説明

非対称中空糸ガス分離膜、ガス分離方法、及びガス分離膜モジュール

【課題】 特定の反復単位からなるポリイミドによって形成された非対称中空糸ガス分離膜でありながら、分離性能を大幅に低下させることなく、機械的強度を改善した非対称中空糸ガス分離膜を提供すること、更に前記非対称中空糸ガス分離膜を用いて酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスから選択的に酸素ガスを透過させてガス分離を行うガス分離方法を提供すること。
【解決手段】 特定の反復単位を有するポリイミドによって形成された非対称中空糸ガス分離膜であって、中空糸膜としての引張り破断伸度が15%以上に改良され、更に、50℃で測定した酸素ガスの透過速度(P’O2)が4.0×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg以上且つ窒素ガスの透過速度に対する酸素ガスの透過速度の比(P’O2/P’N2)が4以上の非対称中空糸ガス分離膜、および前記非対称中空糸ガス分離膜を用いたガス分離方法、ガス分離膜モジュールに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミンとからなるポリイミドによって形成され、優れたガス分離性能と共に改良された機械的強度を併せ持った非対称中空糸ガス分離膜に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2には、特定の芳香族テトラカルボン酸成分と芳香族ジアミンとからなるポリイミドによって形成され、窒素ガスの透過速度に対する酸素ガスの透過速度の比が良好な非対称中空糸ガス分離膜が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平03−267130号
【特許文献2】特開平06−254367号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1及び特許文献2の非対称中空糸ガス分離膜は、前述のとおり窒素ガスの透過速度に対する酸素ガスの透過速度の比(分離度)が良好であるなど、ガス分離性能は良好であったが中空糸膜としての機械的強度については改善の余地があった。本発明の目的は、特許文献1及び特許文献2に記載の反復単位からなるポリイミドと類似のポリイミドによって形成された非対称中空糸ガス分離膜でありながら、分離性能を大幅に低下させることなく、機械的強度を改善した非対称中空糸ガス分離膜を提供すること、更に前記非対称中空糸ガス分離膜を用いて酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスから選択的に酸素ガスを透過させてガス分離を行うガス分離方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、実質的に下記一般式(1)
【0006】
【化1】

[但し、一般式(1)中のAは、その20〜80モル%が式(2)
【0007】
【化2】

で示されるビフェニル構造に基く4価のユニットで、20〜80モル%が式(3)
【0008】
【化3】

で示されるジフェニルヘキサフルオロプロパン構造に基づく4価のユニットで、0〜30モル%が式(4)
【0009】
【化4】

で示されるフェニル構造に基づく4価のユニットで、一般式(1)中のRは、その30〜70モル%が式(5)又は/及び式(6)
【0010】
【化5】

(式中、R1及びR2は水素原子または有機基であり、nは0、1又は2である。)
【0011】
【化6】

(式中、R1及びR2は水素原子または有機基であり、Xは−CH−又は−CO−である。)
で示される2価のユニットで、30〜70モル%が式(7)
【0012】
【化7】

(式中、Yは塩素原子又は臭素原子であり、nは1〜3である。)
で示されるビフェニル構造に基づく2価のユニットである。]からなる反復単位を有するポリイミドによって形成された非対称中空糸ガス分離膜であって、中空糸膜としての引張り破断伸度が15%以上に改良された非対称中空糸ガス分離膜に関し、好ましくは、50℃で測定した酸素ガスの透過速度(P’O2)が4.0×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg以上且つ窒素ガスの透過速度に対する酸素ガスの透過速度の比(P’O2/P’N2)が4以上であることを特徴とする前記非対称中空糸ガス分離膜に関する。
【0013】
また、本発明は、前記非対称中空糸ガス分離膜の供給側に、酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスを接触させ、前記非対称中空糸ガス分離膜の透過側へ酸素ガスを選択的に透過させることによって、酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスから、酸素ガスが富化した混合ガスと窒素ガスが富化した混合ガスとを分離回収することを特徴とするガス分離方法に関し、特に、非対称中空糸ガス分離膜の内側を供給側とし、非対称中空糸ガス分離膜の外側を透過側とすることを特徴とする前記ガス分離方法に関する。
【0014】
また、本発明は、前記非対称中空糸ガス分離膜の多数本を束ねた中空糸束と、前記中空糸束の少なくとも一方の端部において各中空糸膜を開口させた状態で包埋して固着した管板とを必須とした中空糸エレメントを、混合ガス供給口、非透過ガス排出口、及び透過ガス排出口を備えた容器内に、前記非対称中空糸ガス分離膜の内側の空間と外側の空間とが隔絶されるようにして収納したことを特徴とする中空糸ガス分離膜モジュールに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、特許文献1及び特許文献2に記載の反復単位からなるポリイミドと類似のポリイミドによって形成された非対称中空糸ガス分離膜でありながら、分離性能を大幅に低下させることなく、機械的強度を改善した非対称中空糸ガス分離膜を提供すること、更に前記非対称中空糸ガス分離膜を用いて酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスから選択的に酸素ガスを透過させてガス分離を行うガス分離方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、実質的に下記一般式(1)
【0017】
【化8】

[但し、一般式(1)中のAは、その20〜80モル%が式(2)
【0018】
【化9】

で示されるビフェニル構造に基く4価のユニットで、20〜80モル%が式(3)
【0019】
【化10】

で示されるジフェニルヘキサフルオロプロパン構造に基づく4価のユニットで、0〜30モル%が式(4)
【0020】
【化11】

で示されるフェニル構造に基づく4価のユニットで、一般式(1)中のRは、その30〜70モル%が式(5)又は/及び式(6)
【0021】
【化12】

(式中、R1及びR2は水素原子または有機基、好ましくは低級アルキル基であり、nは0、1又は2である。)
【0022】
【化13】

(式中、R1及びR2は水素原子または有機基、好ましくは低級アルキル基であり、Xは−CH−又は−CO−である。)
で示される2価のユニットで、30〜70モル%が式(7)
【0023】
【化14】

(式中、Yは塩素原子又は臭素原子であり、nは1〜3である。)
で示されるビフェニル構造に基づく2価のユニットである。]からなる反復単位を有するポリイミドによって形成される。
【0024】
前記ポリイミドにおいて、テトラカルボン酸成分に由来する式(2)のビフェニル構造に基づく4価のユニットとしては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸やその酸無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸やその酸無水物等のビフェニルテトラカルボン酸類の残基を例示することができる。式(2)のビフェニル構造に基づく4価のユニットは、A中の20〜80モル%、好ましくは25〜75モル%が好適である。この4価のユニットが少な過ぎると製膜が難しくなり、多過ぎるとガス透過速度が低下することがあるので好ましくない。
【0025】
また、式(3)のジフェニルヘキサフルオロプロパン構造に基づく4価のユニットとしては、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンやその酸無水物等のジフェニルヘキサフルオロプロパン類の残基を例示することができる。式(3)のジフェニルヘキサフルオロプロパン構造に基づく4価のユニットは、A中の20〜80モル%、好ましくは、25〜75モル%が好適である。この4価のユニットが少な過ぎるとガス透過速度が低下することがあり、多過ぎると機械的強度が低下するので好ましくない。
【0026】
また、式(4)のフェニル構造に基づく4価のユニットとしては、ピロメリット酸やその酸無水物等のピロメリット酸類の残基を例示することができる。式(4)のフェニル構造に基づく4価のユニットは、A中の0〜30モル%、好ましくは5〜25モル%が好適である。このピロメリット酸類は、機械的強度を高めるうえで好適であるが、その量が多すぎると製膜時のポリマ−溶液が凝固したり、不安定になったりするので好ましくない。
【0027】
前記一般式(5)又は一般式(6)で示される構造からなる2価のユニットとしては、それぞれ、下記一般式(8)及び一般式(9)で示される芳香族ジアミンの残基を例示することができる。この2価のユニットは、一般式(1)のR中の30〜70モル%、好ましくは、30〜60モル%が好適である。このユニットはガス透過性の向上作用があるが、多過ぎると分離度が低下することがある。
【0028】
【化15】

(式中、R1及びR2は水素原子又は有機基であり、nは0、1又は2である。)
【0029】
【化16】

(式中、R1及びR2は水素原子又は有機基であり、Xは−CH2−又は−CO−である。)
【0030】
前記一般式(8)で示される芳香族ジアミンとしては、一般式(8)のnが0である下記一般式(10)で示されるジアミノジベンゾチオフェン類、又は一般式(8)のnが2である下記一般式(11)で示されるジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド類を好適に挙げることができる。
【0031】
【化17】

(式中、R1及びR2は水素原子又は有機基である。)
【0032】
【化18】

(式中、R1及びR2は水素原子又は有機基である。)
【0033】
前記のジアミノジベンゾチオフェン類(一般式(10))としては、例えば3,7−ジアミノ−2,8−ジメチルジベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−2,6−ジメチルジベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−4,6−ジメチルジベンゾチオフェン、2,8−ジアミノ−3,7−ジメチルジベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−2,8−ジエチルベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−2,6−ジエチルベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−4,6−ジエチルベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−2,8−ジプロピルジベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−2,6−ジプロピルジベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−4,6−ジプロピルジベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−2,8−ジメトキシジベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−2,6−ジメトキシジベンゾチオフェン、3,7−ジアミノ−4,6−ジメトキシジベンゾチオフェンなどを挙げることができる。
【0034】
前記のジアミノジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド類(一般式(11))としては、例えば3,7−ジアミノ−2,8−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−2,6−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−4,6−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、2,8−ジアミノ−3,7−ジメチルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−2,8−ジエチルベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−2,6−ジエチルベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−4,6−ジエチルベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−2,8−ジプロピルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−2,6−ジプロピルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−4,6−ジプロピルジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−2,8−ジメトキシジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−2,6−ジメトキシジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシド、3,7−ジアミノ−4,6−ジメトキシジベンゾチオフェン=5,5−ジオキシドなどを挙げることができる。
【0035】
前記の一般式(9)において、Xが−CH2−であるジアミノチオキサンテン−10,10−ジオン類としては、例えば3,6−ジアミノチオキサンテン−10,10−ジオン、2,7−ジアミノチオキサンテン−10,10−ジオン、3,6−ジアミノ−2,7−ジメチルチオキサンテン−10,10−ジオン、3,6−ジアミノ−2,8−ジエチル−チオキサンテン−10,10−ジオン、3,6−ジアミノ−2,8−ジプロピルチオキサンテン−10,10−ジオン、3,6−ジアミノ−2,8−ジメトキシチオキサンテン−10,10−ジオン、等を挙げることができる。
【0036】
前記の一般式(9)において、Xが−CO−であるジアミノチオキサンテン−9,10,10−トリオン類としては、例えば3,6−ジアミノ−チオキサンテン−9,10,10−トリオン、2,7−ジアミノ−チオキサンテン−9,10,10−トリオンなどを挙げることができる。
【0037】
また、ジアミン成分に由来する式(7)のビフェニル構造に基づく2価のユニットとしては、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジン、3,3’,5,5’−テトラクロロベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、2,2’−ジクロロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサクロロベンジジン、2,2’,5,5’−テトラブロモベンジジン、3,3’,5,5’−テトラブロモベンジジン、3,3’−ジブロモベンジジン、2,2’−ジブロモベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサクロロベンジジン等のベンジジン類の残基を例示することができる。これらのなかでも式(7)のYが塩素原子であるベンジジンで、nが2のものが透過速度、分離度等からみて特に好適である。式(7)のビフェニル構造に基づく2価のユニットは、一般式(1)のR中の30〜70モル%、好ましくは、30〜60モル%が好適である。このベンジジン類は、分離度の向上に寄与するが、その量が多過ぎるとポリマ−が不溶になって製膜が困難になるので好ましくない。
【0038】
本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、実質的に前記テトラカルボン酸成分と前記ジアミン成分とに由来する一般式(1)の反復単位を有することによって、その作用効果を奏するが、本発明の課題を逸脱しない範囲において他のテトラカルボン酸成分とジアミン成分に由来するユニットが含まれていてもよい。他のテトラカルボン酸成分としては、例えばジフェニルエ−テルテトラカルボン酸類、ベンゾフェノンテトラカルボン酸類、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸類、ナフタレンテトラカルボン酸類、ジフェニルメタンテトラカルボン酸類、ジフェニルプロパンテトラカルボン類等を挙げることができる。またその他のジアミン成分としては、例えばジアミノジフェニルメタン類、ジアミノジフェニルエーテル類、ジアミノジベンゾチオフェン類、ジアミノベンゾフェノン類、ビス(アミノフェニル)プロパン類、フェニレンジアミン類、ジアミノ安息香酸類等を挙げることができる。
【0039】
通常、非対称中空糸ガス分離膜は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との略等モルを有機極性溶媒中で重合イミド化して得られたポリイミドの溶液をド−プ液として使用し、これを中空糸形成用ノズルから押し出し中空糸状体を形成した後、凝固液中で凝固させて相転換を行わせる、いわゆる相転換法によって緻密層と多孔質層からなる非対称中空糸膜を形成し、次いで凝固液を除去して乾燥することによって製造する。
しかしながら、本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、特許文献1及び特許文献2に記載された、テトラカルボン酸成分とジアミン成分とをランダムに重合イミド化して得られた一般式(1)の反復単位を有するポリイミドの溶液をド−プ液として相転換法に適用しても、得ることができない。
【0040】
本発明の中空糸ガス分離膜は、全体の平均として前記一般式(1)の反復単位を有するポリイミドではあるが、テトラカルボン酸成分とジアミン成分の特定の成分が所定のブロック性を持つように重合イミド化して得られた多成分のポリイミドの溶液をドープ液として相転換法に適用することによって好適に製造することができる。
【0041】
以下、本発明で用いられる前記多成分のポリイミドの調製方法について説明する。
すなわち、本発明で用いられる全体の平均として前記一般式(1)の反復単位を有するポリイミドは、互いにモノマー組成が異なり、それぞれが所定の重合度を持ったポリイミドA成分及びポリイミドB成分を、混合した後、さらに重合イミド化することによって得られる。
【0042】
前記『ポリイミド成分』とは、ポリイミドの原料成分(未反応のテトラカルボン酸成分、未反応のジアミン成分)、及び/又は前記原料成分の重合イミド化反応物からなる。ここで、前記重合イミド化物は重合度が大きなポリマーのみを意味しない。ポリイミドの原料成分を重合イミド化したときに反応初期に生成するモノマーや重合度の低いオリゴマーなどを含む。すなわち、重合イミド化反応物は、モノマー(テトラカルボン酸成分とジアミン成分とが各1分子の計2分子でイミド化反応したもの)、及び/又はポリマー(テトラカルボン酸成分とジアミン成分とが計3分子以上でイミド化反応したもの)からなる。
本発明において、重合イミド化反応物の重合度はそこに含まれるポリイミドの繰返し単位数によるものとした。すなわち、モノマーの重合度は1であり、ポリマーの重合度は>1である。一方、ポリイミドの原料成分の重合度は、繰返し単位を持たないので0.5と定義した。本発明の重合度は前記のように定義した重合度から算出される。
【0043】
すなわち、ポリイミド成分Aは、ポリイミドAの原料成分(未反応のテトラカルボン酸成分、未反応のジアミン成分)及び/又は前記原料成分の重合イミド化反応物からなる。ポリイミド成分Bは、ポリイミドBの原料成分(未反応のテトラカルボン酸成分、未反応のジアミン成分)及び/又は前記原料成分の重合イミド化反応物からなる。
【0044】
本発明において、ポリイミドA成分は、フッ素原子含有原料成分を含む。すなわち、前記式(3)のジフェニルヘキサフルオロプロパン構造を構成する2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン類成分を含む。一方、ポリイミドB成分は、基本的にはフッ素原子含有原料成分を含まない。なお、ポリイミドB成分が少量のフッ素原子含有原料成分を含む場合でも本発明の非対称中空糸ガス分離膜を得られることがあるが、その場合でも、全フッ素原子含有原料成分の大部分はポリイミドA成分に含まれ、ポリイミドB成分には全フッ素原子含有原料成分のうちの20モル%以下特に10モル%以下が含まれるだけである。そして、前記式(3)のジフェニルヘキサフルオロプロパン構造を構成する、フッ素原子含有原料成分である2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン類成分以外の原料成分、すなわち前記式(2)、式(4)、式(5)、式(6)、及び式(7)の構造を構成する原料成分であるテトラカルボン酸成分及びジアミン成分に関しては、特に限定はなく、ポリイミドA成分とポリイミドB成分のどちらに含まれても構わない。
【0045】
前記ポリイミド成分Aの数平均重合度をNとし、前記ポリイミド成分Bの数平均重合度をNとすると、本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、次の工程1〜工程3によって好適に製造することができる。
(工程1)ポリイミド成分Aとポリイミド成分Bとを、NとNとが下記数式1を満たす重合度の組合せで混合して多成分ポリイミドの混合溶液を調製する。
【0046】
【数1】

(工程2)前記多成分ポリイミドの混合溶液をさらに重合イミド化反応させる。
(工程3)前記多成分ポリイミドの混合溶液を用いて相転換法によって非対称中空糸膜を形成する。
【0047】
工程1は、多成分ポリイミドの混合溶液が得ることができれば具体的方法は特に限定されない。ポリイミドAの原料成分とポリイミドBの原料成分とをそれぞれ独立に必要に応じて重合イミド化反応によって調製した後でそれらを均一になるように混合して多成分ポリイミドの混合溶液を得ることもできる。また、工程1の多成分ポリイミドの混合溶液が、いずれか一方のポリイミド成分が原料成分(未反応のテトラカルボン酸成分、未反応のジアミン成分)の場合には、一方のポリイミド成分の原料成分を所定の数平均重合度になるように重合イミド化反応した溶液を調製し、次いで前記溶液に他方のポリイミド成分である未反応のテトラカルボン酸成分とジアミン成分を加えても構わない。特にポリイミドB成分をより高分子量化することが非対称中空糸膜の機械的強度を向上させるうえで好適なので、工程1で先ずポリイミドB成分をなす原料成分を極性溶媒中で重合イミド化反応して適当な重合度のポリイミドB成分となし、これにポリイミドA成分をなす原料成分を添加して多成分ポリイミドの混合溶液を調製する方法が好都合である。
【0048】
ここで、ポリイミドを得る重合イミド化反応について説明する。重合イミド化反応は、極性溶媒中テトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、所定の組成比で、140℃以上好ましくは160℃以上且つ使用する溶媒の沸点以下の温度範囲で、ポリアミド酸を生成すると共に脱水閉環反応を行わせてイミド化することによって好適に行われる。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の重合イミド化の速度が低温においても大きく所定の重合度を達成できる場合は140℃以下の温度でもよい。この反応はポリアミド酸の脱水閉環反応に伴う水の発生が無くなるまで、好適にはポリアミド酸の脱水閉環反応に伴う水の発生が見かけ上なくなるまでの時間の1.2倍好ましくは2倍以上の反応時間をかけて行うことが好適である。水の発生が無くなることは、反応系にトラップを取り付け、前記トラップに新たな水の凝縮が生じなくなることを目視観察して確認できる。この方法によって所定の重合度を持ったポリイミドが得られる。アミド酸結合が残ると交換反応によってポリイミドのブロック性が損なわれることがあるので、重合イミド化反応では少なくともイミド化率は50%以上であることが好ましく、実質的にイミド化を完了させることがより好ましい。
【0049】
重合イミド化反応において、テトラカルボン酸成分とジアミン成分との組成比を近づけて反応すると比較的高分子量(数平均重合度が大きい)のポリイミドを合成することができる。最初に比較的高分子量のポリイミドを調製する場合には、テトラカルボン酸成分1モル部に対してジアミン成分が0.95〜0.995モル部又は1.005〜1.05モル部、特に0.98〜0.995モル部又は1.005〜1.02モル部の範囲の組成比で反応して、比較的高分子量のポリイミド成分を調製するのが好ましい。
一方、テトラカルボン酸成分1モル部に対してジアミン成分が0.98モル部以下又は1.02モル部以上の組成比で反応することにより、比較的低分子量(数平均重合度が小さい)のポリイミド成分を調製することもできる。
【0050】
工程1で得られる多成分ポリイミドの混合溶液は、テトラカルボン酸成分の総モル数に対するジアミン成分の総モル数の組成比((ジアミン成分の総モル数)/(テトラカルボン酸成分の総モル数))が0.95〜0.99又は1.01〜1.05モル部、より好ましくは0.96〜0.99又は1.015〜1.04モル部の範囲内となるようにすることが、工程2の結果得られる多成分ポリイミドの混合溶液の重合度や溶液粘度が好適になるので好ましい。
【0051】
前記数式1のNとNの組合せの範囲を図1の斜線領域で示した。なお、前記図1中のA領域の組合せでは機械的強度が向上した非対称中空糸ガス分離膜を得るのが難しく、B領域の組合せでは、ガス分離特性が良好な非対称中空糸ガス分離膜を得ることが難しくなる。
【0052】
工程2は、工程1で得られたポリイミドA成分とポリイミドB成分とからなる多成分ポリイミドの混合溶液をさらに重合イミド化反応させて、少なくともポリイミド成分Aからなる重合体と、ポリイミド成分Bからなる重合体に加えて、ポリイミド成分Aとポリイミド成分Bとが互いの末端で結合したブロックを有するジ又はマルチブロック共重合体を含有し且つ適当な重合度を持った多成分ポリイミドの混合液を得る工程である。ここで、ジブロック共重合体とは、ポリイミド成分Aからなるブロックとポリイミド成分Bからなるブロックの各1個が互いの末端で結合した共重合体のことであり、マルチブロック共重合体は前記ジブロック共重合体の末端に前記2種のブロックが更に1個以上結合した共重合体のことである。ジ又はマルチブロック共重合体には、ポリイミド成分Aからなるブロックが連続して結合した部分やポリイミド成分Bからなるブロックが連続して結合した部分も存在し得る。
【0053】
本発明の工程2の重合イミド化反応は、ポリイミド成分Aとポリイミド成分Bとが互いの末端で結合したブロックを有するジ又はマルチブロック共重合体を生成させることができれば特に限定されるものではない。通常は多成分ポリイミド混合溶液の数平均分子量が好ましくは2倍以上より好ましくは5倍以上になる程度まで重合イミド化反応を行えば、ジ又はマルチブロック共重合体を好適に生成させることができる。工程2の重合イミド化反応によって得られる多成分ポリイミドの混合溶液の数平均重合度は20〜1000好ましくは20〜500より好ましくは30〜200が好適である。数平均重合度が低過ぎると、混合溶液の溶液粘度が低すぎて工程3の製膜が困難になり、得られる非対称膜の機械的強度が低下するので好ましくない。数平均重合度が高過ぎると、溶液粘度が高くなり過ぎて工程3の製膜が困難になるので好ましくない。工程2で得られる多成分ポリイミドの混合溶液の溶液粘度(回転粘度)は、相転換法において非対称中空糸膜を形成するときに、溶液を中空糸形状にし更にその形状を安定化するために要求される特性である。
本発明においては、多成分ポリイミドの混合溶液の溶液粘度を、100℃において20〜17000ポイズ、好ましくは100〜15000ポイズ、特に200〜10000に調製するのが好適である。このような溶液粘度のポリイミド溶液であれば、非対称中空糸膜を製造するときの紡糸過程においてポリイミド溶液をノズルから吐出する際、吐出後の中空糸形状を安定に得ることができるので好適である。溶液粘度が20ポイズより低いか、あるいは17000ポイズより高いと中空糸形状を安定に得ることが困難になる。
なお、好適な多成分ポリイミドの混合溶液の数平均重合度及び好適な溶液粘度は、工程1で得られる多成分ポリイミドの混合溶液のテトラカルボン酸成分の総モル数に対するジアミン成分の総モル数の組成比((ジアミン成分の総モル数)/(テトラカルボン酸成分の総モル数))を0.95〜0.99又は1.01〜1.05モル部、より好ましくは0.96〜0.99又は1.015〜1.04モル部の範囲内にして、工程2の重合イミド化反応によって容易に得られる。
【0054】
工程1及び工程2の多成分ポリイミドの混合溶液のポリマー濃度は、5〜40重量%好ましくは8〜30重量%特に9〜25重量%である。また、前記工程1及び工程2の多成分ポリイミドの混合溶液では、多成分ポリイミドを均一に溶解する極性有機溶媒が好適に用いられる。前記有機極性溶媒としては、その融点が200℃以下、好ましくは150℃以下のもの、例えばフェノ−ル、クレゾ−ル、キシレノ−ル、ベンゼン環に2個の水酸基を有するカテコ−ル、レゾルシンの如きカテコ−ル類、3−クロロフェノ−ル、4−クロロフェノ−ル、3−ブロモフェノ−ル、4−ブロモフェノ−ル、2−クロロ−5−ヒドロキシトルエンの如きハロゲン化フェノ−ル類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドの如きアミド類や、これらの混合溶媒が好適である。
【0055】
工程3は、前記工程2で得られた多成分ポリイミドの混合溶液を用いて相転換法によって非対称中空糸ガス分離膜を形成する。相転換法は、ポリマー溶液を凝固液と接触させて相転換させながら膜を形成する公知の方法であり、本発明ではいわゆる乾湿式法が好適に採用される。乾湿式法は、膜形状にしたポリマー溶液の表面の溶媒を蒸発させて薄い緻密層を形成し、次いで凝固液(ポリマー溶液の溶媒とは相溶し、ポリマーは不溶な溶剤)に浸漬し、その際生じる相分離現象を利用して微細孔を形成して多孔質層を形成させる方法であり、Loebらが提案(例えば、米国特許3133132号)したものである。
【0056】
乾湿式紡糸法は、紡糸ノズルからポリマー溶液を吐出して中空糸形状とし、吐出直後に空気又は窒素ガス雰囲気中を通した後、ポリマー成分を実質的には溶解せず且つポリマー混合液の溶媒とは相溶性を有する凝固液に浸漬して相転換させて非対称構造を形成し、その後乾燥し、更に必要に応じて加熱処理して分離膜を製造する方法である。
ノズルから吐出させる多成分ポリイミドの混合溶液の溶液粘度は、前述のとおり、吐出温度(例えば100℃)で20〜17000ポイズ、好ましくは100〜15000ポイズ、特に200〜10000ポイズとなるようなポリイミド溶液が中空糸状などの吐出後の形状を安定に得ることができるので好ましい。凝固液への浸漬は、一次凝固液に浸漬して中空糸状などの膜の形状が保持できる程度に凝固した後、案内ロールに巻き取られ、次いで二次凝固液に浸漬して膜全体を十分に凝固させることが好ましい。凝固した膜の乾燥は炭化水素などの溶媒を用いて凝固液と置換した後乾燥する方法が効率的である。加熱処理は用いられている多成分のポリイミドの各成分ポリマーの軟化点又は二次転移点よりも低い温度で実施されることが好ましい。
【0057】
本願発明の非対称中空糸ガス分離膜は、全体の平均として前記一般式(1)の反復単位を有するポリイミドからなり、前述の製造方法によって得られ、主としてガス分離性能を担う極めて薄い緻密層(好ましくは厚さが0.001〜5μm)とその緻密層を支える比較的厚い多孔質層(好ましくは厚さが10〜2000μm)とからなる非対称構造を有する中空糸膜であり、その内径は好適には10〜3000μmでその外径は好適には30〜7000μm程度である。そして、中空糸膜としての引張り破断強度が3kgf/mm以上好ましくは4kgf/mm以上であり、特に中空糸膜としての引張り破断伸度が15%以上好ましくは20%以上の機械的強度を有する。
【0058】
さらに、本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、50℃で測定した酸素ガスの透過速度(P’O2)が4.0×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg以上好ましくは5.0×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg以上、且つ窒素ガスの透過速度に対する酸素ガスの透過速度の比(P’O2/P’N2)が4以上好ましくは4.5以上である。
【0059】
以上のとおり、本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、優れたガス分離性能と共に改良された機械的強度を有する。このような機械的強度を持った中空糸膜、特に引張り破断伸度が15%以上の中空糸膜は、容易に破損や破断することなく取扱うことができるので、工業的にモジュール化(ガス分離膜モジュールへの組立て及び加工)をすることができる。更に、このような機械的強度を持った中空糸膜を用いたガス分離膜モジュールは、優れた耐圧性や耐久性を持つので特に有用である。一方、引張り破断伸度が15%以下では、ガス分離膜モジュールへの組立て及び加工時に中空糸膜が破損や破断を起こし易いので工業的に分離膜モジュールへ組立て及び加工することが困難である。更に、分離膜モジュールとしても、使用時の耐圧性が低くなり用途や使用条件が限定される。特に、分離膜モジュール内の中空糸膜は、供給されて中空糸膜の内側や外側を流れて排出されるガスの流量、流速、圧力、温度、及び、それらの変動によって、連続的又は断続的に変形応力を受けるので、引張り破断伸度が15%以下では、破損や破断が発生し易くなり実用上の問題を生じ易い。
本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、ガス分離性能特に酸素ガスと窒素ガスとの分離性能に優れるが、酸素ガスと窒素ガスとを分離する場合(例えば空気から富化窒素ガスを分離する場合)には、高圧の混合ガス(空気)をガス分離膜モジュールへ供給するから、実用上中空糸膜の機械的強度は極めて重要な特性である。
【0060】
従って、本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、酸素ガスと窒素ガスとを分離する際に極めて好適に用いることができる。すなわち、本発明の非対称中空糸ガス分離膜の供給側に、酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスを接触させ、前記非対称中空糸ガス分離膜の透過側へ酸素ガスを選択的に透過させることによって、酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスから、酸素ガスが富化した混合ガスと窒素ガスが富化した混合ガスとを、極めて好適に分離回収することができる。さらに、本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、機械的強度が優れるので、非対称中空糸ガス分離膜の内側(孔側)を供給側とし、非対称中空糸ガス分離膜の外側を透過側として、前記の酸素ガスと窒素ガスとを含む混合ガスから、酸素ガスが富化した混合ガスと窒素ガスが富化した混合ガスとを、極めて好適に分離回収することができる。この方法は、非対称中空糸ガス分離膜の外側を供給側とし、非対称中空糸ガス分離膜の内側を透過側とした時と比較して、効率的な分離回収を行える場合が多い。
なお、この酸素ガスと窒素ガスとを分離する時の、温度や圧力などの分離条件には特に限定はなく、通常のガス分離膜で採用されている分離条件が採用されるが、好ましくは温度が−20℃〜80℃で圧力を0.1MPaG〜1.6MPaGに加圧した混合ガスをガス分離膜モジュールの混合ガス供給口から供給して好適に行うことができる。
【0061】
本発明の非対称中空糸ガス分離膜は、機械的強度が優れるので、モジュール化して好適に用いることができる。中空糸ガス分離膜は、中空糸膜であるためにモジュール当たりの膜面積を広くできるし、高圧の混合ガスを供給してガスを分離できるので、高効率のガス分離が可能になる。通常のガス分離膜モジュールは、例えば、適当な長さの中空糸膜100〜100000本程度を束ね、その中空糸束の少なくとも一方の端部を、各中空糸膜が開口状態を保持した状態になるようにして、熱硬化性樹脂などからなる管板で包埋して固着し、得られた少なくとも中空糸束と管板などからなる中空糸膜エレメントを、少なくとも混合ガス供給口と透過ガス排出口と非透過ガス排出口とを備える容器内に、中空糸膜の内側に通じる空間と中空糸膜の外側へ通じる空間とが隔絶するように収納し取り付けることによって得られる。このようなガス分離膜モジュールでは、混合ガスが混合ガス供給口から中空糸膜の内側(孔側)あるいは外側に接する空間へ供給され、中空糸膜に接して流れる間に混合ガス中の特定成分が選択的に膜を透過し、透過ガスが透過ガス排出口から、膜を透過しなかった非透過ガスが非透過ガス排出口からそれぞれ排出されることによって、好適にガス分離が行われる。
【0062】
図2に、本発明の非対称中空糸ガス分離膜を用いたガス分離膜モジュール、及びその使用方法の一例について、概略図で示した。
【実施例】
【0063】
本発明での各種測定方法について説明する。
(回転粘度の測定法)
ポリイミド溶液の溶液粘度は、回転粘度計(ローターのずり速度1.75sec−1)を用い温度100℃で測定した。
【0064】
(重合度の測定)
本発明において、重合度は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定または赤外分光法などによるイミド化率の測定によってあらかじめ数平均重合度と溶液粘度との対応を調べておき、反応溶液の溶液粘度の測定によって数平均重合度を知ることができる。なお、イミド化率が90%以上のものが対象の場合には、GPC測定法によって求め、イミド化率が90%未満の場合には、赤外分光法によるイミド化率測定法から求めた。
本発明においてGPC測定は以下のようにして行った。日本分光工業株式会社製800シリーズHPLCシステムを用い、カラムはShodex KD−806Mを1本、カラム部温度は40℃、検出器は未知試料用としてインテリジェント紫外可視分光検出器(吸収波長350nm)、標準物質用として示差屈折計(標準物質はポリエチレングリコール)を使用した。溶媒は塩化リチウム及びリン酸を各々0.05モル/L含むN−メチル−2−ピロリドン溶液を使用し、溶媒の流速は0.5mL/分、サンプルの濃度は約0.1%とした。データの取り込み及びデータ処理はJASCO−JMBS/BORWINを用い行なった。データの取り込みは2回/秒行ない、試料のクロマトグラムを得た。一方、標準物質として分子量82,250、28,700、6,450、1,900のポリエチレングリコールを使用し、これらのクロマトグラムからピークを検出し、保持時間と分子量の関係を示す校正曲線を得た。未知試料の分子量解析は、校正曲線から各保持時間における分子量Mを各々求め、また、各保持時間におけるクロマトグラムの高さhの合計に対する分率W=h/Σhを求め、それらをもとに数平均分子量Mnは1/{Σ(W/M)}から、重量平均分子量MwはΣ(W・M)から求めた。
数平均重合度Nは、重合時の仕込み割合に応じて平均化したモノマー単位分子量<m>で数平均分子量Mnを除して求めた。
【0065】
【数2】

なお、モノマー単位分子量<m>は下記のとおり求めた。すなわち、複数種のテトラカルボン酸成分(分子量m1,i、仕込みモル比R1,i、但し、ΣR1,i=1、i=1,2,3,・・・,n)、複数種のジアミン成分(分子量m2,j、仕込みモル比R2,j、但し、ΣR2,j=1、j=1,2,3,・・・,n)を仕込んだ場合のモノマー単位分子量<m>は下記の式に従って求めた。
【0066】
【数3】

【0067】
(イミド化率の測定)
赤外分光法によるイミド化率の測定はパーキンエルマー社製スペクトラムワンを用い、全反射吸収測定法−フーリエ変換赤外分光法(ATR−FTIR)によって行った。イミド化率pの算出は、イミド結合のC−N伸縮振動(波数約1360cm-1)の吸光度Aを芳香核C=C面内振動(波数約1500cm-1)の吸光度Aを内部標準として規格化した値(A/A)を、190℃にて5時間熱処理した後の試料について先と同様にして求めたC−N伸縮振動の吸光度Aを芳香核C=C面内振動の吸光度ASIを内部標準として規格化した値(A/ASI)で除して求めた。
【0068】
【数4】

なお、吸収バンドの吸光度は、吸収バンドの両側の谷を結んだ線をベースラインとしたピーク強度とした。
ここで得られたイミド化率の値から、さらに下記式により数平均重合度Nを求めた。
【0069】
【数5】

ここでrはポリイミドのテトラカルボン酸成分の総モル数に対するジアミン成分の総モル数の組成比であり、ジアミン成分がテトラカルボン酸成分より多い場合その逆数を取るものとし(即ちどの場合においてもrは1以下)、pはイミド化率である。
【0070】
(中空糸膜の酸素ガス、窒素ガス透過性能の測定方法)
6本の中空糸膜と、ステンレスパイプと、エポキシ樹脂系接着剤とを使用して有効長が8cmの透過性能評価用のエレメントを作成し、これをステンレス容器に装着してペンシルモジュールとした。それに一定圧力のヘリウム、酸素、窒素標準混合ガス(容積比30:30:40)を供給して透過流量および透過ガス組成を測定した。ガス組成はガスクロマトグラフ分析により求めた。測定した透過流量、透過ガス組成、供給圧、および有効膜面積から酸素ガス、および窒素ガスの透過速度を算出した。尚、これらの測定は50℃で行った。
【0071】
(中空糸膜の引張強度と破断伸度の測定)
引張試験機を用いて有効長20mm、引張速度10mm/分で測定した。測定は23℃で行った。中空糸断面積は中空糸の断面を光学顕微鏡で観察し、光学顕微鏡像から寸法を測定して算出した。
【0072】
本実施例における非対称中空糸膜の製造方法を説明する。
(非対称中空糸膜を製造する方法)
以下の例で用いた非対称中空糸膜の製造方法は、乾湿式紡糸法によって行った。具体的には、ポリイミド溶液を、400メッシュの金網で濾過したあと、温度65℃で中空糸紡糸ノズル(円形開口部外径1000μm、円形開口部スリット幅200μm、芯部開口部外径400μm)から吐出させ、吐出した中空糸状態を窒素雰囲気中に通した後、0℃の75重量%エタノール水溶液からなる凝固液に浸漬し湿潤糸とした。これを50℃のエタノール中に2時間浸漬し脱溶媒処理を完了し、更に、70℃のイソオクタン中に3時間浸漬洗浄して溶媒を置換後、100℃絶乾状態で30分間乾燥し、その後250〜320℃の温度で1時間の熱処理を行った。更に、中空糸膜の表面の滑りを整えるためにシリコンオイルでオイリング処理を施し中空糸膜を製造した。得られた中空糸膜はいずれも、大略、外径寸法400μm、内径寸法200μm、膜厚100μmのものであった。
【0073】
〔実施例1〕
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、s−BPDAと略記することもある)8.21gと2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(以下、6FDAと略記することもある)11.02gとジメチル−3,7−ジアミノ−ジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド(以下、TSNと略記することもある)7.37gと3,3’−5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノジフェニル(以下、TCBと略記することもある)8.65g(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)を、溶媒のPCP163gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で20時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は44であった。このポリイミド溶液へピロメリット酸二無水物(以下、PMDAと略記することもある)2.03g、TSN1.30g、TCB1.53gを溶媒のPCP22gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で18時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が65で、回転粘度が2511ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は6.82×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.37×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は5.0であった。また、引張り強度は6kgf/mm、引張り破断伸度は30%であった。
【0074】
〔比較例1〕
s−BPDA8.21gと6FDA11.02gとPMDA2.03gとTSN8.62gとTCB10.12gを、溶媒のPCP184gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度190℃で18時間重合し、ポリイミドの重合度が93で、回転粘度が2251ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.0135モル部)
このポリイミド溶液は酸二無水物とジアミンとのモル比が弱冠ことなることを除けば、実施例1と基本的に同じ割合の原料組成をランダムに重合したものである。
このポリイミド溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能はと機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は4.86×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は0.92×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は5.3であった。また、引張り強度は6kgf/mm、引張り破断伸度は8%であった。
【0075】
〔実施例2〕
s−BPDA9.12gと6FDA11.02gとTSN7.81gとTCB9.16gを、溶媒のPCP172gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で20時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は57であった。このポリイミド溶液へPMDA1.35g、TSN0.87g、TCB1.02gを溶媒のPCP14gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で18時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が63で、回転粘度が1953ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は5.55×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.12×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は5.0であった。また、引張り強度は6kgf/mm、引張り破断伸度は17%であった。
【0076】
〔実施例3〕
s−BPDA8.21gとPMDA2.03gとTSN5.20gとTCB6.11gを、溶媒のPCP99gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で17時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は88であった。このポリイミド溶液へ6FDA11.02g、TSN3.47g、TCB4.07gを溶媒のPCP86gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で12時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が69で、回転粘度が1600ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は6.59×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.27×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は5.2であった。また、引張り強度は6kgf/mm、引張り破断伸度は24%であった。
【0077】
〔実施例4〕
s−BPDA10.94gとTSN5.20gとTCB6.11gを、溶媒のPCP102gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で20時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は77であった。このポリイミド溶液へ6FDA11.02g、TSN3.47g、TCB4.07gを溶媒のPCP86gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で20時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が76で、回転粘度が2009ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は7.63×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.55×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は4.9であった。また、引張り強度は5kgf/mm、引張り破断伸度は16%であった。
【0078】
〔比較例2〕
s−BPDA10.94gと6FDA11.02gとTSN8.67gとTCB10.18gを、溶媒のPCP188gと共にセパラブルフラスコ中にて重合温度190℃で29時間重合し、ポリイミドの重合度が55で、回転粘度が1209ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
このポリイミド溶液は実施例4と基本的に同じ割合の原料組成をランダムに重合したものである。
このポリイミド溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能はと機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は4.18×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は0.88×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は4.8であった。また、引張り強度は5kgf/mm、引張り破断伸度は6%であった。
【0079】
〔実施例5〕
6FDA11.02gとTSN3.47gとTCB4.07gを、溶媒のPCP86gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で35時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は42であった。このポリイミド溶液へs−BPDA8.21g、PMDA2.03g、TSN5.20g、TCB6.11gを溶媒のPCP99gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で25時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が59で、回転粘度が2120ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は5.48×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.09×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は5.0であった。また、引張り強度は7kgf/mm、引張り破断伸度は40%であった。
【0080】
〔比較例3〕
s−BPDA8.21gと6FDA6.89gとTSN6.07gとTCB7.13gを、溶媒のPCP129gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で20時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は53であった。このポリイミド溶液へ6FDA4.13g、PMDA2.03g、TSN2.60g、TCB3.05gを溶媒のPCP56gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で20時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が61で、回転粘度が1116ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は5.13×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.00×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は5.1であった。また、引張り強度は6kgf/mm、引張り破断伸度は8%であった。
【0081】
〔実施例6〕
6FDA11.02g、TSN3.47gとTCB4.07gを、溶媒のPCP86gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で35時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は13であった。このポリイミド溶液へs−BPDA10.94g、TSN5.20g、TCB6.11gを溶媒のPCP102gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で38時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が31で、回転粘度が1395ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は5.53×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.02×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は5.4であった。また、引張り強度は6kgf/mm、引張り破断伸度は25%であった。
【0082】
〔実施例7〕
s−BPDA2.74g、PMDA2.03g、TSN2.60gとTCB3.05gを、溶媒のPCP48gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で20時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は35であった。このポリイミド溶液へ6FDA11.02g、s−BPDA5.47g、TSN6.07g、TCB7.13gを溶媒のPCP137gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で24時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が42で、回転粘度が1897ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は7.19×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.47×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は4.9であった。また、引張り強度は7kgf/mm、引張り破断伸度は39%であった。
【0083】
〔実施例8〕
6FDA11.02g、s−BPDA5.47g、TSN6.07gとTCB7.13gを、溶媒のPCP137gと共にセパラブルフラスコ中にて反応温度190℃で20時間重合してポリイミド溶液を得た。この溶液のポリイミドの重合度は21であった。このポリイミド溶液へs−BPDA2.74g、PMDA2.03g、TSN2.60g、TCB3.05gを溶媒のPCP48gと共に添加した。この多成分ポリイミドの混合溶液をさらに反応温度190℃で32時間重合イミド化し、ポリイミドの重合度が27で、回転粘度が1469ポイズ、ポリマー濃度が17重量%のポリイミド溶液を得た。(全原料組成として、酸二無水物1モル部に対してジアミンが1.020モル部)
この多成分ポリイミドの混合溶液を用いて、前記の非対称中空糸膜を製造する方法に基づいて、中空糸膜を製造した。この中空糸膜のガス透過性能と機械的特性を前記の方法によって測定した。
この中空糸膜の酸素ガス透過速度は8.38×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、窒素ガス透過速度は1.73×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg、酸素ガスと窒素ガスの透過速度比は4.8であった。また、引張り強度は6kgf/mm、引張り破断伸度は27%であった。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明によって、特定のポリイミドによって形成された非対称中空糸ガス分離膜において、分離性能を大幅に低下させることなく、機械的強度を改善した非対称中空糸ガス分離膜を提供すること、更に前記非対称中空糸ガス分離膜を用いて酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスから選択的に酸素ガスを透過させてガス分離を行うガス分離方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】:NとNとの組合せ範囲を説明するためのグラフである。
【図2】:本発明の非対称中空糸ガス分離膜を用いたガス分離膜モジュール
【符号の説明】
【0086】
1:混合ガス供給口
2:非透過ガス排出口
3:透過ガス排出口
4:管板
5:中空糸膜
6:容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に下記一般式(1)
【化1】

[但し、一般式(1)中のAは、その20〜80モル%が式(2)
【化2】

で示されるビフェニル構造に基く4価のユニットで、20〜80モル%が式(3)
【化3】

で示されるジフェニルヘキサフルオロプロパン構造に基づく4価のユニットで、0〜30モル%が式(4)
【化4】

で示されるフェニル構造に基づく4価のユニットで、一般式(1)中のRは、その30〜70モル%が式(5)又は/及び式(6)
【化5】

(式中、R1及びR2は水素原子または有機基であり、nは0、1又は2である。)
【化6】

(式中、R1及びR2は水素原子または有機基であり、Xは−CH−又は−CO−である。)
で示される2価のユニットで、30〜70モル%が式(7)
【化7】

(式中、Yは塩素原子又は臭素原子であり、nは1〜3である。)
で示されるビフェニル構造に基づく2価のユニットである。]からなる反復単位を有するポリイミドによって形成された非対称中空糸ガス分離膜であって、中空糸膜としての引張り破断伸度が15%以上に改良された非対称中空糸ガス分離膜。
【請求項2】
50℃で測定した酸素ガスの透過速度(P’O2)が4.0×10−5cm(STP)/cm・sec・cmHg以上且つ窒素ガスの透過速度に対する酸素ガスの透過速度の比(P’O2/P’N2)が4以上であることを特徴とする請求項1に記載の非対称中空糸ガス分離膜。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の非対称中空糸ガス分離膜の供給側に、酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスを接触させ、前記非対称中空糸ガス分離膜の透過側へ酸素ガスを選択的に透過させることによって、酸素ガスと窒素ガスを含む混合ガスから、酸素ガスが富化した混合ガスと窒素ガスが富化した混合ガスとを分離回収することを特徴とするガス分離方法。
【請求項4】
非対称中空糸ガス分離膜の内側を供給側とし、非対称中空糸ガス分離膜の外側を透過側とすることを特徴とする前記請求項3に記載のガス分離方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の非対称中空糸ガス分離膜の多数本を束ねた中空糸束と、前記中空糸束の少なくとも一方の端部において各中空糸膜を開口させた状態で包埋して固着した管板とを必須とした中空糸エレメントを、混合ガス供給口、非透過ガス排出口、及び透過ガス排出口を備えた容器内に、前記非対称中空糸ガス分離膜の内側の空間と外側の空間とが隔絶されるようにして収納したことを特徴とする中空糸ガス分離膜モジュール。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−43945(P2008−43945A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191475(P2007−191475)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】