説明

静電型の電気音響変換器、静電型スピーカ及び静電型マイクロフォン

【課題】形状や位置を変更することなく、静電型スピーカから出力される複数の音を合わせた状態で聴者に聴かせたり、分離した状態で聴者に聴かせたりすること。
【解決手段】静電型スピーカ1は、振動体10を挟んで対向する第1、第2及び第3の電極対を備える。第1の電極対を構成する電極20−1は、基部20−Aと、基部20−Aから第2の電極対に向かって突出する櫛歯部分20−Bを有し、第2の電極対を構成する電極20−2は基部20−Cと、基部20−Cから第1の電極対に向かって突出する櫛歯部分20−Dとを有する。そして、電極20−2には、無音を示す音声信号か、電極20−1または電極20−3のいずれか一方と同じ音声信号が入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電型の電気音響変換器、静電型スピーカ及び静電型マイクロフォンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された静電型スピーカシステムは、一対の静電型スピーカを備えており、向かって左側の静電型スピーカを左側音声の再生用とし、向かって右側の静電型スピーカを右側音声の再生用としてステレオ音声の再生ができる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−148893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、静電型スピーカは、指向性が強く、出力された音が空間内であまり拡がらないことが知られている。したがって、特許文献1に開示された平面スピーカシステムでは、左側の静電型スピーカから出力された音と、右側の静電型スピーカから出力された音とが、それぞれ分離した状態で聴者に聴こえる場合がある。
そこで、複数の静電型スピーカからそれぞれ出力される複数の音を聴者に聴かせる際に、これら複数の音が混合した状態と分離した状態とを切り替える仕組みが求められている。この切り替えは、構成を簡素にする観点から静電型スピーカの形状を変形させたり、位置を移動させたりせずに行われることが望まれている。
【0005】
また、この静電型スピーカの構成を、静電型マイクロフォンの構成として用いることも可能である。この場合、外部で発生した音波が振動板を振動させることで、音(音波)が音響信号(電気信号)へと変換されることになる。この静電型マイクロフォンでは、振動板の形状を変形させたり、位置を移動させたりせずに、1つの音響信号へ変換される音が収音される空間を拡げたり狭めたりすることが望まれている。
【0006】
本発明は、形状や位置を変更することなく、静電型スピーカから出力される複数の音を混合した状態で聴者に聴かせたり、分離した状態で聴者に聴かせたりする仕組みを提供することを目的とする。また、本発明は、形状や位置を変更することなく、静電型マイクロフォンが収音する領域を拡げたり狭めたりする仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明に係る静電型の電気音響変換器は、導電性を有する振動体と、前記振動体に対向する第1、第2及び第3の電極と、前記振動体と各々の前記電極とを離間させる絶縁性の離間部材と、前記第1、第2及び第3の電極にそれぞれ対応付けられた第1、第2及び第3の端子と、当該各電極との接続状態を切り替える切替手段とを備え、前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分とを有し、前記第3の電極は、前記第1の電極との間で前記第2の電極を挟む位置に配置され、前記第2の電極部分および前記第4の電極部分は、いずれか一方の電極部分から突出した形状の1つの部分が、他方の電極部分から突出した形状の2つの部分の間に挟まれるように配置され、前記切替手段は、前記第2の電極に、前記第1、第2及び第3の端子のいずれか1つ又は2つを選択して接続することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る静電型スピーカは、導電性を有する振動体と、前記振動体に対向する第1、第2及び第3の電極と、前記振動体と各々の前記電極とを離間させる絶縁性の離間部材と、前記第1の電極に対して、第1の音声信号に応じた電圧を印加し、前記第3の電極に対して、前記第1の音声信号と異なる第2の音声信号に応じた電圧を印加し、前記第2の電極に対して、前記第1の音声信号、前記第2の音声信号、および音量が所定の閾値未満の音を示す第3の音声信号のいずれかの音声信号を選択し、当該選択した音声信号に応じた電圧を印加する電圧印加手段とを備え、前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分とを有し、前記第3の電極は、前記第1の電極との間で前記第2の電極を挟む位置に配置され、前記第2の電極部分および前記第4の電極部分は、いずれか一方の電極部分から突出した形状の1つの部分が、他方の電極部分から突出した形状の2つの部分の間に挟まれるように配置されることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る静電型スピーカは、導電性を有する第1の振動体と、前記第1の振動体に対向する第1の電極と、前記第1の電極と前記第1の振動体とを離間させる絶縁性の第1の離間部材とを備える第1の静電放音部と、導電性を有する第2の振動体と、前記第2の振動体に対向する第2の電極と、前記第2の電極と前記第2の振動体とを離間させる絶縁性の第2の離間部材とを備える第2の静電放音部と、導電性を有する第3の振動体と、前記第3の振動体に対向する第3の電極と、前記第3の電極と前記第3の振動体とを離間させる絶縁性の第3の離間部材とを備える第3の静電放音部と、前記第1の電極に対して、第1の音声信号に応じた電圧を印加する第1の印加部と、前記第3の電極に対して、前記第1の音声信号と異なる第2の音声信号に応じた電圧を印加する第2の印加部と、前記第2の電極に対して、前記第1の音声信号、前記第2の音声信号、および音量が所定の閾値未満の音を示す音声信号のいずれかの音声信号を選択し、当該選択した音声信号に応じた電圧を印加する第3の印加部とを具備し、前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分とを有し、2つの前記第2の電極部分によって挟まれる位置に前記第4の電極部分が配置された状態または2つの前記第4の電極部分によって挟まれる位置に前記第2の電極部分が配置された状態となるようにして、前記第1の静電放音部及び前記第2の静電放音部が支持され、前記第3の静電放音部は、前記第1の静電放音部との間で前記第2の静電放音部を挟む位置に配置されることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記第1の電極部分からの距離が大きくなるほど、前記第2の電極部分の幅が徐々に小さくなり、前記第3の電極部分からの距離が大きくなるほど、前記第4の電極部分の幅が徐々に小さくなるとよい。
【0011】
また、本発明に係る静電型マイクロフォンは、導電性を有する振動体と、前記振動体に対向する第1、第2及び第3の電極と、前記振動体と各々の前記電極とを離間させる絶縁性の離間部材と、前記振動体の振動に応じて前記第1の電極において発生する第1の音声信号を出力する第1の出力部と、前記振動体の振動に応じて前記第2の電極において発生する、前記第1の音声信号と異なる第2の音声信号を出力する第2の出力部と、前記振動体の振動に応じて前記第3の電極において発生する、前記第1及び第2の音声信号と異なる第3の音声信号を出力する第3の出力部と、前記第1、第2及び第3の出力部のいずれか一つを選択し、前記第1の出力部を選択した場合には、前記第2音声信号を前記第1の音声信号と混合して前記第1の出力部に出力し、前記第2の出力部を選択した場合には、前記第2音声信号を前記第1及び第3の音声信号のいずれとも混合せずに前記第2の出力部に出力し、前記第3の出力部を選択した場合には、前記第2音声信号を前記第3の音声信号と混合して前記第3の出力部に出力する出力選択手段とを備え、前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分とを有し、前記第3の電極は、前記第1の電極との間で前記第2の電極を挟む位置に配置され、前記第2の電極部分および前記第4の電極部分は、いずれか一方の電極部分から突出した形状の1つの部分が、他方の電極部分から突出した形状の2つの部分の間に挟まれるように配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、形状や位置を変更することなく、静電型スピーカから出力される複数の音を合わせた状態で聴者に聴かせたり、分離した状態で聴者に聴かせたりすることができる。また、本発明によれば、形状や位置を変更することなく、静電型マイクロフォンが収音する領域を拡げたり狭めたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る静電型スピーカの外観を示した斜視図である。
【図2】同実施形態に係る静電型スピーカの分解斜視図である。
【図3】同実施形態に係る電極の形状を示す図である。
【図4】同実施形態に係る静電型スピーカの電気的構成を示した図である。
【図5】同実施形態に係るスイッチの制御を説明するための図である。
【図6】同実施形態に係る振動体の形状と、該振動体から発生した音圧を模式的に説明する図である。
【図7】同実施形態に係る静電型スピーカを広告媒体として用いた例を説明する図である。
【図8】本発明の変形例に係る振動体の形状と、該振動体から発生した音圧を説明する図である。
【図9】本発明の変形例に係る電極の形状を示す図である。
【図10】本発明の変形例に係る電極の形状を示す図である。
【図11】本発明の変形例に係る静電型スピーカ1fの外観を示した斜視図である。
【図12】本発明の変形例における静電型スピーカ1g、1hの外観を示す図である。
【図13】本発明の変形例に係る静電型マイクロフォン1Mの電気的構成を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[実施形態]
図1は、本発明の実施形態に係る静電型スピーカ1の外観を示した斜視図である。以下の図において、X,Y,Zは3軸の直交座標系の座標軸を意味している。互いに直交するX軸、Y軸はいずれも静電型スピーカ1の放音面と平行であり、Z軸が静電型スピーカ1の放音面に対して垂直である。静電型スピーカ1は、振動体10、電極20U−1,20U―2,20U−3、電極20L−1,20L−2,20U−3、スペーサ30U,30Lを備えている。なお、スペーサ30Uとスペーサ30Lの構成及び作用、電極20U−1と電極20L−1の構成及び作用、電極20L−2と電極20U―2の構成及び作用、及び電極20L−3と電極20U―3の構成及び作用は、夫々同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合は「L」および「U」の記載を省略する。また、静電型スピーカ1のサイズの一例を挙げると、Y軸方向の長さは例えば数m程度であり、X軸方向の長さは例えば数十cm程度であるが、以下の図において静電型スピーカ1を構成する各部の寸法は、各部の形状を容易に理解できるように実際の寸法とは異ならせてある。静電型スピーカ1の厚み(Z軸方向の長さ)は、実際には、図1に示したものよりも小さく、静電型スピーカ1は全体としてシート状の形状である。また、以下の図において、「○」の中に「・」が記載されたものは上記の座標軸の方向を示す矢印のうち、図面の裏から表に向かう矢印を意味するものとする。
【0015】
(静電型スピーカ1の各部の構成)
まず、静電型スピーカ1を構成する各部について説明する。図2は、静電型スピーカ1の分解斜視図である。振動体10は、例えば、PET(polyethylene terephthalate、ポリエチレンテレフタレート)またはPP(polypropylene、ポリプロピレン)などの透明
フィルムの表面に、導電性を有する金属の導電膜が形成されたものである。振動体10は、数μm程度の厚さで薄い膜状となっているため、外力を受けると自在に変形する。振動体10は、Z軸方向からみて矩形の形状となっている。
【0016】
スペーサ30は、絶縁性を有する材料で形成されており、Z軸正方向からみて矩形となる枠部材である。このスペーサ30は、振動体10と電極20とを離間させて、振動体10と電極20との間に空気層を形成するものであり、離間部材に相当する。スペーサ30のX軸方向の長さと、振動体10のX軸方向の長さは同じとなっている。同様に、スペーサ30のY軸方向の長さと、振動体10のY軸方向の長さは同じとなっている。また、スペーサ30Uとスペーサ30LのZ軸方向の長さは、いずれも同じとなっている。なお、スペーサ30の形状は、矩形に限られず、振動体10と電極20とを接触させない形状であれば、どのような形状であってもよい。
【0017】
電極20−1、電極20−2及び電極20−3は、所謂パンチングメタルであって、導電性を有する金属板の表面から裏面に貫通する複数の貫通孔が所定間隔で複数設けられたものである。なお、図面においては、この貫通孔の図示を省略している。図1,2に示すように、電極20−1、電極20−2及び電極20−3は、Z軸正方向からみて櫛歯状に形成されている。ここでいう櫛歯状とは、あたかも櫛の歯の形状ように、或る部材の1辺に或る間隔で複数の切り込みが入れられている状態をいう。具体的には、図2に示すように、電極20U−1は、基部20U−Aと、基部20U−Aから電極20U−2に向かって突出する櫛歯部分20U−B1〜B3とを有し、電極20U−2は、基部20U−Cと、基部20U−Cから電極20U−1に向かって突出する櫛歯部分20U−D1〜D3と、さらに基部20U−Cから電極20U−3に向かって突出する櫛歯部分20U−E1〜E3とを有している。そして、電極20U−3は、基部20U−Fと、基部20U−Fから電極20U−2に向かって突出する櫛歯部分20U−G1〜G3とを有している。
【0018】
また、電極20L−1は、基部20L−Aと、基部20L−Aから電極20L−2に向かって突出する櫛歯部分20L−B1〜B3とを有し、電極20L−2は、基部20L−Cと、基部20L−Cから電極20L−1に向かって突出する櫛歯部分20L−D1〜D3と、さらに基部20L−Cから電極20L−3に向かって突出する櫛歯部分20L−E1〜E3とを有している。そして、電極20L−3は、基部20L−Fと、基部20L−Fから電極20L−2に向かって突出する櫛歯部分20L−G1〜G3とを有している。なお、各電極対は上側の電極20Uと下側の電極20Lとは互いに同じパターンの形状を有する。つまり、突出する山の部分と、それ以外の谷の部分の形状のパターンが同相になっている。
【0019】
なお、基部20U−Aと基部20L−Aの構成及び作用、並びに櫛歯部分20U−B1〜B3と櫛歯部分20L−B1〜B3の構成及び作用は、夫々同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合は「L」および「U」の記載を省略する。また、基部20U−Cと基部20L−Cの構成及び作用、櫛歯部分20U−D1〜D3と櫛歯部分20L−D1〜D3の構成及び作用、並びに櫛歯部分20U−E1〜E3と櫛歯部分20L−E1〜E3の構成及び作用は、夫々同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合は「L」および「U」の記載を省略する。そして、基部20U−Fと基部20L−Fの構成及び作用、並びに櫛歯部分20U−G1〜G3と櫛歯部分20L−G1〜G3の構成及び作用は、夫々同じであるため、両者を区別する必要が特に無い場合は「L」および「U」の記載を省略する。
【0020】
また、基部20−Aは第1の電極部分に相当し、櫛歯部分20−B1〜B3は第2の電極部分に相当する。基部20−Cは第3の電極部分に相当し、櫛歯部分20−D1〜D3は第4の電極部分に相当し、櫛歯部分20−E1〜E3は第5の電極部分に相当する。基部20−Fは第6の電極部分に相当し、櫛歯部分20−G1〜G3は第7の電極部分に相当する。櫛歯部分20−B1〜B3、櫛歯部分20−D1〜D3、櫛歯部分20−E1〜E3及び櫛歯部分20−G1〜G3は、例えば、Z軸正方向からみて矩形の形状となっている。静電型スピーカ1のY軸方向の長さが例えば3m程度だとした場合、櫛歯部分20−B1〜B3、櫛歯部分20−D1〜D3、櫛歯部分20−E1〜E3及び櫛歯部分20−G1〜G3のY軸方向の長さは、例えば0.3m程度である。
【0021】
櫛歯部分20−B1と櫛歯部分20−B2との間のX軸方向の長さは、櫛歯部分20−D1のX軸方向の長さよりも長い。櫛歯部分20−B2と櫛歯部分20−B3との間のX軸方向の長さは、櫛歯部分20−D2のX軸方向の長さよりも長い。そして、櫛歯部分20−D2と櫛歯部分20−D3との間のX軸方向の長さは、櫛歯部分20−B3のX軸方向の長さよりも長い。櫛歯部分20−D2と櫛歯部分20−D1との間のX軸方向の長さは、櫛歯部分20−B2のX軸方向の長さよりも長い。静電型スピーカ1のX軸方向の長さが例えば60cm程度だとした場合、櫛歯部分20−B1〜B3及び櫛歯部分20−D1〜D3のX軸方向の長さは、例えば4〜4.5cm程度である。各櫛歯部分は上記のような関係にあるため、電極20−1及び電極20−2が図のように噛み合わせる(入り組ませる)ことが可能となっている。櫛歯部分20−B1〜B3及び櫛歯部分20−D1〜D3は噛みあった状態で離間しているため、電極20−1と電極20−2とは、互いに絶縁している。
【0022】
そして、櫛歯部分20−E1〜E3及び櫛歯部分20−G1〜G3のX軸方向の長さに関する関係は、櫛歯部分20−B1〜B3及び櫛歯部分20−D1〜D3のX軸方向の長さに関する上記の関係と同じである。そのため、電極20−2及び電極20−3が図のように噛み合わせる(入り組ませる)ことが可能となっている。櫛歯部分20−E1〜E3及び櫛歯部分20−G1〜G3は噛みあった状態で離間しているため、電極20−2と電極20−3とは、互いに絶縁している。なお、電極20−1と電極20−3とは、電極20−2を挟んで離間しているため、互いに絶縁している。
【0023】
(静電型スピーカ1の構造)
次に、静電型スピーカ1の構造について説明する。振動体10は、たるみが生じないように張力を掛けられた状態でスペーサ30Uとスペーサ30Lの枠の間に挟まれている。振動体10は、そのX軸方向の縁とY軸方向の縁からそれぞれ内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されてスペーサ30Uとスペーサ30Lに固着されている。振動体10の接着剤が塗布されていない部分は、スペーサ30Uとスペーサ30Lに固着されていない。
【0024】
電極20U−1及び電極20U−2は、櫛歯部分20U−B1〜B3と、櫛歯部分20U−D1〜D3とが交互に入り組んだ状態で、互いに接触しないように所定の間隔を開けた状態でスペーサ30Uに固着されている。電極20U−2及び電極20U−3は、櫛歯部分20U−E1〜E3と、櫛歯部分20U−G1〜G3とが交互に入り組んだ状態で、互いに接触しないように所定の間隔を開けた状態でスペーサ30Uに固着されている。また、電極20L−1、電極20L−2及び電極20L−3においても、電極20U−1、電極20U−2及び電極20U−3と同様にして、櫛歯部分20L−B1〜B3と、櫛歯部分20L−D1〜D3とが、また、櫛歯部分20L−E1〜E3と、櫛歯部分20L−G1〜G3とがそれぞれ交互に入り組んだ状態で、互いに接触しないように間隔を開けた状態でスペーサ30Lに固着される。
【0025】
この構成によれば、電極20U−1は振動体10を挟んで電極20L−1と対向し、電極20U−2は振動体10を挟んで電極20L−2と対向し、電極20U−3は振動体10を挟んで電極20L−3と対向する。つまり、電極20U−1及び電極20L−1は、振動体10を挟んで対向する第1電極対に相当し、電極20U−2及び電極20L−2は、振動体10を挟んで対向する第2電極対に相当し、電極20U−3及び電極20L−3は、振動体10を挟んで対向する第3電極対に相当する。電極20−1の櫛歯部分と、電極20−2の櫛歯部分とを交互に入り組んだように組み合わせ、且つ、電極20−2の櫛歯部分と、電極20−3の櫛歯部分とを交互に入り組んだように組み合わせた場合において、その全体をZ軸方向から見た形状は矩形となり、その大きさ(X軸方向、Y軸方向の長さ)は振動体10の大きさと同じである。
【0026】
図3は、電極20の形状を示す図である。図3に示すように電極20−1,20−2,20−3は、この順でY軸正方向に並んでいる。そして、電極20−1のうち、第1の電極部分である基部20−Aから第2の電極部分である櫛歯部分20−B1,20−B2,20−B3が電極20−2に向けて突出しており、電極20−2のうち、第3の電極部分である基部20−Cから第4の電極部分である櫛歯部分20−D1,20−D2,20−D3が電極20−1に向けて突出している。
【0027】
櫛歯部分20−B1,20−B2,20−B3は、この順でX軸正方向に間隔をあけて並んでおり、また、櫛歯部分20−D1,20−D2,20−D3も、この順でX軸正方向に間隔をあけて並んでいて、これらは互いに組み合っている。したがって、これらはX軸方向に櫛歯部分20−B1→20−D1→20−B2→20−D2→20−B3→20−D3の順で配列される。
【0028】
同様に、電極20−2のうち、第3の電極部分である基部20−Cから第5の電極部分である櫛歯部分20−E1,20−E2,20−E3が電極20−3に向けて突出しており、電極20−3のうち、第6の電極部分である基部20−Fから第7の電極部分である櫛歯部分20−G1,20−G2,20−G3が電極20−2に向けて突出している。
【0029】
櫛歯部分20−E1,20−E2,20−E3は、この順でX軸正方向に間隔をあけて並んでおり、また、櫛歯部分20−G1,20−G2,20−G3も、この順でX軸正方向に間隔をあけて並んでいて、これらは互いに組み合っている。したがって、これらはX軸方向に櫛歯部分20−E1→20−G1→20−E2→20−G2→20−E3→20−G3の順で配列される。
【0030】
図3における電極20−1の隅(図3における左下隅)の点をXYZ座標の原点Oとする。Y軸方向に沿った原点Oからの距離はY座標として表される。基部20−Aは、電極20−1の一部であり、上述した原点Oを含む。基部20−AのY軸方向の長さは、長さL1である。したがって、基部20−Aから基部20−Cに向けて突出する櫛歯部分20−B1〜B3の根本のY座標はY1=L1である。つまり、基部20−Aの端部のうち、原点Oと反対側の端部のY座標はY1=L1である。
【0031】
基部20−Aと基部20−Cとは、Y軸方向に長さL2だけ離れている。つまり、基部20−Cの端部のうち、Y軸方向に垂直な端部であって原点O側の端部のY座標はY2=(L1+L2)である。
櫛歯部分20−B1〜B3のY軸方向の長さは、長さL2未満である。したがって、基部20−Cと櫛歯部分20−B1〜B3とは接触しない。また、基部20−Cから基部20−Aに向けて突出する櫛歯部分20−D1〜D3のY軸方向の長さは、長さL2未満である。したがって、基部20−Aと櫛歯部分20−D1〜D3とは接触しない。
【0032】
基部20−CのY軸方向の長さは、長さL3である。したがって、基部20−Cから基部20−Fに向けて突出する櫛歯部分20−E1〜E3の根本のY座標はY3=(L1+L2+L3)である。つまり、基部20−Cの端部のうち、原点Oと反対側の端部のY座標はY3=(L1+L2+L3)である。
【0033】
基部20−Cと基部20−Fとは、Y軸方向に長さL4だけ離れている。つまり、基部20−Fの端部のうち、Y軸方向に垂直な端部であって原点O側の端部のY座標はY4=(L1+L2+L3+L4)である。
櫛歯部分20−E1〜E3のY軸方向の長さは、長さL4未満である。したがって、基部20−Fと櫛歯部分20−E1〜E3とは接触しない。また、基部20−Fから基部20−Cに向けて突出する櫛歯部分20−G1〜G3のY軸方向の長さは、長さL4未満である。したがって、基部20−Cと櫛歯部分20−G1〜G3とは接触しない。
【0034】
基部20−FのY軸方向の長さは、長さL5である。したがって、基部20−Fの端部のうち、Y軸方向に垂直な端部であって原点Oと反対側の端部のY座標はY5=(L1+L2+L3+L4+L5)である。なお、電極20−1,20−2,20−3のX軸方向の長さ(幅)は、長さLxである。
【0035】
(静電型スピーカ1の電気的構成)
次に、静電型スピーカ1の電気的構成について説明する。図4は、静電型スピーカ1の電気的構成を示した図である。図4に示したように、静電型スピーカ1は変圧器50−1,50−2,50−3と、それぞれ異なる音声信号が入力される入力部60−1,60−2,60−3と、振動体10に対して直流バイアスを与えるバイアス電源70とを備えている。ここで、「音声信号」とは人間や動物など生体の「声」に限られず、音・音波を表す信号であればよい。また、「音声信号」は可聴範囲内の音を示す信号でもよいし、超音波など可聴範囲外の音を示す信号であってもよい。
【0036】
バイアス電源70は、正極側が振動体10の導電膜に接続され、負極側が変圧器50−1,50−2,50−3の出力側の中点に接続されている。
変圧器50−1の出力側の一端は電極20U−1に接続され、他端は電極20U−1に対向している電極20L−1に接続されている。そして、変圧器50−1の入力側は入力部60−1に接続されており、入力部60−1に音声信号が入力されると音声信号に応じた電圧が電極20U−1と電極20L−1に印加される。この構成において、入力部60−1に入力された音声信号に応じた電圧が、振動体10を挟んで対向する電極20U−1及び電極20L−1に印加されることで、静電型スピーカ1は、プッシュプル型の静電型スピーカとして動作する。
【0037】
変圧器50−2の出力側の一端は電極20U−2に接続され、他端は電極20U−2に対向している電極20L−2に接続されている。そして、変圧器50−2の入力側は入力部60−2に接続されており、入力部60−2に音声信号が入力されると音声信号に応じた電圧が電極20U−2と電極20L−2に印加される。この構成において、入力部60−2に入力された音声信号に応じた電圧が、振動体10を挟んで対向する電極20U−2及び電極20L−2に印加されることで、静電型スピーカ1は、プッシュプル型の静電型スピーカとして動作する。
【0038】
変圧器50−3の出力側の一端は電極20U−3に接続され、他端は電極20U−3に対向している電極20L−3に接続されている。そして、変圧器50−3の入力側は入力部60−3に接続されており、入力部60−3に音声信号が入力されると音声信号に応じた電圧が電極20U−3と電極20L−3に印加される。この構成において、入力部60−3に入力された音声信号に応じた電圧が、振動体10を挟んで対向する電極20U−3及び電極20L−3に印加されることで、静電型スピーカ1は、プッシュプル型の静電型スピーカとして動作する。
【0039】
入力部60−1、入力部60−2および入力部60−3には、異なる音声信号である音声信号R、音声信号M及び音声信号Lがそれぞれ入力される。音声信号Rは、例えば、いわゆるバックグラウンドミュージックを表す音声信号である。音声信号Lは、音声信号Rと異なる音声信号であり、例えば、或る商品についての宣伝文句を話すナレータの声を表す音声信号である。音声信号Mは、音量が、予め決められた閾値未満の音を表す音声信号である。なお、音声信号Mは、無音を示す信号であってもよく、例えば、入力部60−2に音声信号の入力が無くてもよい。また、入力部60−2が変圧器50−2に伝える音声信号Mが、決められた閾値未満の音量の音を示す音声信号となるように、入力部60−2は、入力された音声信号を減衰する減衰手段を備えていてもよい。
【0040】
図4に示すように、入力側の回路には3つのスイッチSW1,SW2,SW3が備えられている。これら各スイッチは、端子間の接続状態を決めるものである。スイッチSW1は、入力部60−1に入力された音声信号Rを分岐して変圧器50−2へ伝えるためのスイッチである。スイッチSW2は、入力部60−2に入力された音声信号Mを変圧器50−2へ伝えるためのスイッチである。スイッチSW3は、入力部60−3に入力された音声信号Lを分岐して変圧器50−2へ伝えるためのスイッチである。
【0041】
図5は、スイッチの制御を説明するための図である。図5(a)に示すように、3つのスイッチSW1,SW2,SW3は制御部80によって制御される。制御部80は、各スイッチを図5(b)に示したケースI、ケースII、およびケースIIIのいずれか1つの状態になるように制御し、各ケースにおいては、1つのスイッチのみがONとなるように制御する。スイッチSW1,SW2,SW3と、制御部80とは、本発明における切替手段として機能する。また、スイッチSW1,SW2,SW3と、制御部80と、入力部60−1,60−2,60−3、および変圧器50−1,50−2,50−3は、本発明における電圧印加手段として機能する。
【0042】
図5(b)に示すように、スイッチSW1がONで、スイッチSW2およびスイッチSW3がOFFになっているケースIのとき、電極20−2には、入力部60−1に入力された音声信号Rに応じた電圧が印加される。
また、スイッチSW2がONで、スイッチSW1およびスイッチSW3がOFFになっているケースIIのとき、電極20−2には、入力部60−2に入力された音声信号Mに応じた電圧が印加される。
また、スイッチSW3がONで、スイッチSW1およびスイッチSW2がOFFになっているケースIIIのとき、電極20−2には、入力部60−3に入力された音声信号Lに応じた電圧が印加される。
【0043】
なお、上述したどのケースであっても、電極20−1には、入力部60−1に入力された音声信号Rに応じた電圧が印加され、電極20−3には、入力部60−3に入力された音声信号Lに応じた電圧が印加される。
【0044】
(静電型スピーカ1の動作)
次に、静電型スピーカ1の動作について説明する。以下、上述した各ケースについて(1)ケースII、(2)ケースI、(3)ケースIII、の3つの場合に分けて考える。
【0045】
(1)ケースII
各スイッチは図5(b)に示したケースIIの状態となっている。すなわち、電極20−1には、入力部60−1に入力された音声信号Rに応じた電圧が印加され、電極20−2には、入力部60−2に入力された音声信号Mに応じた電圧が印加され、電極20−3には、入力部60−3に入力された音声信号Lに応じた電圧が印加される。
【0046】
図6は、電極20と振動体10の形状と音圧を模式的に説明する図である。なお、図6(a)の破線は、電極20の櫛歯部分及び基部の形状を表している。図6(a)に示すように、振動体10の第1部分10−1の形状は、電極20−1の形状と同様にZ軸正方向からみて櫛歯状となっており、振動体10の第2部分10−2の形状は、電極20−2の形状と同様にZ軸正方向からみて櫛歯状となっている。ここにおいて、振動体10の第1部分10−1において、電極20U−1の櫛歯部分20U−B1〜B3と、電極20L−1の櫛歯部分20L−B1〜B3との間にある部分を第1櫛歯領域11−Bとし、残りの部分を第1基部領域11−Aとする。
【0047】
また、振動体10の第2部分10−2において、電極20U−2の櫛歯部分20U−D1〜D3と、電極20L−2の櫛歯部分20L−D1〜D3との間にある部分を第2櫛歯領域11−Dとし、電極20U−2の櫛歯部分20U−E1〜E3と、電極20L−2の櫛歯部分20L−E1〜E3との間にある部分を第3櫛歯領域11−Eとし、残りの部分を第2基部領域11−Cとする。
また、振動体10の第3部分10−3において、電極20U−3の櫛歯部分20U−G1〜G3と、電極20L−3の櫛歯部分20L−G1〜G3との間にある部分を第4櫛歯領域11−Gとし、残りの部分を第3基部領域11−Fとする。
【0048】
図6(b)において、横軸は、その位置のY座標(mm)を表し、縦軸は、その位置で振動体10から出力される音の音圧(dB)を表している。
まず、振動体10のうち、原点Oから座標Y1までの領域では、第1基部領域11−Aのみが存在しているから、音声信号Rに応じた音の音圧Rαのみを得ることができる。
次に、振動体10のうち、座標Y1から座標Y2までの領域では、第1櫛歯領域11−Bが存在しているから、音声信号Rに応じた音の音圧Rβを得ることができる。ここで、図6(a)に示したように、第1櫛歯領域11−Bの面積は第1基部領域11−Aよりも面積が狭いから、その面積にほぼ比例して音圧Rβは音圧Rαよりも小さくなる。また、この領域においては、第1櫛歯領域11−Bだけでなく、第2櫛歯領域11−Dも存在しているから、音声信号Mに応じた音の音圧Mβも得ることができる。したがって、振動体10の座標Y1から座標Y2までの領域においては、音声信号Mに応じた音の音圧Mβ及び音声信号Rに応じた音の音圧Rβを夫々得ることができる。
そして、振動体10の座標Y2から座標Y3までの領域では、第2基部領域11−Cのみが存在しているから、音声信号Mに応じた音の音圧Mαのみを得ることができる。ここで、図6(a)に示したように、第2基部領域11−Cの面積は第2櫛歯領域11−Dの面積よりも広いから、その面積にほぼ比例して音圧Mαは音圧Mβよりも大きくなる。
【0049】
振動体10のうち、座標Y3から座標Y4までの領域では、第3櫛歯領域11−Eが存在しているから、音声信号Mに応じた音の音圧Mβを得ることができる。ここで、図6(a)に示したように、第3櫛歯領域11−Eの面積は第3基部領域11−Cよりも面積が狭いから、その面積にほぼ比例して音圧Mβは音圧Mαよりも小さくなる。また、この位置においては、第3櫛歯領域11−Eだけでなく、第4櫛歯領域11−Gも存在しているから、音声信号Lに応じた音の音圧Lβも得ることができる。したがって、振動体10の座標Y3から座標Y4までの領域においては、音声信号Mに応じた音の音圧Mβ及び音声信号Lに応じた音の音圧Lβを夫々得ることができる。
【0050】
そして、振動体10の座標Y4から座標Y5までの領域では、第3基部領域11−Fのみが存在しているから、音声信号Lに応じた音の音圧Lαのみを得ることができる。ここで、図6(a)に示したように、第3基部領域11−Fの面積は第4櫛歯領域11−Gの面積よりも広いから、その面積にほぼ比例して音圧Lαは音圧Lβよりも大きくなる。
【0051】
このように、静電型スピーカ1は、座標Y1から座標Y2までの領域に居る人に対し、音声信号Rに応じた音及び音声信号Mに応じた音を聴かせることができる。その一方で、静電型スピーカ1は、原点Oの位置から座標Y1までの領域に居る人に対し、音声信号Rに応じた音を聴かせることができ、また、座標Y2から座標Y3までの領域に居る人に対し、音声信号Mに応じた音を聴かせることができる。
【0052】
同様に、静電型スピーカ1は、座標Y4から座標Y5までの領域に居る人に対し、音声信号Lに応じた音を聴かせることができる。
また、静電型スピーカ1は、座標Y3から座標Y4までの領域に居る人に対し、音声信号Lに応じた音及び音声信号Mに応じた音を聴かせることができる。
【0053】
静電型スピーカ1のこのような作用を利用して、静電型スピーカ1を、広告媒体として用いた場合の効果について説明する。図7は、広告媒体として用いた静電型スピーカ1の概略図である。図7に示したように、静電型スピーカ1は、その最外面を音響透過性及び絶縁性を有したカバー部材90で覆われている例を想定する。このカバー部材90の絶縁性により、意図しない放電の発生する可能性が下がる。カバー部材90の表面には、広告に関連する画像(広告画像91)が形成されている。そして、静電型スピーカ1は、X軸正方向を上にして壁に貼り付けられている。そして、バックグラウンドミュージックを表す音声信号Rが入力部60−1に入力され、広告画像91に応じた宣伝文句を表す音声信号Lが入力部60−3に入力される。このような状況において、聴者となる通行人が、振動体10の原点付近からY軸正方向に向かって歩行した場合を考える。
【0054】
ケースIIにおいて、無音を示す音声信号である音声信号Mが入力部60−2に入力される。ここで無音とは、音量が0である音にとどまらず、音量が予め決められた閾値未満の音である。即ち、上述した音圧Mαは、この予め決められた閾値未満となるように設定される。
【0055】
通行人は、振動体10の原点Oから座標Y1に至るまでは、静電型スピーカ1から発せられたバックグラウンドミュージック(音声信号R)の音を聴くこととなる。通行人は、その音に気付いて音の発生方向を見たときに、静電型スピーカ1を覆う広告画像91を視認することとなる。次に、通行人がY軸の正方向に歩行を続けて、振動体10の座標Y1から座標Y2までの領域に来ると、音声信号Mの音は無音であるため、原点Oから座標Y1までの領域で聴いていた音に比べて音量の小さくなったバックグラウンドミュージック(音声信号R)のみを聴くことになる。
【0056】
次に、通行人が歩行を続けて、振動体10の座標Y2から座標Y3までの領域に来ると、通行人が聴く音は無音になる。すなわち、ここで通行人はバックグラウンドミュージック(音声信号R)および宣伝文句(音声信号L)のいずれの音も聴かない。そして、通行人がさらに歩行を続けて、振動体10の座標Y3から座標Y4までの領域に来ると、通行人は、宣伝文句(音声信号L)を聴くこととなる。そして、座標Y4を超えると、振動体10のうち音声信号Mに従う領域が無くなるため、通行人はそれまでよりも音量が大きくなった宣伝文句(音声信号L)のみを聴く。この状態は、通行人が座標Y5に至るまで続く。従って、このケースIIの場合、通行人はバックグラウンドミュージック(音声信号R)と宣伝文句(音声信号L)とを別々の領域で聴き、両者が混ざった音を聴くことがない。
【0057】
(2)ケースI
各スイッチは図5(b)に示したケースIの状態となっている。すなわち、電極20−1には、入力部60−1に入力された音声信号Rに応じた電圧が印加され、電極20−2には、入力部60−2に入力された音声信号Rに応じた電圧が印加され、電極20−3には、入力部60−3に入力された音声信号Lに応じた電圧が印加される。
【0058】
通行人は、振動体10の原点Oから座標Y1に至るまでは、静電型スピーカ1から発せられたバックグラウンドミュージック(音声信号R)の音を聴くこととなる。通行人は、その音に気付いて音の発生方向を見たときに、静電型スピーカ1を覆う広告画像91を視認することとなる。次に、通行人がY軸の正方向に歩行を続けて、振動体10の座標Y1から座標Y2までの領域に来ると、音声信号Rの音に加えて変圧器50−2に伝えられた音声信号が示す音を聴くことになる。このとき、変圧器50−2に伝えられた音声信号は音声信号Rであるから、通行人はバックグラウンドミュージックの音を、引き続き聴くことになる。
【0059】
ここで、振動体10の座標Y1から座標Y2までの領域のうち、変圧器50−1により振動させられる部分は、通行人が振動体10の原点Oから座標Y1に至るまでに比べて、減少している。したがって、変圧器50−1に伝えられた音声信号Rによる音の音量は減少している。しかし、この減少した音量は、変圧器50−2に伝えられた音声信号Rによる音で補われるため、通行人は、この座標Y1から座標Y2までの領域においても、原点Oから座標Y1に至るまでの領域と変わらぬ音量でバックグラウンドミュージックの音を聴く。
【0060】
そして、通行人は振動体10の座標Y2を超えると、変圧器50−2に伝えられた音声信号Rによる音のみを聴く。座標Y2を超えると、変圧器50−1に伝えられた音声信号Rによる音は無くなるが、変圧器50−2に伝えられた音声信号Rによる音の音量が増加するため、通行人は、変わらぬ音量でバックグラウンドミュージックの音を聴く。この状態は、通行人が、原点OからY軸の正方向に歩行を続けて、座標Y3に来るまで続く。次に、通行人が歩行を続けて、振動体10の座標Y3から座標Y4までの領域に来ると、バックグラウンドミュージック(変圧器50−2に伝えられた音声信号R)の音に加えて宣伝文句(音声信号L)を聴くことになる。このとき、通行人は広告画像91の内容を見ながら、バックグランドミュージックに加えて、広告画像91に応じた宣伝文句を聴くこととなる。つまり、これは複数の音を混合した音を聴く状態であるから、この通行人がバックグラウンドミュージックによるにぎやかな雰囲気の中で、広告に対する興味を持つようになることを期待できる。
【0061】
そして、通行人がさらにY軸の正方向に歩行を続けると、振動体10の座標Y4から座標Y5までの領域において、バックグラウンドミュージックは聴こえなくなり、宣伝文句のみを、バックグランドミュージックと混合されていたそれよりも大きい音量で聴くことになる。このように、通行人はバックグラウンドミュージックによるにぎやかな雰囲気から一変して、広告の宣伝文句のみをより大きな音量で聴くことがきる状態、つまりその宣伝文句を注意深く聴き内容を理解しやすい状態に変化するので、広告の内容そのものに対する理解が深まることが期待できる。このように、静電型スピーカ1は、聴者との相対的な位置関係に応じて聴者に聴かせる音を変化させることで、広告に対する聴者の注意を喚起することができる。静電型スピーカの広告媒体としての訴求効果が高い。
【0062】
(3)ケースIII
各スイッチは図5(b)に示したケースIIIの状態となっている。すなわち、電極20−1には、入力部60−1に入力された音声信号Rに応じた電圧が印加され、電極20−2には、入力部60−2に入力された音声信号Lに応じた電圧が印加され、電極20−3には、入力部60−3に入力された音声信号Lに応じた電圧が印加される。
【0063】
通行人は、振動体10の原点Oから座標Y1に至るまでは、静電型スピーカ1から発せられたバックグラウンドミュージック(音声信号R)の音を聴くこととなる。通行人は、その音に気付いて音の発生方向を見たときに、静電型スピーカ1を覆う広告画像91を視認することとなる。次に、通行人がY軸の正方向に歩行を続けて、振動体10の座標Y1から座標Y2までの領域に来ると、音声信号Rの音に加えて変圧器50−2に伝えられた音声信号が示す音を聴くことになる。この場合、変圧器50−2に伝えられた音声信号は音声信号Rと異なり、宣伝文句を表す音声信号Lと同じ音声信号であるので、通行人は、バックグラウンドミュージック(音声信号R)の音に加えて宣伝文句(変圧器50−2に伝えられた音声信号L)を聴くことになる。通行人が歩行を続けて、振動体10の座標Y2に至ると、その後は音声信号Rの音を聴く領域から離れるため、通行人は、宣伝文句のみを、バックグランドミュージックと混合されていたそれよりも大きい音量で聴くこととなる。
【0064】
そして、通行人が歩行を続けて、振動体10の座標Y3から座標Y4までの領域に来ると、通行人は、変圧器50−2に伝えられた音声信号Lに加えて変圧器50−3に伝えられた音声信号Lを聴くこととなるが、これらが同じ宣伝文句であるため、通行人はこのことに気付かずに、この宣伝文句のみを、引き続き聴くこととなる。また、振動体10の座標Y3から座標Y4までの領域において、変圧器50−2に伝えられた音声信号Lによる音の音量は、振動体10の座標Y3から座標Y4までの領域にいたときよりも減少しているが、変圧器50−3に伝えられた音声信号Lによる音の音量によって補われるため、通行人は、変わらぬ音量で引き続き宣伝文句を聴く。
この場合であっても、(2)と同様に、通行人が歩行に伴って聴く音は、バックグラウンドミュージックのみから、バックグラウンドミュージックに宣伝文句が加えられた音に遷移し、さらに宣伝文句の音のみに遷移する。
【0065】
以上説明した(1)〜(3)の音場は、変圧器50−2に伝える音声信号を切り替える制御によって、相互に切り替えられる。つまり、変圧器50−2に伝える音声信号を、音声信号Rまたは音声信号Lのいずれか一方から他方へ切り替えることで、静電型スピーカ1は、バックグラウンドミュージックと宣伝文句という互いに異なる音が混ざって聴こえる位置を切り替えることができる。この位置を切り替えることができるということは、すなわち、互いに異なる音がそれぞれ単独で聴こえる領域の大きさを変えることができるということも意味する。
【0066】
また、変圧器50−2に伝える音声信号を、音声信号Rまたは音声信号Lから無音を示す音声信号Mへ切り替えることで、静電型スピーカ1は、バックグラウンドミュージックと宣伝文句とが混ざって聴こえる位置をなくして、無音の領域を設定することができる。無音の領域を設定すると、静電型スピーカ1は、図6に示した原点OからY軸正方向に向かうにつれて、まず音声信号Rによる音が、一定の音量で聴こえる領域があり、次にその音声信号Rによる音の音量が次第に下がる領域があり、無音の領域に至る。そして、さらにY軸正方向に進むと、音声信号Lによる音の音量が次第に上がる領域があり、その音声信号Lによる音が、一定の音量で聴こえる領域に至る。つまり、この静電型スピーカ1は、音声信号Rによる音および音声信号Lによる音を、それぞれ別々に提示するとともに、各音量に変化をつけることができる。そして、変圧器50−2に伝える音声信号を、無音を示す音声信号Mから音声信号Rまたは音声信号Lへ切り替えることで、静電型スピーカ1は、バックグラウンドミュージックと宣伝文句とが混ざって聴こえる位置を出現させることができる。
【0067】
従って、上述した静電型スピーカ1によれば、広告媒体の内容(例えば、複数の音声の内容と画像の内容など)やその広告の狙い、設置環境等に応じて、複数種類の音声の提示のしかたを、一つの静電型スピーカによって、複数の態様で実行できる。
【0068】
[変形例]
上述した実施形態の内容を以下のように変形してもよい。以下に示す各変形例は、必要に応じて組み合わせて実施されてもよい。
【0069】
(変形例1)
上述した実施形態においては、電極20−1,20−2,20−3は互いに接触しないように間隔を開けてスペーサ30に固定されているが、各電極間に絶縁体を配置して隣あう電極が互いに接触しないようにしてもよい。この構成によれば、静電型スピーカ1は、電極同士が接触しない上に、絶縁体を介して隣り合うように配置されているので短絡することがない。
【0070】
(変形例2)
上述した実施形態においては、電極20−1,20−2,20−3は導電性を有する金属で形成されているが、導電性を有する糸を織った布であってもよい。また、電極20−1,20−2,20−3と振動体10との間に設けられたスペーサ30は可撓性を有する材質で形成されてもよい。この場合、スペーサ30は、可撓性及び絶縁性を有し、振動体10と電極20とを離間させて、振動体10と電極20との間に空気層を形成するための離間部材である。スペーサ30は、Z軸方向からみて矩形の形状である。スペーサ30のX軸方向の長さと、振動体10のX軸方向の長さは同じであり、スペーサ30のY軸方向の長さと、振動体10のY軸方向の長さは同じである。この構成によれば、静電型スピーカ1aは、その形状を曲面状にしたり折り曲げたりするなど自在に変形させることができる。
【0071】
(変形例3)
上述した実施形態においては、電極20−1の櫛歯部分20−B1〜B3、電極20−2の櫛歯部分20−D1〜D3、電極20−2の櫛歯部分20−E1〜E3、および電極20−3の櫛歯部分20−G1〜G3は、Z軸正方向からみて矩形の形状となっていたが、矩形以外の形状であってもよい。図8は、この変形例における電極20と振動体10の形状と音圧を説明する図である。例えば、図8(a)に示すように、上述した電極20−1に代わる電極20−1bの櫛歯部分、上述した電極20−2に代わる電極20−2bの櫛歯部分、および上述した電極20−3に代わる電極20−3bの櫛歯部分が、Z軸正方向からみて三角形の形状であってもよい。なお、図8(a)において、波線を付した箇所については、夫々の構成要素のY軸方向の長さを省略したことを示している。
【0072】
この場合、電極20−1bの櫛歯部分は、基部から距離が大きくなるほど、その幅が徐々に小さくなり、電極20−2bの櫛歯部分は、基部から距離が大きくなるほど、その幅が徐々に小さくなる。ここでいう幅とは、突出方向に垂直な方向であって、振動体10の振動面に平行な方向の長さをいう。更にこの場合には、振動体10において、電極20U−1bの櫛歯部分と、電極20L−1bの櫛歯部分との間にある部分もZ軸正方向からみて三角形の形状となる。この部分を、第1櫛歯領域11−Bbとする。同様に、振動体10において、電極20U−2bの櫛歯部分と、電極20L−2bの櫛歯部分との間にある部分もZ軸正方向からみて三角形の形状となる。この部分を、第2櫛歯領域11−Dbとする。そして、振動体10において、第1櫛歯領域11−Bb及び第2櫛歯領域11−DbのY軸方向の長さをL2、それ以外の部分(第1基部領域11−Ab及び第2基部領域11−Cb)のY軸方向の長さをY軸正方向に向かって順にL1,L3とする。電極20U−1b,20L−1bには音声信号Rに応じた電圧が印加され、電極20U−2b,20L−2bには音声信号Mに応じた電圧が印加される。この場合において、振動体10から発生した音の音圧について図8(b)を用いて説明する。また、座標Y1〜Y5については、図3に示したものと同じである。
【0073】
図8(b)において、横軸は振動体10の原点O(ここでは図8(a)の右下隅)からのY軸正方向の位置(mm)を表し、縦軸はその位置で得ることができる音の音圧(デシベル)を表している。振動体10の原点Oから座標Y1までの領域では、音声信号Rに応じた一定の大きさの音の音圧Rαのみを得ることができる。また、振動体10の座標Y2から座標Y3までの領域では、音声信号Mに応じた音の音圧Mαのみを得ることができる。そして、振動体10の座標Y1から座標Y2までの領域においては、まず、第1櫛歯領域11−Bbが存在しているから、音声信号Rに応じた音の音圧を得ることができる。
【0074】
ここで、図8(a)に示したように、第1櫛歯領域11−Bbの面積は、振動体10の座標Y1からY軸正方向に向かうにつれて徐々に小さくなり、振動体10の座標Y2において0となる。したがって、第1櫛歯領域11−Bbの面積にほぼ比例する音声信号Rに応じた音の音圧は、振動体10の座標Y1において音圧Rαであるが、振動体10の座標Y1から座標Y2に向かうにつれて徐々に小さくなり、振動体10の座標Y2において音圧0となる。更に、振動体10の座標Y1から座標Y2においては、第1櫛歯領域11−Bbだけでなく、第2櫛歯領域11−Dbも存在しているから、音声信号Mに応じた音の音圧も得ることができる。ここで、図8(a)に示したように、第2櫛歯領域11−Dbの面積は、振動体10の座標Y2からY軸負方向に向かうにつれて徐々に小さくなり、振動体10の座標Y1において0となる。したがって、第2櫛歯領域11−Dbの面積にほぼ比例する音声信号Mに応じた音の音圧は、振動体10の座標Y2において音圧Mαであるが、振動体10の座標Y2から座標Y1に向かうにつれて徐々に小さくなり、振動体10の座標Y1においては音圧0となる。
【0075】
この静電型スピーカ1bは、振動体10の原点Oから座標Y1までの領域、座標Y2から座標Y3までの領域、および座標Y4から座標Y5までの領域では、音の音圧は一定の大きさである。一方、この静電型スピーカ1bは、電極20−1b,20−2bを備えているので、振動体10の座標Y1から座標Y2までの領域で、音声信号M及び音声信号Rに応じた音の音圧を徐々に変化させることができる。同様に、この静電型スピーカ1bは、電極20−2b,20−3bを備えているので、振動体10の座標Y3から座標Y4までの領域で、音声信号Mおよび音声信号Lに応じた音の音圧を徐々に変化させることができる。
【0076】
なお、本変形例においては、図8(a)に示すように、電極20−1b,20−2b,20−3bの櫛歯部分がZ軸正方向からみて三角形の形状であるものとしたが櫛歯部分の形状これに限られない。基部からの距離が大きくなるほど、櫛歯部分の幅が徐々に小さくなればよく、例えば、波形のように曲線の構造を有していてもよい。
【0077】
(変形例4)
上述した実施形態においては、電極20−1の櫛歯部分20−B1〜B3、電極20−2の櫛歯部分20−D1〜D3、電極20−2の櫛歯部分20−E1〜E3、および電極20−3の櫛歯部分20−G1〜G3における複数の切り込み部分または突出する部分は、Y軸方向の長さが夫々同じとなっていたが、Y軸方向の長さが夫々異なっていてもよい。例えば、図9に示すように、上述した電極20−1に代わる電極20−1cの櫛歯部分20−Bcの3つの切り込み、及び上述した電極20−2に代わる電極20−2cの櫛歯部分20−Dcの3つの切り込みのY軸方向のそれぞれの長さが、X軸正方向に向かうにつれて次第に短くなるようにしてもよい。なお、図9では、電極20−1に代わる電極20−1cと、電極20−2に代わる電極20−2cとの間で組み合わさる櫛歯部分について説明するが、電極20−2と電極20−3との間で組み合わさる櫛歯部分についても同様である。
【0078】
この電極20−1c,20−2cを備えた静電型スピーカ1cは、電極20−1c,20−2cのX軸正方向が上方向となるように壁などに貼り付けられることにより、聴者の耳の高さに応じて異なる音を発生させることができる。これは、例えば背の低い子供に対しては、音声信号M及び音声信号Rをミキシングした状態を長期間維持したい一方、背の高い大人に対しては、音声信号M及び音声信号Rをミキシングした状態を短期間維持するだけでよいといった利用シーンに適している。
【0079】
(変形例5)
上述した実施形態においては、電極20−1の櫛歯部分20−B1〜B3と、電極20−2の櫛歯部分20−D1〜D3とは、入り組んだ状態で互いに接触しないように間隔を開けてスペーサ30に固着されていた。また、電極20−2の櫛歯部分20−E1〜E3と、電極20−3の櫛歯部分20−G1〜G3とは、入り組んだ状態で互いに接触しないように間隔を開けてスペーサ30に固着されていた。しかしながら、電極20−1の櫛歯部分の数、電極20−2の櫛歯部分の数及び電極20−3の櫛歯部分の数はこれに限られない。例えば、図10(a)に示すように、上述した電極20−1に代わる電極20−1dは、基部20−Ad(第1の電極部分)と、基部20−Adから電極20−2dに向かって突出する櫛歯部分20−Bd(第2の電極部分)を有し、さらに、上述した電極20−2に代わる電極20−2dは、基部20−Cd(第3の電極部分)と、基部20−Cdから電極20−1dに向かって突出する櫛歯部分20−Dd(第4の電極部分)を有していればよい。そして、更に、振動体10から見て同じ側にある電極群のうち、2つの櫛歯部分20−Bdによって挟まれる位置に、櫛歯部分20−Ddが配置されていればよい。
【0080】
つまり、隣接する電極20−1dと電極20−2dとは、いずれか一方から突出する2つの櫛歯部分によって他方から突出する櫛歯部分を挟む配置になっていればよい。この場合、図10(a)に示したように、一方の電極から突出する2つの櫛歯部分によって挟まれる他方の電極の櫛歯部分は1枚であってもよい。なお、電極20−1に代わる電極20−1dと、電極20−2に代わる電極20−2dとの間で組み合わさる櫛歯部分について説明したが、電極20−2と電極20−3との間で組み合わさる櫛歯部分についても同様である。
【0081】
更に、電極20−1の櫛歯部分及び電極20−2の櫛歯部分の間隔は均一でなくてもよい。例えば、図10(b)に示すように、上述した電極20−1に代わる電極20−1eは、基部20−Aeと、基部20−Aeから電極20−2eに向かって突出する櫛歯部分20−B1e,20−B2eを有し、さらに、上述した電極20−2に代わる電極20−2eは、基部20−Ceと、基部20−Ceから電極20−1eに向かって突出する櫛歯部分20−D1e,20−D2eを有している。櫛歯部分20−B1e,20−B2e及び櫛歯部分20−D1e,20−D2eは、Z軸正方向からみて矩形の形状となっており、夫々のX軸方向及びY軸方向の長さが同じである。櫛歯部分20−B1eと櫛歯部分20−D1eのX軸方向の間隔は、櫛歯部分20−B2eと櫛歯部分20−D2eのX軸方向の間隔と同じであり、櫛歯部分20−B1eと櫛歯部分20−D2eのX軸方向の間隔よりも短い。櫛歯部分20−B1eと櫛歯部分20−D2eの間のように、電極20U−1eと電極20L−1e、電極20U−2eと電極20L−2eに挟まれていない振動体10の部分(以降、空隙部分13という)は、振動して音を発生することがない。このように構成された電極20−1e及び電極20−2eを備えた静電型スピーカ1eは、空隙部分13を設けることで、出力する音の音圧を調整することができる。これは、例えば空隙部分13に対向する位置に居る人に対しては音を聴かせない状態にしたい一方、空隙部分13に対向する位置以外に居る人に対しては音を聴かせる状態にしたいといった利用シーンに適している。なお、電極20−1に代わる電極20−1eと、電極20−2に代わる電極20−2eとの間で組み合わさる櫛歯部分について説明したが、電極20−2と電極20−3との間で組み合わさる櫛歯部分についても同様である。また、隣接する2つの電極20から突出する櫛歯部分は、それぞれ1枚ずつであってもよい。この場合であっても、例えば、一方の電極20から突出する櫛歯部分の根元から先端までは、他方の電極20から突出する櫛歯部分の先端から根元までに沿っており、この境界線上において各電極20に由来する音は混合するからである。
【0082】
(変形例6)
上述した実施形態においては、1つの振動体10を挟むように電極20−1,20−2,20−3が配置されていたが、電極20−1,20−2,20−3のそれぞれに挟まれる振動体が互いに分離していてもよい。図11は、この変形例に係る静電型スピーカ1fの外観を示した斜視図である。図11に示すように、静電型スピーカ1fは、第1の静電放音部に相当する放音部40−1と、第2の静電放音部に相当する放音部40−2と、第3の静電放音部に相当する放音部40−3とを備えている。これら放音部40−1、放音部40−2及び放音部40−3はそれぞれが単体で機能し得る静電型スピーカとして構成されている。即ち、各放音部は、それぞれ振動体と電極とを対として、互いに分離、独立して構成される。
【0083】
まず、静電型スピーカ1fの各部の構成について説明する。振動体10−1f,10−2f,10−3fは、例えば、PETまたはPPなどの透明フィルムの表面に、導電性を有する金属の導電膜を形成したものである。振動体10−1f,10−2f,10−3fの厚さは、数μm程度の厚さで薄い膜状となっているため、外力を受けると自在に変形する。振動体10−1fはZ軸方向からみて電極20−1の形状と同じであり、振動体10−2fはZ軸方向からみて電極20−2の形状と同じであり、振動体10−3fはZ軸方向からみて電極20−3の形状と同じである。スペーサ30U−1f,30L−1f,30U−2f,30L−2f,30U−3f,30L−3fは、絶縁性及び音響透過性を有する素材で形成されていれば、スポンジ状、シート状、不織布など様々な形態をとることができる。スペーサ30U−1f,30L−1fはZ軸方向からみて電極20−1の形状と同じであり、スペーサ30U−2f,30L−2fはZ軸方向からみて電極20−2の形状と同じであり、スペーサ30U−3f,30L−3fはZ軸方向からみて電極20−3の形状と同じである。
【0084】
次に、静電型スピーカ1fの構造について説明する。振動体10−1fは、スペーサ30U−1fとスペーサ30L−1fの間に配置されている。振動体10−1fは、X軸方向の縁とY軸方向の縁からそれぞれ内側へ数mmの幅で接着剤が塗布されてスペーサ30U−1fとスペーサ30L−1fに固着されている。振動体10−1fの接着剤が塗布されていない部分は、スペーサ30U−1fとスペーサ30L−1fに固着されていない。電極20U−1は、振動体10−1fを挟んで電極20L−1と対向した状態でスペーサ30U−1fに固着されており、電極20L−1は、振動体10−1fを挟んで電極20U−1と対向した状態でスペーサ30L−1fに固着されている。電極20−1は、基部20−Aと、基部20−Aから突出する複数の櫛歯部分20−B1〜B3を有している。また、電極20U−2は、振動体10−2fを挟んで電極20L−2と対向した状態でスペーサ30U−2fに固着されており、電極20L−2は、振動体10−2fを挟んで電極20U−2と対向した状態でスペーサ30L−2fに固着されている。電極20−2は、基部20−Cと、基部20−Cから突出する1以上の櫛歯部分20−D1〜D3を有している。
【0085】
このように構成された静電型スピーカ1fは、櫛歯部分20−B1〜B3が電極20−2に向かって突出し、櫛歯部分20−D1〜D3が電極20−1に向かって突出し、2つの櫛歯部分20−Bによって挟まれる位置に櫛歯部分20−Dが配置された状態で、放音部40−1及び放音部40−2を支持することが可能となる。なお、電極20−1に代わる電極20−1fと、電極20−2に代わる電極20−2fとの間で組み合わさる櫛歯部分について説明したが、電極20−2と電極20−3との間で組み合わさる櫛歯部分についても同様である。つまり、静電型スピーカ1fは、櫛歯部分20−E1〜E3が電極20−3に向かって突出し、櫛歯部分20−G1〜G3が電極20−2に向かって突出し、2つの櫛歯部分20−Eによって挟まれる位置に櫛歯部分20−Gが配置された状態で、放音部40−2及び放音部40−3を支持することが可能となる。
【0086】
(変形例7)
上述した実施形態において、電極20−2は、電極20−1へ突出する第4の櫛歯部分である櫛歯部分20−D1〜D3を有するとともに、電極20−3へ突出する第5の櫛歯部分である櫛歯部分20−E1〜E3を有していたが、電極20−2が有する櫛歯部分は上記のいずれか一方だけであってもよい。図12は、この変形例における静電型スピーカ1g、1hの外観を示す図である。図12に示すように、電極20−2は、電極20−1に向けて突出する櫛歯部分20−D1g,20−D2g,20−D3gを有する。これらは、電極20−1から電極20−2へ向けて突出する櫛歯部分20−B1g,20−B2g,20−B3gと噛みあった状態で配置される。
【0087】
一方、電極20−2のうち、電極20−3側にはX軸に並行な切片Eg1があり、突出する部位を有していない。そして、電極20−1には、音声信号Rに応じた電圧が印加され、電極20−3には、音声信号Lに応じた電圧が印加される。この構成であっても、上述したスイッチを制御することにより図5(b)におけるケースIの状態にして電極20−2に印加する電圧を、電極20−1に印加する電圧と同じにするのであれば、切片Eg1を境にして音声信号Rと音声信号Lとが分離して聴こえるため、聴者は音声信号Rが示す音と音声信号Lが示す音とを別々に聴き、両者が混ざった音を聴くことがない。
また、上述したスイッチを制御することにより図5(b)におけるケースIIIの状態にして電極20−2に印加する電圧を、電極20−3に印加する電圧と同じにするのであれば、噛みあった櫛歯部分を境にして音声信号Rと音声信号Lとが混合して聴こえるため、聴者は音声信号Rが示す音と音声信号Lが示す音とが混ざった音を聴く。
そして、上述したスイッチを制御することにより図5(b)におけるケースIIの状態にして、無音を示す音声信号Mに応じた電圧を電極20−2に印加するのであれば、音声信号Rと音声信号Lとがそれぞれ独立して聴こえる領域の間に、音の聴こえない領域が生じる。
なお、実施形態における、第4の櫛歯部分と第5の櫛歯部分を備えた静電型スピーカの構成は、以下のように表される。
【0088】
導電性を有する振動体と、
前記振動体に対向する第1、第2及び第3の電極と、
前記振動体と各々の前記電極とを離間させる絶縁性の離間部材と、
前記第1の電極に対して、第1の音声信号に応じた電圧を印加し、前記第3の電極に対して、前記第1の音声信号と異なる第2の音声信号に応じた電圧を印加し、前記第2の電極に対して、前記第1の音声信号、前記第2の音声信号、および音量が所定の閾値未満の音を示す第3の音声信号のいずれかに応じた電圧を選択して印加する電圧印加手段とを備え、
前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、
前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第3の電極に向かって突出する形状の第5の電極部分とを有し、
前記第3の電極は、前記第1の電極との間で前記第2の電極を挟む位置に配置され、かつ、第6の電極部分と、当該第6の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第7の電極部分とを有し、
前記第2の電極部分および前記第4の電極部分は、いずれか一方の電極部分から突出した形状の1つの部分が、他方の電極部分から突出した形状の2つの部分の間に挟まれるように配置され、
前記第5の電極部分および前記第7の電極部分は、いずれか一方の電極部分から突出した形状の1つの部分が、他方の電極部分から突出した形状の2つの部分の間に挟まれるように配置される
ことを特徴とする静電型スピーカ。
【0089】
また、上述した実施形態において、電極20−2と、電極20−1又は電極20−3とはY軸方向のみに並んでいたが、電極20の並ぶ方向は1方向に限られない。例えば、X軸方向およびY軸方向の2方向に格子状に並んでいてもよい。この場合であっても、X軸方向に電極20が3つ並び、これら3つのうち中間に配置された電極が、両端の電極のいずれか一方と同じ電圧か、無音を示す音声信号Mに応じた電圧を印加されるようになっていればよい。また、電極20の並ぶ方向は直線に限られない。例えば、電極20の並ぶ方向は、扇形や渦巻き形であってもよい。
【0090】
また、上述した実施形態において、並べられる電極20の数は3つであったが、4つ以上であってもよい。この場合、並べられる4つ以上の電極20のうち、隣り合う3つの電極20が、上述した電極20−1,20−2,20−3、すなわち、第1、第2及び第3の電極を構成していればよい。
【0091】
(変形例8)
上述した実施形態では、静電型スピーカ1は、振動体10を一対の電極で挟むプッシュプルの構成となっているが、静電型スピーカ1の構成は、この構成に限定されるものではない。例えば、一つのスペーサ30を一対の互いに対向する導電膜で挟み、導電膜の一方を電極とし、他方の導電膜を振動体とするシングル型の構成であってもよい。
【0092】
(変形例9)
上述した実施形態において、入力部60−2に入力される音声信号Mは、音量が予め決められた閾値未満の音を表す音声信号であったが、入力部60−1に入力される音声信号Rおよび入力部60−3に入力される音声信号Lを混合した音声信号であってもよい。また、制御部80は、音声信号Mとして、上述の混合された音声信号と、無音を示す音声信号のいずれか一方を選択するようにしてもよい。この場合、音声信号Rと音声信号Lとは、それぞれ決められた割合で混合されてもよい。例えば、音圧が(Lα+Rβ)となるように音声信号Rと音声信号Lの各音圧をそれぞれ所定の係数(α、β)で調整した上で混合し、混合されたこの音声信号を音声信号Mとしてもよい。
【0093】
すなわち、図4および図5に示した制御部80と、入力部60−1,60−2,60−3、および変圧器50−1,50−2,50−3を含んで構成される電圧印加手段が、電極20−1(第1の電極)に対して、音声信号R(第1の音声信号)に応じた電圧を印加し、電極20−3(第3の電極)に対して、音声信号Rと異なる音声信号L(第2の音声信号)に応じた電圧を印加し、電極20−3(第2の電極)に対して、音声信号R、音声信号L、音量が所定の閾値未満の音を示す第3の音声信号、および音声信号Rと音声信号Lとを決められた割合で合成した第4の音声信号のいずれかに応じた電圧を選択して印加すればよい。
【0094】
この構成によれば、図6に示したケースIIの状態で、座標Y1から座標Y4までの領域で音声信号Lと音声信号Rとを混合した音声信号Mに応じた音を聴者に聴かせることができる。
【0095】
(変形例10)
上述した実施形態および変形例は、入力された音声信号に基づいて放音する静電型スピーカ1について記載していたが、この静電型スピーカ1の構成を静電型マイクロフォンなどの収音装置に用いてもよい。つまり、電気信号を音(音波)に変換する静電型スピーカを、音(音波)を電気信号に変換する静電型マイクロフォンに適用すればよい。この静電型スピーカと静電型マイクロフォンとは、いずれも静電型の電気音響変換器として観念される。
【0096】
図13は、この変形例に係る静電型マイクロフォン1Mの電気的構成を示した図である。図13に示す構成では、入力部60−1,60−2,60−3に代えて、出力部61−1,61−2,61−3(以下、特に区別の必要がない場合は、これらを総称して「出力部61」と記す)が備えられている。この場合、周囲の音によって振動体10が振動し、この振動が電極20−1,20−2,20−3との間で電気信号に変換される。制御部80は図13に示す3つのスイッチSW1,SW2,SW3を制御する。制御部80がスイッチSW2のみをONにし、他のスイッチをOFFにすると、回路は図5(b)に示したケースIIの状態となる。そして、電極20−1,20−2,20−3において発生する電気信号は、変圧器50−1,50−2,50−3にそれぞれ個別に伝えられ、これに応じた電気信号が出力部61−1,61−2,61−3からそれぞれ出力される。したがって、振動体10のうち、各電極20に入射する音波は、それぞれ別々の電気信号に変換されて出力される。
【0097】
一方、制御部80がスイッチSW1のみをONにし、他のスイッチをOFFにすると、回路は図5(b)に示したケースIの状態となる。このとき、電極20−1,20−2において発生する電気信号は変圧器50−1,50−2にそれぞれ個別に伝えられた後に混合されて出力部61−1,61−2からそれぞれ出力される。そして、電極20−3において発生する電気信号は変圧器50−3に伝えられて出力部61−3から出力される。したがって、振動体10のうち、電極20−3の正面方向の音は、電極20−1,20−2の正面方向の音と混合されずに出力されるが、電極20−1の正面方向の音と、電極20−2の正面方向の音とは、互いに混合されて出力される。
【0098】
同様に、制御部80がスイッチSW3のみをONにし、他のスイッチをOFFにすると、回路は図5(b)に示したケースIIIの状態となる。その結果、振動体10のうち、電極20−1の正面方向の音は、電極20−2,20−3の正面方向の音と混合されずに出力されるが、電極20−2の正面方向の音と、電極20−3の正面方向の音とは、互いに混合されて出力される。
【0099】
この変形例において、上述したスイッチSW1,SW2,SW3と、制御部80とは、本発明における出力選択手段として機能する。
なお、変圧器50−1,50−2,50−3のインピーダンスが低いような場合には、出力部61−1,61−2,61−3により出力される電気信号をそれぞれ増幅器で増幅してもよい。
【0100】
すなわち、この変形例の構成によれば、振動体10によって収音する領域の大きさを調節することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…静電型スピーカ(静電型の電気音響変換器)、10…振動体、20…電極、20−A,20−C,20−F…基部、20−B,20−D,20−E,20−G…櫛歯部分、30…スペーサ、40−1,40−2,40−3…放音部、50−1,50−2,50−3…変圧器、60−1,60−2,60−3…入力部、70…バイアス電源、80…制御部、90…カバー部材、91…広告画像、1M…静電型マイクロフォン(静電型の電気音響変換器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する振動体と、
前記振動体に対向する第1、第2及び第3の電極と、
前記振動体と各々の前記電極とを離間させる絶縁性の離間部材と、
前記第1、第2及び第3の電極にそれぞれ対応付けられた第1、第2及び第3の端子と、当該各電極との接続状態を切り替える切替手段とを備え、
前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、
前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分とを有し、
前記第3の電極は、前記第1の電極との間で前記第2の電極を挟む位置に配置され、
前記第2の電極部分および前記第4の電極部分は、いずれか一方の電極部分から突出した形状の1つの部分が、他方の電極部分から突出した形状の2つの部分の間に挟まれるように配置され、
前記切替手段は、前記第2の電極に、前記第1、第2及び第3の端子のいずれか1つ又は2つを選択して接続する
ことを特徴とする静電型の電気音響変換器。
【請求項2】
導電性を有する振動体と、
前記振動体に対向する第1、第2及び第3の電極と、
前記振動体と各々の前記電極とを離間させる絶縁性の離間部材と、
前記第1の電極に対して、第1の音声信号に応じた電圧を印加し、前記第3の電極に対して、前記第1の音声信号と異なる第2の音声信号に応じた電圧を印加し、前記第2の電極に対して、前記第1の音声信号、前記第2の音声信号、および音量が所定の閾値未満の音を示す第3の音声信号のいずれかの音声信号を選択し、当該選択した音声信号に応じた電圧を印加する電圧印加手段とを備え、
前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、
前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分とを有し、
前記第3の電極は、前記第1の電極との間で前記第2の電極を挟む位置に配置され、
前記第2の電極部分および前記第4の電極部分は、いずれか一方の電極部分から突出した形状の1つの部分が、他方の電極部分から突出した形状の2つの部分の間に挟まれるように配置されることを特徴とする静電型スピーカ。
【請求項3】
導電性を有する第1の振動体と、前記第1の振動体に対向する第1の電極と、前記第1の電極と前記第1の振動体とを離間させる絶縁性の第1の離間部材とを備える第1の静電放音部と、
導電性を有する第2の振動体と、前記第2の振動体に対向する第2の電極と、前記第2の電極と前記第2の振動体とを離間させる絶縁性の第2の離間部材とを備える第2の静電放音部と、
導電性を有する第3の振動体と、前記第3の振動体に対向する第3の電極と、前記第3の電極と前記第3の振動体とを離間させる絶縁性の第3の離間部材とを備える第3の静電放音部と、
前記第1の電極に対して、第1の音声信号に応じた電圧を印加する第1の印加部と、
前記第3の電極に対して、前記第1の音声信号と異なる第2の音声信号に応じた電圧を印加する第2の印加部と、
前記第2の電極に対して、前記第1の音声信号、前記第2の音声信号、および音量が所定の閾値未満の音を示す音声信号のいずれかの音声信号を選択し、当該選択した音声信号に応じた電圧を印加する第3の印加部と
を具備し、
前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、
前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分とを有し、
2つの前記第2の電極部分によって挟まれる位置に前記第4の電極部分が配置された状態または2つの前記第4の電極部分によって挟まれる位置に前記第2の電極部分が配置された状態となるようにして、前記第1の静電放音部及び前記第2の静電放音部が支持され、
前記第3の静電放音部は、前記第1の静電放音部との間で前記第2の静電放音部を挟む位置に配置される
ことを特徴とする静電型スピーカ。
【請求項4】
前記第1の電極部分からの距離が大きくなるほど、前記第2の電極部分の幅が徐々に小さくなり、
前記第3の電極部分からの距離が大きくなるほど、前記第4の電極部分の幅が徐々に小さくなる
ことを特徴とする請求項2または3記載の静電型スピーカ。
【請求項5】
導電性を有する振動体と、
前記振動体に対向する第1、第2及び第3の電極と、
前記振動体と各々の前記電極とを離間させる絶縁性の離間部材と、
前記振動体の振動に応じて前記第1の電極において発生する第1の音声信号を出力する第1の出力部と、
前記振動体の振動に応じて前記第2の電極において発生する、前記第1の音声信号と異なる第2の音声信号を出力する第2の出力部と、
前記振動体の振動に応じて前記第3の電極において発生する、前記第1及び第2の音声信号と異なる第3の音声信号を出力する第3の出力部と、
前記第1、第2及び第3の出力部のいずれか一つを選択し、前記第1の出力部を選択した場合には、前記第2音声信号を前記第1の音声信号と混合して前記第1の出力部に出力し、前記第2の出力部を選択した場合には、前記第2音声信号を前記第1及び第3の音声信号のいずれとも混合せずに前記第2の出力部に出力し、前記第3の出力部を選択した場合には、前記第2音声信号を前記第3の音声信号と混合して前記第3の出力部に出力する出力選択手段とを備え、
前記第1の電極は、第1の電極部分と、当該第1の電極部分から前記第2の電極に向かって突出する形状の第2の電極部分とを有し、
前記第2の電極は、第3の電極部分と、当該第3の電極部分から前記第1の電極に向かって突出する形状の第4の電極部分とを有し、
前記第3の電極は、前記第1の電極との間で前記第2の電極を挟む位置に配置され、
前記第2の電極部分および前記第4の電極部分は、いずれか一方の電極部分から突出した形状の1つの部分が、他方の電極部分から突出した形状の2つの部分の間に挟まれるように配置されることを特徴とする静電型マイクロフォン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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