説明

非イオン的親水化結合剤分散体

本発明は、末端ポリエチレンオキシド基含有ポリウレタンウレアに基づく非イオン的親水化結合剤水性分散体に関する。本発明はまた、その調製方法、および被覆剤を製造するためのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末端ポリエチレンオキシド基含有ポリウレタンウレアに基づく非イオン的親水化結合剤水性分散体、その調製方法、および被覆剤を製造するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンに基づく被覆剤は、その傑出した特性(例えば、高い耐引掻き性、高い低温可撓性)の故に重要な役割を果たしている。環境規制および他の法的規制がますます厳しくなりつつあるので、無溶媒水性ポリウレタンが特に重要視されている。ポリウレタン分散体に基づく被覆剤は、様々な用途(例えば、布地被覆、プラスチックラッカー塗りおよび自動車ラッカー塗り)で使用されている。特定の用途(例えばエレクトロニクス)では、高い電気絶縁性を保証するため、被膜が可能な限り低い導電率を示すことが必要である。同時に、可能な限り変えることのできる条件下、異なる方法(例えば、噴霧またはナイフ塗布)で水性被覆剤を適用できるようにするために、水性被覆剤は、広い温度範囲で凝固に対して安定であることが望ましい。
【0003】
水相中のポリウレタン粒子の安定化は、粒子の斥力をもたらす表面上の荷電によるか(イオンによる安定化)、或いはファン・デル・ワールス相互作用による凝集を防ぐ、表面に吸着されたかまたは共有結合された、水溶性または部分水溶性のオリゴマー鎖またはポリマー鎖による(イオンによらない安定化)、2つのメカニズムによって達成され得る。そのようなタイプの分散体のイオンによる安定化は、温度上昇に関する凝固に比較的鈍感であるがイオンの存在によって上昇した導電率を示す系をもたらす。イオンによらない安定化では、状況は逆転する。即ち、そのような系は、例えばDE−A 26 51 506に記載されているように、60℃より高い温度で不安定になり得る。しかしながら、そのような系は、比較的低い導電率といった欠点を示す。加えて、広い温度範囲で凝固に対して安定であるイオン的/非イオン的安定化分散体を得るために、2つの安定化メカニズムを組み合わせることは十分に知られている。これらの系も同様に、荷電の故により高い導電率を示す。
【0004】
イオンによらない安定化は、イソシアネート基に対して反応性である官能性親水性ポリエチレンオキシド(略称PEG)の組み込みに基づく。ポリウレタンの主鎖に直鎖として、側鎖としてまたは末端として、PEGを組み込むことができる。
【0005】
US−A 3,905,929には、PEG鎖がポリウレタン分散体中で側鎖として結合している非イオン性ポリウレタン分散体が記載されている。得られた結合剤は、比較的良好な機械的性質を特徴としている。しかしながら結果的に、PEG基は末端に結合しておらず、調製中に副生物が生じ得る。
【0006】
EP−A 0 317 258には、ポリウレタン分散体の合成に使用され得る二官能性非イオン性PEG含有乳化剤が開示されている。同文献に記載されているPEG含有親水化剤も同様に、二官能性で側鎖となるように組み込まれている。そのように調製されたポリウレタン分散体は比較的高い熱安定性を特徴とするが、経済的観点から欠点となる更なる工程段階で、親水化剤を生成しなければならない。
【0007】
EP−A 0 792 900は、ガラス繊維サイズ剤に使用するためのポリウレタン分散体を記載している。該分散体はイオン的および/または非イオン的に親水化され得、ポリイソシアネートは少なくとも50%の割合で1−メチル−2,4−ジイソシアナトシクロヘキサンおよび/または1−メチル−2,6−ジイソシアナトシクロヘキサンを含む。同文献に記載されている分散体には、15重量%以下の量の非イオン性末端親水化成分が使用されている。
【0008】
US−A 5,066,732には、非イオン性ポリウレタン分散体が記載されている。単官能性ポリエチレングリコール成分をジイソシアネートとの中間生成物に転化し、次いで、該反応生成物をジヒドロキシアミンと反応させ、親水化成分を生成している。従って、ポリエチレンオキシドは同様に、ポリウレタンに側鎖として結合している。
【0009】
しかしながら、従来技術から知られているポリウレタン分散体の全ては、特に高温で、不十分な貯蔵安定性を示し、その結果、加えて、尚早に凝固する傾向を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE−A 26 51 506
【特許文献2】US−A 3,905,929
【特許文献3】EP−A 0 317 258
【特許文献4】EP−A 0 792 900
【特許文献5】US−A 5,066,732
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、少なくとも75℃の凝固温度を示し、その結果、十分な貯蔵安定性を有する、新規なポリウレタン水性分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、本発明の特許請求の範囲によって達成された。本明細書では、ポリマー主鎖中に、ポリウレタン鎖末端にある重量割合で、あるモル質量を有する単官能性PEG含有成分を有する、ポリウレタンウレア分散体を特許請求する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、以下の構造成分:
A)10〜40重量%、好ましくは15〜40重量%、特に好ましくは20〜35重量%の1種以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物、
B)40〜70重量%の、好ましくは42〜63重量%、特に好ましくは44〜57重量%の、400〜8000g/molのモル質量Mを有する少なくとも1種のポリヒドロキシ化合物、
C)19〜50重量%、好ましくは19〜30重量%、特に好ましくは19〜25重量%の、イソシアネート基に対して反応性である単官能性ポリエチレングリコール含有成分(ここで、該成分のポリエチレングリコール部は少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%であり、1200〜3000g/mol、好ましくは1500〜3000g/mol、特に好ましくは2000〜3000g/molのモル質量Mを示す。)、
D)0.5〜10重量%、好ましくは1〜7重量%、特に好ましくは2〜5重量%の、32〜400g/molのモル質量Mおよび1以上の官能価を有する少なくとも1種のポリアミン化合物、
E)0.5〜10重量%、好ましくは1〜7重量%、特に好ましくは1.5〜5重量%の、62〜320g/molのモル質量Mおよび1以上の官能価を有するポリヒドロキシ化合物、および
F)任意に、0〜10重量%、好ましくは0.5〜7重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%の更なる助剤および添加剤
を含んでなるポリウレタン−ウレア水性分散体であって、構造成分A)〜F)の和が常に100重量%である分散体を提供する。
【0014】
成分A)の適当なポリイソシアネートは、当業者にそれ自体知られている、芳香族、芳香脂肪族、脂肪族または脂環式のポリイソシアネートである。適当なポリイソシアネートは例えば、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートおよび/または2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、異性体ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタンまたは任意の異性体含量を有するそれらの混合物、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルイレンジイソシアネートおよび/または2,6−トルイレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネートまたは4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)ベンゼンおよび1,4−ビス(2−イソシアナト−プロプ−2−イル)ベンゼン(IMXDI)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン(XDI)、(S)−アルキル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートまたは(L)−アルキル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートである。
【0015】
2以上の官能価を有するポリイソシアネートもまた、ある割合で使用され得る。これらは、ウレトジオン、イソシアヌレート、ウレタン、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオンおよび/またはオキサジアジントリオン構造を有する変性ジイソシアネート、および一分子あたり2個以上のNCO基を含有する未変性ポリイソシアネート、例えば、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタンジイソシアネート(ノナントリイソシアネート)またはトリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートを包含する。
【0016】
好適には、2〜4、好ましくは2〜2.6、特に好ましくは2〜2.4の平均官能価を有する、もっぱら脂肪族的および/または脂環式的に結合したイソシアネート基を含有する、上記したタイプのポリイソシアネートまたはポリイソシアネート混合物である。
【0017】
イソホロンジイソシアネート、ビス(4,4’−イソシアナトシクロヘキシル)メタン異性体およびそれらの混合物が特に好ましい。
【0018】
化合物B)として使用され得る高分子ポリオールは、400〜8000g/mol、好ましくは400〜6000g/mol、特に好ましくは400〜3000g/molの分子量Mを示す。それらのヒドロキシル価は、22〜400mgKOH/g、好ましくは30〜300mgKOH/g、特に好ましくは40〜250mgKOH/gである。それらは、1.5〜6、好ましくは1.8〜3、特に好ましくは1.9〜2.1のOH官能価を示す。
【0019】
本発明の意味におけるポリオールは、ポリウレタン−ラッカー技術で知られている有機ポリヒドロキシ化合物、例えば通常のポリエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリアクリレートポリオールおよびポリウレタンポリアクリレートポリオール、ポリウレタンポリエステルポリオール、ポリウレタンポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリカーボネートポリオール、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂のそれら自身または混合物である。ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールが特に好ましい。
【0020】
ポリエーテルポリオールとして、例えば、スチレンオキシド、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシド、エピクロロヒドリンの重付加物、並びにそれらの混合付加物およびグラフト生成物、並びに多価アルコールまたはそれらの混合物の縮合によって得られたポリエーテルポリオール、並びに多価アルコール、アミンおよびアミノアルコールのアルコキシル化によって得られたポリエーテルポリオールを挙げることができる。
【0021】
適当なヒドロキシル官能性ポリエーテルB)は、1.8〜6.0、好ましくは2.0〜4.0のOH官能価、50〜700mgKOH/g(固体)、好ましくは100〜600mgKOH/g(固体)のOH価、106〜4000g/mol、好ましくは200〜3500g/molの分子量Mを示し、その例は、ヒドロキシル官能性開始剤分子(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトールまたはそれらの混合物)のプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドでのアルコキシル化物、および他のヒドロキシル官能性化合物のプロピレンオキシドまたはブチレンオキシドでのアルコキシル化物である。ポリエーテル成分B)として好ましいのは、300〜4000g/molの分子量を有するポリプロピレンオキシドポリオールである。これに関連して、適当に高いOH含量を有する特に低分子のポリエーテルポリオールは水溶性であり得る。しかしながら、非水溶性のポリプロピレンオキシドポリオール、ポリテトラメチレンオキシドポリオールおよびそれらの混合物が特に好ましい。
【0022】
ポリエステルポリオールの非常に適した例は、ジオール、任意にトリオールおよびテトラオールと、ジカルボン酸、任意にトリカルボン酸およびテトラカルボン酸或いはヒドロキシカルボン酸またはラクトンとから生成された既知の重縮合物である。遊離ポリカルボン酸に代えて、対応するポリカルボン酸無水物または低級アルコールとの対応するポリカルボン酸エステルを、ポリエステルの調製に使用することもできる。適当なジオールの例は、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、例えばポリエチレングリコール、更に、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール(1,3)、ブタンジオール(1,4)、ヘキサンジオール(1,6)および異性体、ネオペンチルグリコールまたはヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルであり、最後に挙げた3つの化合物が好ましい。場合により付随的に使用できるポリオールとして本明細書に挙げられるものは、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、エリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールベンゼンまたはトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートである。
【0023】
ジカルボン酸として、例えば、以下を考慮する:フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、テトラクロロフタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2−メチルコハク酸、3,3−ジエチルグルタル酸、2,2−ジメチルコハク酸。これら酸の無水物も、それらが存在する限り同様に使用できる。従って、本発明の目的のために、無水物は表現「酸」に包含される。ポリオールの平均官能価が2以上ならば、モノカルボン酸、例えば安息香酸およびヘキサンカルボン酸も使用できる。飽和脂肪族酸または芳香族酸、例えば、アジピン酸またはイソフタル酸が好ましい。比較的少量で場合により付随的に使用できるポリカルボン酸として、本明細書ではトリメリット酸を挙げることができる。
【0024】
末端ヒドロキシル基含有ポリエステルポリオールの調製において共反応体として付随的に使用できるヒドロキシカルボン酸は、例えば、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシデカン酸、ヒドロキシステアリン酸等である。使用できるラクトンは、とりわけ、カプロラクトン、ブチロラクトンおよび同族体である。
【0025】
ブタンジオールおよび/またはネオペンチルグリコールおよび/またはヘキサンジオールおよび/またはエチレングリコールおよび/またはジエチレングリコールと、アジピン酸および/またはフタル酸および/またはイソフタル酸とに基づく、ポリエステルポリオールB)が好ましい。ブタンジオールおよび/またはネオペンチルグリコールおよび/またはヘキサンジオールと、アジピン酸および/またはフタル酸とに基づく、ポリエステルポリオールB)が特に好ましい。
【0026】
考慮されるポリカーボネートポリオールは、炭酸誘導体、例えば、炭酸ジフェニル、炭酸ジメチルまたはホスゲンと、ジオールとの反応によって得られる。そのようなタイプのジオールとして、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオールおよび1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールおよび1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール−1,3、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ラクトン変性ジオールも考慮される。ジオール成分は、好ましくは、40〜100重量%の1,6−ヘキサンジオールおよび/またはヘキサンジオール誘導体、優先的には、末端OH基に加えてエーテル基またはエステル基を含有するもの、例えば、1molのヘキサンジオールの少なくとも1mol、好ましくは1〜2molのε−カプロラクトンでの転化によって得られる生成物、またはジヘキシレングリコールまたはトリヘキシレングリコールを生じるためのヘキサンジオールのそれ自体によるエーテル化によって得られる生成物を含有する。ポリエーテルポリカーボネートポリオールも使用され得る。
【0027】
炭酸ジメチルおよびヘキサンジオールおよび/またはブタンジオールおよび/またはカプロラクトンに基づくポリカーボネートポリオールB)が好ましい。炭酸ジメチルおよびヘキサンジオールおよび/またはカプロラクトンに基づくポリカーボネートポリオールB)が特に好ましい。
【0028】
成分C)の定義に対応する適当な非イオン的親水化単官能性化合物は、例えば、1個のヒドロキシ基またはアミノ基しか含有しないポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、50〜100重量%、好ましくは70〜100重量%、特に好ましくは80〜100重量%の割合のエチレンオキシド由来構造単位を含有し、例えば、成分B)で挙げた開始剤分子のアルコキシル化によってそれ自体知られている方法で入手可能である。アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは、特に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、任意の順でまたは混合物としてアルコキシル化反応過程で使用され得る。
【0029】
該構造単位のモル質量Mは、1200〜3000g/mol、好ましくは1500〜3000g/mol、特に好ましくは2000〜3000g/molである。
【0030】
そのようなタイプの適当な非イオン的親水化単官能性化合物は、例えば、単官能性アルコキシポリエチレングリコール、例えばメトキシポリエチレングリコール(MPEG Carbowax(登録商標)2000またはMethoxy PEG-40、分子量範囲1800〜2200、The Dow Chemical Company)、単官能性ポリエーテルモノアルキルエーテル、例えばBayer Material Science社製の2250g/molの平均モル質量Mを有するブタノールおよびエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから合成されたLB 25、単官能性ポリエーテルアミン(Jeffamine(登録商標)M 1000、PO/EOモル比3/19、およびM 2070、PO/EOモル比10/31、Huntsman Corp.)である。
【0031】
MPEG Carbowax(登録商標)2000、LB 25またはJeffamine(登録商標)M 2070が、成分C)として好ましく使用される。MPEG Carbowax(登録商標)2000またはLB 25が、特に好ましい。
【0032】
連鎖延長に使用されるポリアミンD)は、ジアミンまたはポリアミン、ヒドラジド、例えば、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパンおよび1,3−ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンの異性体混合物、2−メチルペンタメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,3−キシリレンジアミンおよび1,4−キシリレンジアミン、α,α,α’,α’−テトラメチル−1,3−キシリレンジアミンおよびα,α,α’,α’−テトラメチル−1,4−キシリレンジアミン、および4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、ジメチルエチレンジアミン、ヒドラジンまたはアジピン酸ジヒドラジドである。
【0033】
成分D)として、基本的に、NCO基に対して様々な反応性を有する活性水素を含有する化合物、例えば、第一級アミノ基に加えて第二級アミノ基、またはアミノ基(第一級または第二級)に加えてOH基も含有する化合物も考慮される。それらの例は、第一級/第二級アミン、例えば、3−アミノ−1−メチルアミノプロパン、3−アミノ−1−エチルアミノプロパン、3−アミノ−1−シクロヘキシルアミノプロパン、3−アミノ−1−メチルアミノブタン、更にアルカノールアミン、例えば、N−アミノエチルエタノールアミン、エタノールアミン、3−アミノプロパノールまたはネオペンタノールアミンである。ジエタノールアミンおよび/またはヒドラジンおよび/またはイソホロンジアミン(IPDA)および/またはエチレンジアミンが好ましい。ヒドラジンおよび/またはイソホロンジアミンおよび/またはエチレンジアミンが特に好ましい。ヒドラジン水和物とIPDAとの混合物がとりわけ好ましい。
【0034】
一般に、ポリウレタン樹脂の合成に使用される低分子ポリオールE)は、ポリマー鎖の剛直および/または分枝をもたらす。分子量は好ましくは62〜200である。適当なポリオールは、脂肪族基、脂環式基または芳香族基を含有し得る。本明細書では、例えば、一分子あたり約20個までの炭素原子を含有する低分子ポリオール、例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブチレングリコール、シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン)、水素化ビスフェノールA(2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン)およびそれらの混合物、ならびにトリメチロールプロパン、グリセリンまたはペンタエリスリトールを挙げることができる。エステルジオール、例えば、δ−ヒドロキシブチル−ε−ヒドロキシカプロン酸エステル、ω−ヒドロキシヘキシル−γ−ヒドロキシ酪酸エステル、アジピン酸−(β−ヒドロキシエチル)エステルまたはテレフタル酸−ビス(β−ヒドロキシエチル)エステルを使用することもできる。ヘキサンジオールおよび/またはトリメチロールプロパンおよび/またはブタンジオールが好ましい。トリメチロールプロパンおよび/またはブタンジオールが特に好ましい。
【0035】
更なる助剤または添加剤F)は、後者をポリウレタン水性分散体の調製の後で連続水相に溶解させることによって、または分散前に有機相に添加、溶解させ、従って共分散させることによって、場合により付随的に使用され得る。適当な助剤または添加剤は、例えば、酸化防止剤、UV安定剤、流れ制御剤、殺生物剤、静電防止剤または接着促進剤である。
【0036】
本発明のPUR分散体を調製するために、従来技術で知られている方法の全てを使用でき、その例は、プレポリマー混合法、アセトン法または溶融分散法である。PUR分散体は、好ましくはアセトン法によって調製される。
【0037】
アセトン法によるPUR分散体の調製では、通常、第一級アミノ基または第二級アミノ基を含有してはならない成分A)、B)、C)、E)および任意にF)、並びにイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマー調製用のポリイソシアネート成分A)を、全てまたは部分的に導入し、場合により水混和性であるがイソシアネート基に対して不活性である溶媒で希釈し、50〜120℃の温度に加熱する。イソシアネート付加反応を促進するために、ポリウレタン化学において既知の触媒を使用することができる。ジラウリン酸ジブチル錫が好ましい。
【0038】
適当な溶媒は、一般的な脂肪族ケト官能性溶媒、例えば、アセトン、ブタノンであり、それらは、調製の開始時だけでなく、場合により開始後に少しずつ添加してもよい。アセトンおよびブタノンが好ましい。
【0039】
次いで、反応開始時に任意にまだ添加されていなかった成分A)〜F)を、計量添加する。
【0040】
ポリウレタンプレポリマーの調製過程では、イソシアネート基のイソシアネート反応性基に対するモル比は、1.0〜3.5、好ましくは1.1〜3.0、特に好ましくは1.1〜2.5である。
【0041】
成分A)、B)、C)およびE)のプレポリマーへの転化は、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に達成される。このようにして、遊離イソシアネート基含有ポリウレタンプレポリマーを、塊状または溶液状態で得る。
【0042】
この後、更なる工程段階で、まだ実施されていないかまたは部分的にしか実施されていなければ、得られたプレポリマーをアセトンまたはブタノンのような脂肪族ケトンを用いて溶解する。
【0043】
続いて、可能なNH−官能性成分および/またはNH−官能性成分を、まだ残っているイソシアネート基で転化させる。この連鎖延長/連鎖停止は、分散前に溶媒中で、分散中に、または分散後に水中で実施され得る。連鎖延長は、好ましくは水への分散前に実施される。
【0044】
NH基またはNH基を含有する成分D)の定義に対応する化合物を、連鎖延長に使用するならば、プレポリマーの連鎖延長は、好ましくは分散前に実施される。
【0045】
連鎖延長度、即ち、連鎖延長に使用される化合物のNCO反応性基の、プレポリマーの遊離NCO基に対する当量比は、40〜100%、好ましくは60〜100%、特に好ましくは70〜100%である。
【0046】
アミン成分D)は、任意に、本発明の方法において、水希釈状態または溶媒希釈状態で、個々にまたは混合物として使用され得、基本的にどのような添加順序も可能である。
【0047】
水または有機溶媒を希釈剤として付随的に使用するならば、希釈剤含量は好ましくは70〜95重量%である。
【0048】
プレポリマーからのPUR分散体の調製は、連鎖延長に続いて実施される。この目的を達成するために、溶解し連鎖延長したポリウレタンポリマーを、場合により例えば強撹拌のような強い剪断力の影響下、分散水に導入するか、または逆に、分散水をプレポリマー溶液に撹拌しながら添加する。溶解したプレポリマーに水を添加することが好ましい。
【0049】
一般に、その後、分散工程後に分散体中になお含有される溶媒は、蒸留によって除去される。分散中に既に除去することもまた可能である。
【0050】
本発明のポリウレタン−ポリウレア分散体の固形分は、20〜70重量%、好ましくは30〜65重量%、特に好ましくは35〜62重量%である。
【0051】
本発明は更に、被覆剤を製造するための、好ましくはガラス繊維サイズ剤を製造するための、本発明のポリウレタン−ポリウレア分散体の使用を提供する。
【0052】
適当な基材は、例えば、プラスチック、金属およびガラスである。本発明のポリウレタン分散体はまた、架橋水性ブロックトポリイソシアネートと組み合わせて使用され得、ガラス繊維サイズ剤に加工され得る。
【0053】
本発明はまた、本発明のポリウレタン−ポリウレア分散体と、水分散性ブロックトポリイソシアネートまたは水溶性ブロックトポリイソシアネートからなる群から選択される架橋剤とを含んでなる、水性被覆剤を提供する。
【0054】
場合により水分散性状態または水溶性状態で存在し得るか、或いは水性分散体または水溶液として使用される、ブロックトポリイソシアネートを架橋剤として使用する。ブロックトポリイソシアネートは、2.0〜5.0、好ましくは2.3〜4.5の(平均)NCO官能価、5.0〜27.0重量%、好ましくは14.0〜24.0重量%の(非ブロックトおよびブロックト)イソシアネート基含量、1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満の単量体ジイソシアネート含量を示す。水分散性ブロックトポリイソシアネートまたは水溶性ブロックトポリイソシアネートのポリイソシアネートのイソシアネート基は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、特に好ましくは少なくとも70%の割合でブロック状態で存在する。水分散性ブロックトポリイソシアネートII)の調製は、(例えば、DE−A 2 456 469、第7〜8欄、実施例1〜5、およびDE−A 2 853 937、第21〜26頁、実施例1〜9に記載されているような)従来技術に関する既知の方法によって実施され得る。
【0055】
本発明の水性被覆剤は、更なる成分として助剤および添加剤を含有できる。それらは、接着促進剤、滑剤、静電防止剤、当業者にそれ自体よく知られているラッカー添加剤、例えば、染料、顔料、流れ制御剤、遮光剤、老化防止剤および紫外線吸収剤であり得る。
【0056】
接着促進剤として、既知のシラン接着促進剤を使用でき、その例は、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、または3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシランである。
【0057】
更に、本発明の被覆剤は、1種以上の非イオン性滑剤および/またはイオン性滑剤を含有でき、その例は、脂肪アルコールまたは脂肪アミンのポリアルキレングリコールエーテル、C12〜18脂肪酸のポリアルキレングリコールエーテルおよびグリセリンエステル、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよび/またはアルキレンアミンのC12〜18高級脂肪アミド、第四級窒素化合物、例えば、エトキシル化イミダゾリニウム塩、鉱油またはワックスである。
【0058】
本発明の被覆剤は、1種以上の静電防止剤を含有してもよい。例として挙げられるものは、塩化リチウム、塩化アンモニウム、Cr(III)塩、有機チタン化合物、アリールアルキルスルフェートまたはアリールアルキルスルホネート、アリールポリグリコールエーテルスルホネート、または第四級窒素化合物である。
【0059】
被覆剤の製造は、それ自体既知の方法で実施され得る。好ましくは、水を適当な混合容器に導入し、撹拌の影響下、結合剤、硬化剤、および続いて滑剤並びに場合により更なる助剤を添加する。次いで、pH値を5〜7に調整し、接着促進剤の水解物を添加する。15分間の更なる撹拌時間後、被覆剤は使用できる状態になり、場合によりpH値調整後に適用され得る。
【0060】
好ましくはサイズ剤組成物として使用される、被覆剤は、任意の方法(例えば、噴霧アプリケーターまたはロールアプリケーター)を用いて、適当な基材に適用され得、硬化され得る。
【0061】
DIN 1259−1に従ったE−ガラス、A−ガラス、C−ガラスおよびS−ガラスのようなガラス繊維の製造に使用される既知のタイプのガラスと、それ自体知られている他のガラス繊維メーカー製品との両方が、サイジングされるガラス繊維に適している。連続ガラス繊維を製造するための上記タイプのガラスの中で、E−ガラス繊維が、アルカリの不存在、高い引張強さおよび高い弾性率の故に、プラスチックの強化にとって最も重要である。
【0062】
ガラス繊維の製造方法、サイジング方法および再生方法は知られており、例えば、K.L.Loewenstein: "The Manufacturing Technology of Continuous Glass Fibres", Elsevier Scientific Publishing Corp., Amsterdam, London, New York, 1983に記載されている。
【実施例】
【0063】
導電率の測定:分散体の導電率の測定は、Knick社製導電率計タイプ703を用いて実施する。
凝固温度の測定:この目的のため、撹拌機を備えたフラスコに50mlの分散体を導入し、撹拌の影響下、2℃/分の速度で加熱する。分散体のゲル化が生じる温度を特定する。
【0064】
使用した材料:
Impranil(登録商標) DLU:固形分60%のアニオン性/非イオン性脂肪族ポリカーボネート−ポリエーテル−ポリウレタン分散体(ドイツ国在Bayer MaterialScience AG)。
Impranil(登録商標) DLS:固形分50%のアニオン性/非イオン性脂肪族ポリカーボネート−ポリエーテル−ポリウレタン分散体(ドイツ国在Bayer MaterialScience AG)。
Impranil(登録商標) DLN:固形分50%のアニオン性脂肪族ポリエステルポリウレタン分散体(ドイツ国在Bayer MaterialScience AG)。
Desmodur(登録商標) H:1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(ドイツ国在Bayer MaterialScience AG)。
Desmophen(登録商標) PE 170 HN:アジピン酸、ヘキサンジオールおよびネオペンチルグリコールから生成されたポリエステル、OH価66、M=1700g/mol(レーフエルクーゼン在Bayer MaterialScience AG)。
Polyether LB 25:エチレンオキシド割合84%、OH価25、M=2250g/molの、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドに基づく単官能性ポリエーテル(ドイツ国在Bayer MaterialScience AG)。
MPEG2000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、CAS番号9004-74-4、単官能性、モル質量2000g/mol(Fluka)。
MPEG1000:ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、CAS番号9004-74-4、単官能性、モル質量1000g/mol(Fluka)。
MPEG550:ポリ(エチレングリコール)モノメチルエーテル、CAS番号9004-74-4、単官能性、モル質量550g/mol(Fluka)。
PEG2000:ポリエチレングリコール、CAS番号25322-68-3、二官能性、モル質量2000g/mol(Sigma−Aldrich)。
Tegomer(登録商標) D3403:ポリエチレングリコール(側鎖(seitenstaendig))、二官能性、モル質量1200g/mol(エッセン在Tego Chemie Service GmbH)。
IPDA:1−アミノ−3,3,5−トリメチル−5−アミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン(ドイツ国在Bayer MaterialScience AG)。
HyHy:ヒドラジン水和物、HN−NH(ドイツ国在Bayer MaterialScience AG)。
BDO:1,4−ブタンジオール(ドイツ国在Bayer MaterialScience AG)。
【0065】
分散体の調製
実施例1(本発明):
209gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび75gの単官能性親水化剤LB 25を、50℃で68gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=6.43%)に達するまで100℃でプレポリマーに転化させる。続いて、7.6gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、641gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、520gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水177g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。水性分散体が、34.7%の固形分、537mPasの粘度、5.8のpH値、および580nmの平均粒度を有して生じる。
【0066】
実施例2(本発明):
211gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび76.4gの単官能性親水化剤MPEG2000を、50℃で70.6gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=6.50%)に達するまで100℃でプレポリマーに転化させる。続いて、7.8gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、650.1gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、526gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水181g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。水性分散体が、36.0%の固形分、560mPasの粘度、5.7のpH値、および102nmの平均粒度を有して生じる。
【0067】
実施例3(本発明):
214.4gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび72.4gの単官能性親水化剤LB 25を、50℃で70.4gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=6.51%)に達するまで100℃でプレポリマーに転化させる。続いて、7.8gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、649gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、524gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水181g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。水性分散体が、34.9%の固形分、423mPasの粘度、6.0のpH値、および650nmの平均粒度を有して生じる。
【0068】
実施例4(比較例):
214gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび63.1gの単官能性親水化剤LB 25を、50℃で70.0gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=6.69%)に達するまでプレポリマーに転化させる。続いて、7.8gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、632gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、507gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水181g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。水性分散体が、33.1%の固形分、395mPasの粘度、6.2のpH値、および880nmの平均粒度を有して生じる。
【0069】
実施例5(比較例):
225.1gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび57.0gの単官能性親水化剤LB 25を、50℃で73.2gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=6.87%)に達するまで100℃でプレポリマーに転化させる。続いて、8.2gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、646gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、514gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水190g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。水性分散体が、37.2%の固形分、96mPasの粘度、5.8のpH値、および1800nmの平均粒度を有して生じる。該分散体は、沈降する傾向が強い。
【0070】
実施例6(比較例):
193.5gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび73.1gの単官能性親水化剤MPEG1000を、50℃で74.2gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=7.17%)に達するまで100℃でプレポリマーに転化させる。続いて、8.2gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、620gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、487gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水190g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。水性分散体が、32.3%の固形分、71mPasの粘度、7.1のpH値、および230nmの平均粒度を有して生じる。
【0071】
実施例7(比較例):
202.7gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび76.6gの二官能性親水化剤PEG2000を、50℃で77.6gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=7.17%)に達するまで100℃でプレポリマーに転化させる。続いて、8.6gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、645gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、510gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水199g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。詳細に特性を示すことができない、既に部分的に凝固した水性分散体が得られる。
【0072】
実施例8(比較例):
186.6gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび76.2gの単官能性親水化剤MPEG550を、50℃で88.2gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=8.07%)に達するまで100℃でプレポリマーに転化させる。続いて、9.3gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、641gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、478gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水227g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。水性分散体が、29.7%の固形分、107mPasの粘度、5.5のpH値、および99nmの平均粒度を有して生じる。
【0073】
実施例9(比較例):
186gのポリエステルポリオールPE 170 HNおよび74.9gの二官能性親水化剤Tegomer D3403を、50℃で84.7gのHDIに添加し、次いで、理論NCO価(NCO−1=8.07%)に達するまで100℃でプレポリマーに転化させる。続いて、9.3gのブタンジオールを添加し、NCO価が一定(NCO−2)になるまで50℃で更に撹拌する。その後、631gのアセトンを添加し、40℃まで冷却する。強い撹拌の影響下、20分かけて、475gの水を分散体に滴加する。NCO−2に基づいて、46%の残留NCO基がヒドラジン水和物と反応し、45%の残留NCO基がIPDAと反応するように、ヒドラジン水和物およびIPDAの水218g中混合物を、連鎖延長のために、5分かけて添加する。混合物を更に5分間撹拌する。その後、アセトンを40℃、120mbarで留去する。水性分散体が、34.9%の固形分、320mPasの粘度、5.4のpH値、および277nmの平均粒度を有して生じる。
【0074】
結果の表
【表1】

【0075】
【表2】

【0076】
本発明の分散体が、低い導電率を有しながら75℃を超える凝固温度を示すことが、明らかに認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造成分:
A)10〜40重量%の1種以上の脂肪族ポリイソシアネート化合物、
B)40〜70重量%の、400〜8000g/molのモル質量Mを有する少なくとも1種のポリヒドロキシ化合物、
C)19〜50重量%の、イソシアネート基に対して反応性である単官能性ポリエチレングリコール含有成分(ここで、該成分のポリエチレングリコール部は少なくとも50重量%であり、1200〜3000g/molのモル質量Mを示す。)、
D)0.5〜10重量%の、32〜400g/molのモル質量Mおよび1以上の官能価を有する少なくとも1種のポリアミン化合物、
E)0.5〜10重量%の、62〜320g/molのモル質量Mおよび1以上の官能価を有するポリヒドロキシ化合物、および
F)任意に0〜10重量%の更なる助剤および添加剤
を含んでなるポリウレタン−ウレア水性分散体であって、構造成分A)〜F)の和が常に100重量%である分散体。
【請求項2】
成分C)が、1個のヒドロキシ基またはアミノ基しか含有しないポリオキシアルキレンエーテルによって構成されることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン−ウレア水性分散体。
【請求項3】
成分C)が、50〜100重量%の割合のエチレンオキシド由来構造単位を含有するポリオキシアルキレンエーテルによって構成されることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン−ウレア水性分散体。
【請求項4】
成分C)が、1500〜3000g/molのモル質量Mを示すポリオキシアルキレンエーテルによって構成されることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン−ウレア水性分散体。
【請求項5】
成分D)が、ジエタノールアミン、ヒドラジン、イソホロンジアミン(IPDA)および/またはエチレンジアミンからなる群から選択される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン−ウレア水性分散体。
【請求項6】
成分D)が、ジエタノールアミン、ヒドラジン、イソホロンジアミン(IPDA)および/またはエチレンジアミンからなる群から選択される2種の化合物によって構成されることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン−ウレア水性分散体。
【請求項7】
成分D)が、ヒドラジン水和物とIPDAとの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン−ウレア水性分散体。
【請求項8】
被覆剤を製造するための、請求項1に記載のポリウレタン−ポリウレア分散体の使用。
【請求項9】
ガラス繊維サイズ剤を製造するための、請求項1に記載のポリウレタン−ポリウレア分散体の使用。
【請求項10】
請求項1に記載のポリウレタン−ポリウレア水性分散体と、水分散性ブロックトポリイソシアネートまたは水溶性ブロックトポリイソシアネートからなる群から選択される架橋剤とを含んでなる、水性被覆剤。

【公表番号】特表2011−505434(P2011−505434A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533459(P2010−533459)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009195
【国際公開番号】WO2009/062603
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】