説明

静電容量型入力装置

【課題】例え絶縁体を使用しても入力作業に支障を来たすことがなく、しかも、三次元成形に伴う導通不良や断線を抑制することのできる静電容量型入力装置を提供する。
【解決手段】支持層1の表面に変形可能なグラウンド層2、模様層3、及び透明被押圧層4を積層してこれらを三次元成形し、支持層1の裏面に検知部10と外部接続部20を配設し、検知部10により静電容量の変化を検出して入力信号に変換する入力装置であって、検知部10を、支持層1の裏面に固定されてグラウンド層2に対向する回路基板11と、回路基板11のランド12とグラウンド層2の間に介在して圧接される弾性の絶縁誘電体14とから構成する。また、外部接続部20を、支持層1の裏面に固定されてグラウンド層2に対向する回路基板21と、回路基板21とグラウンド層2の間に介在して圧接される導電体24とから構成し、導電体24を介してグラウンド層2を外部回路に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコン、オーディオ、携帯電話に代表される携帯機器等に使用される静電容量型入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコン等に採用されている従来の静電容量型入力装置は、図示しないが、絶縁性の支持層上に、外部回路に接続される電極層が積層され、この電極層上に、絶縁性の表面操作層が積層されており、この表面操作層にユーザの指が接触する。電極層は、例えば絶縁性フィルムの表面に、複数の電極部が印刷によりパターン形成され、各電極部からは、外部回路に接続するための細長い引き出しラインがそれぞれ印刷により伸長形成されている。
【0003】
このような静電容量型入力装置は、表面操作層に指が接触すると、電極層の電極部と指との間にコンデンサが形成され、指がどの位置に存在するかが静電容量の変化として検出される(特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平7‐99346号公報
【特許文献2】W02003/036247号公報
【特許文献3】特開平5‐26753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における静電容量型入力装置は、以上のように構成され、コンデンサの構成に導電体である指を必要とするので、絶縁性の手袋を嵌めた場合や義手の場合等には、コンデンサを構成して静電容量の変化を検出することができず、入力作業に支障を来たすという問題がある。また、従来の静電容量型入力装置は、意匠性向上の観点から立体的に三次元成形されることがあるが、この場合、電極層も三次元成形されるので、電極層が横方向から縦方向に急激に屈曲する部分等で引き出しラインが伸び、この結果、導通不良を招いたり、断線するおそれがある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、例え絶縁体を使用しても入力作業に支障を来たすことがなく、しかも、三次元成形に伴う導通不良や断線を抑制することのできる静電容量型入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、支持層の表面に変形可能な導電層と被押圧層とを積層し、これら支持層、導電層、被押圧層のうち少なくとも導電層と被押圧層とを三次元成形し、支持層の裏面には検知部と外部接続部とをそれぞれ配設し、検知部により静電容量の変化を検出して入力信号に変換するものであって、
検知部は、支持層の裏面に取り付けられて導電層に対向する基板と、この基板の電極と導電層との間に介在して接続される弾性の絶縁体とを含み、
外部接続部は、支持層の裏面に取り付けられて導電層に対向する基板と、この基板と導電層との間に介在して電気的に接続される導電体とを含み、この導電体を介して導電層を外部回路に接続するようにしたことを特徴としている。
【0008】
なお、導電層と被押圧層との間に模様層を介在し、導電層、被押圧層、及び模様層に、光源からの光線を透過する光透過性をそれぞれ付与することができる。
また、外部接続部の導電体に弾性を付与し、導電体を圧縮変形させることもできる。
【0009】
ここで、特許請求の範囲における支持層は、光源からの光線を導光して光透過性の導電層、模様層、被押圧層方向に導くライトガイド層でも良い。模様層は、文字、図形、記号、これらの組み合わせ、あるいはこれらと色彩との組み合わせが該当し、少なくともその一部に光透過性を付与することができる。この模様層は、被押圧層の裏面の全部又は一部に適宜積層することができる。
【0010】
導電体としては、例えば導電性を有する弾性ゴム、弾性エラストマー、スプリング、電気コネクタ等を使用することができる。また、絶縁体と導電体とを積層したものでも良い。さらに、本発明に係る静電容量型入力装置は、少なくともエアコン、オーディオ、携帯電話に代表される携帯機器、自動車のセンターコンソールやオーディオ等に使用される。
【0011】
本発明によれば、入力装操作のため、被押圧層を押圧操作すると、導電層と検知部の基板の電極と共にコンデンサを形成する絶縁体が変形して導電層と基板の電極間の距離を変更し、これらの静電容量が変化し、この静電容量の変化が検出され、かつ入力信号に変換されることにより、入力装操作することができる。押圧操作に伴う絶縁体の変形により静電容量を変化させるので、絶縁性の手袋を嵌めた場合や義手等の場合でも、簡易な構成で静電容量の変化を検出することができる。
【0012】
また、引き出しラインの代わりに導電体を使用し、外部回路への引き回しに利用するので、例え静電容量型入力装置が立体的に三次元成形される場合でも、導通不良を招いたり、断線するおそれが少ない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例え絶縁体を使用しても入力作業に支障を来たすことがなく、しかも、三次元成形に伴う導通不良や断線を抑制することができるという効果がある。
【0014】
また、導電層と被押圧層との間に模様層を介在すれば、被押圧層を装飾したり、被押圧層の機能性や操作性等を向上させることができる。また、導電層、被押圧層、及び模様層に、光源からの光線を透過する光透過性をそれぞれ付与すれば、模様層を照光して操作者の入力操作の便宜を図ることができる。
さらに、外部接続部の導電体に弾性を付与し、導電体を圧縮変形させれば、電極層と基板との接続を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る静電容量型入力装置の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明に係る静電容量型入力装置の好ましい実施形態を説明すると、本実施形態における静電容量型入力装置は、図1に示すように、剛性の支持層1の表面に変形可能なグラウンド層2、模様層3、及び透明被押圧層4を順次積層してこれらを立体的に三次元成形し、支持層1の裏面に検知部10と外部接続部20とを離隔して配設しており、検知部10により静電容量の変化を検出して入力信号に変換する入力装置である。
【0017】
支持層1は、光透過性を有する所定の材料を使用して成形され、立体的に三次元成形される。この支持層1の所定の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば硬質のポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル、アクリル樹脂、ABS樹脂等があげられる。支持層1の裏面側には、透明被押圧層4の反対側に位置して有彩色(例えば赤、青、緑等)の光線を照射するLED等からなる光源が設置され、この光源の光線が支持層1、グラウンド層2、模様層3、透明被押圧層4に順次入射することにより、模様層3が照明され、操作者の入力操作の便宜が図られる。
【0018】
グラウンド層2は、例えば光透過性を有する低抵抗の導電性ポリマーがスクリーン印刷等されることにより透明で導電性の薄膜に形成される。このグラウンド層2の材料は、導電性の材料であれば、銀、銅、カーボン等でも良い。
【0019】
模様層3は、例えばグラウンド層2の表面あるいは透明被押圧層4の裏面に光透過性の文字、図形、記号、これらの結合、あるいはこれらと色彩との結合等が薄く加飾形成されることにより操作キー等として積層される。この模様層3の積層法は、特に限定されるものではないが、例えば光透過性のインクによるスクリーン印刷法やフィルムインサート成形法等が採用される。
【0020】
透明被押圧層4は、例えば光透過性と可撓性とを有するポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂等を使用して薄いシートあるいはフィルムに成形され、模様層3を保護した状態で操作者の指、手袋を嵌めた指、義手、あるいは筆記具等により押圧操作される。
【0021】
検知部10は、支持層1の裏面に螺着固定されてグラウンド層2に隙間を介して対向する回路基板11と、この回路基板11のランド12とグラウンド層2の裏面との間に介在して電気的に圧接される弾性の絶縁誘電体14とから構成される。回路基板11の少なくとも表面には、電極であるランド12を含む導電性のパターンがそれぞれスクリーン印刷等により形成され、ランド12がCPU等の外部回路にリード線13を介して接続される。また、絶縁誘電体14は、可撓性や弾性を有する光透過性のシリコーンゴムやウレタンゴム等の材料を使用して円柱形に成形され、グラウンド層2やランド12と共にコンデンサを形成する。
【0022】
外部接続部20は、支持層1の裏面に螺着固定されてグラウンド層2に隙間を介して対向する回路基板21と、この回路基板21とグラウンド層2との間に介在して電気的に圧接される導電体24とから構成され、この導電体24を介してグラウンド層2が外部回路に接続される。回路基板21の少なくとも表面には、電極であるランド22を含む導電性のパターンがそれぞれスクリーン印刷等により形成され、ランド22がCPU等の外部回路にリード線23を介して接続される。
【0023】
導電体24は、例えば導電性エラストマーにより弾性変形可能な円柱形の導電ゴムに成形され、グラウンド層2の裏面と回路基板21のランド22との間に圧縮して介在されており、従来の引き出しラインとして機能する。この導電体24のグラウンド層2に圧接する平坦な先端面には、カーボンや銀ペースト等からなる導電性の接触抵抗抑制膜25が選択的に覆着される。この導電体24の接触抵抗抑制膜25は、グラウンド層2のストレスの作用しない平坦部、換言すれば、グラウンド層2の三次元成形時にZ方向に延伸されない非延伸部に圧接されることが好ましい。
【0024】
上記構成において、入力装操作したい場合には、透明被押圧層4側から模様層3の所定部分、例えば検知部10に対向する対向部を押圧操作すれば良い。すると、コンデンサを形成する絶縁誘電体14が厚さ方向に圧縮変形してグラウンド層2とランド12間の距離を変更し、これらの静電容量が変化し、この静電容量の変化が検出され、かつ入力信号に変換されることにより、入力装操作することができる。なお、絶縁誘電体14を、各々のスイッチとして複数個設けても良い。
【0025】
上記構成によれば、なぞる指でコンデンサを構成するのではなく、押圧操作に伴う絶縁誘電体14の変形により静電容量を変化させるので、絶縁性の手袋を嵌めた場合や義手等の場合でも、簡易な構成で静電容量の変化を確実に検出することができる。したがって、検出感度が向上するので、入力作業に何ら支障を来たすことがない。また、静電容量型入力装置の製造にスクリーン印刷法を用いるので、グラウンド層2や模様層3の厚さを容易に変更したり、これらの成分を簡単に変更することができ、基本設計の自由度を著しく向上させることができる。
【0026】
また、横方向から縦方向に急激に屈曲する部分等に位置する引き出しラインの代わりに導電ゴムからなる導電体24を使用し、外部回路への引き回しに利用するので、例え静電容量型入力装置が立体的に三次元成形される場合でも、導通不良を招いたり、断線するおそれが全くない。さらに、グラウンド層2の平坦部に導電体24を単に接触させるのではなく、圧縮変形させて接触させるので、接続の安定化が大いに期待できる。
【0027】
なお、上記実施形態では上記実施形態では支持層1にグラウンド層2、模様層3、及び透明被押圧層4を順次積層してこれらを立体的に三次元成形したが、グラウンド層2、模様層3、及び透明被押圧層4を積層してこれらを立体的に三次元成形しても良い。また、支持層1を、LEDからの光線を導光して光透過性のグラウンド層2、模様層3、透明被押圧層4方向に導くシリコーンゴム製のライトガイド層としても良い。逆に、支持層1を必要に応じて不透明にしても良い。
【0028】
透明被押圧層4の表面に、操作部であるのを認識させる凹部や凸部を適宜形成しても良い。また、検知部10と外部接続部20の回路基板11・21を同一化することもできる。また、回路基板11・21の表裏面をスルーホール接続することもできる。また、絶縁誘電体14を各々のスイッチとして複数個設けることもできる。また、回路基板21に貫通孔を穿孔し、この貫通孔に導電体24を挿入してその末端部を露出させ、CPU等の外部回路に接続することも可能である。さらに、導電体24を、導電性エラストマーと絶縁性エラストマーとを交互に配列した電気コネクタ等とすることも可能である。
【符号の説明】
【0029】
1 支持層
2 グラウンド層(導電層)
3 模様層
4 透明被押圧層(被押圧層)
10 検知部
11 回路基板(基板)
12 ランド(電極)
14 絶縁誘電体(絶縁体)
20 外部接続部
21 回路基板(基板)
24 導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層の表面に変形可能な導電層と被押圧層とを積層し、これら支持層、導電層、被押圧層のうち少なくとも導電層と被押圧層とを三次元成形し、支持層の裏面には検知部と外部接続部とをそれぞれ配設し、検知部により静電容量の変化を検出して入力信号に変換する静電容量型入力装置であって、
検知部は、支持層の裏面に取り付けられて導電層に対向する基板と、この基板の電極と導電層との間に介在して接続される弾性の絶縁体とを含み、
外部接続部は、支持層の裏面に取り付けられて導電層に対向する基板と、この基板と導電層との間に介在して電気的に接続される導電体とを含み、この導電体を介して導電層を外部回路に接続するようにしたことを特徴とする静電容量型入力装置。
【請求項2】
導電層と被押圧層との間に模様層を介在し、導電層、被押圧層、及び模様層に、光源からの光線を透過する光透過性をそれぞれ付与した請求項1記載の静電容量型入力装置。
【請求項3】
外部接続部の導電体に弾性を付与し、導電体を圧縮変形させるようにした請求項1又は2記載の静電容量型入力装置。

【図1】
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【公開番号】特開2010−251120(P2010−251120A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99222(P2009−99222)
【出願日】平成21年4月15日(2009.4.15)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】