説明

非接触型データ受送信体

【課題】通信距離が長く、広帯域化が可能であり、断線し難く、かつ、小型化を図ることができるアンテナを備えた非接触型データ受送信体を提供する。
【解決手段】本発明の非接触型データ受送信体10は、基材11と、基材11の一方の面11aに設けられたアンテナ12と、アンテナ12に接続されたICチップ13と、を備え、アンテナ12の放射素子15が、絶縁層16,17を介して積層された3つの面状の導電層18,19,20からなり、導電層18,19,20が、その縁部において直接に接続され、導電層18,19,20のうち互いに接続された2つの導電層の接続部は、それぞれの導電層の幅方向に沿って延在することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体に関し、さらに詳しくは、送受信可能な周波数帯域幅が広い非接触型データ受送信体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICタグは、基材と、その一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えており、情報書込/読出装置からの電磁波または電波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICタグ内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICタグのアンテナから発信される。
【0003】
このようなICタグのうち電波方式のものに関しては、アンテナの通信距離を長くすることと、送受信可能な周波数帯域幅を広く(広帯域化)することが望まれている。特に、アンテナを広帯域化することにより、1つのアンテナで複数の周波数を共用できるだけでなく、通信に用いる周波数の調節が容易となる。
広帯域に対応したアンテナとしては、一般的に、ボウタイアンテナなどの平面アンテナが用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。このような広帯域化可能な平面アンテナをICタグなどに応用するには、ICタグなどの大きさによる制約から、アンテナのサイズを小さくすることが望まれていた。
そこで、アンテナのサイズを小さくするために、上記のような平面アンテナを積層し、スルーホールを介して、それぞれの平面アンテナ間を接続することが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
また、誘電体からなる絶縁基体と、マイクロストリップ導体からなる放射電極と、実装面に形成した給電用端子および固定用端子と、給電用端子と放射電極とを接続する給電電極を具備するチップアンテナ素子において、放射電極が実装面の対向面に形成され、給電電極が絶縁基体の側面に設けられたものが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−135037号公報
【特許文献2】特開2006−074187号公報
【特許文献3】特開2004−064397号公報
【特許文献4】特開2004−056580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献3に記載された発明のように、スルーホールを介して、積層した平面アンテナ間を接続した場合、スルーホールによって、平面アンテナ間の接続面積が狭まり、広帯域性が損なわれるという問題があった。
また、特許文献4に記載された発明のように、絶縁基体の側面に、絶縁基材の表裏面にそれぞれ形成された給電用端子と放射電極とを接続する給電電極を設けた場合、形成可能な導電部(アンテナ)は2層に制限されるだけでなく、外部からの衝撃を受けると、給電電極が断線し、結果として、放射電極が機能しなくなるという問題があった。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、広帯域性を損なうことなく、広帯域化および小型化が可能であり、かつ、断線し難いアンテナを備えた非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非接触型データ受送信体は、基材と、該基材の一方の面に設けられたアンテナと、該アンテナに接続されたICチップと、を備えた非接触型データ受送信体であって、前記アンテナの少なくとも一部が、絶縁層を介して積層された複数の面状の導電層からなり、前記複数の導電層はそれぞれ、その一端側の縁部および/または他端側の縁部において、直ぐ上の導電層および/または直ぐ下の導電層に対して直接に接続され、互いに接続された2つの導電層の接続部はそれぞれの導電層の幅方向に沿って延在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非接触型データ受送信体によれば、基材と、該基材の一方の面に設けられたアンテナと、該アンテナに接続されたICチップと、を備えた非接触型データ受送信体であって、前記アンテナの少なくとも一部が、絶縁層を介して積層された複数の面状の導電層からなり、前記複数の導電層はそれぞれ、その一端側の縁部および/または他端側の縁部において、直ぐ上の導電層および/または直ぐ下の導電層に対して直接に接続され、互いに接続された2つの導電層の接続部はそれぞれの導電層の幅方向に沿って延在するので、複数の導電層が基材の一方の面において、絶縁層を介して、基材の一方の面と垂直な方向に折り重ねられた1つの面状のアンテナをなすから、アンテナの広帯域性を損なうことなく、アンテナが送受信可能な周波数帯域幅を広く(広帯域化)することができるとともに、基材の一方の面におけるアンテナの占有面積を小さくすることができる。したがって、本発明の非接触型データ受送信体は、広帯域化および小型化が可能となる。また、アンテナの少なくとも一部が、絶縁層を介して順に積層された複数の導電層から構成され、それぞれの導電層がその接続部において幅の等しい面同士で連接されているので、導電層同士の接続部が外部に露出することなく、また、接続面積が比較的大きいから、その接続部において、アンテナが断線するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図4】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図5】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
【図6】本発明の非接触型データ受送信体の製造方法の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の非接触型データ受送信体の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
図1は、本発明の非接触型データ受送信体の一実施形態を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、平面視長方形状の基材11と、基材11の一方の面11aに設けられたアンテナ12と、基材11の一方の面11aにおいてアンテナ12に接続されたICチップ13とから概略構成されている。
【0013】
アンテナ12は、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ13と接続する部分)を有する一対の放射素子14,15と、放射素子14,15の給電点近傍を短絡する短絡部(図示略)とからなるアンテナである。
また、アンテナ12の放射素子15は、2つの絶縁層16,17を介して順に積層され、かつ、互いに電気的に接続された3つの面状の導電層18,19,20から構成されている。
なお、2つの絶縁層16,17を、基材11の一方の面11a側から順に第一絶縁層16、第二絶縁層17ということもある。また、3つの導電層18,19,20を、基材11の一方の面11a側から順に第一導電層18、第二導電層19、第三導電層20ということもある。
【0014】
さらに詳細には、第一導電層18、第二導電層19および第三導電層20が、第一絶縁層16と第二絶縁層17を介して、基材11の一方の面11a側から順に積層され、第一導電層18と第二導電層19がそれぞれの接続部以外の部分では絶縁され、第二導電層19と第三導電層20がそれぞれの接続部以外の部分では絶縁されることにより、第一導電層18、第二導電層19および第三導電層20が1つのアンテナ(放射素子15)を形成している。
【0015】
言い換えれば、第一導電層18と第二導電層19が、第一絶縁層16を介して積層され、第二導電層19が、その一端側の縁部19aにおいて、第一導電層18に対して直接に接続され、互いに接続された第一導電層18と第二導電層19の接続部(第一絶縁層18の給電点とは反対側の端(一端)側の縁部18aと、第二導電層19の一端側の縁部19aに相当)は、それぞれの導電層18,19の幅方向(図1(a)において紙面の上下方向)に沿って延在する適当な幅の帯状をなしている。すなわち、前記の接続部の幅は、第一絶縁層18の一端側の縁部18aの幅と第二導電層19の一端側の縁部19aの幅(図1(a)において紙面の上下方向の幅)と等しくなっており、第一導電層18と第二導電層19が、その接続部(縁部)において幅の等しい面同士で連接されている。
【0016】
同様に、第二導電層19と第三導電層20が、第二絶縁層17を介して積層され、第二導電層19が、その他端側の縁部19bにおいて、第三導電層20に対して直接に接続され、互いに接続された第二導電層19と第三導電層20の接続部(第二導電層19の他端側の縁部19bと、第三導電層20の一端側の縁部20aに相当)は、それぞれの導電層19,20の幅方向(図1(a)において紙面の上下方向)に沿って延在する適当な幅の帯状をなしている。すなわち、前記の接続部の幅は、第二導電層19の他端側の縁部19bの幅と第三導電層20の一端側の縁部20aの幅(図1(a)において紙面の上下方向の幅)と等しくなっており、第二導電層19と第三導電層20が、その接続部(縁部)において幅の等しい面同士で連接されている。
【0017】
なお、第一導電層18は、放射素子14と同様に、平面視三角形状をなしている。また、第二導電層19、第三導電層20、第一絶縁層16および第二絶縁層17は、平面視した場合の形状が略等しく、平面視長方形状をなしている。
したがって、第一絶縁層16は、第一導電層18の一方の面(基材11と接している面とは反対側の面)18b、および、基材11の一方の面11aに設けられている。
また、第二導電層19は、第一導電層18との接続部以外の部分が第一絶縁層16の一方の面(第一導電層18と接している面とは反対側の面)16aに設けられている。
また、第二絶縁層17は、第二導電層19の一方の面(第一絶縁層16と接している面とは反対側の面)19cに設けられている。
さらに、第三導電層20は、第二導電層19との接続部以外の部分が第二絶縁層17の一方の面(第二導電層19と接している面とは反対側の面)17aに設けられている。
【0018】
これにより、放射素子15は、第一導電層18、第二導電層19および第三導電層20がそれぞれの縁部で接続され、これらの導電層18、19,20が連接されてなる1つの面状のアンテナをなしている。そして、放射素子15は、基材11の一方の面11aにおいて、絶縁層16,17を介して、基材11の一方の面11aと垂直な方向に折り重ねられた状態の積層アンテナをなしている。
【0019】
また、アンテナ12の長さ(全長)は、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。
【0020】
絶縁層16,17の厚みは、導電層18,19,20をそれぞれの接続部以外の部分において絶縁することができれば特に限定されないが、10μm以上、50μm以下であることが好ましい。
また、導電層18,19,20の厚みは、特に限定されないが、1μm以上、30μm以下であることが好ましい。
【0021】
基材11としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;ガラスエポキシ樹脂からなる基材(ガラスエポキシ樹脂基材);上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0022】
アンテナ12、すなわち、第一導電層18、第二導電層19および第三導電層20は、基材11の一方の面11a上に、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0023】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0024】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば100〜150℃程度でアンテナ12をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ12をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することによる形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0025】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0026】
また、アンテナ12をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、アンテナ12をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0027】
アンテナ12を形成する材料としては、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により、所定のパターンに容易に形成することができる点から、ポリマー型導電インクが好ましい。すなわち、アンテナ12がポリマー型導電インクを用いた印刷法により形成された場合、第一導電層18、第二導電層19および第三導電層20は、ポリマー型導電インクを用いた印刷法により形成された印刷層からなる。
【0028】
ICチップ13としては、特に限定されず、アンテナ12を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0029】
絶縁層16,17を形成する材料としては、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が用いられる。
また、これらの樹脂を適当な溶媒に溶解して、印刷可能な溶液を調製すれば、スクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により、非常に厚みの薄い絶縁層16,17を形成することができる。すなわち、絶縁層16,17が上記の樹脂を溶解した溶液を用いた印刷法により形成された場合、絶縁層16,17は、その溶液を用いた印刷法により形成された印刷層からなる。
【0030】
溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのアルコール類、酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステルなどのエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミドなどの酸アミド類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素などの有機溶媒が用いられる。
【0031】
次に、図1〜図6を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法を説明する。
ここでは、印刷法を用いた非接触型データ受送信体の製造方法を例示する。
まず、図2に示すように、印刷法により、基材11の一方の面11aに、ポリマー型導電インクを所定のパターンに塗布した後、乾燥して、放射素子14と第一導電層18を形成する。
【0032】
次いで、図3に示すように、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂を上記の溶媒に溶解して調製した溶液を用いた印刷法により、第一導電層18の一方の面18bにおける、第一導電層18の一端側の縁部18a以外の領域、および、第一導電層18の給電点近傍以外の領域を覆うとともに、基材11の一方の面11aの一部を覆うように、平面視長方形状の第一絶縁層16を形成する。
この工程では、印刷法により、第一導電層18の一方の面18b、および、基材11の一方の面11aに、上記の溶液を所定のパターンに塗布した後、乾燥して、第一絶縁層16を形成する。
【0033】
次いで、図4に示すように、印刷法により、第一絶縁層16の一方の面16aおよび第一導電層18の一端側の縁部18aに、ポリマー型導電インクを所定のパターンに塗布した後、乾燥して、第二導電層19を形成する。
【0034】
次いで、図5に示すように、印刷法により、第二導電層19の一方の面19cにおける、第二導電層19の他端側の縁部19b以外の領域に、上記の溶液を所定のパターンに塗布した後、乾燥して、第二絶縁層17を形成する。
【0035】
次いで、図6に示すように、印刷法により、第二絶縁層17の一方の面17aおよび第二導電層19の他端側の縁部19bに、ポリマー型導電インクを所定のパターンに塗布した後、乾燥して、第三導電層20を形成する。
これにより、第一導電層18、第二導電層19および第三導電層20からなる放射素子15が形成され、一対の放射素子14,15からなるアンテナ12の形成が完了する。
【0036】
次いで、アンテナ12の給電点にICチップ13を接続し、図1に示す非接触型データ受送信体10が得られる。
【0037】
この非接触型データ受送信体10によれば、アンテナ12の放射素子15が、2つの絶縁層16,17を介して順に積層され、かつ、互いに電気的に接続された3つの面状の導電層18,19,20から構成されてなり、それぞれの導電層18,19,20が、その縁部において幅の等しい面同士で直接に連接されているので、導電層18,19,20が基材11の一方の面11aにおいて、絶縁層16,17を介して、基材11の一方の面11aと垂直な方向に折り重ねられた1つの面状のアンテナをなすから、アンテナ12の広帯域性を損なうことなく、アンテナ12が送受信可能な周波数帯域幅を広く(広帯域化)することができるとともに、基材11の一方の面11aにおけるアンテナ12の占有面積を小さくすることができる。したがって、非接触型データ受送信体10は、広帯域化および小型化が可能となる。
また、アンテナ12の放射素子15が、絶縁層16,17を介して順に積層された導電層18,19,20から構成され、2つの導電層がその接続部において幅の等しい面同士で連接されているので、導電層同士の接続部が外部に露出することなく、また、接続面積が比較的大きいから、その接続部において、放射素子15が断線するのを防止できる。
また、絶縁層16,17や導電層18,19,20を印刷によって形成された印刷層とすれば、薄型のアンテナ12を実現することができるとともに、容易に製造することができる。
【0038】
なお、この実施形態では、2つの絶縁層16,17を介して順に積層され、互いに電気的に接続された3つの面状の導電層18,19,20から構成される放射素子15を備えた非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、アンテナの少なくとも一部が、絶縁層を介して積層された2層または4層以上の導電層から構成されていてもよい。すなわち、目的とする通信距離や周波数帯域幅に応じて、アンテナの構成(積層構造)を適宜設定することができる。
また、この実施形態では、第一導電層18が平面視三角形状をなし、第二導電層19および第三導電層20が平面視長方形状をなしている放射素子15を備えた非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、アンテナの少なくとも一部を形成する導電層の形状が面状をなしていれば、如何なる形状であってもよい。
【0039】
また、この実施形態では、アンテナ12が、その放射素子の一方(放射素子15)が積層アンテナからなる非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、アンテナはモノポールアンテナ、ダイポールアンテナであってもよく、また、アンテナがダイポールアンテナからなる場合、両方の放射素子が積層アンテナであってもよい。
【符号の説明】
【0040】
10・・・非接触型データ受送信体、11・・・基材、12・・・アンテナ、13・・・ICチップ、14,15・・・放射素子、16・・・第一絶縁層(絶縁層)、17・・・第二絶縁層(絶縁層)、18・・・第一導電層(導電層)、19・・・第二導電層(導電層)、20・・・第三導電層(導電層)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、該基材の一方の面に設けられたアンテナと、該アンテナに接続されたICチップと、を備えた非接触型データ受送信体であって、
前記アンテナの少なくとも一部が、絶縁層を介して積層された複数の面状の導電層からなり、
前記複数の導電層はそれぞれ、その一端側の縁部および/または他端側の縁部において、直ぐ上の導電層および/または直ぐ下の導電層に対して直接に接続され、互いに接続された2つの導電層の接続部は、それぞれの導電層の幅方向に沿って延在することを特徴とする非接触型データ受送信体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−9840(P2011−9840A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148716(P2009−148716)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】