説明

非接触型データ受送信体およびその製造方法

【課題】他の同種のシート状物と重ね合わせても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易な非接触型データ受送信体を提供する。
【解決手段】本発明の非接触型データ受送信体10は、インレット11と、インレット11における少なくともICチップ15が設けられた面を被覆する被覆材12と、を備え、被覆材12は2液硬化型ウレタン系接着剤からなり、被覆材12におけるICチップ15と接する面とは反対側の面が凹凸面をなしていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波または電波を媒体として外部から情報を受信し、また、外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体およびその製造方法に関に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICタグは、基材と、その一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えており、情報書込/読出装置からの電磁波または電波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICタグ内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICタグのアンテナから発信される。
【0003】
ICタグを耐熱性、耐候性および柔軟性に優れたものとするために、種々のパッケージ化されたICタグが検討されている。
例えば、接着剤を介して、薄いシート状の回路部を、シリコーン膜でコーティングされたウレタン樹脂からなる表面基材で挟み込んで、これらを一体化してなるシート状のICタグが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなシート状のICタグは、他の同種のシート状のICタグと重ね合わせると、互いに密着してしまい、剥離するのが難しく、取り扱いが困難であった。
そこで、シート状のICタグ同士が密着しないようにするには、これらのICタグが、互いに重なり合わないような形状をなしていればよい。このように、シート状のICタグを、互いに重なり合わないような形状としたものとしては、例えば、長手方向を回転軸として若干のひねりを加えたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−056362号公報
【特許文献2】特開平8−315264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に知られているICタグは、定型状の物体を包装する包装体の隙間に差し込んで用いられ、その隙間に差し込んだ際に、ひねりが自然に戻ることによって、角部分が包装体の内側に引っ掛かり、隙間から抜け落ちることを抑制したものであった。すなわち、ICタグに加えられたひねりは、恒久的なものではなく、外力を加えると、容易にICタグが平らな状態に戻ってしまうおそれがあった。このようにICタグが平らな状態に戻ってしまうと、他のICタグと密着することがあった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、他の同種のシート状物と重ね合わせても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易な非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非接触型データ受送信体は、インレットと、該インレットにおける少なくともICチップが設けられた面を被覆する被覆材と、を備えてなる非接触型データ受送信体であって、前記被覆材は2液硬化型ウレタン系接着剤からなり、少なくとも前記被覆材における前記ICチップと接する面とは反対側の面が凹凸面をなしていることを特徴とする。
【0009】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法は、インレットと、該インレットにおける少なくともICチップが設けられた面を被覆する被覆材と、を備え、前記被覆材は2液硬化型ウレタン系接着剤からなり、少なくとも前記被覆材における前記ICチップと接する面とは反対側の面が凹凸面をなしている非接触型データ受送信体の製造方法であって、剥離基材の一方の面であり、凹凸面をなす剥離層の上に、2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤を塗布する工程Aと、前記剥離基材に塗布した接着剤を介して、前記剥離基材の一方の面上にインレットにおけるICチップが設けられた面を重ね合わせて、前記剥離基材に対して前記インレットを押圧することにより、前記剥離基材と前記インレットの間に、前記接着剤を展開させる工程Bと、前記剥離基材を剥離する工程Cと、を有することを特徴とする。
【0010】
前記工程Bと前記工程Cの間に、さらに、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面に、2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤を塗布する工程Dと、前記インレットに塗布した接着剤を介して、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面上に、一方の面をなす剥離層を対向させるように、剥離基材を重ね合わせ、前記インレットに対して前記剥離基材を押圧することにより、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面と、前記剥離基材との間に、前記接着剤を展開させる工程Eと、を有することが好ましい。
【0011】
前記工程Eにおいて、前記剥離基材の剥離層が凹凸面をなしていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非接触型データ受送信体によれば、少なくとも被覆材におけるICチップと接する面とは反対側の面が凹凸面をなしているので、他の同種のシート状物(ICタグなど)と重ね合わせても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。したがって、多数の非接触型データ受送信体を一纏めにしても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。
【0013】
本発明の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、剥離基材の一方の面であり、凹凸面をなす剥離層の上に接着剤を塗布し、剥離基材上に、2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤およびインレットが積層、一体化された積層体を形成し、接着剤が硬化した後、剥離基材を剥離するので、被覆材の外面に、剥離基材の凹凸面が転写された非接触型データ受送信体10を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第一の実施形態において、工程Aを示す概略斜視図である。
【図3】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第一の実施形態において、工程Bを示す概略斜視図である。
【図4】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第一の実施形態において、工程Bを示し、図3のA−A線に沿う概略断面図である。
【図5】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第一の実施形態において、工程Fを示す概略断面図である。
【図6】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第一の実施形態において、工程Fを示す概略断面図である。
【図7】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第一の実施形態において、工程Cを示す概略断面図である。
【図8】本発明の非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
【図9】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第二の実施形態において、工程Aを示す概略斜視図である。
【図10】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第二の実施形態において、工程Bを示す概略斜視図である。
【図11】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第二の実施形態において、工程Bを示し、図10のB−B線に沿う概略断面図である。
【図12】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第二の実施形態において、工程Dおよび工程Eを示す概略斜視図である。
【図13】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第二の実施形態において、工程Eを示し、図12のC−C線に沿う概略断面図である。
【図14】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第二の実施形態において、工程Fを示す概略断面図である。
【図15】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第二の実施形態において、工程Fを示す概略断面図である。
【図16】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の第二の実施形態において、工程Cを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の非接触型データ受送信体およびその製造方法の実施の形態について説明する。
なお、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0016】
(1)第一の実施形態
「非接触型データ受送信体」
図1は、本発明の非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、平面視略長方形状のインレット11と、インレット11の一方の面11aを被覆する被覆材12とから概略構成されている。
すなわち、非接触型データ受送信体10は、インレット11の一方の面11aが、被覆材12で直接、被覆されて、被覆材12とインレット11が、その厚さ方向において積層された構造をなしている。これにより、非接触型データ受送信体10は、平面視略長方形状をなしている。
【0017】
また、被覆材12のインレット11を構成するICチップ15と接する面とは反対側の面(以下、「一方の面」と言う。)12aには、多数の点状の凸部13が形状され、被覆材12の一方の面12aは凹凸面をなしている。
なお、凸部13は、被覆材12の一部をなしており、被覆材12を形成する接着剤から構成されている。
【0018】
点状の凸部13は、被覆材12の一方の面12aにおいて、規則的または不規則に形成されている。
点状の凸部13が規則的に形成されているとは、被覆材12の一方の面12aにおいて、多数の凸部13がほぼ同じ大きさで、かつ、ほぼ等間隔に(周期的に)形成されていることを言う。
一方、点状の凸部13が不規則に形成されているとは、被覆材12の一方の面12aにおいて、多数の凸部13が、大きさや間隔が不揃いに形成されていることを言う。
また、凸部13の大きさや間隔は特に限定されず、被覆材12を形成する接着剤の粘着性などに応じて適宜調整される。
【0019】
インレット11は、基材14と、基材14の一方の面14aに設けられ、互いに電気的に接続されたICチップ15およびアンテナ16とから概略構成されている。
アンテナ16は、各種導電体からなり、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ15と接続している部分)を有する一対の面状の放射素子17,18からなるダイポールアンテナである。
アンテナ16の長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子17,18の長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0020】
なお、インレット11の一方の面11aは、基材14の一方の面14aに相当する。
ゆえに、インレット11の一方の面11aでは、ICチップ15およびアンテナ16が被覆材12によって被覆されている。
【0021】
そして、非接触型データ受送信体10の4つの側面にて、被覆材12の端面、および、基材14が同一面をなしている。より詳細には、例えば、非接触型データ受送信体10の側面10aにて、被覆材12の端面12a、および、基材14の端面14cが同一面をなしている。同様に、非接触型データ受送信体10の側面10bにて、被覆材12の端面12b、および、基材14の端面14dが同一面をなしている。
【0022】
被覆材12の厚さは、特に限定されないが、少なくともインレット11のICチップ15およびアンテナ16に起因する凹凸が、非接触型データ受送信体10の一方の面(外面)10cに現れない程度、かつ、インレット11が外部からの衝撃により破損しない程度であり、例えば、10μm〜2000μmの範囲内である。
【0023】
被覆材12は、使用前は液状であり、加熱、紫外線照射、電子線照射などの外的条件を加えなくても、主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液混合型ウレタン系接着剤からなるものである。
【0024】
2液混合型ウレタン系接着剤としては、第一液としてのイソシアネートと、第二液としての水酸基が1級水酸基であるポリオールとを含む混合液に、さらに、エポキシ基を有するシランカップリング剤を添加したものが用いられる。
この2液混合型ウレタン系接着剤では、イソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基とのモル比(−NCO/−OH)が0.8以上、1.1以下となる配合比で、イソシアネートとポリオールが混合されている。また、この2液混合型ウレタン系接着剤の全量に対するエポキシ基を有するシランカップリング剤の配合量は、0.1質量%以上、2.0質量%以下である。
【0025】
また、2液混合型ウレタン系接着剤としては、第一液としてのイソシアネートと、第二液としての水酸基が1級水酸基であるポリオールとを含む混合液に、さらに、アスペクト比が10以上、100以下の無機微粒子を添加したものが用いられる。
この2液混合型ウレタン系接着剤では、イソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基とのモル比(−NCO/−OH)が0.8以上、1.1以下となる配合比で、イソシアネートとポリオールが混合されている。また、この2液混合型ウレタン系接着剤の全量に対するアスペクト比が10以上、100以下の無機微粒子の配合量は、5質量%以上、40質量%以下である。
【0026】
このような2液硬化型ウレタン系接着剤の具体例としては、主剤(商品名:MLT2900、イーテック社製)と硬化剤(商品名:G3021−B174、イーテック社製)からなる接着剤が挙げられる。
【0027】
また、被覆材12を形成する接着剤には、必要に応じて、公知の無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤が含まれていてもよい。この着色剤により、被覆材12は任意の色に着色される。
【0028】
基材14としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0029】
ICチップ15としては、特に限定されず、アンテナ16を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能であり、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは、非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0030】
アンテナ16は、基材14の一方の面14aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0031】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0032】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度でアンテナ16をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ16をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜を構成する導電微粒子が互いに接触することにより形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0033】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型あるいは架橋/熱可塑併用型(ただし、熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型あるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0034】
また、アンテナ16をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、アンテナ16をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0035】
この非接触型データ受送信体10は、被覆材12の一方の面12aに多数の点状の凸部13が形状され、被覆材12の一方の面12aが凹凸面をなしているので、他の同種のシート状物(ICタグなど)と重ね合わせても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。したがって、多数の非接触型データ受送信体10を一纏めにしても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。
特に、非接触型データ受送信体10は、その一方の面10cが、2液混合型ウレタン樹脂からなる被覆材12によるタック性(仮留め可能な性質)を有しているが、被覆材12の一方の面12aが凹凸面をなしているので、他の同種のシート状物と重ね合わせても、互いに密着することがない。
【0036】
さらに、非接触型データ受送信体10は、インレット11の一方の面11aが、被覆材12で直接、被覆された単純な構成をなしているので、容易に製造することができる。
【0037】
なお、この実施形態では、被覆材12の一方の面12aのほぼ全面にわたって、凸部13が形成された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、被覆材の一方の面において、凸部が部分的に形成されていてもよく、凸部の存在比(被覆材の一方の面に対する面積比)は、被覆材を形成する接着剤の粘着性などに応じて適宜調整される。
【0038】
また、この実施形態では、非接触型データ受送信体10が平面視略長方形状をなしている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、非接触型データ受送信体は、平面視した場合、任意のカード形状、タグ形状をなしていてもよい。
また、この実施形態では、一対の面状の放射素子17,18から構成されるダイポールアンテナからなるアンテナ16を有するインレット11を備えた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、アンテナは一対の枠状の放射素子から構成されるダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナ、モノポールアンテナなどであってもよい。
【0039】
「非接触型データ受送信体の製造方法」
次に、図2〜図7を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法を説明する。
ここでは、図3に示すような、基材14Aの一方の面14aに、RFID用のアンテナ16と、このアンテナ16を通じて通信するICチップ15とが等間隔に多数設けられた、長尺のインレットシート22を用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体10を製造する場合を例示する。
【0040】
まず、図2に示すように、図中の矢印方向に搬送されている長尺の剥離基材21の一方の面21aの中央部に、剥離基材21の搬送方向に沿って、接着剤塗布装置のノズル31から吐出される接着剤12Aを線状に塗布する(工程A)。
【0041】
接着剤12Aとしては、上記の被覆材12を形成する接着剤と同様のものが用いられる。
また、剥離基材21の一方の面21aに接着剤12Aを塗布する幅、すなわち、剥離基材21の一方の面21aに対する接着剤12Aの塗布量は、特に限定されないが、この接着剤12Aによって被覆される、インレットシート22に設けられたICチップ15およびアンテナ16の大きさや数、接着剤12Aを硬化することにより形成される被覆材12に必要とされる厚さなどに応じて、適宜調整される。
【0042】
剥離基材21としては、その一方の面21aが剥離層からなるものであって、その剥離層の表面が、エンボス加工などにより凹凸面状に加工されたものが用いられる。
すなわち、剥離基材21の一方の面21aには、多数の点状の凸部21Aが形状され、剥離基材21の一方の面21aは凹凸面をなしている。
また、点状の凸部21Aは、剥離基材21の一方の面21aにおいて、規則的または不規則に形成されている。
点状の凸部21Aが規則的に形成されているとは、剥離基材21の一方の面21aにおいて、多数の凸部21Aがほぼ同じ大きさで、かつ、ほぼ等間隔に(周期的に)形成されていることを言う。
一方、点状の凸部21Aが不規則に形成されているとは、剥離基材21の一方の面21aにおいて、多数の凸部21Aが、大きさや間隔が不揃いに形成されていることを言う。
また、凸部21Aの大きさや間隔は特に限定されず、接着剤12Aの粘着性などに応じて適宜調整される。
【0043】
剥離基材21としては、剥離フィルムまたは剥離紙が用いられる。
剥離フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのプラスチックからなる厚さ30μm〜160μmの基材フィルムの一方の面および/または他方に面に、シリコンからなる厚さ1μm〜50μmの剥離層が設けられたものが用いられる。すなわち、剥離基材21の一方の面21aは、シリコンからなる剥離層から構成されている。
このような剥離フィルムの具体例としては、例えば、東セロ株式会社製のトーセロセパレータSP−PET−01−BU(商品名)などが挙げられる。
【0044】
剥離紙としては、グラシン紙や上質紙からなる厚さ30μm〜160μmの基材の一方の面および/または他方に面に、目止め剤が塗布され、その目止め剤からなる層の上に、シリコンからなる厚さ1μm〜50μmの剥離層が設けられたものが用いられる。すなわち、剥離基材21の一方の面21aは、シリコンからなる剥離層から構成されている。
このような剥離紙の具体例としては、例えば、王子タック株式会社製のL11C(商品名)などが挙げられる。
【0045】
この剥離基材21の剥離力は、0.05〜1.0N/50mmである。
【0046】
このように、工程Aでは、剥離基材21として、上記の剥離フィルムまたは剥離紙を用いているので、剥離基材21の一方の面21aをなす剥離層(図示略)の上に、接着剤12Aを塗布する。
【0047】
次いで、図3に示すように、図中の矢印方向に搬送されているインレットシート22を、図中の矢印方向に回転する一対のローラー32,33の対向する部分にて、剥離基材21の一方の面21aに塗布した接着剤12Aを介して、図中の矢印方向に搬送されている剥離基材21の一方の面21a上に重ね合わせるとともに、剥離基材21とインレットシート22をローラー32,33で挟み込むことにより、図4に示すように、剥離基材21とインレットシート22の間のほぼ全域にわたって、剥離基材21の一方の面21aに塗布した接着剤12Aを展開させる(工程B)。
【0048】
この工程Bでは、剥離基材21の一方の面21aに、基材14Aの一方の面14a、すなわち、インレットシート22におけるICチップ15およびアンテナ16が設けられた面(以下、「一方の面」という。)22aが対向するように、剥離基材21の一方の面21a上にインレットシート22を重ね合わせる。
【0049】
また、工程Bでは、上記のように、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤12Aを用いる。したがって、接着剤12Aは、剥離基材21とインレットシート22の間に展開させるまでの間、流動性を有しているが、反応の進行に伴って、次第に流動性がなくなり、最終的には硬化する。これにより、インレットシート22の一方の面22a、並びに、その一方の面22aに設けられたICチップ15およびアンテナ16が接着剤12Aによって被覆されるとともに、剥離基材21の一方の面21a上に、インレットシート22が仮留めされる。なお、接着剤12Aは硬化すると、上記の被覆材12となる。
【0050】
また、工程Bでは、剥離基材21とインレットシート22の間に展開させた後の接着剤12Aの厚さを、少なくともインレットシート22のICチップ15およびアンテナ16に起因する凹凸が、接着剤12Aのインレットシート22に接している面とは反対側の面12aに現れない程度、かつ、ICチップ15およびアンテナ16が外部からの衝撃により破損しない程度とし、例えば、10μm〜2000μmの範囲内とする。
【0051】
また、工程Bにおいて、剥離基材21とインレットシート22を一対のローラー32,33で挟み込む力、すなわち、剥離基材21に対してインレットシート22を厚さ方向に押圧する力(圧力)は、特に限定されず、剥離基材21およびインレットシート22の厚さや大きさ、接着剤12Aの塗布量などに応じて、適宜調整されるが、1kg/cm〜20kg/cmであることが好ましく、より好ましくは5kg/cm〜10kg/cmである。
【0052】
この工程Bにより、接着剤12Aによって、ICチップ15およびアンテナ16が完全に被覆され、剥離基材21とインレットシート22の間に、ほぼ隙間無く接着剤12Aが充填される。
また、接着剤12Aにおける剥離基材21の一方の面21aと接する面に、剥離基材21の一方の面21aの凹凸形状が転写される。
【0053】
次いで、図5に示すように、裁断装置の切断刃(図示略)により、剥離基材21、接着剤12Aおよびインレットシート22からなる積層体を、その厚さ方向に(図5の一点鎖線に沿って)、アンテナ16の形状に応じて裁断し、図6に示すように、その積層体を個片化する(工程F)。
ここで、積層体をアンテナ16の形状に応じて裁断するとは、アンテナ16を損傷することなく、かつ、目的とする非接触型データ受送信体10の形状に合わせて裁断することを言う。
【0054】
次いで、接着剤12Aが完全に硬化して被覆材12となった後、図7に示すように、上記の積層体から、剥離基材21を剥離して(工程C)、図1に示す非接触型データ受送信体10を得る。
【0055】
この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、剥離基材21の一方の面21aにおいて、凹凸面をなす剥離層の上に接着剤12Aを塗布し、剥離基材21上に、接着剤12Aおよびインレットシート22が積層、一体化された積層体を形成し、接着剤12Aが硬化した後、剥離基材21を剥離するので、被覆材12の一方の面12aに、剥離基材21の凹凸面が転写された非接触型データ受送信体10を得ることができる。
【0056】
また、従来のように、樹脂製の筐体内にインレットを収納して、その筐体と同様の材質からなる封止部材で封止したり、インレットを樹脂でモールドしたりする必要がないので、容易に非接触型データ受送信体10を製造することができる。さらに、インレットシート22の一方の面を被覆するために接着剤12A以外の部材を必要としないので、非常に厚さの薄い非接触型データ受送信体10を製造することができ、ひいては、非接触型データ受送信体10の製造コストを低減することができる。
【0057】
なお、この実施形態では、剥離基材21の一方の面21aのほぼ全面にわたって、凸部21Aが形成された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、剥離基材の一方の面において、凸部が部分的に形成されていてもよく、凸部の存在比(剥離基材の一方の面に対する面積比)は、接着剤の粘着性などに応じて適宜調整される。
【0058】
また、この実施形態では、長尺の剥離基材21およびインレットシート22を用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体10を製造する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、予め個片化されたインレットを用いて、個別に非接触型データ受送信体を製造してもよい。
【0059】
また、この実施形態では、工程Bの後に、工程Fを行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、予め個片化されたインレットを用いた場合などには、工程Bに次いで、工程Cを行い、工程Fを行わなくてもよい。
【0060】
また、この実施形態では、工程Bの後に、剥離基材21、接着剤12Aおよびインレットシート22からなる積層体を、アンテナ16の形状に応じて裁断する工程Fと、この裁断した積層体から、剥離基材21を剥離する工程Cとを、この順に行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、工程Bの後に、工程Fと工程Cとを順不同に行ってよい。すなわち、本発明にあっては、工程Cにて、剥離基材、接着剤およびインレットシートからなる積層体から剥離基材を剥離した後、工程Fにて、接着剤とインレットシートからなる積層体を、アンテナの形状に応じて裁断してもよい。
【0061】
(2)第二の実施形態
「非接触型データ受送信体」
図8は、本発明の非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態の非接触型データ受送信体50は、平面視略長方形状のインレット51と、インレット51の一方の面51aを被覆する第一の被覆材53と、インレット51の他方の面51bを被覆する第二の被覆材54とから概略構成されている。
なお、第一の被覆材53と第二の被覆材54を総称して、被覆材52ということもある。
すなわち、非接触型データ受送信体50は、インレット51の両面(一方の面51aおよび他方の面51b)が、被覆材52で直接、被覆されて、第一の被覆材53、インレット51および第二の被覆材54が、その厚さ方向において、この順に積層された構造をなしている。これにより、非接触型データ受送信体50は、平面視略長方形状をなしている。
【0062】
また、第一の被覆材53のインレット51と接する面とは反対の面(以下、「一方の面」と言う。)53aには、多数の点状の凸部55が形状され、第一の被覆材53の一方の面53aは凹凸面をなしている。
なお、凸部55は、第一の被覆材53の一部をなすものであって、第一の被覆材53を形成する接着剤から構成されている。
【0063】
点状の凸部55は、第一の被覆材53の一方の面53aにおいて、規則的または不規則に形成されている。
点状の凸部55が規則的に形成されているとは、第一の被覆材53の一方の面53aにおいて、多数の凸部55がほぼ同じ大きさで、かつ、ほぼ等間隔に(周期的に)形成されていることを言う。
一方、点状の凸部55が不規則に形成されているとは、第一の被覆材53の一方の面53aにおいて、多数の凸部55が、大きさや間隔が不揃いに形成されていることを言う。
また、凸部55の大きさや間隔は特に限定されず、第一の被覆材53を形成する接着剤の粘着性などに応じて適宜調整される。
【0064】
また、第二の被覆材54のインレット51と接する面とは反対の面(以下、「一方の面」と言う。)54aには、多数の点状の凸部56が形状され、第二の被覆材54の一方の面54aは凹凸面をなしている。
なお、凸部56は、第二の被覆材54の一部をなすものであって、第二の被覆材54を形成する接着剤から構成されている。
【0065】
点状の凸部56は、第二の被覆材54の一方の面54aにおいて、規則的または不規則に形成されている。
点状の凸部56が規則的に形成されているとは、第二の被覆材54の一方の面54aにおいて、多数の凸部56がほぼ同じ大きさで、かつ、ほぼ等間隔に(周期的に)形成されていることを言う。
一方、点状の凸部56が不規則に形成されているとは、第二の被覆材54の一方の面54aにおいて、多数の凸部56が、大きさや間隔が不揃いに形成されていることを言う。
また、凸部56の大きさや間隔は特に限定されず、第二の被覆材54を形成する接着剤の粘着性などに応じて適宜調整される。
【0066】
インレット51は、基材57と、基材57の一方の面57aに設けられ、互いに電気的に接続されたICチップ58およびアンテナ59とから概略構成されている。
アンテナ59は、各種導電体からなり、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ58と接続している部分)を有する一対の面状の放射素子60,61からなるダイポールアンテナである。
アンテナ59の長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子60,61の長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0067】
なお、インレット51の一方の面51aは、基材57の一方の面57aに相当し、インレット51の他方の面51bは、基材57の他方の面57bに相当する。
ゆえに、インレット51の一方の面51aでは、ICチップ58およびアンテナ59が第一の被覆材53によって被覆されている。
【0068】
そして、非接触型データ受送信体50の4つの側面にて、第一の被覆材53の端面、基材57の端面、および、第二の被覆材54の端面が同一面をなしている。より詳細には、例えば、非接触型データ受送信体50の側面50aにて、第一の被覆材53の端面53b、基材57の端面57c、および、第二の被覆材54の端面54bが同一面をなしている。同様に、非接触型データ受送信体50の側面50bにて、第一の被覆材53の端面53c、基材57の端面57d、および、第二の被覆材54の端面54cが同一面をなしている。
【0069】
第一の被覆材53の厚さは、特に限定されないが、少なくともインレット51のICチップ58およびアンテナ59に起因する凹凸が、非接触型データ受送信体50の一方の面(外面)50cに現れない程度、かつ、インレット51が外部からの衝撃により破損しない程度であり、例えば、10μm〜2000μmの範囲内である。
また、第二の被覆材54の厚さは、特に限定されないが、インレット51が外部からの衝撃により破損しない程度であり、例えば、10μm〜2000μmの範囲内である。
【0070】
さらに、非接触型データ受送信体50の柔軟性(可撓性)を十分なものとし、非接触型データ受送信体50を曲げた場合に、インレット51に対して、第一の被覆材53と第二の被覆材54の厚さの差に起因する応力が生じないようにするためには、第一の被覆材53の厚さと第二の被覆材54の厚さは等しいことが好ましい。
【0071】
被覆材52(第一の被覆材53と第二の被覆材54)は、使用前は液状であり、加熱、紫外線照射、電子線照射などの外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液硬化型ウレタン系接着剤からなるものである。
【0072】
2液硬化型ウレタン系接着剤としては、上述の第一の実施形態と同様のものが用いられる。
【0073】
この非接触型データ受送信体50は、第一の被覆材53の一方の面53aに多数の凸部55が形成され、第一の被覆材53の一方の面53aが凹凸面をなしているので、他の同種のシート状物(ICタグなど)と重ね合わせても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。また、第二の被覆材54の一方の面54aに多数の凸部56が形成され、第二の被覆材54の一方の面54aが凹凸面をなしているので、他の同種のシート状物(ICタグなど)と重ね合わせても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。したがって、多数の非接触型データ受送信体50を一纏めにしても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。
特に、非接触型データ受送信体50は、その一方の面50cおよび他方の面50dが、2液混合型ウレタン樹脂からなる被覆材52によるタック性(仮留め可能な性質)を有しているが、第一の被覆材53の一方の面53aが凹凸面をなし、第二の被覆材54の一方の面54aが凹凸面をなしているので、他の同種のシート状物と重ね合わせても、互いに密着することがない。
【0074】
さらに、非接触型データ受送信体50は、インレット51の一方の面51aおよび他方の面51bが、被覆材52で直接、被覆された単純な構成をなしているので、容易に製造することができる。
【0075】
なお、この実施形態では、第一の被覆材53の一方の面53aのほぼ全面にわたって、凸部55が形成され、第二の被覆材54の一方の面54aのほぼ全面にわたって、凸部56が形成された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、被覆材の一方の面において、凸部が部分的に形成されていてもよく、凸部の存在比(被覆材の一方の面に対する面積比)は、被覆材を形成する接着剤の粘着性に応じて適宜調整される。
【0076】
また、この実施形態では、第一の被覆材53の一方の面53aが凹凸面をなし、かつ、第二の被覆材54の一方の面54aが凹凸面をなす場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、第一の被覆材の一方の面のみが凹凸面をなしてもよい。
【0077】
また、この実施形態では、非接触型データ受送信体50が平面視略長方形状をなしている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、非接触型データ受送信体は、平面視した場合、任意のカード形状、タグ形状をなしていてもよい。
また、この実施形態では、一対の面状の放射素子60,61から構成されるダイポールアンテナからなるアンテナ59を有するインレット51を備えた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、アンテナは一対の枠状の放射素子から構成されるダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナ、モノポールアンテナなどであってもよい。
【0078】
「非接触型データ受送信体の製造方法」
次に、図9〜図16を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法を説明する。
ここでは、図10に示すような、基材57Aの一方の面57aに、RFID用のアンテナ59と、このアンテナ59を通じて通信するICチップ58とが等間隔に多数設けられた、長尺のインレットシート72を用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体50を製造する場合を例示する。
【0079】
まず、図9に示すように、図中の矢印方向に搬送されている長尺の剥離基材71の一方の面71aの中央部に、第一の剥離基材71の搬送方向に沿って、接着剤塗布装置のノズル81から吐出される第一の接着剤53Aを線状に塗布する(工程A)。
【0080】
第一の接着剤53Aとしては、上記の被覆材52を形成する接着剤と同様のものが用いられる。
また、第一の剥離基材71の一方の面71aに第一の接着剤53Aを塗布する幅、すなわち、第一の剥離基材71の一方の面71aに対する第一の接着剤53Aの塗布量は、特に限定されないが、この第一の接着剤53Aによって被覆される、インレットシート72に設けられたICチップ58およびアンテナ59の大きさや数、第一の接着剤53Aを硬化することにより形成される第一の被覆材53に必要とされる厚さなどに応じて、適宜調整される。
【0081】
第一の剥離基材71としては、その一方の面71aが剥離層からなるものであって、その剥離層の表面が、エンボス加工などにより凹凸面状に加工されたものが用いられる。
すなわち、第一の剥離基材71の一方の面71aには、多数の点状の凸部71Aが形状され、第一の剥離基材71の一方の面71aは凹凸面をなしている。
また、点状の凸部71Aは、第一の剥離基材71の一方の面71aにおいて、規則的または不規則に形成されている。
点状の凸部71Aが規則的に形成されているとは、第一の剥離基材71の一方の面71aにおいて、多数の凸部71Aがほぼ同じ大きさで、かつ、ほぼ等間隔に(周期的に)形成されていることを言う。
一方、点状の凸部71Aが不規則に形成されているとは、第一の剥離基材71の一方の面71aにおいて、多数の凸部71Aが、大きさや間隔が不揃いに形成されていることを言う。
また、凸部71Aの大きさや間隔は特に限定されず、第一の接着剤53Aの粘着性などに応じて適宜調整される。
【0082】
第一の剥離基材71としては、上述の第一の実施形態の剥離基材と同様のものが用いられる。
この第一の剥離基材71の剥離力は、0.05〜1.0N/50mmである。
【0083】
このように、工程Aでは、第一の剥離基材71として、上記の剥離フィルムまたは剥離紙を用いているので、第一の剥離基材71の一方の面71aをなす剥離層(図示略)の上に、第一の接着剤53Aを塗布する。
【0084】
次いで、図10に示すように、図中の矢印方向に搬送されているインレットシート72を、図中の矢印方向に回転する一対のローラー82,83の対向する部分にて、第一の剥離基材71の一方の面71aに塗布した第一の接着剤53Aを介して、図中の矢印方向に搬送されている第一の剥離基材71の一方の面71a上に重ね合わせるとともに、第一の剥離基材71とインレットシート72をローラー82,83で挟み込むことにより、図11に示すように、第一の剥離基材71とインレットシート72の間のほぼ全域にわたって、第一の剥離基材71の一方の面71aに塗布した第一の接着剤53Aを展開させる(工程B)。
【0085】
この工程Bでは、第一の剥離基材71の一方の面71aに、基材57Aの一方の面57a、すなわち、インレットシート72におけるICチップ58およびアンテナ59が設けられた面(以下、「一方の面」という。)72aが対向するように、第一の剥離基材71の一方の面71a上にインレットシート72を重ね合わせる。
【0086】
また、工程Bでは、上記のように、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液硬化型ウレタン系接着剤からなる第一の接着剤53Aを用いる。したがって、第一の接着剤53Aは、第一の剥離基材71とインレットシート72の間に展開させるまでの間、流動性を有しているが、反応の進行に伴って、次第に流動性がなくなり、最終的には硬化する。これにより、インレットシート72の一方の面72a、並びに、その一方の面72aに設けられたICチップ58およびアンテナ59が第一の接着剤53Aによって被覆されるとともに、第一の剥離基材71の一方の面71a上に、インレットシート72が仮留めされる。なお、第一の接着剤53Aは硬化すると、上記の第一の被覆材53となる。
【0087】
また、工程Bでは、第一の剥離基材71とインレットシート72の間に展開させた後の第一の接着剤53Aの厚さを、少なくともインレットシート72のICチップ58およびアンテナ59に起因する凹凸が、第一の接着剤53Aのインレットシート72に接している面とは反対側の面53aに現れない程度、かつ、ICチップ58およびアンテナ59が外部からの衝撃により破損しない程度とし、例えば、10μm〜2000μmの範囲内とする。
【0088】
また、工程Bにおいて、第一の剥離基材71とインレットシート72を一対のローラー82,83で挟み込む力、すなわち、第一の剥離基材71に対してインレットシート72を厚さ方向に押圧する力(圧力)は、特に限定されず、第一の剥離基材71およびインレットシート72の厚さや大きさ、第一の接着剤53Aの塗布量などに応じて、適宜調整されるが、1kg/cm〜20kg/cmであることが好ましく、より好ましくは5kg/cm〜10kg/cmである。
【0089】
この工程Bにより、第一の接着剤53Aによって、ICチップ58およびアンテナ59が完全に被覆され、第一の剥離基材71とインレットシート72の間に、ほぼ隙間無く第一の接着剤53Aが充填される。
また、第一の接着剤53Aにおける第一の剥離基材71の一方の面71aと接する面に、第一の剥離基材71の一方の面71aの凹凸形状が転写される。
【0090】
次いで、図12に示すように、図中の矢印方向に、第一の剥離基材71とインレットシート72からなる積層体αを搬送しながら、インレットシート72の一方の面72aとは反対側の面(以下、「他方の面」という。)72b、すなわち、基材57Aの他方の面57bの中央部に、積層体αの搬送方向に沿って、接着剤塗布装置のノズル84から吐出される第二の接着剤54Aを線状に塗布する(工程D)。
【0091】
第二の接着剤54Aとしては、上記の被覆材52を形成する接着剤と同様のものが用いられる。
また、インレットシート72の他方の面72bに第二の接着剤54Aを塗布する幅、すなわち、基材57Aの他方の面57bに対する第二の接着剤54Aの塗布量は、特に限定されないが、第二の接着剤54Aを硬化することにより形成される第二の被覆材54に必要とされる厚さなどに応じて、適宜調整される。
【0092】
次いで、図12に示すように、図中の矢印方向に搬送され、一方の面73aをなす剥離層上に第二の剥離基材73を、図中の矢印方向に回転する一対のローラー85,86の対向する部分にて、インレットシート72の他方の面72bに塗布した第二の接着剤54Aを介して、図中の矢印方向に搬送されている積層体αを構成するインレットシート72の他方の面72b上に重ね合わせるとともに、積層体αと第二の剥離基材73をローラー85,86で挟み込むことにより、図13に示すように、積層体αと第二の剥離基材73の間のほぼ全域にわたって、インレットシート72の他方の面72bに塗布した第二の接着剤54Aを展開させて(工程E)、第一の剥離基材71と第二の剥離基材73の間に、第一の接着剤53A、インレットシート72および第二の接着剤54Aが、この順に積層、一体化された積層体βを形成する。
【0093】
第二の剥離基材73としては、上記の第一の剥離基材71と同様のものが用いられる。すなわち、第二の剥離基材73としては、その一方の面73aが剥離層からなるものであって、その剥離層の表面が、エンボス加工などにより凹凸面状に加工されたものが用いられる。
すなわち、第二の剥離基材73の一方の面73aには、多数の点状の凸部73Aが形状され、第二の剥離基材73の一方の面73aは凹凸面をなしている。
また、点状の凸部73Aは、第二の剥離基材73の一方の面73aにおいて、規則的または不規則に形成されている。
点状の凸部73Aが規則的に形成されているとは、第二の剥離基材73の一方の面73aにおいて、多数の凸部73Aがほぼ同じ大きさで、かつ、ほぼ等間隔に(周期的に)形成されていることを言う。
一方、点状の凸部73Aが不規則に形成されているとは、第二の剥離基材73の一方の面73aにおいて、多数の凸部73Aが、大きさや間隔が不揃いに形成されていることを言う。
また、凸部73Aの大きさや間隔は特に限定されず、第二の接着剤54Aの粘着性などに応じて適宜調整される。
【0094】
この工程Eでは、第二の剥離基材73として、上記の剥離フィルムまたは剥離紙を用いているので、インレットシート72の他方の面72bに、第二の剥離基材73の一方の面73aをなす剥離層(図示略)が対向するように、インレットシート72の他方の面72b上に第二の剥離基材73を重ね合わせる。
【0095】
また、工程Eでは、上記のように、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液硬化型ウレタン系接着剤からなる第二の接着剤54Aを用いる。したがって、第二の接着剤54Aは、積層体αと第二の剥離基材73の間に展開させるまでの間、流動性を有しているが、反応の進行に伴って、次第に流動性がなくなり、最終的には硬化する。これにより、インレットシート72の他方の面72bが第二の接着剤54Aによって被覆されるとともに、積層体αの上に、第二の剥離基材73が仮留めされる。なお、第二の接着剤54Aは硬化すると、上記の第二の被覆材54となる。
【0096】
また、工程Eでは、積層体αと第二の剥離基材73の間に展開させた後の第二の接着剤54Aの厚さを、上述の工程Bにおいて、第一の剥離基材71とインレットシート72の間に展開させた後の第一の接着剤53Aの厚さと同程度とし、例えば、10μm〜1000μmの範囲内とする。
【0097】
また、工程Eにおいて、積層体αと第二の剥離基材73を一対のローラー85,86で挟み込む力、すなわち、インレットシート72に対して第二の剥離基材73を厚さ方向に押圧する力(圧力)は、特に限定されず、積層体αおよび第二の剥離基材73の厚さや大きさ、第二の接着剤54Aの塗布量などに応じて、適宜調整されるが、1kg/cm〜20kg/cmであることが好ましく、より好ましくは5kg/cm〜10kg/cmである。
【0098】
この工程Eにより、積層体αと第二の剥離基材73の間に、ほぼ隙間無く第二の接着剤54Aが充填される。
また、第二の接着剤54Aにおける第二の剥離基材73の一方の面73aと接する面に、第二の剥離基材73の一方の面73aの凹凸形状が転写される。
【0099】
次いで、図14に示すように、裁断装置の切断刃(図示略)により、第一の剥離基材71、第一の接着剤53A、インレットシート72、第二の接着剤54Aおよび第二の剥離基材73からなる積層体γを、その厚さ方向に(図14の一点鎖線に沿って)、アンテナ59の形状に応じて裁断し、図15に示すように、積層体γを個片化する(工程F)。
ここで、積層体γをアンテナ59の形状に応じて裁断するとは、アンテナ59を損傷することなく、かつ、目的とする非接触型データ受送信体50の形状に合わせて裁断することを言う。
【0100】
次いで、第一の接着剤53Aが完全に硬化して第一の被覆材53となり、かつ、第二の接着剤54Aが完全に硬化して第二の被覆材54となった後、図16に示すように、積層体γから、第一の剥離基材71と第二の剥離基材73を剥離して(工程C)、図8に示す非接触型データ受送信体50を得る。
【0101】
この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、第一の剥離基材71の凹凸面をなす剥離層上に、第一の接着剤53Aおよびインレットシート72を積層し、さらに、インレットシート72上に、第二の接着剤54Aを塗布した後、第二の接着剤54Aを介して、インレットシート72に、第二の剥離基材73の凹凸面をなす剥離層を重ね合わせて、第一の剥離基材71、第一の接着剤53A、インレットシート72、第二の接着剤54Aおよび第二の剥離基材73からなる積層体γを一体化し、第一の接着剤53Aおよび第二の接着剤54Aが硬化した後、第一の剥離基材71および第二の剥離基材73を剥離するので、第一の被覆材53の一方の面53aに、第一の剥離基材71の凹凸面が転写され、かつ、第二の被覆材54の一方の面54aに、第二の剥離基材73の凹凸面が転写された非接触型データ受送信体50を得ることができる。
【0102】
また、従来のように、樹脂製の筐体内にインレットを収納して、その筐体と同様の材質からなる封止部材で封止したり、インレットを樹脂でモールドしたりする必要がないので、容易に非接触型データ受送信体50を製造することができる。さらに、インレットシート72の両面を被覆するために第一の接着剤53Aおよび第二の接着剤54A以外の部材を必要としないので、非常に厚さの薄い非接触型データ受送信体50を製造することができ、ひいては、非接触型データ受送信体50の製造コストを低減することができる。
【0103】
なお、この実施形態では、第一の剥離基材71の一方の面71aのほぼ全面にわたって、凸部71Aが形成され、かつ、第二の剥離基材73の一方の面73aのほぼ全面にわたって、凸部73Aが形成された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、剥離基材の一方の面において、凸部が部分的に形成されていてもよく、凸部の存在比(剥離基材の一方の面に対する面積比)は、接着剤の粘着性に応じて適宜調整される。
【0104】
また、この実施形態では、工程Eにおいて、第二の剥離基材73として、剥離層の表面が凹凸面をなすものを用いた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、工程Eにおいて、剥離基材として、剥離層の表面が凹凸面をなしていないものを用いてもよい。
【0105】
また、この実施形態では、長尺の第一の剥離基材71、インレットシート72および第二の剥離基材73を用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体50を製造する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、予め個片化されたインレットを用いて、個別に非接触型データ受送信体を製造してもよい。
【0106】
また、この実施形態では、工程Eの後に、工程Fを行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、予め個片化されたインレットを用いた場合などには、工程Eに次いで、工程Cを行い、工程Fを行わなくてもよい。
【0107】
また、この実施形態では、工程Eの後に、第一の剥離基材71、第一の接着剤53A、インレットシート72、第二の接着剤54Aおよび第二の剥離基材73からなる積層体γを、アンテナ59の形状に応じて裁断する工程Fと、この裁断した積層体γから、第一の剥離基材71と第二の剥離基材73を剥離する工程Cとを、この順に行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、工程Eの後に、工程Fと工程Cを順不同に行ってよい。すなわち、本発明にあっては、工程Cにて、第一の剥離基材、第一の接着剤、インレットシート、第二の接着剤および第二の剥離基材からなる積層体から、第一の剥離基材と第二の剥離基材を剥離した後、工程Fにて、第一の接着剤、インレットシートおよび第二の接着剤からなる積層体を、アンテナの形状に応じて裁断してもよい。
【符号の説明】
【0108】
10・・・非接触型データ受送信体、11・・・インレット、12・・・被覆材、12A・・・接着剤、13・・・凸部、14,14A・・・基材、15・・・ICチップ、16・・・アンテナ、17,18・・・放射素子、21・・・剥離基材、21A・・・凸部、22・・・インレットシート、31・・・ノズル、32,33・・・ローラー、50・・・非接触型データ受送信体、51・・・インレット、52・・・被覆材、53・・・第一の被覆材、53A・・・第一の接着剤、54・・・第二の被覆材、54A・・・第二の接着剤、55,56・・・凸部、57,57A・・・基材、58・・・ICチップ、59・・・アンテナ、60,61・・・放射素子、71・・・第一の剥離基材、71A・・・凸部、72・・・インレットシート、73・・・第二の剥離基材、73A・・・凸部、81,84・・・ノズル、82,83,85,86・・・ローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インレットと、該インレットにおける少なくともICチップが設けられた面を被覆する被覆材と、を備えてなる非接触型データ受送信体であって、
前記被覆材は2液硬化型ウレタン系接着剤からなり、
少なくとも前記被覆材における前記ICチップと接する面とは反対側の面が凹凸面をなしていることを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
インレットと、該インレットにおける少なくともICチップが設けられた面を被覆する被覆材と、を備え、前記被覆材は2液硬化型ウレタン系接着剤からなり、少なくとも前記被覆材における前記ICチップと接する面とは反対側の面が凹凸面をなしている非接触型データ受送信体の製造方法であって、
剥離基材の一方の面であり、凹凸面をなす剥離層の上に、2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤を塗布する工程Aと、
前記剥離基材に塗布した接着剤を介して、前記剥離基材の一方の面上にインレットにおけるICチップが設けられた面を重ね合わせて、前記剥離基材に対して前記インレットを押圧することにより、前記剥離基材と前記インレットの間に、前記接着剤を展開させる工程Bと、
前記剥離基材を剥離する工程Cと、を有することを特徴とする非接触型データ受送信体の製造方法。
【請求項3】
前記工程Bと前記工程Cの間に、さらに、
前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面に、2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤を塗布する工程Dと、
前記インレットに塗布した接着剤を介して、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面上に、一方の面をなす剥離層を対向させるように、剥離基材を重ね合わせ、前記インレットに対して前記剥離基材を押圧することにより、前記インレットにおけるICチップが設けられた面とは反対側の面と、前記剥離基材との間に、前記接着剤を展開させる工程Eと、を有することを特徴とする請求項2に記載の非接触型データ受送信体の製造方法。
【請求項4】
前記工程Eにおいて、前記剥離基材の剥離層が凹凸面をなしていることを特徴とする請求項3に記載の非接触型データ受送信体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−59027(P2012−59027A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201805(P2010−201805)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】