子を採用した有機電界発光素子は、色純度、効率及び輝度特性が改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0017】
本発明の高分子は、優れた電荷輸送能力、特に、ホール輸送能力及び青色発光特性を同時に付与できるフェノキサジン単位がポリアリーレン主鎖に導入された構造を有している。このような化学構造的な特徴によって青色発光特性が非常に優れている。
【0018】
本発明では、下記化学式1で示される反復単位、及び下記化学式2で示される反復単位を含み、前記化学式1の反復単位と前記化学式2の反復単位とがモル比で1:99〜99:1の割合で含まれ、平均重合度が5ないし2,000であるフェノキサジン系高分子を提供する。
【0019】
好ましくは、前記フェノキサジン系高分子は、前記化学式1の反復単位と前記化学式2の反復単位とをモル比で80:20〜99:1の割合で含む。本発明では製造時の仕込みモル比をそのままモル比とすることができる。
【0020】
化学式1の反復単位と化学式2の反復単位とは、ランダム共重合体、または周期的共重合体を形成する。
【0021】
【化3】

【0022】
【化4】

【0023】
前記化学式1および化学式2において、Ar、L、X、RないしRは、上述した通りである。
【0024】
前記化学式1のAr及び前記化学式2のL部位が、それぞれ独立的に下記官能基(1a)ないし(1q)からなる群より選択される何れか一つであることが好ましい。
【0025】
【化5】

【0026】
前記官能基(1j)〜(1m)および(1o)〜(1q)において、R及びRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC1−C12アルキル基、置換または非置換のC1−C12アルコキシ基及び置換または非置換のアミノ基からなる群から選択される。
【0027】
本発明の高分子の主鎖を構成するAr単位は、前記構造式で示される官能基のうち、下記官能基(1p)で示されるスピロフルオレン構造を有することがさらに好ましいが、その理由は、熱的安定性を高め、隣接した鎖とのエキシマ形成を抑制して、高効率及び高色純度が得られるという利点があるためである。
【0028】
【化6】

【0029】
前記式におけるR及びRは、上述した通りである。
【0030】
前記化学式2におけるL部位は、上述の官能基の群のうち、下記官能基(1a)または(1m)のいずれか一つで示される構造を有することがさらに好ましいが、その理由は、高分子化時に高分子のバンドギャップ調節ができ高色純度化できるという利点があるためである。
【0031】
【化7】

【0032】
前記式におけるR及びRは、上述した通りである。
【0033】
本発明の高分子の具体的な例として、下記化学式3で示される反復単位と、下記化学式4または化学式5のうち、何れかで示される反復単位とから構成され、前記化学式3の反復単位と前記化学式4または5の反復単位とがモル比で1:99〜99:1の割合で含まれ、平均重合度5ないし2,000のフェノキサジン系高分子を挙げうる。
【0034】
より好ましくは、前記化学式3の反復単位と前記化学式4または5の反復単位とはモル比で80:20〜99:1の割合で含まれる。
【0035】
【化8】

【0036】
【化9】

【0037】
【化10】

【0038】
以下、本発明に係るフェノキサジン系高分子のうち、前記Ar単位がスピロフルオレン構造を有することを例とした製造方法を説明する。ただし、本願は以下の製造方法に限定されない。
【0039】
まず、下記反応式1に表したように、フェノキサジン系化合物(D)を合成する。
【0040】
【化11】

【0041】
前記反応式1でLは、化学式2で定義された通りであり、X及びXは、ハロゲン原子を表す。
【0042】
前記反応式1に示す合成を行う場合、例えば、まず、前記化合物(A)のようなフェノキサジン誘導体と、前記化合物(B)のL部位を有するハロゲン化物とをパラジウム触媒反応(J.Am.Chem.Soc.,1996,118,7217)によって前記化合物(C)を得る。以後、クロロホルム、ジメチルホルムアミドなどの有機極性溶媒下で、化合物(C)の当量程度のハロゲンを添加するハロゲン化反応によって前記化合物(D)を得ることができる。
【0043】
前記過程によって得た化合物(D)を下記化学式で示されるスピロフルオレン系化合物(E)と重合させることにより、本発明の高分子が得られる。
【0044】
【化12】

【0045】
前記化合物(E)における、R及びRは、上述した通りであり、Xは、ハロゲン原子を表す。
【0046】
その他の本発明に係るフェノキサジン系高分子は、前記の製造過程と同様の方法によって合成可能である。
【0047】
本発明の高分子の重量平均分子量Mwは、高分子を利用した薄膜形成特性及び素子の寿命に関わる。本発明の青色発光高分子の重量平均分子量Mwは、1万ないし200万であることが好ましい。もし、高分子の重量平均分子量が1万未満であれば、素子製作時または駆動時に薄膜の結晶化が起こるおそれがあり、重量平均分子量が200万を超える場合には、一般的な、Pd(O)またはNi(O)−媒介アリールカップリング反応を利用する合成条件では実質的に製造し難いだけでなく、有機電界発光素子の製作時に、薄膜を形成し難くなるおそれがある。
【0048】
発光高分子の分子量分布MWDは、なるべく狭いほど、電界発光特性(特に、素子の寿命)面で有利であると知られている。本発明の高分子の分子量分布は、1.5ないし5.0が好ましく、1.5ないし3.0範囲であることがより好ましい。
【0049】
前記非置換のアルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−アミル、またはヘキシルなどが挙げられ、前記アルキルに含まれる、一つ以上の水素原子は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、置換または非置換のアミノ基(−NH、−NH(R)、−N(R’)(R”)、R’及びR”は、互いに独立的に炭素数1ないし10のアルキル基である)、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基、C1−C20のアルキル基、C1−C20のハロゲン化されたアルキル基、C1−C20のアルケニル基、C1−C20のアルキニル基、C1−C20のヘテロアルキル基、C6−C20のアリール基、C6−C20のアリールアルキル基、C6−C20のヘテロアリール基、またはC6−C20のヘテロアリールアルキル基などの置換基で置換されうる。
【0050】
前記非置換のアリール基は、一つ以上の芳香環を含む炭素環芳香族を意味し、前記環が複数含まれる場合には、環は、ペンダント法で結合していてもよいし、環同士が炭化水素を共有し環が融合している形状をしていてもよい。アリール基の具体的な例としては、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチルのような芳香族を含む基が挙げられ、前記アリール基のうち、何れか一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の項において例示したものと同様の置換基に置換可能である。
【0051】
前記非置換のヘテロアリール基は、O、PおよびSからなる群より選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである環原子数5ないし30の環芳香族を意味し、前記環が複数含まれる場合には、環はペンダント法で結合していてもよいし、環同士が炭化水素を共有し環が融合している形状をしていてもよい。そして、前記ヘテロアリール基のうち、一つ以上の水素原子は、前記C1−C30のアルキル基の項において例示したものと同様の置換基に置換可能である。
【0052】
前記非置換のアルコキシ基は、「ラジカル−O−アルキル」を意味し、この時、アルキルは、前記で定義された通りである。具体的な例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、ペンチルオキシ、iso−アミルオキシ、またはヘキシルオキシなどが挙げられ、前記アルコキシ基のうち、一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の項において例示したものと同様の置換基に置換可能である。
【0053】
前記非置換のアリールアルキル基は、前記定義された通りのアリール基に含まれる、水素原子のうち一部が、低級アルキル、例えば、メチル、エチル、プロピルのようなラジカルに置換されたことを意味する。例えば、ベンジル、フェニルエチルなどがある。前記アリールアルキル基のうち、一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の項において例示したものと同様の置換基に置換可能である。
【0054】
前記非置換のヘテロアリールアルキル基は、上述のヘテロアリール基に含まれる水素原子の一部が低級アルキル基で置換されたことを意味し、ヘテロアリールアルキル基のうちヘテロアリールについての定義は、前記した通りである。前記ヘテロアリールアルキル基のうち、一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基に置換可能である。
【0055】
前記非置換のアリールオキシ基は、「ラジカル−O−アリール」を意味し、この時、アリールは、前記で定義された通りである。具体的な例として、フェノキシ、ナフトキシ、アントラセニルオキシ、フェナントレニルオキシ、フルオレニルオキシ、インデニルオキシなどがあり、アリールオキシ基に含まれる、一つ以上の水素原子は、前記C1−C30のアルキル基の場合と同様の置換基に置換可能である。
【0056】
前記ヘテロアリールオキシ基は、「ラジカル−O−ヘテロアリール」を意味し、この時、ヘテロアリールは、前記で定義された通りである。
【0057】
前記ヘテロアリールオキシ基の具体的な例として、ベンジルオキシ、フェニルエチルオキシ基などがあり、ヘテロアリールオキシ基のうち、一つ以上の水素原子は、前記C1−C30のアルキル基の場合と同様の置換基に置換可能である。
【0058】
前記シクロアルキル基は、炭素原子数5ないし30の1価の単環を意味する。前記シクロアルキル基のうち、少なくとも一つ以上の水素原子は、前記C1−C30のアルキル基の場合と同様の置換基に置換可能である。
【0059】
前記ヘテロシクロアルキル基は、N、O、PおよびSからなる群より選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである環原子数5ないし30の1価の単環を意味する。前記シクロアルキル基のうち、一つ以上の水素原子は、前記アルキル基の場合と同様の置換基で置換可能である。
【0060】
前記アミノ基は、−NH、−NH(R)または−N(R’)(R”)を意味し、R’及びR”は、互いに独立的に炭素数1ないし10のアルキル基である。本発明のポリマー末端としては特に限定されず、本発明を阻害しない範囲の官能基が配置される。例えば末端に配置される官能基として、‐H、−OH、−CHなどが挙げられる。
【0061】
以下、前記の化学式1及び化学式2の反復単位で構成されたフェノキサジン系高分子を含む有機膜採用した有機電界発光素子及びその製造方法を説明すれば、次の通りである。
【0062】
図1Aないし図1Fは、本発明の好ましい具現例に係る有機電界発光素子の積層構造を概略的に示す図面である。
【0063】
図1Aに示すように、第1電極10の上部に青色発光高分子を含んだ発光層(Emitting Layer:EML)12が積層され、前記EML12の上部には第2電極14が形成される。前記青色発光高分子として、本願発明のフェノキサジン系高分子を用いることもできる。
【0064】
図1Bに示すように、第1電極10の上部に前記青色発光高分子を含んだEML12が積層され、前記EML12の上部にホール阻止層(Hole Blocking Layer:HBL)13が積層されており、その上部には第2電極14が形成される。
【0065】
図1Cの有機電界発光素子は、第1電極10とEML12との間にホール注入層(Hole Injection Layer:HIL、または“バッファ層”とも言う)11が形成される。
【0066】
図1Dの有機電界発光素子は、EML12の上部に形成されたHBL13の代りに電子輸送層(Electron Transport Layer:ETL)15が形成されたことを除いては、図1Cの場合と同じ積層構造を有する。
【0067】
図1Eの有機電界発光素子は、前記青色発光高分子を含むEML12の上部に形成されたHBL13の代りに、HBL13及びETL15が順次に積層された2層膜を使用することを除いては、図1Cの場合と同じ積層構造を有する。
【0068】
図1Fの有機電界発光素子は、HIL11とEML12との間にホール輸送層(Hole Transport Layer:HTL)16をさらに形成したことを除いては、図1Eの有機電界発光素子と同じ構造を有している。この時、HTL16は、HIL11からEML12への不純物の浸入を抑制する役割を担う。
【0069】
前記の図1Aないし図1Fの積層構造を有する有機電界発光素子は、一般的な製作方法によって形成可能であり、その製作方法が特別に限定されるものではない。
【0070】
以下、図1Eまたは図1Fに示す積層体を例として、本発明の好ましい具現例に係る有機電界発光素子の製作方法を説明する。しかし、本発明は以下に限定されない。
【0071】
まず、基板(図示せず)の上部にパターニングされた第1電極10を形成する。ここで前記基板は、一般的な有機電界発光素子で使用される基板を使用することができ、透明性、表面平滑性、取扱の容易性及び防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板が好ましい。そして、前記基板の厚さは、0.3ないし1.1mmであることが好ましい。
【0072】
前記第1電極10の形成材料は、特別に制限されるものではない。もし、第1電極が正極である場合には、正極は、ホール注入の容易な伝導性の金属またはその酸化物からなり、具体的な例として、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、金(Au)、イリジウム(Ir)などを使用することができる。
【0073】
前記第1電極10が形成された基板を洗浄した後、UV/オゾン処理を実施することが望ましい。この時、洗浄方法としては、イソプロパノール(IPA)、アセトンなどの有機溶媒を利用する方法が望ましい。
【0074】
洗浄された基板の第1電極10の上部にHIL11を選択的に形成する。このようにHIL11を形成すれば、第1電極10とEML12との接触抵抗を低下させると共に、EML12に対する第1電極10のホール輸送能力が向上して、素子の駆動電圧及び寿命特性が全般的に改善される効果が得られる。このようなHIL11の形成材料は、一般的に使用される物質であれば何れも使用可能であり、具体的な例としては、PEDOT{poly(3,4−ethylenedioxy thiophene)}/PSS(polystyrene parasulfonate)、スターバースト系物質、銅フタロシアニン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、またはこれらの誘導体などが挙げられる。このような物質を利用して第1電極10の上部にスピンコーティングした後、これを乾燥してHIL11を形成する。ここで、HIL11の厚さは、望ましくは300〜2000Åであり、より好ましくは、500〜1100Åである。もし、HIL11の厚さが前記範囲を逸脱する場合には、ホール注入特性が不良となるおそれがある。前記乾燥温度は、100ないし250℃が好ましい。
【0075】
前記HIL11の上部にEML形成用の組成物を、スピンコーティング法などを利用してコーティング及び乾燥してEML12を形成する。ここで前記EML形成用の組成物は、本発明のフェノキサジン系高分子を含む溶媒からなる。EML形成用の組成物に含まれる化学式1の高分子と溶媒とは質量比で0.5:99.5〜20:80であることが好ましい。
【0076】
前記溶媒は、発光高分子を溶解させうるものであれば、何れも使用可能であり、具体的な例として、トルエン、クロロベンゼン、キシレンなどを使用することができる。
【0077】
場合によっては、前記EML形成用の組成物にドーパントをさらに付加しても良い。この時、ドーパントの含量は、EMLの形成材料によって可変的であるが、一般的にEMLの形成材料(ホスト及びドーパントの総質量)100質量部を基準として、30ないし80質量部であることが好ましい。もし、ドーパントの含量が前記範囲を逸脱すれば、有機電界発光素子の発光特性が低下して好ましくない。前記ドーパントの具体的な例としては、アリールアミン、ペリル系化合物、ピロール系化合物、ヒドラゾン系化合物、カルバゾール系化合物、スチルベン系化合物、スターバースト系化合物、オキサジアゾール系化合物などが挙げられる。
【0078】
前記EML12の膜の厚さは、EML形成用の組成物の濃度とスピンコーティング時のスピン速度とを調節することによって100〜1000Åの範囲となるように調節することが好ましく、より好ましくは500〜1000Åである。もし、EML12の厚さが100Å未満である場合には発光効率が低下し、1000Åを超える場合には、駆動電圧が上昇するおそれがある。
【0079】
前記HIL11とEML12との間には、HTL16を選択的に形成できる。ここでHTLの形成材料は、ホール輸送性を満足する材料であれば何れも使用可能であり、具体的な例としては、ポリトリフェニルアミンなどを使用できる。そして、HTLの厚さは、100ないし1000Åであることが好ましい。
【0080】
前記EML12の上部には、蒸着またはスピンコーティング方法を利用してHBL13及び/またはETL15を形成する。ここでHBL13は、発光物質で形成されるエキシトンがETL15に移動することを防止するか、またはホールがETL15に移動することを防止する役割を担う。
【0081】
前記HBL13の形成材料としては、LiF、BaFまたはMgF、フェナントロリン系化合物(例:UDC社製、BCP)、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物(例:PBD)、アルミニウム錯体(UDC社製)の下記構造式のBAlqなどを使用することができる。
【0082】
【化13】

【0083】
前記ETL15の形成材料としては、以下に示すオキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、トリアゾール系化合物、イソチアゾール系化合物、オキサジアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、ペリレン系化合物、アルミニウム錯体[例:Alq3(トリス(8−キノリノラト)−アルミニウム)、BAlq、SAlq、Almq3]、ガリウム錯体(例:Gaq’2OPiv、Gaq’2OAc、2(Gaq’2))を使用することができる。
【0084】
【化14】

【0085】
前記HBLの厚さは100ないし1000Åであり、前記ETLの厚さは100ないし1000Åであることが好ましい。もし、前記HBLの厚さ及びETLの厚さが前記範囲を逸脱する場合には、電子輸送能力やホール抑制能力が低下するおそれがある。
【0086】
次いで、前記結果物に第2電極14を形成し、前記結果物を封止して有機電界発光素子を完成する。
【0087】
前記第2電極14の形成材料は特別に制限されず、仕事関数の小さな金属、例えば、Li、Ca、Ca/Al、LiF/Ca、BaF/Ca、LiF/Al、Al、Mg、Mg合金を利用して、これを蒸着して形成する。前記第2電極14の厚さは50ないし3000Åであることが好ましい。
【0088】
本発明に係る化学式1の高分子は、前記有機電界発光素子の製作時にEML形成材料として使用されているが、その化学的な特性上、HTLの形成材料にも利用可能である。そして、バイオ分野の中間体としても使用可能である。
【0089】
本発明の有機電界発光素子の製作は、特別な装置や方法を必要とせず、通常の発光高分子を利用した有機電界発光素子の製作方法によって製作されうる。
【実施例】
【0090】
以下、下記実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、下記実施例は、単に説明の目的のためのものであって、本発明を制限するためのものではない。
【0091】
(合成例1:化学式3及び化学式4で示される反復単位で構成された高分子の製造)
シュレンクフラスコの内部を数回真空化、窒素還流させて水分を除去した後、ビス1,5−シクロオクタジエンニッケル(以下“Ni(COD)”という)660mg(2.4mmol)とバイピリダル300mg(1.9mmol)とをグローブボックスの中に投入した後、再び数回フラスコの内部を真空化、窒素還流させた。次いで、窒素気流下で無水ジメチルフラン5ml、1,5−COD259mg(3.2mmol)及び無水トルエン5mlを添加した。前記反応混合物を80℃で30分間攪拌させた後、化学式3の物質556mg(0.072mmol)と化学式4の物質73mg(0.008mmol)とをトルエン5mlに希釈して添加した。次いで、容器の壁に付いている物質を全て洗いつつトルエン5mlを添加した後、80℃で24時間攪拌させた。
【0092】
反応が完了した後、前記反応液の温度を室温に下げ、HCl:アセトン:メタノール=1:1:2(体積比)に注いで沈殿を形成させた。このように得られた沈殿物をクロロホルムに溶解させた後、メタノールで再び沈殿を形成し、ソックスレー抽出器を利用した処理を実施して、化学式3及び化学式4で示される反復単位で構成された高分子(TBDAFP91)0.32mgを得た。TBDAFP91はランダム共重合体であった。
【0093】
前記TBDAFP91をゲル透過クロマトグラフィ(Gel Permeation Chromatography:GPC)で分析した結果、重量平均分子量Mwは150,000であり、分子量分布MWDは2.63であった。
【0094】
GPC分析条件を下記表1に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
(合成例2.化学式3及び化学式5で示される反復単位で構成された高分子の製造)
シュレンクフラスコの内部を数回真空化、窒素還流させて水分を除去した後、ビス1,5−Ni(COD)660mg(2.4mmol)とバイピリダル300mg(1.9mmol)とをグローブボックスの中に投入し、再び数回フラスコの内部を真空化、窒素還流させた。次いで、窒素気流下で無水ジメチルフラン5ml、1,5−COD259mg(3.2mmol)及び無水トルエン5mlを添加した。前記反応混合物を80℃で30分間攪拌させた後、化学式3の物質556mg(0.072mmol)と化学式5の物質24mg(0.008mmol)とをトルエン5mlに希釈して添加した。次いで、容器の壁に付いている物質を全て洗いつつ、トルエン5mlを添加した後、80℃で24時間攪拌させた。
【0097】
反応が完了した後、前記反応液の温度を室温に下げた後、HCl:アセトン:メタノール=1:1:2(体積比)に注いで沈殿を形成させた。このように得られた沈殿物をクロロホルムに溶解させた後、メタノールで再び沈殿を形成し、ソックスレー抽出器を利用した処理を実施して、化学式3及び化学式5で示される反復単位で構成された高分子(TBDBzP91)0.32mgを得た。TBDBzP91はランダム共重合体であった。
【0098】
前記TBDBzP91をGPCで分析した結果、重量平均分子量Mwは120,000であり、分子量分布MWDは2.24であった。GPC分析条件は上記表1に示したとおりである。
【0099】
前記合成例1及び合成例2によって得た高分子の紫外線吸収スペクトル及び光発光スペクトルを調査し、その結果は、図2ないし図5に示した通りである。
【0100】
図2ないし図5に示すように、青色の電気発光特性を示す発光材料であることが分かった。また、合成例1及び合成例2によって得た高分子の色純度は(0.14,0.20)と、優れた色純度を示している。
【0101】
(実施例1:有機電界発光素子の製作)
前記合成例1によって製造された高分子を利用して、次のように電界発光素子を製作した。
【0102】
まず、ITOをガラス基板上にコーティングした透明電極基板をきれいに洗浄した後、ITOを感光性樹脂及びエッチング液を利用して、所望の形状にパターニングし、再びきれいに洗浄した。その上に伝導性バッファ層としてバイエル社のBatron P 4083を約800Åの範囲の厚さに合わせてコーティングした後、180℃で約1時間ベーキングした。次いで、EML形成用の組成物を100質量部としてトルエン99質量部に化学式4の高分子1質量部を溶解させて製造されたEML形成用の組成物を前記バッファ層上にスピンコーティングし、ベーキング処理後に真空オーブン内で溶媒を完全に除去して高分子薄膜を形成させた。この時、前記高分子溶液は、スピンコーティングに適用する前に0.2mmのフィルターでろ過され、高分子薄膜の厚さは、前記高分子溶液の濃度及びスピン速度を調節することによって、約80nmの範囲に入るように調節された。
【0103】
次いで、前記電界発光高分子薄膜上に真空蒸着器を利用して真空度を4×10−6torr(0.532×10−3Pa)以下に維持しつつ、BaF、Ca及びAlを順次に蒸着した。蒸着時に膜厚及び膜の成長速度は、クリスタルセンサーを利用して調節した。
【0104】
(実施例2:有機電界発光素子の製作)
前記合成例2によって製造された高分子を利用した点を除いては、実施例1と同じ方法で有機電界発光素子を製作した。
【0105】
前記実施例1によって製作された有機電界発光素子の輝度及び効率特性を調査し、その結果をそれぞれ図6及び図7に表し、前記実施例2によって製作された有機電界発光素子の輝度及び効率特性を調査し、その結果はそれぞれ図8及び図9に表した。評価時の駆動電圧としては、直流電圧として順方向バイアス電圧を使用し、各素子は何れも典型的な整流ダイオード特性を表した。特に、実施例1及び実施例2の素子は、数回反復駆動後にも初期の電圧−電流密度特性をそのまま維持する優れた安定性を表した。
【0106】
図6ないし図9から分かるように、実施例1及び実施例2の有機電界発光素子は、輝度及び効率特性に優れている。
【0107】
図10及び図11は、それぞれ本発明の実施例1及び実施例2に係る有機電界発光素子において、電気発光スペクトルを示すグラフである。高純度の青色発光特性を示し、特に、電圧変化にも色純度が変わらないため、良い色安定性を表すことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1A】本発明のフェノキサジン系高分子を適用しうる有機電界発光素子の一実施形態を示す断面概略図である。
【図1B】本発明のフェノキサジン系高分子を適用しうる有機電界発光素子の一実施形態を示す断面概略図である。
【図1C】本発明のフェノキサジン系高分子を適用しうる有機電界発光素子の一実施形態を示す断面概略図である。
【図1D】本発明のフェノキサジン系高分子を適用しうる有機電界発光素子の一実施形態を示す断面概略図である。
【図1E】本発明のフェノキサジン系高分子を適用しうる有機電界発光素子の一実施形態を示す断面概略図である。
【図1F】本発明のフェノキサジン系高分子を適用しうる有機電界発光素子の一実施形態を示す断面概略図である。
【図2】本発明の合成例1によって得た高分子の紫外線吸収スペクトルを示す図面である。
【図3】本発明の合成例1によって得た高分子の光発光スペクトルを示す図面である。
【図4】本発明の合成例2によって得た高分子の紫外線吸収スペクトルを示す図面である。
【図5】本発明の合成例2によって得た高分子の光発光スペクトルを示す図面である。
【図6】本発明の実施例1に係る有機電界発光素子において、輝度−電流密度の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例1に係る有機電界発光素子において、効率−電圧の関係を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例2に係る有機電界発光素子において、輝度−電流密度の関係を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例2に係る有機電界発光素子において、効率−電圧の関係を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例1に係る有機電界発光素子において、電気発光スペクトルを示すグラフである。
【図11】本発明の実施例2に係る有機電界発光素子において、電気発光スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0109】
10 第1電極、
11 HIL、
12 EML、
13 HBL、
14 第2電極、
15 ETL、
16 HTL。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で示される反復単位と、
化学式2で示される反復単位とを含み、
前記化学式1の反復単位と前記化学式2の反復単位とはモル比で1:99〜99:1の割合で含まれ、
平均重合度が5ないし2,000であるフェノキサジン系高分子:
【化1】

【化2】

前記化学式1および化学式2において、Ar及びLは、それぞれ独立的に、置換または非置換のC6−C30のアリーレン基及び置換または非置換のC2−C30のヘテロアリーレン基からなる群から選択され、
Xは、O、CH、CH=CH、CH−CHまたはSであり、
ないしRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC1−C30アルキル基、置換または非置換のC1−C30アルコキシ基、置換または非置換のC6−C30アリール基、置換または非置換のC6−C30のアリールアルキル基、置換または非置換のC6−C30のアリールオキシ基、置換または非置換のC5−C30のヘテロアリール基、置換または非置換のC5−C30のヘテロアリールアルキル基、置換または非置換のC5−C30のヘテロアリールオキシ基、置換または非置換のC5−C20のシクロアルキル基、および置換または非置換のC5−C30のヘテロシクロアルキル基からなる群から選択される。
【請求項2】
前記化学式1のAr及び前記化学式2のL部位が、それぞれ独立的に官能基(1a)ないし(1q)からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載のフェノキサジン系高分子:
【化3】

前記官能基(1j)〜(1m)および(1o)〜(1q)において、R及びRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC1−C12アルキル基、置換または非置換のC1−C12アルコキシ基及び置換または非置換のアミノ基からなる群から選択される。
【請求項3】
前記化学式1のAr単位は、官能基(1p)であることを特徴とする請求項1に記載のフェノキサジン系高分子:
【化4】

前記官能基(1p)において、R及びRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC1−C12アルキル基、置換または非置換のC1−C12アルコキシ基及び置換または非置換のアミノ基からなる群から選択される。
【請求項4】
前記化学式2のL部位は、官能基(1a)または(1m)であることを特徴とする請求項1に記載のフェノキサジン系高分子:
【化5】

前記官能基(1m)において、R及びRは、それぞれ独立的に水素、置換または非置換のC1−C12アルキル基、置換または非置換のC1−C12アルコキシ基及び置換または非置換のアミノ基からなる群から選択される。
【請求項5】
前記高分子の重量平均分子量は1万ないし200万であり、分子量分布は1.5ないし5.0であることを特徴とする請求項1に記載のフェノキサジン系高分子。
【請求項6】
化学式3で示される反復単位と、
化学式4または化学式5のいずれかで示される反復単位とを含み、
前記化学式3の反復単位と前記化学式4または5の反復単位とはモル比で1:99〜99:1の割合で含まれ、
平均重合度は5ないし2,000であることを特徴とする請求項1に記載のフェノキサジン系高分子:
【化6】

【化7】

【化8】

【請求項7】
前記高分子の重量平均分子量は1万ないし200万であり、分子量分布は1.5ないし5.0であることを特徴とする請求項6に記載のフェノキサジン系高分子。
【請求項8】
一対の電極の間に有機膜を備える有機電界発光素子において、
前記有機膜は、請求項1ないし請求項6のうち、何れか1項に記載のフェノキサジン系高分子を含むことを特徴とする有機電界発光素子。
【請求項9】
前記有機膜は、発光層またはホール輸送層であることを特徴とする請求項8に記載の有機電界発光素子。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図1F】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−199967(P2006−199967A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14380(P2006−14380)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】