説明

非免疫抑制性シクロスポリン類似体分子

【課題】
【解決手段】 本発明の化合物は、シクロフィリンに結合する非免疫抑制性シクロスポリン類似体である。前記化合物は、置換基R'、R1およびR2を有するオキシアルキルから成るシクロスポリンAのアミノ酸Iの修飾側鎖を含むものであり、前記R'は、Hまたはアセチルであり、前記R1は、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり、前記R2は、水素;非置換、N置換、若しくはN,N二置換アミド;N置換若しくは非置換アシル保護アミン;カルボン酸;N置換若しくは非置換アミン;ニトリル;エステル;ケトン;ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、若しくはポリヒドロキシアルキル;または置換若しくは非置換アリールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2008年7月30日付で出願された米国特許出願第61/137,522号、および2008年7月31日付で出願された米国特許出願第61/084,999号に対して優先権を主張するものであり、前記出願は、これらの参照により本明細書に全面的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、シクロスポリン族に属する分子、具体的にはシクロスポリンA(Cyclosporine A:CsA)の新規類似体であって、免疫抑制活性が低減されたまたは免疫抑制活性を有さないシクロフィリン(cyclophilin:CyP)に結合する新規類似体に関する。
【背景技術】
【0003】
シクロスポリンは、強力な免疫抑制活性を有する環状ポリペプチド類に属する。例えばシクロスポリンA(Cyclosporine A:CsA)などのこれらの化合物の少なくとも一部は、トリポクラジウム・インフラタム(Tolypocladium inflatum)種によって二次代謝産物として生産される。CsAは、例えば同種移植片拒絶反応、遅延型過敏症、実験的アレルギー性脳脊髄炎、フロイントアジュバント関節炎、および移植片体宿主病などの体液性免疫および細胞媒介免疫反応を抑制することが立証されている強力な免疫抑制剤であり、臓器移植における臓器拒絶反応の予防、関節リウマチの治療、および乾癬の治療に使用される。
【0004】
多数のシクロスポリン族化合物が公知であるが、おそらくCsAが最も広く医療用に使用されている。CsAの免疫抑制効果は、T細胞を介在した活性化事象の阻害に関連する。免疫抑制は、シクロスポリンがシクロフィリン(CyP)と呼ばれるユビキタス細胞内タンパク質に結合することによって達成される。この複合体は、その結果、酵素カルシニューリンのカルシウムおよびカルモジュリン依存性セリン−トレオニンホスファターゼ活性を阻害する。カルシニューリンを阻害することにより、T細胞を活性化している間、サイトカイン遺伝子(IL−2、IFN−γ、IL−4、およびGM−CSF)の誘導に必要なNFATp/cおよびNF−κBなどの転写因子の活性化を阻止する。
【0005】
シクロスポリンの最初の発見以来、多種多様な天然に存在するシクロスポリンが単離され、同定されてきた。さらに、天然に存在しない多くのシクロスポリンが、部分または全合成手段および修飾細胞培養技術の適用によって調製されてきた。従って、シクロスポリンを含む種類はかなりあり、例えば、天然に存在するシクロスポリンAからZ、天然に存在しない様々なシクロスポリン誘導体、ジヒドロおよびイソシクロスポリンを含む人工若しくは合成シクロスポリン、誘導体化されたシクロスポリン(例えば、MeBmt残基の3'−O−原子をアシル化することもでき、またはさらなる置換基をサルコシル残基の3位に導入することもできる)、MeBmt残基が異性体形態で存在するシクロスポリン(例えば、MeBmt残基の位置6'と7'の立体配置がトランスではなくシスであるもの)、および変異アミノ酸がそのペプチド配列内の特定の位置に組み込まれているシクロスポリンを含む。
【0006】
1位に修飾アミノ酸を含有するシクロスポリン類似体は、WO99/18120およびWO03/033527に開示されており、これらの開示は、この参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれる。これらの出願には、「ISATX247」または「ISA247」または「ISA」として公知のシクロスポリン誘導体が記載されている。この類似体は、アミノ酸−1残基における修飾を除き、CsAと構造的に同一である。本出願人は、主としてトランスISA247から成る混合物を含む、ISA247のシス異性体とトランス異性体の特定の混合物が、天然に存在し、現在周知のシクロスポリンより強化された免疫抑制効果と低減された毒性との組み合わせを示すことを以前に発見した。
【0007】
シクロスポリンは、カルシニューリンと、CyP異性体(これらに限定されるものではないが、CyP−A、CyP−B、およびCyP−Dを含む)と、P−糖タンパク質(PgP)の3つの確立した細胞ターゲットを有する。シクロスポリンのカルシニューリンに対する結合により顕著な免疫抑制がもたらされ、当該結合は移植と自己免疫適応症との従来の関連性に関与する。
【0008】
シクロフィリンファミリー
CyPs(酵素番号(Enzyme Commision(EC)number)5.1.2.8)は、ペプチジル−プロリル シス−トランスイソメラーゼ活性を有するタンパク質の1群に属し、そのようなタンパク質は、集合的にイムノフィリンとして知られており、FK−506結合タンパク質およびパルブリンも含む。CyPsは、原核生物と真核生物の両方の研究されているすべての生物のすべての細胞において見られ、進化を通して構造的に保存されている。ヒトには7つの主要CyPs、すなわちCyP−A、CyP−B、CyP−C、CyP−D、CyP−E、CyP−40、およびCyP−NK(ヒト天然キラー細胞から最初に同定されたもの)と、全部で16の特有のタンパク質がある(Galat A.Peptidylprolyl cis/trans isomerases(immunophilins):biological diversity−targets−functions.Curr Top Med Chem 2003,3:1315−1347;Waldmeier PC et al.Cyclophilin D as a drug target.Curr Med Chem 2003,10:1485−1506)。
【0009】
哺乳動物において同定されたCyPsの最初のメンバーはCyP−Aであった。CyP−Aは18−kDaサイトゾルタンパク質であり、CsA結合のための最も豊富に存在するタンパク質である。CyP−Aは、全サイトゾルタンパク質の0.6%を構成すると推定される(Mikol V et al.X−ray structure of monmeric cyclophilin A−cycloporin A crystal complex at 2.1 A resolution.J.Mol.Biol.1993,234:1119−1130;Galat A et al.Metcalfe SM.Peptidylproline cis/trans isomerases.Prog.Biophys.Mol.Biol.1995,63:67−118)。
【0010】
シクロフィリンの細胞内位置
CyPsは、殆どの組織の殆どの細胞区画において見られ、特有の機能をコードする。哺乳動物において、CyP−AおよびCyP−40はサイトゾル性であるのに対して、CyP−BおよびCyP−Cは、小胞体タンパク質分泌経路にそれらをターゲッティングするアミノ末端シグナル配列を有する(Galat,2003;Dornan J et al.Structures of immunophilins and their ligand complexes.Curr Top Med Chem 2003,3:1392−1409に概説されている)。CyP−Dは、それをミトコンドリアに方向づけるシグナル配列を有し(Andreeva,1999;Hamilton GS et al.Immunophilins:beyond immunosuppression.J Med Chem 1998,41:5119−5143)、CyP−Eは、アミノ末端RNA結合ドメインを有し、核内に位置し(Mi H et al.A nuclear RNA−binding cyclophilin in human T cells.FEBS Lett 1996,398:201−205)、ならびにCyP−40は、TPRsを有し、サイトゾル内に位置する(Kieffer LJ et al.Cyclophilin−40,a protein with homology to the P59 component of the steroid receptor complex.Cloning of the cDNA and further characterization.J Biol Chem 1993,268:12303−12310)。ヒトCyP−NKは、最も大きいCyPであり、正電荷を有する親水性の大きなカルボキシル末端を有し、サイトゾル内に位置する(Anderson SK et al.A cyclophilin−related protein involved in the function of natural killer cells.Proc Natl Acad Sci USA 1993,90:542−546;Rinfret A et al.The N−terminal cyclophilin−homologous domain of a 150−kilodalton tumor recognition molecule exhibits both peptidylprolyl cis−transisomerase and chaperone activities.Biochemistry 1994,33:1668−1673)。
【0011】
シクロフィリンの機能および活性
CyPsは、多くの細胞プロセスに関与する多機能タンパク質である。CyPsは、進化を通して高度に保存されているため、これは、CyPsについての本質的役割を示唆している。初めに、CyPsは、ペプチジル−プロリル結合のシス−トランス異性体化を触媒するという特異的酵素特性を有する(Galat,1995;Fisher GA,Halsey J,Hausforff J,et al.A phase I study of paclitaxel(taxol)(T)in combination with SDZ valspodar,a potent modulator of multidrug resistance(MDR).Anticancer Drugs.1994;5(Suppl 1):43)。従って、CyPsは、ペプチジル−プロリル−シス−トランスイソメラーゼ(peptidyl−prolyl−cis−trans isomerase:PPlase)と呼ばれ、新たに合成されるタンパク質の正しいフォールディングの促進因子として作用することができるものであり、PPlasesは、熱応力、紫外線照射、細胞環境のpHの変化、および酸化剤での処理のために損傷したタンパク質の修復にも関与する。この機能は、分子シャペロニング活性として周知である(Yao Q et al.Roles of Cyclophilins in Cancers and Other Organs Systems.World J.Surg.2005,29:276−280)。
【0012】
さらに、CyPsのPPlase活性は、細胞内タンパク質輸送(Andreeva L et al.Cyclophilins and their possible role in the stress response.Int J Exp Pathol 1999,80:305−315,Caroni P et al.New member of the cyclophilin family associated with the secretory pathway.J Biol Chem 1991,266:10739−42)、ミトコンドリア機能(Halestrap AP et al.CsA binding to mitochondrial cyclophilin inhibits the permeability transition pore and protects hearts from ischaemia/reperfusion injury.Mol Cell Biochem 1997,174:167−72;Connern CP,Halestrap AP.Recruitment of mitochondrial cyclophilin to the mitochondrial inner membrane under conditions of oxidative stress that enhance the opening of a calcium−sensitive non−specific channel.Biochem J 1994,302:321−4)、mRNA前駆体処理(Bourquin JP et al.A serine/argininerich nuclear matrix cyclophilin interacts with the Cterminal domain of RNA polymerase II.Nucleic Acids Res 1997,25:2055−61)、および多タンパク質複合体安定性の維持(Andreeva,1999)を含む、多様な細胞プロセスに関与することが最近証明された。
【0013】
シクロスポリンは、疎水性ポケット内での接触によりCyP−Aにナノモルの親和性で結合し(Colgan J et al.Cyclophilin A−Deficient Mice Are Resistant to Immunosuppression by Cyclosporine.The Journal of Immunology 2005,174:6030−6038,Mikol,1993)、PPlase活性を阻害する。しかし、この効果は、免疫抑制には不適切であると考えられる。むしろ、CsAとCyP−A間の複合体は、カルシニューリンに結合してカルシニューリンにサイトカイン遺伝子転写を調節させない複合面を生じさせる(Friedman J et al.Two cytoplasmic candidates for immunophilin action are revealed by affinity for a new cyclophilin:one in the presence and one in the absence of CsA.Cell 1991,66:799−806;Liu J et al.Calcineurin is a common target of cyclophilin−CsA and FKBP−FK506 complexes.Cell 1991,66:807−815)。
【0014】
シクロフィリンの相同性
CyP−A、このファミリーの原型メンバーは、哺乳動物細胞において高度に保存されているタンパク質である(Handschumacher RE et al.Cyclophilin:a specific cytosolic binding protein for CsA.Science 1984,226:544−7)。ヒトCyP−Aの配列相同性分析は、それがヒトCyP−B、CyP−C、およびCyP−Dに対して高相同性であることを示す(Harding MW,Handschumacher RE,Speicher DW.Isolation and amino acid sequence of cyclophilin.J Biol Chem 1986,261:8547−55)。すべてのCyPsのシクロスポリン結合ポケットが、約109アミノ酸の高保存領域によって構成されている。公知CyPsのうち、CyP−Dは、CyP−Aに対して最も高い相同性を有する。実際、この領域でのCyP−AとCyP−D間の配列同一性は100%である(Waldmeier 2003;Kristal BS et al.The Mitochondrial Permeability Transition as a Target for Neuroprotection.Journal of Bioenergetics and Biomembranes 2004,36(4);309−312)。従って、CyP−A親和性はCyP−D親和性の非常によい予測因子であり、逆にCyP−Dの親和性はCyP−A親和性の非常によい予測因子である(Hansson MJ et al.The Nonimmunosuppressive Cyclosporine analogues NIM811 and UNIL025 Display Nanomolar Potencies on Permeability Transition in Brain−Derived Mitochondria.Journal of Bioenergetics and Biomembranes,2004,36(4):407−413)。この関係は、シクロスポリン類似体で実験により重ね重ね証明されている(Hansson,2004;Ptak Rg et al.Inhibition of Human Immunodeficiency Virus Type 1 Replication in Human Cells by Debio−025,a Novel Cyclophilin Binding Agent_Antimicrobial Agents and Chemotherapy 2008:1302−1317;Millay DP et al.Genetic and pharmacologic inhibition of mitochondrial dependent necrosis attenuates muscular dystrophy.Nature Medicine 2008,14(4):442−447;Harris R et al.The Discovery of Novel Non−Immunosuppressive Cyclosporine Ethers and Thioethers With Potent HCV Activity.Poster # 1915,59th Annual Meeting of the American Association for the Study of Liver Diseases(AASLD),2008)。CyPs全体にわたる配列相同性は、すべてのCyPsがシクロスポリン類似体のターゲットになる可能性があることを示唆している。CyPsが関与する多数の細胞プロセスのため、これは、CyPへの有意な結合を保持するCsA類似体が多くの疾病徴候の治療に有用であるはずであることを、さらに示唆している。
【0015】
シクロスポリン媒介疾患
ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus:HIV):
HIVは、レトロウイルスファミリーのレンチウイルスであり、ならびに一定のウイルスの感染および複製プロセスへのCyPの関与の一例として役立つ。CyP−Aは、抗HIV化学療法において有効なターゲットであることが、10年以上前に確証された(Rosenwirth BA et al.Cyclophilin A as a novel target in anti−HIV−1 chemotherapy.Int.Antivir.News 1995,3:62−63)。CyP−Aは、HIV−1複製サイクルの早期において欠くことのできない機能を果たす。それは、HIV−1 Gagポリプロテインに特異的に結合することが判明した(Luban JKL et al.Human immunodeficiency virus type 1 Gag protein binds to cyclophilins A and B.Cell 1993,73:1067−1078)。カプシドタンパク質p24(CA)のG89およびP90あたりの被定義アミノ酸配列がCyP−Aに対する結合部位として同定された(Bukovsky AAA et al.Transfer of the HIV−1 cyclophilin−binding site to simian immunodeficiency virus from Macaca mulatta can confer both cyclosporine sensitivity and cyclosporine dependence.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1997,94:10943−10948;Gamble TRF et al.Crystal structure of human cyclophilin A bound to the amino−terminal domain of HIV−1 capsid.Cell 1996,87:1285−1294)。CAに対するCyP−Aの親和性は、組み立て中のビリオン粒子へのCyP−Aの組み込みを促進する(Thali MA et al.Functional association of cyclophilin A with HIV−1 virions.Nature 1994,372:363−365)。実験に基づく証拠は、CyP−A−CA相互作用がHIV−1複製にとって不可欠であることを示しており;この相互作用の阻害は、ヒト細胞におけるHIV−1複製を害する(Hatziioannou TD et al.Cyclophilin interactions with incoming human immunodeficiency virus type 1 capsids with opposing effects on infectivity in human cells.J.Virol.2005,79:176−183;Steinkasserer AR et al.Mode of action of SDZ NIM 811,a nonimmunosuppressive CsA analog with activity against human immunodeficiency virus type 1(HIV−1):interference with early and late events in HIV−1 replication.J.Virol 1995,69:814−824)。CyP−Aが関与するウイルス複製サイクルにおける段階は、ウイルス粒子の侵入後、および細胞ゲノムへの二本鎖ウイルスDNAの組み込み前の事象であることが立証された(Braaten DEK et al.Cyclophilin A is required for an early step in the life cycle of human immunodeficiency virus type 1 before the initiation of reverse transcription.J.Virol 1996 70:3551−3560;Mlynar ED et al.The non−immunosuppressive CsA analogue SDZ NIM 811 inhibits cyclophilin A incorporation into virions and virus replication in human immunodeficiency virus type 1−infected primary and growth−arrested T cells.J.Gen.Virol 1996,78:825−835;Steinkasserer,1995)。CsAの抗HIV−1活性は、1998年に初めて報告された(Wainberg MA et al.The effect of CsA on infection of susceptible cells by human immunodeficiency virus type 1.Blood 1998,72:1904−1910)。HIV−1複製の阻害についてのCsAおよび多くの誘導体の評価は、非免疫抑制性CsA類似体が、免疫抑制性類似体のものに等しいまたは免疫抑制性類似体のものより優れていることさえある抗HIV−1活性を有することを明らかにした(Bartz SRE et al.Inhibition of human immunodeficiency virus replication by nonimmunosuppressive analogs of CsA.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1995,92:5381−5385;Billich AF et al.Mode of action of SDZ NIM 811,a nonimmunosuppressive CsA analog with activity against human immunodeficiency virus(HIV)type 1:interference with HIV protein−cyclophilin A interactions.J.Virol 1995,69:2451−2461;Ptak,2008)。
【0016】
炎症
疾患における炎症は、感染領域への白血球(Leukocytes)(白血球(white blood cells))の内向き流束を伴う。白血球は、ケモカイン、化学誘因物質の1ファミリー、によってその領域に引き込まれる。インビトロ研究により、細胞外CyP−Aはヒト白血球およびT細胞についての強力な化学誘因物質であることが証明された(Kamalpreet A et al.Extracellular Cyclophilins Contribute to the Regulation of Inflammatory Responses Journal of Immunology 2005;175:517−522;Yurchenko VG et al.Active−site residues of cyclophilin A are crucial for its signaling activity via CD147.J.Biol.Chem.2002;277:22959−22965;Xu QMC et al.Leukocyte chemotactic activity of cyclophilin.J.Biol.Chem.1992;267:11968−11971;Allain FC et al.Interaction with glycosaminoglycans is required for cyclophilin B to trigger integrin−mediated adhesion of peripheral blood T lymphocytes to extracellular matrix.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 2002;99:2714−2719)。さらに、CyP−Aは、インビボで注射されたとき、白血球内向き流束を特徴とする急速な炎症反応を誘導してもよい(Sherry BN et al.Identification of cyclophilin as a proinflammatory secretory product of lipopolysaccharide−activated macrophages.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 1992;89:3511−3515)。CyP−Aは、細胞内に遍在的に分布しているが、炎症反応の過程で、CyP−Aは、生細胞と死細胞の両方によって細胞外組織空間に放出される(Sherry,1992)。実際、高レベルのCyP−Aが、敗血症、関節リウマチ、および血管平滑筋細胞疾患を含む、幾つかの異なる炎症性疾患において報告されている(Jin ZG et al.Cyclophilin A is a secreted growth factor induced by oxidative stress.Circ.Res.2000;87:789−796;Teger,1997;Billich,1997)。関節リウマチの場合、関節リウマチ患者の滑液におけるCyP−Aレベルと好中球数の間の直接相関が報告されている(Billich,1997)。
【0017】

CyP−Aは、これら限定されるものではないが、小および非小細胞肺癌、膀胱癌、肝細胞癌、膵臓癌、および乳癌を含む、多くの癌組織および細胞系において過剰発現されることが近年証明された(Li,2006;Yang H et al.Cyclophilin A is upregulated in small cell lung cancer and activates ERK1/2 signal.Biochemical and Biophysical Research Communications 2007;361:763−767;Campa,2003)。外在性CyP−Aが供給されると、癌細胞成長が刺激され(Li,2006;Yang,2007)、一方、CsAは成長を阻止する(Campa,2003)。ごく最近では、CyP(AおよびB)は、ヒト乳癌細胞を成長させる生化学経路に複雑に関与すること、ならびにCyPノックダウン実験は、癌細胞成長、増殖、および運動性を低下させることが、立証された(Fang F et al.The expression of Cyclophilin B is Associated with Malignant Progression and Regulation of Genes Implicated in the Pathogenesis of Breast Cancer.The American Journal of Pathology 2009;174(1):297−308;Zheng J et al.Prolyl Isomerase Cyclophilin A Regulation of Janus−Activated Kinase 2 and the Progression of Human Breast Cancer.Cancer Research 2008;68(19):7769−7778)。最も興味深いこととして、乳癌細胞を異種移植したマウスのCsA治療は、腫瘍壊死を誘導し、転移を完全に阻害した(Zheng,2008)。前記研究者らは、「シクロフィリンB作用は、ヒト乳癌の病理発生に有意に寄与するだろう」および「シクロフィリン阻害は、ヒト乳癌の治療における新規治療的戦略になるだろう」という結論を下している(Fang,2009;Zheng,2008)。
【0018】
C型肝炎
C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus:HCV)は、世界中で最も流行している肝臓病であり、世界保健機構により流行病と見なされている。HVCは、発見される前に何十年間も患者を感染させる場合があるので、「静かな」流行病と呼ばれることが多い。研究は、世界中で2億人を超える人がHCVに感染していること、世界人口の約3.3%の総発生率、を示唆している。米国だけでも、ほぼ400万人がHCVに感染しているまたはしたことがあり、これらのうちの270万人が、進行中の慢性感染症を有する。すべてのHCV感染個体が、生命にかかわる重篤疾患を発現するリスクを有する。慢性C型肝炎の現行の標準的な療法は、リバビリンと併用でのペグインターフェロン、両方とも一般化された抗ウイルス薬の併用から成る(Craxi A et al.Clinical trial results of peginterferons in combination with ribavirin.Semin Liver Dis 2003;23(Suppl 1):35−46)。この治療についての失敗率は、約50%である(Molino BF.Strategic Research Institute:3rd annual viral hepatitis in drug discovery and development world summit 2007.AMRI Technical Reports;12(1))。
【0019】
CyP−Bは、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)の効率的複製に不可欠であることが、最近、立証された(Watashi K et al.Cyclophilin B Is a Functional Regulator of Hepatitis C Virus RNA Polymerase.Molecular Cell 2005,19:111−122)。ウイルスは、それらの効率的ゲノム複製については、CyP−Bなどの宿主由来因子に依存する。CyP−Bは、HCV RNAポリメラーゼNS5Bと相互作用して、そのRNA結合活性を直接刺激する。RNA干渉(RNA interference:RNAi)によって媒介される内因性CyP−B発現低下も、CyP−BへのNS5Bの結合の誘導喪失も、HCV複製レベルを低下させる。従って、CyP−Bは、HCV複製機構においてNS5Bの刺激調節因子として機能する。ウイルス複製に対するこの調節メカニズムにより、CyP−Bは、抗ウイルス療法戦略のターゲットとして特定される。他のHCV治療とは異なり、シクロフィリン阻害は、HCVウイルスを直接ターゲットにしない。従って、CyP結合薬に対する耐性が現行のHCV治療薬より遅く発生すると考えられる(Manns MP,et al.The way forward in HCV treatment−finding the right path.Nature Reviews Drug Discovery 2007;6:991−1000)。加えて、宿主−ウイルス相互作用レベルでの干渉により、CyP阻害は、インターフェロンに基づく治療に対してばかりでなく、プロテアーゼおよびポリメラーゼ阻害剤などのHCV複製酵素を直接ターゲットにする将来の治療に対しても相補的であり得る、抗HCV治療への新規アプローチのための道を開くことができる(Flisiak R,Dumont JM,Crabbe R.Cyclophilin inhibitors in hepatitis C viral infection.Expert Opinion on Investigational Drugs 2007,16(9):1345−1354)。適する実験HCVモデルが無いことが、HCVウイルス複製に作用する新規抗HCV薬の開発を有意に妨げてきた。この障害は、幾つかの適する細胞培養モデル(サブゲノムHCVレプリコンシステム)およびヒト肝臓細胞を含有するマウスモデルの開発により、つい最近、克服された(Goto K,et al.Evaluation of the anti−hepatitis C virus effects of cyclophilin inhibitors,CsA,and NIM811.Biochem Biophys Res Comm 2006;343:879−884;Mercer DF,et al.Hepatitis C virus replication in mice with chimeric human livers.Nat Med 2001;7:927−933)。シクロスポリンは、最近、スクリーニングモデルおいておよび小規模臨床試験において抗HCV活性を実証した(Watashi K,et al.CsA suppresses replication of hepatitis C virus genome in cultured hepatocytes.Hepatology 2003;38:1282−1288;Inoue K,Yoshiba M.Interferon combined with cyclosporine treatment as an effective countermeasure against hepatitis C virus recurrence in liver transplant patients with end−stage hepatitis C virus related disease.Transplant Proc 2005;37:1233−1234)。
【0020】
筋肉変性障害
CyP−Dは、すべての細胞においてミトコンドリア膜透過性遷移孔(mitochondrial permeability transition pore:MTP)の不可欠部分である。MTP孔の機能は、細胞内のカルシウム恒常性をもたらすことである。正常状態では、MTP孔の開口および閉鎖は、可逆的である。細胞への過剰なカルシウム内向き流束を伴う病的状態では、これは、ミトコンドリアに過剰な負荷をかけ、MPT孔の不可逆的開口を誘導して、細胞死またはアポトーシスをもたらす。CsAは、ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーおよびベスレムミオパチーを有する患者においてミトコンドリア機能不全および筋アポトーシスを治すと報告されている[(Merlini L et al.CsA corrects mitochondrial dysfunction and muscle apoptosis in patients with collagen VI myopathies.PNAS 2008;105(13):5225−5229]。CsAは、単離された心臓ミトコンドリアにおいてmPTP開口を用量依存的に阻害し、それによってアポトーシスを防止し、細胞に修復のための貴重な時間を与えることが、インビトロで立証されている(Gomez L et al.Inhibition of mitochondrial permeability transition improves functional recovery and reduces mortality following acute myocardial infarction in mice Am J Physiol Heart Circ Physiol 2007,293:H1654−H1661)。急性心筋梗塞が生じた58人の患者における臨床研究により、再灌流時のCsAの投与は、プラセボで見られるものより小さい梗塞を伴うことが立証された(Piot C et al.Effect of Cyclosporine on Reperfusion Injury in Acute Myocardial Infarction.New England Journal of Medicine 2008;395(5):474−481))。
【0021】
慢性神経変性疾患
CsAは、脳外傷の結果としての、急性脳虚血および損傷の症例において、神経保護薬として作用することができる(Keep M,et al.Intrathecal cyclosporine prolongs survival of late−stage ALS mice.Brain Research 2001;894:327−331)。CsAで治療した動物は、治療不在時のわずか10%の生存率に比べて劇的な80%の生存率を示した。これは、主として、ミトコンドリアCyP−DへのCsAの結合の結果であることが、後に確証された。その後、CsAの有用性が慢性神経変性にわたることが確証され、その後、ルー・ゲーリック病(ALS)のラットモデルにおいても立証され(米国特許第5,972,924号明細書)、この場合、CsA治療は残りの寿命を倍より多く増加させた。実験的自己免疫性脳脊髄炎におけるCyP−Dノックアウトマウス、多発性硬化症の動物モデル、においてCyP−D不活性化が軸索を保護することも、最近、証明された(Forte M et al.Cyclophilin D inactivation protects axons in experimental autoimmune encephalomyelitis,an animal model of multiple sclerosis.PNAS 2007;104(18):7558−7563)。アルツハイマー病マウスモデルにおいて、CyP−D欠乏は、学習および記憶ならびにシナプス機能を実質的に向上させる(Du H et al.Cyclophilin D deficiency attenuates mitochondrial and neuronal perturbation and ameliorates learning and memory in Alzheimer's disease Nature Medicine 2008,14(10):1097−1105)。加えて、CsAは、ハンチントン病のラットモデルにおいて有効であること(Leventhal L et al.CsA protects striatal neurons in vitro and in vivo from 3−nitropropionic acid toxicity.Journal of Comparative Neurology 2000,425(4):471−478)、およびパーキンソン病のマウスモデルにおいて部分的に有効であること(Matsuura K et al.CsA attenuates degeneration of dopaminergic neurons induced by 6−hydroxydopamine in the mouse brain.Brain Research 1996,733(1):101−104)が証明されている。従って、ミトコンドリア依存性壊死は、CyP−Dの阻害がこれらの疾病のための新たな薬理学的治療戦略をもたらすだろうことを示唆する顕著な疾病メカニズムの代表である(Du,2008)。
【0022】
細胞内カルシウムイオン(Ca2+)恒常性の喪失に起因する細胞、組織および臓器傷害
Ca2+は、健常ミトコンドリア機能を含む、細胞レベルでの多数の生理プロセスに関与する。心筋梗塞、発作、急性肝毒性、胆汁うっ滞、および移植臓器の保存/再灌流傷害などの、一定の病的状態では、ミトコンドリアは、カルシウムレベルを調節する能力を喪失し、ミトコンドリアのマトリックス内の過剰なカルシウム蓄積がミトコンドリア内膜に大きな孔を開ける結果となる。(Rasola A.et al.The mitochondrial permeability transition pore and its involvement in cell death and in disease pathogenesis.Apoptosis 2007,12:815−833)。その孔を通る1.5キロダルトン以下のイオンおよび分子の非選択的コンダクタンス、ミトコンドリア膜透過性遷移と呼ばれるプロセスは、ミトコンドリアの膨潤、および結果的に細胞死となる他の事象(アポトーシスの誘導を含む)をもたらす。そのミトコンドリア膜透過性遷移孔(mitochondrial permeability transition pore:MPTP)の構成要素の1つがCyP−Dである。CyP−Dは、イムノフィリン分子であって、そのイソメラーゼ活性がMPTPの開口を調節するものである分子であり、CsAまたはCsA類似体によるそのイソメラーゼ活性の阻害は、MPTPの生成を阻害し、従って、細胞死を防止する。
【0023】
非免疫抑制性シクロスポリン類似体シクロフィリン阻害剤
上で述べた適応症におけるCsAの有利な効果にもかかわらず、臨床実践では免疫抑制の付随効果がCyP阻害剤としてのCsAの有用性を制限する。現在、免疫抑制活性をほとんど有さないまたは低減された免疫活性を有し(すなわち、CsAの免疫抑制効力の<10%)、尚、CyPに結合する能力(すなわち、CsAと比較して>10%のCyP結合能力)を保持することが証明されているCsA類似体はほんの少数しかない。
【0024】
NIM 811(Melle−シクロスポリン)
NIM 811は、アミノ酸4が修飾された、真菌トリポクラジウム・ニベウム(Tolypocladium niveum)の発酵生成物であり、(カルシニューリン結合を欠くため)免疫抑制活性を示さないが、CyP−Aに対する結合親和性を保持する(Rosenwirth BA et al.Inhibition of human immunodeficiency virus type 1 replication by SDZ NIM 811,a nonimmunosuppressive Cyclosporine Analogue.Antimicrob Agents Chemother 1994,38:1763−1772)。
【0025】
DEBIO 025(MeAlaEtVal−シクロスポリン)
DEBIO 025は、CsAのアミノ酸3および4での二重化学修飾体であり、これも免疫抑制活性を示さないが、CyP−A PPlase活性を保持する(Kristal,2004)。
【0026】
SCY−635(ジメチルアミノエチルチオSar−ヒドロキシLeu−シクロスポリン)
SCY−635は、CsAのアミノ酸3および4での二重化学修飾体であり、これも免疫抑制活性を示さないが、CyP−A PPlase活性を保持する(PCT公開第WO2006/039668号パンフレット)。
【0027】
一般に、これらの化合物は、カルシニューリンへの結合を担うCsAの面に対する修飾を有し、一般にはアミノ酸3および4の修飾を必要とする。アミノ酸3および4の修飾は、骨の折れる複雑なものである。このアプローチは、シクロスポリン環を開環する工程と、それらのアミノ酸を置換および/または修飾する工程と、その後、その環を閉環して修飾シクロスポリンを生じさせる工程とを必要とするからである。
【0028】
対照的に、アミノ酸1の側鎖の修飾は、シクロスポリン環の開環を必要としない。しかし、アミノ酸1は、(カルシニューリン結合に対して)CyP結合に関係しており、CsAの免疫抑制効率を増加させるために修飾されてきた。例えば、米国特許第6,605,593号明細書には、免疫抑制効力が増加されたCsA類似体を生じさせる結果となるアミノ酸1の単一修飾が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
従って、容易に合成され、CyPを介在した疾患の治療において有効性を示す非免疫抑制性シクロスポリン類似体分子(non−immunosuppressive Cyclosporine analogue molecule:NICAM)を有することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明の1つの観点は、式Iの化学構造によって表される化合物またはそれらの医薬的に許容される塩に関する:
【0031】
【化1】

【0032】
(式中、
a.R'は、Hまたはアセチルであり;
b.R1は、炭素原子数2から15の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;ならびに
c.R2は、
(i)H;
(ii)不飽和、N−置換、またはN,N−二置換アミド;
(iii)N−置換または非置換アシル保護アミン;
(iv)カルボン酸;
(v)N−置換または非置換アミン;
(vi)ニトリル;
(vii)エステル;
(viii)ケトン;
(ix)ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、またはポリヒドロキシアルキル;および
(x)置換または非置換アリール
から成る群から選択される)。
【0033】
本発明の第二の観点は、式IIの化合物またはそれらの医薬的に許容される塩に関する:
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、
a.R'は、Hまたはアセチルであり;
b.R1は、炭素原子数2から15の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;ならびに
c.R3は、
(i)水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、および1,3−ジオキサンから成る群から選択される置換基を含有する飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖;
(ii)ハロゲン化物、エステル、およびニトロから成る群から選択される1若しくはそれ以上の置換基を含有する芳香族基;ならびに
(iii)前記飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖と前記芳香族基との組み合わせ
から成る群から選択される)。
【0036】
本発明の第三の観点は、式IIIの化合物またはそれらの医薬的に許容される塩に関する:
【0037】
【化3】

【0038】
(式中、
a.R'は、Hまたはアセチルであり;
b.R1は、炭素原子数2から15の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;ならびに
c.R4は、
【0039】
【化4】

【0040】
【化5】

【0041】
から成る群から選択され、これらの式中、
1.R5は、炭素数1と10の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり
2.R6は、炭素数1と10の間の長さのモノヒドロキシル化、ジヒドロキシル化、トリヒドロキシル化、またはポリヒドロキシル化飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である)。
【0042】
本発明の第四の観点は、第IVの化合物またはそれらの医薬的に許容される塩に関する:
【0043】
【化6】

【0044】
(式中、
I.R'は、Hまたはアセチルであり;ならびに
II.R7は、
【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
【化12】

【0051】
【化13】

から成る群から選択される)。
【0052】
本発明のもう1つの観点に従って、前記式Iの化合物を製造するためのプロセスであって、
a.式IXのアミノ酸1が修飾されたアセチルCsAアルデヒド:
【0053】
【化14】

【0054】
を式VIIIのホスホニウム塩:
【0055】
【化15】

【0056】
(式中、
I.R13は、炭素原子数1から14の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;および
II.R2は、式Iについて上で定義したとおりである)
と反応させて、式Xのアセチル化化合物:
【0057】
【化16】

【0058】
を製造する工程と、
b.塩基を使用して式Xの化合物を脱アセチル化する工程と、
c.R1が飽和されている場合には、式Xの化合物の二重結合を、前記化合物と水素化剤とを反応させることによって水素化して、式Iの飽和類似体を製造する工程と
を有するプロセスを提供する。
【0059】
本発明のもう1つの観点に従って、式XVの非免疫抑制化合物:
【0060】
【化17】

【0061】
を製造するプロセスであって、
a.式XVの化合物:
【0062】
【化18】

【0063】
を還元剤およびアシル化剤の存在下で反応させて、式XVIのアセチル化化合物:
【0064】
【化19】

【0065】
を製造する工程と、
b.塩基を使用して式XVIの化合物を脱アセチル化する工程と
を有し、
式XIV、XV、およびXVIのR1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である
プロセスを提供する。
【0066】
本発明のもう1つの観点に従って、式XXIの非免疫抑制化合物:
【0067】
【化20】

【0068】
を製造するプロセスであって、
a.式XXの化合物:
【0069】
【化21】

【0070】
を無水溶媒に溶解する工程と、
b.その溶液をトリフルオロ酢酸(TFA)と反応させる工程と
を有し、
式XXおよびXXIのR1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和、直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である
プロセスを提供する。
【0071】
本発明のもう1つの観点に従って、式XIVの非免疫抑制化合物:
【0072】
【化22】

【0073】
を製造するプロセスであって、
a.式XXIの化合物:
【0074】
【化23】

【0075】
を無水ピリジンに溶解する工程と、
b.その溶液をアシル化剤と反応させる工程と、
c.その溶剤を除去して、式XIVの化合物を生じさせる工程と
を有し、
式XIVおよびXXIのR1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である
プロセスを提供する。
【0076】
本発明ももう1つの観点に従って、式XXIVの免疫抑制化合物:
【0077】
【化24】

【0078】
(式中、
I.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族炭素鎖であり;ならびに
II.R15およびR16は、独立して、水素または飽和若しくは不飽和直鎖若しくは分岐脂肪族基であり;あるいはNR15R16は一緒に、モルホリニル部分を形成する)
を製造するプロセスであって、
a.式XXVの化合物:
【0079】
【化25】

【0080】
を塩化チオニルと組み合わせて、式XXVIの残基:
【0081】
【化26】

【0082】
を生じさせる工程と、
b.前記残基を無水溶媒に溶解し、式XXVIIの化合物:
【0083】
【化27】

【0084】

と反応させて、式XXVIIIの化合物:
【0085】
【化28】

【0086】
を生じさせる工程と、
c.式XXIVの化合物を塩基で脱アシル化する工程と
を有するプロセスを提供する。
【0087】
本発明のもう1つの観点に従って、式XXIVの非免疫抑制化合物:
【0088】
【化29】

【0089】
(式中、
I.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;
II.R15およびR16は、独立して、水素または飽和若しくは不飽和直鎖若しくは分岐脂肪族基であり;あるいはNR15R16は一緒に、モルホリニル部分を形成する)
を製造するプロセスであって、
a.式XXVの化合物:
【0090】
【化30】

【0091】
を窒素下で無水溶媒に溶解する工程と、
b.ジシクロヘキシルカルボジイミド(dicyclohexylcarvodiimide)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物および式XVIIIの化合物と反応させる工程:
【0092】
【化31】

【0093】
と、
c.式XVIIIの化合物を塩基で脱アセチル化する工程と
を有するプロセスを提供する。
【0094】
本発明のもう1つの観点に従って、式XXXIIの非免疫抑制化合物:
【0095】
【化32】

【0096】
(式中、
I.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;および
II.R17は、ハロゲンまたはヒドロキシル置換基を任意選択で含有する、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族基である)
を製造するプロセスであって、
式XXXの化合物:
【0097】
【化33】

【0098】
を酸の存在下で式XXXIの化合物:
【0099】
【化34】

【0100】
と反応させる工程
によるものであるプロセスを提供する。
【0101】
本発明のもう1つの観点に従って、式XXVIの非免疫抑制化合物:
【0102】
【化35】

【0103】
(式中、
I.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;および
II.R20は、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族基である)
の化合物を製造するプロセスであって、
式XXXVの化合物:
【0104】
【化36】

【0105】
(式中、R'は、任意選択でHまたはアセチルである)
を水素化ホウ素ナトリウムと反応させる工程と、
R'がアセチルである場合には、式XXXVの化合物を塩基で脱アセチル化する工程と
によるものであるプロセスを提供する。
【0106】
本発明のもう1つの観点に従って、式XXIXの非免疫抑制化合物:
【0107】
【化37】

【0108】
(式中、R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である)
を製造するプロセスであって、
式XXVIIIの化合物:
【0109】
【化38】

【0110】
をボラン−テトラヒドロフランおよび過酸化ナトリウムと反応させる工程
によるものであるプロセスを提供する。
【0111】
本発明のもう1つの観点に従って、式XLIIIの非免疫抑制化合物:
【0112】
【化39】

【0113】
(式中、
I.R'は、Hまたはアセチルであり;および
II.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である)
を製造するプロセスであって、
式XLIの化合物:
【0114】
【化40】

【0115】
を無水溶媒中で式XLIIの化合物:
【0116】
【化41】

【0117】
と反応させる工程と、
式XVIIIの化合物を塩基で脱アセチル化する工程と
によるものであるプロセスを提供する。
【0118】
本発明のもう1つの観点に従って、式XLVIの非免疫抑制化合物:
【0119】
【化42】

【0120】
(式中、
I.R1は、炭素数2から15の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;および
II.R23は、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族基である)
を製造するプロセスであって、
a.式XLVの化合物:
【0121】
【化43】

【0122】
を過酸化水素およびギ酸と反応させる工程と、
b.その生成物と塩基を反応させて、式XLVIの化合物を生じさせる工程と、
c.式XLVの化合物を塩基で脱アセチル化する工程と
を有するプロセスを提供する。
【0123】
本発明は、非免疫抑制性シクロスポリン類似体を開示する。そのような化合物は、CyPに結合し、およびCyP媒介疾患の治療に潜在的に有用である。
【0124】
一般に、式IからXLVIについて:
「カルボン酸」は、カルボン酸部分が以下の置換基のうちの1つに連結されている基を含む:
1.置換されていてもよいアルキル(例えば、炭素数2から15のアルキル);
2.置換されていてもよいアルケニル(例えば、炭素数2から15のアルケニル);および
3.置換されていてもよいアルキニル(例えば、炭素数2から15のアルキニル)。
【0125】
上で説明した上記の置換基としては、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、置換されていてもよいチオール(例えば、チオール、C1〜4アルキルなど)、置換されていてもよいアミノ(例えば、アミノ、モノ−C1〜4アルキルアミノ、ジ−C1〜4アルキルアミノ、5から6員環式アミノ、例えばテトラヒドロピロール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロール、イミダゾールなど)、ハロゲン化されていてもよいC1〜4アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシなど)、ハロゲン化されていてもよいC1〜4アルコキシ−C1〜4アルコキシ(例えば、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、トリフルオロメトキシエトキシ、トリフルオロエトキシエトキシなど)、ホルミル、C2〜4アルカノイル(例えば、アセチル、プロピオニルなど)、C1〜4アルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニルなど)などを挙げることができ、および前記置換基の数は、好ましくは1から3である。
【0126】
さらに、上の「置換されていてもよいアミノ」の置換基は、互いに結合して、環式アミノ基(例えば、置換基を窒素原子に結合させることができるように5から6員環の環構成窒素原子から水素原子を取り去ることにより形成される基、例えばテトラヒドロピロール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロール、イミダゾールなど)を形成してもよい。前記環式アミノ基は置換されていてもよく、その置換基の例としては、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、置換されていてもよいチオール(例えば、チオール、C1〜4アルキルチオなど)、置換されていてもよいアミノ(例えば、アミノ、モノ−C.sub.1〜4アルキルアミノ、ジ−C1〜4アルキルアミノ、5から6員環式アミノ、例えば、テトラヒドロピロール、ピペラジン、ピペリジン、モルホリン、チオモルホリン、ピロール、イミダゾールなど)、エステル化またはアミド化されていてもよいカルボキシル(例えば、カルボキシル、C1〜4アルコキシ−カルボニル、カルバモイル、モノ−C1〜4アルキル−カルバモイル、ジ−C1〜4アルキル−カルバモイルなど)、ハロゲン化されていてもよいC1〜4アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、トリフルオロメトキシ、トリフルオロエトキシなど)、ハロゲン化されていてもよいC1〜4アルコキシ−C.sub.1〜4アルコキシ(例えば、メトキシメトキシ、メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、トリフルオロメトキシエトキシ、トリフルオロエトキシエトキシなど)、ホルミル、C2〜4アルカノイル(例えば、アセチル、プロピオニルなど)、C1〜4アルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル)などが挙げられ、および前記置換基の数は、好ましくは1から3である。
【0127】
「アミン」は、非置換であってもよい基、またはアミン部分が、
1.置換されていてもよいアルキル基(例えば、炭素数2から15のアルキル)、
2.置換されていてもよいアルケニル(例えば、炭素数2から15のアルケニル)、
3.置換されていてもよいアルキニル(例えば、炭素数2から15のアルキニル)、
4.置換されていてもよいホルミル若しくはアシル(例えば、炭素数2から4のアルカノイル(例えば、アセチル、プロピニル、ブチリル、イソブチリルなど)、炭素数1から4のアルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニルなど)など)、
5.置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル、ナフチルなど)など
から独立して選択することができる1つ若しくは2つの置換基を有する、および上で「カルボン酸」について定義したような置換基から独立して選択される置換基に連結されている、N−置換若しくはN,N二置換されているものである基を含む。
【0128】
「アミド」は、上で「カルボン酸」について定義したような置換基から独立して選択される置換基に連結されているアミド部分のカルボン酸基が、
1.置換されていてもよいアルキル基(例えば、炭素数2から15のアルキル)、
2.置換されていてもよいアルケニル(例えば、炭素数2から15のアルケニル)、
3.置換されていてもよいアルキニル(例えば、炭素数2から15のアルキニル)、
4.置換されていてもよいホルミル若しくはアシル(例えば、炭素数2から4のアルカノイル(例えば、アセチル、プロピニル、ブチリル、イソブチリルなど)、炭素数1から4のアルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニルなど)など)、
5.置換されていてもよいアリール(例えば、フェニル、ナフチルなど)など
からそれぞれ独立して選択することができる1つまたは2つの置換基を有するN−置換またはN,N二置換されているものであるアミド部分のアミノ基に連結している化合物を含む。
【0129】
「アリール」は、単環式または縮合多環式芳香族炭化水素基によって例示することができ、例えば、C6〜14アリール基、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、またはアセナフチレニルなどが好ましく、フェニルが好ましい。前記アリールは、1若しくはそれ以上の置換基、例えば、低級アルコキシ(例えば、C1〜6アルコキシ、例えば、メトキシ、エトキシ、若しくはプロポキシなど)、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、低級アルキル(例えば、C1〜6アルキル、例えば、メチル、エチル、若しくはプロピルなど)、低級アルケニル(例えば、C2〜6アルケニル、例えば、ビニル若しくはアリールなど)、低級アルキニル(例えば、C2〜6アルキニル、例えば、エチニル若しくはプロパルギルなど)、置換されていてもよいアミノ、置換されていてもよいヒドロキシル、シアノ、置換されていてもよいアミジノ、カルボキシル、低級アルコキシカルボニル(例えば、C1〜6アルコキシカルボニル、例えば、メトキシカルボニル若しくはエトキシカルボニルなど)、置換されていてもよいカルバモイル(例えば、5から6員芳香族単環式複素環式の基(例えば、ピリジルなど)で置換されていてもよいC1〜6アルキル若しくはアシル(例えば、ホルミル、C2〜6アルカノイル、ベンゾイル、ハロゲン化されていてもよいC1〜6アルコキシカルボニル、ハロゲン化されていてもよいC1〜6アルキルスルホニル、ベンゼンスルホニルなど)、1−アゼチジニルカルボニル、1−ピロリジニルカルボニル、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル(この硫黄原子は酸化されていてもよい)、1−ピペラジニルカルボニルなどで置換されていてもよい、カルバモイル)などで置換されていてもよい。これらの置換基はいずれも、1から3の置換可能な位置で独立して置換されていてもよい。
【0130】
「ケトン」は、ケトン部分のカルボニル基が、前記「カルボン酸」について上で定義したような置換基から独立して選択される1つまたは2つの置換基に連結されている化合物を含む。
【0131】
「エステル」は、エステル基が、「カルボン酸」または「アリール」について定義したような置換基から独立して選択される1つまたは2つの置換基から成る、カルボン酸エステルまたはアルコールエステルのいずれかを含む。
【0132】
「アルキル」は、特に定義されていない限り、好ましくは、長さが1から15炭素単位のアルキルである。
【0133】
「芳香族基」は、上で定義したとおりのアリール、または5から6員芳香族単環式複素環式の環、例えば、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、1,2,3−オキサジアゾリル、1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、フラザニル、1,2,3−チアジアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,3−トリアゾリル、1,2,4−トリアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなど;および8から16員(好ましくは、10から12員)芳香族縮合複素環式の基によって例示することができる。
【0134】
「非免疫抑制(性)の」は、細胞培養でのヒトリンパ球の増殖を阻害するその化合物の能力によって測定したとき、好ましくは、下の実施例19において述べる方法によって測定したとき、CsAと比較して実質的に低減された免疫系抑制レベルを示す化合物の能力を指す。
【0135】
「類似体」は、1若しくはそれ以上の官能基がCsAと異なる、CsAの構造類似体を意味する。好ましくは、そのような類似体は、CyPに結合するCsAの能力の少なくともかなりの部分を保持する。
【0136】
式Iの好ましい化学種は、R'が、Hであり、H1が、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和アルキルであり、およびR2が、
1.カルボキシル基を含むカルボン酸;
2.N−置換またはN,N−二置換アミドであって、置換基が、H、炭素数1と7の間の長さのアルキルから独立して選択されるものである、または前記置換基が、ヘテロ原子がO、N、若しくはSから選択される複素環式の環を形成するものであるN−置換またはN,N−二置換アミド;
3.炭素数1と7の間の長さのエステル;
4.炭素数1と7の間の長さのモノヒドロキシル化またはジヒドロキシル化アルキル;
5.炭素数1と7の間の長さのN−置換または非置換アシル保護アミン;
6.ニトリル;
7.ケトンであって、そのケトンのカルボン酸基がR1および炭素数1と7の間の長さの飽和または不飽和アルキル鎖に連結されているものであるケトン;
8.フェニルであって、二酸化窒素、フッ素、アミン、エステル、またはカルボキシル基から独立して選択される1若しくはそれ以上の置換基で任意選択で置換されているものであるフェニル
から選択されるものである。
【0137】
本発明の化合物は、光学活性化合物の形態で存在してもよい。本発明は、上の式の範囲内の光学活性化合物のすべてのエナンチオマーを、個々にも、ラセミ体の混合物ででも、包含する。その上、本発明は、本明細書において定義する化合物のプロドラッグを含む。
【0138】
もう1つの観点に従って、本発明の化合物は、哺乳動物、好ましくはヒト、におけるシクロフィリン媒介疾患の治療または予防または研究に有用である。そのような疾患は、通常、シクロフィリンの過剰発現、例えば、シクロフィリンの先天性過剰発現によって媒介される。
【0139】
本発明の化合物によって治療することができるシクロフィリン媒介疾患としては、
a.ウイルス感染症;
b.炎症性疾患;
c.癌;
d.筋肉変性障害;
e.神経変性障害;および
f.細胞内カルシウム恒常性の喪失に関連した傷害
が挙げられる。
【0140】
前記ウイルス感染症は、ヒト免疫不全ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、およびE型肝炎から成る群から選択されるウイルスによって引き起こされる。前記炎症性疾患は、喘息、自己免疫疾患、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏性疾患、炎症性腸疾患、敗血症、血管平滑筋細胞疾患、動脈瘤、骨盤内感染症、再灌流傷害、関節リウマチ、移植拒絶反応、および脈管炎から成る群から選択される。前記癌は、小および非小細胞肺癌、膀胱癌、肝細胞癌、膵臓癌、および乳癌から成る群から選択することができる。前記筋肉変性障害は、心筋再灌流傷害、筋ジストロフィー、およびVI型コラーゲンミオパチーから成る群から選択することができる。前記神経変性障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統委縮症、多発性硬化症、脳性麻痺、発作、糖尿病性神経障害、筋委縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッグ病)、脊髄損傷、および脳損傷から成る群から選択することができる。前記細胞内カルシウム恒常性の喪失に関連した傷害は、心筋梗塞、発作、急性肝毒性、胆汁うっ滞、および移植臓器の保存/再灌流傷害から成る群から選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
本発明のこれらおよび他の利点は、以下の詳細な説明を読むことによって、および図を参照することによって、明らかになるであろう。
【図1】図1は、CsA不在または存在下、塩化カルシウム添加後のミトコンドリア吸光度によって測定したときのCyP−Dの阻害を図示する折れ線グラフを示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0142】
本発明の化合物は、その必要がある温血動物にニートでまたは医薬担体と共に投与することができる。前記医薬担体は、固体である場合もあり、または液体である場合もある。本発明の混合物は、従来の非毒性で医薬的に許容される担体、アジュバントおよびビヒクルを含有する投薬単位調合物で、経口的に、局所的に、非経口的に、吸入スプレーにより、または直腸内に投与することができる。用語非経口的は、本明細書において用いる場合、皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術を含む。
【0143】
本発明の混合物を含有する医薬組成物は、好ましくは、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁剤、分散性粉末若しくは顆粒、エマルジョン、ハード若しくはソフトカプセル、またはシロップ若しくはエリキシルのような、経口使用に適する形態のものであってもよい。経口使用のための組成物は、医薬組成物の製造についての当分野において公知の方法に従って調製することができ、そのような組成物は、医薬的に上品で味のよい製剤を生じさせるために、甘味剤、着香剤、着色剤および保存薬から成る群から選択される1若しくはそれ以上の薬剤を含有してもよい。非毒性で医薬的に許容される賦形剤との混合物で活性成分を含有する錠剤も、公知の方法によって製造することができる。使用される賦形剤は、例えば、(1)不活性希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウム;(2)造粒および崩壊剤、例えば、トウモロコシデンプン、またはアルギン酸;(3)結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、またはアラビアゴム;および(4)滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってもよい。錠剤は、コーティングされなくてもよく、または胃腸管内での崩壊および吸収を遅らせ、それによって長期間にわたって持続作用をもたらすために公知の技術によりコーティングされてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を利用することができる。それらを米国特許第4,256,108号明細書、同第4,160,452号明細書、および同第4,265,874号明細書に記載されている技術によってもコーティングして、制御放出用の浸透圧治療錠を形成することもできる。
【0144】
場合により、経口使用のための調合物は、ハードゼラチンカプセルの形態であってもよく、この場合、活性成分は、不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンと混合される。それらは、軟質ゼラチンカプセルの形態であることもあり、この場合、活性成分は、水または油性媒質、例えば、ピーナッツ油、液体パラフィン、若しくはオリーブ油と混合される。
【0145】
水性懸濁剤は、通常、水性懸濁剤の製造に適する賦形剤との混合物で活性材料を含有する。そのような賦形剤としては、(1)懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアラビアゴム、または(2)分散若しくは湿潤剤を挙げることができ、前記分散若しくは湿潤剤は、自然に存在するリン脂質、例えばレシチン、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物、例えばステアリン酸ポリオキシエチレン、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、エチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、若しくはエチレンオキシドと、脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物、例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。
【0146】
前記水性懸濁剤は、1若しくはそれ以上の保存薬、例えば、ポリヒドロキシ安息香酸エチルまたはn−プロピル;1若しくはそれ以上の着色剤;1若しくはそれ以上の着香剤;および1若しくはそれ以上の甘味剤、例えば、スクロース、アスパルテーム、またはサッカリンも含有してもよい。
【0147】
油性懸濁剤は、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ごま油、若しくはココナッツ油、オメガ3脂肪酸を含有する魚油、または鉱物油、例えば液体パラフィンに活性成分を懸濁させることによって調合することができる。前記油性懸濁剤は、増粘剤、例えば、蜜蝋、硬質パラフィン、またはセチルアルコールを含有してもよい。味のよい経口製剤を生じさせるために甘味剤および着香剤が添加されることもある。アスコルビン酸などの抗酸化物質の添加により、これらの組成物を保存することができる。
【0148】
分散性粉末および顆粒は、水性懸濁剤の調製に適する。それらは、活性成分を分散または湿潤剤、懸濁化剤、および1若しくはそれ以上の保存薬との混合物で提供する。適する分散または湿潤剤は、上で既に述べたものによって例示される。追加の賦形剤、例えば、上で説明した甘味、着香および着色剤、が存在することもある。
【0149】
本発明の混合物を含有する医薬組成物は、水中油エマルジョンの形態であることもある。油相は、植物油、例えばオリーブ油若しくはラッカセイ油、または鉱物油、例えば液体パラフィン、またはそれらの混合物であってもよい。適する乳化剤は、(1)自然に存在するゴム、例えば、アラビアゴムおよびトラガカントゴム、(2)自然に存在するリン脂質、例えば、大豆およびレシチン、(3)脂肪酸および無水ヘキシトールから誘導されたエステルまたは部分エステル30、例えば、モノオレイン酸ソルビタン、(4)前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであってもよい。前記エマルジョンは、甘味および着香剤も含有してもよい。
【0150】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテーム、またはスクロースを用いて調合することができる。そのような調合物は、粘滑薬、保存薬、ならびに着香および着色剤も含有してもよい。
【0151】
前記医薬組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁剤は、上で述べた適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の方法に従って調合することができる。前記滅菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液であることもある。利用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム溶液などがある。加えて、滅菌固定油が、従来、溶媒または懸濁化媒質として利用されている。このために、合成モノまたはジグリセリドをはじめとする任意の無菌固定油を利用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が注射剤の調製に使用されている。
【0152】
本発明の混合物を薬物の直腸内投与のために坐剤の形態で投与することもできる。これらの組成物は、薬物と、常温で固体であるが直腸温度では液体であり、従って直腸内で融解して薬物を放出する適切な無刺激賦形剤とを混合することによって、調製することができる。そのような材料は、カカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0153】
局所使用のために、シクロスポリンとともに通常使用されるものを含有する適切なクリーム、軟膏、ゼリー、溶液または懸濁液などを利用することができる。
【0154】
特に好ましい実施形態では、非活性成分として界面活性剤、エタノール、親油性および/または両親媒性溶媒を含有する溶液が使用される。具体的には、異性体類似体と以下の非医療成分とを含有する経口複合エマルジョン調合物が使用される:d−アルファトコフェリルポリエチレングリコール1000コハク酸(d−alpha triglyceride polyethylene glycol 1000 succinate:ビタミンE TPGS)、中鎖トリグリセリド(medium chain triglyceride:MCT)油、Tween 40、およびエタノール。経口溶液として前記化合物とまさにそれらの非医療成分とを含有する(ゼラチン、グリセリド、水およびソルビトールを含む)ソフトゼラチンカプセルも、好ましく使用することができる。
【0155】
しかし、任意の個々の患者のための具体的な用量レベルは、利用する具体的な化合物の活性、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与回数、投与経路、排泄率、薬の組み合わせ、ならびに治療を受ける個々の疾病または状態の性質および重症度をはじめとする様々な要因に依存し得る。
【0156】
方法論
下で述べる反応1から18は、必要な化学特性を有する試薬を使用して、本明細書において以下、
【0157】
【化44】

【0158】
と描くCsAのアミノ酸1が修飾された所望の化合物を合成できる化学反応の一般例である。一定の反応体の置換を行うことができることは、当業者には理解されるだろう。
【0159】
調製した化合物の素性および純度を、一般に、質量分析法、HPLCおよびNMR分光分析法をはじめとする方法論によって確証した。質量スペクトル(ESI−MS)は、Hewlett Packard 1100 MDSシステムで測定した。NMRスペクトルは、Varian MercuryPlus 400MHz分光計を使用して、重水素化溶媒(ホスホニウム塩についてはDMSO、すべての他の化合物についてはベンゼン)中で測定した。分析および分取逆相HPLCは、Agilent 1100 Seriesシステムで行った。
【0160】
ホスホニウム塩化合物の合成
トリフェニルホスフィンまたは任意の他の適するホスフィンとハロゲン化アルキル(R−X;X=Cl、Br、またはI)との反応により、ホスホニウム塩を調製する。適するハロゲン化アルキルは、任意の鎖長または分子量の任意の第一級または任意の第二級脂肪族ハロゲン化物である。これらのハロゲン化アルキルは、分岐しているまたは分岐していない、飽和されているまたは不飽和である場合がある。
【0161】
前記反応をトルエン中で行うと(反応1)、生成物が反応溶液から直接沈殿する。しかし、未反応物質は、反応時間を短縮するためおよび満足のいく収率を達成するためにジメチルホルムアミド(DMF)などのより極性の高い溶媒を必要とする(反応2)。
反応1:
【0162】
【化45】

【0163】
式中、Xは、ハロゲン化物(これらに限定されるものではないが、Cl、Br、およびIを含む)であり、ならびにR10は、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、および1,3−ジオキソランから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する、飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖;ハロゲン化物、エステル、およびニトロから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する芳香族基;または上述の飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖と上述の芳香族基の組み合わせである。
【実施例1】
【0164】
404−15の合成
【0165】
【化46】

【0166】
説明例として、トリフェニルホスフィン(13mmol)を50mLトルエンに溶解し、クロロアセトン(10mmol)を添加して透明な溶液を得る。その反応物を還流させながら一晩攪拌する。無色の固体を濾別し、トルエンおよびヘキサンで洗浄し、真空下で乾燥させる。
【0167】
反応1を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0168】
【表1】

【0169】
【表2】

【0170】
あるいは、下に図示するような反応2によって適するホスホニウム塩を合成することができる:
反応2:
【0171】
【化47】

【0172】
式中、Xは、ハロゲン化物(これらに限定されるものではないが、Cl、Br、およびIを含む)であり、ならびにR10は、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、および1,3−ジオキソランから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する、飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖;ハロゲン化物、エステル、およびニトロから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する芳香族基;または上述の飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖と上述の芳香族基の組み合わせである。
【実施例2】
【0173】
404−51の合成
【0174】
【化48】

【0175】
説明例として、トリフェニルホスフィン(11mmol)を10mL DMFに溶解し、4−ブロモ酪酸(10mmol)を添加する。その反応物を110℃で7時間攪拌し、その後、一晩放置して冷却する。50mLトルエンを添加し、結晶質無色固体を濾過によって回収する。その生成物をトルエンおよびヘキサンで洗浄し、真空下で一晩乾燥させる。
【0176】
トルエンでの処理後に結晶化が起こらなかった場合、生成物を20mL MeOH/HO(1:1混合物)で抽出する。水性相をトルエンおよびヘキサンで洗浄し、乾固させる。残留物を50mL酢酸エチル(EtOAc)と共に還流温度で20〜30分間攪拌する。結晶質固体が得られた場合、その生成物を濾過によって回収し、EtOAcおよびヘキサンで洗浄し、乾固させる。生成物が油またはゴムとして得られた場合、EtOAcをデカントし、残存生成物を真空下で乾燥させる。
【0177】
反応2を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0178】
【表3】

【0179】
【表4】

【0180】
【表5】

【0181】
【表6】

【0182】
ウィッティヒ反応
ウィッティヒ反応は、広範な基質および反応体に広く適用できる。反応中に基質に導入される側鎖は、可変長(R')の任意の数の分岐および非分岐、飽和および不飽和脂肪族化合物を表すことができ、ならびに広範な官能基を含有する可能性がある。
【0183】
ウィッティヒ反応では、カリウムt−ブトキシド(KOtBu)などの塩基を使用して、ホスホニウム塩から収量を生じさせる。この収量は、基質、CsA−アルデヒドのカルボニル基と反応してアルケンを形成する。カルボン酸側鎖を含有するホスホニウム塩は、その収量を生じさせるために少なくとも2当量の塩基を必要とする。
【0184】
反応3:ウィッティヒ反応によるホスホニウム塩を使用するアセチル化シクロスポリン類似体中間体の合成
【0185】
【化49】

【0186】
式中、Xは、ハロゲン化物(これらに限定されるものではないが、Cl、Br、およびIを含む)であり、ならびにR12は、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、および1,3−ジオキソランから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する、飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖;ハロゲン化物、エステル、およびニトロから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する芳香族基;または上述の飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖と上述の芳香族基の組み合わせである。
【実施例3】
【0187】
ウィッティヒ反応によるホスホニウム塩化合物を使用する化合物404−20の合成
【0188】
【化50】

【0189】
説明例として、オーブン乾燥させた250mLフラスコにアルゴン雰囲気下で臭化トリフェニルブチルホスホニウム(6.0mmol)および40mL無水テトラヒドロフラン(THF)を投入する。その懸濁液を0℃に冷却し、カリウムt−ブトキシド(6.0mmol)を添加してオレンジ色を得る。その反応物を周囲温度で1〜2時間攪拌し、その後、CsA−アルデヒド(20mL無水THFに溶解した、2.0mmol)を添加する。3時間、室温で攪拌を継続する。10mL飽和NHClおよび20mL氷水で反応を停止させる。層を分離し、水性相をEtOAcで抽出する。有機層を組み合わせ、ブラインで洗浄し、NaSOで乾燥させる。溶媒を除去し、その粗製生物をシリカゲル(ヘキサン/アセトン 3:1)で精製する。
【0190】
反応3を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0191】
【表7】

【0192】
【表8】

【0193】
【表9】

【0194】
【表10】

【0195】
【表11】

【0196】
脱アセチル化
反応4:アセチル化シクロスポリン類似体の脱アセチル化
【0197】
【化51】

【0198】
式中、R12は、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、アミド、アシル保護アミン、および1,3−ジオキサンから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する、飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖;ハロゲン化物、エステル、アミン、およびニトロから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する芳香族基;または前述の飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖と前述の芳香族基の組み合わせである。
【実施例4】
【0199】
脱アセチル化による化合物404−90の合成
【0200】
【化52】

【0201】
説明例として、10mL MeOH中の404−20(0.16mmol)の溶液を2mL HO中のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド五水和物(0.47mmol)の溶液と組み合わせる。その混合物を室温で2日間攪拌する。その反応物を真空下で濃縮し、5mL HOを添加する。その反応物をEtOAcで抽出し、抽出物をブランで洗浄し、NaSOで脱水し、濃縮乾固させる。その粗製生物を逆相分取HPLCによって精製する。
【0202】
脱アセチル化化合物の生成は、一般に、シリカゲル(ヘキサン/アセトン 2:1)を用いてまたは分取HPLCによって行う。化合物404−60、404−137、416−08、420−98、および420−100(カルボン酸)の場合、抽出前に反応物を1M HClでpH2〜3に酸性化する。
【0203】
反応4を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0204】
【表12】

【0205】
【表13】

【0206】
【表14】

【0207】
【表15】

【0208】
【表16】

【0209】
【表17】

【0210】
二重結合の水素化
大気圧下で二重結合を水素化して飽和側鎖を得ることができる。ヒドロキシル、カルボニル、およびカルボキシルなどの官能基は、これらの条件下で安定しており、保護を必要としない。R'は、アセチル基または水素のいずれかを表す。α,β−不飽和カルボニル化合物の場合、活性化された二重結合への遊離ヒドロキシ基の求核付加による環化を避けるために、脱アセチル化前に二重結合を還元しなければならない。
反応5:
【0211】
【化53】

【0212】
式中、R12は、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、アミド、アシル保護アミン、および1,3−ジオキサンから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する、飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖;ハロゲン化物、エステル、アミン、およびニトロから成る群から選択される置換基を任意選択で含有する芳香族基;または前述の飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖と前述の芳香族基の組み合わせであり、ならびにR'は、Hまたはアセチル基のいずれかである。
【実施例5】
【0213】
404−56の合成:
【0214】
【化54】

【0215】
説明例として、404−03(0.34mmol)を40mL無水EtOHに溶解し、43mg Pd/C(10%)および0.2mL酢酸を添加する。その混合物を水素下、大気圧で2日間攪拌する。反応物をCeliteに通して濾過し、真空下で濃縮する。その粗製生物を分取HPLCによって精製する。
【0216】
反応5を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0217】
【表18】

【0218】
【表19】

【0219】
【表20】

【0220】
ニトリル基の還元
水素化ホウ素ナトリウム(NaBH)および塩化ニッケル(II)(NiCl)からインサイチューで生成される臭化ニッケルを用いて、ニトリル基の対応する第一アミンへの還元を達成することができる。適する捕捉試薬の添加は、アシル保護第一アミン(それぞれ、カルバミン酸塩またはアミド)をもたらし、第二アミンの形成を望ましくない副反応として防止する。所与の条件下で二重結合を部分的に還元し、生成物の混合物を得る。飽和保護アミン化合物と不飽和保護アミン化合物の両方を単離し、精製する。反応420−123については、その混合物を分離しなかった。その代りにその混合物を接触水素化に付して完全飽和化合物を生じさせた。
反応6:
【0221】
【化55】

【0222】
アシルが、BOC、アセチル、またはブチリルのうちのいずれか1つである場合、アシル化剤は、二炭酸ジ−t−ブチル、無水酢酸、および無水酪酸酸のうちのいずれか1つであり、ならびにR1は、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族基である。上で説明したアシル化剤の代わりに広範なアシル化剤を代用して同様に広範なアシル保護アミンを生成できることは、当業者には理解されるだろう。
【実施例6】
【0223】
420−08の合成
【0224】
【化56】

【0225】
説明例として、404−187(0.257mmol)を15mLメタノールに溶解し、0℃に冷却する。二炭酸ジ−t−ブチル(0.514mmol)および塩化ニッケル(II)(0.025mmol)を添加して透明な溶液を得る。水素化ホウ素ナトリウム(3.85mmol)を1時間にわたって少しずつ添加する。得られた混合物を周囲温度で一晩攪拌する。追加の水素化ホウ素ナトリウム(1.95mmol)を0℃で添加し、3時間、室温で攪拌を継続する。HPLCは、420−08−1(カルバミン酸塩化合物)と420−08−2(二重結合が還元されたカルバミン酸塩化合物)の混合物を示す。その反応物をジエチレントリアミン(0.257mmol)と共に30分間攪拌し、その後、真空下で濃縮する。残留物を75mL EtOAcに溶かし、20mL飽和NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで脱水する。溶媒を真空下で除去する。その粗製生物を分取HPLCによって精製する。
【0226】
反応6を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0227】
【表21】

【0228】
【表22】

【0229】
アミン脱保護
トリフルオロ酢酸(TFA)を使用する酸水解により、BOC保護アミン(カルバミン酸塩)を遊離アミンに転化させることができる。
反応7:
【0230】
【化57】

【0231】
式中、R1は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖であり、およびR'は、Hまたはアセチル基のいずれかである。
【実施例7】
【0232】
420−23の合成
【0233】
【化58】

【0234】
説明例として、420−17(0.026mmol)を4mL無水DCMに溶解し、2mLトリフルオロ酢酸を0℃で添加する。その反応物を室温で3時間攪拌する。20mLジクロロメタンを添加する。その反応混合物をHOおよび飽和NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで脱水する。溶媒を除去し、その粗製生物を分取HPLCによって精製する。
【0235】
反応7を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0236】
【表23】

【0237】
アミノ基の保護
確立した方法を用いて広範な保護基を使用して遊離アミノ官能基を保護することができる。ニトリルから出発する還元的導入と比べると、広範な保護剤を利用できる。合せて、反応7および8は、アシル保護アミノ化合物の調製のための反応6の代替経路を提供する。
反応8:
【0238】
【化59】

【0239】
アシルが、BOC、アセチル、またはブチリルのうちのいずれか1つである場合、アシル化剤は、二炭酸ジ−t−ブチル、無水酢酸、および無水酪酸のうちのいずれか1つである。二炭酸塩、無水物、およびハロゲン化アシルをはじめとする広範なアシル化剤を利用して広範なアシル保護アミンを生じさせることができること、ならびにR1が、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族基であることは、当業者には理解されるだろう。
【実施例8】
【0240】
420−27の合成
【0241】
【化60】

【0242】
説明例として、420−25(0.039mmol)を窒素下で3mL無水ピリジンに溶解する。その反応物を0℃に冷却し、無水酢酸(0.59mmol)を添加する。その混合物を周囲温度で一晩攪拌する。溶媒を真空下で除去し、残留物を25mL EtOAcに溶かす。その反応物を2×10mL 1M HCl、2×10mL飽和NaHCO溶液、および10mLブラインで洗浄し、NaSOで脱水する。溶媒を真空下で除去して、生成物を無色の固体として得る。
【0243】
アルデヒドの脱保護
1,3−ジオキソラン部分を酸水解によりアルデヒド官能基に転化させる。
【実施例9】
【0244】
反応9および実施例9:404−47の合成
【0245】
【化61】

【0246】
説明例として、20mLギ酸中の404−33(0.246mmol)の溶液を室温で45分間攪拌する。100mL氷水および200mL飽和NaHCO溶液をその反応物にゆっくりと添加する(強い泡立ち)。反応物を2×150mL EtOAcで抽出する。組み合わせた抽出物を飽和NaHCO溶液、水、およびブラインで洗浄し、NaSOで脱水する。溶媒を除去し、生成物を真空下で乾燥させる。
【0247】
ニトロ基の還元
芳香族ニトロ化合物を接触水素化によってアニリンに還元する。この反応は、二重結合の還元をもたらす。
【実施例10】
【0248】
反応10および実施例10:404−120の合成
【0249】
【化62】

【0250】
説明例として、404−89(0.13mmol)を2mLエタノールに溶解し、ラネーニッケル(0.18g、HO中50%;エタノールで3回洗浄し、その後、2mLエタノールに懸濁させたもの)および0.1mL酢酸を添加する。その反応物を室温で2日間攪拌する。反応物をCeliteに通して濾過し、そのフィルターケーキをメタノールで洗浄する。その濾液を乾固させる。残留物をEtOAcに溶かし、NaHCO溶液およびブラインで洗浄し、NaSOで脱水する。溶媒を真空下で除去する。その粗製生物をシリカゲル(ヘキサン/アセトン2:1)で精製する。
【0251】
アミド合成
アミンと対応する酸塩化物の反応によってカルボン酸からアミドを調製する(反応11)。この合成は、DCCおよびHOBtなどの適切なカップリング試薬の使用により、酸から直接進行し得る(反応12)。
反応11:
【0252】
【化63】

【0253】
R1が、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である場合、R15およびR16は、独立して、水素または飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖であり、あるいはNR15R16は一緒に、モルホリニル部分を形成する。
【実施例11】
【0254】
404−85の合成
【0255】
【化64】

【0256】
説明例として、365−73(0.04mmol)および塩化チオニル(68mmol)を窒素雰囲気下で組み合わせ、加熱して2時間還流させる。その反応物を放置して冷却し、濃縮乾固させる。20mLトルエンを添加し、反応物を再び濃縮乾固させる(2回)。残留物を5mL無水トルエンに溶かし、ジエチルアミン(0.48mmol)を添加する。その反応物を室温で一晩攪拌する。5mL HOを添加し、その混合物を20mL EtOAcで抽出する。抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで脱水する。溶媒を真空下で除去し、その粗製生物をシリカゲル(ヘキサン/アセトン3:1)で精製する。
【0257】
反応11を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0258】
【表24】

【0259】
反応12:
【0260】
【化65】

【0261】
R1が、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である場合、R15およびR16は、独立して、水素または飽和若しくは不飽和、直線状若しくは分岐脂肪族鎖であり、あるいはNR15R16は一緒に、モルホリニル部分を形成する。
【実施例12】
【0262】
420−104の合成
【0263】
【化66】

【0264】
説明例として、420−98(0.078mmol)を窒素雰囲気下で10mL無水DCMに溶解する。ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.117mmol)および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物(HOBt、0.078mmol)を0℃で添加し、その混合物を15分間攪拌する。ジメチルアミン(0.78mmol)を添加して透明無色の溶液を得る。15分後、冷却浴を取り外し、周囲温度で5日間、攪拌を継続する。その反応物を分液漏斗に移し、20mL DCMおよび10mL 0.5M HClを添加する。有機層を除去し、NaSOで脱水し、濃縮乾固させる。残留物を10mLアセトニトリルに溶かす。溶解しない固体を濾別し、濾液を真空下で濃縮する。その粗製生物を分取HPLCによって精製する。
【0265】
反応12を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0266】
【表25】

【0267】
【表26】

【0268】
エステル化
酸性触媒(反応13)またはカップリング試薬(DCCおよびDMAP、反応14)いずれかを使用して、カルボン酸エステルを対応するカルボン酸およびアルコールから調製する。
反応13:
【0269】
【化67】

【0270】
式中、R1は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖であり、およびR17は、ハロゲンまたはヒドロキシル置換基を任意選択で含有する、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である。
【実施例13】
【0271】
404−171の合成
【0272】
【化68】

【0273】
説明例として、404−60(0.059mmol)と4mL EtOHと2μL濃HSOとの混合物を加熱して4時間還流させる。溶媒を蒸発させ、残留物をアセトニトリルに溶かす。その粗製生物を分取HPLCによって精製する。
【0274】
反応13を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0275】
【表27】

【0276】
反応14:
【0277】
【化69】

【0278】
式中、R1は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖であり、およびR17は、ハロゲンまたはヒドロキシル置換基を任意選択で含有する、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である。
【実施例14】
【0279】
420−24の合成
【0280】
【化70】

【0281】
説明例として、404−60(0.053mmol)を4mL無水DCMに溶解し、窒素雰囲気下で0℃に冷却する。ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.005mmol)、2−フルオロプロパノール(0.27mmol)およびジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.058mmol)を添加し、その反応物を15分間、0℃で攪拌する。冷却浴を取り外し、一晩、周囲温度で攪拌を継続する。20mL DCMを添加し、その後、その反応物をHOで洗浄し、蒸発乾固させる。残留物を10mLアセトニトリルに溶かし、濾過する。濾液を真空下で濃縮する。その粗製生物を分取HPLCによって精製する。
【0282】
アルコール
ウィッティヒ反応での直接合成に加えて、アルコールは、多数の反応によって得られる。水素化ホウ素ナトリウムでのカルボニル基の還元は、(アルデヒドから出発すると)第一アルコールまたは(ケトンから出発すると)第二アルコールをそれぞれもたらす。
【0283】
ヒドロホウ素化法による二重結合の酸化は、異性体の混合物をもたらすことが可能である。この反応は、主として、反マルコフニコフ配向で進行する。末端オレフィンの場合、第一アルコールが主生成物である。過酸化水素での酸化によってオレフィンをジオールに転化させることができる。カルボニル化合物とグリニャール試薬の反応は、(アルデヒドから出発すると)第二アルコールおよび(ケトンから出発すると)第三アルコールをもたらす。この方法により、炭素鎖を伸長することができる。
反応15:
【0284】
【化71】

【0285】
式中、R'は、Hまたはアセチルであり、R1は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖であり、およびR20は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である。
【実施例15】
【0286】
404−98の合成
【0287】
【化72】

【0288】
説明例として、404−61(0.0365mmol)を窒素雰囲気下で4.5mL無水EtOHに溶解する。水素化ホウ素ナトリウム(0.5mL無水EtOHに懸濁させたもの、0.15mmol)を0℃で添加し、得られた混合物を周囲温度で一晩攪拌する。追加の水素化ホウ素ナトリウム(0.08mmol)を添加し、一晩、攪拌を継続する。氷浴で冷却しながら5mL 1M HClで反応を停止させ、EtOAcで抽出する。抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで脱水し、濃縮乾固させる。その粗製生物を分取HPLCによって精製する。
【0289】
反応15を用いるとき、以下の化合物が、合成できる化合物のさらなる例である。
【0290】
【表28】

【0291】
反応16:
【0292】
【化73】

【0293】
式中R1は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である。
【実施例16】
【0294】
420−28−1の合成
【0295】
【化74】

【0296】
説明例として、404−16(0.18mmol)を窒素雰囲気下、4mL無水THFに溶解する。その反応物を0℃に冷却し、BH・THF(THF中1Mの溶液、0.06mmol)を添加する。その反応物を室温で一晩攪拌する。HPLCは、反応が完了していないことを示す。追加のBH・THF(0.5mmol)を添加し、攪拌を4時間、室温で継続する。反応物を0℃に冷却し、1.0mL 1M NaOHおよび0.30mL 30%過酸化水素溶液を添加する。その混合物を室温で一晩攪拌する。その反応物を25mL EtOAcで抽出する。抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで脱水し、濃縮乾固させる。その生成物を分取HPLCによって精製する。
反応17:
【0297】
【化75】

【0298】

式中、R1は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖であり、R'は、Hまたはアセチル基のいずれかである。
【実施例17】
【0299】
420−49の合成
【0300】
【化76】

【0301】
説明例として、420−49(0.037mmol)をアルゴン雰囲気下で5mL無水THFに溶解する。その反応物を−70℃に冷却し、塩化アリルマグネシウム(THF中1Mの溶液、0.22mmol)を添加する。反応物を15分間、−70℃で攪拌し、その後、放置して室温にする。90分後、飽和NHCl溶液で反応を停止させる。その反応物を25mL EtOAcで抽出する。抽出物をブラインで洗浄し、NaSOで脱水し、濃縮乾固させる。その生成物を分取HPLCによって精製する。アセチル化化合物と脱アセチル化化合物の混合物を得る。
反応18:
【0302】
【化77】

【0303】
式中、R1は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖であり、およびR23は、飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である。
【実施例18】
【0304】
404−126の合成
【0305】
【化78】

【0306】
説明例として、404−16(0.054mmol)を1mLギ酸に溶解し、過酸化水素(30%水溶液、0.52mmol)を添加する。その反応物を室温で一晩攪拌し、その後、濃縮乾固させる。残留物を25mL EtOAcに溶解し、飽和NaHCO溶液で洗浄し、NaSOで脱水する。溶媒を真空下で除去する。その反応物を9mL THFおよび3mL 1M NaOHに溶かし、4時間、室温で攪拌する。溶媒を除去し、残留物を25mL EtOAcと5mL HOとで分配する。有機層をブラインで洗浄し、NaSOで脱水する。溶媒を蒸発させ、その粗製生物を分取HPLCによって精製する。
【実施例19】
【0307】
免疫抑制およびシクロフィリンイソメラーゼ阻害
免疫抑制効力
試験化合物の免疫抑制効力を、細胞培養でヒトリンパ球の増殖を阻害するそれらの能力を測定することによって評定した。フィコール密度勾配遠心分離法によって正常ヒトボランティアの血液からリンパ球を単離し、2μg/mL カルボキシフルオロセインジ(carboxyfluoroscein)アセテート・スクシンイミジルエステル(CFSE)、蛍光細胞分裂トレーサー分子、で染色した。1μg/mL UCHT−1抗ヒトCD3抗体をコーティングした96ウエル平底高結合プレートに細胞を300,000/ウエルで播種することにより、細胞をCD3/T細胞受容体によって刺激した。試験化合物を、先ず、ジメチルスルホキシド(DMSO)中の10mg/mL保存溶液として調製した。化合物1つにつき合計7つの濃度のために、細胞培養基(RPMI+5%FBS+ペニシリン−ストレプトマイシン)でのそのDMSO保存溶液の500倍希釈、その後、3倍系列希釈により、試験溶液を調製した。細胞が入っている培養ウエルに試験溶液を等量で添加して、13.7ng/mL〜10,000ng/mLの希釈後最終濃度を得た。基準化合物、CsA、を同様に、しかし1.37〜1,000ng/mLにわたる濃度で調製した。いずれの実験でも、CsAを、それぞれの実験についての品質対照標準としておよび試験化合物に対する基準対照としてアッセイした。3日インキュベーション後、細胞をCD95−APC(リンパ球活性化マーカー)で染色し、Becton Dickinson FACSCaliburでのフローサイトメトリーによって分析した。CFSE強度の系列半減によって判定して1若しくはそれ以上の細胞分裂を受けた細胞の割合を測定することにより、前方/側方散乱ゲートリンパ球において細胞分裂百分率を評定した。抗CD3刺激なしの培養で維持したサンプルから非分裂親集団を決定した。細胞分裂の阻害についてのIC50値を非線形回帰分析によって決定した。試験化合物のIC50値をCsAに正規化することにより、相対効力を計算した。加えて、ビヒクル対照標準と比較して細胞表面CD95発現の減少を測定することにより、免疫抑制効力を分析した。
【0308】
シクロフィリンD阻害アッセイ
ミトコンドリア膨潤アッセイを用いて、CyP−Dのブロッキングおよびミトコンドリア透過性遷移に関するNICAMsの有効度を測定した。一定の病的状態では、ミトコンドリアは、カルシウムレベルを調節する能力を喪失し、ミトコンドリアマトリックス内の過剰なカルシウム蓄積がミトコンドリア内膜に大きな孔を開ける結果となる。その孔を通る1.5キロダルトン以下のイオンおよび分子の非選択的コンダクタンス、ミトコンドリア膜透過性遷移と呼ばれるプロセスは、ミトコンドリアの膨潤、および結果的に細胞死となる他の事象をもたらす。そのミトコンドリア膜透過性遷移孔(mitochondrial permeability transition pore:MPTP)の構成要素の1つがCyP−Dである。CyP−Dは、イムノフィリン分子であって、そのイソメラーゼ活性がMPTPの開口を調節するものである分子であり、CsAまたはCsA類似体によるそのイソメラーゼ活性の阻害は、MPTPの生成を阻害する。一般に、ラット肝臓から単離されたミトコンドリアを試験化合物の不在または存在下でカルシウムに暴露してMPTP開口を誘導し、540nmでの吸光度の減少としてカルシウム誘導膨潤を測定した。
【0309】
新鮮なラット肝臓からミトコンドリアを単離した。すべての単離工程を通して氷冷または4℃条件を用いた。少量の単離緩衝液(isolation buffer:IB;10mM Hepes、70mMスクロース、210mMマンニトール、0.5mM EDTA)中で肝臓を入念にすすいで刻んだ。その細断された肝臓のアリコートを、テフロン(登録商標)−ガラスPotter−Elvehjem組織粉砕機を使用してIB中で均質化し、細胞スクリーンフィルターに通した。濾過された均質化物を600gで10分間、遠心分離し、その後、得られた上清を7000gで10分間、遠心分離した。その上清をデカントし、そのペレットを洗浄緩衝液(10mM Hepes、70mMスクロース、210mMマンニトール)に再び懸濁させ、最後に7000gで10分間、遠心分離した。その上清をデカントし、そのミトコンドリア含有ペレットを2mLの呼吸緩衝液(respiration buffer:RB;5mM Hepes、70mMスクロース、210mMマンニトール、10mMコハク酸ナトリウム、1mM二塩基性リン酸ナトリウム)に懸濁させて氷の上で保管した。
【0310】
先ず試験化合物を呼吸緩衝液#2(respiration buffer #2:RB2;5mM Hepes、70mMスクロース、210mMマンニトール、10mMコハク酸ナトリウム、1mM二塩基性リン酸ナトリウム、1%ウシ胎仔血清、2μMロテノン)で1000倍希釈し、その後、RB2で3倍希釈して10000、3333、1111、370、123、41、および14ng/mLの試験化合物濃度を達成することにより、10mg/mLのストック(ジメチルスルホキシドビヒクル)から試験化合物溶液を調製した。すべての調製にポリスチレン管およびプレートを使用した。
【0311】
96ウエル平底ポリスチレンプレートで膨潤アッセイを完了した。それぞれのウエルにおいて、合計100〜200μgのタンパク質と等価の10μLのミトコンドリア懸濁液アリコートを90μLの試験化合物と組み合わせ、10分間インキュベートし、その後、プレートリーダーでベースライン吸光度を測定した(540nm波長;A540)。190μmの最終カルシウム濃度を達成するように5μLの4mM塩化カルシウムを添加することにより、膨潤を誘導した。A540の低下は、ミトコンドリア膨潤を示した。カルシウム添加直後、および20分まで時折、A540を測定し、20分のときにはA540のさらなる減少は観察されなかった。二重反復試験サンプルをそれぞれの試験化合物濃度についてアッセイした。
【0312】
図1は、CsAの不在または存在下での塩化カルシウム添加後のミトコンドリア吸光度の時間経過を示すものである。カルシウムによって誘導されるA540の低下の阻止によって示されるように、CsAは、濃度依存的にミトコンドリア膨潤を阻害した。二重反復試験サンプルの平均値および範囲を示す。
【0313】
【表29】

【0314】
【表30】

【0315】
【表31】

【0316】
【表32】

【0317】
【表33】

【0318】
表1は、上記反応1〜18を用いて合成可能な代表化合物である多数の同定されたNICAMSを示すものである。NICAMは、CsAよりも10%より小さい免疫抑制効力を提示し、同時にCsAよりも5%より大きなCyP結合を保持する。多くの場合、NICAMのCyP結合は、CsAより50%大きく、NICAMの免疫抑制能はCsAの免疫抑制能と比較してその5%より小さい値まで下がる。
【0319】
本発明の様々な実施形態および観点を説明したものである「発明を実施するための形態」により本発明を説明したが、本発明の全範囲が本明細書に提示する実施例に限定されないことは、当業者にはわかるであろう。本発明は、添付の特許請求の範囲に示すものと等価であることがわかるだろう任意の要素または態様を含む、本特許明細書の特許請求の範囲に対応する範囲を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物であって、
【化79】

式中、
a.R'は、Hまたはアセチルであり;
b.R1は、炭素原子数2から15の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;ならびに
c.R2は、
i.H;
ii.不飽和、N−置換、またはN,N−二置換アミド;
iii.N−置換または非置換アシル保護アミン;
iv.カルボン酸;
v.N−置換または非置換アミン;
vi.ニトリル;
vii.エステル;
viii.ケトン;
ix.ヒドロキシ、ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、またはポリヒドロキシアルキル;および
x.置換または非置換アリール
から成る群から選択される、化合物。
【請求項2】
式IIの化合物であって、
【化80】

式中、
a.R'は、Hまたはアセチルであり;
b.R1は、炭素原子数2から15の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;ならびに
c.R3は、
i.水素、ケトン、ヒドロキシル、ニトリル、カルボン酸、エステル、および1,3−ジオキサンから成る群から選択される置換基を含有する飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖;
ii.ハロゲン化物、エステル、およびニトロから成る群から選択される置換基を含有する芳香族基;ならびに
iii.(i)の飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖と(ii)の芳香族基との組み合わせ
から成る群から選択される、化合物。
【請求項3】
請求項1記載の化合物において、R2は、
【化81】

【化82】

(式中、
i.R5は、炭素数1と10の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;および
ii.R6は、炭素数1と10の間の長さのモノヒドロキシル化、ジヒドロキシル化、トリヒドロキシル化、またはポリヒドロキシル化飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である)
から成る群から選択されるものである、化合物。
【請求項4】
式IVの化合物であって、
【化83】

式中、
I.R'は、Hまたはアセチルであり;ならびに
II.R7は、
【化84】

【化85】

【化86】

【化87】

【化88】

【化89】

から成る群から選択される、化合物。
【請求項5】
式Iの化合物を製造する方法であって、
【化90】

式中、R1およびR2は、請求項1において定義したものであり、
a.式IXのアミノ酸1が修飾されたアセチルCsAアルデヒドを
【化91】

塩基の存在下で式VIIIのホスホニウム塩、
【化92】

(式中、R13は、炭素原子数1から14の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である)
と反応させて、式Xのアセチル化化合物
【化93】

を製造する工程と、
b.塩基を使用して式Xの化合物を脱アセチル化する工程と、
c.R1が飽和されている場合には、前記化合物と水素化剤とを反応させることによって式Xの化合物の二重結合を水素化して、式Iの飽和類似体を製造する工程と
を有する、方法。
【請求項6】
請求項5記載の方法において、R2は、以下の
【化94】

【化95】

(これらの式中、
i.R5は、炭素数1と10の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり、さらに
ii.R6は、炭素数1と10の間の長さのモノヒドロキシル化、ジヒドロキシル化、トリヒドロキシル化、またはポリヒドロキシル化飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である)
から成る群から選択されるものである、方法。
【請求項7】
式XIVの化合物を製造する方法であって、
【化96】

a.式XVの化合物
【化97】

を還元剤およびアシル化剤の存在下で反応させて、式XVIのアセチル化化合物
【化98】

を製造する工程と、
b.塩基を使用して式XVIの化合物を脱アセチル化する工程と
を有し、
式XIV、XV、およびXVIのR1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である、方法。
【請求項8】
式XXIの化合物を製造する方法であって、
【化99】

a.式XXの化合物を無水溶媒に溶解する工程と、
【化100】

b.前記溶液をトリフルオロ酢酸(TFA)と反応させる工程と
を有し、
式XXおよびXXIのR1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和、直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である、方法。
【請求項9】
式XIVの化合物を製造する方法であって、
【化101】

a.式XXIの化合物を無水ピリジンに溶解する工程と、
【化102】

b.前記溶液をアシル化剤と反応させる工程と、
c.前記溶剤を除去して、式XIVの化合物を生じさせる工程と
を有し、
式XIVおよびXXIのR1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である、方法。
【請求項10】
式XXIVの化合物を製造する方法であって、
【化103】

(式中、
I.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族炭素鎖であり;ならびに
II.R15およびR16は、独立して、水素または飽和若しくは不飽和直鎖若しくは分岐脂肪族基であり;あるいはNR15R16は一緒に、モルホリニル部分を形成する)
a.式XXVの化合物を塩化チオニルと混合し、
【化104】

式XXVIの残基を得る工程と、
【化105】

b.前記残基を無水溶媒に溶解し、式XXVIIの化合物と反応させて、
【化106】

式XXVIIIの化合物を得る工程と、
【化107】

c.式XXIVの化合物を塩基で脱アシル化する工程と
を有する方法。
【請求項11】
式XXIVの化合物を製造する方法であって、
【化108】

(式中、
I.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;
II.R15およびR16は、独立して、水素または飽和若しくは不飽和直鎖若しくは分岐脂肪族基であり;あるいはNR15R16は一緒に、モルホリニル部分を形成する)
a.式XXVの化合物を窒素下で無水溶媒に溶解する工程と、
【化109】

b.ジシクロヘキシルカルボジイミド(dicyclohexylcarvodiimide)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物および式XVIIIの化合物と反応させる工程と、
【化110】

c.式XVIIIの化合物を塩基で脱アセチル化する工程と
を有する方法。
【請求項12】
式XXXIIの化合物を製造する方法であって、
【化111】

(式中、
I.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;および
II.R17は、ハロゲンまたはヒドロキシル置換基を任意選択で含有する、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族基である)
式XXXの化合物を酸の存在下、
【化112】

式XXXIの化合物と反応させる工程
【化113】

によるものである、方法。
【請求項13】
式XXVIの化合物を製造するプロセスであって、
【化114】

(式中、
I.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;および
II.R20は、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族基である)
式XXXVの化合物を水素化ホウ素ナトリウムと反応させる工程と、
【化115】

(式中、R'は、任意選択でHまたはアセチルである)
R'がアセチルである場合には、式XXXVの化合物を塩基で脱アセチル化する工程と
によるものである、方法。
【請求項14】
式XXIXの化合物を製造する方法であって、
【化116】

(式中、R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖である)
式XXVIIIの化合物をボラン−テトラヒドロフランおよび過酸化ナトリウムと反応させる工程
【化117】

によるものである、方法。
【請求項15】
式XLIIIの化合物を製造する方法であって、
【化118】

(式中、
I.R'は、Hまたはアセチルであり;および
II.R1は、炭素数2と15の間の長さの飽和または不飽和、直線状または分岐脂肪族鎖である)
式XLIの化合物を無水溶媒中、
【化119】

式XLIIの化合物と反応させる工程と、
【化120】

式XLIIの化合物を塩基で脱アセチル化する工程と
を有する、方法。
【請求項16】
式XLVIの化合物を製造する方法であって、
【化121】

(式中、
I.R1は、炭素数2から15の長さの飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族炭素鎖であり;および
II.R23は、飽和または不飽和直鎖または分岐脂肪族基である)
a.式XLVの化合物を過酸化水素およびギ酸と反応させる工程と、
【化122】

b.前記生成物と塩基を反応させて、式XLVIの化合物を生じさせる工程と、
c.式XLVの化合物を塩基で脱アセチル化する工程と
を有する、方法。
【請求項17】
医薬組成物であって、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物の治療的有効量と、1若しくはそれ以上の医薬賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項18】
哺乳動物におけるシクロフィリン介在性疾患を治療する方法であって、前記シクロフィリン媒介疾患または傷害を治療するための条件下で、前記哺乳動物に、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物の治療的有効量を投与する工程を含む方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記疾患は、シクロフィリンの過剰発現を介在するものである、方法。
【請求項20】
請求項19記載の方法において、前記疾患は、シクロフィリンの先天性過剰発現である、方法。
【請求項21】
請求項18記載の方法において、前記シクロフィリン介在性疾患は、
a.ウイルス感染症、
b.炎症性疾患、
c.癌、
d.筋肉変性障害、
e.神経変性障害、および
f.細胞内カルシウム恒常性の喪失に関連した傷害
から成る群から選択されるものである、方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記ウイルス感染症は、ヒト免疫不全ウイルス、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、およびE型肝炎から成る群から選択されるウイルスによって引き起こされるものである、方法。
【請求項23】
請求項21記載の方法において、前記炎症性疾患は、喘息、自己免疫疾患、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏性疾患、炎症性腸疾患、敗血症、血管平滑筋細胞疾患、動脈瘤、骨盤内感染症、再灌流傷害、関節リウマチ、移植拒絶反応、および脈管炎から成る群から選択されるものである、方法。
【請求項24】
請求項21記載の方法において、癌は、小および非小細胞肺癌、膀胱癌、肝細胞癌、膵臓癌、および乳癌から成る群から選択されるものである。
【請求項25】
請求項21記載の方法において、前記筋肉変性障害は、心筋再灌流傷害、筋ジストロフィー、およびVI型コラーゲンミオパチーから成る群から選択されるものである、方法。
【請求項26】
請求項21記載の方法において、前記神経変性障害は、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多系統委縮症、多発性硬化症、脳性麻痺、発作、糖尿病性神経障害、筋委縮性側索硬化症(ルー・ゲーリッグ病)、脊髄損傷、および脳損傷から成る群から選択されるものである、方法。
【請求項27】
請求項21記載の方法において、前記細胞内カルシウム恒常性の喪失に関連した傷害は、心筋梗塞、発作、急性肝毒性、胆汁うっ滞、および移植臓器の保存/再灌流傷害から成る群から選択されるものである、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−529451(P2011−529451A)
【公表日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520288(P2011−520288)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000917
【国際公開番号】WO2010/012073
【国際公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(511026692)アイソテクニカ ファーマ インク. (1)
【Fターム(参考)】