説明

非常に薄いシェルを有するマイクロ粒子を有する建材用添加剤混合物

本発明は、薄いシェルを有するポリマー性マイクロ粒子を、水硬性の建材混合物において、その凍結変化耐久性もしくは凍結融解変化耐久性の改善のために用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー性マイクロ粒子を、水硬性の建材混合物において、その凍結耐久性もしくは凍結融解耐久性の改善のために用いる使用に関する。
【0002】
重要な建材としてのコンクリートは、DIN1045(07/1988)によれば、セメントと、コンクリート骨材と、水と、場合によりコンクリート混和剤及びコンクリート混和材とから、硬化によって生成する人造石として定義されている。コンクリートは、とりわけ強度群(BI−BII)及び強度等級(B5−B55)で分類されている。ガス発生物質もしくは気泡形成物質を混加した場合に、多孔質コンクリートあるいは発泡コンクリートが生成する(Roempp Lexikon,第10版(1996年)、Georg Thieme出版)。
【0003】
コンクリートは、2つの時間依存性の特性を有する。まず第一に、該コンクリートは、乾燥によって、収縮と呼ばれる体積低下を受ける。しかしながら、大部分の水は、結晶水として結合される。コンクリートは乾燥せずに硬化する。すなわち、まず流動性のあるニートセメント(セメントと水)は、セメントと水との化学的・鉱物学的反応、つまり水和の時点と経過に応じて、硬化し始め、硬直になり、最後に強固になる。セメントの水結合能によって、コンクリートは、生石灰の存在下で、また水のもとで硬化し、強固となりうる。第二に、コンクリートは、負荷、いわゆるクリープ下で変形する。
【0004】
凍結融解変化は、水の凝固点付近での気候的な温度変化を指す。特に、鉱物的に結合された建材、例えばコンクリートの場合には、凍結融解変化は、損害的機構である。これらの材料は、多孔質の毛管構造を有し、水密ではない。水を染み込ませた係る構造を0℃未満の温度に晒すと、水はその空隙中で凍結する。水の密度異常によって、ここでは氷が拡大する。それによって、建材の損害がもたらされる。非常に微細な空隙中で、表面効果に基づき、凝固点の低下がもたらされる。マイクロ孔中で、水は−17℃未満ではじめて凍結する。凍結融解変化によって該材料自体は拡大しかつ収縮するので、付加的に、毛管ポンプ作用が引き起こされ、吸水が高まり、それにより間接的に損害は更に大きくなる。従って、その損害については、凍結融解変化の回数は決定的である。
【0005】
同時に融解剤を作用させた場合での、凍結と凍結融解変化に対するコンクリートの耐久性については、その構造物の密度と、マトリクスの所定の強度と、所定の空隙構造の存在とが決定的である。セメント結合コンクリートの構造物には、毛細管空隙(直径:2μm〜2mm)もしくはゲル空隙(直径:2〜50nm)が通っている。その中に含まれる間隙水は、空隙直径に依存して、その状態において異なる。毛細管空隙中の水は、その通常の特性を維持する一方で、ゲル空隙においては、凝結水(メソ孔:50nm)と吸着結合された表面水(マイクロ孔:2nm)に分類され、それらの凝固点は、例えば−50℃よりはるか低いことがある[M.J.Setzer,Interaction of water with hardened cement paste,"Ceramic Transactions" 16(1991)415−39]。その結果として、コンクリートを低温冷却した場合にも、一部の間隙水は未凍結のままとなる(準安定水)。しかしながら、同じ温度の場合に、氷についての蒸気圧は、水についての蒸気圧よりも低い。氷と準安定水は、同時に並存するので、蒸気圧勾配が生じ、こうして、まだ液状の水が氷へと拡散して、それが氷を形成し、それにより小さい方の空隙からは脱水が起こり、あるいは大きい方の空隙においては着氷が起こる。冷却の結果として起こる前記の水の再分配は、それぞれの空隙系で起こり、空隙分布の種類に決定的に依存している。
【0006】
従って、コンクリート中に微細な空気孔を人為的に導入することで、第一には、膨張する氷と氷水のための、いわゆる応力緩和空間がもたらされる。この空隙において、凍結した間隙水は膨張し、あるいは氷及び氷水の内圧と応力は吸収されるので、微細亀裂が形成されることはなく、それによりコンクリートの凍結損傷が引き起こされることはない。係る空気孔システムの原理的な作用様式は、コンクリートの凍結損傷の機序に関して、多くの概要に記載されている[Schulson,Erland M.(1998)Ice damage to concrete.CRREL Special Report 98−6;S.Chatterji,Freezing of air−entrained cement−based materials and specific actions of air−entraining agents,"Cement & Concrete Composites"25(2003)759−65;G.W.Scherer,J.Chen & J.Valenza,Methods for protecting concrete from freeze damage,米国特許第6,485,560号B1(2002);M.Pigeon,B.Zuber & J.Marchand,Freeze/thaw resistance,"Advanced Concrete Technology"2(2003)11/1−11/17;B.Erlin & B.Mather,A new process by which cyclic freezing can damage concrete − the Erlin/Mather effect,"Cement & Concrete Research"35(2005)1407−11]。
【0007】
凍結融解変化におけるコンクリートの改善された耐久性のための必要条件は、セメント石における各ポイントと人為的な空気孔との距離が所定の値を超えないことである。前記の間隔は、間隔係数とも、又は"パワーズの間隔係数"とも呼称される[T.C.Powers,The air requirement of frost−resistant concrete,"Proceedings ofthe Highway Research Board"29(1949)184−202]。研究室での調査によって、その際、臨界的な"パワーズの間隔係数"500μmを超過すると、凍結融解変化に際してコンクリートに損害が引き起こされることが示された。限られた空気孔率でそれを達成するためには、従って、人為的に導入された空気孔の直径が200〜300μm未満でなければならない[K.Snyder,K.Natesaiyer & K.Hover,The stereological and statistical properties of entrained air voids in concrete:A mathematical basis for air void Systems characterization "Materials Science of Concrete" VI (2001)129−214]。
【0008】
人為的な空気孔システムの形成は、骨材の組成と適合性、セメントの種類と量、コンクリートコンシステンシー、使用されるミキサ、混合時間、温度に決定的に依存するが、また空気孔形成剤の種類と量にも依存する。相応の製造規則を考慮することで、その影響を抑制することはできるものの、多数の不所望な障害がもたらされることがある。この結果として、コンクリート中の所望の空気含有率を超過もしくは下回ることがあり、従ってコンクリートの強度もしくは凍結耐久性に悪影響が及ぼされる。
【0009】
係る人為的な空気孔は、直接的に配分することはできず、いわゆる空気孔形成剤の添加によって、混合によって連行された空気が安定化される[L.Du & K.J.Folliard,Mechanism of air entrainment in concrete "Cement & Concrete Research" 35(2005)1463−71]。商慣習の空気孔形成剤は、大抵は、界面活性剤様の構造であり、混合によって導入された空気を、300μmよりできる限り小さい直径を有する小さい気泡へと破壊し、これらを湿ったコンクリート構造物中で安定化する。その際、2つの種類で区別される。
【0010】
一方の種類は、例えばオレイン酸ナトリウム、アビエチン酸のナトリウム塩もしくはVinsol樹脂、松根からの抽出物であるが、それらは、ニートセメントにおける細孔溶液の水酸化カルシウムと反応し、不溶性のカルシウム塩として沈殿する。これらの疎水性の塩は、水の表面張力を低下させて、セメント粒子、空気及び水の間の界面に集まる。前記塩は、微細な気泡を安定化するので、硬化済みコンクリートにおいて、この空気孔の表面上に観察される。
【0011】
もう一方の種類は、例えばラウリル硫酸ナトリウム(SDS)もしくはドデシルフェニルスルホン酸ナトリウムであるが、それらは、前記のものに対して、水酸化カルシウムと可溶性のカルシウム塩を形成するが、異常な溶解挙動を示す。ある臨界温度未満で、この界面活性剤は、非常に低い可溶性を示し、この温度より高い温度で、非常に良好な溶解性を示す。空気と水との界面層への好ましい集積によって、これらは同様に表面張力を低下させるので、微細な気泡を安定化し、好ましくは硬化済みのコンクリートにおいて前記の空気孔の表面上に観察される。
【0012】
技術水準による前記の空気孔形成剤の使用に際して、多くの問題が生ずる[L.Du & K.J.Folliard,Mechanism of air entrainment in concrete "Cement & Concrete Research" 35(2005)1463−71]。例えば、より長い混合時間、種々のミキサ回転数、レディミックスコンクリートでの配量順序の変更によって、(空気孔中で)安定化された空気が再び追い出されるということが引き起こされることがある。
【0013】
延長された輸送時間と、粗悪な温度調節と、種々のポンプ装置及び搬送装置でのコンクリートの輸送と、並びに前記のコンクリートの打ち込みと、それに付随する変更された後加工、振動挙動及び温度条件は、予め調整された空気孔含有率を大きく変更させることがある。それは、最悪の場合には、該コンクリートが、規定の暴露等級(Expositionsklasse)の必要な限界値をもはや満たさず、従って使用不能になっていることを意味することがある[EN 206−1 (2000),Concrete − Part 1:Specification,performance,production and conformity]。
【0014】
コンクリート中の微細物質(例えば、種々のアルカリ含量を有するセメント、フライアッシュ、シリカ粉もしくは着色添加剤などの混和材)の含分は、同様に空気孔形成を損ねる。また、消泡作用を有する流動剤との相互作用が生ずるため、空気孔が追い出されることもあるが、また追加的に制御されずに導入されることもある。
【0015】
空気孔の導入の欠点として、更に、コンクリートの機械的強度が空気含分の増大に伴い低下することが確認されるべきである。
【0016】
凍結耐久性のコンクリートの製造を困難にする前記の全ての影響を回避できるのは、必要な空気孔システムが、前記の界面活性剤様の空気孔形成剤によって生成されず、空気含量がポリマー性のマイクロ粒子(マイクロ中空球)の混加もしくは固体配量によって由来する場合である[H.Sommer,A new method of making concrete resistant to frost and de−icing salts,"Betonwerk & Fertigteiltechnik" 9(1978)476−84]。マイクロ粒子は大抵は、100μm未満の粒度を有するので、コンクリート構造物中では、人為的に導入された空気孔よりも微細にかつ一様に分布することができる。それによって、コンクリートの凍結融解変化に対する十分な耐久性のためには少量でも十分である。
【0017】
コンクリートの凍結融解変化耐久性の改善のための係るポリマー性マイクロ粒子の使用は、既に技術水準に相応して知られている[DE2229094号A1、US4,057,526号B1、US4,082,562号B1、DE3026719号A1を参照]。そこに記載されるマイクロ粒子は、少なくとも10μm(通常は明らかにより大きい)の直径を有し、空気あるいはガスで充填された中空空間を有する。それは、同様に、100μmより大きくてよく、多くのより小さい中空空間及び/又は細孔を有してよい多孔質粒子を含む。
【0018】
コンクリート中への人為的な空気孔形成のために中空なマイクロ粒子を使用する場合に、前記の市場に出回る技術を実施するには、2つの要因が欠点であると見なされる。比較的多量の配量によってのみ、コンクリートの凍結融解変化に対する満足のいく耐久性を達成できるに過ぎない。従って、本発明の課題は、水硬性の建材混合物のための凍結耐久性もしくは凍結融解変化耐久性の改善のための手段であって、比較的少量の配量であってもその完全な作用が展開されるものを提供することであった。本発明の課題は、前記手段の高い効率を達成して、相応の作用をできる限り少量で達成することであり、後者のことは、相応して仕上げられた建材混合物の製造費用を過度に高めないために必要なことである。
【0019】
更なる課題は、前記手段の作用を、建材混合物の加工及び硬化のできる限り直後に引き起こすことにあった。
【0020】
前記課題は、ポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子を水硬性の建材混合物中で用いる使用であって、マイクロ粒子のシェルが架橋剤を含有し、かつ/又は前記シェルが可塑剤を含有し、かつ/又はモノマー組成がコアからシェルへと段階的にもしくはグラジエントの形で変化することを特徴とする使用によって解決された。
【0021】
本発明により前記の構成要件の1つ以上を満たすマイクロ粒子は、非常に薄いシェルで製造することができる。建材混合物中で添加剤として使用される場合に、かかるマイクロ粒子は高い効果を有し、そして既に少量でも凍結変化あるいは凍結融解変化に対する所望の耐久性をもたらす。
【0022】
本発明によるマイクロ粒子のシェルは、平均において、好ましくは140nm未満であり、より好ましくは100nm未満の薄さのシェルであり、最も好ましくは70nm未満の薄さのシェルである。
【0023】
平均シェル厚の測定は、適宜、透過型電子顕微鏡像をもとに統計学的に有意な量の粒子を実測することによって行われる。
【0024】
薄いシェルを有するマイクロ粒子は、特に迅速に水を吸収し、そしてまた再び放出できることが判明した。従って、コンクリートの硬化に際して、凍結変化あるいは凍結融解変化耐久性の改善は、実質的により迅速に生ずる。
【0025】
本発明によるマイクロ粒子の製造のために好ましく使用される架橋剤の量は、0.3〜15質量%(シェル中のモノマーの全量に対する)であり、更に好ましくは0.5〜8質量%の架橋剤であり、最も好ましくは0.8〜3質量%である。
【0026】
特に好ましくは、架橋剤は、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルマレイネート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ペンタエリトリットテトラメタクリレートもしくはそれらの混合物の群から選択される。
【0027】
シェルポリマーの架橋を必ずしももたらすわけではなく、むしろ単に分子量の増大をもたらしうる架橋剤の使用によって、既に小さい厚さでも十分な強さを有し、マイクロ粒子の膨潤の間にも無傷のままとなるシェルの製造が可能である。同時に、架橋剤をシェル中で使用する場合に、膨潤後に、たるんだサッカーボール外被のようにくぼんでいる粒子は殆ど観察されない。
【0028】
本発明によるマイクロ粒子は、更なる好ましい一実施態様においては、シェル中に可塑剤を含有してよい。
【0029】
前記の粒子の乳化重合による好ましい製造において、0.3〜12質量%(100%としてのシェルの全質量に対して)を、シェルのモノマー混合物と一緒に反応器に入れるので、それらは既に重合の間に、従ってシェルの合成の間に存在している。
【0030】
選択的に、好ましい可塑剤の量を、重合後であるが、膨潤前にも添加することができる。
【0031】
特に好ましくは、0.6〜8質量%の可塑剤の量(100%としてのシェルの全質量に対する)であり、最も好ましくは、1〜3質量%の可塑剤である。
【0032】
可塑剤は、マイクロ粒子の完全な膨潤を可能にする強靱かつ可撓性のシェルを提供する。前記のようにして、同様に非常に薄いシェルを達成することができる。
【0033】
有利には、フタレート、アジペート、ホスフェートまたはシトレートの群から選択される可塑剤が使用される;その際、フタレートが特に好ましい。
【0034】
以下の可塑剤が特に挙げられ、その際、当該リストは任意にさらに連ねることができ、かつ制限するものではないと理解されるべきである:
フタル酸のエステル、例えばジウンデシルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジオクチルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート、ジ−C7〜C11−n−アルキルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ベンジルオクチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレートおよびトリクレシルホスフェート、ジヘキシルジカプリルフタレート。
【0035】
ヒドロキシカルボン酸エステル、例えばクエン酸のエステル(例えばトリブチル−O−アセチルシトレート、トリエチル−O−アセチルシトレート)、酒石酸のエステルまたは乳酸のエステル。
【0036】
脂肪族ジカルボン酸エステル、例えばアジピン酸のエステル(例えばジオクチルアジペート、ジイソデシルアジペート)、セバシン酸のエステル(例えばジブチルセバケート、ジオクチルセバケート、ビス(2−エチルヘキシル)セバケート)又はアゼライン酸のエステル。
【0037】
トリメリット酸のエステル、例えばトリス(2−エチルヘキシル)トリメリテート。安息香酸のエステル、例えばベンジルベンゾエート。
【0038】
リン酸のエステル、例えばトリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジフェニルクレシルホスフェート、ジフェニルオクチルホスフェート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリス(2−ブトキシエチル)ホスフェート。
【0039】
フェノールまたはクレゾールのアルキルスルホン酸エステル、ジベンジルトルエン、ジフェニルエーテル。
【0040】
全ての前記の及び他の可塑剤は、単独でも又は混合物としても使用することができる。
【0041】
更に好ましい一実施態様においては、コアとシェルのモノマー組成は、理想的に構築されたコア・シェル型粒子の場合にそうであるように急激に変化せず、2段階以上でもしくはグラジエントの形で徐々に変化する。
【0042】
膨潤されるコアと、気球外被と同様に膨潤できるが、破れることなく取り囲まれた中空空間を覆っていることが望ましいシェルとの間に、両者の機能の一部を担う中間シェルが存在する場合に、マイクロ粒子のポリマー含有率を更に低減させることが可能である。
【0043】
更なるシェルによって、前記の効果を更に強めることが可能である。グラジエントは、非常に多数のシェルに相当する。
【0044】
もはや突然でないコアからシェルの移行によってシェル厚の正確な測定がもはや可能ではなく、あるいはもはや意義がないので、マイクロ粒子のポリマー含有率がより実用的と見なされるべきである。
【0045】
純粋なコア・シェル型粒子の場合には、同じ粒径であれば、ポリマー含有率の低下は、より薄い壁厚に相当する。
【0046】
本発明に相応して、中空空間に1〜100容量%、特に10〜100容量%の水が充填されているポリマー性マイクロ粒子が使用される。
【0047】
係る水充填されたマイクロ粒子は、技術水準に相応して既に公知であり、かつ刊行物EP22633号B1、EP73529号B1並びにEP188325号B1に記載されている。更に、この水充填されたマイクロ粒子は、Rohm&Haas社から商品名ROPAQUE(登録商標)として市販されている。前記製品は、今までは主に、紙、厚紙及び他の材料への塗被もしくは印刷の隠蔽性及び不透明度(乳白度)の改善のためにインキ及び染料で使用されていた。
【0048】
好ましい一実施態様によれば、使用されるマイクロ粒子は、1つのコア(A)と、少なくとも1つのシェル(B)とを有するポリマー粒子からなり、その際、該コア/シェル型ポリマー粒子は塩基によって膨潤させた。
【0049】
粒子のコア(A)は、該コアの膨潤を可能にする1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸(誘導体)モノマーを含有する;前記モノマーは、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びクロトン酸並びにそれらの混合物の群から選択される。アクリル酸及びメタクリル酸が特に好ましい。
【0050】
ポリマーシェル(B)を形成する非イオン性のエチレン性不飽和モノマーとしては、特にスチレン、ブタジエン、ビニルトルエン、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1〜C12−アルキルエステルが使用される。
【0051】
前記のポリマー性マイクロ粒子の乳化重合による製造と、例えばアルカリもしくはアルカリ金属水酸化物並びにアンモニアもしくはアミンなどの塩基によるその膨潤は、同様に、欧州特許文献EP22633号B1、EP73529号B1並びにEP188325号B1に記載されている。
【0052】
それは、コア・シェル型の粒子であって単一シェルもしくは複数シェルで構成され又はそのシェルがグラジエントを有する粒子であってよく、その際、本発明によれば特に薄いシェルが製造される。モノマー組成は、コアからシェルへと徐々に2段階もしくはそれより多くの段階で又はグラジエントの形で変化する。
【0053】
本発明により使用されるマイクロ粒子は、100〜5000nmの好ましい平均粒度を有する。使用されるマイクロ粒子のポリマー含有率は、直径及び含水量に依存して、2〜98質量%(水充填された粒子の全質量に対するポリマーの質量)であってよい。
【0054】
特に好ましくは、200〜2000nmの直径であり、最も好ましくは、250〜1000nmの粒度である。
【0055】
特に好ましいポリマー含有率は、2〜98質量%であり、好ましくは2〜60質量%のポリマー含有率であり、最も好ましくは2〜40質量%のポリマー含有率である。
【0056】
商慣習のマイクロ粒子(例えばROPAQUE(登録商標)型の)は、一般に水性分散液の形で存在し、前記分散液は、マイクロ粒子の凝集を抑えるために所定割合の界面活性剤構造の分散剤を含まねばならない。しかしながら、選択的に、前記マイクロ粒子の分散液であって、表面活性の(及びコンクリート中でできる限り障害作用を有する)界面活性剤を有さないものを使用できる。そのために、マイクロ粒子は、レオロジー調節剤を有する水溶液中に分散される。かかる増粘剤は偽可塑性粘度を有するが、それらは大抵は多糖の性質である[B.B.Braun&M.R.Rosen,"Rheology Modifiers Handbook" (2000),William Andrew Publ.]。極めて適しているのは、ジェラン−グループ(S−60)、特にウェラン(S−130)及びジウタン(Diutan)(S−657)の微生物性の菌体外多糖である[E.J.Lee&R.Chandrasekaran,X−ray and Computer modeling studies on gellan−related polymers:Molecular structures of welan,S−657,and rhamsan,"Carbohydrate Research" 214(1991)11−24]。
【0057】
本発明によれば、水充填されたポリマー性マイクロ粒子は、水性分散液の形で使用される。
【0058】
本発明の範囲においては、容易に、水充填されたマイクロ粒子を建材混合物に固体として直接的に添加することが可能である。そのために、マイクロ粒子は、例えば前記のように、凝集され、かつ通常の方法(例えば濾過、遠心分離、沈殿及び傾瀉)によって水性分散液から単離され、引き続き粒子は乾燥させられ、それによって水含有のコアを十分に維持したままにすることができる。マイクロ粒子中の含水率をできる限り不変にするために、凝集した材料を易揮発性液体で洗浄することが役に立つことがある。使用される(ポリ)スチレンシェルを有するROPAQUE(登録商標)型の場合には、例えばMeOHもしくはEtOHなどのアルコールが有効であると実証されている。
【0059】
水充填されたマイクロ粒子は、建材混合物に、0.01〜5容量%、特に0.1〜0.5容量%の好ましい量で添加される。建材混合物は、例えばコンクリートもしくはモルタルの形であり、この場合に、通常の水硬性の結合剤、例えばセメント、石灰、石膏もしくは硬石膏を含有してよい。
【0060】
水充填されたマイクロ粒子の使用による主たる利点は、コンクリートへの極めて少ない空気連行しか行われないということにある。それによって、明らかに改善されたコンクリートの圧縮強さが達成される。これらは、従来の空気孔形成で得られたコンクリートの圧縮強さよりも約25〜50%高い。従って、実質的により低い水/セメント値(W/Z値)によってしか達成できない強度クラスを達成することができる。しかしながら、他方では、低いW/Z値は、コンクリートの加工性を事情によっては明らかに制限する。
【0061】
更に、より高い圧縮強さは、結果として、コンクリート中で強度発揮に必要なセメントの含量を低減できるので、1m3あたりのコンクリートの価格が明らかに低下することになりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子を水硬性の建材混合物中で用いる使用であって、マイクロ粒子のシェルが架橋剤を含有し、かつ/又は該シェルが可塑剤を含有し、かつ/又はモノマー組成がコアからシェルへと段階的にもしくはグラジエントの形で変化していることを特徴とする使用。
【請求項2】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、架橋剤が、エチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコール(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルマレイネート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、グリセリントリメタクリレート、ペンタエリトリットテトラメタクリレート又はそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする使用。
【請求項3】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、可塑剤が、フタレート、アジペート、ホスフェート、シトレート又はそれらの混合物の群から選択されることを特徴とする使用。
【請求項4】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、モノマー組成がコアからシェルへと徐々に2段階もしくはそれより多くの段階で又はグラジエントの形で変化していることを特徴とする使用。
【請求項5】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、シェルの厚さが平均して140nm未満であることを特徴とする使用。
【請求項6】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、マイクロ粒子が、水性塩基によって膨潤された、1つ以上の不飽和カルボン酸(誘導体)モノマーを含有するポリマーコア(A)と、主に非イオン性のエチレン性不飽和モノマーからなるポリマーシェル(B)とを含有するポリマー粒子からなることを特徴とする使用。
【請求項7】
請求項6に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、不飽和カルボン酸(誘導体)モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸及びクロトン酸の群から選択されることを特徴とする使用。
【請求項8】
請求項6に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、非イオン性のエチレン性不飽和モノマーが、スチレン、ブタジエン、ビニルトルエン、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸もしくはメタクリル酸のC1〜C12−アルキルエステルからなることを特徴とする使用。
【請求項9】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、マイクロ粒子が、2〜98質量%のポリマー含有率を有することを特徴とする使用。
【請求項10】
請求項8に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、マイクロ粒子が、2〜60質量%のポリマー含有率を有することを特徴とする使用。
【請求項11】
請求項9に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、マイクロ粒子が、2〜40質量%のポリマー含有率を有することを特徴とする使用。
【請求項12】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、マイクロ粒子が、100〜5000nmの直径を有することを特徴とする使用。
【請求項13】
請求項11に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、マイクロ粒子が、200〜2000nmの直径を有することを特徴とする使用。
【請求項14】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、マイクロ粒子が、建材混合物に対して、0.01〜5容量%の量で、特に0.1〜0.5容量%の量で使用されることを特徴とする使用。
【請求項15】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、建材混合物が、セメント、石灰、石膏及び硬石膏の群から選択される結合剤からなることを特徴とする使用。
【請求項16】
請求項1に記載のポリマー性の中空空間を有するマイクロ粒子の使用であって、建材混合物がコンクリートもしくはモルタルであることを特徴とする使用。

【公表番号】特表2009−527450(P2009−527450A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555735(P2008−555735)
【出願日】平成19年1月30日(2007.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050910
【国際公開番号】WO2007/096237
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(390009128)エボニック レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (293)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】