静電粉体塗装の塗装ブース
【課題】静電粉体塗装の塗装ブースからの粉漏れがなく、しかもオーバースプレー粉と被塗装物との接触機会を増加させることにより、吹き付け時の粉体塗料の塗着効率を向上させる。
【解決手段】塗装ブースを、集塵機3に接続される吸引ダクト2を備えたブース本体1と、被塗装物Aを囲む粉体塗料対流室4との2重構造とし、粉体塗料対流室4に塗装ガン8を設置し、粉体塗料対流室4内で被塗装物Aに粉体塗料Bを吹き付け、粉体塗料Bを粉体塗料対流室4内に充満させることにより、粉体塗料Bと被塗装物Aとの接触機会を増やして被塗装物Aに粉体塗料Bを十分に付着させ、粉体塗料対流室4から漏れ出すオーバースプレー粉の量を最小限に抑えて、粉体塗料対流室4から漏れ出したオーバースプレー粉をブース本体1から吸引して集塵機3に供給するようにした。
【解決手段】塗装ブースを、集塵機3に接続される吸引ダクト2を備えたブース本体1と、被塗装物Aを囲む粉体塗料対流室4との2重構造とし、粉体塗料対流室4に塗装ガン8を設置し、粉体塗料対流室4内で被塗装物Aに粉体塗料Bを吹き付け、粉体塗料Bを粉体塗料対流室4内に充満させることにより、粉体塗料Bと被塗装物Aとの接触機会を増やして被塗装物Aに粉体塗料Bを十分に付着させ、粉体塗料対流室4から漏れ出すオーバースプレー粉の量を最小限に抑えて、粉体塗料対流室4から漏れ出したオーバースプレー粉をブース本体1から吸引して集塵機3に供給するようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電粉体塗装の塗装ブース、特に塗装ガンから被塗装物に対して吹き付けられた粉体塗料を、被塗装物に効率よく付着させることができる静電粉体塗装の塗装ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電粉体塗装は、静電塗装ガンによって粉体塗料を被塗装物に吹き付け、静電気によって粉体塗料を被塗装物に付着させる塗装方法である。
【0003】
この静電粉体塗装において、被塗装物への粉体塗料の吹き付けは、粉体塗料の飛散を防止するために、通常、塗装ブース内で行なわれる。そして、被塗装物に付着しなかったオーバースプレー粉を回収精選し、再利用している。
【0004】
静電粉体塗装は、当初、ガードレール、フェンスなどの道路資材から始まり、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、エアコン等の家電製品への塗装がなされ、近年では、ワイパー、オイルフィルター、アルミホイール、ブレーキパッド等の車部品への採用も多く見られる。特に、環境、エコロジーの点から、学校の椅子、机の塗装にも、静電粉体塗装が広く採用されるに至っている。
【0005】
ところで、従来、オーバースプレー粉は、塗装ブースに回収ダクトを接続し、塗装ブース全体からオーバースプレー粉を回収するようにしており、このような塗装ブースは特許文献1にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−361121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般に、被塗装物を塗装する場合、コンベアーに被塗装物を載せ、前処理、水洗、水切り乾燥炉を経由し、塗装ブースにて塗装を行なう。塗装ブースには、集塵機に接続された吸引ダクトを設置し、オーバースプレー粉が塗装ブース外に漏れないように、且つそのオーバースプレー粉を再使用するために、吸引回収して再度塗料タンクに戻している。
【0008】
粉体塗装は、上記のように、オーバースプレー粉の再使用が可能であるが、塗装ガンから被塗装物に対して粉体塗料を吹き付けた際に、被塗装物に付着する粉体塗料が多いほど、即ち、塗着効率が高いほど、被塗装物に付着しないオーバースプレー粉が減り、塗装の作業性が向上する。
【0009】
したがって、粉体塗装においては、当初の吹き付け時の塗着効率を上げることが重要である。
【0010】
この塗着効率を上げる方法として、従来、被塗装物の後方に平板によって形成された反射板などを立てかけて、その反射板で、被塗装物の裏面への付き回りをよくする方法が知られている。
【0011】
しかし、オーバースプレー粉のほとんどは、塗装ブースに設置された集塵機の吸引力によって、急速に集塵機に引かれてしまうので、後方に反射板を設置してもほとんど塗着効率が向上しない。このため、集塵機の吸引力を小さくし、オーバースプレー粉が被塗装物に付着し易くするために、例えば、集塵機の吸引口に設置したダンパーを閉方向に調整したり、インバーターにて塗装ブースの集塵用モーターの回転数を落としたりすることがある。
【0012】
ところが、このようにすると塗装ブースからのオーバースプレー粉の粉漏れが発生し、塗装ブース周辺の環境を悪くするという問題が生じる。また、一日の製造において、例えば、朝に塗装ブースからの粉漏れが生じない限界の風量に、集塵機の風量を調整し、塗装を行なうと、当初は粉漏れの問題がなくても、工場内温度の上昇(雰囲気温度の上昇)や、焼付け炉内の循環によるコンベアーチェーンの温度上昇による上昇気流で、例えば、塗装ブース出入口からのオーバースプレー粉の飛散が見られるようになる。特に、被塗装物を予熱して厚膜塗装を行なう場合には、温度による上昇気流によりオーバースプレー粉が急速に塗装ブース外に飛散し易くなる。そのため、塗装ブースの集塵機の能力をさらにアップして、吸引すると、塗装ガンから吐出された粉体塗料が、吸引ダクトから急速に吸引されるため、オーバースプレー粉を被塗装物に再付着させることは望めない。
【0013】
そこで、この発明は、塗装ブースからの粉漏れがなく、しかもオーバースプレー粉が被塗装物に十分に再付着し易く、吹き付け時の塗着効率を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、上記の課題を解決するために、塗装ブースを、集塵機に接続される吸引ダクトを備えたブース本体と、被塗装物を囲む粉体塗料対流室との2重構造とし、粉体塗料対流室に塗装ガンを設置し、粉体塗料対流室内で被塗装物に粉体塗料を吹き付け、粉体塗料を粉体塗料対流室内に充満させることにより、粉体塗料と被塗装物との接触機会を増やして被塗装物に粉体塗料を十分に付着させ、粉体塗料対流室から漏れ出すオーバースプレー粉の量を最小限に抑えて、粉体塗料対流室から漏れ出したオーバースプレー粉をブース本体から吸引して集塵機に供給するようにしたものである。
【0015】
被塗装物は、搬送コンベアーによってブース本体と粉体塗料対流室を通過し、粉体塗料対流室の通過中に粉体塗料が吹き付けられる。
【0016】
粉体塗料対流室内は、静電塗装ガンからの粉体塗料の吹き付けにより陽圧状態に保持されている。
【0017】
静電塗装ガンは、粉体塗料対流室の壁面からガン先が突出し、粉体塗料対流室の壁面と静電塗装ガンのガン先との間を密閉することにより、静電塗装ガンと粉体塗料対流室の壁面との間の隙間からのオーバースプレー粉の漏れ出しを防止できる。
【0018】
また、粉体塗料対流室の壁面のパネルと静電塗装ガンのガン先とがフラットになるように、静電塗装ガンを設置すると、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れがガン先によって遮られないので、オーバースプレー粉が粉体塗料対流室内を循環し易く、被塗装物に対するオーバースプレー粉の付着機会が増加する。また、静電塗装ガンを設置した粉体塗料対流室の壁面のパネルがフラットであると、清掃も簡単に行える。
【0019】
静電塗装ガンは、被塗装物に対するオーバースプレー粉の付着機会を増加させるために、粉体塗料対流室の対向位置に複数設置することが望ましい。
【0020】
粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れを調整するために、粉体塗料対流室の被塗装物の出入り口に、ブース本体の出入り口に向かって伸びる袖を設置することが望ましい。
【0021】
さらに、粉体塗料対流室の出入り口の袖を、ブース本体の出入り口に向かって長さ調整可能に設けることにより、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れを調整することができ、それによって被塗装物に対して、よりオーバースプレー粉を付着させることができる。
【0022】
また、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れを調整し、ブース本体の出入り口からの粉漏れを防止するために、ブース本体の被塗装物の出入り口に、粉体塗料対流室の出入り口に向かって延びる袖を設置し、このブース本体の出入り口の袖を、粉体塗料対流室の出入り口に向かって長さ調整可能に設けることが好ましい。
【0023】
さらに、粉体塗料対流室内に充満する粉体塗料の粉体塗料対流室内での循環を向上させて、被塗装物に対する粉体塗料の付着機会を増加させるために、エアー噴出装置を粉体塗料対流室に設置することができる。
【0024】
粉体塗料対流室の底面には、オーバースプレー粉を流出させる開口部が設置されており、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れを調整するために、下方の開口部の大きさを調整する調整板を設置することが望ましい。
【0025】
上記粉体塗料対流室の底面の開口部の下方に、オーバースプレー粉を溜めるための回収粉タンクを設置することができる。
【0026】
そして、粉体塗料対流室の底面に設置した回収粉タンクに、回収粉タンク内に溜めたオーバースプレー粉を粉体塗料対流室内に吹き込む静電塗装ガンを設置することにより、粉体塗料対流室内での粉体塗料の塗着効率を向上させることができる。
【0027】
粉体塗料対流室は、ブース本体に対して移動可能に設けることにより、粉体塗料対流室を交換、清掃することにより、色替え作業を効率的に行なうことができる。
【0028】
粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れの調整のためと、ブース本体からの粉漏れを最小限にするために、ブース本体の吸引ダクトの位置は、被塗装物の搬送方向に沿って変更可能に設置することが望ましい。
【発明の効果】
【0029】
この発明においては、上記のように、ブース本体内に、被塗装物を囲む粉体塗料対流室を設置し、粉体塗料対流室内で被塗装物に粉体塗料の吹き付けを行なうので、吹き付けられた粉体塗料は、ブース本体の吸引ダクトから急速に吸引されることなく、粉体塗料対流室内に充満し、被塗装物と粉体塗料とが粉体塗料対流室内で十分に接触する。
【0030】
したがって、吹き付けた粉体塗料の多くが粉体塗料対流室内で被塗装物に付着するため、粉体塗料の塗着効率が向上し、粉体塗料対流室から漏れ出すオーバースプレー粉の量も低減させることができるので、粉体塗料対流室から漏れ出したオーバースプレー粉をブース本体の吸引ダクトから確実に吸引することができ、ブース本体からの粉漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に係る静電粉体塗装の塗装ブースの第1の実施形態を示す概略横断平面図である。
【図2】図1の実施形態の概略縦断正面図である。
【図3】図1の実施形態のブース本体を切り欠いた概略側面図である。
【図4】図1の実施形態の変形例を示す概略縦断正面図である。
【図5】図1の実施形態の粉体塗料対流室の変形例を示す概略縦断正面図である。
【図6】図1の実施形態の粉体塗料対流室への静電塗装ガンの取付け変形例を示す概略縦断正面図である。
【図7】この発明に係る静電粉体塗装の塗装ブースの第2の実施形態を示す概略横断平面図である。
【図8】図7の実施形態の概略縦断正面図である。
【図9】図7の実施形態のブース本体を切り欠いた概略側面図である。
【図10】図7の実施形態の粉体塗料対流室の設置例を示す概略横断平面図である。
【図11】この発明に係る静電粉体塗装の塗装ブースの第3の実施形態を示す概略横断平面図である。
【図12】図11の実施形態の概略縦断正面図である。
【図13】図11の実施形態の粉体塗料対流室の下部に設置する塗料タンクの変形例を示す概略縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明に係る塗装ブースの第1の実施形態について説明する。
【0033】
第1の実施形態に係る塗装ブースは、例えば、三日月形の農機具部品の塗装に使用され、図1〜図3に示すように、集塵機3に接続される吸引ダクト2を備えたブース本体1と、被塗装物Aを囲む粉体塗料対流室4との2重構造になっている。
【0034】
粉体塗料対流室4は、被塗装物Aの4方向を囲むように設置されているが、ブース本体1と粉体塗料対流室4とには、被塗装物Aが通過する出入り口5、6が設けられ、被塗装物Aが搬送コンベアー7によってブース本体1と粉体塗料対流室4を通過するようになっており、粉体塗料対流室4の通過中に静電塗装ガン8によって粉体塗料Bが吹き付けられる。
【0035】
粉体塗料対流室4の対向する両側壁には、静電塗装ガン8が2ガンずつ対向するように設置されている。この実施形態では、多数の分岐ノズル27の付いた摩擦式帯電ガンが採用されている。静電塗装ガン8は、コロナ式帯電ガンでもよく、粉体塗料Bへの印加方式は特に限定されない。
【0036】
静電塗装ガン8のガン先端部は、粉体塗料対流室4の壁面に固定され、ガン先端部と壁面との間は密閉されている。各対向する静電塗装ガン8は、互いの噴射パターンがぶつかり合うように配置されている。
【0037】
粉体塗料対流室4の下部底面には、スリット形状の開口部9が設けられている。この開口部9の壁面には、スリット形状の開口部9の幅を調整する調整板10が上下動可能に設置されている。
【0038】
粉体塗料対流室4は、ブース本体1に、車輪23の付いた支柱24によって移動可能に設置しているが、ブース本体1に吊り下げて支持するようにしてもよい。
【0039】
粉体塗料対流室4の被塗装物Aの出入り口6には、ブース本体1の出入り口5に向かって延びる袖11が設置されている。この袖11は、内外2重の筒部材からなり、内外2重の筒部材を伸縮させることによってブース本体1の出入り口5との間隔を調整できるようにして、粉体塗料対流室4から漏れ出すオーバースプレー粉の流れや量を調整できるようにしている。
【0040】
被塗装物Aは、ブース本体1の上方に設置された搬送コンベアー7に吊り下げられてブース本体1から粉体塗料対流室4内へと引き入れられ、粉体塗料対流室4内において粉体塗料Bが吹き付けられ、その後、粉体塗料対流室4の出入り口6、ブース本体1の出入り口5を経て、ブース本体1から引き出される。
【0041】
被塗装物Aが粉体塗料対流室4内へと引き入れられると、粉体塗料対流室4の側壁の対向位置に設置された静電塗装ガン8の分岐ノズル27から被塗装物Aに向かって粉体塗料Bが吹き付けられ、塗装が開始される。
【0042】
静電塗装ガン8から吐出された粉体塗料Bは、粉体塗料対流室4内で被塗装物Aに付着する。そして、対向位置に設置された静電塗装ガン8により、粉体塗料Bは、初めに激しくぶつかり合い、その勢いにより、粉体塗料Bの方向が、スクランブル状になり、再度、被塗装物Aに向かって付着する。付着しなかった粉体塗料Bは、再度、粉体塗料対流室4の壁面に衝突し、方向を変えて、被塗装物Aに向かって付着しようとする。
【0043】
この実施形態において、粉体塗料対流室4の壁面を構成するパネルは、ポリプロピレン系の絶縁樹脂を使用している。パネルの材質は、塩化ビニール、ポリカーボネート等のそれ以外の樹脂でもよい。また、金属製のパネルでもよい。
【0044】
粉体塗料対流室4には、吸引装置を設置していないが、粉体塗料対流室4内は静電塗装ガン8からの粉体塗料Bの吐出によって陽圧状態になるため、粉体塗料対流室4の出入り口6からオーバースプレー粉の一部が、ブース本体1に漏れ出し、ブース本体1の吸引ダクト2に吸引される。
【0045】
このように、オーバースプレー粉は、粉体塗料対流室4の壁面の内面と衝突して跳ね返り、被塗装物Aに対して再付着が繰り返される。このようにして、静電塗装ガン8から吐出された粉体塗料Aは、高い塗着効率で被塗装物Aに付着する。そして、粉体塗料対流室4内は、陽圧状態になっているため、オーバースプレー粉は、最後には、ブース本体1内に漏れ出す。
【0046】
ブース本体1は、集塵機3に接続された吸引ダクト2によって強制吸引(排気)され、ブース本体1内は負圧になっているため、粉体塗料対流室4から漏れ出したオーバースプレー粉は、ブース本体1の吸引ダクト2に吸引され、集塵機3に回収される。
【0047】
次に、図1〜図3の実施形態では、粉体塗料対流室4の内面の各コーナー部を、鋭角又は90°にしているが、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の壁面との衝突回数を多くするために、図4に示すように、コーナー部12をカーブ(アール)式にして、吐出された粉体塗料Bが粉体塗料対流室4内で循環し易くするようにしてもよい。
【0048】
さらに、オーバースプレー粉の粉体塗料対流室4内における衝突回転数を多くして、被塗装物Aに対するオーバースプレー粉の付着機会を増加させるために、図5に示すように、補助エアーを噴出するエアー噴出装置13を粉体塗料対流室4に設置してもよい。
【0049】
図1〜図3の実施形態では、静電塗装ガン8のガン先ノズルが粉体塗料対流室4内に突き出るように設置しているが、図6に示すように、粉体塗料対流室4の壁面と静電塗装ガン8のガン先とがフラットになるように、パネル14を設置すると、粉体塗料対流室4内におけるオーバースプレー粉の流れがガン先によって遮られないので、オーバースプレー粉が粉体塗料対流室4内を循環し易くなり、被塗装物Aに対するオーバースプレー粉の付着機会が増加する。また、パネル14によって、粉体塗料対流室4の内面をフラットにすることにより、粉体塗料対流室4の壁面の清掃が容易になる。
【0050】
粉体塗料対流室4の出入り口部6の袖11とブース本体1の出入り口5の隙間を調整することにより、ブース本体1の出入り口5からの外気と粉体塗料対流室4からの粉漏れスピードを調整することができる。この実施形態では、図3に示すように、粉体塗料対流室4の出入り口11に設けた内外の筒状部材からなる袖11の長さを調節することができるようにした。また、図1及び図3に示すように、ブース本体1の出入り口5の袖15を調整するようにしてもよい。この調整の理由は、被塗装物Aの形状によって、搬送コンベアー7の進行方向の前後への付き回りを重視するときに、オーバースプレー粉の粉体塗料対流室4内の流れ方向を調整することにより、被塗装物Aの前後面の付き回りを良くすることができる。例えば、粉体塗料対流室4内でのオーバースプレー粉の流れの多くを被塗装物Aの進行方向に流れるようにしたり、反対に被塗装物Aの入口方向に多く流れるようにしたりすることが可能となる。この実施形態では、静電塗装ガン8を中心に、即ち、粉体塗料対流室4のセンター部から、粉体塗料対流室4の出入り口6の両方に向かってオーバースプレー粉が流れるように袖11を調整している。また、この実施形態では、静電塗装ガン8は、粉体塗料対流室4のパネルからの差込みによって、ガン先端部との隙間をなくすことによって、隙間からの粉漏れをなくし、オーバースプレー粉の使用効率を向上させている。
【0051】
次に、第2の実施形態を図7〜図9に基づいて説明する。この実施形態も、第1の実施形態と同様に、ブース本体1内に、被塗装物Aを囲む粉体塗料対流室4を設置している。第1の実施形態と共通する部分は、共通の符号を付し、説明は省略する。
【0052】
粉体塗料対流室4の底面は、中心部に向かって傾斜し、その下部に回収粉タンク16を設置することにより閉じられている。
【0053】
ブース本体1の側面には、ブース本体1の外部に設置されたレシプロケーター17により、静電塗装ガン8としてのコロナガンが、片面に2ガンずつ対向位置に計4ガン設置されている。この第2の実施形態では、静電塗装ガン8を対向位置に設置しているが、片面のみに設置して塗装してもよい。
【0054】
この静電塗装ガン8への塗料供給は、粉体塗料対流室4の下部に設置された回収粉タンク16からインジェクター28によって行われる。この回収粉タンク16には、ブース本体1の装置外に設置された塗料箱18からインジェクター25によって新粉塗料が補充供給されている。
【0055】
粉体塗料対流室4内で、第1の実施形態と同様に塗装を行ない、オーバースプレー粉は粉体塗料対流室4内を回りながら、再度、被塗装物に付着する。
【0056】
この第2の実施形態の塗装ブースを使用して、次の塗装条件によって塗装実験を行なった。また、比較例として、粉体塗料対流室4をブース本体1内に設置せず、ブース本体1のみで同一の塗装条件により塗装実験を行なった。
(塗装条件)
・コンベアスピード:1.0m/min
・ハンガーピッチ:400mm
・吐出量:60g/min×4ガン=240g/min(1時間の吐出量:14,400g)
(粉体塗料対流室4を使用した場合)
・1時間のタンク内の回収粉:4,740g
・1時間の集塵機へのオーバースプレー粉:2,160g
・付着量:50g/ハンガー
・塗着効率:50×1000÷400÷240×100(%)=52(%)
・5色専用の粉体塗料対流室4を使用し、ブース本体1に漏れ出した粉体塗料を使用せず、粉体塗料対流室4のみで回収した粉体塗料を再使用した場合の使用効率(%)を計算すると、(14,400−2,160)÷14,400×100(%)=85(%)となる。
(粉体塗料対流室4を使用せずに、ブース本体1のみで塗装を行った場合)
・1時間の集塵機へのオーバースプレー粉:8,100g
・付着量:42g/ハンガー
・塗着効率:42×1000÷400÷240×100(%)=43.7(%)
【0057】
上記の実験の結果、ブース本体1内に粉体塗料対流室4を設置して塗装を行なった場合、塗着効率が52%であった。これに対し、粉体塗料対流室4を設置せずにブース本体1のみで塗装を行なうと、塗着効率が43.7%であり、粉体塗料対流室4を設置した場合と大きな差が見られた。この実施形態では、被塗装物Aとして照明部品を使用したが、凹部(影部)への入り込みも、粉体塗料対流室4を設置した方が良好であった。また、この実験では、オーバースプレー粉の約70%が、被塗装物Aの進行方向側の出入り口6に移動するように、ブース本体1と粉体塗料対流室4のそれぞれの出入り口6、5の袖11、15を調整した。この場合、粉体塗料対流室4及びブース本体1の袖11、15の調整のみならず、図9に示すように、集塵機3への吸引ダクト2の位置を変えることにより、オーバースプレー粉の流れを容易に調整することも可能であった。
【0058】
この実施形態では、4つの吸引ダクト2のうち、進行方向の最前方の吸引ダクト2を開にして、他の3つの吸引ダクト2はダンパー19によって閉じることにより、吸引位置を変更するようにしたが、吸引ダクト2の吸引口をスライド式にして調整するようにしてもよい。最終的に、オーバースプレー粉の一部は、粉体塗料対流室4の出入り口6から漏れ、ブース本体1の吸引ダクト2から集塵機3に強制排気される。しかし、被塗装物Aに何度も再塗装を行なって付着しなったオーバースプレー粉のほとんどは、粉体塗料対流室4内の下部の底部に設置された回収粉タンク16に自然落下する。このオーバースプレー粉は、即座に新粉とミキシングし、再度、静電塗装ガン8にて印加され、被塗装物Aに向けて吐出される。このため、ブース本体1に排気された粉体塗料Bは、総吐出量の15%であった。この被塗装物Aを、ブース本体1のみで塗装し、同等の付き回りを得ようとすると、吐出量は約20%余分に必要になる、その理由は、粉体塗料対流室4内で、オーバースプレー粉が粉体塗料対流室4の壁面に当たり、再付着を幾度となく繰り返すために、付き回り及び付着効率の上昇によるものである。そのために、回収粉の量も粉体塗料対流室4を設置した方が少なくなる。一般に回収粉は、新粉に比べ、塗料粒度分布も異なる。このため、従来のブース本体1のみで行う方式に比べ、新回収粉は新粉リッチとなり、吐出量は少なくて、適正な塗装が可能となる。
【0059】
ところで、静電粉体塗装の場合、回収粉の再使用のメリットはあるが、色替えは、前の粉体塗料色が残っていると、そのまま塗膜にその色が出る。つまりまだら模様になる。塗装ブース内の清掃は目視で確認し、エアーブロー、雑巾掛けで取り除くことができるが、例えば、塗装ブースからのダクト内面、集塵機内に付着した塗料の清掃は事実上困難である。つまり、各色専用のダクトや集塵機が必要である。
【0060】
上記の実験のように、この発明に係る塗装ブースでは、粉体塗料対流室4の出入り口6から漏れるオーバースプレー粉は少なく、そのほとんどが、粉体塗料対流室4の下部底面に設置された回収粉タンク16に戻る。このため、粉体塗料対流室4から漏れたオーバースプレー粉のみを回収専用に使用しても、再使用率が大きく減少しない。
【0061】
図10の実施形態は、1台のブース本体1に対して、塗装色に応じて5台の粉体塗料対流室4を設置し、この5台の粉体塗料対流室4をそれぞれ床面に設置したレール式の移動架台20上に載せた移動方式にして、色替えの際に、移動架台20によってブース本体1内から塗装の終わった粉体塗料対流室4を引き出し、次の塗装色の粉体塗料対流室4と差し替えることができるようにしている。
【0062】
この図10の例のように、粉体塗料対流室4を各色専用にすると、色替えの際に、粉体塗料対流室4内の清掃は、移動前に簡単に行なうだけでよい。また、この実施形態の塗装ブースは、粉体塗料対流室4から漏れ出す粉体塗料Bは少量であるため、ブース本体1から吸引される粉体塗料Bを廃棄しても、それほど回収効率に影響を及ぼさない。したがって、色替えの際に、ブース本体1、吸引ダクト2及び集塵機3の清掃を省略して色替えを行なうことが可能となる。このように、実際に塗装する粉体塗料対流室4を専用色にすることにより、短時間で容易に色替えを行うことができる。
【0063】
また、粉体塗料対流室4を清掃して、色替えを行なってもよい。粉体塗料対流室4は、ブース本体1に比べて小さいので、清掃時には目視にて確認ができるために、清掃が容易である。
【0064】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、鋼製家具部品を被塗装物Aとしている。
【0065】
粉体塗料対流室4及び静電塗装ガン8の設定は、第2の実施形態と同様であるが、図11に示すように、底面に、静電塗装ガン8を1ガン追加設置している。つまり、総ガン数5ガンで、塗装を行なっている。粉体塗料対流室4の壁面に設置した静電塗装ガン8には、ブース本体1の外に設置された塗料箱18からインジェクター25によって直接搬送して塗装を行なっている。底面からの静電塗装ガン8は、下部に設置された回収粉タンク16から直接インジェクター21によって吸引して塗装を行っている。この下部の静電塗装ガン8には、粉体塗料ホースはない。回収粉タンク16に直接インジェクター21が設置され、このインジェクター21から静電塗装ガン8に回収粉が供給されて吐出される。この第3の実施形態では、回収粉のみでは塗料不足になる。その場合は、図示されていないが、回収粉タンク16内の回収粉のレベラー制御により、塗料箱18から新粉を補充供給する。また、図13に示すように、回収粉タンク16として、市販の紙で形成されたファイバードラムを使用するようにしてもよい。ファイバードラム製の回収粉タンク16は、下部にバイブレーター26を備える振動台28上に設置され、その振動により、インジェクター21の粉体塗料に巣穴ができない構造にしている。この実施形態では、色数が多いため、粉体塗料対流室4内を清掃して色替えを行なっている。回収粉のほとんどを再使用できる方式を採用している。したがって、ブース本体1、吸引ダクト2、集塵機3については、第2の実施形態と同様に清掃は行なっていない。但し、よりコンタミをなくすために、日常点検清掃で、生産終了後に、ブース本体1だけを簡単に清掃を行なうようにすることが好ましい。
【0066】
上記3つの実施形態の内容からも分かるように、塗装時に、被塗装物を囲む粉体塗料対流室4内が陽圧になり、オーバースプレー粉が何度も再付着を繰り返しながら、被塗装物Aの出入り口6に向かって流れることにより、付き回り、付着効率を上げながら、オーバースプレー粉の一部のみがブース本体1に漏れる。そして、粉体塗料対流室4から漏れたオーバースプレー粉は、ブース本体1が負圧になっているため、オーバースプレー粉が吸引ダクト2に確実に回収されるので、ブース本体1からの粉漏れがなく、周囲環境からの汚染を防止することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 ブース本体
2 吸引ダクト
3 集塵機
4 粉体塗料対流室
5 出入り口
6 出入り口
7 搬送コンベアー
8 静電塗装ガン
9 開口部
10 調整板
11 袖
12 コーナー部
13 エアー噴出装置
14 パネル
15 袖
16 回収粉タンク
17 レシプロケーター
18 塗料箱
19 ダンパー
20 移動架台
21 インジェクター
22 塗料箱
23 車輪
24 支柱
25 インジェクター
26 バイブレーター
27 分岐ノズル
28 インジェクター
A 被塗装物
B 粉体塗料
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電粉体塗装の塗装ブース、特に塗装ガンから被塗装物に対して吹き付けられた粉体塗料を、被塗装物に効率よく付着させることができる静電粉体塗装の塗装ブースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
静電粉体塗装は、静電塗装ガンによって粉体塗料を被塗装物に吹き付け、静電気によって粉体塗料を被塗装物に付着させる塗装方法である。
【0003】
この静電粉体塗装において、被塗装物への粉体塗料の吹き付けは、粉体塗料の飛散を防止するために、通常、塗装ブース内で行なわれる。そして、被塗装物に付着しなかったオーバースプレー粉を回収精選し、再利用している。
【0004】
静電粉体塗装は、当初、ガードレール、フェンスなどの道路資材から始まり、冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機、エアコン等の家電製品への塗装がなされ、近年では、ワイパー、オイルフィルター、アルミホイール、ブレーキパッド等の車部品への採用も多く見られる。特に、環境、エコロジーの点から、学校の椅子、机の塗装にも、静電粉体塗装が広く採用されるに至っている。
【0005】
ところで、従来、オーバースプレー粉は、塗装ブースに回収ダクトを接続し、塗装ブース全体からオーバースプレー粉を回収するようにしており、このような塗装ブースは特許文献1にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−361121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、一般に、被塗装物を塗装する場合、コンベアーに被塗装物を載せ、前処理、水洗、水切り乾燥炉を経由し、塗装ブースにて塗装を行なう。塗装ブースには、集塵機に接続された吸引ダクトを設置し、オーバースプレー粉が塗装ブース外に漏れないように、且つそのオーバースプレー粉を再使用するために、吸引回収して再度塗料タンクに戻している。
【0008】
粉体塗装は、上記のように、オーバースプレー粉の再使用が可能であるが、塗装ガンから被塗装物に対して粉体塗料を吹き付けた際に、被塗装物に付着する粉体塗料が多いほど、即ち、塗着効率が高いほど、被塗装物に付着しないオーバースプレー粉が減り、塗装の作業性が向上する。
【0009】
したがって、粉体塗装においては、当初の吹き付け時の塗着効率を上げることが重要である。
【0010】
この塗着効率を上げる方法として、従来、被塗装物の後方に平板によって形成された反射板などを立てかけて、その反射板で、被塗装物の裏面への付き回りをよくする方法が知られている。
【0011】
しかし、オーバースプレー粉のほとんどは、塗装ブースに設置された集塵機の吸引力によって、急速に集塵機に引かれてしまうので、後方に反射板を設置してもほとんど塗着効率が向上しない。このため、集塵機の吸引力を小さくし、オーバースプレー粉が被塗装物に付着し易くするために、例えば、集塵機の吸引口に設置したダンパーを閉方向に調整したり、インバーターにて塗装ブースの集塵用モーターの回転数を落としたりすることがある。
【0012】
ところが、このようにすると塗装ブースからのオーバースプレー粉の粉漏れが発生し、塗装ブース周辺の環境を悪くするという問題が生じる。また、一日の製造において、例えば、朝に塗装ブースからの粉漏れが生じない限界の風量に、集塵機の風量を調整し、塗装を行なうと、当初は粉漏れの問題がなくても、工場内温度の上昇(雰囲気温度の上昇)や、焼付け炉内の循環によるコンベアーチェーンの温度上昇による上昇気流で、例えば、塗装ブース出入口からのオーバースプレー粉の飛散が見られるようになる。特に、被塗装物を予熱して厚膜塗装を行なう場合には、温度による上昇気流によりオーバースプレー粉が急速に塗装ブース外に飛散し易くなる。そのため、塗装ブースの集塵機の能力をさらにアップして、吸引すると、塗装ガンから吐出された粉体塗料が、吸引ダクトから急速に吸引されるため、オーバースプレー粉を被塗装物に再付着させることは望めない。
【0013】
そこで、この発明は、塗装ブースからの粉漏れがなく、しかもオーバースプレー粉が被塗装物に十分に再付着し易く、吹き付け時の塗着効率を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、上記の課題を解決するために、塗装ブースを、集塵機に接続される吸引ダクトを備えたブース本体と、被塗装物を囲む粉体塗料対流室との2重構造とし、粉体塗料対流室に塗装ガンを設置し、粉体塗料対流室内で被塗装物に粉体塗料を吹き付け、粉体塗料を粉体塗料対流室内に充満させることにより、粉体塗料と被塗装物との接触機会を増やして被塗装物に粉体塗料を十分に付着させ、粉体塗料対流室から漏れ出すオーバースプレー粉の量を最小限に抑えて、粉体塗料対流室から漏れ出したオーバースプレー粉をブース本体から吸引して集塵機に供給するようにしたものである。
【0015】
被塗装物は、搬送コンベアーによってブース本体と粉体塗料対流室を通過し、粉体塗料対流室の通過中に粉体塗料が吹き付けられる。
【0016】
粉体塗料対流室内は、静電塗装ガンからの粉体塗料の吹き付けにより陽圧状態に保持されている。
【0017】
静電塗装ガンは、粉体塗料対流室の壁面からガン先が突出し、粉体塗料対流室の壁面と静電塗装ガンのガン先との間を密閉することにより、静電塗装ガンと粉体塗料対流室の壁面との間の隙間からのオーバースプレー粉の漏れ出しを防止できる。
【0018】
また、粉体塗料対流室の壁面のパネルと静電塗装ガンのガン先とがフラットになるように、静電塗装ガンを設置すると、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れがガン先によって遮られないので、オーバースプレー粉が粉体塗料対流室内を循環し易く、被塗装物に対するオーバースプレー粉の付着機会が増加する。また、静電塗装ガンを設置した粉体塗料対流室の壁面のパネルがフラットであると、清掃も簡単に行える。
【0019】
静電塗装ガンは、被塗装物に対するオーバースプレー粉の付着機会を増加させるために、粉体塗料対流室の対向位置に複数設置することが望ましい。
【0020】
粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れを調整するために、粉体塗料対流室の被塗装物の出入り口に、ブース本体の出入り口に向かって伸びる袖を設置することが望ましい。
【0021】
さらに、粉体塗料対流室の出入り口の袖を、ブース本体の出入り口に向かって長さ調整可能に設けることにより、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れを調整することができ、それによって被塗装物に対して、よりオーバースプレー粉を付着させることができる。
【0022】
また、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れを調整し、ブース本体の出入り口からの粉漏れを防止するために、ブース本体の被塗装物の出入り口に、粉体塗料対流室の出入り口に向かって延びる袖を設置し、このブース本体の出入り口の袖を、粉体塗料対流室の出入り口に向かって長さ調整可能に設けることが好ましい。
【0023】
さらに、粉体塗料対流室内に充満する粉体塗料の粉体塗料対流室内での循環を向上させて、被塗装物に対する粉体塗料の付着機会を増加させるために、エアー噴出装置を粉体塗料対流室に設置することができる。
【0024】
粉体塗料対流室の底面には、オーバースプレー粉を流出させる開口部が設置されており、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れを調整するために、下方の開口部の大きさを調整する調整板を設置することが望ましい。
【0025】
上記粉体塗料対流室の底面の開口部の下方に、オーバースプレー粉を溜めるための回収粉タンクを設置することができる。
【0026】
そして、粉体塗料対流室の底面に設置した回収粉タンクに、回収粉タンク内に溜めたオーバースプレー粉を粉体塗料対流室内に吹き込む静電塗装ガンを設置することにより、粉体塗料対流室内での粉体塗料の塗着効率を向上させることができる。
【0027】
粉体塗料対流室は、ブース本体に対して移動可能に設けることにより、粉体塗料対流室を交換、清掃することにより、色替え作業を効率的に行なうことができる。
【0028】
粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の流れの調整のためと、ブース本体からの粉漏れを最小限にするために、ブース本体の吸引ダクトの位置は、被塗装物の搬送方向に沿って変更可能に設置することが望ましい。
【発明の効果】
【0029】
この発明においては、上記のように、ブース本体内に、被塗装物を囲む粉体塗料対流室を設置し、粉体塗料対流室内で被塗装物に粉体塗料の吹き付けを行なうので、吹き付けられた粉体塗料は、ブース本体の吸引ダクトから急速に吸引されることなく、粉体塗料対流室内に充満し、被塗装物と粉体塗料とが粉体塗料対流室内で十分に接触する。
【0030】
したがって、吹き付けた粉体塗料の多くが粉体塗料対流室内で被塗装物に付着するため、粉体塗料の塗着効率が向上し、粉体塗料対流室から漏れ出すオーバースプレー粉の量も低減させることができるので、粉体塗料対流室から漏れ出したオーバースプレー粉をブース本体の吸引ダクトから確実に吸引することができ、ブース本体からの粉漏れを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に係る静電粉体塗装の塗装ブースの第1の実施形態を示す概略横断平面図である。
【図2】図1の実施形態の概略縦断正面図である。
【図3】図1の実施形態のブース本体を切り欠いた概略側面図である。
【図4】図1の実施形態の変形例を示す概略縦断正面図である。
【図5】図1の実施形態の粉体塗料対流室の変形例を示す概略縦断正面図である。
【図6】図1の実施形態の粉体塗料対流室への静電塗装ガンの取付け変形例を示す概略縦断正面図である。
【図7】この発明に係る静電粉体塗装の塗装ブースの第2の実施形態を示す概略横断平面図である。
【図8】図7の実施形態の概略縦断正面図である。
【図9】図7の実施形態のブース本体を切り欠いた概略側面図である。
【図10】図7の実施形態の粉体塗料対流室の設置例を示す概略横断平面図である。
【図11】この発明に係る静電粉体塗装の塗装ブースの第3の実施形態を示す概略横断平面図である。
【図12】図11の実施形態の概略縦断正面図である。
【図13】図11の実施形態の粉体塗料対流室の下部に設置する塗料タンクの変形例を示す概略縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
この発明に係る塗装ブースの第1の実施形態について説明する。
【0033】
第1の実施形態に係る塗装ブースは、例えば、三日月形の農機具部品の塗装に使用され、図1〜図3に示すように、集塵機3に接続される吸引ダクト2を備えたブース本体1と、被塗装物Aを囲む粉体塗料対流室4との2重構造になっている。
【0034】
粉体塗料対流室4は、被塗装物Aの4方向を囲むように設置されているが、ブース本体1と粉体塗料対流室4とには、被塗装物Aが通過する出入り口5、6が設けられ、被塗装物Aが搬送コンベアー7によってブース本体1と粉体塗料対流室4を通過するようになっており、粉体塗料対流室4の通過中に静電塗装ガン8によって粉体塗料Bが吹き付けられる。
【0035】
粉体塗料対流室4の対向する両側壁には、静電塗装ガン8が2ガンずつ対向するように設置されている。この実施形態では、多数の分岐ノズル27の付いた摩擦式帯電ガンが採用されている。静電塗装ガン8は、コロナ式帯電ガンでもよく、粉体塗料Bへの印加方式は特に限定されない。
【0036】
静電塗装ガン8のガン先端部は、粉体塗料対流室4の壁面に固定され、ガン先端部と壁面との間は密閉されている。各対向する静電塗装ガン8は、互いの噴射パターンがぶつかり合うように配置されている。
【0037】
粉体塗料対流室4の下部底面には、スリット形状の開口部9が設けられている。この開口部9の壁面には、スリット形状の開口部9の幅を調整する調整板10が上下動可能に設置されている。
【0038】
粉体塗料対流室4は、ブース本体1に、車輪23の付いた支柱24によって移動可能に設置しているが、ブース本体1に吊り下げて支持するようにしてもよい。
【0039】
粉体塗料対流室4の被塗装物Aの出入り口6には、ブース本体1の出入り口5に向かって延びる袖11が設置されている。この袖11は、内外2重の筒部材からなり、内外2重の筒部材を伸縮させることによってブース本体1の出入り口5との間隔を調整できるようにして、粉体塗料対流室4から漏れ出すオーバースプレー粉の流れや量を調整できるようにしている。
【0040】
被塗装物Aは、ブース本体1の上方に設置された搬送コンベアー7に吊り下げられてブース本体1から粉体塗料対流室4内へと引き入れられ、粉体塗料対流室4内において粉体塗料Bが吹き付けられ、その後、粉体塗料対流室4の出入り口6、ブース本体1の出入り口5を経て、ブース本体1から引き出される。
【0041】
被塗装物Aが粉体塗料対流室4内へと引き入れられると、粉体塗料対流室4の側壁の対向位置に設置された静電塗装ガン8の分岐ノズル27から被塗装物Aに向かって粉体塗料Bが吹き付けられ、塗装が開始される。
【0042】
静電塗装ガン8から吐出された粉体塗料Bは、粉体塗料対流室4内で被塗装物Aに付着する。そして、対向位置に設置された静電塗装ガン8により、粉体塗料Bは、初めに激しくぶつかり合い、その勢いにより、粉体塗料Bの方向が、スクランブル状になり、再度、被塗装物Aに向かって付着する。付着しなかった粉体塗料Bは、再度、粉体塗料対流室4の壁面に衝突し、方向を変えて、被塗装物Aに向かって付着しようとする。
【0043】
この実施形態において、粉体塗料対流室4の壁面を構成するパネルは、ポリプロピレン系の絶縁樹脂を使用している。パネルの材質は、塩化ビニール、ポリカーボネート等のそれ以外の樹脂でもよい。また、金属製のパネルでもよい。
【0044】
粉体塗料対流室4には、吸引装置を設置していないが、粉体塗料対流室4内は静電塗装ガン8からの粉体塗料Bの吐出によって陽圧状態になるため、粉体塗料対流室4の出入り口6からオーバースプレー粉の一部が、ブース本体1に漏れ出し、ブース本体1の吸引ダクト2に吸引される。
【0045】
このように、オーバースプレー粉は、粉体塗料対流室4の壁面の内面と衝突して跳ね返り、被塗装物Aに対して再付着が繰り返される。このようにして、静電塗装ガン8から吐出された粉体塗料Aは、高い塗着効率で被塗装物Aに付着する。そして、粉体塗料対流室4内は、陽圧状態になっているため、オーバースプレー粉は、最後には、ブース本体1内に漏れ出す。
【0046】
ブース本体1は、集塵機3に接続された吸引ダクト2によって強制吸引(排気)され、ブース本体1内は負圧になっているため、粉体塗料対流室4から漏れ出したオーバースプレー粉は、ブース本体1の吸引ダクト2に吸引され、集塵機3に回収される。
【0047】
次に、図1〜図3の実施形態では、粉体塗料対流室4の内面の各コーナー部を、鋭角又は90°にしているが、粉体塗料対流室内におけるオーバースプレー粉の壁面との衝突回数を多くするために、図4に示すように、コーナー部12をカーブ(アール)式にして、吐出された粉体塗料Bが粉体塗料対流室4内で循環し易くするようにしてもよい。
【0048】
さらに、オーバースプレー粉の粉体塗料対流室4内における衝突回転数を多くして、被塗装物Aに対するオーバースプレー粉の付着機会を増加させるために、図5に示すように、補助エアーを噴出するエアー噴出装置13を粉体塗料対流室4に設置してもよい。
【0049】
図1〜図3の実施形態では、静電塗装ガン8のガン先ノズルが粉体塗料対流室4内に突き出るように設置しているが、図6に示すように、粉体塗料対流室4の壁面と静電塗装ガン8のガン先とがフラットになるように、パネル14を設置すると、粉体塗料対流室4内におけるオーバースプレー粉の流れがガン先によって遮られないので、オーバースプレー粉が粉体塗料対流室4内を循環し易くなり、被塗装物Aに対するオーバースプレー粉の付着機会が増加する。また、パネル14によって、粉体塗料対流室4の内面をフラットにすることにより、粉体塗料対流室4の壁面の清掃が容易になる。
【0050】
粉体塗料対流室4の出入り口部6の袖11とブース本体1の出入り口5の隙間を調整することにより、ブース本体1の出入り口5からの外気と粉体塗料対流室4からの粉漏れスピードを調整することができる。この実施形態では、図3に示すように、粉体塗料対流室4の出入り口11に設けた内外の筒状部材からなる袖11の長さを調節することができるようにした。また、図1及び図3に示すように、ブース本体1の出入り口5の袖15を調整するようにしてもよい。この調整の理由は、被塗装物Aの形状によって、搬送コンベアー7の進行方向の前後への付き回りを重視するときに、オーバースプレー粉の粉体塗料対流室4内の流れ方向を調整することにより、被塗装物Aの前後面の付き回りを良くすることができる。例えば、粉体塗料対流室4内でのオーバースプレー粉の流れの多くを被塗装物Aの進行方向に流れるようにしたり、反対に被塗装物Aの入口方向に多く流れるようにしたりすることが可能となる。この実施形態では、静電塗装ガン8を中心に、即ち、粉体塗料対流室4のセンター部から、粉体塗料対流室4の出入り口6の両方に向かってオーバースプレー粉が流れるように袖11を調整している。また、この実施形態では、静電塗装ガン8は、粉体塗料対流室4のパネルからの差込みによって、ガン先端部との隙間をなくすことによって、隙間からの粉漏れをなくし、オーバースプレー粉の使用効率を向上させている。
【0051】
次に、第2の実施形態を図7〜図9に基づいて説明する。この実施形態も、第1の実施形態と同様に、ブース本体1内に、被塗装物Aを囲む粉体塗料対流室4を設置している。第1の実施形態と共通する部分は、共通の符号を付し、説明は省略する。
【0052】
粉体塗料対流室4の底面は、中心部に向かって傾斜し、その下部に回収粉タンク16を設置することにより閉じられている。
【0053】
ブース本体1の側面には、ブース本体1の外部に設置されたレシプロケーター17により、静電塗装ガン8としてのコロナガンが、片面に2ガンずつ対向位置に計4ガン設置されている。この第2の実施形態では、静電塗装ガン8を対向位置に設置しているが、片面のみに設置して塗装してもよい。
【0054】
この静電塗装ガン8への塗料供給は、粉体塗料対流室4の下部に設置された回収粉タンク16からインジェクター28によって行われる。この回収粉タンク16には、ブース本体1の装置外に設置された塗料箱18からインジェクター25によって新粉塗料が補充供給されている。
【0055】
粉体塗料対流室4内で、第1の実施形態と同様に塗装を行ない、オーバースプレー粉は粉体塗料対流室4内を回りながら、再度、被塗装物に付着する。
【0056】
この第2の実施形態の塗装ブースを使用して、次の塗装条件によって塗装実験を行なった。また、比較例として、粉体塗料対流室4をブース本体1内に設置せず、ブース本体1のみで同一の塗装条件により塗装実験を行なった。
(塗装条件)
・コンベアスピード:1.0m/min
・ハンガーピッチ:400mm
・吐出量:60g/min×4ガン=240g/min(1時間の吐出量:14,400g)
(粉体塗料対流室4を使用した場合)
・1時間のタンク内の回収粉:4,740g
・1時間の集塵機へのオーバースプレー粉:2,160g
・付着量:50g/ハンガー
・塗着効率:50×1000÷400÷240×100(%)=52(%)
・5色専用の粉体塗料対流室4を使用し、ブース本体1に漏れ出した粉体塗料を使用せず、粉体塗料対流室4のみで回収した粉体塗料を再使用した場合の使用効率(%)を計算すると、(14,400−2,160)÷14,400×100(%)=85(%)となる。
(粉体塗料対流室4を使用せずに、ブース本体1のみで塗装を行った場合)
・1時間の集塵機へのオーバースプレー粉:8,100g
・付着量:42g/ハンガー
・塗着効率:42×1000÷400÷240×100(%)=43.7(%)
【0057】
上記の実験の結果、ブース本体1内に粉体塗料対流室4を設置して塗装を行なった場合、塗着効率が52%であった。これに対し、粉体塗料対流室4を設置せずにブース本体1のみで塗装を行なうと、塗着効率が43.7%であり、粉体塗料対流室4を設置した場合と大きな差が見られた。この実施形態では、被塗装物Aとして照明部品を使用したが、凹部(影部)への入り込みも、粉体塗料対流室4を設置した方が良好であった。また、この実験では、オーバースプレー粉の約70%が、被塗装物Aの進行方向側の出入り口6に移動するように、ブース本体1と粉体塗料対流室4のそれぞれの出入り口6、5の袖11、15を調整した。この場合、粉体塗料対流室4及びブース本体1の袖11、15の調整のみならず、図9に示すように、集塵機3への吸引ダクト2の位置を変えることにより、オーバースプレー粉の流れを容易に調整することも可能であった。
【0058】
この実施形態では、4つの吸引ダクト2のうち、進行方向の最前方の吸引ダクト2を開にして、他の3つの吸引ダクト2はダンパー19によって閉じることにより、吸引位置を変更するようにしたが、吸引ダクト2の吸引口をスライド式にして調整するようにしてもよい。最終的に、オーバースプレー粉の一部は、粉体塗料対流室4の出入り口6から漏れ、ブース本体1の吸引ダクト2から集塵機3に強制排気される。しかし、被塗装物Aに何度も再塗装を行なって付着しなったオーバースプレー粉のほとんどは、粉体塗料対流室4内の下部の底部に設置された回収粉タンク16に自然落下する。このオーバースプレー粉は、即座に新粉とミキシングし、再度、静電塗装ガン8にて印加され、被塗装物Aに向けて吐出される。このため、ブース本体1に排気された粉体塗料Bは、総吐出量の15%であった。この被塗装物Aを、ブース本体1のみで塗装し、同等の付き回りを得ようとすると、吐出量は約20%余分に必要になる、その理由は、粉体塗料対流室4内で、オーバースプレー粉が粉体塗料対流室4の壁面に当たり、再付着を幾度となく繰り返すために、付き回り及び付着効率の上昇によるものである。そのために、回収粉の量も粉体塗料対流室4を設置した方が少なくなる。一般に回収粉は、新粉に比べ、塗料粒度分布も異なる。このため、従来のブース本体1のみで行う方式に比べ、新回収粉は新粉リッチとなり、吐出量は少なくて、適正な塗装が可能となる。
【0059】
ところで、静電粉体塗装の場合、回収粉の再使用のメリットはあるが、色替えは、前の粉体塗料色が残っていると、そのまま塗膜にその色が出る。つまりまだら模様になる。塗装ブース内の清掃は目視で確認し、エアーブロー、雑巾掛けで取り除くことができるが、例えば、塗装ブースからのダクト内面、集塵機内に付着した塗料の清掃は事実上困難である。つまり、各色専用のダクトや集塵機が必要である。
【0060】
上記の実験のように、この発明に係る塗装ブースでは、粉体塗料対流室4の出入り口6から漏れるオーバースプレー粉は少なく、そのほとんどが、粉体塗料対流室4の下部底面に設置された回収粉タンク16に戻る。このため、粉体塗料対流室4から漏れたオーバースプレー粉のみを回収専用に使用しても、再使用率が大きく減少しない。
【0061】
図10の実施形態は、1台のブース本体1に対して、塗装色に応じて5台の粉体塗料対流室4を設置し、この5台の粉体塗料対流室4をそれぞれ床面に設置したレール式の移動架台20上に載せた移動方式にして、色替えの際に、移動架台20によってブース本体1内から塗装の終わった粉体塗料対流室4を引き出し、次の塗装色の粉体塗料対流室4と差し替えることができるようにしている。
【0062】
この図10の例のように、粉体塗料対流室4を各色専用にすると、色替えの際に、粉体塗料対流室4内の清掃は、移動前に簡単に行なうだけでよい。また、この実施形態の塗装ブースは、粉体塗料対流室4から漏れ出す粉体塗料Bは少量であるため、ブース本体1から吸引される粉体塗料Bを廃棄しても、それほど回収効率に影響を及ぼさない。したがって、色替えの際に、ブース本体1、吸引ダクト2及び集塵機3の清掃を省略して色替えを行なうことが可能となる。このように、実際に塗装する粉体塗料対流室4を専用色にすることにより、短時間で容易に色替えを行うことができる。
【0063】
また、粉体塗料対流室4を清掃して、色替えを行なってもよい。粉体塗料対流室4は、ブース本体1に比べて小さいので、清掃時には目視にて確認ができるために、清掃が容易である。
【0064】
次に、第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、鋼製家具部品を被塗装物Aとしている。
【0065】
粉体塗料対流室4及び静電塗装ガン8の設定は、第2の実施形態と同様であるが、図11に示すように、底面に、静電塗装ガン8を1ガン追加設置している。つまり、総ガン数5ガンで、塗装を行なっている。粉体塗料対流室4の壁面に設置した静電塗装ガン8には、ブース本体1の外に設置された塗料箱18からインジェクター25によって直接搬送して塗装を行なっている。底面からの静電塗装ガン8は、下部に設置された回収粉タンク16から直接インジェクター21によって吸引して塗装を行っている。この下部の静電塗装ガン8には、粉体塗料ホースはない。回収粉タンク16に直接インジェクター21が設置され、このインジェクター21から静電塗装ガン8に回収粉が供給されて吐出される。この第3の実施形態では、回収粉のみでは塗料不足になる。その場合は、図示されていないが、回収粉タンク16内の回収粉のレベラー制御により、塗料箱18から新粉を補充供給する。また、図13に示すように、回収粉タンク16として、市販の紙で形成されたファイバードラムを使用するようにしてもよい。ファイバードラム製の回収粉タンク16は、下部にバイブレーター26を備える振動台28上に設置され、その振動により、インジェクター21の粉体塗料に巣穴ができない構造にしている。この実施形態では、色数が多いため、粉体塗料対流室4内を清掃して色替えを行なっている。回収粉のほとんどを再使用できる方式を採用している。したがって、ブース本体1、吸引ダクト2、集塵機3については、第2の実施形態と同様に清掃は行なっていない。但し、よりコンタミをなくすために、日常点検清掃で、生産終了後に、ブース本体1だけを簡単に清掃を行なうようにすることが好ましい。
【0066】
上記3つの実施形態の内容からも分かるように、塗装時に、被塗装物を囲む粉体塗料対流室4内が陽圧になり、オーバースプレー粉が何度も再付着を繰り返しながら、被塗装物Aの出入り口6に向かって流れることにより、付き回り、付着効率を上げながら、オーバースプレー粉の一部のみがブース本体1に漏れる。そして、粉体塗料対流室4から漏れたオーバースプレー粉は、ブース本体1が負圧になっているため、オーバースプレー粉が吸引ダクト2に確実に回収されるので、ブース本体1からの粉漏れがなく、周囲環境からの汚染を防止することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 ブース本体
2 吸引ダクト
3 集塵機
4 粉体塗料対流室
5 出入り口
6 出入り口
7 搬送コンベアー
8 静電塗装ガン
9 開口部
10 調整板
11 袖
12 コーナー部
13 エアー噴出装置
14 パネル
15 袖
16 回収粉タンク
17 レシプロケーター
18 塗料箱
19 ダンパー
20 移動架台
21 インジェクター
22 塗料箱
23 車輪
24 支柱
25 インジェクター
26 バイブレーター
27 分岐ノズル
28 インジェクター
A 被塗装物
B 粉体塗料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集塵機に接続される吸引ダクトを備えたブース本体と、被塗装物を囲む粉体塗料対流室との2重構造からなり、粉体塗料対流室に静電塗装ガンを設置し、粉体塗料対流室内で被塗装物に粉体塗料を吹き付け、粉体塗料を粉体塗料対流室内に充満させて被塗装物に付着させ、粉体塗料対流室から漏れ出したオーバースプレー粉をブース本体から吸引して集塵機に供給するようにした静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項2】
ブース本体と粉体塗料対流室を通過させる被塗装物の搬送コンベアーを備え、粉体塗料対流室の通過中に被塗装物に粉体塗料を吹き付けることを特徴とする請求項1記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項3】
粉体塗料対流室内が、静電塗装ガンからの粉体塗料の吹き付けにより陽圧状態に保持されている請求項1または2記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項4】
粉体塗料対流室の壁面から静電塗装ガンのガン先が突出し、粉体塗料対流室の壁面と静電塗装ガンのガン先とが密閉されている請求項1〜3のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項5】
粉体塗料対流室の壁面と静電塗装ガンのガン先とがフラットに設置されている請求項1〜3のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項6】
静電塗装ガンが、粉体塗料対流室の対向位置に複数設置されている請求項1〜5のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項7】
粉体塗料対流室の被塗装物の出入り口に、ブース本体の出入り口に向かって延びる袖を設置した請求項1〜6のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項8】
粉体塗料対流室の出入り口の袖が、ブース本体の出入り口に向かって長さ調整可能に設けられている請求項7に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項9】
ブース本体の被塗装物の出入り口に、粉体塗料対流室の出入り口に向かって延びる袖を設置し、このブース本体の出入り口の袖が、粉体塗料対流室の出入り口に向かって長さ調整可能に設けられている請求項1〜8のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項10】
粉体塗料対流室内に充満する粉体塗料を、粉体塗料対流室内で循環させるエアー噴出装置を備える請求項1〜9のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項11】
粉体塗料対流室の底面に、オーバースプレー粉を流出させる開口部を設け、この開口部に、開口部の大きさを調整する調整板を設置した請求項1〜10のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項12】
粉体塗料対流室の底面の開口部の下方に、オーバースプレー粉を溜めるための回収粉タンクを設置した請求項1〜11のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項13】
粉体塗料対流室の底面に設置した回収粉タンクに、回収粉タンク内に溜めた粉体塗料を粉体塗料対流室内に吹き込む静電塗装ガンを設置した請求項1〜12のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項14】
粉体塗料対流室を、ブース本体に対して移動可能に設けた請求項1〜13のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項15】
ブース本体の吸引ダクトの位置を、被塗装物の搬送方向に沿って変更可能に設けた請求項1〜14のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項1】
集塵機に接続される吸引ダクトを備えたブース本体と、被塗装物を囲む粉体塗料対流室との2重構造からなり、粉体塗料対流室に静電塗装ガンを設置し、粉体塗料対流室内で被塗装物に粉体塗料を吹き付け、粉体塗料を粉体塗料対流室内に充満させて被塗装物に付着させ、粉体塗料対流室から漏れ出したオーバースプレー粉をブース本体から吸引して集塵機に供給するようにした静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項2】
ブース本体と粉体塗料対流室を通過させる被塗装物の搬送コンベアーを備え、粉体塗料対流室の通過中に被塗装物に粉体塗料を吹き付けることを特徴とする請求項1記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項3】
粉体塗料対流室内が、静電塗装ガンからの粉体塗料の吹き付けにより陽圧状態に保持されている請求項1または2記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項4】
粉体塗料対流室の壁面から静電塗装ガンのガン先が突出し、粉体塗料対流室の壁面と静電塗装ガンのガン先とが密閉されている請求項1〜3のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項5】
粉体塗料対流室の壁面と静電塗装ガンのガン先とがフラットに設置されている請求項1〜3のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項6】
静電塗装ガンが、粉体塗料対流室の対向位置に複数設置されている請求項1〜5のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項7】
粉体塗料対流室の被塗装物の出入り口に、ブース本体の出入り口に向かって延びる袖を設置した請求項1〜6のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項8】
粉体塗料対流室の出入り口の袖が、ブース本体の出入り口に向かって長さ調整可能に設けられている請求項7に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項9】
ブース本体の被塗装物の出入り口に、粉体塗料対流室の出入り口に向かって延びる袖を設置し、このブース本体の出入り口の袖が、粉体塗料対流室の出入り口に向かって長さ調整可能に設けられている請求項1〜8のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項10】
粉体塗料対流室内に充満する粉体塗料を、粉体塗料対流室内で循環させるエアー噴出装置を備える請求項1〜9のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項11】
粉体塗料対流室の底面に、オーバースプレー粉を流出させる開口部を設け、この開口部に、開口部の大きさを調整する調整板を設置した請求項1〜10のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項12】
粉体塗料対流室の底面の開口部の下方に、オーバースプレー粉を溜めるための回収粉タンクを設置した請求項1〜11のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項13】
粉体塗料対流室の底面に設置した回収粉タンクに、回収粉タンク内に溜めた粉体塗料を粉体塗料対流室内に吹き込む静電塗装ガンを設置した請求項1〜12のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項14】
粉体塗料対流室を、ブース本体に対して移動可能に設けた請求項1〜13のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【請求項15】
ブース本体の吸引ダクトの位置を、被塗装物の搬送方向に沿って変更可能に設けた請求項1〜14のいずれかの項に記載の静電粉体塗装の塗装ブース。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−269262(P2010−269262A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123967(P2009−123967)
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(000117009)旭サナック株式会社 (194)
【Fターム(参考)】
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