説明

静電塗装装置および静電塗装方法

【課題】高電圧発生装置により印加する電圧を従来と同等に抑えつつ、塗着効率の向上を図るとともに、塗装速度の高速化を実現することができる静電塗装装置および当該静電塗装装置による静電塗装方法を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1は、被塗物であるワーク2に対して塗料を噴霧する塗装ガン4と、該塗装ガン4(または塗装ガン4に付設される電極であってもよい)に高電圧を印加する高電圧発生装置5と、該高電圧発生装置5により印加する高電圧を制御する制御装置6と、を備えるものであって、制御装置6は、静電塗装に適した印加電圧である第一の電圧Vと、該第一の電圧Vに比して低い印加電圧である第二の電圧Vが設定されるとともに、各電圧V・Vを、所定のパルス幅t、パルス間隔t、振幅ΔVでパルス状に切り換え可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電塗装装置および当該静電塗装装置による静電塗装方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗着効率の優れた塗装方法として、塗装機に高電圧を印加して、塗装機と被塗物との間に静電界を形成しつつ塗装を行う静電塗装の技術が知られており、自動車の車体や家電製品の筐体部等の塗装に広く採用されるに至っている。
尚、ここでいう「塗着効率」とは、噴霧した塗料量に対する被塗物に塗着した塗料量の比を示す値である。
【0003】
静電塗装における塗着効率の向上を図るためには、塗装機に印加する電圧をさらに高電圧化することが有効であるが、塗装機に印加する電圧を高電圧化すると、スパーク放電が生じる可能性が高まることが知られていた。そして、スパーク放電が生じると、塗装品質が悪化するという問題があった。
【0004】
そこで、塗着効率のさらなる向上を図りつつ、塗装品質を確保するために、塗装機に印加する電圧をさらに高電圧化してもスパーク放電を生じさせない技術が検討されており、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
【0005】
特許文献1に開示された従来技術では、塗布機(塗装機)およびワークの間に高電圧を印加して、両者の電位差により静電界を形成し、塗装機から噴霧された塗料粒子をワークと反対極に帯電させて静電塗装する静電塗装装置であって、パルス発生回路で発生させた高電圧パルスを塗装機およびワークの間に印加する高電圧供給回路を備え、高電圧のパルスベースとパルストップとの振幅差で表されるパルス振幅の一部または全部が、通常の塗装条件で塗装機およびワークの間でスパークを生じさせずに静電塗装を行うことができる高電圧領域と重なるように、パルスベースおよびパルストップの電圧値が設定されるとともに、パルスの立ち上がりから立ち下がりに至るパルス幅が200μsec以下に設定される構成としている。
【0006】
このような構成により、何らかのきっかけで塗装機とワークとの間の電流値が急上昇しても、スパーク放電が生じるのに要する時間が経過する前に、印加電圧を低下させることができるため、スパーク放電を生じにくくしている。これにより、塗装品質を確保しつつ、印加する電圧のさらなる高電圧化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−96201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に係る従来技術を採用しようとする場合、高電圧を発生させるためにはさらに高い高電圧発生能力を有する装置(所謂、高電圧発生装置)が必要になり、さらに塗装機の絶縁性能を高める必要があった。
このため、既存の静電塗装装置をそのまま利用することが難しく、設備投資の必要性から、静電塗装に掛かるコストが増大するという課題があった。
【0009】
また近年、生産性の向上を図る必要性から、塗装速度(塗装機の移動速度)を高めるニーズが高まっているが、塗装速度を高速化すると、形成した電界からはみ出す塗料の量が増大し、塗着効率が悪化するため、塗装速度の高速化を実現することが困難となっていた。
【0010】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、高電圧発生装置により印加する電圧を従来と同等に抑えつつ、塗着効率の向上を図るとともに、塗装速度の高速化を実現することができる静電塗装装置および当該静電塗装装置による静電塗装方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、請求項1においては、被塗物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、該塗装ガンまたは前記塗装ガンに付設される電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、を備える静電塗装装置であって、前記制御装置は、前記高電圧発生装置により印加する高電圧として、静電塗装に適した電圧である第一の印加電圧と、該第一の印加電圧に比して低い電圧である第二の印加電圧が設定されるとともに、前記第一の印加電圧と前記第二の印加電圧を、所定のパルス幅、パルス間隔、振幅でパルス状に切り換え可能とするものである。
【0013】
請求項2においては、前記制御装置は、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更して、前記被塗物と前記塗装ガンとの間に形成される電界の強度および有効範囲を調整するものである。
【0014】
請求項3においては、前記制御装置は、前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加した場合に生じる放電電流の値に比して、放電電流の最大値が1.2倍を越える値となるように、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を設定するものである。
【0015】
請求項4においては、前記制御装置は、前記塗装ガンと前記被塗物との距離に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0016】
請求項5においては、前記制御装置は、前記塗装ガンの変位速度に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0017】
請求項6においては、前記制御装置は、前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の飛散速度に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0018】
請求項7においては、前記制御装置は、前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の噴霧量に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0019】
請求項8においては、前記制御装置は、前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の種類に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0020】
請求項9においては、被塗物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、該塗装ガンまたは前記塗装ガンに付設される電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、を備える静電塗装装置による静電塗装方法であって、前記制御装置において、前記高電圧発生装置により印加する高電圧として、静電塗装に適した電圧である第一の印加電圧と、該第一の印加電圧に比して低い電圧である第二の印加電圧を設定するとともに、前記制御装置によって、所定のパルス幅、パルス間隔、振幅で、前記第一の印加電圧と前記第二の印加電圧をパルス状に切り換えて、前記被塗物と前記塗装ガンとの間に、前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加したときに形成される電界の強度および範囲に比して、高強度かつ広範囲の電界を形成するものである。
【0021】
請求項10においては、前記制御装置によって、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅の各値を変更して、前記被塗物と前記塗装ガンとの間に形成される電界の強度および有効範囲を調整するものである。
【0022】
請求項11においては、前記制御装置によって、前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加した場合に生じる放電電流の値に比して、放電電流の最大値が1.2倍を越える値となるように、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を設定するものである。
【0023】
請求項12においては、前記制御装置によって、前記塗装ガンと前記被塗物との距離に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0024】
請求項13においては、前記制御装置によって、前記塗装ガンの変位速度に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0025】
請求項14においては、前記制御装置によって、前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の飛散速度に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0026】
請求項15においては、前記制御装置によって、前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の噴霧量に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【0027】
請求項16においては、前記制御装置によって、前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の種類に応じて、前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0029】
請求項1においては、高電圧発生装置により発生させる電圧を高電圧化することなく、従来に比して高強度でかつ広範囲の電界を形成することができる。これにより、電界から塗料粒子に付与するクーロン力を増大させて、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0030】
請求項2においては、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を確実に実現することができる。
【0031】
請求項3においては、より効果的に、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0032】
請求項4においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0033】
請求項5においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0034】
請求項6においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0035】
請求項7においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0036】
請求項8においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0037】
請求項9においては、高電圧発生装置により発生させる電圧を高電圧化することなく、従来に比して高強度でかつ広範囲の電界を形成することができる。これにより、電界から塗料粒子に付与するクーロン力を増大させて、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0038】
請求項10においては、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を確実に実現することができる。
【0039】
請求項11においては、より効果的に、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0040】
請求項12においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0041】
請求項13においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0042】
請求項14においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0043】
請求項15においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【0044】
請求項16においては、電界の強度および有効範囲を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る静電塗装装置を示す図、(a)全体構成を示す模式図、(b)動作時における各パラメータを示す模式図。
【図2】印加電圧の時間変化と放電電流の時間変化の関係を示す図、(a)従来の静電塗装方法の場合を示す図、(b)本発明の一実施形態に係る静電塗装方法の場合を示す図。
【図3】従来の静電塗装装置による電界の形成状況を示す模式図、(a)電圧Vを定常的に印加した場合を示す模式図、(b)電圧Vを定常的に印加した場合を示す模式図。
【図4】本発明の一実施形態に係る静電塗装装置による電界の形成状況(電圧V・Vをパルス状に切り換えて印加した場合)を示す模式図。
【図5】本発明の一実施形態に係る静電塗装装置の能力を測定した結果を示す図、(a)電界の有効範囲と電流比との関係を示す模式図、(b)塗着効率と電流比との関係を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置の全体構成について、図1を用いて説明をする。
図1(a)に示す如く、本発明に係る静電塗装装置の一実施形態である静電塗装装置1は、被塗物たるワーク2に静電塗装を行うための装置であって、ロボット3、塗装ガン4、高電圧発生装置5、制御装置6等からなる構成としている。ここで、ワーク2は接地(アースGに接続)されており、電位を「0」としている。
【0047】
ロボット3は、ワーク2に対して、塗装ガン4を所望する速度および姿勢で変位させることができる多関節型ロボットであり、アーム3a、基台部3b等からなる構成としている。そして、アーム3a先端の手先部3cにおいて、塗装ガン4を支持している。
尚、本実施形態では、静電塗装装置1を構成するロボット3が多関節型ロボットである場合を例示しているが、本発明に係る静電塗装装置を構成するロボットの態様をこれに限定するものではない。
【0048】
塗装ガン4は、ワーク2に向けて塗料を噴霧して、ワーク2に塗料を塗布することができる塗装装置であって、ベルカップ4a、ガン本体4b等からなる構成としている。
塗装ガン4は、ベルカップ4aをエアモータ等の駆動手段(図示せず)により回転させて、ベルカップ4aの内面に展延させた液状の塗料を遠心力により微粒化させることができる回転霧化型の塗装装置である。
また、ガン本体4bには、高電圧発生装置5が電気的に接続されており、塗料を供給するための手段である塗料配管(図示せず)や、シェーピングエアを供給するための手段であるエア配管(図示せず)等、もさらに接続されている。
【0049】
尚、本実施形態では、静電塗装装置1を構成する塗装ガン4が回転霧化型である場合を例示しているが、本発明に係る静電塗装装置を構成する塗装ガンの形式をこれに限定するものではなく、ヘッドが回転しない形式の塗装ガンであってもよく、その他の種々の態様とすることが可能である。
また、本実施形態で示す塗装ガン4は、当該塗装ガン4の外部に高電圧発生装置5が設けられる態様としているが、本発明に係る静電塗装装置を構成する塗装ガンの態様をこれに限定するものではなく、高電圧発生装置が、塗装ガンのガン本体に内蔵される態様であってもよく、その他の種々の態様とすることが可能である。
さらに、塗装ガン4に塗料を供給するための手段の態様は、ガン本体4bに塗料配管を接続する態様に限定するものではなく、例えば、ガン本体に塗料を充填したカートリッジ型の容器を装填し、当該容器から塗料を供給する態様であってもよく、その他の種々の態様とすることが可能である。
【0050】
高電圧発生装置5は、所謂カスケードと呼ばれる昇圧回路5aと、電圧を発生させることができる電源部5bを備え、電源部5bにより発生させた電圧を、昇圧回路5aにより昇圧して、数十kV程度の静電高電圧を発生させることができる装置である。
尚、以下の説明では、高電圧発生装置5により印加する静電高電圧の値を電圧Vとして規定し、電圧Vを印加したときに生じる放電電流の値を電流Iとして規定する。また、放電電流Iが流れることによって形成される静電界を電界Eとして規定する。また、以下の説明では、発生させる静電高電圧の極性が負である場合を例示して説明をする。
【0051】
そして、高電圧発生装置5は、ケーブルにより塗装ガン4と電気的に接続しており、塗装ガン4に対して電圧Vを印加することができる。
高電圧発生装置5によって、塗装ガン4に負の電圧Vを印加すると、塗装ガン4を負側の電位に帯電させることができ、また、塗装ガン4によって噴霧される塗料粒子についても負側の電位に帯電させることができる。
【0052】
また、塗装ガン4が負側の電位に帯電されると、塗装ガン4からアースGに接地された(即ち、電位が0Vである)ワーク2に向けて放電電流Iが流れる。
そして、塗装ガン4からワーク2に向かって電位の勾配を有する静電界たる電界Eが形成され、この電界Eを利用して、ワーク2に対する静電塗装を行うことができる。
【0053】
尚、本実施形態では、静電塗装装置1を構成する高電圧発生装置5の接続先が塗装ガン4であって、塗装ガン4に電圧Vを印加する場合を例示しているが、本発明に係る静電塗装装置の態様をこれに限定するものではなく、高電圧発生装置の接続先が、塗装ガンの周囲の電界を形成するために当該塗装ガンに付設される電極であって、高電圧発生装置により、当該電極に電圧を印加する態様であっても良い。このような形態の静電塗装装置では、当該電極とワークの間に電界を形成し、当該電極からのイオン流によって塗料粒子を帯電させることができる。
【0054】
また、高電圧発生装置5には、制御装置6が、接続されている。
制御装置6は、高電圧発生装置5によって発生させる静電高電圧(即ち、電圧V)をコントロールするための装置であり、高電圧発生装置5に対してパルス条件を含む信号を出力することができる。
静電塗装装置1では、制御装置6から出力される指令信号に基づいて、高電圧発生装置5によって発生させる電圧Vをパルス状に切り換える構成としている。
尚、ここで言う「パルス状」とは、最大値か最小値のどちらかをとるように周期的に振幅が変化する状態を言い、矩形波状や正弦波状の変化等を含む概念である。
また、ここで言う「パルス条件」とは、パルス波形を決定するための各要素であって、振幅(電圧差)とパルス周期(パルス幅およびパルス間隔)を含んでいる。
【0055】
制御装置6は、ロボット3と接続されており、該ロボット3から塗装ガン4の動作状態(変位位置、姿勢、変位速度等)を示す信号がリアルタイムで入力される構成としている。
また、制御装置6には、ワーク2の仕様や塗装条件(使用する塗料の種類、噴霧量、等の各種条件)に係る情報が予め記憶されており、ワーク2の仕様や塗装条件に係る情報と塗装ガン4の動作状態を示す信号に基づいて、制御装置6によって、静電塗装状況を判断するとともに、そのときの最適なパルス条件をリアルタイムで演算して求める構成としている。
そして、制御装置6は、リアルタイムで求めたそのときの最適なパルス条件に係る指令信号を、高電圧発生装置5に出力する構成としている。
【0056】
尚、ここで言う「塗料の種類」とは、含有成分の相違により帯電性能が異なる塗料を、種類が異なる塗料として扱う概念であり、例えば、溶剤系塗料と水性塗料は種類が異なる塗料として扱い、また、クリア塗料とベース塗料も異なる種類の塗料として扱うようにしている。
【0057】
尚、本実施形態では、制御装置6によって、そのときの静電塗装状況に応じてリアルタイムで指令信号を求める場合を例示しているが、あるいは、塗装開始から塗装終了までの一連の静電塗装工程に応じたパルス条件を予め制御装置6にティーチングしておき、ティーチング内容に従って、制御装置6により高電圧発生装置5に指令信号を出力する態様とすることも可能である。
【0058】
ここで、「静電塗装状況」を決定するパラメータについて、説明をする。
図1(b)に示す如く、噴霧される塗料粒子xのワーク2の塗布面に対して垂直な方向への飛散速度をR、塗装ガン4のワーク2の塗布面に対して平行な方向への変位速度をP、ワーク2と塗装ガン4の塗装距離をL、として規定するとき、塗料粒子xが塗装ガン4から噴霧されてからワーク2に塗着するまでに要する時間tは、t=L/Rとして表される。
また、電界Eの有効範囲をWと規定すると、時間tの間における有効範囲Wのワーク2の塗布面に対して平行な方向への変位距離Dは、D=P・t(=P・L/R)として表される。
そして、これらの各パラメータR・P・L・t・W・D等によって、「静電塗装状況」が決定されるため、ロボット3から、これらの各パラメータR・P・L・t・W・Dに係る信号が制御装置6に入力される。
【0059】
また、このように規定した場合において、噴霧直後の塗料粒子xにおける、そのときの電界Eの有効範囲Wの端部からの距離Jが、J<Dである場合、塗料粒子xは、ワーク2に塗着するときには、電界Eの有効範囲Wから外れてしまうことになる。このため、噴霧直後においてJ<Dとなっているような塗料粒子xは、塗着効率が悪い。
【0060】
つまり、塗着効率の悪化を防止するためには、電界Eの有効範囲Wを拡大させて、全ての塗料粒子xをJ>Dとすることが有効であるため、本発明に係る静電塗装装置および当該静電塗装装置による静電塗装方法では、電界Eの有効範囲Wを拡大するようにしている。
尚、実際の塗料粒子xは拡散方向や塗装ガン4の動作方向等は三次元的であるが、本実施形態の説明では、説明を容易にするために各パラメータR・P・L・W・D等を二次元的に表現するものとしている。
【0061】
次に、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置による静電塗装方法について、図2〜図4を用いて説明をする。
【0062】
図2(a)に示す如く、静電塗装を行う場合において、塗装ガン4に印加する電圧として従来から一般的に採用されてきた第一の電圧Vを電圧Vとして規定し、電圧Vを定常的に印加したときに生じる放電電流Iの値を電流Iと規定する。また、塗装ガン4に印加する電圧として従来から一般的に採用されている電圧Vに比して低い第二の電圧Vを電圧Vとして規定し、電圧Vを定常的に印加したときに生じる放電電流Iの値を電流Iと規定する。
そして、電圧Vを印加するときと電圧Vを印加するときの各放電電流I・Iの差をΔI(即ち、ΔI=I−I)と規定する。
【0063】
一方、図2(b)に示す如く、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法では、高電圧発生装置5によって塗装ガン4に印加する電圧Vの値を、従来と同じ各電圧V・Vとしつつ、制御装置6から出力される信号に従って、各電圧V・Vをパルス状に切り換えて印加するようにしている。
また、パルス状に各電圧V・Vを切り換えて印加すると、このときに生じる放電電流Iは尖鋭部を有する略三角波のパルス状に変化する。そして、このとき生じる放電電流Iのピーク値をピーク電流Iとして規定する。
【0064】
各電圧V・Vを切り換えて印加するパルスの態様は、各電圧V・Vの電圧差である振幅ΔV、高圧側の電圧Vを印加する一単位の時間であるパルス幅tと、低圧側の電圧Vを印加する一単位の時間であるパルス間隔t、によって規定することができる。また、このように規定すると、パルス周期Tは、T=t+tと表すことができる。
【0065】
そして、このピーク電流Iは、制御装置6から出力される信号に従って、パルス条件を調整することによって、定常的に電圧Vを印加するときの放電電流Iに比して大きい値とすることができる。
即ち、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法によれば、高電圧発生装置5により発生させる電圧Vの値は従来と同じ各電圧V・Vとしながら、より高い放電電流I(ピーク電流I)を得ることが可能になる。
【0066】
ピーク電流Iが放電電流Iに比して高くなる原因は、定常的に各電圧V・Vを印加している場合には、電界Eの領域が既に電子で満たされているため大きな電子の流れが生じないが、一方、各電圧V・Vをパルス状に切り換えて印加する場合には、電界Eの領域に急激な電子の流れが生じるため、定常的に各電圧V・Vを印加している場合に比して大きな電流が流れるものと考えられる。
【0067】
また、電界Eの強度は、放電電流Iの強さに応じて変化するため、従来に比して高いピーク電流Iが流れたときには、より高い強度を有する電界Eを形成することができる。
ここで、各電圧V・Vをパルス状に印加するときの放電電流Iの差をΔI(即ち、ΔI=I−I)として規定する。
【0068】
次に、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法における電界の形成状況について、説明をする。
高電圧発生装置5により、従来のように定常的な電圧Vを塗装ガン4に印加すると、ワーク2と塗装ガン4の間で、図3(b)に示すような電気力線で表される電界Eが形成される。尚、電気力線の間隔がより密になっている部分においては、電界Eの強度がより強くなっている。
【0069】
電界Eの有効範囲Wは、塗装ガン4から噴霧される塗料の拡散パターン等を考慮して、全ての塗料粒子xが電界Eの有効範囲Wに包含されながらワーク2に到達できる範囲となるように、電圧Vを設定している。
尚、ここで言う「電界の範囲」とは、塗料を塗着させるために必要なクーロン力Fを付与し得る強度を有する電界の範囲を意味しており、電界が存在する範囲を意味しているものではない。
【0070】
しかしながら、塗装ガン4の変位速度Pが早いと、一部の塗料粒子xがワーク2に塗着するより前に電界Eから外れてしまう場合があり、この場合、電界Eから外れてしまった一部の塗料粒子xは、付与されるクーロン力Fが低下するため、塗着効率が悪い。
尚、電界中の塗料粒子xに作用するクーロン力Fは、塗料粒子xの帯電量をqとし、電界(強度)をEとするとき、F=qEとして表される。
【0071】
また、高電圧発生装置5により、定常的に電圧Vを塗装ガン4に印加すると、ワーク2と塗装ガン4の間で、図3(a)に示すような電気力線で表される電界Eが形成される。
印加電圧が低い(例えば、電圧Vを印加する)場合、電界Eの有効範囲Wに比してさらに電界Eの有効範囲Wが狭くなっている。また電界Eでは、電気力線の間隔が、電界Eの電気力線の間隔に比してより疎になっており、電界Eの強度は電界Eに比して弱くなっている。
【0072】
一方、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法のように、制御装置6および高電圧発生装置5により、パルス状に各電圧V・Vを切り換えて塗装ガン4に印加すると、ワーク2と塗装ガン4の間で、図4に示すような電界Eが形成される。
電界Eの有効範囲Wは、電界Eの有効範囲Wに比して、さらに広範囲となっている。また電界Eでは、電気力線の間隔が、電界Eの電気力線の間隔に比してより密になっており、電界Eの強度は、電界Eに比してより高くなっている。
つまり、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法では、制御装置6から出力される信号に従って、パルス条件(即ち、パルス幅t、パルス間隔t、振幅ΔV)を変更することによって、電界Eの強度や有効範囲Wを調整するようにしている。
【0073】
ワーク2と塗装ガン4の間に形成される電界Eの強度が増大すると、塗料粒子xが電界Eから取得する電子が増えるため、塗料粒子xの帯電量qも増大する。
このため、電界Eを通過して塗着される塗料粒子xには、電界Eの強度の増大および帯電量qの増大による相乗効果によって、従来に比してより大きいクーロン力Fが作用するため、ワーク2により強い力で引き付けられ、その結果、塗着効率を向上させることができる。
【0074】
このため、塗装ガン4の変位速度Pを高速化しても、塗装ガン4から噴霧された全ての塗料粒子xを電界Eの有効範囲Wに包含させながらワーク2に塗着させることができる。これにより、全ての塗料粒子xが電界Eから外れてしまうことがないため、塗料粒子xに作用するクーロン力Fを高めることができ、塗着効率を向上させることができる。
【0075】
このように、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1による静電塗装方法では、低圧側の電圧Vを低く設定することにより、振幅ΔVを増大させることができるため、電圧Vをさらに高電圧化しなくても、容易に塗着効率の向上を図ることができる。
【0076】
即ち、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1は、被塗物であるワーク2に対して塗料を噴霧する塗装ガン4と、該塗装ガン4(または塗装ガン4に付設される電極であってもよい)に高電圧を印加する高電圧発生装置5と、該高電圧発生装置5により印加する高電圧を制御する制御装置6と、を備えるものであって、制御装置6は、高電圧発生装置5により印加する高電圧として、静電塗装に適した印加電圧である第一の電圧Vと、該第一の電圧Vに比して低い印加電圧である第二の電圧Vが設定されるとともに、各電圧V・Vを、所定のパルス幅t、パルス間隔t、振幅ΔVでパルス状に切り換え可能とするものである。
【0077】
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法は、被塗物たるワーク2に対して塗料を噴霧する塗装ガン4と、該塗装ガン4(または塗装ガン4に付設される電極であってもよい)に高電圧を印加する高電圧発生装置5と、該高電圧発生装置5により印加する高電圧を制御する制御装置6と、を備える静電塗装装置1による静電塗装方法であって、制御装置6において、高電圧発生装置5により印加する高電圧として、静電塗装に適した印加電圧である第一の電圧Vと、該電圧Vに比して低い印加電圧である第二の電圧Vを設定するとともに、制御装置6によって、所定のパルス幅t、パルス間隔t、振幅ΔVで、各電圧V・Vをパルス状に切り換えて、ワーク2と塗装ガン4との間に、高電圧発生装置5により電圧Vを定常的に印加したときに形成される電界Eの強度および範囲(有効範囲W)に比して、高強度かつ広範囲(有効範囲W)の電界Eを形成するものである。
【0078】
このような構成により、高電圧発生装置5により発生させる電圧Vを高電圧化することなく、従来の電界Eに比して高強度でかつ広範囲の電界Eを形成することができる。これにより、電界Eにより塗料粒子xに生じさせるクーロン力Fを増大させて、塗着効率の向上および塗装速度(即ち、変位速度P)の高速化を図ることができる。
【0079】
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1において、制御装置6は、所定のパルス幅tと、パルス間隔tと、振幅ΔVと、を変更して、ワーク2と塗装ガン4との間に形成される電界Eの強度および有効範囲Wを調整するものである。
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法は、制御装置6によって、所定のパルス幅tと、パルス間隔tと、振幅ΔVと、の各値を変更して、ワーク2と塗装ガン4との間に形成される電界Eの強度および有効範囲Wを調整するものである。
このような構成により、塗着効率の向上および塗装速度(即ち、変位速度P)の高速化を確実に実現することができる。
【0080】
塗装ガン4から噴霧された塗料粒子xが、電界Eの有効範囲W内に包含されるか否かは、塗装ガン4の変位速度P、塗装ガン4から噴霧される塗料粒子xの飛散速度R、ワーク2と塗装ガン4と塗装距離L、等の関係により決定される静電塗装状況に応じて変わるため、条件が刻一刻と変化している。
このため、ロボット3からリアルタイムで制御装置6に入力される各パラメータP・R・L等に係る信号(即ち、静電塗装状況)と制御装置6に予め記憶される塗装条件(塗料の種類や噴霧量等)に基づいて、制御装置6によって、高電圧発生装置5に対して出力する出力信号(即ち、パルス条件)をリアルタイムで変更することにより、確実に塗着効率を向上させることができる。
【0081】
尚、飛散速度Rは、塗装ガン4から噴出されるシェーピングエアの吐出圧力に応じて決定されるため、塗装ガン4から噴霧された塗料粒子xが、電界Eの有効範囲W内に包含されるか否かは、変位速度Pおよび塗装距離Lと、シェーピングエア圧力の関係により決定される。
【0082】
即ち、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1において、制御装置6は、塗装ガン4の変位速度P、塗装ガン4から噴霧される塗料粒子xの飛散速度R(即ち、塗装ガン4におけるシェーピングエア圧力)、塗装ガン4により噴霧する塗料の噴霧量Q、塗装ガン4とワーク2との塗装距離L、塗装ガン4により噴霧する塗料の種類、に応じて、所定のパルス幅tと、パルス間隔tと、振幅ΔVと、を変更するものである。
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法は、制御装置6によって、塗装ガン4の変位速度P、塗装ガン4から噴霧される塗料粒子xの飛散速度R(即ち、塗装ガン4におけるシェーピングエア圧力)、塗装ガン4により噴霧する塗料の噴霧量Q、塗装ガン4とワーク2との塗装距離L、塗装ガン4により噴霧する塗料の種類、に応じて、所定のパルス幅tと、パルス間隔tと、振幅ΔVと、を変更するものである。
このような構成により、生じさせる電界Eの状況を、静電塗装状況に応じて最適に調整することができる。これにより、塗着効率の向上および塗装速度(即ち、変位速度P)の高速化を図ることができる。
【0083】
次に、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置による静電塗装方法を適用した場合の効果について、図5を用いて説明をする。
ここでは、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置による静電塗装方法を、パルス条件を変えながら実施した場合における電界の有効範囲および塗着効率の変化を示している。
【0084】
図5(a)(b)に示す如く、従来と同様に定電圧で電圧Vを印加した場合の電界Eの有効範囲Wと塗着効率を基準(図5(a)(b)における100%)として、パルス状に各電圧V・Vを切り換えて印加した場合の電界Eの有効範囲Wと塗着効率を比較している。
【0085】
図5(a)に示す如く、パルス状に各電圧V・Vを切り換えて印加した場合であって、電流比ΔI/ΔIの値が、1.0〜1.2程度である場合には、電界Eの有効範囲Wは、従来と同等である。
このため、図5(b)に示す如く、電流比ΔI/ΔIの値が、1.0〜1.2程度である場合には、塗着効率も従来と同等である。
【0086】
しかしながら、図5(a)に示す如く、パルス状に各電圧V・Vを印加した場合であって、電流比ΔI/ΔIの値が、1.2を越える辺りから、電界Eの有効範囲Wが顕著に拡大するようになり、電流比ΔI/ΔIをさらに増大させると(ΔI/ΔI=1.5および2.0の場合を参照)、電界Eの有効範囲Wは、さらに顕著に拡大している。
このため、図5(b)に示す如く、電流比ΔI/ΔIの値が、1.2を越える辺りから、塗着効率も顕著に向上するようになり、電流比ΔI/ΔIをさらに増大させると(ΔI/ΔI=1.5および2.0の場合を参照)、さらに顕著に塗着効率が向上している。
【0087】
この測定結果によると、パルス状に各電圧V・Vを切り換えて印加すれば、有効範囲Wの拡大効果および塗着効率の向上効果が必ず得られるのではなく、パルス状に各電圧V・Vを印加するときの電流比ΔI/ΔIの設定値に応じて、有効範囲Wの拡大効果および塗着効率の向上効果が変化することが判る。
【0088】
そして、ΔI/ΔI>1.2の関係を満足するようにパルス条件(即ち、パルス幅t、パルス間隔t、振幅ΔV)を設定することにより、塗着効率に関して顕著な向上を図ることができるため、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置による静電塗装方法を適用する場合には、ΔI/ΔI>1.2の関係を満足するようにパルス条件(即ち、パルス幅t、パルス間隔t、振幅ΔV)を設定するようにしている。
【0089】
即ち、本発明の一実施形態に係る静電塗装装置1において、制御装置6は、高電圧発生装置5により電圧Vを定常的に印加した場合に生じる放電電流Iの値に比して、放電電流Iの最大値(ピーク電流I)が1.2倍を越える値となるように、所定のパルス幅tと、パルス間隔tと、振幅ΔVと、を設定するものである。
また、本発明の一実施形態に係る静電塗装方法は、制御装置6によって、高電圧発生装置5により電圧Vを定常的に印加した場合に生じる放電電流Iの値に比して、放電電流Iの最大値(ピーク電流I)がが1.2倍を越える値となるように、所定のパルス幅tと、パルス間隔tと、振幅ΔVと、を設定するものである。
このような構成により、より効果的に、塗着効率の向上および塗装速度(即ち、変位速度P)の高速化を図ることができる。
【符号の説明】
【0090】
1 静電塗装装置
2 ワーク
4 塗装ガン
5 高電圧発生装置
6 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、
該塗装ガンまたは前記塗装ガンに付設される電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、
該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、
を備える静電塗装装置であって、
前記制御装置は、
前記高電圧発生装置により印加する高電圧として、静電塗装に適した電圧である第一の印加電圧と、該第一の印加電圧に比して低い電圧である第二の印加電圧が設定されるとともに、
前記第一の印加電圧と前記第二の印加電圧を、所定のパルス幅、パルス間隔、振幅でパルス状に切り換え可能とする、
ことを特徴とする静電塗装装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更して、
前記被塗物と前記塗装ガンとの間に形成される電界の強度および有効範囲を調整する、
ことを特徴とする請求項1記載の静電塗装装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加した場合に生じる放電電流の値に比して、放電電流の最大値が1.2倍を越える値となるように、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を設定する、
ことを特徴とする請求項2記載の静電塗装装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記塗装ガンと前記被塗物との距離に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載の静電塗装装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記塗装ガンの変位速度に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の静電塗装装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の飛散速度に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の静電塗装装置。
【請求項7】
前記制御装置は、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の噴霧量に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか一項に記載の静電塗装装置。
【請求項8】
前記制御装置は、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の種類に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか一項に記載の静電塗装装置。
【請求項9】
被塗物に対して塗料を噴霧する塗装ガンと、
該塗装ガンまたは前記塗装ガンに付設される電極に高電圧を印加する高電圧発生装置と、
該高電圧発生装置により印加する高電圧を制御する制御装置と、
を備える静電塗装装置による静電塗装方法であって、
前記制御装置において、前記高電圧発生装置により印加する高電圧として、
静電塗装に適した電圧である第一の印加電圧と、
該第一の印加電圧に比して低い電圧である第二の印加電圧を設定するとともに、
前記制御装置によって、
所定のパルス幅、パルス間隔、振幅で、前記第一の印加電圧と前記第二の印加電圧をパルス状に切り換えて、
前記被塗物と前記塗装ガンとの間に、
前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加したときに形成される電界の強度および範囲に比して、高強度かつ広範囲の電界を形成する、
ことを特徴とする静電塗装方法。
【請求項10】
前記制御装置によって、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅の各値を変更して、
前記被塗物と前記塗装ガンとの間に形成される電界の強度および有効範囲を調整する、
ことを特徴とする請求項9記載の静電塗装方法。
【請求項11】
前記制御装置によって、
前記高電圧発生装置により前記第一の印加電圧を定常的に印加した場合に生じる放電電流の値に比して、放電電流の最大値が1.2倍を越える値となるように、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を設定する、
ことを特徴とする請求項10記載の静電塗装方法。
【請求項12】
前記制御装置によって、
前記塗装ガンと前記被塗物との距離に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項10または請求項11記載の静電塗装方法。
【請求項13】
前記制御装置によって、
前記塗装ガンの変位速度に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項10〜請求項12のいずれか一項に記載の静電塗装方法。
【請求項14】
前記制御装置によって、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の飛散速度に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項10〜請求項13のいずれか一項に記載の静電塗装方法。
【請求項15】
前記制御装置によって、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の噴霧量に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項10〜請求項14のいずれか一項に記載の静電塗装方法。
【請求項16】
前記制御装置によって、
前記塗装ガンにより噴霧する前記塗料の種類に応じて、
前記所定のパルス幅と、パルス間隔と、振幅と、を変更する、
ことを特徴とする請求項10〜請求項15のいずれか一項に記載の静電塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−255275(P2011−255275A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130280(P2010−130280)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(309007818)友信工機株式会社 (19)
【Fターム(参考)】