説明

静電霧化装置

【課題】室内環境、例えば車の室内などをはじめ、冷蔵庫の庫内などの環境を改善すべく、不揮発性のビタミン類やカテキンなどの機能性成分や金属ナノコロイドを混合した水溶液を、微細なナノサイズのミストとして静電霧化装置の放出ピン部材から空気中に大量に放出させる静電霧化装置を提供することを目的とする。
【解決手段】不揮発性機能性成分を含む機能性水溶液16を収容する給水容器11と、給水容器の周囲に複数突設して形成され、吸い上げ特性を有する放出ピン部材14と、放出ピン部材を固定する保水材15と、保水材を介して放出ピン部材を負に帯電させる直流電源13に接続された装着台19とを備え、給水容器から機能性水溶液を吸い上げて放出ピン部材から機能性成分を含むナノミストを外部に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性成分を含む液体を霧化させた超微細なミストを、空気中などの外部、例えば車の室内や冷蔵庫の庫内等へ出する静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ビタミン類などの機能性成分は、健康サプリメントや医薬品をはじめとして、化粧品や衣類などに使用されており、健康サプリメントの摂取、医薬品の服用、化粧品の塗用、または衣類の着用などによって、人体に直接吸収させるという利用方法が主体であった。
また、揮発性の機能性成分は、抗酸化または抗菌などの目的で家電にも利用されているが、不揮発性の機能成分は、真水や揮発性溶媒であるアルコールなどに溶解させて用いても、任意に空気中に放出させることは困難であった。
【0003】
これらを空気中に放出させる手段として、例えば空気清浄機や加湿器などに内蔵され液体を霧化する霧化装置として、超音波を利用して液体を霧化する超音波霧化装置が知られている。一般に、超音波霧化装置は、超音波を発生する超音波発生手段として圧電素子を備えており、超音波発生手段から出力された超音波により、霧化対象の不揮発性機能性成分含有液をミストとして放出することが可能である。しかし、超音波により発生させたミストは粒子が目視可能な程度に大きく、湿度過剰や濡れが生じて腐食やカビなどを発生させることがあった。
【0004】
また、液体を霧化する霧化装置としては、超音波霧化装置の他に、特許文献1に開示されているように、キャピラリ電極またはキャピラリ電極及び対極電極に高電圧を印加することにより液体を霧化する静電霧化装置が知られている。
この種の静電霧化装置としては、例えば、液体を入れた容器と、容器から液体を吸い上げるキャピラリ(細管)と、キャピラリの備えた電極と接地極との間に高電圧を印加する高電圧電源とを有しているものが知られている。
【0005】
このように、近年、エアコンや空気清浄機では、フィルターを利用して空気を清浄化し、在室者に快適な室内環境を提供している。更に近年は、エアコンや空気清浄機からミストを放出し、室内の湿度調節や脱臭、除菌効果も期待できる商品が販売されている。
【0006】
また、エアコンや空気清浄機、加湿器などでは、室内環境を改善する手段として、コロナ放電を利用したマイナスイオンの発生装置や、水を蒸発させてミストを放出する加湿装置や電気分解を利用したアルカリイオン水のミストを付属機能として装備することがなされている。
例えば、水保持部内に収容されている水に負電圧を印加する印加電極と、接地されている対向電極と、前記の水に接触しているとともに前記対向電極に先端の針状霧化部を対向させて水保持部から吸い上げた水を静電霧化させる吸水体と、前記対向電極との間のコロナ放電でマイナスイオンを発生させるイオン化針とから成るマイナスイオン発生機能付の静電霧化装置を備えた空気清浄機が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−79714公報
【特許文献2】特開2004−358358公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に開示された静電霧化装置では、高電圧電源が必要となり、高電圧を発生する高電圧回路などのコストが高くなるとともに取り扱いに注意が必要であった。また、静電霧化装置では、オゾンの発生に伴う異臭の発生などの懸念があり、これらの問題を解決するための対策を含めた装置全体のコストが高くなってしまうとともに、装置全体のサイズが大きくなってしまうという懸念点があった。
【0009】
また、特許文献2に開示されたマイナスイオン発生技術のように、市販されているナノサイズのミスト発生装置は、典型的なコロナ放電作用を利用しているため、マイナスイオンを大量に発生させたり、前記同様にオゾンが発生する。この原因はマイナスイオン量の発生量を大きくする目的でミスト放出基材の先端部を鋭利に尖った形状に形成していることにあり、そのため、ミスト放出基材の先端まで十分な水の吸い上げができず、保水量も少ないために十分なミスト量が得られないので、任意の水分量をミストとして放出することができない。
【0010】
また、市販されている機能性成分の空気中への放出手段としては、揮発性成分以外ではビタミン類のイオン導入機が挙げられるが、超音波を利用した発生装置ではミスト粒子がミクロンサイズであり大き過ぎるため水滴となって結露しやすく、また、マイナスイオンを利用した発生装置ではミスト粒子がナノサイズと小さいものもあるが、車の室内のように狭い空間の中にオゾンなどの物質が放出されると健康上好ましくない。
【0011】
そこで、本発明は、室内環境、例えば車の室内などをはじめ、冷蔵庫の庫内などの環境を改善すべく、不揮発性のビタミン類やカテキンなどの機能性成分を混合した水溶液を、微細なナノサイズのミストとして静電霧化装置の放出ピン部材から外部に大量に放出させる静電霧化装置を提供することを目的とする。
また、機能性水溶液に金属ナノコロイドを配合し、ナノサイズの超微細ミストを静電霧化装置の放出ピン部材から外部に大量に放出させ、室内や庫内の脱臭、除菌、鮮度保持などの効果を発揮する静電霧化装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明の静電霧化装置は、前記目的を達成するために提案されたもので、不揮発性機能性成分を含む機能性水溶液を収容する給水容器と、
給水容器の周囲に複数突設して形成され、吸い上げ特性を有する放出ピン部材と、
該放出ピン部材を固定する保水材と、
該保水材を介して該放出ピン部材を負に帯電させる直流電源に接続された装着台を備え、
前記給水容器から機能性水溶液を吸い上げて前記放出ピン部材から機能性成分を含むミストを外部に放出することを特徴とする。
【0013】
(2)本発明の静電霧化装置は、前記(1)において、前記放出ピン部材が、セラミックス材料、合成樹脂材料、金属材料の多孔体、又は、繊維成型体の1種類または2種類以上を複合化して形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
(3)本発明の静電霧化装置は、前記(1)または(2)において、前記放出ピン部材は、給水容器からの水溶液を吸み上げ、その先端部で前記ミストが放出されるように構成したことを特徴とする。
【0015】
(4)本発明の静電霧化装置は、前記(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記機能性水溶液に含まれる不揮発性機能性成分は、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系の水溶性成分、あるいは、銀又は食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上を組み合わせたものであることを特徴とする。
【0016】
(5)本発明の静電霧化装置は、前記(1)〜(4)のいずれかにおいて、前記機能性水溶液に金属ナノコロイドを含むことを特徴とする。
【0017】
(6)本発明の静電霧化装置は、前記(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記金属ナノコロイドが、白金ナノコロイド、又は金ナノコロイド、又はパラジウム・ナノコロイドであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の静電霧化装置によれば、次のようなすぐれた効果を奏する。
本発明の静電霧化装置は、不揮発性機能性成分を含む機能性水溶液を収容する給水容器と、給水容器の周囲に複数突設して形成され、吸い上げ特性を有する放出ピン部材と、該放出ピン部材を固定する保水材と、該保水材を介して該放出ピン部材を負に帯電させる直流電源に接続された装着台とを備え、前記給水容器から機能性水溶液を吸い上げて前記放出ピン部材から機能性成分を含むミストを外部に放出することを特徴とする。
したがって、本発明の静電霧化装置を、たとえば室内や車内に設置することで、室内環境を改善することができる。
【0019】
本発明の放出ピン部材は、セラミックス材料、合成樹脂材料、金属材料の多孔体、又は、繊維成型体の1種類または2種類以上を複合化して形成されている。また、セラミックス材料等を棒状体として形成したものが挙げられる。放出ピン材を形成する材料が多孔体の場合、独立した微細泡の集合体であるよりも、無数の微細孔が連続しているものを使用する方が、水溶液が通過する上で都合がよい。
【0020】
放出ピン部材は、給水容器内の水分を吸み上げ、その先端部で前記ミストが放出されるように構成されている。放出ピン部材を負に帯電させる直流電源により、放出ピン部材から自然放電現象が起こり、そのイオン風を利用して機能性成分をミストとともに大量に空気中に放出することができる。したがって、この静電霧化装置を、たとえば室内や車内に設置することで、室内環境を改善することができる。
【0021】
前記機能性水溶液に含まれる不揮発性機能性成分は、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系の水溶性成分、あるいは、銀又は食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上を組み合わせたものである。これら成分により、さまざまな室内環境に適用して環境改善を図ることができる。
【0022】
機能性水溶液に金属ナノコロイドを含んでおり、また金属ナノコロイドは、白金ナノコロイド、金ナノコロイド、又はパラジウム・ナノコロイドである。これら金属ナノコロイドの作用により、消臭、除菌効果を有効に得ることができる。
【0023】
上記のように、本発明の静電霧化装置は、不揮発性機能性成分を含むナノサイズのミスト(微粒子水)を大量に空気中、例えば車の室内や冷蔵庫の庫内に放出させることができ、室内や庫内の壁に結露して水分でべとつかせることがなく、消臭、除菌作用を有効に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る静電霧化装置の実施の一形態を示す概略図である。
【図2】図1に示す本発明に係る静電霧化装置の縦断面図である。
【図3】不揮発性機能性成分を含む機能性水溶液を収容する給水容器の説明図である。
【図4】図1に示す実施例の静電霧化装置に設けられた放出ピン部材の配設状況を示す上面図である。
【図5】放出ピン部材の先端形状を示す概略側面図である。
【図6】放出ピン部材についての種類を示し、(a)は多孔体であり無数の微細孔が連続している連続気孔のもの、(b)は繊維成型体構造に形成するもの、(c)繊維を束ねたものを示す。
【図7】本発明に係る静電霧化装置の実施の他の一形態を示す概略図である。
【図8】図7の実施形態に係る静電霧化装置における放出ピン部材の設置状況を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る静電霧化装置の実施の一形態を示す概略図である。図2は、図1に示す本発明に係る静電霧化装置の縦断面図である。図示するように、本発明に係る静電霧化装置10は、不揮発性機能性成分を含む機能性水溶液16を収容する給水容器11と、給水容器11の周囲に複数突設して形成され、吸い上げ特性を有する放出ピン部材14と、放出ピン部材14をその周囲に固定する保水材15と、保水材15を介して放出ピン部材14を負に帯電させる直流電源13に接続された装着台19を下部に備え、給水容器11から機能性水溶液16を吸い上げて放出ピン部材14の先端部14aから機能性成分を含むナノサイズのミストを外部に放出するように構成されている。
また、放出ピン部材14の保護のために、放出ピン部材14を覆うようにカバー部材12が装着台19の上部に設けられている。カバー部材12は、給水容器11を保水材15の中心位置に位置決めして設置させるように、その上部に給水容器11の径と略同径の穴が空けられている。
【0026】
また、不揮発性機能成分を含む機能性水溶液16は、給水容器11に充填されており、給水容器11の下面に張設された隔膜18を通過して、平板上を呈する多孔質の保水材15内部へと流出するようになっている。すなわち、使用時において、給水容器11の隔膜18を覆う給水キャップ17を取り外して、隔膜18を保水材15に接触するようにカバー部材12の上方からその中心に嵌装すると、給水容器11内の機能性水溶液16は、隔膜18を通過して保水材15全体に浸透し、放出ピン部材14へと毛細管現象により吸い上げられ、負に帯電した放出ピン部材14の先端部14aからナノミストとして空気中に放出される。
【0027】
保水材15や放出ピン部材14は、優れた吸水力および保水力を備えており、セラミックス材料、合成樹脂材料や金属材料などの、多孔体又は繊維成型体の1種類または2種類以上を複合化して形成されたものが挙げられる。
【0028】
多孔体や繊維成型体の保水材15を構成するセラミックス材料としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、チタニア、ジルコニアのような単一酸化物、または、ムライト、ゼオライト、ベントナイト、セビオライト、アタパルジャイト、シリマナイト、カオリン、セリサイト、珪藻土、長石、蛙目粘度、珪酸塩化合物(パーライト、バナミキュライト、セリサイトなど)が挙げられ、天然繊維材料としては、パルプ繊維、綿、ウール繊維、麻繊維などが挙げられ、合成樹脂材料としては、ポリエステル、ナイロンやレーヨン、ウレタン(ポリウレタンを含む)、アクリル、ポリプロピレンなどが挙げられ、金属材料としては、ステンレス、銅、チタン、スズ、プラチナ、金、銀などが挙げられる。
【0029】
多孔体や繊維成型体の形状の他にも、ハニカム構造やコルゲート構造が挙げられ、パイプ状、シート状、プリーツ状なども挙げられる。必要条件としては、優れた吸水力および保水力を有するということである。
【0030】
装着台19は、給水容器11、カバー部材12,放出ピン14及び保水材15が一体化されたものを嵌め込み装着固定すると同時に、直流電源13の負極を接続することで、保水材15を介して放出ピン14を負に帯電させるようになっている。
また、装着台19の周縁には、ランプ20がカバー部材12の外周に沿って等間隔に配列されており、夜間等の暗所において給水容器11を照らすことで、その場所を認識しやすくなると共に、高級感や演出効果を醸し出すことができる。
使用されるランプ20の種類は限定するものではないが、LEDランプを使用することが好ましい。LEDランプは、小型で、振動や衝撃に強く、寿命が長いなどの利点を有するからである。また、配列されるランプの発光色も特に限定されず、白色、アンバー色、青色、緑色など所望の発光色のものを採用することができる。各ランプは同一の発光色であってもよいことは勿論、異なる発光色のランプを含んでいても良い。
【0031】
直流電源13は、例えば、1〜10kV程度のDCマイナス電圧を発生させる電源であって、その負極が導線を介して装着台19に接続され、装着台19を通して保水材15に電源が接続されることにより、水または機能性成分を含む水溶液を保持する保水材15を負に帯電させている。直流電源13の負極を装着台19を通して保水材15に接続することにより、電流は最も放電し易い場所を求めて流れ、通常、先端が尖っている場所や金属など通電性に優れた場所に集まる性質を利用して、放出ピン部材14へと集まることになる。
【0032】
図3は、不揮発性機能性成分を含む機能性水溶液を収容する給水容器11の説明図である。給水容器11の底面には、隔膜18が張設されており、未使用時において給水キャップ17が、隔膜18を覆うように取り付けられている。
給水容器11の使用時において、まず給水キャップ17を給水容器11から外し保水材15に接触させて設置すると、給水容器11内部に充填されている機能性水溶液16は、給水容器11の底面に張設された隔膜18より保水材15へと流出する。機能性水溶液16は隔膜18を徐々に通過して保水材15へと流出するため、機能性水溶液の過剰供給を防止することが可能である。
給水キャップ17の給水容器11への装着方法は限定されるものではなく、例えば給水容器11の外周に雄ねじ部を形成し給水キャップ17の内周に雌ねじ部を形成することにより、給水キャップ17を外蓋として給水容器11に被着させる装着方法、または、凸部と凹部とで構成される凹凸によるキャップと本体の嵌合構造による装着方法等により装着することができる。
隔膜18としては、通水性が少ないものとして例えばセロファン等の半透膜が挙げられる。
【0033】
機能性水溶液16の機能性成分としては、ビタミンC(L−アスコルビン酸)、ビタミンCエステル((L−アスコルビン酸リン酸マグネシウム、L−アスコルビン酸リン酸ナトリウム、リン酸アスコルビンマグネシウムなど)、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンD、ビタミンDα−リボ酸、アミノ酸、茶菓抽出物(カテキン、タンニン、サポニン、テアニン、カフェインなど)、ヒアルロン酸、コラーゲン、アロマ精油(ラベンダー、ローズマリー、レモングラス、ティートリー、セージ、クローブ、オレンジ、グレープフルーツ、シナモン、ジャスミンなど)、コーヒー豆、茶菓、ワサビ、ヒノキチオール、キチン、キトサン、プロポリスなどのような有機系可溶性成分が挙げられ、その他、無機物(無機系可溶性成分)では、銀または食塩が挙げられる。
【0034】
ここで、「機能性」とは、生活環境を快適にして、健康に改善できる性質をいい、消臭性(脱臭、分解など)、抗微生物性(抗菌性、殺菌性、静菌性、抗カビ性、抗ウイルス性など)、リラクゼイション性(アロマテラピー性)、保湿性、抗酸化性、有害小生物忌避性、静電気抑制性、防塵性などのうち、少なくとも一種類の性質を有することを意味する。
【0035】
図4は、図1に示す実施例の静電霧化装置10に設けられた放出ピン部材14の配設状況を示す上面図である。図に示すように、複数本の放出ピン部材14が、給水容器11の周囲に沿って等間隔に配設される構造となっている。
配設される放出ピン部材の本数は、特に限定するものではないが3〜12本程度が好ましい。
【0036】
図5は、放出ピン部材14の先端形状を示す概略側面図であり、(a)は略平坦状の先端部を有する放出ピン部材を示す要部拡大図で、(b)は細長鋭利状の三角錐形状の先端部を有する放出ピン部材を示す要部拡大図で、(c)は三角錐形状の先端部を有する放出ピン部材を示す要部拡大図で、(d)は丸み形状の先端部を有する放出ピン部材を示す要部拡大図で、(e)は丸みを有し、細長状の先端部を有する放出ピン部材を示す要部拡大図である。
図示するように、放出ピン部材14は、棒状体(スティック体)として形成され、機能性水溶液16を1〜100nm程度の微細なナノミストとして放出する部材であり、保水材15の片面(一面)に、先端を上方に向けて複数本(例えば、3〜12本程度)突設されている。
このように放出ピン部材14を棒状体として形成することにより放出ピン部材14からナノサイズのミストが放出され易くなり、また、保水材15に放出ピン部材14を複数本突設することにより、機能性成分を含むナノミストの放出量を増大させることができる。
【0037】
放出ピン部材14の先端部14aの構造は、フラット面よりも先細りになった構造が好ましいが、先端部14aが鋭利に尖っている必要はなく、適度な丸みを帯びた形状であってもよい。
また、放出ピン部材14の先端部14aの断面形状は、エッジがある四角形状(図5(a)参照)よりも、丸みを帯びた円もしくは楕円(図5(d)、(e)参照)であること(つまり鋭角尖端よりも曲面で形成すること)が好ましく、このように形成することにより、放出するミストに大量の機能性成分を含ませることができる。
また、放出ピン部材14は、直径が数mm(例えば2〜3mm)で、長さは数十mm(例えば30mm)に形成される。
なお、放出ピン部材14の長さや径、本数、および先端部14aの形状に応じてミストの放出量が異なり、その詳細については後述する実施例において考察する。
【0038】
さらに、放出ピン部材14が機能性水溶液を保水できる率は、30〜150%程度が好ましく、下限についてより好ましくは70%以上であり、上限についてより好ましくは 110%以下である。
そして、放出ピン部材14は、保水材15よりも高い吸水力を有することが好ましい。これは、保水材15に吸水した機能性成分を含む水溶液を保水材15に留まらせることなく、効率よく放出ピン部材14へと吸い上げ供給させるためである。
【0039】
放出ピン部材14としては、セラミックス繊維(セラミックスファイバー、ガラス繊維など)、有機繊維(ポリエステル繊維、レーヨン繊維、ナイロン繊維など)、金属繊維(ステンレス繊維、銅繊維、チタン繊維など)を棒状体として形成したものが挙げられる。
その他、セラミックス粒子や金属粒子を棒状体として焼結させた多孔体や、ウレタン樹脂やスチレン樹脂などの発泡体を棒状体として形成したものが挙げられる。なお、多孔体の場合、独立した微細泡の集合体であるよりも、無数の微細孔が連続しているものであることが、水溶液が通過する上で都合がよい。
【0040】
セラミックスまたは樹脂、金属等の多孔質構造は、水の吸水特性で放出性能が決定され、特に時間当たりの水の吸い上げ量が重要である。
これらの性能は、多孔体のもつ時間当たりの吸水率で性能が決定され、いずれの素材においてもその吸水率は30〜100%程度が適しているが、特に材質別にみれば、セラミックス材料では30〜80%が好ましく、樹脂では70〜110%が好ましく、金属では10〜60%が好ましい。
【0041】
さらに、図6に示すように、棒状体の放出ピン部材14について、種々のものがある。例えば、多孔体であり無数の微細孔が連続している連続気孔のものがある((a)参照)。
また、放出ピン部材14を繊維成型体構造に形成する場合の具体的な構成として、セラミックスでは、セラミックスファイバーと呼ばれるガラス質またはシリカやムライト結晶質の繊維をバインダーを用いて成形したものや焼結体が挙げられ、合成樹脂では、ポリエステルやナイロン、アクリルなどの繊維があり、短繊維はそれらをバインダーを使って編んだり、または短繊維を絡んだりして成型したものがある((b)参照)。
また、長繊維はそれらを束ねて(収束して)任意の太さになるようにしたものを適切な使用でカットして用いる(縦断面図(c)参照)。
【0042】
これらの繊維成型体構造では、機能性成分を含む水溶液を保水材15から毛細管現象により吸い上げることができるが、放出ピン部材の径が細いと水の移動が遅く、時間当たりのミスト放出量が少ないため、必要に応じて放出ピンの径を調整する必要がある。
なお、放出ピン部材14は、円筒形状以外の形状、例えば円錐形、角注形など様々な形状を取り得る。
【0043】
ここで、放出ピン部材14の材質について述べる。放出ピン部材14の材質を、ポリエステル繊維と多孔質セラミックスとで比較した場合、ポリエステル繊維と多孔質セラミックスでは、ポリエステル繊維の方が高い吸い上げ能力を示す。これは、ポリエステル繊維の場合には繊維がすべて長さ方向に束ねられた状態に成型されていることに比べ、セラミックスでは多孔体のマトリックスが網目状態であり、容易に移動しにくい点が理由として挙げられる。
【0044】
しかし、放出ピン部材14の加湿能力として見た場合には、吸い上げ能力は少なくても、放出ピン部材14全体から水分が蒸散するので加湿量からみればポリエステル繊維のものとの有意差は小さくなる。
ポリエステル繊維のものは前述したような構造で成型されているので、セラミックスに比べて放出ピン部材の周囲からの蒸散量は少ない。
【0045】
つまり、ナノミストによる消臭性能や除菌性能を期待する場合や、機能性成分であるビタミンCやカテキンなど揮発力が期待できない成分の放出にはポリエステル繊維のものが適している。
また、加湿力を重視したり、放出ピン部材14の不燃性を必要としたりする場合には、多孔質セラミックス製のものが適している。セラミックス製の多孔体の気孔率を変えれば、保水率はある程度コントロール可能であるが、ポリエステル繊維のものと同等の水吸い上げ速度を得るには至らない。
また、大きな保水量を期待すると多孔体自体の強度が低下し、組立作業や輸送時の振動等で折れたり割れたりする危険性が高くなる傾向がある。
【0046】
静電霧化装置は必ずしも円筒形状である必要はない。図7は、本発明に係る静電霧化装置の実施の他の一形態を示す概略図である。図示するように、ナノサイズのミストを放出する静電霧化装置10は、図1で示した円筒形の静電霧化装置とその形状を四角柱とした以外は同様の構造を有する。
本実施形態の静電霧化装置は、給水容器11、カバー部材12、装着台19、全て四角柱形であり、給水容器の寸法は、2cm(縦)×2cm(横)×5cm(高さ)程度の大きさであり、カバー部材12の寸法は、4cm(縦)×4cm(横)×3cm(高さ)程度、装着台19の寸法は、4cm(縦)×4cm(横)×2cm(高さ)程度の大きさである。
本発明に係る静電霧化装置は、室内や車内への設置に際して邪魔にならない程度の適度な大きさである。
【0047】
図8は、図7の実施形態に係る静電霧化装置における放出ピン部材14の設置状況を示す上面図である。図に示すように、複数本の放出ピン部材14が給水容器周囲に沿って等間隔に並ぶ構造となっている。
【0048】
また、機能性水溶液16は、前記機能性成分に加え、金属ナノコロイドを含む水溶液であってもよい。ここで金属ナノコロイドとは、白金ナノコロイド、金ナノコロイド、パラジウム・ナノコロイドなどを指す。水溶液における金属ナノコロイドの水溶液濃度は約0.001%〜0.01%程度とすることが好ましい。
【0049】
金属ナノコロイドとは、ナノメートルサイズの粒径の白金微粉末をコロイド状態に制御したものであり、平均粒径が1〜100nm程度の、白金や金、パラジウムからなる貴金属微粒子とこの貴金属微粒子をコロイド化する有機物からなるコロイド化剤からなる。
【0050】
コロイド化剤としては、増粘剤、界面活性剤、カルボキシル基を化学構造中に含むカルボキシル基含有化合物が挙げられ、ポリアクリル酸(Na、Kなどの塩を含む)、ポリメタクリル酸(Na、Kなどの塩を含む)、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリビニルピロリドン(特に、ポリ−1−ビニル−2−ピロリドン)、ポリビニルアルコール、アミノペクチン、ペクチン、メチルセルロース、メチルスロース、グルタチオン、シクロデキストリン、ポリシクロデキストリン、ドデカンチオール、有機酸(クエン酸などのヒドロキシカルバン酸)、グリセリン脂肪酸エステル(ポリソルべー卜)、カチオン性ミセル−臭化セチルトリメチルアンモニウム、界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、ノニオン性)、アルキル硫酸エステルのアルカリ金属塩、それらの混合物が例示できる。
【0051】
コロイド化剤がカルボキシル基含有化合物である場合は、微細粒子に対して、カルボキシル基のモル数が白金のモル数を基準として80〜180程度になるように含有させることが望ましい。
【0052】
金属ナノコロイドを配合した水溶液をナノミストとして発生する方法は、以上の如く構成された静電霧化装置10を用いて行われ、給水容器11から不揮発性の機能性成分と共に金属ナノコロイドを配合した水溶液16を保持した放出ピン14に、直流電源13の負極を装着台19を介して接続し、負に帯電させるものである。
【0053】
このように不揮発性の機能性成分を含む水溶液16を保持した放出ピン14を負に帯電させると、放出ピン部材14の先端部14aまで電流が流れることで自然放電現象が起こり、その放電作用でイオン風が発生し、このイオン風を利用して水やビタミン類等の機能性成分をナノサイズ(1〜100nm程度)の目に見えない微細なナノミストとして空気中に放出させることができる。
【0054】
放出ピン部材14から放出される機能性成分を含むナノミストの粒子は、およそ1〜100nm程度の大きさになっているので、エアコンや空気清浄機などの送風ファンの風を利用して室内の隅々まで飛散させることができる。
また、放出ピン部材14は常に十分な湿潤状態であり、上述したように、放出ピン部材14を構成する多孔質材料の保水量、放出ピン部材14の長さおよび径や先端部14aの形状、本数または形状(棒形状や円筒形状等)により、水や機能性成分のミストを放出する性能が異なる。
【0055】
以上説明したように、本発明に係る静電霧化装置は、保水材に吸い上げ特性を有する放出ピン部材を突設して形成され、保水材を装着固定する装着台と、装着台を介して負極が接続され放出ピン部材を負に帯電させる直流電源とを備える。
放出ピン部材が帯電した負に対する正の対極を備えていないので、放出ピン部材から自然放電現象が起こり、風を利用してナノサイズのミストを大量に放出させることができる。
そして、正の対極を備えていないので、放出するミストにオゾンを全く発生させずに済み、また、機能性成分を効率よく含ませてミスト化することができる。
【0056】
また、不揮発性機能性成分を含む水溶液が保水材に担持され、放出ピン部材から不揮発性機能性成分を含むナノミストを放出するように構成したので、様々な雰囲気の環境改善に対応させることができる。そして、消臭、除菌作用を有効に得ることができる。
【0057】
また、放出ピン部材および保水材が、セラミックス材料、合成樹脂材料、金属材料の多孔体、又は、繊維成型体の1種類または2種類以上を複合化して形成されたので、吸い上げ力に優れた放出ピン部材を実現することができる。
【0058】
また、放出ピン部材は棒形状を有するので、機能性成分を含むナノミストが放出され易くなり、複数本の放出ピン部材を突設することにより、機能性成分を含むナノミストの放出量を増大させることができる。
【0059】
また、保水材に担持される不揮発性機能性成分は、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系の水溶性成分、あるいは、銀または食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上を組み合わせたものであるので、放出ピン部材への機能性成分の供給量または溶出量、吸い上げ速度を制御することができ、機能性成分の放出速度または放出量が制御可能となり、長期的な放出寿命を期待できる。
【0060】
先端部まで保水した放出ピン部材と直流電源の負極を接続した場合、大気中の水蒸気との間に放電現象が起き、OHラジカルが発生するが、オゾンは発生しないように構成されており、放出ピン部材への機能性成分の供給量または溶出量、吸い上げ速度を制御することができ、機能性成分の放出速度または放出量を制御することができる。
また、微粒子径が小さいミストほど、OHラジカルを多く含むので、化学反応による無臭化や抗菌、抗カビ効果に優れている。
【符号の説明】
【0061】
10 静電霧化装置
11 給水容器
12 カバー部材
13 直流電源
14 放出ピン部材
14a 先端部
15 保水材
16 機能性水溶液
17 給水キャップ
18 隔膜
19 装着台
20 LEDランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不揮発性機能性成分を含む機能性水溶液を収容する給水容器と、
給水容器の周囲に複数突設して形成され、吸い上げ特性を有する放出ピン部材と、
該放出ピン部材を固定する保水材と、
該保水材を介して該放出ピン部材を負に帯電させる直流電源に接続された装着台とを備え、
前記給水容器から機能性水溶液を吸い上げて前記放出ピン部材から機能性成分を含むミストを外部に放出することを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
前記放出ピン部材が、セラミックス材料、合成樹脂材料、金属材料の多孔体、又は繊維成型体の1種類または2種類以上を複合化して形成された請求項1記載の静電霧化装置。
【請求項3】
前記放出ピン部材は、給水容器からの水溶液を吸上げ、その先端部で前記ミストが放出されるように構成した請求項1または2記載の静電霧化装置。
【請求項4】
前記機能性水溶液に含まれる不揮発性機能性成分は、ビタミン類、ビタミン誘導体、カテキン、ヒアルロン酸、アミノ酸、コラーゲンのような有機系の水溶性成分、
あるいは、銀又は食塩のような無機系可溶性成分のうちの1種類もしくは2種類以上を組み合わせたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の静電霧化装置。
【請求項5】
前記機能性水溶液に、金属ナノコロイドを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の静電霧化装置。
【請求項6】
前記金属ナノコロイドが、白金ナノコロイド、金ナノコロイド、又はパラジウム・ナノコロイドであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の静電霧化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−62613(P2011−62613A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213790(P2009−213790)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(501021678)株式会社セラフト (17)
【Fターム(参考)】