説明

非常用物資備蓄装置

【課題】非常用物資を、災害時に持ち出ししやすく、また、運搬しやすいようにする。
【解決手段】開閉自在の蓋5を有する収納ケース部2内に災害時に使用する非常用物資Gを入れて保管する非常用物資備蓄装置1において、前記収納ケース部2を筒状として、建物の軒下Rにスライド自在に吊す構成を採用した。ケースの形状を筒状とすれば、仮に家屋が倒壊してもその位置を発見しやすく、また、重量物であっても複数人で持ちやすく運搬も容易となる。また、軒下Rの空間は普段使用しないのでデッドスペースの有効活用となる。さらに、軒下Rに吊す際には、一端部を持ち上げて軒下に吊した後、他端部を支えて一端部側に押し込めばよいし、軒下Rから取り降ろす際には、他端部を引いて引き出すとともに、その引き出した他端部を支えながら残る一端部を取り降ろせばよいので、作業途中において、常に収納ケース部2全体を支える必要がなく、比較的簡単な作業となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地震、洪水、津波などの災害時に使用する非常用物資を備蓄する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震、洪水、津波などの災害時に使用する非常用物資、例えば、非常用食糧、医薬品、衣類、水等のいわゆる非常持ち出し品は、いざという時に持ち出ししやすいように、袋や箱、各種ケースなどに梱包した状態で、住居の出入口近くの部屋や玄関先などに保管する場合が多い。
また、住居とは別棟の物置等が設置されている場合には、その物置等に非常用物資を収納しておき、避難時に持ち出しできるようにしておく場合もある。
【0003】
さらに、特に、非常用物資に限定されるものではないが、各種用途の物資を備蓄するスペースとしては、上記のほかにも家屋内外の様々な場所が考えられ、例えば、特許文献1及び特許文献2には、軒下スペースを活用した吊下式収納庫の技術が開示されている。
【特許文献1】実開昭58−70150号公報
【特許文献2】実開昭61−52934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、災害時には、家屋の倒壊等により、その家屋内に備蓄していた非常用物資が、瓦礫の下に埋まるなどして持ち出しできない場合がある。
また、非常用物資が重量物であったり多物品に及ぶ場合は、一時に避難先へ運ぶことができず、何度かにわけて運ばなければならない場合もある。災害時には移動手段が充分に確保されていない事態が予想され、そのような事態を鑑みれば、非常用物資は一度に運搬できることが望ましい。
さらに、非常用物資が重量物であったり多物品に及ぶと、その運搬作業は重労働となるので、できる限り運搬しやすいものが望まれる。
【0005】
そこで、この発明は、非常用物資を、災害時に持ち出ししやすく、また、運搬しやすいようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、この発明は、非常用物資を収納するケースの形状を筒状にする手段を採用したのである。
【0007】
ケースの形状を筒状とすれば、仮に、家屋が倒壊してそのケースが瓦礫の中に埋まっても、その筒状に長いケースのいずれかの部分が瓦礫の表面近くに位置する可能性が高くなる。少なくともケースの一部が表面近くに位置すれば、そのケースが埋まっている位置を発見しやすい。ケースが埋まっている位置を発見できれば、その筒状の端部を掘り出して引張れば、瓦礫の中から抜けやすい。したがって、想定されるいかなる被災状況においても持ち出しやすいものとし得る。
加えて、ケースが筒状であるので、持ち出した後、その端部を引けば運搬容易であるし、重量物であっても複数人で持ちやすい。
【0008】
また、この発明は、非常用物資を収納するケースを、家屋の軒下に吊す手段を採用したのである。
【0009】
軒下の空間は普段使用しないので、ケースの設置場所を軒下とすれば、そのケースが日常生活に支障しにくくなり、デッドスペースの有効活用にもつながる。また、そのケースは建物の端部に位置するので、万が一、家屋が倒壊してもケースが瓦礫の中に埋まりにくい。仮に、瓦礫の中に埋まっても、軒下は家屋の端部に位置するので発見しやすい。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、非常用物資を収納するケースの形状を筒状にしたので、災害時に持ち出ししやすく、持ち出した後、運搬しやすいようになる。また、非常用物資を収納するケースを、家屋の軒下に吊したのでデッドスペースの有効活用ができ、仮に、そのケースが瓦礫の中に埋まっても軒下は家屋の端部に位置するので発見しやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の具体的実施形態として、開閉自在の蓋を有する収納ケース部を設け、その収納ケース部内に災害時に使用する非常用物資を入れて保管する非常用物資備蓄装置において、前記収納ケース部を筒状とした構成を採用し得る。
【0012】
また、開閉自在の蓋を有する収納ケース部を設け、その収納ケース部内に災害時に使用する非常用物資を入れて保管する非常用物資備蓄装置において、前記収納ケース部を、建物の軒下に吊した構成を採用し得る。
【0013】
また、開閉自在の蓋を有する収納ケース部を設け、その収納ケース部内に災害時に使用する非常用物資を入れて保管する非常用物資備蓄装置において、前記収納ケース部は筒状を成し、その収納ケース部を、その筒軸方向が建物の外壁に沿って横方向になるように前記建物の軒下に吊した構成を採用し得る。
建物の軒下は、通常、その建物の外壁に沿って横方向に長く延びており、1階部分、2階部分等のフロアの差異にかかわらず、窓や出入り口等の開口部上、あるいは開口部の無い部分いずれの場合にも、普段使用する機会があまりない。その建物の外壁に沿って横方向に長い軒下空間に、筒状を成す収納ケース部を横向きに配置したので、デッドスペースの有効活用が可能である。また、収納ケース部が筒状であるので、それを軒下空間に収めれば、軒の下で雨に濡れにくいという効果もある。
【0014】
さらに、上記筒状を成す収納ケース部を、その筒軸方向に沿ってスライド自在に上記建物の軒下に吊した構成とすることもできる。
収納ケース部をスライド自在とすれば、その収納ケース部を軒下に吊す作業、及び吊した収納ケース部を取り降ろす作業が、比較的簡単となる。例えば、軒下に吊す際には、まず、収納ケース部の一端部を持ち上げて軒下に吊し、その後は、他端部を支えて一端部側に押し込めばよいし、その吊された状態の収納ケース部を取り降ろす際には、逆に、他端部を引いて引き出すとともに、その引き出した他端部を支えながらさらに引き出して残る一端部を取り降ろせばよい。このように、作業途中において、常に、収納ケース部全体を支える必要がなくなるため、比較的簡単な作業となる。
なお、このように、収納ケース部を、一度軒下に吊してしまえば、災害時や、必要な最小限の備蓄物資の入れ替え時以外は、収納ケース部を軒下から取り降ろす機会は少ないと考えられる。
【0015】
上記筒状を成す収納ケース部に車輪を取付け、その車輪の回転により前記収納ケース部を走行可能とした構成を採用することもできる。
収納ケース部に入れられた非常用物資を運搬する際には、その収納ケース部を担いで運んでも良いし、地面を引きずるように引張ってもよいが、このように車輪を付ければ走行できるようになるので、その収納ケース部を引張るか押すなどして容易に運搬することができる。なお、車輪は、収納ケース部の前後において、それぞれ左右両側に設けてもよいが、少なくとも前後いずれかに設けられていれば、適宜、取手等設けることによって、収納ケース部を引張って運ぶのには支障ない。
【0016】
また、上記筒状を成す収納ケース部に足載せ台を設け、その足載せ台上に、前記収納ケース部に跨った被災者が足を載せることができるようにした構成としてもよい。
このようにすれば、災害時に負傷者が発生した場合、あるいは、高齢者や身体の不自由な方が避難する際に、非常用物資の運搬と同時に、その負傷者等を適切な場所へ早期に避難させることができる。
【0017】
さらに、上記収納ケース部は円筒状を成し、上記足載せ台は凹状の弧面を有する内側面と凸状の弧面を有する外側面とを備えているとともに前記収納ケース部に筒軸交差方向へ回動自在に取付けられ、その回動により、前記足載せ台は、前記外側面が前記収納ケース部の外周面に沿って面一状態に収納されるとともに、使用時には、前記内側面が上向き状態に維持されてその内側面上に上記被災者が足を載せることができるようにした構成を採用し得る。
このようにすれば、足載せ台を使用しない通常の状態において、その足載せ台は、筒状の収納ケース部の外周面から外側に突出しないので、運搬時にその足載せ台が邪魔になることがない。また、その足載せ台の外側面が、収納ケース部の外周面と面一状態に収納されているので、外観上の一体感が生まれ、美観上も好ましい。
さらに、足載せ台は、使用状態において、凹状の弧面を有する内側面が上向き状態に維持される。足載せ台が上向き凹状であれば被災者が足を載せやすく、また、載せた足の両側に立上がり部があるので、足は両側から保持されて落ちにくいという効果もある。
【0018】
上記の各構成において、非常用物資を、上記収納ケース部内に出し入れ可能な長袋に収納すれば、筒状を成す収納ケース部内に、その筒軸方向に沿って並ぶように収納された非常用物資群を、一斉に引き出すことができるので便利である。また、収納ケース部を保管場所から取り下ろすことなく、長袋のみ引き出せば非常用物資を取出しできるという利点もある。
【0019】
また、その長袋を透明にして、その長袋内に収納した上記非常用物資を外部から視認可能としてもよい。筒状を成す収納ケース部内において、非常用物資群は、上記のように、その長袋内に筒軸方向に沿って並ぶように収納されているが、長袋が透明であるので、その引き出した状態において、目的の物資が筒軸方向どの位置にあるかを一目で把握できるので便利である。
ちなみに、収納ケース部が筒状であって、且つ上記のごとく袋が長手状でなければ、このように収納されたすべての物資の位置を、一目で外部から把握することは困難であると考えられる。
【0020】
さらに、上記非常用物資備蓄装置を浮体として用いた避難用筏の構成を採用することもできる。
【0021】
その構成は、上記蓋は上記収納ケース部内を水密に閉じるものであり、前記収納ケース部は、その収納ケース又は上記建物のいずれか一方に設けたレールと他方に設けた係合子とが噛み合うことによりスライド自在となっており、前記収納ケースに設けたレール又は係合子を、筏用の床部材に設けた対応する係合子又はレールに噛み合わせることにより前記床部材と前記収納ケース部とを一体に固定して構成したものである。
上記筏用の床部材は、単体で水に浮かぶ素材を採用することもできるが、収納ケース部内は蓋により水密に閉じられているので、上記のように、その筏用の床部材に収納ケース部を一体化させれば、ケース内部の空気の浮力により、筏の浮力を増すことができる。
また、収納ケース部と筏とが一体であれば、非常用物資を常に筏に備えることが可能となる。なお、上記収納ケース部を開閉する蓋を、筏を水に浮かべた状態で水面上に位置する部分に設ければ、その水に浮かべた状態において、内部に収納された非常用物資を取り出すことが容易となる。
【0022】
また、上記筏用の床部材は、上記収納ケース部を取り外した状態で折り畳み又は複数の部材に分割可能とし、その折り畳み後又は分割後の床部材を、上記収納ケース部内に収納可能とすれば、筏用の床部材の保管上、便利である。
【実施例1】
【0023】
実施例1を図1乃至図7に基づいて説明する。この実施例1は、内部に非常用物資Gを入れた状態で、建物の軒下Rに吊して固定される筒状の収納ケース部(コンポBOX)2を備えた非常用物資備蓄装置1である。
収納ケース部2は、図2に示すように、両端開口した筒状に形成されている。その筒状を成す収納ケース部2の両端部に雄ねじ部2aが形成されており、その雄ねじ部2aの端部にOリング7が嵌め込まれている。この雄ねじ部2aに、雌ねじ部5aを有する蓋5がねじ込まれることにより、収納ケース部2内は水密に閉塞されるようになっている。ケースの大きさは自由に設定可能であるが、この実施例では、収納ケース部2の外径30cm、長さ200cm、蓋の外径35cmに設定している。
収納ケース部2の素材としては、例えば、アクリル樹脂、ユリア樹脂、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニール等を採用することができる。硬質の樹脂製とすることが望ましいが、軽量、耐熱性、所定の強度を有する素材であれば、軟質の可撓性のある樹脂素材、あるいは金属素材等を採用することもできる。
【0024】
この収納ケース部2内に、災害時に使用する非常用物資Gを入れて保管する。非常用物資Gとしては、例えば、非常用食糧、医薬品、衣類、水等が挙げられる。非常用物資Gは、前記収納ケース部2内に出し入れ可能な太さを有する透明な長袋9に収納され、長袋9が透明であるので、内部の収納物の種別、その収納位置が外部から視認可能である。
このため、図2(a)に示す状態から、図2(b)に示す状態へと長袋9が収納ケース部2から引き出されれば、外部から一目で目的の物資Gがどのあたりにあるか把握することができる。長袋9の端部を閉じる結束材9aを緩めてその端部から目的の物資Gを取り出しても良いし、その物資Gに近い部分において長袋9を切り裂いて物資Gを取り出しても良い。
【0025】
収納ケース部2は、その筒軸方向が建物の外壁Wに沿って水平方向になるように前記建物の軒下Rに吊される。
建物側には、水平なレール3が設けられている。当て板3cが釘3dによって軒下Rに固定されており、その当て板3cにねじ込まれた固定軸3bが、二股部3fを介して断面コ字状の固定片3aへと延びている。固定片3aは、同じく断面コ字状のレール3を外側から挟むように係止しており、固定片3aの下端部に設けた対の鍔部3a’が、同じくレール3の下端部に設けた鍔部3gを下方から支えている。
【0026】
図3(a)に示す状態から、図3(b)に示す状態へと、二股部3fのナット3eをねじ込めば、二股部3fが閉じて固定片3aがレール3を両側から締付けるようになっている。このレール3内に、収納ケース部2に設けた断面T字状の係合子4を嵌めれば、収納ケース部2は、その筒軸方向に沿ってスライド自在となる。
なお、レール3内に係合子4を嵌める際には前記ナット3eを緩めておき、係合子4を嵌めた後に上述のようにねじ込み、締付けを行えば、レール3内に係合子4を嵌め易い。
【0027】
また、そのレール3には、ストッパ6が設けられている。ストッパ6の構成は、図4に示すように、前記レール3にその長さ方向に直交する軸6cが設けられており、その軸6cは、レバー6bの操作によって回動可能である。軸6cの回動によって、その軸6cと一体に固定された当接板6aがレール3内で回動し、当接板6aが立ち上がって(上下方向を向いて)係合子4のスライド空間に侵入すれば、その係合子4のスライドを阻止し、当接板6aが横向きになれば、係合子4のスライド空間から退去して係合子4はスライド可能となる。
なお、レバー6bには、ピン6dをレール3の側板に向かって差し込み可能となっているので、ピン6dが嵌る孔をレバー6b及びレール3の側板に適宜設けることにより、当接板6aの向きを上下方向、横方向、いずれの向きにも不動に固定することができる。
【0028】
このレール3は、建物の1階部分、2階部分等、いずれのフロアに設けても良く、その建物は、いわゆる戸建住宅に限定されるものではなく、マンション、アパート等の集合住宅の通路やバルコニー等の軒下部分に設けても良い。
その設置場所が、例えば、1階部分の軒下、通路やバルコニー上の軒下であったり、あるいは、2階以上のフロアの軒下であっても、その設置場所近くに建物外壁Wの開口部(窓や出入り口等)があれば、収納ケース部2をレール3に着脱する作業が行い易いが、この収納ケース部2は、日常において頻繁に着脱するものではないので、仮に人が行き来しにくい箇所であっても、はしごや他の昇降装置を使って設置すれば実用上問題ない。
【0029】
また、上記収納ケース部2の一端には、車輪10が取付けられている。車輪10は、図5aに示すように、車軸11を介して収納ケース部2の幅方向両側に設けられており、その車輪10が、アーム12を介して回動軸13周りに回動可能となっている。その回動軸13は、収納ケース部2に設けられた軸受部14に支持されている。軸受部14は、筒状の収納ケース部2の外側に突出して設けられており(図5a(b)参照)、収納ケース部2の外周面2bとの間に空間が設けられているので、ナット13aを締付けることにより、収納ケース部2に対し回動可能に固定することができる。
【0030】
また、アーム12は、図5aに実線で示す使用状態において、外側に突出するストッパ装置17によって上方への動きが規制されている。ストッパ装置17は、ばね等の弾性部材(図示せず)によって前記突出方向へ付勢されており、その外面には、下方に向かって徐々に広がるテーパー面17aが形成されている。
アーム12を図中の鎖線から実線の位置に向かって回動させる際は、そのアーム12の中程がストッパ装置17のテーパー面17aに当たることにより、そのストッパ装置17を付勢力に抗して内側へ押し戻し、アーム12が通過すれば、ストッパ装置17が再度外側へ突出して、前述のごとく、アーム12の回動を規制するように機能する。
【0031】
アーム12を回動させて車輪10を引き出せば、その車輪10の回転により収納ケース部2は地盤上を走行できるようになる。このため、例えば、図5bに示すような取手42を取付けておけば、その取手42を引いて収納ケース部2を引張れば運搬が容易である。また仮にその災害時に負傷者が発生した場合、あるいは、高齢者や身体の不自由な方が避難する際には、非常用物資の運搬と同時に、その負傷者等を乗せて適切な場所へ早期に避難させることができる。
また、前記車輪10を介して円滑に走行できないようなフラットでない地盤上を通過する際には、一旦、前記アーム10を畳んで車輪10を収納し(図5aの鎖線状態)、収納ケース部2の底面を地盤に摺動させながら、その収納ケース部2を引張ってもよい。このとき、収納ケース部2の底面が円弧面となっているので、その摺動抵抗は少ないものとなっている。
【0032】
なお、上記取手42の構成は、図5b(a)(b)に示すように、対の取手片42a,42bと、その両取手片42a,42bの先端同士を連結可能なネジ部材42cとで構成されており、各取手片42a,42bの後端を蓋5に設けた穴5bに嵌め込んで固定するとともに、両取手片42a,42bの一方に設けたねじ部材42cを他方の先端にねじ込んで連結固定するようになっている。
また、この両取手片42a,42bは、収納ケース部2と蓋5との締付け金具としても利用できる。蓋5を開閉する際には、両取手片42a,42bを相互に連結しない状態で、それぞれの後端を前記穴5bに差し込む。両取手片42a,42bの長さ方向中程がS字状に湾曲しているため、その各両取手片42a,42bを、図5b(c)に示す向きに回動させることにより、そのS字部43が蓋5の側周面に触れて、そのS字部43よりも先端側は、蓋5の側周面から径方向外側に突出する。このため、取手片42a又は42bは掴みやすい状態に維持され、その取手片42a又は42bに蓋5の周方向へ向かう力を付与すれば、テコの原理により軽やかな力で蓋5を開閉できる。このため、力の弱い老人や女性でも簡単に収納ケース部2の蓋5を開閉することができる。
【0033】
また、収納ケース部2には、その収納ケース部2に跨った被災者が足を載せることができるよう足載せ台20が設けられている。足載せ台20は、図6に示すように、凹状の弧面を有する内側面21と凸状の弧面を有する外側面22とを備えた断面弧状の部材であり、その断面弧状の足載せ台20が、回動軸23を介して、収納ケース部2の筒軸交差方向(この実施例では筒軸直角方向)へ回動自在に取付けられている。
【0034】
足載せ台20は、図6に実線で示すように、その内側面21が収納ケース部2の凹部底面2cにぴったりと密着するとともに、外側面22が前記収納ケース部2の外周面2bに沿って面一状態に収納される。また、足載せ台20を使用する際には、図中鎖線で示すように、回動軸23周りに回動することにより、内側面21が上向き状態となり、その状態で足載せ台20の外側面22の一部が収納ケース部2の段部2dに当たって、それ以上回動しないように維持される。このため、内側面21上に被災者が足を載せることができるようになる。
【0035】
なお、この足載せ台20の構成としては、図7に示す構成を採用することもできる。図7に示す足載せ台20は、収納ケース部2に足載せ台20の回動を止めるストッパピン24を設けたものである。足載せ台20には、収納状態において前記ストッパピン24が嵌る凹部24aが設けられて、外側面22が前記収納ケース部2の外周面2bに沿って面一状態に収納されるようになっている。
【実施例2】
【0036】
実施例2を図8に示す。この実施例2は、収納ケース部2の周囲を囲むようにサドル部材16を固定し、上記アーム12を回動自在に支える軸受部14をサドル部材16に設けたものである。サドル部材16は、図8に示すように、フランジ部16aを挿通するボルト16b及びナット16cにより、収納ケース部2の外周面2bにぴったりと密着するように締付けられて固定されている。また、前記ボルト16bのうち一部は、上記係合子4を貫通して固定されているので、その締付けはよりしっかりとしたものとなっている。
【0037】
軸受部14を、収納ケース部2とは別体のサドル部材16に設けたので、収納ケース部2の構造をより簡素なものとすることができる。
これは、通常、軸受部14には大きな力が作用するため、収納ケース部2に直接軸受部14を設ければ、その収納ケース部2は非常に強固なものにする必要があるが、上記の構成によれば、サドル部材16に設けた軸受部14に作用する力が、収納ケース部2の全周に作用するので、力が分散するからである。
【0038】
また、この実施例2では、アーム12の動きを規制する上記ストッパ装置17に代えて、両側のアーム12,12間を結ぶ固定索(くさり)15を採用している。固定索15は、両アーム12,12のそれぞれ中程に設けられた係止部12aに接続され、図8に実線で示す車輪10を引き出した状態において、収納ケース部2の荷重によりその収納ケース部2の下面に当たって、そのアーム12の上昇を規制するように機能する。
【実施例3】
【0039】
実施例3を図9に示す。この実施例3は、複数の収納ケース部2,2を連結して用いるものである。向かい合う収納ケース部2の両端部に形成された各雄ねじ部2aに、両側に雌ねじ部5a,5aを有する蓋5がねじ込まれることにより、向かい合う収納ケース部2,2を同軸に連結するとともに、その各収納ケース部2,2内を水密に閉塞する。なお、収納ケース部2のもう一方の端部(隣接する収納ケース部2に向かい合わない側の端部)を閉じる蓋5は、前述の実施例と同様のもので充分である。
【実施例4】
【0040】
実施例4を図10及び図11に示す。この実施例4は、上記各実施例における非常用物資備蓄装置1を浮体として用いた避難用筏30である。収納ケース部2の蓋5は、その収納ケース部2内を水密に閉じるものであるので、その収納ケース部2内の空気の浮力を活用しようとするものである。
【0041】
避難用筏30は、その筏30に人が乗る部分である木製あるいは樹脂製の床部材31と、上記収納ケース部2とで構成される。床部材31には、上記実施例において建物の軒下Rに設けたものと同じ構成からなるレール33(図11参照)が周知の方法で固定されているので、収納ケース部2に設けた上記係合子4がレール33に噛み合うことにより、床部材31に対し収納ケース部2がスライドし、所定の位置に達すればその位置に固定する。
【0042】
その固定手段としては、図11に示すように、係合子4に形成した穴4aとレール33に設けた穴33aの位置を一致させて、ワイヤー、ロープ等を挿通して結束するようにしてもよいが、必要であれば、そのレール33に上述のストッパ6を設けるなど他の手段を採用してもよい。
【0043】
また、上記筏用の床部材31は、上記収納ケース部2を取り外した状態で、部材31aと部材31bとを蝶番32を介して折り畳みできるようになっている(図10(c)参照)。
なお、図10において、レール33は図示省略している。
【0044】
このように、収納ケース部2と筏30とが一体であれば、非常用物資Gを常に筏30に備えることが可能となる。なお、筏30を水面上に浮かべて使用する際には、床部材31の下方に収納ケース部2を位置させて、搭乗部分である床部材31が水面上できるだけ高い位置に保持することが望ましい使用形態であるといえる。
このとき、仮に、前記収納ケース部2を開閉する蓋5の部分を、筒状の収納ケース部2の周面の一部に設けるなどして、その蓋5が、筏30を水に浮かべた状態で水没しないようにすれば、筏30を陸地にあげることなく、内部に収納された非常用物資Gを取り出すことが容易となる。ただし、その場合、蓋5を開放することにより筏30の全体の浮力が減少するので、筏30が沈んでしまわないようにする必要がある。
その手法として、例えば、収納ケース部2が床部材31に複数取付けられていれば、その数が多いほど、一つの収納ケース2の蓋5を外すことによる浮力の急激な減少を回避できる。
【0045】
なお、上記筏用の床部材31は、上記収納ケース部2を取り外した状態で、複数の部材31a,31b・・・を完全に切り離しできるように分割可能としてもよい。
【0046】
また、上記各実施例において、建物側にレール3を設け(あるいは、筏側にレール33を設け)、収納ケース部2側に係合子4を設けたが、そのレール3,33と係合子4とを逆に配置してもよい。すなわち、建物側に係合子4を設け(あるいは、筏側に係合子4に相当する機能を有する係合子34(図示せず)を設け)、収納ケース部2側にレール3を設けてもよい。いずれの態様においても、係合子4は、上記各実施例のごとく対応するレール3,33に沿って連続的であってもよいし、断続的であってもよく、両者がスライド可能となって、且つ、収納ケース部2が固定できるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1の斜視図
【図2】(a)は収納ケース部を軒下に吊した状態を示す全体図、(b)は蓋を開けたところを示す要部拡大図
【図3】レールと係合子を示す要部拡大図
【図4】レールと係合子を示す斜視図
【図5a】収納ケース部への車輪の取付け状態を示す詳細図
【図5b】取手の取付け状態を示す詳細図
【図6】足載せ台の詳細図
【図7】足載せ台の詳細図
【図8】実施例2の収納ケース部への車輪の取付け状態を示す詳細図
【図9】実施例3の収納ケース部を軒下に吊した状態を示す全体図
【図10】実施例4を示し、(a)は床部材の平面図、(b)は同底面図、(c)は床部材を折り畳んだ状態を示す斜視図
【図11】図10の避難用筏の斜視図
【符号の説明】
【0048】
1 非常用物資備蓄装置
2 収納ケース部
2a,5a ねじ部
2b 外周面
2c 凹部底面
3,33 レール
3a 固定片
3b 固定軸
3c 当て板
3d 釘
3e 締付けナット
3f 二股部
3g 鍔部
4,34 係合子
5 蓋
6 ストッパ
6a 当接板
6b レバー
6c 軸
9 長袋
9a 結束材
10 車輪
11 車軸
12 アーム
13 アーム回動軸
14 軸受部
15 固定索
16 固定用サドル部材
20 足載せ台
21 内側面
22 外側面
23 軸
24 ストッパピン
30 避難用筏
31 床部材
32 蝶番

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉自在の蓋5を有する収納ケース部2を設け、その収納ケース部2内に災害時に使用する非常用物資Gを入れて保管する非常用物資備蓄装置1において、
上記収納ケース部2を筒状としたことを特徴とする非常用物資備蓄装置。
【請求項2】
開閉自在の蓋5を有する収納ケース部2を設け、その収納ケース部2内に災害時に使用する非常用物資Gを入れて保管する非常用物資備蓄装置1において、
上記収納ケース部2を、建物の軒下Rに吊したことを特徴とする非常用物資備蓄装置。
【請求項3】
開閉自在の蓋5を有する収納ケース部2を設け、その収納ケース部2内に災害時に使用する非常用物資Gを入れて保管する非常用物資備蓄装置1において、
上記収納ケース部2は筒状を成し、その収納ケース部2を、その筒軸方向が建物の外壁Wに沿って横方向になるように前記建物の軒下Rに吊したことを特徴とする非常用物資備蓄装置。
【請求項4】
上記筒状を成す収納ケース部2を、その筒軸方向に沿ってスライド自在に上記建物の軒下Rに吊したことを特徴とする請求項3に記載の非常用物資備蓄装置。
【請求項5】
上記筒状を成す収納ケース部2に車輪10を取付け、その車輪10の回転により前記収納ケース部2を走行可能としたことを特徴とする請求項1,3又は4に記載の非常用物資備蓄装置。
【請求項6】
上記筒状を成す収納ケース部2に足載せ台20を設け、その足載せ台20上に、前記収納ケース部2に跨った被災者が足を載せることができるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の非常用物資備蓄装置。
【請求項7】
上記収納ケース部2は円筒状を成し、上記足載せ台20は凹状の弧面を有する内側面21と凸状の弧面を有する外側面22とを備えているとともに前記収納ケース部2に筒軸交差方向へ回動自在に取付けられ、その回動により、前記足載せ台20は、前記外側面22が前記収納ケース部2の外周面2bに沿って面一状態に収納されるとともに、使用時には、前記内側面21が上向き状態に維持されてその内側面21上に上記被災者が足を載せることができるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の非常用物資備蓄装置。
【請求項8】
上記非常用物資Gは、上記収納ケース部2内に出し入れ可能な長袋9に収納したことを特徴とする請求項1又は請求項3乃至7のいずれかに記載の非常用物資備蓄装置。
【請求項9】
上記長袋9を透明にして、その長袋9内に収納した上記非常用物資Gを外部から視認可能としたことを特徴とする請求項8に記載の非常用物資備蓄装置。
【請求項10】
請求項4に記載の非常用物資備蓄装置1を浮体として用いた避難用筏30であって、上記蓋5は上記収納ケース部2内を水密に閉じるものであり、前記収納ケース部2は、その収納ケース部2又は上記建物のいずれか一方に設けたレール3と他方に設けた係合子4とが噛み合うことによりスライド自在となっており、前記収納ケース部2に設けたレール3又は係合子4を、筏用の床部材31に設けた対応する係合子34又はレール33に噛み合わせることにより前記床部材31と前記収納ケース部2とを一体に固定して構成した避難用筏。
【請求項11】
上記筏用の床部材31は、上記収納ケース部2を取り外した状態で折り畳み又は複数の部材31a,31b・・・に分割可能であり、その折り畳み後又は分割後の床部材31は、上記収納ケース部2内に収納可能であることを特徴とする請求項10に記載の避難用筏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−223644(P2007−223644A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47038(P2006−47038)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(506064212)
【Fターム(参考)】