説明

非接触型データ受送信体

【課題】断熱材をなす繊維材料が飛散したり、汚染されたりすることなく、長期間安定して耐熱性を維持することができる非接触型データ受送信体を提供する。
【解決手段】本発明の非接触型データ受送信体10は、アンテナコイルおよびこのアンテナコイルに接続されたICチップを備えたインレット11と、このインレット11を内包するセラミックス繊維からなる包材12と、この包材12を被覆する耐熱性樹脂からなる被覆体13とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体に関し、特に耐熱性に優れる非接触型データ受送信体に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICラベルは、ベース基材と、その一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えており、リーダ/ライタからの電磁波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICラベル内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICラベルのアンテナから発信される。
ICラベルから発信された信号は、リーダ/ライタのアンテナで受信され、コントローラーを介してデータ処理装置へ送られ、識別などのデータ処理が行われる。
【0003】
このようなICラベルなどの非接触型データ受送信体は、例えば、物品管理の用途などに用いられる。特に、非接触型データ受送信体を、種類の多い物品や、部品点数の多い機械部品などの管理に適用すれば、物品自体を目視することなしに識別することができるため、物品の選定作業や在庫管理などの効率を上げることができるので、非常に有効である。
【0004】
非接触型データ受送信体を物品の管理に用いる場合には、これを対象となる物品に直接取り付ける。
物品によっては、射出成形、押出成形などに用いられる金型などのように、比較的高温に曝されるものがある。このように物品が高温に曝されると、当然に物品に取り付けられた非接触型データ受送信体も高温に曝される。そのため、非接触型データ受送信体がICチップの使用温度範囲を超えて加熱されると、ICチップが破壊されて、ICチップ内に記憶された情報を正確に読み取ることができなくなる不具合が発生する。
【0005】
従来、ICチップに耐熱性を確保するために、ICチップと、これを内包する第1断熱材と、第1断熱材を被包する第2断熱材と、ICチップに接続されたアンテナコイルと、これらを内部に挿入し、収容することにより密封する耐熱性樹脂からなる密封容器とを備えた物品の識別装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上記の第1断熱材としては、ポリフェニレンサルファイド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、超硬合金、微細斜長石などが用いられている。また、上記の第2断熱材としては、珪藻土、泡ガラス、ガラスウール、無機質ファイバなどを含有するセラミックス粉末の圧粉体を、多孔質繊維材料からなる包体に収納し、包体の外部から金型により圧力を加えて成形することにより得られたものが用いられている。
【特許文献1】特許第3785888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の物品の識別装置では、密封容器内に第2断熱材が挿入されて収容されているものの、第2断熱材をなす繊維材料は接着剤などの樹脂で固定されていないため、繊維材料が解れて飛散したり、溶剤に汚染されたりするおそれがある。このように、第2断熱材をなす繊維材料が飛散したり、汚染されたりすると、断熱材の耐熱性が低下して、長期間安定して耐熱性を維持することができないという問題があった。また、第2断熱材をなす繊維材料が飛散したり、汚染されたりすると、断熱材の外観が損なわれるという問題もあった。
【0007】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、断熱材をなす繊維材料が飛散したり、汚染されたりすることなく、長期間安定して耐熱性を維持することができる非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非接触型データ受送信体は、アンテナコイルおよび該アンテナコイルに接続されたICチップを備えたインレットと、該インレットを内包するセラミックス繊維からなる包材と、該包材を被覆する耐熱性樹脂からなる被覆体とを備えたことを特徴とする。
【0009】
前記セラミックス繊維をなすセラミックスは、まず成形され次に熱によって硬化された無機物質からなる製品であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非接触型データ受送信体は、アンテナコイルおよび該アンテナコイルに接続されたICチップを備えたインレットと、該インレットを内包するセラミックス繊維からなる包材と、該包材を被覆する耐熱性樹脂からなる被覆体とを備えたので、包材をなすセラミックス繊維が飛散したり、汚染されたりすることなく、長期間安定して耐熱性を維持することができる。しかも、包材をなすセラミックス繊維が解れて、外観を損なうこともない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の非接触型データ受送信体の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
図1は、本発明に係る非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。図2は、本発明に係る非接触型データ受送信体に用いられるインレットの一例を示す概略斜視図である。
図1中、符号10は非接触型データ受送信体、11はインレット、12は包材、13は被覆体をそれぞれ示している。図2中、符号14は金属線、15はアンテナコイル、16はICチップ、17は間隙をそれぞれ示している。
【0013】
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、インレット11と、このインレット11を内包する包材12と、このインレット11を内包した包材12全体を被覆する被覆体13とから概略構成されている。
また、インレット11を内包する包材12は、被覆体13内のほぼ中央部に配されている。さらに、被覆体13には、その厚み方向に貫通し、包材12を挟んで一対の取付孔13a、13aが設けられている。この取付孔13a、13aは、取り付け対象となる物品に非接触型データ受送信体10を取り付けるために用いられる。
【0014】
インレット11は、金属線14が同心円状に多重に重ね巻きされてなるアンテナコイル15と、このアンテナコイル15に電気的に接続されたICチップ16とから概略構成されている。
また、アンテナコイル15は、中央部に円形状の間隙17が形成されるように、金属線14が巻き回されて形成されている。
そして、ICチップ16は、上記の間隙17内に配されている。
【0015】
包材12は、セラミックス繊維からなるシート状のものである。
このセラミックス繊維としては、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維などが挙げられる。
また、上記のセラミックス繊維をなすセラミックスは、まず成形され次に熱によって硬化された無機物質からなる製品であることが好ましく、例えば、硬質のセラミックス、シリカ、アルミナ、ガラス素材、酸化チタン、マイカ、などを含むものが挙げられる。
このようなセラミックス繊維からなる包材12の中でも、セラミックスファイバー50〜80質量%、酸化チタン5〜30質量%、合成マイカ5〜20質量%および有機弾性物質5〜15質量%からなるスラリーに凝集剤を添加した後、抄造、脱水プレス、乾燥することにより得られた嵩密度が0.1〜0.5g/cmのものが特に好ましい。
【0016】
また、包材12の厚みは特に限定されず、インレット11の大きさや厚みに応じて適宜調整される。
【0017】
被覆体13は、耐熱性樹脂からなる。
この耐熱性樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂などエンジニアリングプラスチック、シリコーン樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの耐熱性樹脂の中でも、対象となる物品の形状に応じて変形し、物品への取り付けが容易となることから、ゴム状の弾性や可撓性を有する樹脂が好ましい。シリコーン樹脂は、ゴム状の弾性および可撓性を有するとともに耐薬品性にも優れるので特に好ましい。
【0018】
また、被覆体13の厚みは、インレット11を内包した包材12の厚みよりも大きければ特に限定されず、インレット11を内包した包材12の大きさや厚みに応じて適宜調整される。
【0019】
金属線14としては、銀線、銅線、金線、アルミニウム線などが挙げられる。
金属線14として銅線を用いて形成したアンテナコイル15は、共振周波数の調整が比較的容易であるため、非接触型データ受送信体10にとって好適である。
また、この金属線14の表面は、絶縁性樹脂で被覆されている。したがって、アンテナコイル15を形成している金属線は、互いに絶縁されている。
【0020】
ICチップ16としては、特に限定されず、アンテナコイル15を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0021】
この実施形態の非接触型データ受送信体10によれば、インレットを内包するセラミックス繊維からなる包材12と、この包材12を被覆する耐熱性樹脂からなる被覆体13を備えているので、包材12をなすセラミックス繊維が飛散したり、汚染されたりすることなく、長期間安定して耐熱性を維持することができる。しかも、包材12をなすセラミックス繊維が解れて、外観を損なうこともない。
また、この非接触型データ受送信体10では、インレット11がアンテナコイル15とICチップ16のみで構成されているので、この非接触型データ受送信体10が高温に曝されてもインレットの基材が熱変形して、外部とのデータの送受信機能が損なわれることがない。
【0022】
なお、この実施形態では、非接触型データ受送信体10の外形形状を長方形状としたが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体の外形形状は、取り付け対象となる物品の形状や非接触型データ受送信体の取付位置などに応じて、三角形状、正方形状、多角形状、円形状、半円形状、楕円形状など任意の形状としてもよい。
また、この実施形態では、包材12を挟んで一対の取付孔13a、13aが設けられた非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、取り付け対象となる物品の形状や非接触型データ受送信体の取付位置などに応じて、取付孔を設ける位置、および、取付孔の数を変更してもよい。
さらに、この実施形態では、アンテナコイル15とICチップ16からなるインレット11を備えた非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、インレットが、樹脂基材と、この樹脂基材上に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとからなるものであってもよい。
【0023】
次に、図1を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法について説明する。
(非接触型データ受送信体の製造方法の一例)
まず、包材12によって、インレット11全体を包む。
次いで、インレット11を内包した包材12を、射出成形用の金型内の所定位置に配する。
次いで、射出成形によって、金型内に配した包材12の全体を耐熱性樹脂で被覆することにより、耐熱性樹脂からなる被覆体13を形成し、非接触型データ受送信体10を得る。
なお、ここで用いられる金型の内部形状は、射出成形によって所定の位置に取付孔13a、13aが形成される形状をなしている。
【0024】
この例の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、射出成形において、溶融した耐熱性樹脂の一部が包材12をなすセラミックス繊維の間に入り込むので、包材12と被覆体13の密着度が高くなる。
また、この例の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、インレット11がセラミックス繊維からなる包材12に包まれ、この包材12が断熱材として機能するから、射出成形における成形温度を、通常の状態でICチップ16が破壊される温度以上に設定しても、ICチップ16が破壊されるのを防止することができる。
【0025】
(非接触型データ受送信体の製造方法の他の例)
まず、包材12によって、インレット11全体を包む。
次いで、インレット11を内包した包材12を、耐熱性樹脂からなるフィルム、シートあるいは板で挟む。
次いで、超音波によって、上記のフィルム、シートあるいは板を融着して封止することにより、耐熱性樹脂からなる被覆体13を形成し、非接触型データ受送信体10を得る。
【0026】
この例の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、インレット11を内包した包材12を耐熱性樹脂からなるシートなどで挟み、このシートを超音波によって融着して封止するので、大規模な設備を用いることなく簡易かつ低コストで非接触型データ受送信体10を製造することができる。
また、この例の非接触型データ受送信体の製造方法によれば、インレット11がセラミックス繊維からなる包材12に包まれ、この包材12が断熱材として機能するから、超音波による耐熱性樹脂からなるシートの融着時に発生する熱によって、ICチップ16が破壊されるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明に係る非接触型データ受送信体に用いられるインレットの一例を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
10・・・非接触型データ受送信体、11・・・インレット、12・・・セラミックス繊維、13・・・耐熱性樹脂、14・・・金属線、15・・・アンテナコイル、16・・・ICチップ、17・・・間隙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナコイルおよび該アンテナコイルに接続されたICチップを備えたインレットと、該インレットを内包するセラミックス繊維からなる包材と、該包材を被覆する耐熱性樹脂からなる被覆体とを備えたことを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
前記セラミックス繊維をなすセラミックスは、まず成形され次に熱によって硬化された無機物質からなる製品であることを特徴とする請求項1に記載の非接触型データ受送信体。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−112373(P2008−112373A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295939(P2006−295939)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】