説明

非偏向光の変調システム

【課題】非偏向光の実質的に一様な変調を行えるようにする。
【解決手段】光源12からサーキュレータ16を介して変調部32に入力した非偏向光は、偏向ビームスプリッタ/コンバイナ(PBSC)20において、直交するTEモードとTMモードの2つのビームに分解される。TEモードのビームは光学経路22を介して変調器28で変調され、光学経路24を介してスプライス30においてモード変更され、光学経路26を介してPBSCに戻る。TMモードのビームは、光学経路26を介してスプライスでモード変更されてから、光学経路24を介して変調器で変調され、光学経路22を介してPBSCに戻される。PBSCは、戻された2つのビームをコンバインしてマルチモードビームを生成し、サーキュレータを介して出力36から出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非偏向光の変調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
光応用例によっては、非偏向の光が必要とされている。このような応用例の多くにおいて、非偏向光の変調が求められる。しかしながら、非偏向光の一様な変調は、過度のロス及び/又はチャープ(すなわち、寄生位相変調)なしに達成することが困難である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光増幅型又は光減衰型の変調器は、一様な強度の変調を提供できるが、その代償としてチャープ(漏洩)が大きくなってしまう。ニオブ酸リチウム等の電気光学材料で形成される、干渉計型の強度変調器(例:マッハジェンダ変調器)は、チャープのない変調を提供できるが、電気光学(EO)係数がTM及びTE偏向で異なる。言い換えると、電極に加えられた所与の電圧によって、TEモードに印加された位相遅延がTMモードに印加された位相遅延と約3倍異なるが、これは、2つの偏向に対するEO係数の違いによる。このEO係数の相違によって、2つの偏向に対して非一様な強度の変調を生じさせる結果となる。ニオブ酸リチウムの導波路変調器を用いて構成される位相変調器もまた、TE及びTM偏光に対する非一様な位相変調を生じさせてしまう。このような制限により、ニオブ酸リチウムの変調器は、偏向すなわち単一偏向光装置として用いられるのが通常である。これらのニオブ酸リチウムの変調装置は、TM偏向光を消去し、かつTE偏向部分のみを利用するように構成されるのが通常である。TM偏向光を消去することで、変調器の多用途性が制限され、かつ、無駄すなわち利用されない電力を消費してしまう。
上記の問題点に鑑み、本発明は、非偏向光を変調するシステム及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のシステムは、非偏向光(又は任意の偏向光)を出力するよう構成される光源、光源と光通信するサーキュレータ、及びサーキュレータと光通信する変調部を備えている。非偏向光は、実質的に直交する偏向の2つの単一モードビームを含む。変調部は、光源から発光されたマルチモードの非偏向光と関連する2つの単一モードの単一偏向光ビームを変調する。2つの単一モードビームは両方とも、TEモード又はTMモード等、2つの直交モードの一方に偏向される。変調された信号は、サーキュレータに出力される。
【0005】
一実施形態では、変調部は、変調器と光通信する第1の光路、スプライス(splice)と光通信する第2の光路、スプライス及び変調器と光通信する第3の光路を備えている。変調器は、位相及び強度のいずれかを変調する。変調部における光路は、単一モードの偏向保持ファイバ(PMF)を備えている。マルチモード光は分割され、且つ該ビームは1又は複数の市販の光学部品によって結合される。
【0006】
本発明のさらなる様態によれば、該方法は、マルチモード光を受信し、マルチモードに関連する2つの単一モードのビームを変調して、2つの変調された単一モードビームに基づいて変調した信号を出力する。
本発明の別の様態によれば、マルチモード光は、2つの単一モードビームに分割される。第1の単一モードビームのモードは変調前に変更され、第2の単一モードビームのモードは変調後に変更される。2つの変調された単一モードビームは、変調信号を形成するために結合される。
上記の発明の概要から容易に理解できるように、本発明は、非偏向光の変調のためのシステム及び方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による非偏向光の変調のためのシステムの概略図である。
【図2】本発明による変調システムにおいて進行する光ビームの移動の特定方向を示す、本発明の概略図である。
【図3】本発明の実施形態による強度変調器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、変調システム10を示しており、光源12、サーキュレータ16、及び変調部32を備えている。第1の光学経路は、光源12及びサーキュレータ16間の光通信のためのものである。第2の光学経路は、サーキュレータ16及び変調部32間の光通信のためのものである。サーキュレータ16もまた、出力36に光通信する。
【0009】
変調部32は、偏向ビームスプリッタ/コンバイナ(PBSC)20、変調器28、及び光スプライス30を備えている。第3の光学経路22は、偏向ビームスプリッタ/コンバイナ(PBSC)20及び変調器28の間の光通信用のものである。第4の光学経路24は、変調器28及びスプライス30間の光通信用のものである。第5の光学経路26は、光スプライス30及びPBSC20間の光通信用である。変調部32により、光ビームが時計回り(CW)及び反時計回り(CCW)の両方向に伝播する。
【0010】
変調部32における光学経路の長さは、通常、最短にすることが望まれるが、それは長すぎると変調信号を伝送する際に不所望の遅延を招くからである。長すぎると、PBSC20及び変調器28間のCW及びCCWビームに関する伝播時間を一致させることが、より困難にもなる。変調器28への到達時間が異なることは、ビームが異なる変調度で変調されてしまう原因となり、その結果として、信号歪み及び使用できる変調レートに対する制限が生じてしまう。変調部32の動作速度に対する制限は、設計に制約を課すことになる。
【0011】
第1及び第2の光学経路は、標準的な単一モードファイバ(SMF)を備えており、該ファイバを介して非偏向光が伝播される。標準的な単一モードファイバは、偏向状態を制御しないので、これを介して光が伝播する時には、偏向光がふらつく(又は変化する)場合もある。これとは対照的に、第3、第4、及び第5の光学経路22、24、26を介して、未制御の偏向モードを有する光を伝播するのは望ましくない。従って、第3、第4、及び第5の光学経路22、24、26に対しては、単一モード偏向保持光ファイバ(PMF)が用いられる。PMFでは、光は入射した偏向モードにおいてのみ伝播できる。
【0012】
光源12は、標準的な市販の光学部品であり、非偏向光すなわち任意の偏向光(すなわち、マルチモード光ビーム)を出力するよう構成されている。光源12の例は、エルビウム添加ファイバ光源、又は標準的なSMFファイバと結合される波長可変レーザを含むが、これに限定するものではない。
【0013】
サーキュレータ16は、標準的な市販の光学部品である。サーキュレータ16は信号ルータとして機能し、マルチモード光ビームを光源12から変調部32に伝送する。また、サーキュレータ16は、変調された非偏向光信号を、変調部32から出力36に誘導する。サーキュレータ16はさらに、変調部32からの光出力(すなわちパワー出力)から、光源12を保護する。サーキュレータとして、オズオプティクス(Oz Optics)が製造する品番FOC−12P−111−8/125−PPP−480−60−XXX−1−1を使用可能である。
【0014】
PBSC20は、2つの主たる機能を有している。マルチモード光ビームを分割して別個の偏向ビームにすること、及び、2つの変調単一モードビームを結合して変調非偏向光信号を形成することである。具体的には、PBSC20は、サーキュレータ16から受信したマルチモードビームを分割して、実質的に異なる直交モードを有する2つの別個のビームにする。偏向モードはTE及びTMモードである。モードは、PBSC20に関するモードの向きに基づいて決定される。TEモード及びTMモードは、互いに直交している。PBSC20は第1のビームを第3の光学経路22に誘導し、第2のビームを第5の光学経路26に誘導する。この実施形態では、TEビームが第1のビームであり、TMビームが第2のビームである。PBSC20は、標準的な市販の光学部品である。
【0015】
非偏向光を分割することに加えて、PBSC20はまた、異なるモードの偏向ビーム(例えば、TE及びTM)を結合して1つのマルチモード信号にする。具体的には、PBSC20は、第3の光学経路22からの変調単一モードビームを光学経路26からの変調単一モードビームと結合して、結合マルチモード変調ビームを形成し、該ビームはサーキュレータ16に向かう第2の光学経路に出力される。一実施形態では、ビーム分割及びビーム結合の機能は、1つの集積装置において実行可能である。PBSC例は、オズオプティクス(Oz Optics)が製造する品番FOBS−12N−111−9/125−SPP−1550−PBS−50−XXX−1−1である。
【0016】
変調器28は、第3の光学経路22及び第4の光学経路24の両方からのビームを変調する。一実施形態では、変調器28は、ニオブ酸リチウム又は別のガラス材質等で形成された導波路を備えており、サブギガヘルツの周波数で変調する。変調器28は、強度及び/又は位相を変調する。以下で詳細に論述されるように、強度変調には、変調器28における電圧差を提供するための電極を追加する必要がある。変調器として、マッハジェンダ変調器を使用することができる。マッハジェンダ変調器の例が米国特許番号6,198,854に記述されており、これを参照によって本明細書に援用する。
【0017】
光スプライス30は、光を90度回転して異なるモードにする。より詳細には、光スプライス30は、偏向回転をもたらすために、互いに関連したファイバ端を回転する。簡単に述べると、スプライスは、ビームのモードをTMからTEに及びその逆に偏向する光学デバイスである。光スプライス30は、標準的な、市販の光学装置及び行程を用いて実現される。
【0018】
図2は、動作中の変調システム10におけるビームの方向を示している。光源12からの非偏向光は、サーキュレータ16から、第1の方向58へ伝播しPBSC20に至り、そこで非偏向光は2つのビームに分割される。2つのビームは、それぞれ異なるモード(TM及びTEのいずれか)を有している。第1のビームは、はじめはTEモードである。PBSC20によって、第1のビームは第1のCW方向60に誘導されて変調器28に至り、そこで変調される。変調器28からの変調された第1のビームは、第2のCW方向62に伝播しスプライス30に至る。スプライス30は、第1のビームの向きを90度回転させる、すなわち、変調された第1のビームのモードを、TEモードからTMモードに変更する。スプライス30から、TMモードの変調された第1のビームは、第3のCW方向64に伝播しPBSC20に至る。
【0019】
第2のビームは、PBSC20からCCW方向70に誘導されてスプライス30に至る。第2のビームは、はじめはTMモードである。スプライス30は第2のビームの向きを90度回転させる、すなわち、第2のビームのモードをTMモードからTEモードに変更する。TEモードの第2のビームは、第2のCCW方向72に伝播して変調器28に至り、そこで変調される。変調されたTEモードの第2のビームは、第3のCCW方向74に伝播しPBSC20に至る。PBSC20において、変調された第1のビーム及び変調された第2のビームは結合されて、変調されたマルチモード信号を形成する。PBSC20から、変調マルチモード信号は、第2の方向80に伝播してサーキュレータ16に至る。サーキュレータ16は、変調マルチモード信号を出力36に誘導する。変調されたマルチモード信号は、TMモード及びTEモードの両方において、実質的に一様な変調を含んでいる。
【0020】
図3は、本発明の別の実施形態による、強度変調器120を示している。電極122及び124は、変調器120を通過する光の位相変調のために備えられている。変調器を通過する光の強度は、位相変調光を合成することによって変調される。変調器120は、ニオブ酸リチウム等のガラス状材質の基板126に形成される。
【0021】
本発明の好適な実施形態が説明及び記載されたが、上述のように、本発明の技術的思想及び範囲を逸脱しない限り、多くの変更が可能である。円偏向又は空間モードが用いられて、PBSC20においてTE及びTM以外の直交モードを実質的に有するビームに分割されてもよい。また、非偏向光を伝送できる別のタイプの光学経路が、第1及び第2の光学経路に使用されてもよい。2×2のヒューズ−テイパーファイバコンバイナ等の方向性結合装置が、サーキュレータ16の代わりに用いられてもよい。代替的なタイプの単一モードファイバ、偏向保持ファイバ、又は別の光学経路も使用可能である。多種多様な変調器が変調器28として使用できる。部品は異なる構成で用いられてもよい。例を挙げると、CCW及びCW経路を逆にして、部品のいくつかを再配置することもできる。また、別個のビームスプリッタ及びビームコンバイナの部品を利用してもよい。すなわち、本発明の範囲は好適な実施形態の開示によって制限されるものではない。本発明は、以下に記載の特許請求の範囲を参照することによってのみ規定されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
マルチモードビームを発生する光源と、
該光源と光学的に接続されたサーキュレータと、
該サーキュレータと光学的に接続されたコンポーネントであって、サーキュレータを介して光源からマルチモードビームを受信し、受信したマルチモードビームに関連する2つの直交する単一モードビームを、両方とも2つの直交モードの一つに変調し、かつ、2つの変調された単一モードビームに基づいて変調された信号を、サーキュレータに出力するコンポーネントと
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、コンポーネントは、
2つの単一モードビームのモードをTMモードからTEモードへ、又はTEモードからTMモードへ変更するスプライスと、
2つの単一モードビームを変調する変調器と
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、該システムはさらに、スプライス、変調器、ビームスプリッタ、及びビームコンバイナの間で2つの単一モードビームの光伝搬を行う単一モードの偏向保持ファイバを備えることを特徴とするシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−262299(P2010−262299A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−107286(P2010−107286)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】