説明

非接触セキュア通信のための装置及び方法

送信器(10)と受信器(1)との間のセキュア通信のための方法であって、送信器(10)によって送信される電力レベルの範囲、送信が発生する周波数範囲は、受信器(1)によって知られているか又は検出可能であり、送信器のための電力供給信号の受信器(1)による送信を具備し、受信器(1)は、送信の少なくとも全持続時間で送信信号を持つノイズ信号を送信し、受信器(1)は、有効信号を得るためにノイズ信号を受信される信号から引くことを特徴とする。また、本発明は、その方法に従って動作する受信装置を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔送信のための装置及び方法に関し、特に、(カードリーダー、ラベルリクエスタタイプ等の)固定交信局に対して、結合、例えば誘導結合によってリンクされる(カード、チケット、ラベルタイプ等の)携帯可能な物体のための装置及び方法に関する。
【0002】
特に、本発明は、セキュア送信が提供される送信器と受信器とを含む装置を対象にする。より具体的には、これに限定しないが、本発明は、送信器がチップカードの送信器である時、及び受信器がチップカードリーダーである時の場合を専ら対象にする。
【0003】
それは、例えば携帯可能な物体と固定交信局との間の非限定リストに従って結合することによって非接触データ交換の全分野において、及び特に、行為又は物体の識別の分野、アクセス制御、例えばコンピュータサービスの分野、又はカード料金支払いの分野において用途を見出す。
【背景技術】
【0004】
本願に対して特許された特許FR2776865は、図1に示されるカードの送信器と受信器との間の通信システムを開示する。
【0005】
データ交換システムは、受信器1、例えばカードリーダーと、携帯可能な物体上に設置される1つ以上の送信器10とを含む。受信器1は、周波数生成器2、例えばロードインピーダンスrAと同調回路6とに直列で結合される発振器を含む。同調回路6は、容量インピーダンス5と誘導インピーダンス3とを直列に含む。例えば増幅及び処理回路8に容量結合されるダイオード7として示される検出手段を含む検出回路9は、同調回路6に並列に結合される。
【0006】
携帯可能な物体の送信器10は、例えば誘導コイル12に並列に接続されるキャパシタ13として、共振回路19の端に接続される一連の電気回路11を含む。
【0007】
動作において、携帯可能な物体の送信器10と受信回路1とは、各自の誘導ロード3、12を介して互いに誘導結合される。
【0008】
例えば、携帯可能な物体の送信器10は、ソース2から遠隔で電力供給される。この場合は大抵、カードリーダーに対面(encounter)する。
【0009】
結合における変化は、共振回路19に対して直列に、又は図1に示されるように並列に設置されるロードインピーダンス18bを変えることによって得られる。ロードインピーダンス18bにおける変化と、故に結合における変化とは、受信器1で検出される。故に、ロードインピーダンス18bの値を制御することによって、送信器10から受信器1へデータを送信することができる。
【0010】
上記特許で説明された携帯可能な物体の送信器10のさらに詳細な実施形態は、図2に示される。図1の例のように、携帯可能な物体の送信器10は、キャパシタ13が接続される端においてアンテナ12、例えば導電コイルを形成する誘導要素を含み、それにより共振回路19を形成する。電圧整流器15は、図示しない処理及び記憶手段14へ電力供給線Vddを介して伝送される、アンテナ12によって受信される交流電圧のDC電圧への変形を提供するためにアンテナ12の端へ並列に設置される。
【0011】
整流器15は、接続点15a及び15cを介してコイル12の両端に接続されるGRAETZブリッジである。整流器の接続点15bは、携帯可能な物体の送信器10の出力線Vssに直接接続される。
【0012】
整流器15の接続点15dは、変調回路18の入力18cに接続される。変調器18は、スイッチトランジスタ18a上に並列に設置される電気双極子18bを含む。このスイッチ18a及び双極子18bの集合は、整流器15の出力点Vrと差動増幅器16bの入力点Veとの間で、電力供給線Vdd上に直列に設置される。点Vssに対する各々のこの入力Veにおける印加電圧は、制限された電圧Vddである。
【0013】
変調器18の電気双極子18bは、トランジスタ18aが開いている時、変調器18の点18c及び18d間における電圧降下Vr−Vddを導入するよう選択される。トランジスタ18aが閉まっている時、変調器18によって導入される電圧降下は、比較的低く、好ましくは無視できるものになる。
【0014】
上記実施形態において、電気双極子18bは、その端上の電圧が実質的に一定であるように、非線形の電流−電圧特性を備えた要素であり、携帯可能な物体の品質係数(quality coefficient)の変調度は、実質的に一定の値に維持されうる。
【0015】
電気双極子18bは、レジスタ又はダイオード、即ちZENERダイオードでもよく、或いはゲートがドレインに接続されるトランジスタでもよい。また、電気双極子18bは、直列に関連付けられる複数のダイオードに存してもよい。要素14〜18はともに、図1に示される電気回路11を形成する。
【0016】
受信器1に対する送信器10の応答のデジタル暗号化は、受信器に知られ、受信暗号化メッセージを復号化するのに用いられる鍵を用いて知られる。
【0017】
送信器によって送信されるデータの暗号化は、所定数の動作が実行されることを必要とする。この数は、RSA(Rivest、Shamir、Adleman)暗号化の場合のように重要なことがある。また、所定の暗号化アルゴリズムは、DPA(差動電力分析)攻撃によって第三者が発見しうる鍵の記憶を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、送信器が送信し受信器が受信するメッセージの検出をさらに困難にすることができる方法及び装置を提案することにある。
【0019】
本発明の独創的な目的で、送信器は、任意の暗号化計算を実行せずに平文を送信することができる。故に、送信器のコスト及びサイズは、もはや鍵記憶手段及び暗号化手段を提供する必要が無いので、低減される。通信のセキュリティを危うくすることがある、侵入による鍵の検出の任意の危険性がもはやない。
【0020】
また、たとえ通信が記録されても、その後続の再生は、受信器がこの複製を理解できない限り、確実である。
【0021】
送信器と受信器との間の任意の物理的接触が無い通信の間、侵入者は、交換される信号を妨害することがある。本発明によると、受信器は、受信器のみが受信された信号を復号化できるようにそうしんきによって 送信された信号をスクランブルする。
【0022】
本旨は、送信器によって送信された信号をスクランブルする摂動(perturbation)を受信器が生成することである。その時、それが生成した摂動の効果を、受信された信号上で除去することにより送信器が送信する信号を回復することができる。
【0023】
図3のダイアグラムは、基本原理を説明するものである。
【0024】
図3において、送信器10と受信器1との間で、チャンネルCが実体化され、前記送信器10が配信する信号sと受信器が送信するノイズ信号bとが通過する。信号sは、信号sの搬送周波数のパラメータ、例えば振幅、周波数又は位相を変調することによって得られるデータ信号である。ノイズbは、送信器によって送信された信号sをスクランブルする。スクランブルノイズは、変調が有効信号sを送信するのに用いられるパラメータと同じパラメータに関する。チャンネルCは、任意の物理的存在を有さず、送信器と受信器との間のスペースである。カードリーダーの場合において、これは、カードとリーダーとの間のデータ交換の間にカードを挿入するためのリーダーに提供されるスペースである。潜在的なスパイEは、シグナルs´+b´を回復するだけであり、それは信号s及びbの変形された信号を示し、チャンネルCを通過する。信号s´及びb´は、例えばRF波の場合における送信アンテナに起因する帯域通過フィルタリング等のような変形をそれらが受けているので、s及びbとは異なる。
【0025】
受信器のこの目的に対して提供される手段によって送信されたノイズは、チャンネルCにおける送信器と受信器との間で伝搬する信号s´+b´を知ることのみによっては、信号sのオブジェクトを送信されたデータに逆に推測することが不可能である特徴を有する。
【0026】
このため、ノイズ信号bは、以下の特徴を有する。
【0027】
ノイズ信号bは、送信されたデータから独立である。故に、信号s´+b´のみから開始して、s又はs´に逆に推測することが不可能である。
【0028】
そのスペクトル帯域幅は、送信器が送信する信号のそれに及ぶ。
【0029】
ノイズ電力スペクトル密度の振幅は、信号sの有効帯域幅における信号のそれより大きい。信号sの有効帯域幅は、信号を送信するのに厳密に必要な周波数範囲である。このように、単独の帯域通過フィルターでノイズ信号を分離することができない。このため、ノイズ電力は、もはや抽出された信号上の所定の誤り比率がなく信号が抽出されることができない大きさのノイズ、即ちノイズ振幅に埋められるほどである。このため、ノイズ信号電力Pbに対する信号電力Psの信号対ノイズ比率S/Bは、所定のレベル未満である。ノイズは、再生可能ではなく、従って通常ランダムであるのが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0030】
要約すると、本発明は、送信器と受信器との間のセキュア通信のための方法であって、送信器によって送信される電力レベルの範囲、送信が生じる周波数帯域は、受信器によって知られるか又は検出可能であり、電力を送信器に供給するための信号の受信器による送信を具備し、受信器は、送信が生じる周波数帯域に及ぶスペクトル帯域と、送信器によって送信される信号レベル及び受信器によって送信される電力レベル間の比率が所定値より大きくなるような電力レベルとを備えた、送信されるデータから独立したノイズ信号を少なくとも全持続時間で送信し、受信器は、有効信号を得るためにノイズ信号を受信される信号から減算することを特徴とすること、に関する。
【0031】
特に、本発明は、例えば送信器がチップカードで、受信器がチップカードリーダーである場合の非接触通信の分野に適応する。リーダーは、カードに電力を供給する信号を生成する。カードは、リーダーに慣例により知られ、例えばリーダーの同調回路の1つの分離周波数又は整数の倍数である、送信副搬送波周波数を有する。一般に、カードは、カードを受けるためのリーダーに提供された通信スペースに導入される。カードを導入することは、リーダーの回路における追加のインピーダンスを変化させるので、インピーダンスにおけるこの変化を検出することは、信号が送信される情報である。
【0032】
好ましくは、受信器によって送信されるノイズ信号は、受信器によって送信器へ電力を供給する信号をランダムに変調することによって得られ、変調は、物理パラメータ、例えば位相、周波数、振幅に作用し、送信された信号において変調されるパラメータと同じである。
【0033】
送信信号が予め知られたビット期間を備えたデジタル信号である時、送信された信号の各ビット期間とこの信号に同期するこれとにおいて、ノイズ信号の変調されたパラメータに新たなランダム値を与える点で有利である。故に、選択されたパラメータの値をランダムに引くことは、送信された信号のビット期間に同期して実行される。変調は、広域スペクトルを有するので、スクランブルノイズのスペクトル帯域幅が送信信号のスペクトル帯域幅よりも広く、電力密度が送信信号の搬送周波数の近傍で比較的高いことは明らかである。
【0034】
好ましくは、変調されたパラメータは、ゼロの平均を備えたガウスの法則又は統一法に従うランダム変数である。故に、送信器へ受信器によって送信された電力を変化させることは、回避される。
【0035】
好ましくは、ノイズ電力レベルは、信号を検出することを試みる侵入者の場合である、受信器によって送信されたノイズ信号に関する任意の知識がない状態で、所定値よりも大きいビット誤り比率を得るために所定値に従って判断される。送信器の送信信号が既知の時間で既知の値を備えたビットの少なくとも1つの送信を含む時、本発明の有利な代替の方法に従って、既知の値の送信時間は、送信/受信の間に信号によって受けた歪みを評価するのに用いられる。
【0036】
他の受信期間の間、実ノイズ信号は、先に評価された歪みを用いて計算される。その時、この計算されたノイズ信号は、受信された信号から減算される。
【0037】
また、本発明は、カードの送信器、例えば遠隔の発振器に電力を供給するための信号を生成するための手段と、カードが持つ回路間の結合を提供するカードを受けるためのスペースと、電力供給信号を生成するための手段に結合されたリーダーの送信/受信手段とを含むチップカードリーダー装置であって、受信器は、電力供給信号を変調する電力供給信号を変調するための手段と、電力供給信号を変調するための前記手段に結合されるランダム信号生成器と、送信/受信手段上に存在する信号を処理するための手段とを含み、これらの手段は、ランダム信号生成器と送信/受信手段と変調手段とに結合され、送信/受信手段上に存在する信号から変調信号を減算するためにアンテナ手段と変調手段とに結合される減算手段と、有効信号を検出するために減算手段に結合される検出手段とを含むことに関する。
【0038】
代替の実施形態において、送信/受信手段上に存在する信号を処理するための手段は、独自の位置に従って、変調信号が、送信/受信手段上に存在する信号から、上記のように減算されることができ、又は有効信号の既知のイメージが、送信/受信手段上に存在する信号から減算されることができるスイッチ手段を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
従来技術の図と本発明の図とにおいて、同一の参照番号は、同一の機能を備えた要素を指定する。
【0040】
本発明に従う方法の第1実施形態は、送信器によって送信される信号sの変調が二相位相変調(BPSK)である場合について、以下に説明される。
【0041】
送信器によって送信される信号sの搬送周波数をfとし、1ビットの持続時間をTとし(f>>1/T)、搬送周波数の振幅をVとする。信号電力スペクトル密度Γ(f)は、以下のようになる。
【0042】
【数1】

【0043】
この式で、sincは、以下の定義に従うカーディナルsineを示す。
【0044】
【数2】

【0045】
信号によって使用される周波数帯域は、2/Tの幅を有し、fを中心とする。ここで、ノイズb(t)の式を仮定すると、以下のようになる。
【0046】
【数3】

【0047】
但し
【0048】
【数4】

【0049】
ここで、bは、平均0及び分散1を備えたガウスランダム変数であり、σは、ノイズレベルを調整するための定数である。
【0050】
このノイズは、基本帯域においてシンボルにガウスノイズを追加することに相当する。
【0051】
このノイズの電力スペクトル拡散(PSD)Γ(f)は、以下のようになる。
【0052】
【数5】

【0053】
ノイズは、振幅変調のランダムシーケンスに相当する。信号に追加されるこのノイズは、送信される信号の振幅をマスクする。
【0054】
故に、Vがσに置換えられることを除いて、信号sに対するものと同じPSDを有する。故に、ノイズスペクトル帯域は、信号のそれと実質的に同じである。
【0055】
最小係数σは、スクランブルが有効であることについて判断されないままである。
【0056】
送信ビット数に対する各誤り受信ビット数(ビット誤り比率、即ちBER)、対信号対ノイズ比率V/σ(ノイズ電力上の信号電力の比率)を本質的に与える理論曲線は、図4に図示される。BERは、縦座標にプロットされ、DBでの信号/ノイズ比率値は、横座標にプロットされる。送信されるべきノイズ電力は、所望の誤り比率を得るためにこの曲線から推論される。
【0057】
故に、誤り比率が0.3より大きいことが望まれる場合、信号対ノイズ比率は、−5.7dB未満になるべきである(ノイズ電力は、その信号より3.7倍大きい)。従って、V=1ボルトの場合、σはルート3.7≒1.9ボルトになるべきである。
【0058】
一般に、ノイズ電力レベルは、受信器によって送信されるノイズ信号を知らない場合に所定値より大きいビット誤り比率を得るために所定値に従って判断されるのが好ましい。
【0059】
ノイズが2つの類似の受信器によって再現可能ではないように、それは、ランダムであるのが好ましい。
【0060】
ノイズを生成することは、同じノイズが第三者によって生成されるのを防ぐために、ランダム現象、例えばトランジスタの機能におけるノイズを用いて実行される。
【0061】
その時、2つの同じように製造された受信器は、このノイズが例において熱ノイズであることによって、同じノイズ信号を生成しないことが明らかである。これは、ノイズ生成ソースにおいて、外部の世界に依存する実質的なランダム現象でなければならないことを意味する。
【0062】
ノイズが予測不可能であるために、及び将来のノイズだけが過去のノイズに依存するために、疑似ランダム現象を提供する論理回路が使用されるべきではないが、むしろトランジスタの熱ノイズのような物理的発生源の信号が使用されるべきである。実際、使用される通信プロトコルによると、送信器によって送信される信号sは、所定間隔で知ることができ、将来のノイズが過去のノイズに依存しただけの場合、その時これらの期間のノイズと後続の全体のノイズ連鎖とは、これから推論されることができる。
【0063】
ここで、送信される信号を回復するために受信器によってノイズを除去するための方法が検討される。
【0064】
受信器によるその送信と受信器の検出回路によるその受信との間で、ノイズ信号は、図5に示されるように電子機器と送信チャンネルCとによって各種畳み込みを受ける。この図は、送信器10、チャンネルC及び受信器1を概略的に示す。受信器1は、ノイズbの送信器22とノイズb´及び信号s´の受信器23とを含み、各々は、チャンネルCにおける畳み込みH1によるノイズbの変換と、チャンネルCにおける畳み込みH1による信号sの変換である。簡略化のため、ノイズの全ての畳み込みは、チャンネルにおける単独の畳み込みH2に低減される。
【0065】
受信器がbを知ることによってb´を除去できるように、それは、畳み込みH2を仮定しなければならない。例えば、この仮定は、通信の初期段階の間に実行されてもよい。
【0066】
通信が非接触であるように、フィルターHは、通信の間に変化しうる。故に、通信の間のこのフィルターの変化は、追跡されるのが好ましい。
【0067】
ここで、本発明の特定のハードウェア実施形態が、図6を参照して説明される。図6は、図1に示されるような受信/送信器システムの機能ブロック図を示す。受信器は、本発明を適用するために改善される。図1に示される回路について、検出回路7〜9は、ノイズb´及び有効信号s´を分離するためのモジュール33に置き換えられる。また、回路は、送信器用の電源周波数を変調するための回路31と、受信器のノイズと送信器によって送信される有効信号とを分離するための手段33と、ランダム信号生成器32とを含む。受信器のノイズと送信器によって送信される有効信号とを分離するための手段33は、一方では、それがこの回路31によって生成される変調信号を受信するように変調回路31に接続され、他方では、受信回路のポイント34に接続され、そこでは、送信器10によって送信され、受信器1のアンテナ3で磁気結合することによって受信される信号が存在する。アンテナ33によって生まれる信号は、ノイズ信号と有効信号との結合を示し、受信器1によって受信される。
【0068】
受信器のノイズと有効信号とを分離するための手段33は、ランダム信号生成器に結合される。この接続を用いて、受信器1において送信回路を持つカードの導入に起因する同調回路6のインピーダンスにおける変化は、ランダム信号生成器32に検出され送信される。ランダム信号生成器32は、受信器のノイズと有効信号とを分離するための手段33に結合される。
【0069】
動作は、以下のようである。送信器10を持つカードがリーダー1においてこの目的のために確保されるスペースに導入される時、それは、手段33によって検出される同調回路6のインピーダンスにおける変化を生む。この検出は、ランダムノイズ生成器32を有効にするための信号を手段33に送信させる。ランダムノイズ生成器32によって生成されるランダムノイズは、変調回路31によって受信され、搬送周波数生成器2によって送信される搬送周波数を変調するために、この回路によって使用される。この変調は、ロードrA4に加えて共振回路6をロードする抵抗rsの値の変調の、図6に示されるような形式を仮定することができる。この場合は、振幅変調に相当する。送信器10によって送信される信号が位相変調又は周波数変調される場合、変調器31の出力34は、それぞれ位相又は周波数変調回路に適用される。そのような位相又は周波数変調回路は、本質的に知られている。ランダムノイズは、先に説明したように、有効信号を埋める(bury)ために十分なレベルへチャンネルCに存在する信号/ノイズ比率を上げるのに十分である。手段33は、変調回路31からのノイズとアンテナ3上に存在するスクランブル有効信号s´+b´とを示す変調を受信し、例えば減算によって有効信号からノイズを分離し、出力35へ有効信号sを配信する。
【0070】
図示した例において、エミッター10は、遠隔電源非接触カードであり、受信器1は、RF波カードリーダーであり、受信周波数は、fc=13.56MHzである。目的は、カードの送信器10の送信をスクランブルすることである。送信器10/受信器1システムは、任意の密接な接触がなく、チップカードのISO14443標準によって定義されるプロトコルに従って本質的に知られる方法で動作する。
【0071】
参考として、この標準によると、最小2進比率は、f/128(〜106kbit/s)である。
【0072】
カードの送信器10は、例えば図2に示された従来技術に関連して先に説明したように、ロード変調によってリーダー1へ情報を送信する。なお、リーダー1は、非変調されたf=13.56MHz信号を送信する。この信号は、周波数生成器2、例えば発振器2によって生成される信号を受信するアンテナによって生成される。カードの送信器10は、そのロードを変調することによって周波数f=f/16=847.5kHzの副搬送波を生成する。
【0073】
副搬送波は、BPSK変調され、1ビットは、副搬送波の8周期に相当する。
【0074】
カードの送信器10は、期間TR1の間に位相Φの副搬送波からその送信を開始する。この位相Φは、<<1>>に相当する。位相Φ+180°は、<<0>>に相当する。
【0075】
生成器32によって生成されるノイズは、副搬送波の位相の検出を防ぐものである。有効信号sを生成するためにカード10のロード18bの変調が振幅変調を誘発することを仮定する。この変調は、図2及び6に示される抵抗18bにおける変化によって誘発される。本発明による受信器1は、周波数f=f/16=847.5kHzの矩形信号とランダム振幅(また、負の値を仮定しうる振幅)とを備えた振幅で13.56MHz搬送波を変調する。副搬送波f=f/16の振幅は、ビットがランダム信号生成器32によって送信される毎にランダムに引かれる。
【0076】
故に、生成されるノイズは、有効信号と同じスペクトル帯域を占める。副搬送波の代数的振幅は、ガウスの法則に従うと仮定した場合、この振幅の変化は、30%より高いビット誤り比率を有するために、図4に関連して先に説明されたように選択される。ノイズの変調指数の変化は、信号の変調指数の2乗の3.7倍よりも高くなるはずである。参考として、ノイズの変調指数は、所定の搬送振幅のための副搬送波の振幅に比例する。
【0077】
ここで、結果についての説明は、図7に関連して与えられる。この図は、信号時間図を示す。それは、A〜Dを含む。
【0078】
図7Aは、送信カード10によって送信される有効信号sを示す。これは、論理値1及び0を仮定するインパルス信号である。
【0079】
図7Bは、スクランブルがない場合、受信器のアンテナ3における電流を示す。変調がBPSK変調であるため、信号は、副搬送波の位相によってここで運ばれる<<carried>>。先に説明したように、位相Φは、<<1>>に相当し、位相Φ+180°は、<<0>>に相当する。
【0080】
図7Cは、ランダム信号生成器32によって制御される変調回路31が生成するノイズを示す。
【0081】
最後に、図7Dは、ノイズの、及び有効信号の存在下で、アンテナにおける電流を示す。
【0082】
図7のグラフのシミュレーションプロットに対して、生成されるノイズの変調指数の変化は、(10%)であり、ここで、ノイズレス受信信号の変調指数は、約1%であった。リーダー1から送信器10を持つカードまでのシミュレーション距離は、約4cmであった。故に、信号対ノイズ比率は、約45%のビット誤り比率に相当する−20dBであった。
【0083】
アンテナ3に存在する電磁場は、リーダー1及びカード10によって生成される場がもたらした場である。リーダー1によって生成されるノイズ場は、カード1の有効信号によって生成される場よりかなり大きい。結果として生じる場において、送信されるべきデータを持つ有効信号は、ノイズ信号によってマスクされる。
【0084】
しかし、リーダーとカードとの間の距離に対して比較的カードからかなり近い距離に自分自身を置くことによって、カードによって生成される場は、支配的になる点に留意すべきである。しかし、その性質によって、カードは、使用される時に動いており、リーダー1の動作スペースにおける任意の場所で発見されうる。その結果として、故に、リーダーよりもカードにかなり近くにスパイ装置を置くことが不可能になる。
【0085】
ノイズ及び有効信号の結合信号s´+b´からノイズb´を減算するために、先に説明したHフィルターを仮定することを避けることができる。1ビットの期間にわたって、ノイズは、以下の信号に比例する。
【0086】
【数6】

【0087】
ここで、c(t)は、周期1/fで、+1から−1まで変化する周期的矩形信号である。定数τは、初期時に依存する。故に、1つは以下を有する。
【0088】
【数7】

【0089】
ここで、Kは、−aと+aとの間の均一な確率密度を備えたランダム数である。例えば、搬送波が1Vの非変調振幅を有する場合、その時a=0.2Vは、20%の変調指数を有するために選択される。
【0090】
数Kは、カードの送信器10によって送信されるビット毎にランダム信号生成器32でランダムに引かれ、リーダー及びそれのみへ知られる。なぜなら、それは、手段33で受信されるからである。
【0091】
リーダー1によって送信されるノイズ信号の振幅の平均値は、ノイズによって誘発される振幅シフトの平均値が0であるため、時間にわたって一定である。故に、遠隔で電力供給されるべきそれのためにカード10の電圧を調節するためのパラメータに対するこのノイズの影響は、第1近似において無視されうる。この場合、システムは、線形である。
【0092】
故に、システムの線形性によって、リーダーに戻るそれについて、ノイズは以下のようである。
【0093】
【数8】

【0094】
故に、b´(t)の知識は、ノイズを減算することに成功するために十分である。
【0095】
受信器は、サンプリング周波数fで信号をデジタル化する。以下の初期化シーケンスで、基準ノイズは、記録されうる。
【0096】
・少なくとも1ビット(K=0)に対してノイズはなく、信号が記録される。
・少なくとも1ビットに対してK=Kであり、カードの送信器10は、先の段階と同じビットを送信する。先の段階のうち1つによってこの受信される信号の減算が実行され、全てがKで除される。故に、基準ノイズが得られ、記憶される。
【0097】
このシーケンスは、先に説明した期間TR1の間に実行されうる。
【0098】
次に、Kを知るリーダーについて、ノイズの減算は、例えばノイズ信号の位相反転によって、Kによる乗算によって、及び結合信号への加算によって実行される。この方法は、実行されるべき限定された数の動作を有する点で有利である。
【0099】
図8は、結合信号、ノイズ、そして有効信号の処理の間に存在する各種信号の時間ダイアグラムを示す。それは、A〜Eを含む。
【0100】
図8Aにおいて、カード10によって送信される有効信号が示される。
【0101】
図8Bにおいて、リーダー1のアンテナに存在する電流は、受信器1によって送信されるノイズがない状態で示される。
【0102】
図8Cにおいて、リーダー1のアンテナ3に存在する電流は、受信器1によって送信されるノイズが存在する状態で示される。
【0103】
図8Dにおいて、ノイズの減算の後にアンテナ3の信号を処理するための手段33に存在する信号が示される。
【0104】
図8Eにおいて、図8Bで示されたノイズレス信号とノイズ除去信号、即ち図8Dで示したように減算されたもののノイズとの間の差分信号が示される。
【0105】
図8において、図8Bで示されたノイズレス信号と、図8Dで示されたノイズを減算したノイズ信号とを比較することができる。この差は、図8Eに示される。使用されたサンプリング周波数は、4Xfである。各ビットの初めにおいて、差がかなりあるが、それは、急速に減少する。この差は、連続的なペアの間のインタフェースに起因する(ビット;ノイズ)(システムの全応答時間)。レベルが安定化される時、即ちビットの開始直後に、残余のノイズは、それが含む変調指数が0.1%未満になるように振幅を有する。これは、曲線eについて、各ビットの初めにおける差分信号が、1ビットの持続時間の約1/5の後にほぼ0に戻される比較的大きな振幅を有するという事実によって表される。
【0106】
通信中、基準ノイズは、リーダー1に対して相対的なカード10の動きとともに変化し、故に、記録は、適合されなければならない。ISO14443標準で説明されたプロトコルは、各バイトが、0にセットされたビットと1にセットされたビットとで囲まれることを提供する。これらの知られたビットは、記録された基準ノイズを更新するのに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】図1は、送信されるデータ信号の送信器による暗号化によって通信のセキュリティが得られる従来技術から知られるトランシーバ装置の例示的な実施形態を示す図である。
【図2】図2は、従来技術から知られる送信器の図1の実施形態よりさらに詳細で例示的な実施形態を示す図である。
【図3】図3は、本発明が基づく原理を説明することを意図するダイアグラムを示す図である。
【図4】図4は、送信されたビット数に対する各々の誤り受信ビット数の平均値対ノイズ電力上の信号電力の比率を与える理論曲線を示す図である。
【図5】図5は、送信器と前記受信器との間で送信チャンネルにおいて受信器が送信する送信信号とノイズとによって受ける変形を説明することを意図したダイアグラムを示す図である。
【図6】図6は、送信器を対象にした電力供給周波数を変調するための手段と、受信器のノイズと送信器が送信する有効信号とを分離するための手段とを含む受信器の機能ブロックを示す図である。
【図7A】図7Aは、信号の時間ダイアグラムを示し、送信器が送信する有効信号sを示す図である。
【図7B】図7Bは、信号の時間ダイアグラムを示し、スクランブルがない状態で受信器のアンテナ3における電流を示す図である。
【図7C】図7Cは、信号の時間ダイアグラムを示し、受信器の変調回路によって生成されるノイズを示す図である。
【図7D】図7Dは、信号の時間ダイアグラムを示し、ノイズの及び有効信号の存在下で受信器のアンテナにおける電流を最終的に示す図である。
【図8A】図8Aは、ノイズ及び有効信号の結合信号の処理中に存在する各種信号の時間ダイアグラムを示し、送信器が送信する有効信号を示す図である。
【図8B】図8Bは、ノイズ及び有効信号の結合信号の処理中に存在する各種信号の時間ダイアグラムを示し、受信器が送信するノイズがない状態でリーダーのアンテナに存在する電流を示す図である。
【図8C】図8Cは、ノイズ及び有効信号の結合信号の処理中に存在する各種信号の時間ダイアグラムを示し、受信器が送信するノイズが存在する状態でリーダーのアンテナに存在する電流を示す図である。
【図8D】図8Dは、ノイズ及び有効信号の結合信号の処理中に存在する各種信号の時間ダイアグラムを示し、ノイズを減算した後に受信器のアンテナの信号を処理するための手段に存在する信号を示す図である。
【図8E】図8Eは、ノイズ及び有効信号の結合信号の処理中に存在する各種信号の時間ダイアグラムを示し、図8Dに示したように、図8Dで示されたノイズレス信号と、ノイズ除去信号、即ち減算されたノイズとの間の各種信号を示す図である。
【符号の説明】
【0108】
10 送信器
11 電気回路
12 誘導ロード
19 共振回路
31 変調回路
32 ランダム信号生成器
33 アンテナ
34 ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信器(10)と受信器(1)との間のセキュア通信のための方法であって、送信器(10)によって送信される電力レベルの範囲、送信が生じる周波数帯域は、受信器(1)によって知られているか又は検出可能であり、
−送信器に電力供給するための信号の受信器(1)による送信と、
−前記有効データ信号の搬送周波数のパラメータを変調することによって有効データ信号の送信器による送信と、を具備し、
受信器(1)は、送信器(10)からの有効データ信号の送信の少なくとも全持続時間で、送信器(10)によって送信されるデータ信号レベルと受信器(1)によって送信される電力レベルとの間の比率が所定値よりも大きくなるように、送信されるデータから独立し、送信が生じる周波数帯域に及ぶスペクトル帯域を有し、及び電力レベルを有するノイズ信号を送信し、
受信器(1)は、送信される有効データ信号を得るためにノイズ信号を受信される信号から減算することを特徴とする方法。
【請求項2】
受信器(1)によって送信されるノイズ信号は、受信器(1)によって送信器(10)に電力を供給するための信号のランダム変調によって得られ、変調は、送信信号に使用されるパラメータと同一のパラメータに適用されることを特徴とする、請求項1に記載の送信器(10)と受信器(1)との間のセキュア通信のための方法。
【請求項3】
送信信号は、予め知られるビット周期を備えたデジタル信号であり、ノイズ変調が適用されるパラメータの値のランダム抽出は、送信される信号に同期して実行されることを特徴とする請求項2に記載の送信器(10)と受信器(1)との間のセキュア通信のための方法。
【請求項4】
ノイズ変調が適用されるパラメータの変調は、平均0を備えたガウスの法則(Gaussian law)又は統一法(uniform law)に従うことを特徴とする請求項3に記載の送信器(10)と受信器(1)との間のセキュア通信のための方法。
【請求項5】
ノイズレベルは、受信器(1)によって送信されるノイズ信号に関する知識がない場合に、所定値よりも大きいビット誤り比率を得るために、所定値に従って判断されることを特徴とする請求項1から4のうち何れかに記載の送信器(10)と受信器(1)との間のセキュア通信のための方法。
【請求項6】
送信器(10)の送信信号は、受信器(1)に同時に知られる既知の値のビットと、送信の他の時における未知の値のビットとのうちの、少なくとも1つの送信を含み、
既知の値を備えたビットの送信の既知の時間は、送信/受信の間における信号の歪みを評価するのに用いられ、これらの評価された歪みは、受信器によって受信される信号から減算されるノイズ信号になる実ノイズ信号を計算するための他の時間の間に使用されることを特徴とする請求項3から5のうち何れかに記載の送信器(10)と受信器(1)との間のセキュア通信のための方法。
【請求項7】
カードの送信器(10)に電力供給するための信号を生成するための手段(2)と、カード(10)が持つ回路(11〜13)間の結合を提供するカードを受けるためのスペースと、電力供給信号を生成するための手段(2)に結合されるリーダー(1)の送信/受信手段(3)とを具備するチップカード(10)のリーダー(1)であって、
電力供給信号を変調する、電力供給信号を変調するための手段(31)と、
電力供給信号を変調するための前記手段(31)に結合されるランダム信号生成器(32)と、
受信器(1)によって受信される信号を処理するための手段(33)であって、これらの手段(33)は、ランダム信号生成器(32)と、送信/受信手段(3)と、変調手段(31)とへ結合され、これらの手段(33)は、カードの送信器(10)によって送信される有効信号を回復するために、送信/受信手段(3)に存在する信号と変調信号とを分離する受信器(1)によって、受信される信号を処理する、手段と
を具備することを特徴とするリーダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図7c】
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【図7d】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【公表番号】特表2008−515261(P2008−515261A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−532939(P2007−532939)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【国際出願番号】PCT/FR2005/050779
【国際公開番号】WO2006/035178
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【Fターム(参考)】