説明

静圧気体軸受スピンドル

【課題】外部の真空発生機と接続することなく、排出される軸受用気体を回収する機構を備えた静圧気体軸受スピンドルを提供する。
【解決手段】静圧気体軸受スピンドルは、内部に形成された排気通路7を有し、かつ排気通路7が開口した外周面を有する円筒形状の回転軸1と、回転軸1を支持するための軸受用気体が供給される軸受隙間5をはさんで、回転軸1の外周面を取り囲む固定部2と、回転軸1の外周面のうち排気通路7の開口した部分を覆うように回転軸1に取り付けられた排気リング6とを備えている。排気リング6と回転軸1の外周面との間には排気通路7に通じる排気回収路20が形成されている。排気回収路20は、軸受隙間5の開口部22と向かい合う位置に開口部21を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静圧気体軸受スピンドルに関し、特に、軸受隙間に供給された軸受用気体を排気回収可能な静圧気体軸受スピンドルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静圧気体軸受スピンドルは、たとえば、光ディスク、磁気ディスクなどの記録メディアの製造および検査などの高精度な回転を必要とする分野に使われている。
【0003】
静圧気体軸受スピンドルは、軸受部と回転軸との間に数μm〜十数μmの隙間を有している。そして、上記の隙間に軸受用気体となる圧縮された気体が供給される。その軸受用気体により、静圧気体軸受スピンドルの回転軸が、軸受部に対して非接触で保持される。そして、静圧気体軸受スピンドルは、回転軸を軸受部に対して非接触で保持しながら高速回転する。したがって、静圧気体軸受スピンドルからは、軸受用気体が必ず排出される。
【0004】
記録メディアの製造および検査などを行う環境のクリーン度は厳しく規定されている。そのため、静圧気体軸受スピンドルから排出される軸受用気体は、全て回収され、クリーンルーム内には排出されないことが望ましい。
【0005】
たとえば、特開2000−46054号公報(特許文献1)には、エアーシール機構を備えた静圧気体軸受スピンドルが開示されている。この特許文献1に開示された静圧気体軸受スピンドルのエアーシール機構では、スピンドルハウジングの先端側の内側に設けられたリング状のエアーシール溝に圧縮気体が供給される。それにより、静圧気体軸受スピンドル内部から積極的に圧縮気体が噴出する。これにより、外部から軸受内部への異物の侵入が防止される。すなわち、特許文献1に記載された静圧気体軸受スピンドルは、スピンドルハウジングの先端側の内側に設けられたリング状の溝に圧縮気体を供給するものである。
【0006】
一方、特許文献1とは逆に圧縮気体を吸気する機構を備えた静圧気体軸受スピンドルは、排出される軸受用気体を強制的に回収し得る。すなわち、その機構は、特許文献1に記載された機構と同じように、スピンドルハウジングの先端側の内側、つまり軸受および回転軸にリング状の溝を備えている。そして、その機構が圧縮気体を吸気することにより、その機構を備えた静圧気体軸受スピンドルは、排出される軸受用気体を強制的に回収し得る。
【特許文献1】特開2000−46054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように静圧気体軸受スピンドルの軸受および回転軸に吸気用のリング状の溝を設け、そのリング状の溝内を外部に設けた真空発生機で真空にすることにより、静圧気体軸受スピンドルは排出される軸受用気体を回収し得る。しかしながら、この構成では、静圧気体軸受スピンドルの吸気用のリング状の溝を真空にするために、外部に設けた真空発生機を静圧気体軸受スピンドルに接続する必要がある。したがって、コストが高くなる。また、真空発生機より生じる振動やノイズが静圧気体軸受スピンドルを備えた装置の精度に影響することも考えられる。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、外部の真空発生機と接続することなく、軸受隙間から排出される軸受用気体を回収することができる静圧気体軸受スピンドルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の静圧気体軸受スピンドルは、内部に形成された排気通路を有し、かつ排気通路が開口した外周面を有する円筒形状の回転軸と、回転軸を支持するための軸受用気体が供給される軸受隙間をはさんで、回転軸の外周面を取り囲む固定部と、回転軸の外周面のうち排気通路の開口した部分を覆うように回転軸に取り付けられた排気リングとを備えている。排気リングと回転軸の外周面との間には排気通路に通じる排気回収路が形成されている。排気回収路は、軸受隙間の開口部と向かい合う位置に開口部を有している。
【0010】
本発明の静圧気体軸受スピンドルによれば、排気回収路の開口部と軸受隙間の開口部とが向かい合う構造のため、気流の壁面に沿って流れる性質を利用して軸受用気体を回収することができる。これにより真空発生機が不要となり、真空発生機を備えた従来の静圧気体軸受スピンドルに比べて、コストを安くすることができる。また、真空発生機による振動およびノイズが発生しないので、それらへの対策も不要となる。
【0011】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、回転軸の一方の端部に接続され、被回転物を保持するための保持部をさらに備え、排気リングは保持部と一体形成されている。
【0012】
これにより、排気リングを別に形成する場合に比べ製造工程を簡素化することができる。また、製造コストを低減することができる。
【0013】
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、排気回収路は、排気通路に通じるための折れ曲がり部を有し、折れ曲がり部を構成する排気リングの角部はラウンド形状を有している。
【0014】
これにより、軸受用気体をより安定して回収することができる。
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、排気リングは、回転軸の外周面と対向する内径面に排気回収路の開口部から軸受用気体の排気通路側に向かって直径が小さくなるテーパ形状を有している。
【0015】
これにより、軸受用気体をより安定して回収することができる。
上記の静圧気体軸受スピンドルにおいて好ましくは、回転軸は、排気回収路の開口部側から軸受用気体の排気通路側に向かって直径が小さくなるテーパ形状を有している。
【0016】
これにより、軸受用気体をより安定して回収することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の静圧気体軸受スピンドルによれば、外部の真空発生機と接続することなく、軸受隙間から排出される軸受用気体を回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図に基づいて説明する。
(実施の形態1)
最初に本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。
【0019】
図1は本発明の実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの構成を示す概略断面図である。図2は図1のP部を拡大して示す概略断面図である。
【0020】
図1および図2を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルは、回転軸1と、固定部2と、排気リング6とを主に有している。
【0021】
図1を参照して、回転軸1は、円筒形状を有している。回転軸1は、仮想の軸線Aを中心として回転可能に構成されている。回転軸1は、内部に形成された排気通路7を有している。排気通路7は、排気用円周溝8をその一部に含んでいる。排気通路7は、回転軸1の外周面で、排気用円周溝8越しに開口している。また、回転軸1は、回転軸1の軸と中心軸が一致し、円盤状の形状を有するスラスト板12を含んでいる。
【0022】
固定部2は、軸受スリーブ3とハウジング4とを含んでいる。軸受スリーブ3は、回転軸1を支持するための軸受用気体が供給される隙間である軸受隙間5をはさんで、回転軸1の外周面を取り囲んでいる。これにより、軸受スリーブ3は、回転軸1を径方向(ラジアル方向)に支持するジャーナル軸受として機能するように構成されている。
【0023】
また、軸受スリーブ3は、スラスト板12の上面および下面の各々に対して軸受隙間5を隔てて対向するように形成されている。これにより、軸受スリーブ3は、回転軸1を軸A方向(アキシアル方向)に支持するスラスト軸受として機能するように構成されている。
【0024】
軸受スリーブ3には、軸受用気体を軸受隙間5に供給するノズル15が形成されている。ノズル15は、回転軸1を取り囲むように、アキシアル方向に複数列形成されている。そしてノズル15は、周方向に沿ってそれぞれの列あたり複数個配置されている。
【0025】
またノズル15は、スラスト板12の上面および下面の各々と軸受スリーブ3との間の軸受隙間5に軸受用気体を供給できるように、スラスト板12の周方向に複数個形成されている。そしてノズル15は、スラスト板12を挟むように配置されている。
【0026】
ハウジング4は、軸受スリーブ3の外周を取り囲んで、その軸受スリーブ3を保持している。
【0027】
ノズル15は、スリーブ給気路14と、ハウジング給気路13とを介して、図示しない軸受用気体供給部に接続されている。また、軸受スリーブ3およびハウジング4には、軸受隙間5とハウジング4の外部とを接続する軸受用気体排出路9が形成されている。
【0028】
排気リング6は、回転軸1の外周面のうち排気通路7の開口した部分を覆うように回転軸1に取り付けられている。排気リング6の材質には、たとえば、金属または樹脂が採用され得る。排気リング6の取り付け方法は、たとえば、接着、焼き嵌めおよびボルト固定などが採用され得る。
【0029】
図示しない被回転物を保持するための保持部11が、スラスト板12からみて排気通路7が設けられている方向の回転軸1の端面に取り付けられている。
【0030】
そして、回転軸1と対向し、かつ保持部11と対向している軸受スリーブ3の角部には、排気リング6を配置するための環状溝27が形成されている。排気リング6は、環状溝27に配置されている。
【0031】
また、回転軸1の、スラスト板12からみて保持部11とは反対側には、回転軸1の外周面を取り囲むように接続されたロータ18が配置されている。また、ハウジング4には、ロータ18の外周面に対向するようにステータ17が配置されている。ステータ17およびロータ18は、回転軸1を軸周りに回転駆動するビルトインモータ16を構成している。ビルトインモータ16は、モータカバー19で覆われている。
【0032】
図2を参照して、排気リング6と対向する回転軸1の外周面には、排気用円周溝8が形成されている。排気用円周溝8は、排気通路7の一部に含まれている。
【0033】
排気リング6は、排気用円周溝8と対向し、かつ軸受隙間5と対向する角部に環状溝28を有している。これにより、環状溝28と回転軸1の外周面との隙間に排気回収路20およびその開口部21が形成されている。開口部21は、回転軸1の外周面に沿うアキシアル方向に向かって軸受隙間5側に開口している。
【0034】
また、排気回収路20において、開口部21と反対側(図2中上側)において、排気リング6は回転軸1の外周面に隙間なく接合している。これにより、排気リング6と回転軸1の外周面との隙間から、開口部21と反対側(図2中上側)には、軸受用気体は排出されない。
【0035】
軸受隙間5は、上記の軸受スリーブ3の角部に形成されている環状溝27に繋がっている位置において開口している。つまり、軸受隙間5は、上記位置において、その開口部22を有している。開口部22は、回転軸1の外周面に沿うアキシアル方向に向かって排気回収路20側に開口している。
【0036】
したがって、排気回収路20の開口部21と、軸受隙間5の開口部22とは向かい合う位置に配置されている。排気回収路20の開口部21の隙間は、軸受隙間5の開口部22の隙間と同一または広い寸法に形成されている。すなわち、排気回収路20は、軸受隙間5と同じか広い。
【0037】
また、外部通気隙間23が、排気リング6と上記の軸受スリーブ3の角部に形成されている環状溝27との隙間から構成されている。より具体的には、外部通気隙間23は、排気リング6の下面および外周面と、環状溝27の底面および内周面との隙間で構成されている。
【0038】
次に、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの作用効果について比較例と対比して説明する。
【0039】
図7は、仮に、特許文献1のエアーシール機構を本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルに適用した比較例の概略断面図である。図7を参照して、比較例は、本実施の形態の構成と比較して、排気リングを備えていない点で主に異なっている。
【0040】
比較例では、回転軸1および軸受スリーブ3にリング状の溝が互いに対向するように形成されている。これらの溝は、排気用円周溝8を構成している。軸受用気体は、軸受隙間5から排気用円周溝8に流れ込む。しかしながら、比較例では、図2に示す本実施の形態における排気回収路20の開口部21が形成されていない。そのため、排気用円周溝8へ軸受用気体を排気するための開口部が、図2に示すように軸受隙間5の開口部22に対して向かい合う位置に配置されていない。
【0041】
気流は壁面に沿って流れるので、軸受用気体は回転軸1の外周面に沿って流れる。比較例では、排気通路7の一部に含まれる排気用円周溝8は、軸受隙間5に開口しており、排気通路7の開口位置の上下に軸受隙間5がある。したがって、気流は壁面に沿って流れる性質があるため、軸受隙間5の開口部22から排出された軸受用気体は排気用円周溝8にほとんど流れない。
【0042】
その結果、排気用円周溝8内部の圧力が排気口10の外の圧力より上昇しない。よって、軸受用気体は、排気通路7を通り、排気口10から外部にほとんど排出されない。
【0043】
そのため、比較例では、外部に真空発生機を接続しなければ、軸受用気体をハウジング4に設けられた排気口10から外部に排気することができないという問題がある。
【0044】
これに対して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルでは、排気回収路20の開口部21と、軸受隙間5の開口部22とは向かい合う位置に配置されていることから、外部の真空発生機と接続することなく、排出される軸受用気体を回収し、排気口10から外部に排気することができる。
【0045】
続いて、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの機構にもとづく作用効果についてより詳細に説明する。
【0046】
図1を参照して、図示しない軸受用気体供給部から供給された高圧の圧縮空気などの軸受用気体が、ハウジング給気路13、スリーブ給気路14およびノズル15を通って軸受隙間5に供給される。これにより、回転軸1は、軸受スリーブ3に対して回転自在に非接触支持される。そして、ビルトインモータ16のステータ17に図示しない電源から電力が供給されることにより、ロータ18を軸回りに回転させる駆動力が発生する。これにより、軸受スリーブ3に対して回転自在に非接触支持されている回転軸1は、ロータ18とともに軸受スリーブ3に対して相対的に軸線A周りに回転する。
【0047】
このとき、図示しない軸受用気体供給部から供給された軸受用気体は、軸受隙間5から軸受隙間5の開口部22に流れる。そして、軸受隙間5の開口部22から排出された軸受用気体は、回転軸1の外周面に沿って排気回収路20の開口部21に向かって流れる。気流は壁面に沿って流れる性質があるため、軸受隙間5の開口部22から排出された気体のほとんどは外部通気隙間23に流れることは無い。
【0048】
このように、排気回収路20の開口部21に流れた軸受用気体は、排気用円周溝8から排気通路7を通り、軸受用気体排出路9を経て、最終的には排気口10から外部へ排出される。
【0049】
軸受隙間5から排出された軸受用気体は、断続的ではなく連続的に排出されるので、排気回収路20に流れ込んだ軸受用気体が逆流することはない。
【0050】
その結果、排気用円周溝8内部の圧力が排気口10の外の圧力より上昇する。それにより、軸受用気体は、排気通路7を通り、排気口10から外部に排出される。
【0051】
これにより、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、真空発生機を別途配置する必要がないため、真空発生機を備えた従来の静圧気体軸受スピンドルに比べて、コストを安くすることができる。
【0052】
また、真空発生機を別途配置する必要がないため、真空発生機を備えた場合に必要となる振動およびノイズ対策も不要となる。
【0053】
(実施の形態2)
最初に本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。
【0054】
図3は、本発明の実施の形態2における静圧気体軸受スピンドルの排気リングの近傍を示す概略断面図である。図3は、図1のP部に対応する。
【0055】
図3を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルは、実施の形態1の構成と比較して、排気リング6が保持部11と一体形成されている点で主に異なっている。
【0056】
本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルでは、回転軸1の一方の端部に接続され被回転物を保持するための保持部11を備えている。そして排気リング6が保持部11と一体で形成されている。そして、保持部11が回転軸1に取り付けられている。
【0057】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
次に、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの作用効果について説明する。
本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、排気リング6と保持部11とを一体で形成することにより、排気リング6を別途製造し、また取り付ける必要がないため、排気リング6を別に形成する場合に比べ製造工程を簡素化することができる。また、製造コストを低減することができる。
【0059】
(実施の形態3)
最初に本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。
【0060】
図4は、本発明の実施の形態3における静圧気体軸受スピンドルの排気リングの近傍を示す概略断面図である。図4は、図1のP部に対応する。
【0061】
図4を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルは、実施の形態1の構成と比較して、排気回収路20の形状で主に異なっている。
【0062】
本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルでは、排気回収路20は、排気通路7に通じるための折れ曲がり部24を有している。その折れ曲がり部24を構成する排気リング6の角部は、ラウンド形状を有している。
【0063】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
次に、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの作用効果について説明する。
本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、折れ曲がり部24を構成する排気リング6の角部がラウンド形状を有していることにより、軸受用気体がより排気回収路20を流れやすくなり、軸受用気体をより安定して回収することができる。
【0065】
(実施の形態4)
最初に本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。
【0066】
図5は、本発明の実施の形態4における静圧気体軸受スピンドルの排気リングの近傍を示す概略断面図である。図5は、図1のP部に対応する。
【0067】
図5を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルは、実施の形態1の構成と比較して、排気回収路20の形状で主に異なっている。
【0068】
本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルでは、排気リング6は、回転軸1の外周面と対向する内径面に排気回収路20の開口部21から軸受用気体の排気通路7側に向かって直径が小さくなるテーパ形状25を有している。
【0069】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
次に、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの作用効果について説明する。
本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、排気リング6が回転軸1の外周面と対向する内径面に排気回収路20の開口部21から軸受用気体の排気通路7側に向かって直径が小さくなるテーパ形状25を有していることにより、軸受用気体がより排気回収路20を流れやすくなり、軸受用気体をより安定して回収することができる。
(実施の形態5)
最初に本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの構成について説明する。
【0071】
図6は、本発明の実施の形態5における静圧気体軸受スピンドルの排気リングの近傍を示す概略断面図である。図6は、図1のP部に対応する。
【0072】
図6を参照して、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルは、実施の形態1の構成と比較して、排気回収路20の形状で主に異なっている。
【0073】
本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルでは、回転軸1は、排気回収路20の開口部21側から軸受用気体の排気通路7側に向かって直径が小さくなるテーパ形状26を有している。なお、排気リング6もテーパ形状25を有している静圧気体軸受スピンドルについて説明するが、排気リング6はテーパ形状25を有していなくてもよい。
【0074】
なお、本実施の形態のこれ以外の構成は、上述した実施の形態1の構成と同様であるため同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0075】
次に、本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルの作用効果について説明する。
本実施の形態の静圧気体軸受スピンドルによれば、回転軸1は、排気回収路20の開口部21側から軸受用気体の排気通路7側に向かって直径が小さくなるテーパ形状26を有していることにより、軸受用気体がより排気回収路20を流れやすくなり、軸受用気体をより安定して回収することができる。
【0076】
なお、排気リング6もテーパ形状25を有していることにより、さらに軸受用気体が排気回収路20を流れやすくなり、軸受用気体をより安定して回収することができる。
【0077】
なお、軸受用気体としては、空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム、水素、酸素などの気体を採用することができる。
【0078】
今回開示された各実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明は、外部の真空発生機と接続することなく排出される気体を回収する機構を備えた静圧気体軸受スピンドルに特に有利に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1における静圧気体軸受スピンドルの構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1における図1のP部を拡大して示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施の形態2における静圧気体軸受スピンドルの排気リングの近傍を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施の形態3における静圧気体軸受スピンドルの排気リングの近傍を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施の形態4における静圧気体軸受スピンドルの排気リングの近傍を示す概略断面図である。
【図6】本発明の実施の形態5における静圧気体軸受スピンドルの排気リングの近傍を示す概略断面図である。
【図7】特許文献1のエアーシール機構を本発明の実施の形態1の静圧気体軸受スピンドルに適用した比較例の概略断面図である。
【符号の説明】
【0081】
1 回転軸、2 固定部、3 軸受スリーブ、4 ハウジング、5 軸受隙間、6 排気リング、7 排気通路、8 排気用円周溝、9 軸受用気体排出路、10 排気口、11 保持部、12 スラスト板、13 ハウジング給気路、14 スリーブ給気路、15 ノズル、16 ビルトインモータ、17 ステータ、18 ロータ、19 モータカバー、20 排気回収路、21 開口部、22 開口部、24 折れ曲がり部、25 テーパ形状、26 テーパ形状、27 環状溝、28 環状溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に形成された排気通路を有し、かつ前記排気通路が開口した外周面を有する円筒形状の回転軸と、
前記回転軸を支持するための軸受用気体が供給される軸受隙間をはさんで、前記回転軸の外周面を取り囲む固定部と、
前記回転軸の外周面のうち前記排気通路の開口した部分を覆うように前記回転軸に取り付けられた排気リングとを備え、
前記排気リングと前記回転軸の外周面との間には前記排気通路に通じる排気回収路が形成されており、
前記排気回収路は、前記軸受隙間の開口部と向かい合う位置に開口部を有している、静圧気体軸受スピンドル。
【請求項2】
前記回転軸の一方の端部に接続され、被回転物を保持するための保持部をさらに備え、
前記排気リングは前記保持部と一体形成された、請求項1に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項3】
前記排気回収路は、前記排気通路に通じるための折れ曲がり部を有し、前記折れ曲がり部を構成する前記排気リングの角部はラウンド形状を有している、請求項1または2に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項4】
前記排気リングは、前記回転軸の外周面と対向する内径面に前記排気回収路の前記開口部から前記軸受用気体の前記排気通路側に向かって直径が小さくなるテーパ形状を有している、請求項1または2に記載の静圧気体軸受スピンドル。
【請求項5】
前記回転軸は、前記排気回収路の前記開口部側から前記軸受用気体の前記排気通路側に向かって直径が小さくなるテーパ形状を有している、請求項1〜4のいずれかに記載の静圧気体軸受スピンドル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−138967(P2010−138967A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314519(P2008−314519)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】