説明

静電霧化装置

【課題】人に対して過度に帯電微粒子水を付着させることなく、人が帯電微粒子水を必要としているときを把握して効率良く帯電微粒子水を付着させることができる静電霧化装置を提供する。
【解決手段】車両内の天井部には静電霧化装置11が取付けられている。静電霧化装置11は、車両の各部動作を司る制御回路31と接続されるとともに、制御回路31からの指令信号を受信することで静電霧化動作の開始又は停止がなされるようになっている。車両を操舵するハンドル部には、運転手の生体情報としての心拍数を検出する心拍センサ32が設けられている。心拍センサ32は心拍測定回路33を備えるとともに制御回路31と接続されている。制御回路31は、心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第一の閾値以上になったときに、静電霧化装置11の静電霧化動作を開始させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を霧化させてナノメータサイズの帯電微粒子水を発生させる静電霧化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水を霧化させてナノメータサイズの帯電微粒子水(ナノミスト)を発生させる静電霧化装置が提案されている。この静電霧化装置により発生するナノメータサイズの帯電微粒子水は、スーパーオキサイドラジカルやヒドロキシラジカルといったラジカルが含まれており、脱臭効果やウイルス又はカビ菌の除去・抑制、アレルゲン物質の不活性化等の効果があることから、近年注目されている。そこで、乗用車等の車両における車室内の壁面やシート等に付着した煙草等の臭い成分を除去するために、静電霧化装置を車室内に設置するとともに、壁面やシート等に付着した臭い成分の脱臭を行うようにしている。また、静電霧化装置を車室内に設置することで、人や衣服に付着して車室内に持ち込まれた花粉等のアレルゲン物質を抑制することができる。さらには、人に帯電微粒子水を付着させることで、帯電微粒子水を浴びた乗員は爽快な気分となりリラックスした状態となることができる。
【0003】
このような静電霧化装置により発生する帯電微粒子水を空調装置の吹出風に乗せて車室内に放出するようにした車両用静電霧化装置が特許文献1により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−37373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような車両静電霧化装置により発生する帯電微粒子水を人に対して必要以上に付着させると、人は過度にリラックスした状態となり、それが運転者であれば運転動作が緩慢になる虞がある。また、車両に搭載される静電霧化装置に限らず、その他の静電霧化装置においても、適切なタイミングをもって人を適度にリラックスさせることのできる機能の付加が望まれている。
【0006】
本発明はこうした従来の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、人に対して過度に帯電微粒子水を付着させることなく、人が帯電微粒子水を必要としているときを把握して効率良く帯電微粒子水を付着させることができる静電霧化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、放電電極と、前記放電電極に水を供給する供給手段と、前記放電電極に高電圧を印加する高電圧印加手段と、前記高電圧印加手段による前記放電電極への高電圧の印加によって前記放電電極に供給された水を静電霧化する静電霧化動作が行われることで生成された帯電微粒子水を人に付着するように放出するための放出口と、前記静電霧化動作を制御する制御手段とを備える静電霧化装置において、人の生体情報を検出する生体情報検出手段を備え、前記制御手段は、前記生体情報検出手段から検出される検出値に応じて前記静電霧化動作を制御することを要旨とする。
【0008】
この発明によれば、制御手段は生体情報検出手段から検出される検出値に応じて静電霧化動作を制御するため、人が帯電微粒子水を必要とする状態にあるか否かを把握して効率良く帯電微粒子水を人に付着させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記生体情報検出手段は生体情報として人の心拍数を検出するものであることを要旨とする。
この発明によれば、心拍数に基づいて人の緊張度合・リラックス度合を監視することができ、人が緊張した状態にあるときには静電霧化動作を実行して帯電微粒子水を人に付着させるようにする一方、人がリラックスした状態にあるときには静電霧化動作を停止する等、人の緊張度合・リラックス度合に基づいて静電霧化動作を制御することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記制御手段は、前記生体情報検出手段により検出される心拍数が上昇して人が緊張していると判断されるときに、前記静電霧化動作を開始することを要旨とする。
【0011】
この発明によれば、生体情報検出手段により検出される心拍数が上昇して人が緊張していると判断されるとき、制御手段が静電霧化動作を開始させるとともに人に対して帯電微粒子水を付着させることで、人を緊張した状態からリラックスした状態とさせることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は請求項2または請求項3に記載の発明において、前記制御手段は、前記生体情報検出手段により検出される心拍数が低下して人がリラックスしていると判断されるときに、前記静電霧化動作を停止することを要旨とする。
【0013】
この発明によれば、生体情報検出手段により検出される心拍数が低下して人がリラックスしていると判断されるとき、制御手段が静電霧化動作を停止させることで、人が帯電微粒子水を必要としていないときの無駄な帯電微粒子水の放出を回避し、人に対して必要以上に帯電微粒子水を付着させることを抑制することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項2〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記静電霧化装置は車両内に設置されるものであるとともに、前記生体情報検出手段は、前記車両を操舵するハンドル部に設けられていることを要旨とする。
【0015】
運転者は基本的に手でハンドル部を把持していることから、生体情報検出手段をハンドル部に設けることで、生体情報としての心拍数を適切に検出することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記静電霧化装置は車両内に設置されるものであるとともに、前記生体情報検出手段は、前記車両に備えられる肘掛部に設けられていることを要旨とする。
【0016】
運転者以外の乗員(例えば助手席に座る乗員)については、人体の腕が肘掛部に触れていることが多いと考えられることから、生体情報検出手段を肘掛部に設けることで、生体情報としての心拍数を適切に検出することができる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の発明において、前記静電霧化装置は車両内に設置されるものであるとともに、帯電微粒子水を放出するための前記放出口は前記車両内の天井部に設けられていることを要旨とする。
【0018】
天井部は人体との距離が短く、かつ周りに障害物が存在しないため、人に対して効率良く帯電微粒子水を付着させることができる。すなわち、天井部は帯電微粒子水を放出するための放出口を設置する上で好適な場所といえる。
【0019】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の発明において、前記放出口から放出される帯電微粒子水の放出方向を偏向できる放出方向偏向手段を更に設けることを要旨とする。
【0020】
この発明によれば、放出方向偏向手段によって放出口から放出される帯電微粒子水の放出方向を偏向することにより、帯電微粒子水を付着すべき人に向けて放出することができる。よって、例えば、車両用静電霧化装置においては、制御手段が運転者以外の乗員に帯電微粒子水が必要と判断した場合、運転者以外の乗員に向かって帯電微粒子水を放出させるように放出方向を偏向することで、運転者以外の乗員に向けて帯電微粒子水を放出することができる。また、制御手段が運転者に帯電微粒子水が必要と判断した場合、運転者に向かって帯電微粒子水を放出させるように運転者以外の乗員側に向いていた放出方向を運転者側に偏向することで、運転者側に向けて帯電微粒子水を放出することができる。さらに、運転者と運転者以外の乗員の両者が帯電微粒子水を必要としているときは、放出方向偏向手段によって帯電微粒子水の放出方向を運転者側の方向と運転者以外の乗員側の方向とを往復させることで両者に効率良く帯電微粒子水を付着させることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、人に対して過度に帯電微粒子水を付着させることなく、人が帯電微粒子水を必要としているときを把握して効率良く帯電微粒子水を付着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態における車両用静電霧化装置を備えた車両の概略図。
【図2】車両用静電霧化装置の構成を示す断面図。
【図3】心拍センサを車両のハンドル部に設けた一例を示す概略図。
【図4】車両用静電霧化装置の電気的構成を示すブロック図。
【図5】心拍センサを車両の肘掛部に設けた一例を示す概略図。
【図6】(a)及び(b)は別の実施形態における車両用静電霧化装置の放出口を一部分拡大した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を車両用静電霧化装置に具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1に示すように、車両10内の天井部10aには、ナノメータサイズの帯電微粒子水(ナノサイズミスト)を発生させる車両用静電霧化装置11(以下、単に「静電霧化装置11と記載する」)が取付けられている。
【0024】
次に、静電霧化装置11の具体的構成について図2にしたがって説明する。
図2に示すように、静電霧化装置11は絶縁材料からなる筒体12を備えるとともに、筒体12内には放電電極13が収容されている。放電電極13は筒体12の先端開口部12aに向かって延びるように設けられるとともに、放電電極13の先端は筒体12の先端開口部12a側を向いている。筒体12の先端開口部12aには放電電極13と対向するリング状の対向電極14が配置されている。対向電極14の孔14aの中心は放電電極13における軸心の延長線上に位置している。また、放電電極13及び対向電極14には、放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加する高電圧印加手段としての高電圧印加部21が接続されている。
【0025】
放電電極13の下方には、空気中の水分を冷却して結露水を生成することで放電電極13上に水を供給する供給手段としてのペルチェユニット15が設けられている。ペルチェユニット15は、熱伝導性の高い絶縁板の片面側に回路が形成された一対のペルチェ回路板16を備え、ペルチェ回路板16における互いの回路が向き合うように対向配置されている。さらに、一対のペルチェ回路板16により複数のBiTe系の熱電素子17が挟持されるとともに、隣接する熱電素子17同士を両側の回路で電気的に接続させ、ペルチェ入力リード線18を介して図示しない電源から熱電素子17に電気を供給するようになっている。熱電素子17に電気が供給されることで、一方のペルチェ回路板16側から他方のペルチェ回路板16側に向けて熱が移動するようになっている。
【0026】
また、一方のペルチェ回路板16の裏面(回路が形成されていない面)には冷却部19が接続されるとともに、他方のペルチェ回路板16の裏面(回路が形成されていない面)には放熱部20(例えば放熱フィン)が接続されている。放電電極13の基端部は冷却部19と接続されている。
【0027】
次に、上記構成の静電霧化装置11における静電霧化動作について説明する。
上記構成の静電霧化装置11では、電源からペルチェ入力リード線18を介してペルチェユニット15に電気が供給されることで冷却部19が冷却される。そしてこのように冷却部19が冷却されることで放電電極13が冷却され、空気中の水分が結露して放電電極13に水(結露水)が供給されるようになっている。放電電極13に水が供給された状態において、高電圧印加部21により放電電極13と対向電極14との間に高電圧を印加すると、放電電極13と対向電極14との間にかけられた高電圧により、放電電極13の先端部に供給された水と対向電極14との間にクーロン力が働き、水の液面が局所的に錐状に盛り上がってテーラーコーンが形成される。テーラーコーンが形成されると、テーラーコーンの先端に電荷が集中するとともに、テーラーコーンの先端における電界強度が強くなる。これにより、テーラーコーンの先端に生じるクーロン力が大きくなり、さらにテーラーコーンが成長するようになる。
【0028】
テーラーコーンが成長し、テーラーコーンの先端に電荷が集中して電荷の密度が高密度になると、テーラーコーンの先端部分の水が大きなエネルギー(高密度となった電荷の反発力)を受けるとともに、表面張力を超えて分裂・飛散(レイリー分裂)を繰り返してプラス又はマイナスに帯電したナノメータサイズの帯電微粒子水が大量に生成される。生成された帯電微粒子水は、筒体12の先端開口部12a側に向かって筒体12内を通過するとともに、対向電極14の孔14aを介して運転者に向かって放出される。そして、運転者に向かって放出された帯電微粒子水は運転者に付着する。すなわち、対向電極14の孔14aは帯電微粒子水を放出するための放出口として機能する。なお、本実施形態の静電霧化装置11は、帯電微粒子水が運転者に付着しやすいようにするために、対向電極14の孔14aが、運転者が座る運転席側に向くように車両10内の天井部10aに取付けられている。
【0029】
静電霧化装置11は、車両10の各部動作を司る制御回路31(図4参照)と接続されるとともに、制御回路31からの指令信号を受信することで静電霧化動作の開始又は停止がなされるようになっている。すなわち、制御回路31は、静電霧化装置11の静電霧化動作を制御する制御手段として機能する。なお、静電霧化装置11は、車両10におけるイグニッションキースイッチを介することなく、車両電源である図示しないバッテリーから電源が供給されるようになっており、イグニッションキースイッチがオフのときであったとしても静電霧化動作が可能となっている。
【0030】
図3に示すように、車両10を操舵するハンドル部22には、運転手の生体情報を検出する生体情報検出手段、具体的には運転手の心拍数を検出する心拍センサ32が設けられている。本実施形態の心拍センサ32は、運転手の身体に装着することで運転者の心拍数を検出する拘束タイプではなく、運転者の身体に装着されない状態で心拍数を検出することができる非拘束タイプを用いることが好ましい。なお、このような非拘束タイプのものとしては、例えば、運転者がハンドル部22を把持した状態において、運転者の手の平によって荷重を受ける位置に配された圧電素子や静電容量センサ、発光素子と受光素子とに両端が接続された光ファイバーを用いたものを挙げることができる。
【0031】
図4に示すように、心拍センサ32は心拍測定回路33を備えるとともに制御回路31と接続されている。心拍測定回路33は、心拍センサ32によって検出される心拍数の初期値HR(0)を取り込んで記憶する。なお、初期値HR(0)は運転開始後に運転者の手が心拍センサ32に初めて接触したときの心拍数として設定してもよいし、予め定められた固定値として設定してもよい。その後、心拍測定回路33は、所定時間毎に心拍センサ32により検出される心拍数HR(n)と初期値HR(0)とを比較するとともに、比較して算出された比較値ΔHRに基づいて制御回路31は、静電霧化装置11の静電霧化動作を制御する。比較値ΔHRは、心拍センサ32により検出される心拍数HR(n)と初期値HR(0)とを用いると、
ΔHR={(HR(n)−HR(0))/HR(0)}×100…(1)
として計算される。心拍測定回路33により上記(1)の式に基づいて計算された比較値ΔHRは制御回路31に送られるようになっている。
【0032】
制御回路31は、上記(1)の式から計算された比較値ΔHRが第一の閾値以上になった(例えば、ΔHR≧10%)ときに、静電霧化装置11の静電霧化動作を開始させる。心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第一の閾値以上になった場合、運転者の心拍数が上昇して運転者が緊張した状態であると判断できる。よって、制御回路31は、心拍測定回路33から算出される比較値ΔHRが第一の閾値以上になったときに静電霧化動作を開始させるとともに運転者に対して必要なときに効率良く帯電微粒子水を付着させることで、運転者を緊張した状態からリラックスした状態とさせることができる。
【0033】
一方、制御回路31は、上記(1)の式から計算された比較値ΔHRが第二の閾値以下になった(例えば、ΔHR≦−10%)ときに、静電霧化装置11の静電霧化動作を停止させる。心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第二の閾値以下になった場合、運転者の心拍数が低下して運転者がリラックスしていると判断できる。よって、制御回路31が静電霧化動作を停止させることで、運転者が帯電微粒子水を必要としていないときの無駄な帯電微粒子水の放出を回避し、運転者に対して必要以上に帯電微粒子水を付着させることを抑制することができる。なお、第一の閾値及び第二の閾値は、「第一の閾値≧第二の閾値」といった大小関係が成立するようにそれぞれ設定する。
【0034】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)制御回路31は、心拍センサ32から検出される運転者の心拍数に応じて静電霧化動作を制御する。よって、制御回路31は運転者が帯電微粒子水を必要とする状態にあるか否かを把握して効率良く帯電微粒子水を運転者に付着させることができる。
【0035】
(2)生体情報検出手段として心拍センサ32を用いるとともに、心拍センサ32によって生体情報として運転者の心拍数を検出するようにした。よって、心拍数に基づいて運転者の緊張度合・リラックス度合を監視することができ、運転者が緊張した状態にあるときには静電霧化動作を実行して帯電微粒子水を人に付着させるようにする一方、運転者がリラックスした状態にあるときには静電霧化動作を停止する等、運転者の緊張度合・リラックス度合に基づいて静電霧化動作を制御することができる。
【0036】
(3)制御回路31は、心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第一の閾値を以上になったときに、静電霧化装置11の静電霧化動作を開始させる。心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第一の閾値以上になった場合、運転者の心拍数が上昇して運転者が緊張した状態であると判断できる。よって、制御回路31が静電霧化動作を開始させるとともに運転者に対して帯電微粒子水を付着させることで、運転者を緊張した状態からリラックスした状態とさせることができる。
【0037】
(4)制御回路31は、心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第二の閾値以下になったときに、静電霧化装置11の静電霧化動作を停止させる。心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第二の閾値以下になった場合、運転者の心拍数が低下して運転者がリラックスしていると判断できる。よって、制御回路31が静電霧化動作を停止させることで、運転者が帯電微粒子水を必要としていないときの無駄な帯電微粒子水の放出を回避し、運転者に対して必要以上に帯電微粒子水を付着させることを抑制することができる。
【0038】
(5)ハンドル部22には、運転手の心拍数を検出する心拍センサ32が設けられるとともに、心拍センサ32は心拍測定回路33を備えている。運転者は基本的に手でハンドル部22を把持していることから、心拍センサ32をハンドル部22に設けることで、適切に心拍数を検出することができる。
【0039】
(6)帯電微粒子水を放出するための放出口として機能する対向電極14の孔14aは、車両10内の天井部10aに取付けられている。天井部10aは人体との距離が短く、かつ周りに障害物が存在しないため、運転者に対して効率良く帯電微粒子水を付着させることができる。すなわち、天井部10aは帯電微粒子水を放出するための放出口を設置する上で好適な場所といえる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、心拍センサ32をハンドル部22に設けたが、心拍センサ32を設ける位置はこれに限られない。例えば、図5に示すように、心拍センサ32を車両10に備えられる肘掛部23に設けてもよい。運転者以外の乗員(例えば助手席に座る乗員)については、人体の腕が肘掛部23に触れていることが多いと考えられることから、心拍センサ32を肘掛部23に設けることで、運転者以外の乗員の心拍数を適切に検出することができる。
【0041】
○ 実施形態において、対向電極14の孔14aに、孔14aから放出される帯電微粒子水の放出方向を偏向できる放出方向偏向手段をさらに設けてもよい。例えば、図6(a)及び(b)に示すように、対向電極14の孔14aには複数の細長い板41aをそれぞれ平行に組んで構成されるルーバー41が設けられている。各板41aの中心部には軸41bがそれぞれ設けられ、各板41aは軸41bによって回動可能に支持されている。
【0042】
これによれば、ルーバー41によって孔14aから放出される帯電微粒子水の放出方向を偏向することにより、帯電微粒子水を付着すべき人に向けて放出することができる。例えば、制御回路31が助手席に座る乗員に帯電微粒子水が必要と判断した場合、ルーバー41によって、助手席に座る乗員に向かって帯電微粒子水を放出させるように放出方向を助手席側(図6(a)に示す矢印Aの方向)に設定することで、助手席に座る乗員に向けて帯電微粒子水を放出することができる。また、制御回路31が運転者に帯電微粒子水が必要と判断した場合、運転者に向かって帯電微粒子水を放出させるように助手席側に向いていた放出方向を運転席側の方向(図6(b)に示す矢印Bの方向)に偏向することで、運転者側に向けて帯電微粒子水を放出することができる。さらに、運転者と助手席に座る乗員の両者が帯電微粒子水を必要としているときは、ルーバー41を運転席側の方向と助手席側の方向とを往復するように揺動させることで、両者に効率良く帯電微粒子水を付着させることができる。
【0043】
なお、帯電微粒子水の放出方向は、運転席側及び助手席側に限られるものではなく、例えば後部座席に座る乗員に向かって帯電微粒子水を放出するようにルーバー41によって帯電微粒子水の放出方向を偏向させてもよい。すなわち、ルーバー41は帯電微粒子水の放出方向を偏向できる放出方向偏向手段として機能する。
【0044】
○ 実施形態において、制御回路31は、心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第二の閾値以下になったときに、静電霧化装置11の静電霧化動作を停止させるようにしたが、例えば、静電霧化動作を開始してから所定時間が経過したときに静電霧化動作を停止させるといった構成を採用することもできる。
【0045】
○ 実施形態において、制御回路31は、心拍測定回路33により算出された比較値ΔHRが第一の閾値以上になったときに、静電霧化装置11の静電霧化動作を開始させるようにしたが、これに限られない。例えば、心拍センサ32によって検出される心拍数HR(n)と初期値HR(0)との差(=HR(n)−HR(0))が所定値以上になった時点で静電霧化装置11の静電霧化動作を開始させるようにしてもよい。
【0046】
○ 実施形態において、帯電微粒子水を放出するための放出口を車両10内の天井部10aに取付けたが、これに限られず、例えば、運転席のヘッドレスト部、又は助手席のヘッドレスト部に取付けてもよい。
【0047】
○ 実施形態において、供給手段としてペルチェユニット15を設けたが、これに限られず、例えば、水溜め部を設けて水溜め部に水を溜めるとともに、水溜め部内の水を毛細管現象などを利用して放電電極13の先端部に供給するようにしてもよい。
【0048】
○ 実施形態の静電霧化装置11は対向電極14を設けた構成にしたが、対向電極14を設けない構成にしてもよい。この場合、筒体12の先端開口部12aが帯電微粒子水を放出するための放出口として機能する。
【0049】
○ 実施形態において、生体情報として人の心拍数を検出するようにしたが、これに限られず、生体情報として人の汗の量や、体温の変化、呼吸数、脳波等の生体情報を検出するようにしてもよい。
【0050】
○ 本発明を車両10に適用したが、これに限らず、本発明はその他の静電霧化装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…車両、10a…天井部、11…車両用静電霧化装置、13…放電電極、14a…放出口としての孔、15…供給手段としてのペルチェユニット、21…高電圧印加手段としての高電圧印加部、22…ハンドル部、23…肘掛部、31…制御手段としての制御回路、32…生体情報検出手段としての心拍センサ、41…放出方向偏向手段としてのルーバー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、前記放電電極に水を供給する供給手段と、前記放電電極に高電圧を印加する高電圧印加手段と、前記高電圧印加手段による前記放電電極への高電圧の印加によって前記放電電極に供給された水を静電霧化する静電霧化動作が行われることで生成された帯電微粒子水を人に付着するように放出するための放出口と、前記静電霧化動作を制御する制御手段とを備える静電霧化装置において、
人の生体情報を検出する生体情報検出手段を備え、
前記制御手段は、前記生体情報検出手段から検出される検出値に応じて前記静電霧化動作を制御することを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の静電霧化装置において、
前記生体情報検出手段は生体情報として人の心拍数を検出するものである
ことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項3】
請求項2に記載の静電霧化装置において、
前記制御手段は、前記生体情報検出手段により検出される心拍数が上昇して人が緊張していると判断されるときに、前記静電霧化動作を開始する
ことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載の静電霧化装置において、
前記制御手段は、前記生体情報検出手段により検出される心拍数が低下して人がリラックスしていると判断されるときに、前記静電霧化動作を停止する
ことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項5】
請求項2〜請求項4のいずれか一項に記載の静電霧化装置において、
前記静電霧化装置は車両内に設置されるものであるとともに、
前記生体情報検出手段は、前記車両を操舵するハンドル部に設けられている
ことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項6】
請求項2〜請求項5のいずれか一項に記載の静電霧化装置において、
前記静電霧化装置は車両内に設置されるものであるとともに、
前記生体情報検出手段は、前記車両に備えられる肘掛部に設けられている
ことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の静電霧化装置において、
前記静電霧化装置は車両内に設置されるものであるとともに、帯電微粒子水を放出するための前記放出口は前記車両内の天井部に設けられている
ことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項8】
前記放出口から放出される帯電微粒子水の放出方向を偏向できる放出方向偏向手段を更に設ける
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−188232(P2010−188232A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32970(P2009−32970)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】