説明

静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像用現像剤および画像形成装置

【課題】1%以下の低印字率で1000mm/秒以上の印刷速度でも、トナーの帯電量の変化が抑えられた静電荷像現像用キャリアの提供。
【解決手段】磁性材を含む芯材と、前記芯材の表面を被覆し、樹脂及びポリシランを含む被覆層と、を有する静電荷像現像用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像用現像剤および、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法に用いられる2成分現像剤は、一般に、磁性を有するキャリア粒子と絶縁性のトナー粒子とからなる。
例えば、前記キャリア粒子としては、球状トナーに対しても帯電特性及び良好な画質を長期にわたって持続するため、芯材表面に被覆樹脂層を有する静電潜像現像剤用キャリアであって、該被覆樹脂層が、高分子鎖に珪素原子、酸素原子、及び金属原子を含むポリマー、及び平均粒子径が0.1〜2μmの範囲の架橋樹脂微粒子を含有するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、長時間使用してもキャリアへのスペントが少なく、帯電量の低下、トナー飛散、及び地肌汚れが発生せず、かつ、キャリア付着の少ない、安定した高画質を維持するため、少なくとも磁性粒子表面にシリコーン樹脂組成物の硬化物を主成分とするコート層を設けたキャリア、及び、少なくとも結着樹脂、ワックス及び着色剤を含むトナー粒子を混合してなる画像形成現像剤において、キャリアの重量平均粒径Dwが25〜45μmであり、該キャリア中の44μmよりも小さい粒径を有する粒子の含有割合が70重量%以上で、22μmより小さい粒径を有する粒子の含有割合が7.0重量%以下であり、かつ、キャリアが含フッ素シランカップリング剤及び正帯電特性を有する組成物を含有させたシリコーン樹脂で被覆されたものが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
画像のドット再現性が良く、ハイライト部の粒状性が良好で、エッジ効果が少なく、高画像濃度であって、地汚れが少ない高画質が得られ、かつ、キャリア付着の抑制のため、少なくとも結着樹脂と着色剤を含む重量平均粒径Dtが8μm以下のトナー粒子と、キャリアとを少なくとも混合してなる電子写真用現像剤において、前記キャリアを構成するキャリア芯材の重量平均粒径Dwが20〜45μmであり、該キャリア芯材中の粒径44μm以下の粒子の含有割合が80重量%以上であると共に粒径22μm以下の粒子の含有割合が5.0重量%以下であり、更に該キャリア芯材の1KOeにおける磁気モーメントが40emu/g以上であり、該キャリア芯材の表面に高抵抗被覆層Aが形成され、該高抵抗被覆層Aの上に高抵抗被覆層Aより抵抗の低い低抵抗被覆層Bが形成されている電子写真現像用現像剤が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0005】
鮮やかなカラーの色を呈し、且つ長寿命化を図るべく、芯材表面に少なくとも2層以上の樹脂被覆層を有してなる静電潜像現像剤用キャリアであって、前記樹脂被覆層が、有機金属化合物及び導電材料を含有するシロキサン結合を有する被覆樹脂からなり、前記2層以上の樹脂被覆層のうち、最内層に含まれる前記有機金属化合物を構成する金属のイオン化ポテンシャルが7eV未満であり、かつ、最外層に含まれる前記有機金属化合物を構成する金属のイオン化ポテンシャルが7eV以上であるものが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
更に、高温高湿下での帯電量の低下や低温低湿下での帯電量の極端な増加がなく、被覆層の剥離による静電荷像現像用現像剤の劣化を防止し、トナーのスペント化による劣化も生じない高い耐久性のある寿命の長い電子写真用キャリアとして、少なくともコア材の表面が樹脂で被覆された電子写真用キャリアであって、前記被覆樹脂がフッ素変性シリコーン樹脂及びアミノシランカップリング剤を含み、トナーを負極性に帯電させたものが提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
【0007】
他方、低印字率で連続印字を行うときに生ずる課題を解決するための技術として、以下のような技術が提案されている。
例えば、像担持体上の静電潜像をトナーとキャリアとからなる2成分系の現像剤を用いて現像する現像装置を備え、該現像装置内にトナーにキャリアが混合された補給用現像剤が補給装置より補給される一方、上記現像装置内で過剰となった現像剤が現像剤排出機構にて逐次排出されることで、上記現像装置内のトナー及びキャリアを新しいものと置換していく画像形成装置において、上記補給装置から上記現像装置へと補給される補給用現像剤の補給量を予測する補給量予測手段と、該補給量予測手段にて予測された補給量が所定値よりも少ない場合に、上記現像装置内のトナーを上記像担持体へ供給して強制的に消費させると共に、上記補給装置から上記現像装置へと補給用現像剤を強制的に補給させる強制置換手段とを備える画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献6参照。)。
【0008】
また、タッチダウン現像方式の画像形成装置において、低印字率で連続印字を行った際の画像濃度低下を抑制し、かつ転写効率低下および文字中抜けを抑制するため、トナーおよびキャリアを含有する二成分現像剤を現像剤担持体の表面に担持させ、該現像剤担持体の表面の二成分現像剤からトナーのみをトナー担持体の表面に移送させてトナー担持体の表面にトナー層を形成させ、該トナー層からトナーを、静電潜像が形成された感光体の表面に飛翔させて静電潜像をトナー像として現像する現像手段を具備する画像形成装置に用いられる二成分現像剤であり、前記トナーが、円柱状のトナー母粒子および外添剤を含有し、該トナー母粒子の等体積球相当粒子径の粒度分布における体積基準の変動係数CV{(標準偏差/体積平均粒子径)×100}が、20%以下である二成分現像剤が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。
【0009】
更に、繰り返し画像形成した場合、特に、低印字率原稿を繰り返し画像形成した場合においても、帯電量が安定に維持され、長期にわたって安定した画質が得られる静電潜像現像用現像剤として、芯材上に少なくとも無機粒子と樹脂を含む被覆樹脂層を有するキャリアと、トナーよりなる静電潜像現像用現像剤において、該キャリアの被覆樹脂の重量平均分子量(Mw)が300,000〜600,000であり、該キャリア被覆樹脂層中の無機粒子は、長軸R1と厚みDとの比R1/Dが3.0〜100である扁平形状であり、かつ該トナーは、外添剤として個数平均粒径80〜300nmの無機微粒子を含有してなる静電潜像現像用現像剤が提案されている(例えば、特許文献8参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−361887号公報
【特許文献2】特開2003−280286号公報
【特許文献3】特開2004−061730号公報
【特許文献4】特開2006−330277号公報
【特許文献5】再表2004−031865号公報
【特許文献6】特開2006−301537号公報
【特許文献7】特開2007−292854号公報
【特許文献8】特開2009−9000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、1%以下の低印字率で1000mm/秒以上の印刷速度で印字しても、帯電量の変化が抑えられる静電荷像現像用キャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
請求項1に係る発明は、
磁性材を含む芯材と、
前記芯材の表面を被覆し、樹脂及びポリシランを含む被覆層と、
を有する静電荷像現像用キャリアである。
【0013】
請求項2に係る発明は、
前記ポリシランが、下記一般式(4)で表される環状ポリシランである請求項1に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0014】
【化1】

【0015】
一般式(4)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基又はシリル基を表し、mは5以上9以下の整数を表す。
【0016】
請求項3に係る発明は、
前記樹脂が、架橋型シリコーン樹脂である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0017】
請求項4に係る発明は、
前記被覆層が単層であり、該被覆層が更に導電材料を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0018】
請求項5に係る発明は、
前記被覆層が、少なくとも第一の被覆層及び第二の被覆層を有する複層であり、
芯材側に設けられた第一の被覆層は、樹脂とポリシランと導電材料とを含み、
最外層として設けられた第二の被覆層は、樹脂とポリシランとを含み、
前記導電材料の含有率が第一の被覆層よりも第二の被覆層で少なく、
前記ポリシランの含有率は第一の被覆層よりも第二の被覆層で多い請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0019】
請求項6に係る発明は、
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアと、
トナーと、
を含む静電荷像現像用現像剤である。
【0020】
請求項7に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記潜像保持体上に、潜像を形成する潜像形成装置と、
前記潜像保持体上に形成された前記潜像を、請求項6に記載の静電荷像現像用現像剤によってトナー像に現像する現像装置と、
前記トナー像を被記録媒体に転写する転写装置と、を有し、
前記トナー像を形成する際の前記記録媒体の搬送速度が、1000mm/秒以上である画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、芯材を被覆する被覆層が樹脂及びポリシランを含まない場合に比べ、1%以下の低印字率で1000mm/秒以上の印刷速度で印字しても、トナーの帯電量の変化が抑えられる静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、被覆層に含まれるポリシランが一般式(4)で表される環状ポリシランでない静電荷像現像用キャリアに比べ、1%以下の低印字率で1000mm/秒以上の印刷速度で印字したときにもトナーの帯電量の変化がより抑えられる。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、被覆層に含まれる樹脂が架橋型シリコーン樹脂でない静電荷像現像用キャリアに比べ、耐摩耗性に優れる。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、被覆層が導電材料を含有しない静電荷像現像用キャリアに比べ、トナーの電気抵抗が調整される。
【0025】
請求項5に係る発明によれば、被覆層が複層でない場合、芯材側の被覆層に更に導電材料が含まれない場合、導電材料の含有率が芯材側の被覆層よりも最外層として設けられた被覆層で多い場合、又はポリシランの含有率が芯材側の被覆層よりも最外層として設けられた被覆層で少ない場合に比べて、耐摩耗性に優れた静電荷像現像用キャリアが提供される。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、キャリアの被覆層が樹脂及びポリシランを含まない場合に比べ、1%以下の低印字率で1000mm/秒以上の印刷速度で印字しても、トナーの帯電量の変化が抑えられる静電荷像現像用現像剤が提供される。
【0027】
請求項7に係る発明によれば、樹脂及びポリシランを含まない被覆層を備えるキャリアを含まない静電荷像現像用現像剤を用いる画像形成装置に比べ、1%以下の低印字率で1000mm/秒以上の印刷速度で印字しても、画像濃度の低下が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る静電荷像現像用キャリアの一例を示す断面概略図である。
【図2】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一例である実施形態について図面を参照しつつ、説明する。
【0030】
<静電荷像現像用キャリア>
図1は、本実施形態の静電荷像現像用キャリアの一例を示す断面概略図である。本実施形態の静電荷像現像用キャリア(以下、「キャリア」と略称する場合がある)は、磁性材を含む芯材100と被覆層120とを有し、この被覆層120は、樹脂(図示せず)及びポリシラン(図示せず)を含む。
図1に示す第一の形態の静電荷像現像用キャリアでは、芯材100を被覆する被覆層120が第一層121及び第二層122の2層で構成されたものを示すが、被覆層は単層であっても、或いは3層以上で構成されてもよい。
【0031】
感光体上の静電潜像がトナーにより現像される際、現像器内でキャリアとトナーが攪拌されながらトナーのみが消費され、キャリアは繰り返し使用される。この攪拌によりキャリアからトナーへ電荷が付与され、帯電したトナーは感光体側に移動して、トナー像が感光体表面で形成される。しかし、この攪拌による外的応力によって、キャリア表面が剥離(磨耗)したり、トナーがフィルミングしたりすることによりキャリアが劣化する。キャリアの劣化は処理速度が速くなるほど顕著になる。
【0032】
ここで、印字率の低い画像の印刷が連続すると、トナーの入れ替えが少ないために、トナーが劣化したり帯電量が上昇したりすることにより、次にそのトナーを使用した際には画像がかすれたり等、画像濃度が低下しやすくなる。特に、1000mm/秒を超えるプロセス速度のカラー連帳機現像システムにおいては、連続用紙の1ロールでA4換算、12万枚以上の用紙を数時間停止することなく連続して印刷するため現像剤への負荷が著しく大きく、さらに、各カラー色を均等に消費するわけではなく、ほとんど使用しない色が存在する場合がある。
【0033】
このような場合に、カット紙用プリンタでは、補給装置を有する現像装置を備える方法で対処している場合がある。これは、補給装置に設けられた補給量予測手段にて予測された補給量が所定値よりも少ない場合には、現像装置内のトナーを潜像担持体へ供給して強制的に消費させると共に、補給装置から現像装置へと補給用現像剤を強制的に補給させるものである。これにより、強制的にトナーの入れ替えを行い、トナーの帯電量の上昇を抑えている。
しかしながらこの方法では、現像剤の廃棄量と供給量とを制御することが非常に難しく、また画像形成能力のあるトナーを含めて過剰に廃棄するため、環境面からも廃棄量の削減が望まれる。また、稼動費用が大幅に増大し印刷業などに用いられる超高速機への適用は実用上難しい。連続用紙においては廃棄する工程を導入することが困難である。
【0034】
また、連続して印字率の低い画像が印刷されたときに画像濃度が低下するという課題を、トナーの外添剤により対処している場合がある。しかしながら、1000mm/秒を超える高速プリンタではトナーに与える負荷が大きく、外添剤が脱離したり変形したりなどの変化は避けられず、外添剤による効果が少ない。
【0035】
以上から、高速機において低印字率で印刷したときでも、安定した画像濃度が得られるキャリアが求められている。
本実施形態の静電荷像現像用キャリアでは、被覆層120に、樹脂とポリシランとを含有させることで、1%以下の低印字率で1000mm/秒以上の印刷速度で印字したときでも、トナーの帯電量の変化が抑制される。この現象の理由については明らかではないが、以下のように推測される。
【0036】
樹脂を含む被覆層にポリシランが添加されると、樹脂とポリシランとが海島構造を形成し、高帯電能の領域と低帯電能の領域がキャリア表面に広がり、超高速プリンタでの低印字率の印刷が連続した際のトナーの帯電量の上昇が防止されるものと推測される。これにより、1%以下の低印字率で、且つ1000mm/秒以上の印刷速度で印字したときでもトナーの帯電量の変化が抑制されると考えられる。
【0037】
以下では、静電荷像現像用キャリアの各構成について詳細に説明する。
【0038】
(芯材)
本実施形態で用いられる芯材100としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、または、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、磁性粒子とバインダー樹脂とを含む磁性粒子分散型の芯材等が挙げられる。
【0039】
また、前記フェライトの例としては、下記式(1)で示される構造のものが望ましく挙げられる。
【0040】
(MO)(Fe・・・(1)
【0041】
式(1)中、MはCu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、CoおよびMoからなる群より選択される少なくとも1種を示す。また、X、Yはmol比を示し、かつ条件X+Y=100の条件を満たす。
このなかでも、Mn−Mg−Sr系フェライトは、Mnフェライトやマグネタイトに比べ磁力が低く、ほぼ真球形であるため、磁気ブラシのストレスが小さいことから長寿命化の観点から有利である。
【0042】
前記磁性粒子分散型の芯材は、磁性粒子がバインダー樹脂中に分散されてなる。
上記磁性粒子としては、従来公知のいずれのものを使用してもよいが、特に望ましくはフェライトやマグネタイト、マグヘマタイトが選ばれる。特に、強磁性の磁性粒子としては、マグネタイト、マグヘマタイトが選択され、他の磁性粒子として、例えば鉄粉が知られている。
【0043】
磁性粒子分散型の芯材を構成する磁性粒子としては、具体的には、例えばマグネタイト、γ−酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトなどの鉄系酸化物が挙げられる。中でもマグネタイトがより望ましく用いられる。
【0044】
磁性粒子分散型の芯材を構成するバインダー樹脂としては、架橋されたスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられるが、フェノール系樹脂が特に望ましい。
【0045】
また、本実施形態において磁性粒子分散型の芯材は、目的に応じて、更にその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、フッ素含有粒子などが挙げられる。
【0046】
芯材100の粒径は、10μm以上150μm以下であることが望ましく、25μm以上100μm以下であることがより望ましく、35μm以上50μm以下であることが更に望ましい。
【0047】
〔被覆層〕
被覆層120は、少なくとも樹脂及びポリシランを含む。
【0048】
(ポリシラン)
ポリシランは、非環状ポリシラン(直鎖状ポリシラン、分岐鎖状ポリシラン、網目状ポリシランなど)であってもよく、環状ポリシランであってもよい。非環状ポリシランとしては、下記一般式(1)乃至(3)で表される構造単位のうち少なくとも1つの構造単位を有するポリシランで構成される。
【0049】
【化2】

【0050】
一般式(1)乃至(3)中、R乃至Rは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基又はシリル基を示し、x、y及びzは各々独立に0以上の数を示し、但しx、y及びzの合計は2以上の数である。
【0051】
乃至Rで表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられ、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が望ましく、塩素原子がより望ましい。
【0052】
乃至Rで表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、へキシルなどの炭素数1以上14以下のアルキル基が望ましく、炭素数1以上10以下のアルキル基がより望ましく、炭素数1以上6以下のアルキル基が更に望ましい。
乃至Rで表されるアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシなどの炭素数1以上14以下のアルコキシ基が望ましく、炭素数1以上10以下のアルコキシ基がより望ましく、炭素数1以上6以下のアルコキシ基が更に望ましい。
【0053】
乃至Rで表されるアルケニル基としては、ビニル、アリル、ブテニル、ペンテニルなどの炭素数2以上14以下のアルケニル基が望ましく、炭素数2以上10以下のアルケニル基がより望ましく、炭素数2以上6以下のアルケニル基が更に望ましい。
【0054】
乃至Rで表されるシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシルなどの炭素数5以上14以下のシクロアルキル基が望ましく、炭素数5以上10以下のシクロアルキル基がより望ましく、炭素数5以上8以下のシクロアルキル基が更に望ましい。
乃至Rで表されるシクロアルキルオキシ基としては、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシなどの炭素数5以上14以下のシクロアルキルオキシ基が望ましく、炭素数5以上10以下のシクロアルキルオキシ基がより望ましく、炭素数5以上8以下のシクロアルキルオキシが更に望ましい。
【0055】
乃至Rで表されるシクロアルケニル基としては、シクロペンテニル、シクロヘキセニルなどの炭素数5以上14以下のシクロアルケニル基が望ましく、炭素数5以上10以下のシクロアルケニル基がより望ましく、炭素数5以上8以下のシクロアルケニル基が更に望ましい。
【0056】
乃至Rで表されるアリール基としては、フェニル、メチルフェニル(トリル)、ジメチルフェニル(キシリル)、ナフチルなどの置換基を有していてもよい炭素数6以上20以下のアリール基が望ましく、置換基を有していてもよい炭素数6以上15以下のアリール基がより望ましく、置換基を有していてもよい炭素数6以上12以下のアリール基が更に望ましい。
乃至Rで表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ、ナフチルオキシなどの炭素数6以上20以下のアリールオキシ基が望ましく、炭素数6以上15以下のアリールオキシ基がより望ましく、炭素数6以上12以下のアリールオキシ基が更に望ましい。
【0057】
乃至Rで表されるアラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、フェニルプロピルなどの炭素数6以上20以下のアリール−炭素数1以上4以下のアルキル基がより望ましく、炭素数6以上10以下のアリール−炭素数1以上2以下のアルキル基がより望ましい。
乃至Rで表されるアラルキルオキシ基としては、ベンジルオキシ、フェネチルオキシ、フェニルプロピルオキシなどの炭素数6以上20以下のアリール−炭素数1以上4以下のアルキルオキシ基が望ましく、炭素数6以上10以下のアリール−炭素数1以上2以下のアルキルオキシ基がより望ましい。
【0058】
乃至Rで表されるシリル基としては、シリル基、ジシラニル基、トリシラニル基などの珪素原子数1以上10以下のシラニル基が望ましく、珪素原子数1以上6以下のシラニル基がより望ましい。また、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基などで置換された置換シリル基であってもよい。
【0059】
また、R乃至Rで表される置換基が、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基又はシリル基である場合は、これらの置換基は、さらに、前記例示のアルキル基、アリール基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよい。
【0060】
乃至Rで表される置換基のうち、アルキル基(例えば、メチル基など)などの炭化水素基;アリール基、アラルキル基、アリールオキシ基などの芳香族環を含む置換基(特に、フェニル基などのアリール基など)などが望ましい。
【0061】
代表的な非環状ポリシランとしては、例えば、ホモポリマー[ポリジメチルシラン、ポリ(メチルプロピル)シラン、ポリ(メチルブチル)シラン、ポリ(メチルペンチル)シラン、ポリ(ジブチル)シラン、ポリ(ジヘキシル)シランなどのポリジアルキルシラン;ポリフェニルシランなどのポリモノアリールシラン(ポリアリールシラン);ポリ(ジフェニル)シランなどのポリジアリールシラン、ポリ(メチルフェニル)シランなどのポリ(アルキルアリール)シランなど];コポリマー[ジメチルシラン−メチルヘキシルシラン共重合体などのジアルキルシランと他のジアルキルシランとの共重合体;フェニルシラン−メチルフェニルシラン共重合体などのアリールシラン−アルキルアリールシラン共重合体;ジメチルシラン−メチルフェニルシラン共重合体、ジメチルシラン−フェニルヘキシルシラン共重合体、ジメチルシラン−メチルナフチルシラン共重合体、メチルプロピルシラン−メチルフェニルシラン共重合体などのジアルキルシラン−アルキルアリールシラン共重合体など]などが例示できる。
詳しくは、例えば、R.D.Miller、J.Michl;Chemical Review、第89巻、1359頁(1989)、N.Matsumoto;Japanese Journal of Physics、第37巻、5425頁(1998)などに例示されている。
これらのポリシランは単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0062】
これらのうち、モノアリールシラン単位、ジアリールシラン単位、アルキルアリールシラン単位などを含むポリシラン、例えば、ポリモノアリールシラン(アリール基が炭素数6以上12以下のポリモノアリールシランなど)、ポリジアリールシラン(アリール基が炭素数6以上20以下のポリジアリールシランなど)、ポリアルキルアリールシラン(アルキル基が炭素数1以上6以下で、アリール基が炭素数6以上20以下のポリアルキルアリールシランなど)などのホモポリマー;ジアリールシラン単位(アリール基が炭素数6以上20以下のジアリールシラン単位など)とアルキルアリールシラン単位(アルキル基が炭素数1以上6以下で、アリール基が炭素数6以上20以下のアルキルアリールシラン単位など)とを含むコポリマー、アリールシラン単位(アリール基が炭素数6以上20以下のアリールシラン単位など)とアルキルアリールシラン単位(アルキル基が炭素数1以上6以下で、アルキル基が炭素数6以上20以下のアルキルアリールシラン単位など)とを含むコポリマー、特に、アリール基が炭素数6以上20以下のアリールシランとアルキル基が炭素数1以上6以下でアリール基が炭素数6以上20以下のアルキルアリールシランとの共重合体(例えば、アリール基が炭素数6以上20以下のアリールシランと、アルキル基が炭素数1以上3以下でアリール基が炭素数6以上20以下のアルキルアリールシランとの共重合体など)などが望ましい。
特に耐摩耗性の観点から、非環状ポリシランとしては、ポリアルキルアリールシラン又はポリジアリールシランが望ましい。
【0063】
非環状ポリシランの平均重合度(例えば、数平均重合度)は、例えば、5以上400以下が望ましく、10以上350以下が望ましく、20以上300以下がより望ましい。
【0064】
また、非環状ポリシランの重量平均分子量は、300以上100,000以下が望ましく、400以上50,000以下が望ましく、500以上20,000以下がより望ましい。
【0065】
非環状ポリシランの末端基(末端置換基)は、水素原子、ハロゲン原子(塩素原子など)、アルキル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シリル基などであってもよく、通常、ハロゲン原子(塩素原子など)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、特に、ヒドロキシ基などである場合が多い。
【0066】
非環状ポリシランが末端及び/又は側鎖にヒドロキシ基を有する場合、ポリシランの水酸基当量は、100g/eq以上50,000g/eq以下が望ましく、200g/eq以上30,000g/eq以下がより望ましく、300g/eq以上10,000g/eq以下が更に望ましい。
【0067】
前記非環状ポリシランは、種々の公知な方法を用いて調製できる。これらのポリシランを製造する方法としては、例えば、特定の構造単位を有するケイ素含有モノマーを原料として、マグネシウムを還元剤としてハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「マグネシウム還元法」、WO98/29476号公報など)、アルカリ金属の存在下でハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(「キッピング法」、J.Am.Chem.Soc.,110,124(1988)、Macromolecules,23,3423(1990)など)、電極還元によりハロシラン類を脱ハロゲン縮重合させる方法(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1161(1990)、J.Chem.Soc.,Chem.Commun.897(1992)など)、金属触媒の存在下にヒドラジン類を脱水素縮重合させる方法(特開平4−334551号公報など)、ビフェニルなどで架橋されたジシレンのアニオン重合による方法(Macromolecules,23,4494(1990)など)、環状シラン類の開環重合による方法などが挙げられる。
【0068】
これらの製造方法のうち、得られるポリシランの純度や分子量分布、樹脂との相溶性が優れる点、ナトリウムや塩素含有量が少ない点や、製造コストや安全性などの工業性の点から、マグネシウム還元法が望ましい。なお、得られたポリシランに水を添加してシラノール基を生成させてもよい。
【0069】
また、環状ポリシランとしては、下記一般式(4)で表されるポリシランが望ましい。
【0070】
【化3】

【0071】
一般式(4)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基又はシリル基を示し、mは5以上9以下の整数を表す。
【0072】
一般式(4)におけるR及びRは、上記一般式(1)におけるR及びRとそれぞれ同義であり、好適な範囲についても同様であるため説明を省略する。
特に入手容易性の観点からは、環状ポリシランとしては一般式(4)におけるR及びRがフェニル基及びメチル基から選択される置換基の化合物が望ましく、更に耐摩耗性を考慮すれば、一般式(4)におけるR及びRがフェニル基であるポリジフェニルシランが望ましい。
【0073】
一般式(4)におけるmは、5以上9以下の整数であることが望ましく、5以上7以下の整数であることがより望ましい。
【0074】
一般紙式(4)で表される環状ポリシランの具体例を以下に示すが、これらの具体例に限定されない。
【0075】
【化4】

【0076】
本実施形態に係る被覆層120に用いるポリシランとしては、帯電性を確保する観点から、環状ポリシランが望ましい。
環状ポリシランの市販品としては、オグソールSI-30-10(商品名)など大阪ガスケミカル株式会社より入手可能である。
【0077】
−樹脂−
被覆層120に用いる樹脂としては、特に制限されず、例えばフッ素系樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル・スチレン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂・ポリエステル樹脂・エポキシ樹脂・アルキッド樹脂・ウレタン樹脂等で変性した変性シリコーン樹脂および架橋型のフッ素変性シリコーン樹脂等が用いられる。低臨界表面張力の観点からシリコーン樹脂であることが望ましく、さらなる低臨界表面張力の観点からフッ素変性シリコーン樹脂がより望ましく、架橋型シリコーン樹脂であることが更に望ましい。
【0078】
被覆層120において、前記ポリシランと前記樹脂の総質量に対するポリシランの含有比率は、0.5質量%以上50質量%以下であることが望ましく、1質量%以上33質量%以下であることがより望ましく、5質量%以上9質量%以下であることが更に望ましい。
【0079】
−その他の成分−
被覆層120は、必要に応じて、導電材料、荷電制御剤、抵抗制御剤等を添加してもよい。
前記導電材料の具体例としては、金、銀、銅のような金属;カーボンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛のような導電性の金属酸化物単体系;酸化チタン、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、酸化インジュームスズ等の微粒子の表面を導電性の金属酸化物で被覆した複合系;などが挙げられる。
【0080】
製造安定性、コスト、電気抵抗の低さという観点からカーボンブラックが特に望ましい。カーボンブラックの種類は特に限定されないが、製造安定性の良いDBP(ジブチルフタレート)吸油量が、50〜300ml/100gの範囲のものが好適である。導電粉の平均粒径は、0.1μm以下であることが望ましく、樹脂中への分散を考慮すると一次粒径が50nm以下のものが望ましい。また、その比表面積は700m2/g以上であることが導電性が高く、少ない添加量で十分な低抵抗化を得られるため望ましく、これらを満足するカーボンブラックとしてケッチェンブラック(Lion社)がより望ましい。
【0081】
−層構成−
このような被覆層は、単層でも2層以上の複層であってもよい。単層の場合には、製造工程が簡略化されるため望ましい。また、複層の場合には、芯材側に設けられた被覆層121に導電材料を含有させ、最外層として設けられた被覆層122よりも芯材側の被覆層121において導電材料の含有比率を多くし、芯材側の被覆層121よりも最外層として設けられた被覆層122においてポリシランの含有比率を多くすることで、導電材料の被覆層からの離脱が抑えられ、耐摩耗性が向上し、惹いては長寿命化が図られる。
【0082】
被覆層が単層の場合、被覆量としては、キャリア芯材に対して0.05質量%以上3質量%以下が望ましい。0.05質量%以上では被覆層の厚さが均一化され、また3質量%以下ではキャリアの凝集が抑えられ収率が低下するのが抑制される。
【0083】
また、被覆層が複層の場合、芯材側に設けられた第一の被覆層121の被覆量としては、キャリア芯材に対して0.05質量%以上3質量%以下が望ましい。0.05質量%以上では被覆層の厚さが均一化され、また3質量%以下ではキャリアの凝集が抑えられ収率が低下するのが抑制される。また、第一の被覆層121中の導電材料の含有率は5質量%以上20質量%以下であることが望ましい。5質量%以上ではキャリアの電気抵抗が高くなりすぎるのが抑えられ、画像濃度が高くなる。20質量%以下では製造時に導電材料の凝集が抑えられ、品質のバラツキが抑えられ、安定的にキャリアが製造される。
【0084】
また、第2層目以降の被覆量は、1層目の被覆を補える量であればよく、よって1層目の被覆量より少なくしてもよい。
【0085】
(キャリアの製造方法)
本実施形態に係るキャリアの製造方法は、上記構成のキャリアを形成し得る方法であれば特に限定されるものではない。以下に本実施形態に係るキャリアの製造方法の一例について説明する。
【0086】
樹脂被覆キャリアは、例えば、被覆用の樹脂を溶解させた溶液を、攪拌装置(例えばサンドミル等)を用いて攪拌・分散した樹脂被覆層形成用溶液を、キャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、上記樹脂被覆層形成用溶液とキャリア芯材とをニーダーコータ中で混合し、次いで溶剤を除去するニーダーコータ法などにより製造される。
【0087】
なお、上記樹脂被覆層形成用溶液の調製は、まず前記樹脂を溶媒に添加して攪拌混合する第1攪拌工程と、その後更にポリシランを前記溶媒中に追加で添加して攪拌混合する第2攪拌工程とによって行われる。
【0088】
ポリシランを含有させる被覆層を形成するのに用いる塗布液の溶剤としては、テトラヒドロフラン、トルエン、ジクロロメタン、ジグロロベンゼンが望ましく、更にはポリシランの溶解性を考慮してテトラヒドロフランを用いることが望ましい。従来、被覆層の塗布液の溶剤として広く使用されているメチルエチルケトンは、ポリシランの溶解性が低く、ポリシランの溶解のために使用量が多くなるため望ましくない。
【0089】
<静電荷像現像用現像剤>
本実施形態に係る電子写真用静電荷像現像用現像剤(以下、「現像剤」と略す場合がある)は、本実施形態に係るキャリアとトナーとを含む静電荷像現像用現像剤として構成される。
以下、本実施形態に係る静電荷像現像用現像剤に用いられるトナーについて説明する。
【0090】
(トナー)
トナーとしては、特に制限はなく、公知のトナーが用いられる。トナーとしては、代表的には、結着樹脂と着色剤とを含む着色トナーが挙げられるが、着色剤の代わりに赤外線吸収剤を用いた赤外線吸収トナーなども用いられる。また、これらの成分に加えて、必要に応じ要に応じて、ワックス、磁性粉、帯電制御剤、粘性調整剤、その他の添加剤を含有してもよい。
なお、トナーが光定着トナー(光定着方式を用いた画像形成装置に用いるトナー)である場合には、赤外線吸収剤を含有することが望ましい。赤外線吸収剤としては、公知の赤外線吸収剤が用いられ、例えば、シアニン化合物、メロシアニン化合物、ベンゼンチオール系金属錯体、メルカプトフェノール系金属錯体、芳香族ジアミン系金属錯体、ジイモニウム化合物、アミニウム化合物、ニッケル錯体化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフタロシアニン系化合物等が挙げられる。
【0091】
前記結着樹脂はポリエステル樹脂であることが望ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物をアルコール側の成分として含むポリエステル樹脂が望ましい。また、前記ポリエステル樹脂は、単独で用いても、他の樹脂を併用してもよい。他の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、環状オレフィン樹脂、スチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等などが挙げられる。
なおフラッシュ定着をおこなう場合には、臭気などを抑える観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含む結着樹脂を用いたポリエステル系トナーを用いることが望ましい。
【0092】
本実施形態に用いられるトナーにおける着色剤としては、特に制限はないが例えば、カーボンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デユポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・ブルー15:1、ピグメント・ブルー15:3等が挙げられる。
【0093】
更に、本実施形態に用いられるトナーは、帯電制御剤を含有してもよく、ニグロシン、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、キレート錯体等を用いてもよい。
【0094】
更に、本実施形態に用いられるトナーは、離型剤を含有してもよく、該離型剤としては、エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンとポリプロピレンの共重合物、ポリグリセリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの、不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N′ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0095】
トナーの製造方法としては特に限定されず、一般に使用されている混練粉砕法や湿式造粒法等を利用してもよい。ここで、湿式造粒法としては、懸濁重合法、乳化重合法、乳化重合凝集法、ソープフリー乳化重合法、非水分散重合法、in−situ重合法、界面重合法、乳化分散造粒法、凝集・合一法等を用いてもよい。
【0096】
混練粉砕法でトナーを作製するには、結着樹脂、必要に応じて着色剤やその他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により充分混合し、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーの如き熱混練機を用いて溶融混練して樹脂類を互いに相溶せしめた中に、赤外線吸収剤、酸化防止剤等を分散又は溶解せしめ、冷却固化後、粉砕及び分級を行ってトナーを得る。
【0097】
トナーの平均粒径は、2μm以上10μm以下の範囲であることが望ましい。
【0098】
(トナーの外添剤)
トナーに外添する外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化セリウム、チタン酸バリウム、フッ素粒子、アクリル粒子等が用いられる。これらは1種を単独で用いても、併用して用いてもよい。該シリカとしては、TG820(キャボット社製)、HVK2150(クラリアント社製)等の市販品を使用してもよい。
尚、上記外添剤としては、その体積平均粒子径が20nm以上1μm以下のものが好適に用いられる。
【0099】
本実施形態の静電荷像現像用キャリアは、キャリア及びトナーの総量に対して、トナーの含有率が1質量%以上10質量%以下、望ましくは2質量%以上6質量%以下で、ナウターミキサ等によって混合することで得られる。
【0100】
<プロセスカートリッジ、画像形成装置>
次に、本実施形態の静電荷像現像用現像剤を用いた本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施形態の画像形成装置は、前述の静電荷像現像用キャリアを含む静電荷像現像用現像剤を用いて、記録媒体上にトナー像の定着像を形成できるものであればよく、具体的には、潜像保持体と、前記潜像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、帯電された前記潜像保持体上に潜像を形成する潜像形成装置と、前記潜像保持体上に形成された前記潜像を前述の本実施形態の静電荷像現像用現像剤におけるトナーによって、トナー像に現像する現像装置と、前記像保持体表面に形成された前記トナー像を被記録媒体に転写する転写装置と、を有する。本実施形態に係る画像形成装置は、必要に応じて前記潜像保持体をクリーニング部材で摺擦し転写残留成分をクリーニングするクリーニング装置等のその他の装置を備えていてもよい。
【0101】
この画像形成装置において、例えば前記現像装置を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着自在なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、上述の本実施形態の静電荷像現像用現像剤を収容する本実施形態に係るプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0102】
前記画像の形成は、潜像保持体として電子写真感光体を利用した場合、例えば、以下のように行うことができる。まず、電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電荷像を形成する。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、潜像にトナーを付着させ、電子写真感光体上にトナー像を形成する。形成されたトナー像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の記録媒体表面に転写される。さらに、記録媒体表面に転写されたトナー像は、定着器により定着され、記録媒体に画像が形成される。
【0103】
本実施形態の画像形成装置は、プロセス速度が1000mm/秒以上であることが望ましい。ここで、プロセス速度とは、用紙等の記録媒体が画像を形成する時の記録媒体の移動速度を意味する。より具体的には例えば長さが20mmの用紙を連続して出力する場合、1秒間に50枚以上出力することを意味する。
【0104】
前記電子写真感光体としては、一般に、アモルファスシリコン、セレンなど無機感光体、ポリシラン、フタロシアニンなどを電荷発生材料や電荷輸送材料として使用した有機感光体を用いることができるが、特に、長寿命であることからアモルファスシリコン感光体が望ましい。
【0105】
また、前記定着器としては、加熱・加圧あるいは光により定着を行うことができるものであればよく、本実施形態の電子写真用トナーを光定着用トナーとして用いる場合には、光定着器(汎用のフラッシュ定着器、レーザ定着では930nm乃至980nmの波長を用いることが好ましい)が用いられるが、その他の場合には、熱ロール定着器、オーブン定着器等が用いられる。本実施形態では、高速化という点で光定着を行うことが望ましい。
【0106】
前記熱ロール定着器としては、一般的に一対の定着ロールが対向して圧接された加熱ロール型定着装置が用いられる。一対の定着ロールとしては、加熱ロール及び加圧ロールが対向して設けられ、圧接してニップが形成されている。加熱ロールは、内部にヒーターランプを有する金属製の中空芯金コアに耐油耐熱性弾性体層(弾性層)及びフッ素樹脂等よりなる表面層が順次形成されてなり、加圧ロールは、必要により内部にヒーターランプを有する金属製の中空芯金コアに耐油耐熱性弾性体層および表面層が順次形成されてなる。これらの加熱ロールと加圧ロールとが形成するニップ域に、未定着トナー像が形成された記録媒体を通過させることで、未定着トナー像を定着させることができる。
【0107】
一方、前記光定着器に用いられる光源としては、通常のハロゲンランプ、水銀ランプ、フラッシュランプ、赤外線レーザ等があるが、フラッシュランプによって瞬時に定着させることでエネルギーを節約することができ最適である。フラッシュランプの発光エネルギーが1J/cm2乃至7J/cm2の範囲であることが望ましく、2J/cm2乃至5J/cm2の範囲であることがより望ましい。
【0108】
ここで、キセノンのランプ強度を示すフラッシュ光の単位面積当りの発光エネルギーは以下の式(2)で表される。
S=((1/2)×C×V2)/(u×L)×(n×f) ・・・ 式(2)
上記式(2)中、nは一度に発光するランプ本数(本)、fは点灯周波数(Hz)、Vは入力電圧(V)、Cはコンデンサ容量(F)、uはプロセス搬送速度(cm/s)、Lはフラッシュランプの有効発光幅(通常は最大用紙幅、cm)、Sはエネルギー密度(J/cm2)を表す。
【0109】
光定着の方式としては、複数のフラッシュランプを時間差を設けて発光させるディレイ方式であることが望ましい。このディレイ方式は、複数のフラッシュランプを並べ、各々のランプを0.01ms乃至100ms程度ずつ遅らせて発光を行い、同じ箇所を複数回照らす方式である。これにより一度の発光でトナー像に光エネルギーを供給するのではなく分割して供給できるため、定着条件をマイルドにすることができ耐ボイド性と定着性とを両立することができるものである。
ここで、複数回トナーに対しフラッシュ発光を行う場合、前記フラッシュランプの発光エネルギーは、発光1回ごとの前記単位面積に与える発光エネルギーの総和量を指すこととする。
【0110】
本実施形態においては、フラッシュランプの本数は1本乃至20本の範囲であることが望ましく、2本乃至10本の範囲であることがより望ましい。また、複数のフラッシュランプ間の各々の時間差は0.1msec乃至20msecの範囲であることが望ましく、1msec乃至3msecの範囲であることがより望ましい。
さらに、フラッシュランプ1本の1回の発光による発光エネルギーは、0.1J/cm2以上2.5J/cm2以下の範囲であることが望ましく、0.4J/cm2以上2.0J/cm2以下の範囲であることよりの望ましい。
【0111】
以下、本実施形態の画像形成装置の一例として、光定着装置(光定着器)を備えた画像形成装置について図面を用いて説明する。
図2は、前記光定着装置を備えた画像形成装置の一例について示す概略模式図である。図2に示す画像形成装置は、シアン、マゼンタ、イエローの3色にブラックを加えたトナーによりトナー像形成を行うものを示す。また、この画像形成装置におけるプロセス速度も1000mm/秒以上に設定されている。
【0112】
図2中、1a、1b、1c、1dは帯電装置、2a、2b、2c、2dは露光装置、3a、3b、3c、3dは感光体(潜像保持体)、4a、4b、4c、4dは現像装置、10はロール媒体15から矢印方向に送り出される記録用紙(記録媒体)、20はシアン現像ユニット、30はマゼンタ現像ユニット、40はイエロー現像ユニット、50はブラック現像ユニット、70a乃至70dは転写ロール(転写装置)、71、72は搬送ロール、80は転写電圧供給手段、90は光定着器(定着装置)を各々表す。
【0113】
図2に示す画像形成装置は、帯電装置、露光装置手段、感光体、および現像装置を含む符号20、30、40、50で示される各色の現像ユニット(トナー像形成手段)と、記録用紙10に接して配置され、記録用紙10を搬送するロール71、72と、各現像ユニットの感光体を押圧するように記録用紙10を介してその反対側に接するように配置された転写ロール70a、70b、70c、70dと、これら3つの転写ロールに電圧を供給する転写電圧供給手段80と、感光体と転写ロールとのニップ部分を図中の矢印方向に通過する記録用紙10の感光体と接触する側に光を照射する光定着器(定着装置)90と、から構成されている。
【0114】
なお、シアン現像ユニット20は、感光体3aの周囲には時計回りに帯電装置1a、露光装置2a、現像装置4aが配置された構成を有する。また、感光体3aの現像装置4aが配置された位置から時計回りに帯電装置1aが配置されているまでの間の感光体3a表面に接するように、記録用紙10を介して転写ロール70aが対向配置されている。このような構成は他の色の現像ユニットも同様である。なお、本実施形態の画像形成装置においては、シアン現像ユニット20の現像装置4a内に前記シアントナーを含む現像剤が収納され、他の現像ユニットの現像装置には、各々の色に対応した光定着用のトナーを含む現像剤が収納される。
【0115】
次に、この画像形成装置を用いた画像形成について説明する。まず、ブラック現像ユニット50において、感光体3dを時計回り方向に回転させつつ、帯電装置1dにより感光体3dの表面を一様に帯電する。次に帯電された感光体3dの表面を露光装置2dにより露光することにより、複写しようとする元の画像のイエロー色成分の画像に対応した潜像が感光体3d表面に形成される。さらに、この潜像上に現像装置4d内に収納されたブラックトナーを付与することによりこれを現像してブラックトナー像を形成する。このプロセスは、イエロー現像ユニット40、マゼンタ現像ユニット30、シアン現像ユニット20においても同様に行なわれ、それぞれ現像ユニットの感光体表面にそれぞれの色のトナー像が形成される。
【0116】
感光体表面に形成された各色のトナー像は、転写ロール70a、70b、70c、70dによる転写電位の作用により、矢印方向に搬送される記録用紙10上に順次転写され、元の画像情報に対応するように記録用紙10の表面に積層されて、最上層からシアン、マゼンタ及びイエローの順に積層されたフルカラーの積層トナー画像が形成される。
【0117】
次に、この記録用紙10上の積層トナー画像が、光定着器90のところまで搬送され、そこで光定着器90から光の照射を受けて、溶融し、記録用紙10に光定着されフルカラー画像が形成される。
その後、図示しないカッターや封入封緘装置などの後処理機(後処理手段)による処理を経て、各種の用途に応じた画像として適宜使用される。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に示さない限り「質量基準」である。
【0119】
[実施例1]
<キャリアの作製>
(1)芯材の形成
MnO:23.0質量%、MgO:3.5質量%、Fe:73.0質量%及びSrO:0.5質量%を混合し、湿式ボールミルで10時間混合/粉砕した後、乾燥させ、その後950℃で4時間保持し、仮焼成を行った。
こうして得られた仮焼成物を、湿式ボールミルで24時間粉砕し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥した後、電気炉にて、窒素濃度99%雰囲気の中で1250℃で6時間保持し、本焼成を行った。
こうして得られた本焼成物を解砕し、さらに分級してフェライト粒子の芯材を得た。
得られたフェライト粒子の芯材は、平均粒径45μm、印加磁場が10kエルステットの時の飽和磁化が73A・m/kgであった。
【0120】
<キャリアの作製>
(キャリア1)
−被覆層塗布液の調製−
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM7103)12部、テトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBE04)3部を混合し、20℃に冷却した。
次に、0.25Nの酢酸2部を添加した後、20℃から30℃で一晩熟成して加水分解を行った。この溶液にイソプロピルアルコール35部、テトラヒドロフラン100部を添加し、固形分10%のシリコーン樹脂溶液を作製した。
さらにそのシリコーン樹脂を固形分換算で200部とカーボンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、BET比表面積1270m/g、ライオン株式会社製)30部、下記ポリシラン1(デカフェニルシクロペンタシラン(商品名:オグソールSI−30−10、数平均分子量:560、重量平均分子量:560、大阪ガスケミカル(株)製))1部を混合させ、被覆層塗布液を得た。
【0121】
【化5】

【0122】
−被覆−
流動床被覆装置(フロイント産業社製、スパイラフロー)を用い、前記フェライト粒子10000部に対し、前記被覆層塗布液が固形分として231部となるように入れて、30分間で被覆を行った。その後、150℃で乾燥を行い、被覆キャリア1を得た。
被覆キャリア1の平均粒径は45μmであり、被覆量は2.7%であり、6000V/cmの電界印加時の体積抵抗率は10Ωcmであった。
【0123】
(キャリア0)
キャリア1において、ポリシラン1を添加しない以外はキャリア1と同様の方法でキャリア0を作製した。
【0124】
(キャリア2乃至12)
表1に示すキャリア組成に変えた以外はキャリア1と同様の方法でキャリア2乃至12を作製した。
なお、使用したポリシランは以下の通りである。
【0125】
【化6】

【0126】
(キャリア13)
−第一被覆層塗布液の調製−
トリフルオロプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製、商品名KBM7103)12部、テトラエトキシシラン(信越化学工業株式会社製KBE04)3部を混合し、20℃に冷却した。
次に、0.25Nの酢酸2部を添加した後、20℃から30℃で一晩熟成して加水分解を行った。この溶液にイソプロピルアルコール35部、テトラヒドロフラン100部を添加し、固形分10%のシリコーン樹脂溶液を作製した。
さらにそのシリコーン樹脂を固形分換算で200部とカーボンブラック30部を混合させた。
【0127】
−第一層の被覆−
流動床被覆装置(フロイント産業社製、スパイラフロー)を用い、上記フェライト粒子10000部に対し、前記第一被覆層塗布液が固形分として230部となるように入れて30分間で被覆を行った。その後、100℃で乾燥を行い、被覆芯材を得た。
【0128】
−第二被覆層塗布液の調製−
次いで、シリコーン樹脂を固形分換算で30部と、上記ポリシラン1の0.15部を混合し、第二被覆層溶液を得た。
【0129】
−第二層の被覆−
液浸乾燥式被覆装置(愛工舎製作所社製、ACM−5)を用い、前記第一層の被覆を行ったフィライト芯材10230部に対し、前記第二被覆層塗布液が固形分として30.15部となるように入れて20分間攪拌することにより被覆を行った。その後270℃で1時間焼き付けを行った。
得られたキャリア13の平均粒径は45μmであり、被覆量は2.7%であり、6000V/cmの電界印加時の体積抵抗率は10Ωcmであった。
【0130】
(キャリア14)
キャリア13において、ポリシラン1を添加しない以外はキャリア13と同様の方法でキャリア14を作製した。
【0131】
(キャリア15)
キャリア1において、ポリシラン1の代わりに扁平の酸化マグネシウム(長軸500nm、短軸400nm、厚み25nm)を用いた以外はキャリア1と同様の方法でキャリア15を作製した。
【0132】
<トナーの製造>
(イエロートナーの製造)
結着樹脂として、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物を原料とするポリエステル樹脂85部(花王社製、FP118)および顔料としてCIpigment Yellow 180(クラリアント社製)5部、4級アンモニウム塩(PSY、クラリアント製)0.1部、赤外線吸収剤として、ジイモニウム(IRG−024TF、日本化薬)1部、ポリエチレンワックス(800P、三井化学社製)5部からなるトナー組成物を各々ヘンシェルミキサーに投入し、予備混合を行った後、エクストルーダー(池貝社製、PCM−30)により100℃から110℃、250rpmにて溶融混練し、次いでハンマーミルにて粗粉砕し、ジェットミルにて微粉砕した後、気流分級機にて分級を行い、イエロートナー母体粒子を得た。
このトナー母体粒子にシリカ1.5部(TG820F;キャボット社製)を高速撹拌装置(ヘンシェルミキサー)により外添して平均粒径4.6μmのイエロートナーを得た。
【0133】
(マゼンタトナーの製造)
イエロートナーの製造において、顔料をC.I.Pigment Red 122(ECR186Y、大日精化社製)に変えた以外は同様にして、平均粒径4.9μmのマゼンタトナーを得た。
【0134】
(シアントナー製造)
イエロートナーの製造において、顔料をC.I.Pigment Blue15(BLPO、チバスペシャリティケミカルズ)に変えた以外は同様にして、平均粒径4.6μmのシアントナーを得た。
【0135】
<静電荷像現像用現像剤の作製>
前記キャリア94部と上記トナー6部とをボ−ルミルで混合し、3.5部の静電荷像現像用現像剤を得た。
【0136】
<評価試験>
上記各現像剤を用い、実機による定着性を含めた画像評価を行った。評価装置としては、光定着器として700nm乃至1500nmの波長範囲に高い発光強度を有するキセノンフラッシュランプを搭載した富士ゼロックス社製、Fuji Xerox 490/980 Continuous Feedプリンタの改造機(概略構成は図2と同様)を用いた。なお、フラッシュランプの発光エネルギーは3.5J/cmとした。プロセス速度1152mm/秒で行った。
【0137】
記録媒体として普通紙(NIP−1500LT、小林記録紙)を用い、前記画像形成装置により、10℃、10%RHの環境条件にて、0.5%の印字率の画像を連続で印刷し、以下の評価を行った。
【0138】
試験は初期(1000枚印刷時)に1インチ角(2.54×2.54cm)のベタ画像サンプルを印刷し、次いで印字率0.5%条件で、12万枚の連続印刷を行い、その後、同ベタ画像を印刷し初期と12万枚印刷後の画像濃度を比較した。
【0139】
試験としてはまず、シアントナーを用い単色にて行い、表1及び表2の結果を得た。また、表には記載していないが、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックトナーを用いて同試験を行った場合においても、濃度が安定していることを確認した。
【0140】
さらに、キャリア15を用い、同じ評価を行ったが、帯電量が27μC/gから50μC/gまで上昇し、濃度は0.6まで低くなり使用できなかった。
【0141】
(印字濃度測定)
得られた1インチ角(2.54×2.54cm)の画像の濃度について以下のように評価した。まず、画像の各色に対応するステータスA濃度(OD)を測定した。なお、光学濃度の測定には(X−rite938)を使用した。
【0142】
(帯電量測定法)
トナーの帯電量の測定は、測定器としてブローオフ帯電量測定器(東芝ケミカル製)を用い、下記の測定条件によって行った。
気体 : 窒素
ブロー圧 : 1.5kg/cm
ブロー時間 : 30秒
【0143】
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
表中に示す材料は、以下を表す。
・芯材:上記作製の芯材
・シリコーン樹脂:上記作製のフッ素変性シリコーン樹脂
・アクリル樹脂:ポリメチルメタクリレート(商品名:BR-85、三菱レイヨン)
・カーボンブラック:ケッチェンブラック(商品名:ケッチェンブラックEC600JD、BET比表面積1270m/g、ライオン株式会社製)
・ポリシラン1:デカフェニルシクロペンタシラン(商品名:オグソールSI-30-10、数平均分子量:560、重量平均分子量:560、大阪ガスケミカル(株)製)
・ポリシラン6:メチルポリシラン(商品名:PMPS、数平均分子量2700、大阪ガスケミカル(株)製)
【0146】
表1及び表2に示すように、キャリアの被覆が樹脂及びポリシランを含むキャリア1乃至13を用いた実施例1乃至13では、ポリシランを含まないキャリア0又は14を用いた比較例1及び2に比べて、1%以下の低印字率で1000mm/秒以上の印刷速度においても、トナーの帯電量の変化が抑えられ、結果、印字濃度の変動が抑えられていた。
特に、樹脂2部に対してポリシラン1を0.02部以上1部以下で含有させた実施例2乃至5では、ポリシラン1の含有量がこの範囲外である実施例1及び6に比べて、トナーの帯電量の変動が抑えられていた。
また、環状ポリシランであるポリシラン1を用いた実施例4は、非環状ポリシランであるポリシラン6を用いた実施例11に比べて、トナーの帯電量の変動が抑えられていた。
更に、樹脂としてシリコーン樹脂を用いた実施例4は、アクリル樹脂を用いた実施例12に比べて、トナーの帯電量の変動が抑えられていた。
【0147】
更に、被覆層を単層とした実施例1乃至12に比べて、複層とした実施例13では、トナーの帯電量の変動が著しく抑えられていた。これに対し、被覆層を複層としてもポリシランを含有しない比較例2では、画像濃度が低下し、画像のかすれが発生していた。
【符号の説明】
【0148】
1a,1b,1c,1d 帯電装置
2a,2b,2c,2d 露光装置
3a,3b,3c,3d 感光体
4a,4b,4c,4d 現像装置
10 記録用紙(記録媒体)
15 ロール媒体
20 シアン現像ユニット
30 マゼンタ現像ユニット
40 イエロー現像ユニット
50 ブラック現像ユニット
70a,70b,70c,70d 転写ロール
71,72 搬送ロール
80 転写電圧供給手段
90 光定着手段(定着装置)
100 芯材
120 被覆層
121 第一の被覆層
122 第二の被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材を含む芯材と、
前記芯材の表面を被覆し、樹脂及びポリシランを含む被覆層と、
を有する静電荷像現像用キャリア。
【請求項2】
前記ポリシランが、下記一般式(4)で表される環状ポリシランである請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【化1】


〔一般式(4)中、R及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルケニル基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基又はシリル基を表し、mは5以上9以下の整数を表す。〕
【請求項3】
前記樹脂が、架橋型シリコーン樹脂である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項4】
前記被覆層が単層であり、該被覆層が更に導電材料を含有する請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項5】
前記被覆層が、第一の被覆層及び第二の被覆層を有する複層であり、
芯材側に設けられた第一の被覆層は、樹脂とポリシランと導電材料とを含み、
最外層として設けられた第二の被覆層は、樹脂とポリシランとを含み、
前記導電材料の含有率が第一の被覆層よりも第二の被覆層で少なく、
前記ポリシランの含有率は第一の被覆層よりも第二の被覆層で多い請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアと、
トナーと、
を含む静電荷像現像用現像剤。
【請求項7】
潜像保持体と、
前記潜像保持体の表面を帯電させる帯電装置と、
帯電された前記潜像保持体上に、潜像を形成する潜像形成装置と、
前記潜像保持体上に形成された前記潜像を、請求項6に記載の静電荷像現像用現像剤によってトナー像に現像する現像装置と、
前記トナー像を被記録媒体に転写する転写装置と、を有し、
前記トナー像を形成する際の前記記録媒体の搬送速度が、1000mm/秒以上である画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−191546(P2011−191546A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58056(P2010−58056)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】