説明

非導電性の基板に直接金属被覆する方法

【課題】従来の、非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法では、設備の部材に塩の沈殿に起因する付着物ができる、といった問題があった。
【解決手段】(a)基板を金属含有活性化溶液に接触させ、
(b)次いで、前記活性化溶液に接触させた基板を、
(1)前記活性化溶液の金属により還元される少なくとも1つの金属を含む金属塩と、
(2)リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの内の少なくと も一つの金属と錯体をつくる試剤と
から構成される金属塩溶液に接触させ、
(c)続いて、無電解または電解メッキ方法により、前記処理基板に、金属を被覆する
前記金属塩は、弗化物、塩化物、沃化物、臭化物、硝酸化物、硫化物あるいは、これらの混合から構成される塩の形態のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから構成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非導電性の基板(サブストレート)に直接金属被覆(ダイレクトメタライジング)する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板やプラスチック成型品などの非導電性の基板(サブストレート)に直接金属被覆する方法については、種々の最新技術が知られている。
例えば、欧州特許出願EP0538006に直接金属被覆の方法が開示されている。すなわち、基板は、パラジウムと錫コロイドからなる活性溶液により、活性化され、そののち、与えられた化学反応条件の下に、不均化反応を行わせるのに十分な量のイオンを含むポスト活性化溶液に浸される。
上記の処理を施された基板は、その後酸溶液で処理される。
【0003】
欧州特許出願EP0616053にも同様な方法が開示されている。ただし、金属組成に高酸化状態(highest oxidation state)にある金属を含有している点が、前記方法とは異なっている。
【解決しようとする課題】
【0004】
開示されている最新技術を駆使した方法には、下記のような共通点がある。
すなわち、技術的に大規模な実施は、設備の部材に塩の沈殿に起因する付着物ができる、といった問題をもたらす
このことは、結果として、基板に十分な被覆(コーティング)を施せないことになり、そのため、前記公知技術の操業設備では、定期的に、洗浄して、付着物を遊離させなくてはならないという、欠点があった。
【0005】
最新の公知の方法では、数時間後に、加熱エレメントやタンクの壁に、低溶解性リチウムカーボネートの沈殿物ができる。空気中の窒息性ガスがアルカリ溶液で補足され、次いでカーボネートに溶解すからである。
リチウムカーボネートの沈殿物は、生産工程に悪い影響を与える。
小さな小片の剥離は表面を荒くし、ボロボロとなって高速度屑を発生させる。そして、加熱エレメントの付着物を通して、加熱力が著しく減少する一方、消費電力は増大する。さらに、追加の過熱エレメントを使用しないと、操作温度を一定に保つことができないという問題があった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、上記のような付着物に起因する、最新技術の問題点を克服した、直接金属被覆(ダイレクトメタライゼーション)の改良方法を提案するものである。
上記目的は、少なくとも下記のステップからなる非導電性の基板(サブストレート)の金属被覆(メタライゼーション)方法によって達成される。
(a)基板を金属含有活性化溶液に接触させ、
(b)次いで、前記活性化溶液に接触させた基板を、
(1)前記活性化溶液の金属により還元される少なくとも1つの金属を含む金属塩と
(2)リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの内の少なく とも一つの金属と錯体をつくる試剤と
から構成される金属塩溶液に接触させ、
(c)続いて、無電解(カレントフリー)または電解メッキ方法により、前記処理基板 に、金属を被覆(コーティング)する
前記金属塩は、弗化物、塩化物、沃化物、臭化物、硝酸化物、硫化物あるいは、これらの混合から構成される塩の形態のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから構成されていることを特徴とする。
【0007】
前記非導電性基板は金属含有活性化溶液で処理する前に前処理することが好ましい。
前記前処理には、例えば、酸洗い(ピックリング)ステップが含まれる。
【0008】
金属含有活性化溶液は、好ましくは、第一のコア金属とそのコアをコロイド状に囲んでいる第二のコロイド金属を備えた、金属―金属コロイドから構成される。
コアメタルは、銀、金、プラチナ、あるいはパラジウムの内の少なくとも一つであることを特徴とする。
コロイドメタルは、鉄、錫、鉛、コバルトあるいはゲルマニウムの内の少なくとも一つの金属であることを特徴とする。
【0009】
最新の公知技術による他の活性化溶液もまた、本発明に係る方法に使用することができる。
活性化溶液の処理の後、処理された基板は、次に、活性化溶液の金属によって還元されることができる少なくとも1つの金属と、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムの内の少なくとも1つの金属と錯体をつくる試剤と
から構成される金属塩溶液に接触させる。
【0010】
好ましくは、金属―金属コロイドのコロイド金属は、金属含有活性化溶液の金属を還元するように働かせることである。
コロライド金属により還元される金属として、相応に高い標準電極ポテンシャルを持つ金属が用いられる。 このようにして、コロイド金属により還元される。
特にふさわしい金属として、銅、銀、金、ニッケル、パラジウム、プラチナ、ビスマス、およびそれらを混合したものが挙げられる。
【0011】
錯体試剤として、好ましくは、コロイド金属により還元される金属の僅かな溶融塩の沈殿を防ぐのに十分な機能をもつものが使用される。
すなわち、ふさわしい錯体試剤は、例えば、モノエチアノラミン、EDTA,酒石酸、乳酸、クエン酸、蓚酸、サルチル酸、塩、あるいは上記の誘導体または混合物である。
【0012】
前記金属塩溶液は、下記のアルカリpH値を示すことが望ましい。すなわち、pH10からpH14の間、好ましくはpH11.5から約pH13.5の間、最も好ましくはpH12.5から約pH13.5の間の値である。
pH値をセットするために、対応する水酸化物あるいは他のアルカリ試剤及び/または緩衝物質を金属塩溶液に添加する。
【0013】
既に活性化溶液で処理された基板を金属塩溶液に接触させる温度は、次の温度が好ましい。約20℃から約90℃の間、好ましくは、約30℃から約80℃、最も好ましくは、約40℃から75℃の間である。
【0014】
本発明に係る方法による、金属塩溶液での基板の処理は、基板表面に導電性物質の無電解(カレントフリー)析出をもたらす。
このことにより、結果として、無電解(カレントフリー)または電解メッキによる、銅またはニッケルのような金属のコーティングが可能となる。
一方本発明に係る方法はまた、上述したように無電解(カレントフリー)な金属の析出方法に使用される金属塩溶液にも係わる。
【発明の効果】
【0015】
プロセスで現れる金属イオンの僅かな溶解という構成は、この発明に係る金属塩溶液とともに、この発明に係る方法によって部分的には防ぐことができる。
このことにより、設備の付着物を特に取り除くメンテナンスによる無駄時間を少なくし、稼働率を上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
下記に、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1.
ABS樹脂加工物がスルホクロム溶液に接触され凹凸加工が施される。
次いで、前記加工物は、洗浄され、200mg/lのパラジウム、30g/lの22価の錫クロライドおよび300ml/lの濃縮塩化水素酸から構成されているコロイダル活性溶液で前処理される。
その後、前記加工物は2度洗浄され、次いで、下記の成分から構成されている金属塩溶液に浸され、その結果、非導電性プラスチック表面に薄い導電性フィルムが生成される。
該金属塩溶液の組成
ナトリウム水酸化物 1.0mol/l
リチウムクロライド 0.5mol/l
カリウムナトリウム酒石酸塩 0.4mol/l
銅硫酸塩 0.015mol/l
加工物は再度洗浄され、続いて、酸で表面処理された銅の電解液で、課電処理により、メタライジングされる。
前記工程を通して、ABS樹脂加工物に、実用的で装飾性のある、何の支障もない金属被覆を施すことができる。
【0017】
実施例2
ABS樹脂加工物がスルホクロム溶液に接触され凹凸加工が施される。
次いで、前記加工物は、洗浄され、200mg/lのパラジウム、30g/lの22価の錫クロライドおよび300ml/lの濃縮塩化水素酸から構成されているコロイダル活性溶液で前処理される。
その後、前記加工物は2度洗浄され、次いで、下記の成分から構成されている金属塩溶液に浸され、その結果、非導電性プラスチック表面に薄い導電性フィルムが生成される。
該金属塩溶液の組成
ナトリウムクロライド 0.5mol/l
リチウム水酸化物 0.5mol/l
臭化カリウム 0.5mol/l
カリウムナトリウム酒石酸塩 0.4mol/l
銅硫酸塩 0.015mol/l
加工物は再度洗浄され、続いて、酸で表面処理された銅の電解液で、課電処理により、メタライジングされる。
前記工程を通して、ABS樹脂加工物に、実用的で装飾性のある、何の支障もない金属被覆を施すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明に係る方法により、最新の公知技術の「沈殿」(precipitation)という問題点は回避され、あるいは明らかに修正された。
本発明の実施により、操業装置(ユニット)の一部、例えば、加熱エレメントに、僅かな付着物を最初に見出したのは、操業開始から一ヶ月後のことであった。
定期的に付着物を取り除くことは、もはや必要がなくなり、メンテナンスなどのデッドタイムを最小化することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記のステップから構成される、非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法であって、
(a)前記基板を金属含有活性化溶液に接触させ、
(b)次いで、前記活性化溶液に接触させた基板を、
(1)前記活性化溶液の金属により還元される少なくとも1つの金属を含む金属塩と
(2)リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムの内の少なく とも一つの金属と錯体をつくる試剤と
から構成される金属塩溶液に接触させ、
(c)続いて、無電解(カレントフリー)または電解メッキ方法により、前記処理基板 に、金属を被覆(コーティング)する
前記金属塩は、弗化物、塩化物、沃化物、臭化物、硝酸化物、硫化物あるいは、これらの混合から構成される塩の形態のリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから構成されていることを特徴とする非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。
【請求項2】
前記金属含有活性化溶液は、コアとしての第一の金属(コアメタル)とそのコアをコロイド状に囲んでいる第二の金属(コロイドメタル)を備えた、金属―金属コロイドから構成され、
前記コアメタルは、銀、金、プラチナ、あるいはパラジウムからなるグループより作られ、前記コロイドメタルは、鉄、錫、鉛、コバルトあるいはゲルマニウムからなるグループより作られることを特徴とする、請求項1に記載された非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。
【請求項3】
前記金属塩溶液は、モノエチアノラミン、EDTA,酒石酸、乳酸、クエン酸、蓚酸、サルチル酸、塩、あるいは上記の誘導体または混合物から構成されるグループの結合からなる錯体試剤を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載された非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。
【請求項4】
前記金属塩溶液のアルカリpH値が、pH10からpH14の間であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載された非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。
【請求項5】
前記金属塩溶液の適切なアルカリpH値が、pH11.5から約pH13.5の間であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載された非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。
【請求項6】
前記金属塩溶液の適切なアルカリpH値が、pH12.5から約pH13.5の間であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載された非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。
【請求項7】
前記基板(サブストレート)を前記金属塩に接触させる温度を、約20℃から約90℃の間に設定することを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載された非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。
【請求項8】
前記基板(サブストレート)を前記金属塩に接触させる温度を、約30℃から約80℃の間に設定することを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載された非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。
【請求項9】
前記基板(サブストレート)を前記金属塩に接触させる温度を、約40℃から75℃の間に設定することを特徴とする、請求項1〜6の何れか1項に記載された非導電性の基板(サブストレート)に金属被覆(メタライゼーション)をする方法。


【公開番号】特開2006−342428(P2006−342428A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−160572(P2006−160572)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(505319072)エントーン インク. (7)
【氏名又は名称原語表記】Enthone Inc.
【Fターム(参考)】