説明

非ペプチドブラジキニンアンタゴニストおよびそれによる医薬組成物

ブラジキニン(BK)B2受容体の選択的アンタゴニストとしての活性を有する非ペプチド化合物。この化合物は、環状基で置換されたアミノ酸アルファの存在、およびテトラアルキルアンモニウム基を化学的な特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブラジキニン(bradykinin)(BK)B2受容体の特異的アンタゴニストとしての活性を有する、第4級アンモニウム基を含有する非ペプチド化合物、それらを含有する医薬組成物、ならびにブラジキニンB2受容体の活性化を伴う全ての状態を治療するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラジキニン(BK)はキニンに属し、またカリジンおよびT−キニンと共に、哺乳動物中に存在するキニンのサブグループを形成する。キニンは、中枢および末梢神経系の両方において、疼痛および炎症のメディエータとして重要な役割を果す。特にブラジキニンは、生理病理学的状態において身体により生成されるノナペプチド
(H−Arg1−Pro2−Pro3−Gly4−Phe5−Ser6−Pro7−Phe8−Arg9−OH)
である。
【0003】
2つの型のキニン受容体B1およびB2が存在する。B1受容体の主な特性は、それが構成性であるよりも誘導性であることである。B1受容体は、炎症またはストレス状態において組織内に発現される。これに反してB2は、通常全ての組織内に存在し、炎症過程においてメディエータとして振舞う構成性受容体である。ブラジキニンおよびカリジンは、キニノゲナーゼと称するタンパク質分解酵素によって、それらのタンパク質前駆体(キニノゲンとして知られる)から放出される。これらの中で、主な役割はカリクレインにより果されるが、このカリクレインは一度前駆体により放出されると、その作用をほんの短期間発現することができるだけで、キニナーゼとして総称的に定義される一連の循環する酵素および膜によって速やかに破壊される。これらのキニナーゼの1つは、C−末端アルギニンにおいてブラジキニンを開裂させ、こうしてB1受容体アゴニストとして作用するdes−Arg−BKを形成する。
【0004】
ブラジキニンB1およびB2受容体の活性化により、脈管筋の弛緩(その後の低血圧を伴う)、脈管透過性の増加、腸および気管の平滑筋の収縮、侵害受容ニューロンの刺激、イオン性上皮分泌の変化、種々の細胞タイプからの白血球およびエイコサノイドによる窒素酸化物の生成およびサイトカインの放出が誘発される。結果として、BK受容体のアンタゴニスト化合物は、種々の障害に有効と考えられる新規な種類の医薬とみなすことができる。前記アンタゴニストについての可能な治療用途は、喘息および慢性気管支炎(刺激源によっても誘発される)、アレルギー性、血管運動性およびウイルス性鼻炎、閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、腸の慢性炎症性疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、糸球体腎炎、乾癬、発疹、急性および慢性膀胱炎などの炎症性、アレルギー性および自己免疫障害;肝硬変、糸球体症および肺線維症、動脈硬化症などの、線維症により特徴付けられる変性疾患;その鎮痛作用により、急性および慢性の疼痛、例えば火傷、頭痛、昆虫刺傷、癌患者における慢性痛の治療において、敗血症性、アレルギー性および外傷後ショック、ならびに肝腎性症候群による肝硬変などの心血管性器官の障害において、抗癌および抗脈管形成剤として、低血圧症の、また脱毛症の治療においてである。
【0005】
ブラジキニンB2受容体の種々のペプチドおよび非ペプチドアンタゴニストが、文献において知られている。国際公開第03103671号は、ブラジキニンB2受容体へのアンタゴニスト活性を有する一群の広範な化合物を開示している。本発明の化合物は、国際公開第03103671号の一般式中に含まれるが、前記資料中において記述され、または特徴とされていない。
[詳細な開示]
本発明は、B2受容体への高い親和性およびアンタゴニスト活性を示す非ペプチド化合物であって、一般式(I):
【0006】
【化1】

【0007】
(式中、
Rは水素またはメチルであり、
Wは単結合または酸素原子であり、
n=3、4であり、
Xは水素または−NR12アミノ基であり、ここで、R1およびR2は独立に水素、またはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルから選択される基であることができ、
Yは−NR345第4級アンモニウム基であり、ここで、R3、R4、R5は独立にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチルから選択される基であることができる)を有する化合物、ならびに薬学的に許容できる酸とのそれらの塩に関する。
【0008】
化合物(I)は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸から選択される無機酸または有機酸により塩化されているのが好ましい。さらに、キラル中心が存在するため、本発明はそれらの2つの鏡像異性体、またはラセミ混合物を含む任意の割合における混合物も含む。
【0009】
一般式(I)の化合物は、生体内および生体外の両方で、国際公開第03103671号中に記載される、より構造的に類似した類似体よりも、高いB2受容体へのアンタゴニスト活性を有する。
【0010】
好ましいものは、一般式(I)の化合物であって、式中、
n=3であり、
X=水素または−NH2基であり、
Y=−N(CH33+第4級アンモニウム基であり、
他の置換基が、上記において定義した通りである化合物である。
【0011】
特に好ましいものは、化合物(I)であって、式中、
Rが水素またはメチルであり、
Wが酸素原子であり、
n=3であり、
Xが水素または基−NH2であり、
Yが−N(CH33+第4級アンモニウム基である化合物である。
【0012】
本発明の目的化合物は、よく知られている合成経路により調製することができる。
【0013】
上記において定義した一般式(I)の化合物は、国際公開第03103671号中に開示されるように得られる一般式(II)の中間体
【0014】
【化2】

【0015】
を、式(10)の化合物
【0016】
【化3】

【0017】
またはカルボン酸基が適切に活性化されているその誘導体と適切な縮合剤の存在において縮合させることにより調製するのが好ましい。
【0018】
この合成方法を、スキームIに例示する:
【0019】
【化4】

【0020】
式(2)の化合物は、J.Med.Chem.2001,44,1674〜1689において記述されるように、対応するトルエン誘導体の臭素化により調製し、そしてまたこのトルエン誘導体はJ.Fluorine Chemistry,2000,101:85〜89において記述されるようにして得られる。
【0021】
第1のステップは、中間体(2)および(3)の縮合により得られるスルホンアミド結合(4)の形成に関する。この反応は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)の存在において、室温で好ましくはアセトニトリル/水(2:1)内で実施する。前記反応は、ベンジル位における塩素および臭素の交換により行われる。得られた生成物混合物を、その後のステップに直接使用する。このハロゲン誘導体混合物の、炭酸カリウム(K2CO3)およびヨウ化カリウム(KI)の存在における還流下アセトン中での二置換ヒドロキシキノリン(5)との反応により、エステル誘導体(6)を生じる。
【0022】
式(5)の化合物、すなわちR4=R5=CH3である2,4−ジメチル−8−ヒドロキシキノリンは、国際公開第9640639号中に開示されるように調製する。
【0023】
式(6)のメチルエステルを、塩基性条件下で加水分解させてカルボン酸(7)とし、これをBoc−ピペラジン(8)と縮合させて、中間体(9)を生じる。前記縮合反応は、ペプチド合成について知られている手順によって、カルボン酸部分を活性化するためのヒドロキシベンゾトリアゾールと、1−エチル−3−(3’−ジメチルプロピル)カルボジイミドなどの縮合剤と、縮合剤に対して3当量の量の第3級アミン、すなわちジイソプロピルエチルアミンとを使用して行う。ジオキサン中の塩酸溶液(4N)および塩酸塩に代って遊離アミンの単離によって、中間体(9)からBoc基を開裂させることにより、化合物(II)が得られる。
【0024】
(7)からの(9)の調製を記述している手順に従って、中間体(10)のアミノ酸(11)との縮合により誘導体(11)が得られる。ジオキサン中の塩酸溶液(4N)により、存在するいかなるBoc基も中間体(11)から除去することができ、こうして最終化合物が得られる。任意の市販の中間体中にトリアルキルアンモニウム基が存在しない場合、対応するアミンから出発して、知られている手順(Rapoport et al,J.Org.Chem,1977,42:139〜141;Chen et al,J.Biochem.,1978,56:150〜152)によりそれを合成することができる。
【0025】
本発明の化合物は、ブラジキニン受容体の活性化を妨げ、または低減させる必要がある全ての障害の治療に使用される。それらの化合物は、喘息および慢性気管支炎、アレルギー性、血管運動性およびウイルス性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、腸の慢性炎症性疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、糸球体腎炎、乾癬、発疹、急性および慢性膀胱炎などの炎症性、アレルギー性および自己免疫障害、肝硬変、糸球体症および肺線維症、動脈硬化症、急性および慢性の疼痛、敗血症性、アレルギー性および外傷後ショック、肝腎性症候群による肝硬変、低血圧症、脱毛症の治療に、または抗癌および抗脈管形成剤として、特に適している。
【0026】
治療において使用するため、本発明の化合物は、薬学的に許容できる担体/賦形剤と一緒に適切に製剤する。好ましいものは、錠剤、カプセル剤、顆粒、散剤、溶液、懸濁液、シロップなどの経口投与に適した医薬形態である。これらの医薬製剤は、リガンド、崩壊剤、滑剤、フィラー、安定剤、希釈剤、色素、香料、湿潤剤および当業者に知られている他の賦形剤などの、技術的に知られている成分を使用して、従来の手順で調製することができる。経口製剤はまた、腸溶性錠剤または顆粒などの遅延放出性形態も含む。固体経口組成物は、従来の混合、充填または圧縮方法で調製することができる。液体経口製剤は、例えば水性もしくは油性懸濁液または溶液、乳濁液、シロップの形態におけるものとすることができ、あるいは使用前に水または他の適切な担体で再構成するための乾燥製品として提供することができる。
【0027】
投与量は、患者の年令および一般的状態、疾患または障害の性質および重症度、ならびに投与の型および経路に応じて変動させることができる。原則として、ヒトの成人患者への経口投与の場合、本発明の化合物は、単回用量としてまたは細分用量として、1〜1000mg、好ましくは5〜300mgの範囲にある合計1日量で一般に投与する。
【0028】
下記の実施例は、より大きく詳細に本発明を例証する。
【実施例】
【0029】
実施例1
(4−(S)−アミノ−5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボニル}ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]トリメチル−アンモニウムクロリド、二塩酸塩
(R=CH3、W=−O−、X=NH2、n=3、Y=N(CH33+Cl-である一般式Iの化合物)
この化合物は、スキーム2に例示する合成経路に従って合成する。
【0030】
【化5】

【0031】
一般的方法:分析用HPLC:流量:1ml/分、移動相:A−水中の0.1%トリフルオロ酢酸、B−アセトニトリル中の0.1%トリフルオロ酢酸、カラム:Zorbax Eclipse XDB C8、5ミクロン、150×4、6mm。
中間体(2)2,4−ジクロロ−3−ブロモメチル−1−ベンゼンスルホニルクロリド
室温において磁気撹拌下で10mlのクロロスルホン酸に、4.8mlの2,6−ジクロロトルエンを1滴ずつ2時間で添加する。添加が完了した後、この混合物を40℃で2時間加熱し、それにより紫色の溶液が得られ、これを冷却して、激しく撹拌しながら氷水(0.5l)に注意深く注入する。分離した白色固体を濾過し、摩砕し、水で洗浄し、KOH上で乾燥し、かつn−ヘキサンで洗浄することにより精製し、強い撹拌下で200mlの溶媒を添加する。この混合物を濾過し、固体を捨て、かつ乾固するまで溶媒を蒸発させて、結晶性白色固体として2,4−ジクロロ−3−メチル−ベンゼンスルホニルクロリドを得ている。収率:85%。
【0032】
HPLC純度:86%(30%B、3%/分、Rt=19.7分)。
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)2.6(s,3H)、7.5(d,1H)、7.95(d,1H);ESI(+)MS:m/z 260[M+H]+
【0033】
この中間体を、下記の条件下で臭素化する:20ミリモルの2,4−ジクロロ−3−メチル−ベンゼンスルホニルクロリドを、アセトニトリル中に溶解する。室温において撹拌下で2eqのNBSを添加した後、NBSを完全に可溶化させる。最後に、0.1eqのアゾ−ビスイソブチロニトリル(AIBN)を添加し、この混合物を70℃でおよそ6時間加熱する。この溶液を蒸発させ、その残渣を酢酸エチルで溶解し、H2Oおよび5%NaHCO3で洗浄し、乾燥Na2SO4上で乾燥し、かつ濾過する。有機相を蒸発させ、それにより粘稠な、淡色の液体を得て、それを石油エーテル中に溶解する。その残渣を濾過し、その溶液から淡色結晶性固体として(2’)を産生させる。
【0034】
HPLC純度:95%(5%/分まで50%B、Rt=18.72)。
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)4.85(s,2H)、7.58(d,1H)、8.08(d,1H);ESI(+)MS:m/z 338.1[M+H]+
【0035】
中間体(3’)4−アミノ−テトラヒドロピラン−4−カルボン酸メチルエステル塩酸塩
4−アミノ−テトラヒドロピラン−4−カルボン酸塩酸塩(0.025モル)を、13mlのCH3OH中に懸濁させ、−60℃まで冷却し、撹拌下でSOCl2(3eq)を1滴ずつ添加する。添加が完了した後、混合物は室温まで加温するままとし、次いで沸騰するまで徐々に加熱して、透明な溶液を得て(およそ2時間)、これを冷却し、その残渣を濾過し、かつ真空下で濃縮する。
【0036】
収率80%。純度(NMR):85%。
1H−NMR(DMSO−d6):δ(ppm)1.91〜2.04(m,4H)、3.78(s,3H)、3.60〜3.85(m,4H)、9.00(s,3H)。ESI(+)MS:m/z 160.1[M+H]+
中間体(4’)4−(3−ブロモメチル−2,4−ジクロロ−ベンゼンスルホニルアミノ)−テトラヒドロピラン−4−カルボン酸メチルエステル
中間体(3’)(1.1eq)を、4当量のK2CO3と一緒に水中に溶解させる。この溶液に、アセトニトリル中の中間体(2)1当量(10ミリモル)の溶液を添加し、室温で沈殿が生成するまで撹拌する(4時間)。溶媒を蒸発除去し、残渣を酢酸エチルおよび0.1M HCl(1/1)中に溶解する。有機相を分離し、Na2SO4上で乾燥する。溶媒を蒸発除去し、得られる固体をシクロヘキサンで洗浄し、それによりクロロ/ブロモ誘導体が比率10/1で存在する白色固体を得ている。収率:60%。
【0037】
HPLC純度:88%(3%/分において20%B、Rt=14.11(Br)および14.47(Cl))。
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)1.81〜1.99(2H,m)、2.07〜2.25(2H,m)、3.49〜3.71(7H,m)、4.81(1.5H,s,[Br])、4.94(0.3H,s,[Cl])、5.30(1H,brs)、7.47〜7.53(1H,m)、[7.49(d,J 8.5Hz,X=Br)、7.51(d,J 8.5Hz,X=Cl]、7.91〜7.98(1H,m)、[7.94(d,J 8.5Hz,X=Br)、7.96(d,J 8.5Hz,X=Cl]。
【0038】
中間体(6’)4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボン酸メチルエステル
室温において窒素下でメチルエチルケトン(MEK)中で、キノリン(5’)(0.48ミリモル)およびLiOH(2.5eq)を混合する。この混合物を撹拌下および窒素下で90分間保持する。中間体(4)を、MEK/乾燥DMF(2/1)(42ml、12ml/ミリモル)中に溶解し、この反応混合物に、キノリンを含有する溶液を撹拌下で1滴ずつ添加する。16時間撹拌を保持する。反応混合物を真空下で濃縮し、残渣を酢酸エチル(50ml、100ml/ミリモル)中に溶解する。有機相を、緩衝溶液pH=4.2で洗浄し(3×50ml)、Na2SO4上で乾燥し、濾過しかつ真空下で濃縮して、黄色油を得ている。収率:33%。HPLC純度:77%(20%B、3%/分、Rt=9.54)。
【0039】
1H−NMR(DMSO−d6):δ(ppm)1.80〜1.95(m,4H)、2.56(s,3H)、2.64(s,3H)、3.32〜3.40(m,2H)、3.42〜3.55(m,2H)、3.60(s,3H)、5.57(s,2H)、7.30(s,1H)、7.39(d,1H)、7.50(dd,1H)、7.67(d,1H)、7.78(d,1H)、8.02(d,1H)、8.77(bs,1H);ESI(+)MS:m/z 553.1[M+H]+
【0040】
中間体(7’)4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボン酸
式(6’)の中間体をTHF中に溶解し、この溶液に10eqの水中の1M LiOHを添加する。この混合物を40℃で4時間撹拌し、次いで溶媒を蒸発除去する。その残渣を水中に溶解し、pH=4まで0.1M HClを添加する。水性相をジクロロメタンで抽出し、その有機相をNa2SO4上で乾燥する。溶媒を蒸発除去し、黄色固体残渣を得ている。収率:90%。HPLC純度:99%(20%B、3%/分、Rt=7.72)。
【0041】
1H−NMR(DMSO−d6):δ(ppm)1.75〜1.90(m,4H)、2.56(s,3H)、2.64(s,3H)、3.10〜3.35(m,2H)、3.38〜3.50(m,2H)、5.58(s,2H)、7.30(s,1H)、7.37(d,1H)、7.46(t,1H)、7.67(d,1H)、7.75(d,1H)、8.03(d,1H)、8.64(bs,1H)。ESI(+)MS:m/z 539.1[M+H]+
【0042】
中間体(9’)4−tert−ブトキシカルボニル−((4−(2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)ベンゼンスルホニルアミノ)−テトラヒドロピラン−4−カルボニル)−ピペラジン−1−イル)
窒素下の100ml丸底フラスコ内において、(7’)(1.3ミリモル)およびHOBt(1.1eq)を50mlの乾燥DMF中に懸濁させる。この混合物を+4℃まで冷却し、撹拌下でEDCI.HCl(1.1eq)を添加する。+4℃における撹拌を1時間継続し、次いでDIPEA(2eq)およびBoc−ピペラジン(1eq)を添加して、この混合物を、撹拌下で室温まで加温するままとする。12時間後、溶媒を蒸発除去し、残渣を40mlのDCMに溶解し、かつ有機相を食塩水(20ml)で洗浄し、Na2SO4上で乾燥する。溶媒を蒸発除去して、油を得て、これをVarian Mega Bond(フラッシュマスターシステム)70gカラム(酢酸エチル、Rf=0.50)で精製し、それにより黄色固体を得ている。
【0043】
収率:96%。HPLC純度:98%(20%B、3%B/分、Rt=11.14)。
1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)1.45(s,9H);1.55〜1.80(m,2H)、2.05〜2.20(m,4H)、2.56(s,3H)、2.64(s,3H)、3.38〜3.90(m,10H)、5.58(s,2H)、7.10(s,1H)、7.30(s,1H)、7.37(d,1H)、7.46(t,1H)、7.67(d,1H)、7.75(d,1H)、8.03(d,1H)、8.64(bs,1H)。ESI(+)MS:m/z 707.2[M+H]+
【0044】
中間体(1’)(4−(2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ)−テトラヒドロピラン−4−カルボニル)−ピペラジン−1−イル
0.62ミリモルの(9’)に、10mlのHCl/ジオキサン4Mを添加し、この混合物を撹拌下で3時間保持する。溶媒を蒸発除去し、残渣を凍結乾燥して、黄色固体として塩酸塩(1’)を得ている。収率:98%。HPLC純度:92%(20%B、3%/分、Rt=5.34)。
【0045】
1H−NMR(D2O):δ(ppm)1.55〜2.10(m,7H)、2.90〜3.10(m,9H)、3.20〜3.55(m,9H)、6.0(s,2H)、7.60〜8.10(m,8H)、8.95(d,1H)。
ESI(+)MS:m/z 609.1[M+H]+
【0046】
中間体(10’)(4−tert−ブトキシカルボニルアミノ−4−カルボキシ−ブチル)−トリメチルアンモニウム
10ミリモルのBoc−Orn−OHを、メタノール(20ml)中に懸濁させ、この懸濁液に44ミリモルのイソ尿素を添加する。フラスコに栓をして、撹拌下において室温で2日間保持する。得られた溶液をTLC(溶離液:CHCl3/CH3OH/NH4OH 40/54/6、Boc−Orn−OH Rf=0.29;(10’) Rf=0.11、検出KMnO4)によりモニタする。
【0047】
真空下でメタノールを蒸発除去し、残渣を150mlの水中で温浸し、かつ濾過する。丸底フラスコおよび固体を水で洗浄し(2×50ml)、全ての洗浄水性留分を合わせ、次いで真空下で濃縮する(40ml)。得られた固体(4.068g)を水(40ml)中に懸濁させ、濾過し(いかなる痕跡量の尿素も除去するため)、かつ逆相LiChroprep RP−18(40〜63ミクロン)でFCCにより精製する。カラム(19×7cm)により、水中の3%CH3CNで溶離させ、留分(およそ100ml)をTLCにより分析する。純粋な生成物を含有する留分(500ml)を合わせ、真空下で濃縮してCH3CNを除去し、凍結乾燥し、かつ最後に150mlの絶対エタノールから蒸発させて、442mgの白色、高吸湿性固体を得ている。収率:16%。
【0048】
1H−NMR(DMSO−d6):δ(ppm)1.38(s,9H)1.58〜1.75(m,4H)、3.03(s,9H)、3.29(m,2H)、3.45(m,1H)、6.49(d,d,1H);ESI(+)MS:m/z 275.2[M+H]+
【0049】
中間体(11’)(4−(S)−tert−ブトキシカルボニルアミノ−5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロ−ピラン−4−カルボニル}ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]トリメチル−アンモニウムクロリド
中間体(10’)1.2ミリモルをDMF中に溶解し、この溶液にジシクロヘキシルカルボジイミド(1.2eq)およびHOBt(1.2eq)を添加する。この混合物を撹拌下で30分間保持し、次いでジイソプロピルアミノメチルポリスチレン(1.5eq)および中間体(1’)(1eq)を添加する。この混合物を24時間そのまま撹拌する。樹脂を濾過し、溶媒を蒸発除去し、かつ残渣を水および酢酸エチルに溶解する。水性相を分離し、かつ凍結乾燥する。未精製生成物を、分取HPLC(カラムVydac 218TP,C18、250×50mm、流量60ml/分、120分における勾配10%〜70%CH3CN/0.1%TFA、240nmの検出器UV、収集55〜75分)により精製し、それにより中間体(11’)が得られ、これを凍結乾燥し白色固体とする。収率:46%。HPLC純度:98%(20%B、3%/分、Rt=7.68)。
【0050】
1H NMR(DMSO−d6)δ:1.4(s,9H)、1.8〜1.45(m,6H)、1.95〜1.85(m,2H)、2.81(m,6H)、3.08(s,9H)、3.70〜3.18(m,7H)、4.01〜3.56(5H,m)、4.57〜4,45(m,1H)、5.59(s,2H)、7.25(d,1H)、7.90〜7.43(m,4H)、8.02(d,1H)、8.85(s,1H)。ESI(+)MS:m/z 863.2[M+H]+
【0051】
(4−(S)−アミノ−5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボニル}ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]トリメチル−アンモニウムクロリド、二塩酸塩
0.45ミリモルの(11’)に、10mlのHCl/ジオキサン4Mを添加する。この混合物を撹拌下で6時間保持し、溶媒を蒸発除去し、かつ残渣を凍結乾燥し、それにより白色固体として最終化合物を得ている。収率:87%。HPLC純度:98%(20%B、3%/分、Rt=5.14)。
【0052】
1H NMR(DMSO−d6)δ:1.95〜1.60(m,8H)、2.81(m,6H)、3.08(s,9H)、3.70〜3.18(m,12H)、4.57〜4.45(m,1H)、5.59(s,2H)、7.90〜7.60(m,4H)、8.02(d,1H)、8.5(s,3H)、8.85(s,1H)。
ESI(+)MS:m/z 763.1[M+H]+
【0053】
実施例2
(4−(S)−アミノ−5−(4−(4−(2,4−ジクロロ−3−(2−メチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ)テトラヒドロピラン−4−カルボニル)ピペラジン−1−イル−)5−オキソ−ペンチル)−トリメチルアンモニウムクロリド、塩酸塩
1H NMR(DMSO−d6)δ:8.90(1H,s)、8.47〜8.34(4H,m)、8.02(1H,d)、7.81(1H,d)、7.73〜7.37(4H,m)、5.62(2H,s)、4.57〜4.45(1H,m)、4.01〜3.56(5H,m)、3.43〜3.18(7H,m)、3.06(9H,s)、2.78〜2.61(4H,m)、2.89(1H,s)、1.97〜1.60(9H,m)。HPLC:tR=9.26分。MS:[M]+749。
【0054】
実施例3
[5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボニル}ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]−トリメチル−アンモニウムトリフルオロアセテート
1H−NMR(DMSO−d6):δ(ppm)1.53(s,2H,m);1.69(m,4H);1.90(m,2H);2.45(t,2H);2.78(m,6H);3.04(9H,s);3.23〜3.57(7H,m);5.68(2H,s);7.38〜8.18(5H,m);8.04(1H,d,J=8.42Hz);8.82(1H,s)。HPLC:
R=5.65分。MS:[M]+748。
【0055】
実施例4
[4−(S)−アミノ−5−(4−{1−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]シクロペンタンカルボニル}ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]−トリメチル−アンモニウムクロリド、二塩酸塩
1H NMR(DMSO−d6)δ:8.90(1H,s)、8.48(3H,s)、8.02(1H,d)、7.95〜7.63(3H,m)、5.59(2H,s)、4.57〜4.45(1H,m)、3.97〜3.24(10H,m)、3.08(9H,s)、2.95〜2.61(5H,m)、1.97〜1.72(8H,m)、1.42(4H,s);HPLC:tR=5.88分。MS:[M]+747.2。
【0056】
生物学的活性
本発明の化合物のB2受容体親和性の評価を、Bellucci et al,Br.J.Pharmacol.2003,140:500〜506により記述される手順に従って、CHO細胞中に発現されるヒトB2受容体への結合について検討することにより、実施した。結合値は、pKiとして表して報告している。
【0057】
アンタゴニスト活性(pA2として表す)は、Bellucci et al,Br.J.Pharmacol.2003,140:500〜506中に記述される手順により、B2ヒト受容体を形質移入したCHO細胞中における、ブラジキニン誘発によるイノシトール生成の阻害として評価した。
【0058】
本発明の化合物の生体内活性を、モルモットにおけるBK−誘発による気管支痙攣を阻害する有効性(Tramontana et al,J.Pharmacol.Exp.Therap.,296:1051〜1057,2001)として、気管支狭窄を80%まで、少なくとも210分間阻害したit用量(it=気管内投与)(ナノモル/kg)を測定して評価した。
【0059】
【表1】

【0060】
本発明の好ましい化合物を、国際公開第03103671号中に開示されている、より構造的に類似している化合物と比較した。本発明の化合物は、国際公開第03103671号の構造的に関連した類似体よりも高い生体内および生体外活性を有することが、驚くべきことに見出されている。ヒト受容体を形質移入させた細胞におけるアンタゴニスト活性試験および生体内試験の両方が、ヒトにおける治療用途の予想用量を高度に予測するものである。
【0061】
略語
it=気管内投与、iv=静脈内投与、eq=当量、DCM=ジクロロメタン、MeOH=メタノール、THF=テトラヒドロフラン、DMSO=ジメチルスルホキシド、DMF=ジメチルホルムアミド、AcOEt=酢酸エチル、AcOH=酢酸、TFA=トリフルオロ酢酸、NBS=Nα−ブロモスクシンイミド、bpo=過酸化ベンゾイル、Boc=tert−ブトキシカルボニル、HOBt=1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾール、EDC=1−エチル−3−(3’−ジメチルプロピル)カルボジイミド、DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン、HPLC=高速液体クロマトグラフィー、TLC=薄層クロマトグラフィー、NMR=核磁気共鳴、ESI=電子スプレーイオン化、MS=質量分析、FCC=フラッシュカラムクロマトグラフィー、Rt=保持時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物
【化1】

(式中、
Rは水素またはメチルであり、
Wは単結合または酸素原子であり、
n=3、4であり、
Xは水素または−NR12アミノ基であり、ここで、R1およびR2は独立に水素、またはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルから選択される基であることができ、
Yは−NR345第4級アンモニウム基であり、ここで、R3、R4、R5は独立にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、n−ペンチルから選択される基であることができる)
ならびに薬学的に許容できるそれらの塩、鏡像異性体および鏡像異性体混合物。
【請求項2】
塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、コハク酸、マロン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸から選択される無機酸または有機酸との、一般式(I)の化合物の塩。
【請求項3】
Wが単結合であり、
n=3であり、
Xが水素または−NH2基から選択され、
Yが−N(CH33+第4級アンモニウム基であり、
他の置換基が、請求項1において定義した通りである
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Rが水素またはメチルから選択され、
Wが酸素原子であり、
n=3であり、
Xが水素または−NH2基から選択され、
Yが−N(CH33+第4級アンモニウム基であり、
他の置換基が、請求項1において定義した通りである
請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
下記の化合物
[4−(S)−アミノ−5−(4−{1−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]−シクロペンタンカルボニル}ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]トリメチル−アンモニウムクロリド、二塩酸塩である
請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
下記の化合物
(4−(S)−アミノ−5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボニル}−ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]トリメチル−アンモニウムクロリド、二塩酸塩、
(4−(S)−アミノ−5−(4−(4−(2,4−ジクロロ−3−(2−メチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ)−テトラヒドロピラン−4−カルボニル)−ピペラジン−1−イル)5−オキソ−ペンチル)−トリメチル−アンモニウムクロリド、塩酸塩、
[5−(4−{4−[2,4−ジクロロ−3−(2,4−ジメチル−キノリン−8−イルオキシメチル)−ベンゼンスルホニルアミノ]テトラヒドロピラン−4−カルボニル}ピペラジン−1−イル)−5−オキソ−ペンチル]トリメチル−アンモニウムトリフルオロアセテートである
請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
薬学的に許容できる賦形剤と一緒に、請求項1から6に記載の化合物を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項8】
ブラジキニンB2受容体の活性化を伴う全ての状態を治療する医薬組成物を調製するための、請求項1から6に記載の化合物の使用。
【請求項9】
炎症性、アレルギー性および自己免疫状態を治療する医薬組成物を調製するための、請求項8に記載の化合物の使用。
【請求項10】
喘息および慢性気管支炎、アレルギー性、血管運動性およびウイルス性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、関節リウマチ、腸の慢性炎症性疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎)、糸球体腎炎、乾癬、発疹、急性および慢性膀胱炎、肝硬変、糸球体症および肺線維症、動脈硬化症、急性および慢性の疼痛、敗血症性、アレルギー性および外傷後ショック、肝硬変による肝腎性症候群、低血圧症、脱毛症、癌および抗脈管形成性疾患を治療する医薬組成物を調製するための、請求項8に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2008−516901(P2008−516901A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−536029(P2007−536029)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/EP2005/010412
【国際公開番号】WO2006/040004
【国際公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(507121622)イスティトゥイート ルーソ ファルマコ ディイタリア ソシエタ ペル アチオニ (3)
【氏名又は名称原語表記】ISTITUTO LUSO FARMACO D’ITALIA S.P.A.
【Fターム(参考)】