説明

静電容量式エンコーダ及び移動量測定装置

【課題】検出信号にノイズ信号が含まれていても移動量を正確に検出することができ、小型化を図ること。
【解決手段】スケール1とスケールに対向配置されたスライダ2とを備え、スケールとスライダが相対移動自在とされた静電容量式エンコーダ100において、スケールに備えられ、交流電圧が印加される複数の送信電極12と、スライダに備えられ、送信電極から静電誘導により電圧が誘起される受信電極22と、スケールに備えられ、受信電極から静電誘導により電圧が誘起される検出電極13と、検出電極に誘起される電圧の検出信号に含まれるノイズ信号を除去するノイズ除去手段3と、ノイズ除去手段によりノイズ信号が除去された検出信号と送信電極に印加される電圧の印加信号のズレ量からスケールとスライダの相対移動量を検出する移動量検出手段3と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式エンコーダ及び移動量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ノギス等の精密測定機器やその他の精密機器のなかには、移動体の移動量を検出するための静電容量式エンコーダが備えられているものがある。
静電容量式エンコーダは、複数の送信電極及び検出電極を有する固定子と、受信電極を有する移動子とを備えており、固定子に対して移動子が移動したときの静電容量の変化を検出電極で検出することで移動子の移動量を検出するものである。
具体的には、複数の送信電極にそれぞれ位相をずらした正弦波状に振幅変調された印加信号を印加すると、静電誘導により受信電極を介して検出電極に検出信号が誘起される。そして、印加信号と検出信号との位相差を検出することにより、固定子に対する移動子の移動量を検出することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−235721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、各機器には、小型化が求められており、静電容量式エンコーダについてもより小型化することが望まれている。静電容量式エンコーダを小型化するためには、各電極の隙間を極力小さくし、デッドスペースを減らすことが必要である。
しかし、送信電極と検出電極の間隔が小さくなると、送信電極に電圧信号を印加した際に、その印加信号の一部が検出電極に誘起され、検出電極に検出されてしまうことがある。
この場合、実際に検出される検出信号は、ノイズ信号と受信電極から誘起される検出信号とを含んだものとなるため、移動量を正確に検出することができないという問題があった。特に、この問題は、S/N比が小さくなるほど、ノイズの影響が無視できなくなるので、顕著に現れる。
【0005】
そこで、本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、検出信号にノイズ信号が含まれていても移動量を正確に検出することができ、小型化を図ることができる静電容量式エンコーダ及び移動量測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、スケールと前記スケールに対向配置されたスライダとを備え、前記スケールと前記スライダが相対移動自在とされた静電容量式エンコーダにおいて、
前記スケールに備えられ、交流電圧が印加される複数の送信電極と、
前記スライダに備えられ、前記送信電極から静電誘導により電圧が誘起される受信電極と、
前記スケールに備えられ、前記受信電極から静電誘導により電圧が誘起される検出電極と、
前記検出電極に誘起される電圧の検出信号に含まれるノイズ信号を除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ除去手段によりノイズ信号が除去された検出信号と前記送信電極に印加される電圧の印加信号のズレ量から前記スケールと前記スライダの相対移動量を検出する移動量検出手段と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、上記の発明において、
ノイズ信号を記憶する記憶手段を備え、
前記ノイズ除去手段は、前記検出電極に誘起される電圧の検出信号から前記記憶手段に記憶されたノイズ信号を差し引くことを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上記の発明において、
前記ノイズ信号は、前記受信電極と前記送信電極との間で静電誘導が発生しないように離隔した状態において、前記検出電極に誘起される電圧の信号であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記の発明において、
前記送信電極に印加される電圧の印加信号は、互いに位相の異なる正弦波状に振幅変調された信号であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の発明において、
ノイズ信号が除去された検出信号と前記送信電極に印加される電圧の印加信号のズレ量は両信号の位相差であり、
前記移動量検出手段は、この位相差から前記スケールと前記スライダの相対移動量を検出することを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、移動量測定装置であって、
上記の静電容量式エンコーダを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ノイズ除去手段は、検出電極に誘起される電圧の検出信号に含まれるノイズ信号を除去し、移動量検出手段は、ノイズ除去手段によりノイズ信号が除去された検出信号と送信電極に印加される電圧の印加信号のズレ量からスケールとスライダの相対移動量を検出する。
これにより、検出信号にノイズ信号が含まれていてもノイズ除去手段が検出信号からノイズ信号を除去するので、移動量を正確に検出することができ、静電容量式エンコーダの小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は静電容量式エンコーダのスケールの概略平面図、(b)は静電容量式エンコーダのスライダの概略平面図。
【図2】静電容量式エンコーダと制御回路との間の信号のやりとりを示すブロック図。
【図3】印加信号と真の検出信号の波形を示す図。
【図4】ノイズ信号の波形を示す図。
【図5】ノイズ信号を含んだ検出信号と印加信号の波形を示す図。
【図6】S/N比と検出誤差との関係を示す図。
【図7】レンズ鏡胴の内部の斜視図。
【図8】レンズ鏡胴の平面図。
【図9】スムーズインパクト駆動機構の原理を説明する模式図。
【図10】スムーズインパクト駆動機構において、圧電素子に入力される電圧波形とレンズ枠の変位との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る静電容量式エンコーダ及び移動量測定装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0015】
<静電容量式エンコーダの構成>
図1、図2に示すように、静電容量式エンコーダ100は、スケール1と、スライダ2と、制御回路3と、記憶部4とを備えている。
スケール1とスライダ2は、互いの面が対向するように配置されている。スライダ2は、スケール1に対して相対移動自在に設けられている。
【0016】
(スケール)
図1(a)に示すように、スケール1は、固定子として機能し、基板11と、送信電極12と、検出電極13とを備えている。
基板11は、長方形の板状に形成されており、送信電極12と検出電極13が取り付けられる。
送信電極12は、基板11の一方の表面に設けられている。送信電極12は、一方向に長尺な平面視長方形状に形成されている。送信電極12は、基板11に複数(本実施形態においては8個)設けられており、各送信電極12は、等間隔に並んで配置されている。
送信電極12は、電圧印加回路5に接続されており、電圧印加回路5から交流電圧が印加される。ここで、電圧印加回路5から送信電極12に印加される電圧の印加信号は、互いに位相の異なる正弦波状に振幅変調された信号である。
送信電極12に印加される印加信号は、制御回路3にも送信され、スケール1とスライダ2の相対移動量の算出に用いられる。各送信電極12には、隣接する送信電極12に対して位相が45°ずれた印加信号が与えられることとなる。
【0017】
検出電極13は、基板11における送信電極12と同じ側の面に設けられている。検出電極13は、一方向に長尺な平面視長方形状に形成されている。検出電極13は、長手方向が送信電極12の並び方向に沿うように配置されている。すなわち、送信電極12の長手方向と検出電極13の長手方向が直交するようにそれぞれが基板11に配置されている。
検出電極13の長手方向の長さは、並べられた8個の送信電極12のうち、一端に配置された送信電極12の側縁から他端に配置された送信電極12の側縁までの長さと等しくなるように形成されている。
検出電極13は、それぞれの送信電極12の一端から一定の距離をあけて配置されている。
検出電極13は、後述する受信電極22から静電誘導により電圧が誘起される。この誘起された電圧信号は、検出信号として制御回路3に出力され、基板11と基板21の相対移動量、すなわち、スケール1とスライダ2の相対移動量の算出に用いられる。
【0018】
(スライダ)
図1(b)に示すように、スライダ2は、移動子として機能し、基板21と、受信電極22とを備えている。
基板21は、基板11に対向するように配置され、基板11に対して相対移動自在に配置されている。
基板21は、長方形の板状に形成されており、受信電極22が取り付けられる。
受信電極22は、基板21における基板11との対向面に設けられている。受信電極22は、送信電極12に対向する領域と検出電極13に対向する領域とにわたって設けられている。すなわち、受信電極22のうち、送信電極12に対向する送信電極対向部22aにおいては送信電極12からの静電誘導により電圧が誘起され、検出電極13に対向する検出電極対向部22bにおいては、静電誘導により検出電極13に電圧を誘起させる。
受信電極対向部22aと検出電極対向部22bは、電気的に接続されており、受信電極対向部22aで誘起された電圧は、検出電極対向部22bにも作用し、検出電極対向部22bからの静電誘導により検出電極13に検出信号を出力させることができる。
受信電極22は、一枚の板状の電極に切欠部22cを形成したものであり、この切欠部22cを境として受信電極対向部22aと検出電極対向部22bが形成されている。
【0019】
(制御回路)
図2に示すように、制御回路3は、電圧印加回路5から送信電極12への通電制御や、スケール1とスライダ2の相対移動量検出の際の演算等を行う。
具体的には、制御回路3は、検出電極12に誘起される電圧の検出信号から、その検出信号に含まれるノイズ信号を除去する。すなわち、制御回路3は、ノイズ除去手段として機能する。ここで、検出電極13に誘起される電圧の検出信号から記憶部4に記憶されたノイズ信号を差し引くことで、検出信号からノイズ信号を除去することができる。これにより、ノイズ信号を含まない真の検出信号を求めることができる。
また、制御回路3は、ノイズ信号が除去された検出信号と送信電極12に印加される電圧の印加信号のズレ量(位相差)からスケール1とスライダ2の相対移動量を検出する。すなわち、制御回路3は、移動量検出手段として機能する。
ここで、制御回路3による移動量の検出は、ノイズ信号が除去された検出信号と送信電極12に印加される電圧の印加信号の位相差からスケール1とスライダ2の相対移動量を検出する。
【0020】
(記憶部)
図2に示すように、記憶部4は、ノイズ信号を記憶する。すなわち、記憶部4は、記憶手段として機能する。ノイズ信号は、予め検出したものを記憶部4に記憶させておく。
ここで、ノイズ信号の検出方法について説明すると、まず、スライダ2をスケール1から外す、又は、スライダ2の受信電極22がスケール1の送信電極12と対向しない位置までスライダ2を移動させる。言い換えると、受信電極22と送信電極12との間で静電誘導が発生しない位置までスライダ2を移動させ、受信電極22と送信電極12を離隔した位置に配置する。
そして、この状態で検出電極13における検出信号を検出する。受信電極22と送信電極12とが静電誘導の発生しない位置まで引き離されていれば、本来検出信号は検出されないはずである。しかし、検出信号が検出されるということはその検出された信号が送信電極12から検出電極13に誘起された電圧信号、すなわち印加信号の漏れであるため、移動量検出に悪影響(誤差の発生)を及ぼすノイズ信号であると確認できる。この検出信号をノイズ信号として記憶部4に記憶させる。
【0021】
<静電容量式エンコーダの移動量検出の原理>
上記の静電容量式エンコーダ100による移動量検出の原理について説明する。
制御回路3による電圧印加回路5の制御により、送信電極12に交流電圧を印加すると、送信電極12に対向する受信電極22の受信電極対向部22aには静電誘導により電圧が誘起される。
受信電極22の受信電極対向部22aに電圧が誘起されると、検出電極対向部22bにも電圧が誘起される。
検出電極対向部22bに電圧が誘起されると、検出電極対向部22bに対向する検出電極13には静電誘導により電圧が誘起される。
ここで、検出電極13において誘起された電圧の検出信号には、送信電極12から検出電極13に静電誘導により誘起された電圧のノイズ信号が含まれているため、制御回路3は、記憶部4に記憶されたノイズ信号を読み出し、検出信号からノイズ信号の成分を差し引く。これにより、ノイズ信号を除去した真の検出信号が得られる。
【0022】
具体例を挙げて説明すると、図3に示すように、スライダ2を所定量移動させたときの位相のズレが72°であるとする。検出電極13にノイズが誘起されなければ、図3に示すように、印加信号(図3の実線で表示)と同じ波長、振幅の正弦波が72°ずれた状態で検出信号(図3の破線で表示)として出力されるはずである。
しかし、静電容量式エンコーダ100の小型化により、送信電極12と検出電極13の間隔が小さくなって、送信電極12に印加される電圧が検出電極13に誘起されると、その誘起された電圧が図4に示すようなノイズ信号として真の検出信号に合成される。
すると、図5に示すように、実際に検出される検出信号は位相も振幅も真の検出信号とは大きく異なることとなる。これにより、位相のズレ量も異なってくるので、スライダ2の移動量の測定にも誤差が生じてしまう。
【0023】
そこで、予め記憶部4に図4に示すようなノイズ信号を記憶させておき、図5に示す検出信号から図4に示すノイズ信号を差し引くことで、図3に示すような真の検出信号が得られる。
なお、記憶部4に記憶されるノイズ信号は、送信電極12と受信電極22とが静電誘導を起こさないように十分に離隔させた状態にしておいて、検出電極13により検出された検出信号をノイズ信号としている。そのため、純粋にノイズ信号だけを検出することができるので、ノイズ信号を差し引いて得られる検出信号は信頼できる。
【0024】
そして、制御回路3は、ノイズ信号を除去した真の検出信号と印加信号の位相差からスケール1に対するスライダ2の移動量を検出する。これにより、スライダ2の移動量を正しく検出することができる。
図6は、スライダ2が5mm移動すると検出信号の位相が360°ずれる場合のS/N比と誤差との関係を示したグラフである。
図6に示すように、S/N比が小さくなるにつれて、誤差による影響が大きくなるので、ノイズは無視できないが、制御回路3は、検出信号から予め発生するノイズ信号を差し引いてスライダ2の移動量を求めることができるので、S/N比に関係なく、正し移動量を検出することができる。
【0025】
<移動量測定装置の構成>
次に、上記の静電容量式エンコーダ100を備えたレンズ鏡胴について説明する。レンズ鏡胴は、カメラのレンズを保持するものであるが、焦点を合わせる際にレンズの移動量を測定する必要があり、この移動量の測定に静電容量式エンコーダ100が用いられている。すなわち、レンズ鏡胴は、移動量測定装置としての機能も有している。
【0026】
(主胴、レンズ枠)
図7、図8に示すように、レンズ鏡胴200は、主胴71と、レンズ枠72と、駆動機構73と、静電容量式エンコーダ100とを備えている。
主胴71は、レンズ枠72、駆動機構73、静電容量式エンコーダ100が収納されるケース体である。主胴71には、1群のレンズと4群のレンズが嵌め込まれ、固定されている。
レンズ枠72は、二つ設けられ、一方が2群のレンズを支持し、他方が3群のレンズを支持する。各レンズ枠72は、一端が駆動機構73に支持され、他端が主胴71に設けられたガイド75に移動自在に支持されている。
二つのレンズ枠72は並んで配置され、駆動機構73により並設方向に沿って往復移動自在とされている。駆動機構73により二つのレンズ枠72間の距離を変えることで、光学ズームをワイドからテレまで調節することができる。
【0027】
駆動機構73は、レンズ枠72をその並び方向に沿って移動させる。駆動機構73は、スムーズインパクト駆動機構により構成されている。スムーズインパクト駆動機構は、圧電素子の体積変化と移動体(移動させる対象であり、本実施形態においてはレンズ枠)の慣性と摩擦力を利用したアクチュエータである。
駆動機構73は、それぞれのレンズ枠72毎に設けられている。
図7から図9に示すように、駆動機構73は、固定部材80と、複数の圧電素子81と、駆動摩擦部材82とを備えている。
固定部材80は、主胴71に固定されている。固定部材80には、複数の圧電素子81を積層した圧電素子層が取り付けられている。
圧電素子81は、レンズ枠72を移動させる方向に沿って複数積層されており、積層された圧電素子層の一端が固定部材80に取り付けられ、他端に駆動摩擦部材82が取り付けられている。駆動摩擦部材82には、レンズ枠72が摩擦保持されるように取り付けられている。
【0028】
圧電素子81は、図10に示すような略鋸歯状の波形を有する電圧信号を入力することにより、圧電素子81を急激に膨張及び収縮させたり、ゆっくりと膨張及び収縮させたりすることができる。
図9(a)に示す状態において、図10に示すような波形の電圧信号を圧電素子81に入力すると、圧電素子81に入力される電圧は時間とともに増加していくので、圧電素子81は膨張する。このとき、入力される電圧は比較的緩やかに増加するため、圧電素子81をゆっくりと膨張させることができる。これにより、駆動摩擦部材82もゆっくりと軸方向(レンズ枠72の移動方向A)に移動する。
図9(b)に示すように、駆動摩擦部材82がゆっくり移動すると、駆動摩擦部材82に摩擦保持されているレンズ枠72も駆動摩擦部材82とともに移動する。
しばらくすると、圧電素子81に入力される電圧は減少するので、圧電素子81は収縮する。このとき、入力される電圧は比較的急激に減少するため、圧電素子81を急速に収縮させることができる。これにより、駆動摩擦部材82も急速に軸方向(レンズ枠72の移動方向B)に移動する。
図9(c)に示すように、駆動摩擦部材82が急速に移動すると、レンズ枠72がその位置に留まろうとする慣性力がレンズ枠72と駆動摩擦部材82との間の摩擦力よりも大きくなるので、駆動摩擦部材82だけが移動し、レンズ枠72は同じ位置に留まる。
このように、図10に示すような略鋸歯状の波形を有する電圧信号を繰り返し圧電素子81に入力することで、レンズ枠72をA方向に移動させることができる。
なお、上記とは逆に、入力する電圧を急激に増加させ、ゆっくり減少させることで、レンズ枠72を逆方向Bに移動させることができる。
従って、圧電素子81に入力する電圧信号の波形を変えるだけで、レンズ枠72の移動制御を行うことができる。
【0029】
図8に示すように、静電容量式エンコーダ100は、固定子となるスケール1を主胴71の内壁面に固定し、移動子となるスライダ2をレンズ枠72の表面に取り付ける。もちろん、スケール1は、スライダ2の移動経路に対向する位置に固定することが必要である。
ここで、検出信号に含まれるノイズ信号を検出する際には、レンズ枠72をスケール1に対向しない位置まで移動させ、移動させた後に検出電極13から検出信号を検出すればよい。
【0030】
<作用・効果>
以上のように、静電容量式エンコーダ100によれば、制御回路3は、検出電極13に誘起される電圧の検出信号に含まれるノイズ信号を除去し、ノイズ信号が除去された真の検出信号と電圧印加回路5から送信電極12に印加される電圧の印加信号の位相差(位相のズレ量)からスケール1とスライダ2の相対移動量を検出する。
これにより、検出信号にノイズ信号が含まれていても制御回路3が検出信号からノイズ信号を除去するので、移動量を正確に検出することができ、静電容量式エンコーダ100の小型化を図ることができる。
【0031】
また、ノイズ信号は予め測定して記憶部4に記憶させておき、検出信号から記憶部4に記憶されたノイズ信号を差し引くことでノイズ信号を除去することができるので、簡易かつ確実にノイズ信号を除去することができる。
また、ノイズ信号を検出する際には、スケール1の送信電極12とスライダ2の受信電極22との間で静電誘導が生じないように送信電極12と受信電極22が対向しないように離隔させた状態で検出電極13から検出される信号をノイズ信号としているので、受信電極22からの静電誘導による信号の影響を完全に排除することができ、ノイズ信号だけを検出することができる。
【0032】
また、送信電極12に印加される電圧の印加信号は、互いに位相の異なる正弦波状に振幅変調された信号であるため、位相のズレから移動量を測定する際に有用な信号として用いることができる。
また、このような静電容量式エンコーダ100をレンズ鏡胴200に設けることで、高い精度が要求される移動量測定装置に用いることができる。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、発明の本質的部分を変更しない範囲内で自由に設計変更が可能である。
静電容量式エンコーダを用いて移動量測定装置としての機能を持たせたものは、上記のレンズ鏡胴に限らず、ノギス、マイクロメータ等の精密測定機器に用いることも可能である。
また、送信電極と受信電極が対向して静電誘導が可能であるとともに、受信電極と検出電極が対向して静電誘導が可能であれば、各電極の形状、数量、配置は自由に変更可能であり、上記実施形態の態様に限定されるものではない。
また、駆動機構の構成は任意であって、スムーズインパクト機構に限らず、シリンダ装置、ラックギヤとピニオンギヤからなる歯車機構を用いてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 スケール
2 スライダ
3 制御回路(ノイズ除去手段、移動量検出手段)
4 記憶部(記憶手段)
12 送信電極
13 検出電極
22 受信電極
100 静電容量式エンコーダ
200 レンズ鏡胴(移動量測定装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スケールと前記スケールに対向配置されたスライダとを備え、前記スケールと前記スライダが相対移動自在とされた静電容量式エンコーダにおいて、
前記スケールに備えられ、交流電圧が印加される複数の送信電極と、
前記スライダに備えられ、前記送信電極から静電誘導により電圧が誘起される受信電極と、
前記スケールに備えられ、前記受信電極から静電誘導により電圧が誘起される検出電極と、
前記検出電極に誘起される電圧の検出信号に含まれるノイズ信号を除去するノイズ除去手段と、
前記ノイズ除去手段によりノイズ信号が除去された検出信号と前記送信電極に印加される電圧の印加信号のズレ量から前記スケールと前記スライダの相対移動量を検出する移動量検出手段と、
を備えることを特徴とする静電容量式エンコーダ。
【請求項2】
ノイズ信号を記憶する記憶手段を備え、
前記ノイズ除去手段は、前記検出電極に誘起される電圧の検出信号から前記記憶手段に記憶されたノイズ信号を差し引くことを特徴とする請求項1に記載の静電容量式エンコーダ。
【請求項3】
前記ノイズ信号は、前記受信電極と前記送信電極との間で静電誘導が発生しないように離隔した状態において、前記検出電極に誘起される電圧の信号であることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電容量式エンコーダ。
【請求項4】
前記送信電極に印加される電圧の印加信号は、互いに位相の異なる正弦波状に振幅変調された信号であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の静電容量式エンコーダ。
【請求項5】
ノイズ信号が除去された検出信号と前記送信電極に印加される電圧の印加信号のズレ量は両信号の位相差であり、
前記移動量検出手段は、この位相差から前記スケールと前記スライダの相対移動量を検出することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の静電容量式エンコーダ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の静電容量式エンコーダを備えることを特徴とする移動量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−185882(P2011−185882A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53906(P2010−53906)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】