非接触温度センサ及びその出力調整方法
【課題】 小型化及び部品点数の削減が図られた非接触温度センサ及びその出力調整方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る非接触温度センサ100においては、入射孔132aが形成された上ケース部130と、樹脂フィルム150が取り付けられた下ケース部140とが別体となっており、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153にはサーミスタ152Aが設けられている。そのため、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせる際、若しくは、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせた後に、入射孔132aとサーミスタ152Aとの相対位置を調整することができ、サーミスタ152Aの出力を調整することが可能である。すなわち、この非接触温度センサ100においては、特にネジ等の遮蔽部を用いることなく出力の調整をおこなうことができるため、小型化及び部品点数の削減が実現される。
【解決手段】 本発明に係る非接触温度センサ100においては、入射孔132aが形成された上ケース部130と、樹脂フィルム150が取り付けられた下ケース部140とが別体となっており、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153にはサーミスタ152Aが設けられている。そのため、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせる際、若しくは、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせた後に、入射孔132aとサーミスタ152Aとの相対位置を調整することができ、サーミスタ152Aの出力を調整することが可能である。すなわち、この非接触温度センサ100においては、特にネジ等の遮蔽部を用いることなく出力の調整をおこなうことができるため、小型化及び部品点数の削減が実現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知体の温度を非接触で検知する非接触温度センサ及びその出力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
普通紙複写機(PPC;Plain Paper Copier)等に用いられるトナー定着装置では、加熱ローラの熱と圧力とによりトナーを定着させる方式が普及している。そして、加熱ローラの温度は、画像品質に大きく影響するため、その温度制御が必要であった。この温度制御には、従来は、加熱ローラの表面に直接取り付けられる接触温度センサが用いられてきた。ところが、接触温度センサは、加熱ローラを傷つけてしまって画像品質を低下させる等の問題があった。
【0003】
そこで、加熱ローラに接触させない非接触式の温度センサが、下記特許文献1等に開示されている。この文献に開示されている非接触温度センサは、開口部から入射した赤外線を導く筒状の導光部を有する保持体と、この保持体の導光部の他端開口部に密着するように取り付けられた樹脂フィルムと、樹脂フィルムの一表面に配置された赤外線検知用感熱素子及び温度補償用感熱素子とを備えている。また、導光部の壁に設けられたネジ孔の外側からネジ(遮蔽部)が貫挿されており、このネジによって導光部を通る赤外線の一部が遮られる。そのため、このネジの位置調整をおこなうことで、赤外線検知用感熱素子の出力を調整することが可能となっている。
【特許文献1】特開2002−156284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の非接触温度センサには、次のような課題が存在している。すなわち、非接触温度センサは、特に熱容量の点でより小型であることが望まれているが、上述したネジ孔を導光部の壁に設ける場合、ネジの径以上の高さが必要となる上、ネジ溝が形成できる程度の厚さも必要となり、結果として、大きな導光部が必要となってくる。また、ネジによって遮られる分を考慮して、開口部を大きめにしておく必要があるため、やはり導光部の小型化が図ることが困難となっている。加えて、ケースとは別にネジが必要となるため、部品点数の増加が招かれる。
【0005】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、小型化及び部品点数の削減が図られた非接触温度センサ及びその出力調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る非接触温度センサは、一端側から赤外線が入射される入射孔が形成された第1のケース部材と、第1のケース部材の、入射孔の他端側に配置された第2のケース部材と、第1のケース部材と第2のケース部材との間に配置されると共に、第2のケース部材に取り付けられ、入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、入射孔によって露出される基体の入射孔対応部分に設けられ、基体によって熱変換された赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備えることを特徴とする。
【0007】
この非接触温度センサにおいては、入射孔が形成された第1のケース部材と、基体が取り付けられた第2のケース部材とが別体となっており、基体の入射孔対応部分には第1の感熱素子が設けられている。そのため、第1のケース部材と第2のケース部材とを組み合わせる際、若しくは、第1のケース部材と第2のケース部材とを組み合わせた後に、入射孔と第1の感熱素子との相対位置を調整することができる。このように入射孔と第1の感熱素子との相対位置を変化させると、第1の感熱素子が検知する熱量の検知レベルが変わるため、第1の感熱素子の出力を調整することが可能である。すなわち、この非接触温度センサにおいては、特にネジ等の遮蔽部を用いることなく出力の調整をおこなうことができるため、小型化及び部品点数の削減が実現される。
【0008】
また、第1のケース部材及び第2のケース部材の少なくとも一方に、第1のケース部材と第2のケース部材との間の相対移動を所定方向に規制するガイド部が設けられていることが好ましい。この場合、第1のケース部材及び第2のケース部材の一方を、ガイド部で規制された方向に移動させるだけで、入射孔と第1の感熱素子との相対位置の調整をおこなうことができるため、調整作業が容易になる。
【0009】
また、第1のケース部材及び第2のケース部材の少なくとも一方に、他方のケース部材を把持する把持部が設けられていることが好ましい。この場合、第1のケース部材と第2のケース部材との脱離が防止される。
【0010】
本発明に係る非接触温度センサは、赤外線が入射される入射孔が形成されたケースと、ケース内において入射孔に対して位置調整可能に配置され、入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、入射孔によって露出される基体の入射孔対応部分に設けられ、基体によって熱変換された赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備えることを特徴とする。
【0011】
この非接触温度センサにおいては、入射孔が形成されたケース内に、基体が位置調整可能に配置されており、基体の入射孔対応部分には第1の感熱素子が設けられている。そのため、基体をケース内に配置する際に、その配置位置を調整することで、入射孔と第1の感熱素子との相対位置を調整することができる。このように入射孔と第1の感熱素子との相対位置を変化させると、第1の感熱素子が検知する熱量の検知レベルが変わるため、第1の感熱素子の出力を調整することが可能である。すなわち、この非接触温度センサにおいては、特にネジ等の遮蔽部を用いることなく出力の調整をおこなうことができるため、小型化及び部品点数の削減が実現される。
【0012】
また、基体には、第1の感熱素子が感知する熱量から、基体が熱変換した赤外線の熱量を除いた熱量を感知する第2の感熱素子が設けられていることが好ましい。この場合、第1の感熱素子と第2の感熱素子との間の差動出力から、入射孔から入射された赤外線に起因する熱量のみを検出することができる。
【0013】
本発明に係る非接触温度センサの出力調整方法は、赤外線が入射される入射孔が形成されたケースと、ケース内に配置され、入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、入射孔によって露出される基体の入射孔対応部分に設けられ、基体によって熱変換された赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える非接触温度センサの出力調整方法であって、基体をケース内に配置する際に第1の感熱素子の入射孔に対する相対位置を調整して、非接触温度センサの出力を調整することを特徴とする。
【0014】
この非接触温度センサの出力調整方法においては、基体をケース内に配置する際に、その配置位置を調整することで、入射孔と第1の感熱素子との相対位置を調整することができる。このように入射孔と第1の感熱素子との相対位置を変化させると、第1の感熱素子が検知する熱量の検知レベルが変わるため、第1の感熱素子の出力を調整することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型化及び部品点数の削減が図られた非接触温度センサ及びその出力調整方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明に係る非接触温度センサを実施するにあたり最良と思われる形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0017】
本発明の実施形態に係る非接触温度センサは、被検知体の温度をその被検知体から放出される赤外線によって検知するものであり、主に、PPCの定着ローラやエアコンの温度検知に使用される。
(第1実施形態)
【0018】
本発明の第1実施形態に係る非接触温度センサについて、図1〜図6を参照しつつ説明する。ここで、図1は本発明の第1実施形態に係る非接触温度センサの平面図、図2は図1に示す非接触温度センサのII−II線断面図、図3は図1に示す非接触温度センサの(a)左側面図及び(b)右側面図、図4は図1に示す非接触温度センサの正面図、図5は図1に示す非接触温度センサの底面図であり、また図6は図1に示す非接触温度センサの内部構造を示した部分破断図である。
【0019】
図1に示すように、第1実施形態に係る非接触温度センサ100は、センサ本体部110と、検知回路170と、センサ本体部110から検知回路170への信号伝達をおこなう3本の電線W1,W2,W3とで構成されている。
【0020】
そして、図2に示すように、センサ本体部110は、ケース120と、ケース120内に配置された樹脂フィルム(基体)150と、樹脂フィルム150をケース120に取り付けるフィルム取付部160とで構成されている。
【0021】
まず、ケース120について説明する。
【0022】
ケース120は、上ケース部(第1のケース部材)130と下ケース部(第2のケース部材)140とで構成されている。上ケース部130及び下ケース部140の構成材料はともにアルミニウムである。
【0023】
上ケース部130は、長方形平板状の天板部132と、天板部132の各長辺の縁から同じ方向に直角に起立された一対の側板部(ガイド部)134と、この一対の側板部134の2組の対応する頂部領域134aから、互いに近づくように直角に曲げられた4つの爪部(把持部)136とで構成されており、一枚板の曲げ加工によって形成されている。
【0024】
天板部132の中央領域には、赤外線を一端側(外表面133a側)からケース120内に導入するための断面が略長方形の長穴(入射孔)132aが、天板部132の長手方向に沿って貫設されている。また、天板部132の長手方向における一方の端部132bには断面円形の設置穴132cが形成されており、この設置穴132cは非接触温度センサ100を組み込み装置(例えば、コピー機)内にネジ留めする際に用いられる。なお、一対の側板部134は、それぞれ天板部132の長辺の全長に亘って設けられており、同じ高さとなっている。
【0025】
下ケース部140は、長方形平板状の底板部142と、底板部142の各長辺の縁から同じ方向に直角に起立された一対の側板部144と、底板部142の各短辺の縁から側板部144と同じ方向に直角に起立された一対の側板部146とで構成されており、上ケース部130同様、一枚板の曲げ加工によって形成されている。
【0026】
底板部142は長方形平板状であり、その長さは上ケース部130の天板部132よりも短く、その幅は天板部132の幅よりも若干短い。また、側板部144及び側板部146は略同じ高さであり、上ケース部130の側板部134とも略同じ高さである。なお、側板部146の一方には、上述した電線W1,W2,W3をケース120内部に引き込むためのU字状切り欠き部146aが形成されている。
【0027】
上ケース部130と下ケース部140とは、それぞれの側板部134,144,146が起立した側が互いに向き合って、下ケース部140の一対の側板部144が上ケース部130の一対の側板部134に挟まれるように取り付けられる。それにより、上ケース部130の天板部132と下ケース部140の底板部142とが平行となり、天板部132に形成された入射孔132aの他端側(内表面133b側)が底板部142に対向する。
【0028】
ここで、上ケース部130の側板部134の離間距離D1は、下ケース部140の幅D2と略同じとなっているため(図3(a)参照)、上ケース部130を下ケース部140を取り付けると、下ケース部140は上ケース部130の側板部134によって把持されると共に、上ケース部130と下ケース部140との相対移動の方向が、天板部132(若しくは底板部142)の長手方向(図1のX方向)に制限される。
【0029】
すなわち、下ケース部140と上ケース部130とを接合した際、上ケース部130は、図1及び図4の二点鎖線で示すように、下ケース部140に対してX方向にスライド可能な状態となっている。そして、この上ケース部130をスライドさせることによって、樹脂フィルム150に対する入射孔132aの位置を後述する所望の出力レベルに合致するように位置決めをした後、上ケース部130の爪部136で下ケース部140がカシメ固定する。このように、上ケース部130の側板部134に爪部136を設けることで、下ケース部140のカシメ固定が実現されると共に、下ケース部140の上ケース部130からの脱落が確実に防止される。なお、上ケース部130と下ケース部140との固定は、カシメ固定に限らず、接着固定、ネジ留め、樹脂固定、溶接などでおこなってもよい。
【0030】
また、上ケース部130及び下ケース部140を作製する際に用いるアルミニウム板は、厚さ1.2mm以下(好ましくは、0.6mm以下)の圧延板であることが好ましい。このような薄板を用いることで、加工容易性及び応答性の向上や小型軽量化が図られる。
【0031】
次に、フィルム取付部160について、図2及び図6を参照しつつ説明する。
【0032】
図6に示すように、下ケース部140の底板部142には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)製のフィルム取付部160が設置されている。このフィルム取付部160は、略一定厚さのプレート状であり、外形が略長方形状の環状断面を有し、且つ、その設置領域は底板部142の略全域に亘っている。ただし、フィルム取付部160と下ケース部140の側板部144,146とは、所定距離だけ離間されており、熱的に絶縁された状態となっている。
【0033】
フィルム取付部160の内側の孔160aは、略長方形状の断面形状を有し、且つ、上ケース部130の入射孔132aよりも広い断面領域を有している。そのため、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせた際、このフィルム取付部160を上ケース部130の入射孔132aから見えない位置に配することができる。さらに、フィルム取付部160には、四角形断面の孔160aの角に対応する縁にそれぞれネジ受け部160bが設けられている。各ネジ受け部160bは、上ケース部130に向かう方向(図2のZ方向)に立設されている。
【0034】
なお、フィルム取付部160の構成材料は、PPS以外に、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やセラミック等であってもよい。
【0035】
続いて、樹脂フィルム150について、図2及び図6を参照しつつ説明する。
【0036】
樹脂フィルム150は、上述したフィルム取付部160と略同じ外形を有しており、その被覆領域はやはり底板部142の略全域に亘っている。この樹脂フィルム150は、フィルム取付部160の4つのネジ受け部160bによって支持されていると共に、このネジ受け部160bとネジ162とによってフィルム取付部160に固定されている。
【0037】
樹脂フィルム150は、ポリイミドで構成されており、良好な赤外線吸収特性を有している。そして、この樹脂フィルム150の下面(下ケース部140側の面)150aには、2つのサーミスタ(積層チップNTCサーミスタ)152A,152Bを含む所定の配線パターンが形成されている。2つのサーミスタ152A,152Bのうち、サーミスタ(第1の感熱素子)152Aは、被検知体の赤外線を吸収して発熱した樹脂フィルム150の熱量を感知するための素子であり、上ケース部130の入射孔132aから露出するフィルム領域151の内部に配置されている。一方、サーミスタ(第2の感熱素子)152Bは、ケース120内部の熱量を感知するための素子であり、上ケース部130の入射孔132aから露出するフィルム領域151の外部に配置されている。なお、サーミスタ152Aの両端の配線パターンには、サーミスタ152Aの検知特性を向上させるための1対の蛇行部154A,154Bが設けられている。また、サーミスタ152A,152Bは、応答速度の観点から熱容量の小さいものが好ましく、0603形状(0.6mm×0.3mm×0.3mm)又は0402形状(0.4mm×0.2mm×0.2mm)の積層タイプのものが好ましい。
【0038】
また、樹脂フィルム150上に形成された配線パターンは、3つの外部接続用端子T1,T2,T3を有しており、この端子T1,T2,T3と、各端子T1,T2,T3に対応する電線W1,W2,W3とが半田付けされている。また、図7に示すように、各電線W1,W2,W3は検知回路170の所定の端子に接続され、温度補償機能を備えた非接触温度センサ100の回路が構成される。ここで図7は、樹脂フィルム150の配線パターンを含む非接触温度センサ100の配線回路図を示した図である。図7に示すように、検知回路170は、MPUやROM、ADコンバータ、電子部品等によって構成されており、サーミスタ152Aとサーミスタ152Bとの間の差動出力から高精度の温度検知をおこなう。すなわち、樹脂フィルム150が熱変換した熱量を除いたケース内熱量を、上記フィルム領域151から離れたサーミスタ152Bによって感知することで、入射孔132aから入射された赤外線に起因する熱量のみを検出することができる。
【0039】
なお、樹脂フィルム150の構成材料は、配線パターンが作製容易な点や耐熱性の点からポリイミドが好適であるが、PPSやナイロンであってもよい。
【0040】
次に、以上で説明した非接触温度センサ100における出力調整の方法について、説明する。
【0041】
上述したように、下ケース部140と上ケース部130とを接合した際、上ケース部130は、下ケース部140に対してX方向にスライド可能な状態となっている。このとき、上ケース部130を所定長さだけスライドさせることで、サーミスタ152Aの出力を変更可能であることを、発明者らは新たに見出した。すなわち、下記表1及び図17に示すとおり、サーミスタ152Aが、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153の中心位置にある場合と、中心位置から離れた位置にある場合とでは、その出力が相違するとの知見を得た。
【表1】
【0042】
ここで、表1は、X方向に関する長さが8mmの入射孔132a(及び入射孔対応部分153)を用い、その中心位置からサーミスタ152AをX方向に沿って左右に所定長さだけずらして、各位置(P1,P2,P3,P4,P5)におけるサーミスタ152Aとサーミスタ152Bとの差動出力を、2回測定した結果を示した表である。また、図17に示すグラフは、サーミスタ152Aが各位置にあるときの差動出力及び差動出力の偏差を示したグラフであり、横軸が中心からの距離(mm)、縦軸が差動出力(V)となっている。
【0043】
上の結果から、上ケース部130を所定の長さだけスライドさせて、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153を移動させ、その入射孔対応部分153におけるサーミスタ152Aの相対位置を変えることで、サーミスタ152Aとサーミスタ152Bとの差動出力を調整可能であることがわかる。このようにサーミスタ152Aの相対位置を変えることで差動出力が変化するのは、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153の中心位置から離れた部分では、そこで発生した熱が樹脂フィルム150の入射孔対応部分153以外の部分に伝わり、このような位置に配置されたサーミスタ152Aはその感知レベルが低くなっているためであると推測される。
【0044】
なお、上ケース部130をスライドさせるタイミングは、上ケース部130と下ケース部140との接合時に限らず、上ケース部130と下ケース部140とを固定する前であれば、適宜、所望のタイミングを選択することができる。
【0045】
以上で詳細に説明したように、第1実施形態に係る非接触温度センサ100においては、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせる際、若しくは、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせた後に、入射孔132aとサーミスタ152Aとの相対位置を調整することができるため、ネジ等の遮蔽部を要する従来の非接触温度センサよりも小型化することができると共に、部品点数の削減が実現される。
【0046】
また、非接触温度センサ100は、その使用時には、被検知体からの赤外線が入射孔132aに入るように、上ケース部130の天板部132が被検知体に対面するように設置される。そのため、被検知体からの赤外線のうち、入射孔132aに入らなかった赤外線の一部は、上ケース部130の天板部132において熱変換され、天板部132が発熱する。この天板部132の発熱によって生じた熱は、その熱量が大きくなるにつれて、上ケース部130の側板部134、下ケース部140の側板部144,146、底板部142、フィルム取付部160、樹脂フィルム150の順に伝わっていく。すなわち、この非接触温度センサ100においては、上ケース部130の天板部132から樹脂フィルム150への伝熱は、下ケース部140の底板部142に設けられたフィルム取付部160まで回り込んでおこなわれる。
【0047】
一方、従来の非接触温度センサでは、感熱素子が設けられた樹脂フィルムは、被検知体に対面する部材である保持体に密着されているため、その保持体の発熱によって生じた熱は保持体から樹脂フィルムに直接伝わる。すなわち、第1実施形態に係る非接触温度センサ100は、被検知体に対面するケース部材(すなわち、上ケース部130)から樹脂フィルム150へ熱が伝わる際、フィルム取付部160を経由する迂回路を通る必要があるため、従来の非接触温度センサに比べて、その伝熱経路が有意に延長されている。
【0048】
すなわち、第1実施形態に係る非接触温度センサ100においては、従来の非接触温度センサに比べて、上ケース部130から樹脂フィルム150までの伝熱経路が延長されていることで、上ケース部130における発熱が、樹脂フィルム150に伝わりにくくなっている。それにより、樹脂フィルム150上に配置されたサーミスタ152Aの検知精度の向上が実現されている。
【0049】
また、下ケース部140の底板部142に樹脂フィルム150を直接設置せずに、フィルム取付部160を介して設置することで、底板部142と樹脂フィルム150とが離間されるため、上ケース部130における発熱が、樹脂フィルム150により伝わりにくくなっている。さらに、フィルム取付部160から突出するネジ受け部160bによって、樹脂フィルム150を支持することで、底板部142から樹脂フィルム150までの伝熱経路の断面積が低減されているため、樹脂フィルム150への伝熱がより効果的に抑制されている。
【0050】
また、非接触温度センサ100では、上ケース部130と下ケース部140とが別体であることにより、熱伝導における連続性が低下されており、上ケース部130から下ケース部140への伝熱がより効果的に抑えられている。
【0051】
また、非接触温度センサ100では、下ケース部140とフィルム取付部160とが別体であることにより熱伝導における連続性が低下されているため、底板部142から樹脂フィルム150への伝熱がより効果的に抑えられている。特に、上述したPPS製のフィルム取付部160は、ケース120を構成するアルミニウムよりも低い熱伝導率を有するため、底板部142から樹脂フィルム150への伝熱が効果的に抑制されている。
【0052】
さらに、従来の非接触温度センサのケースはAlダイカストによって作製されることが多いが、第1実施形態に係る非接触温度センサ100のケース120はプレス成型(曲げ、絞り、打ち抜き)で作製されるため、従来の非接触温度センサに比べて作製が容易であり、且つ、軽量化を容易に図ることができる。
(第2実施形態)
【0053】
次に、第2実施形態に係る非接触温度センサについて、図8及び図9を参照しつつ説明する。図8及び図9に示すように、本発明の第2実施形態に係る非接触温度センサ200は、上述した第1実施形態に係る非接触温度センサ100と、上ケース部130の入射孔132aの縁に導光部202が設けられている点で異なる。
【0054】
すなわち、非接触温度センサ200においては、上ケース部130の入射孔132aの縁に沿って管状の導光部202が立設されている。この導光部202は、絞り加工によって形成されており、上ケース部130の天板部132aからケース120外部に向かって、天板部132aに直交する方向(図8のZ方向)に延びている。また、導光部202の内側面202aには黒体処理が施されており、この黒体処理が施された内側面202aにおいて赤外線が吸収されることにより、内側面202aにおける赤外線の反射が抑えられている。具体的には、内側面202aにプラスチックやゴム等を塗布したり所定条件で熱処理したりして、内側面202aの赤外線反射率を低減する。
【0055】
このような導光部202が設けられた非接触温度センサ200においては、上述した非接触温度センサ100と同様の効果を得ることができる上に、導光部202の高さ分だけ、実質的に入射孔132aが被検知体に近づけることができるため、被検知体の赤外線検出における指向性が向上している。また、導光部202の内側面202aを黒体処理することで、図9に示すように、導光部202の延在方向(図9のZ方向)から大きく逸れた赤外線βのケース120内への入射を防止することができ、導光部202の延在方向に沿う赤外線αを選択的にケース120内に入射させることができる。それにより、導光部202の内側面202aに黒体処理を施さない場合に比べて、被検知体の赤外線検出における指向性が向上する。
【0056】
さらに、導光部202は絞り加工によって形成されるため、従来のAlダイカストで作製される非接触温度センサに比べて、作製が容易であり、且つ、軽量化を容易に図ることができる。
【0057】
ここで、非接触温度センサ200が設置される組み込み装置の内部では、被検知体に起因する熱の対流が起こっている。そして、この対流する熱がケース120内の樹脂フィルム150に当たった場合には、樹脂フィルム150上のサーミスタ152Aの出力が乱れることが知られている。ところが、非接触温度センサ200のように、ある程度の高さを有する導光部202によって入射孔132aの周囲を覆うことで、その対流熱のケース120内への侵入が抑制される。そのため、この非接触温度センサ200においては、サーミスタ152Aの出力の乱れが有意に抑制されている。
(第3実施形態)
【0058】
次に、第3実施形態に係る非接触温度センサについて、図10及び図11を参照しつつ説明する。図10及び図11に示すように、本発明の第3実施形態に係る非接触温度センサ300は、上述した第1実施形態に係る非接触温度センサ100と、上ケース部130の入射孔132aの縁に導光部302が設けられている点で異なる。
【0059】
すなわち、非接触温度センサ300においては、上ケース部130の入射孔132aの縁に沿って管状の導光部302が立設されている。この導光部302は、上ケース部130の天板部132aからケース120内部に向かって、天板部132aに直交する方向(図8のZ方向)に延びており、導光部202同様に絞り加工によって形成されている。また、この導光部302の内側面302aも、第2実施形態に係る導光部202と同様に、黒体処理が施されている。
【0060】
このような導光部302が設けられた非接触温度センサ300においては、上述した非接触温度センサ100と同等の効果を得ることができる上に、導光部302によって、被検知体からの赤外線を受けるフィルム領域151が入射孔132aの開口領域と略同じ程度に限定される。それにより、非接触温度センサ300においては、サーミスタ152Aの周囲で効果的に熱変換させることができるため、検知精度が向上している。また、導光部302の内側面302aを黒体処理することにより、第2実施形態に係る非接触温度センサ200と同様に、被検知体の赤外線検出における指向性が向上している。
【0061】
さらに、導光部302は絞り加工によって形成されるため、従来のAlダイカストで作製される非接触温度センサに比べて、作製が容易であり、且つ、軽量化を容易に図ることができる。
(第4実施形態)
【0062】
次に、第4実施形態に係る非接触温度センサについて、図12〜図14を参照しつつ説明する。図12〜図14に示すように、本発明の第4実施形態に係る非接触温度センサ400は、上述した第2実施形態に係る非接触温度センサ200と、フィルム取付部160の代わりに下ケース部140と一体であるフィルム取付部460が設けられている点で異なる。
【0063】
すなわち、非接触温度センサ400においては、下ケース部140の底板部142には、底板部142に直交する方向(Z方向)に延びる円柱状のフィルム取付部460が4つ設けられている。そして、このフィルム取付部460の上部には、上述した第1〜3実施形態に係るネジ受け部160bと同様のネジ受け部460bが設けられており、ネジ受け部460bとネジ162とでフィルム取付部460に樹脂フィルム150が固定される。これらのフィルム取付部460も、フィルム取付部160同様、上ケース部130の入射孔132aから見えない位置に配される。
【0064】
下ケース部140と一体であるこのようなフィルム取付部460が設けられた非接触温度センサ400においては、上述した非接触温度センサ200と同様の効果を得ることができる上に、部品点数の低減が図られる。
(第5実施形態)
【0065】
次に、第5実施形態に係る非接触温度センサについて、図15を参照しつつ説明する。図15は、本発明の第5実施形態に係る非接触温度センサ500の要部拡大図である。この第5実施形態に係る非接触温度センサ500は、第1の実施形態に係る非接触温度センサ100と、樹脂フィルム150のフィルム取付部160への取り付け方が異なっている。
【0066】
すなわち、図15に示すように、ネジ受け部460bのネジ受け穴460cが、上ケース部130と下ケース部140との相対移動の方向であるX方向に延びた長穴となっている。このようなネジ受け部460bを有する非接触温度センサ500においては、ネジ受け部460bに樹脂フィルム150を載置してネジ留めする際に、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153とサーミスタ152Aとの相対位置を調整することができる。すなわち、ネジ受け部460bに樹脂フィルム150を載置し、樹脂フィルム150を所定長さだけスライドさせて位置決めした後、ネジ162で樹脂フィルム150を固定する。このようにして、入射孔対応部分153とサーミスタ152Aとの相対位置を調整した場合であっても、上述した実施形態と同様に、サーミスタ152Aの出力を調整することができる。
【0067】
また、図16に示すように、ネジ受け部460bに、上記長穴の代わりに、上ケース部130と下ケース部140との相対移動の方向であるX方向に並んだネジ穴群460dが形成された非接触温度センサ600であっても、非接触温度センサ500と同様に、ネジ受け部460bに樹脂フィルム150を載置してネジ留めする際に、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153とサーミスタ152Aとの相対位置を調整して、サーミスタ152Aの出力を調整することができる。すなわち、この第5実施形態に係る非接触温度センサ500,600においても、ネジ等の遮蔽部を用いることなく、入射孔132aとサーミスタ152Aとの相対位置を調整することができるため、従来の非接触温度センサよりも小型化することができると共に、部品点数の削減が実現される。
【0068】
なお、以上で説明した非接触温度センサ500及び非接触温度センサ600においては、必ずしも、ケース120が、上ケース部130と下ケース部140との2物体で構成されている必要はなく、適宜、上ケース部130と下ケース部140とが一体となったケースを用いることもできる。
【0069】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上ケース部130と下ケース部140との相対移動の方向は、天板部132(若しくは底板部142)の長手方向(図1のX方向)に限らず、天板部132(若しくは底板部142)の厚さ方向(図1のZ方向)であってもよい。また、ガイド部は、下ケース部の側板部を案内する上ケース部の側板部のように、面と面で移動方向を規制する構造以外に、突起とガイド溝とを有する構造など、公知のガイド構造に適宜変更することができる。さらに、上ケース部のみにガイド部及び把持部が設けられた非接触温度センサを示したが、ガイド部や把持部が、下ケース部のみに設けられている態様や、上ケース部と下ケース部の両方に設けられている態様であってもよい。下ケース部上ケース部さらに、下ケース部の底板部と樹脂フィルムとの間に、赤外線を反射する赤外線反射膜等のエネルギー線反射膜を介在させて、より効率よく樹脂フィルムに赤外線を吸収させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る非接触温度センサの平面図である。
【図2】図1に示す非接触温度センサのII−II線断面図である。
【図3】図1に示す非接触温度センサの(a)左側面図及び(b)右側面図である。
【図4】図1に示す非接触温度センサの正面図である。
【図5】図1に示す非接触温度センサの底面図であり
【図6】図1に示す非接触温度センサの内部構造を示した部分破断図である。
【図7】樹脂フィルムの配線パターンを含む非接触温度センサの配線回路図を示した図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る非接触温度センサの平面図である。
【図9】図8に示す非接触温度センサのIX−IX線断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る非接触温度センサの平面図である。
【図11】図10に示す非接触温度センサのXI−XI線断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る非接触温度センサの平面図である。
【図13】図12に示す非接触温度センサのXIII−XIII線断面図である。
【図14】図12に示す非接触温度センサの内部構造を示した部分破断図である。
【図15】本発明の第5実施形態に係る非接触温度センサの要部拡大図である。
【図16】図15に示す非接触温度センサの変形例を示した要部拡大図である。
【図17】サーミスタが各位置にあるときの差動出力及び差動出力の偏差を示したグラフである。
【符号の説明】
【0071】
100,200,300,400,500,600…非接触温度センサ、110…センサ本体部、120…ケース、130…上ケース部、132…天板部、132a…入射孔、140…下ケース部、142…底板部、150…樹脂フィルム、152A,152B…サーミスタ、153…入射孔対応部分、160,460…フィルム取付部、202,302…導光部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検知体の温度を非接触で検知する非接触温度センサ及びその出力調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
普通紙複写機(PPC;Plain Paper Copier)等に用いられるトナー定着装置では、加熱ローラの熱と圧力とによりトナーを定着させる方式が普及している。そして、加熱ローラの温度は、画像品質に大きく影響するため、その温度制御が必要であった。この温度制御には、従来は、加熱ローラの表面に直接取り付けられる接触温度センサが用いられてきた。ところが、接触温度センサは、加熱ローラを傷つけてしまって画像品質を低下させる等の問題があった。
【0003】
そこで、加熱ローラに接触させない非接触式の温度センサが、下記特許文献1等に開示されている。この文献に開示されている非接触温度センサは、開口部から入射した赤外線を導く筒状の導光部を有する保持体と、この保持体の導光部の他端開口部に密着するように取り付けられた樹脂フィルムと、樹脂フィルムの一表面に配置された赤外線検知用感熱素子及び温度補償用感熱素子とを備えている。また、導光部の壁に設けられたネジ孔の外側からネジ(遮蔽部)が貫挿されており、このネジによって導光部を通る赤外線の一部が遮られる。そのため、このネジの位置調整をおこなうことで、赤外線検知用感熱素子の出力を調整することが可能となっている。
【特許文献1】特開2002−156284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の非接触温度センサには、次のような課題が存在している。すなわち、非接触温度センサは、特に熱容量の点でより小型であることが望まれているが、上述したネジ孔を導光部の壁に設ける場合、ネジの径以上の高さが必要となる上、ネジ溝が形成できる程度の厚さも必要となり、結果として、大きな導光部が必要となってくる。また、ネジによって遮られる分を考慮して、開口部を大きめにしておく必要があるため、やはり導光部の小型化が図ることが困難となっている。加えて、ケースとは別にネジが必要となるため、部品点数の増加が招かれる。
【0005】
そこで、本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、小型化及び部品点数の削減が図られた非接触温度センサ及びその出力調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る非接触温度センサは、一端側から赤外線が入射される入射孔が形成された第1のケース部材と、第1のケース部材の、入射孔の他端側に配置された第2のケース部材と、第1のケース部材と第2のケース部材との間に配置されると共に、第2のケース部材に取り付けられ、入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、入射孔によって露出される基体の入射孔対応部分に設けられ、基体によって熱変換された赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備えることを特徴とする。
【0007】
この非接触温度センサにおいては、入射孔が形成された第1のケース部材と、基体が取り付けられた第2のケース部材とが別体となっており、基体の入射孔対応部分には第1の感熱素子が設けられている。そのため、第1のケース部材と第2のケース部材とを組み合わせる際、若しくは、第1のケース部材と第2のケース部材とを組み合わせた後に、入射孔と第1の感熱素子との相対位置を調整することができる。このように入射孔と第1の感熱素子との相対位置を変化させると、第1の感熱素子が検知する熱量の検知レベルが変わるため、第1の感熱素子の出力を調整することが可能である。すなわち、この非接触温度センサにおいては、特にネジ等の遮蔽部を用いることなく出力の調整をおこなうことができるため、小型化及び部品点数の削減が実現される。
【0008】
また、第1のケース部材及び第2のケース部材の少なくとも一方に、第1のケース部材と第2のケース部材との間の相対移動を所定方向に規制するガイド部が設けられていることが好ましい。この場合、第1のケース部材及び第2のケース部材の一方を、ガイド部で規制された方向に移動させるだけで、入射孔と第1の感熱素子との相対位置の調整をおこなうことができるため、調整作業が容易になる。
【0009】
また、第1のケース部材及び第2のケース部材の少なくとも一方に、他方のケース部材を把持する把持部が設けられていることが好ましい。この場合、第1のケース部材と第2のケース部材との脱離が防止される。
【0010】
本発明に係る非接触温度センサは、赤外線が入射される入射孔が形成されたケースと、ケース内において入射孔に対して位置調整可能に配置され、入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、入射孔によって露出される基体の入射孔対応部分に設けられ、基体によって熱変換された赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備えることを特徴とする。
【0011】
この非接触温度センサにおいては、入射孔が形成されたケース内に、基体が位置調整可能に配置されており、基体の入射孔対応部分には第1の感熱素子が設けられている。そのため、基体をケース内に配置する際に、その配置位置を調整することで、入射孔と第1の感熱素子との相対位置を調整することができる。このように入射孔と第1の感熱素子との相対位置を変化させると、第1の感熱素子が検知する熱量の検知レベルが変わるため、第1の感熱素子の出力を調整することが可能である。すなわち、この非接触温度センサにおいては、特にネジ等の遮蔽部を用いることなく出力の調整をおこなうことができるため、小型化及び部品点数の削減が実現される。
【0012】
また、基体には、第1の感熱素子が感知する熱量から、基体が熱変換した赤外線の熱量を除いた熱量を感知する第2の感熱素子が設けられていることが好ましい。この場合、第1の感熱素子と第2の感熱素子との間の差動出力から、入射孔から入射された赤外線に起因する熱量のみを検出することができる。
【0013】
本発明に係る非接触温度センサの出力調整方法は、赤外線が入射される入射孔が形成されたケースと、ケース内に配置され、入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、入射孔によって露出される基体の入射孔対応部分に設けられ、基体によって熱変換された赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える非接触温度センサの出力調整方法であって、基体をケース内に配置する際に第1の感熱素子の入射孔に対する相対位置を調整して、非接触温度センサの出力を調整することを特徴とする。
【0014】
この非接触温度センサの出力調整方法においては、基体をケース内に配置する際に、その配置位置を調整することで、入射孔と第1の感熱素子との相対位置を調整することができる。このように入射孔と第1の感熱素子との相対位置を変化させると、第1の感熱素子が検知する熱量の検知レベルが変わるため、第1の感熱素子の出力を調整することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小型化及び部品点数の削減が図られた非接触温度センサ及びその出力調整方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明に係る非接触温度センサを実施するにあたり最良と思われる形態について詳細に説明する。なお、同一又は同等の要素については同一の符号を付し、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0017】
本発明の実施形態に係る非接触温度センサは、被検知体の温度をその被検知体から放出される赤外線によって検知するものであり、主に、PPCの定着ローラやエアコンの温度検知に使用される。
(第1実施形態)
【0018】
本発明の第1実施形態に係る非接触温度センサについて、図1〜図6を参照しつつ説明する。ここで、図1は本発明の第1実施形態に係る非接触温度センサの平面図、図2は図1に示す非接触温度センサのII−II線断面図、図3は図1に示す非接触温度センサの(a)左側面図及び(b)右側面図、図4は図1に示す非接触温度センサの正面図、図5は図1に示す非接触温度センサの底面図であり、また図6は図1に示す非接触温度センサの内部構造を示した部分破断図である。
【0019】
図1に示すように、第1実施形態に係る非接触温度センサ100は、センサ本体部110と、検知回路170と、センサ本体部110から検知回路170への信号伝達をおこなう3本の電線W1,W2,W3とで構成されている。
【0020】
そして、図2に示すように、センサ本体部110は、ケース120と、ケース120内に配置された樹脂フィルム(基体)150と、樹脂フィルム150をケース120に取り付けるフィルム取付部160とで構成されている。
【0021】
まず、ケース120について説明する。
【0022】
ケース120は、上ケース部(第1のケース部材)130と下ケース部(第2のケース部材)140とで構成されている。上ケース部130及び下ケース部140の構成材料はともにアルミニウムである。
【0023】
上ケース部130は、長方形平板状の天板部132と、天板部132の各長辺の縁から同じ方向に直角に起立された一対の側板部(ガイド部)134と、この一対の側板部134の2組の対応する頂部領域134aから、互いに近づくように直角に曲げられた4つの爪部(把持部)136とで構成されており、一枚板の曲げ加工によって形成されている。
【0024】
天板部132の中央領域には、赤外線を一端側(外表面133a側)からケース120内に導入するための断面が略長方形の長穴(入射孔)132aが、天板部132の長手方向に沿って貫設されている。また、天板部132の長手方向における一方の端部132bには断面円形の設置穴132cが形成されており、この設置穴132cは非接触温度センサ100を組み込み装置(例えば、コピー機)内にネジ留めする際に用いられる。なお、一対の側板部134は、それぞれ天板部132の長辺の全長に亘って設けられており、同じ高さとなっている。
【0025】
下ケース部140は、長方形平板状の底板部142と、底板部142の各長辺の縁から同じ方向に直角に起立された一対の側板部144と、底板部142の各短辺の縁から側板部144と同じ方向に直角に起立された一対の側板部146とで構成されており、上ケース部130同様、一枚板の曲げ加工によって形成されている。
【0026】
底板部142は長方形平板状であり、その長さは上ケース部130の天板部132よりも短く、その幅は天板部132の幅よりも若干短い。また、側板部144及び側板部146は略同じ高さであり、上ケース部130の側板部134とも略同じ高さである。なお、側板部146の一方には、上述した電線W1,W2,W3をケース120内部に引き込むためのU字状切り欠き部146aが形成されている。
【0027】
上ケース部130と下ケース部140とは、それぞれの側板部134,144,146が起立した側が互いに向き合って、下ケース部140の一対の側板部144が上ケース部130の一対の側板部134に挟まれるように取り付けられる。それにより、上ケース部130の天板部132と下ケース部140の底板部142とが平行となり、天板部132に形成された入射孔132aの他端側(内表面133b側)が底板部142に対向する。
【0028】
ここで、上ケース部130の側板部134の離間距離D1は、下ケース部140の幅D2と略同じとなっているため(図3(a)参照)、上ケース部130を下ケース部140を取り付けると、下ケース部140は上ケース部130の側板部134によって把持されると共に、上ケース部130と下ケース部140との相対移動の方向が、天板部132(若しくは底板部142)の長手方向(図1のX方向)に制限される。
【0029】
すなわち、下ケース部140と上ケース部130とを接合した際、上ケース部130は、図1及び図4の二点鎖線で示すように、下ケース部140に対してX方向にスライド可能な状態となっている。そして、この上ケース部130をスライドさせることによって、樹脂フィルム150に対する入射孔132aの位置を後述する所望の出力レベルに合致するように位置決めをした後、上ケース部130の爪部136で下ケース部140がカシメ固定する。このように、上ケース部130の側板部134に爪部136を設けることで、下ケース部140のカシメ固定が実現されると共に、下ケース部140の上ケース部130からの脱落が確実に防止される。なお、上ケース部130と下ケース部140との固定は、カシメ固定に限らず、接着固定、ネジ留め、樹脂固定、溶接などでおこなってもよい。
【0030】
また、上ケース部130及び下ケース部140を作製する際に用いるアルミニウム板は、厚さ1.2mm以下(好ましくは、0.6mm以下)の圧延板であることが好ましい。このような薄板を用いることで、加工容易性及び応答性の向上や小型軽量化が図られる。
【0031】
次に、フィルム取付部160について、図2及び図6を参照しつつ説明する。
【0032】
図6に示すように、下ケース部140の底板部142には、ポリフェニレンサルファイド(PPS)製のフィルム取付部160が設置されている。このフィルム取付部160は、略一定厚さのプレート状であり、外形が略長方形状の環状断面を有し、且つ、その設置領域は底板部142の略全域に亘っている。ただし、フィルム取付部160と下ケース部140の側板部144,146とは、所定距離だけ離間されており、熱的に絶縁された状態となっている。
【0033】
フィルム取付部160の内側の孔160aは、略長方形状の断面形状を有し、且つ、上ケース部130の入射孔132aよりも広い断面領域を有している。そのため、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせた際、このフィルム取付部160を上ケース部130の入射孔132aから見えない位置に配することができる。さらに、フィルム取付部160には、四角形断面の孔160aの角に対応する縁にそれぞれネジ受け部160bが設けられている。各ネジ受け部160bは、上ケース部130に向かう方向(図2のZ方向)に立設されている。
【0034】
なお、フィルム取付部160の構成材料は、PPS以外に、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)やセラミック等であってもよい。
【0035】
続いて、樹脂フィルム150について、図2及び図6を参照しつつ説明する。
【0036】
樹脂フィルム150は、上述したフィルム取付部160と略同じ外形を有しており、その被覆領域はやはり底板部142の略全域に亘っている。この樹脂フィルム150は、フィルム取付部160の4つのネジ受け部160bによって支持されていると共に、このネジ受け部160bとネジ162とによってフィルム取付部160に固定されている。
【0037】
樹脂フィルム150は、ポリイミドで構成されており、良好な赤外線吸収特性を有している。そして、この樹脂フィルム150の下面(下ケース部140側の面)150aには、2つのサーミスタ(積層チップNTCサーミスタ)152A,152Bを含む所定の配線パターンが形成されている。2つのサーミスタ152A,152Bのうち、サーミスタ(第1の感熱素子)152Aは、被検知体の赤外線を吸収して発熱した樹脂フィルム150の熱量を感知するための素子であり、上ケース部130の入射孔132aから露出するフィルム領域151の内部に配置されている。一方、サーミスタ(第2の感熱素子)152Bは、ケース120内部の熱量を感知するための素子であり、上ケース部130の入射孔132aから露出するフィルム領域151の外部に配置されている。なお、サーミスタ152Aの両端の配線パターンには、サーミスタ152Aの検知特性を向上させるための1対の蛇行部154A,154Bが設けられている。また、サーミスタ152A,152Bは、応答速度の観点から熱容量の小さいものが好ましく、0603形状(0.6mm×0.3mm×0.3mm)又は0402形状(0.4mm×0.2mm×0.2mm)の積層タイプのものが好ましい。
【0038】
また、樹脂フィルム150上に形成された配線パターンは、3つの外部接続用端子T1,T2,T3を有しており、この端子T1,T2,T3と、各端子T1,T2,T3に対応する電線W1,W2,W3とが半田付けされている。また、図7に示すように、各電線W1,W2,W3は検知回路170の所定の端子に接続され、温度補償機能を備えた非接触温度センサ100の回路が構成される。ここで図7は、樹脂フィルム150の配線パターンを含む非接触温度センサ100の配線回路図を示した図である。図7に示すように、検知回路170は、MPUやROM、ADコンバータ、電子部品等によって構成されており、サーミスタ152Aとサーミスタ152Bとの間の差動出力から高精度の温度検知をおこなう。すなわち、樹脂フィルム150が熱変換した熱量を除いたケース内熱量を、上記フィルム領域151から離れたサーミスタ152Bによって感知することで、入射孔132aから入射された赤外線に起因する熱量のみを検出することができる。
【0039】
なお、樹脂フィルム150の構成材料は、配線パターンが作製容易な点や耐熱性の点からポリイミドが好適であるが、PPSやナイロンであってもよい。
【0040】
次に、以上で説明した非接触温度センサ100における出力調整の方法について、説明する。
【0041】
上述したように、下ケース部140と上ケース部130とを接合した際、上ケース部130は、下ケース部140に対してX方向にスライド可能な状態となっている。このとき、上ケース部130を所定長さだけスライドさせることで、サーミスタ152Aの出力を変更可能であることを、発明者らは新たに見出した。すなわち、下記表1及び図17に示すとおり、サーミスタ152Aが、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153の中心位置にある場合と、中心位置から離れた位置にある場合とでは、その出力が相違するとの知見を得た。
【表1】
【0042】
ここで、表1は、X方向に関する長さが8mmの入射孔132a(及び入射孔対応部分153)を用い、その中心位置からサーミスタ152AをX方向に沿って左右に所定長さだけずらして、各位置(P1,P2,P3,P4,P5)におけるサーミスタ152Aとサーミスタ152Bとの差動出力を、2回測定した結果を示した表である。また、図17に示すグラフは、サーミスタ152Aが各位置にあるときの差動出力及び差動出力の偏差を示したグラフであり、横軸が中心からの距離(mm)、縦軸が差動出力(V)となっている。
【0043】
上の結果から、上ケース部130を所定の長さだけスライドさせて、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153を移動させ、その入射孔対応部分153におけるサーミスタ152Aの相対位置を変えることで、サーミスタ152Aとサーミスタ152Bとの差動出力を調整可能であることがわかる。このようにサーミスタ152Aの相対位置を変えることで差動出力が変化するのは、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153の中心位置から離れた部分では、そこで発生した熱が樹脂フィルム150の入射孔対応部分153以外の部分に伝わり、このような位置に配置されたサーミスタ152Aはその感知レベルが低くなっているためであると推測される。
【0044】
なお、上ケース部130をスライドさせるタイミングは、上ケース部130と下ケース部140との接合時に限らず、上ケース部130と下ケース部140とを固定する前であれば、適宜、所望のタイミングを選択することができる。
【0045】
以上で詳細に説明したように、第1実施形態に係る非接触温度センサ100においては、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせる際、若しくは、上ケース部130と下ケース部140とを組み合わせた後に、入射孔132aとサーミスタ152Aとの相対位置を調整することができるため、ネジ等の遮蔽部を要する従来の非接触温度センサよりも小型化することができると共に、部品点数の削減が実現される。
【0046】
また、非接触温度センサ100は、その使用時には、被検知体からの赤外線が入射孔132aに入るように、上ケース部130の天板部132が被検知体に対面するように設置される。そのため、被検知体からの赤外線のうち、入射孔132aに入らなかった赤外線の一部は、上ケース部130の天板部132において熱変換され、天板部132が発熱する。この天板部132の発熱によって生じた熱は、その熱量が大きくなるにつれて、上ケース部130の側板部134、下ケース部140の側板部144,146、底板部142、フィルム取付部160、樹脂フィルム150の順に伝わっていく。すなわち、この非接触温度センサ100においては、上ケース部130の天板部132から樹脂フィルム150への伝熱は、下ケース部140の底板部142に設けられたフィルム取付部160まで回り込んでおこなわれる。
【0047】
一方、従来の非接触温度センサでは、感熱素子が設けられた樹脂フィルムは、被検知体に対面する部材である保持体に密着されているため、その保持体の発熱によって生じた熱は保持体から樹脂フィルムに直接伝わる。すなわち、第1実施形態に係る非接触温度センサ100は、被検知体に対面するケース部材(すなわち、上ケース部130)から樹脂フィルム150へ熱が伝わる際、フィルム取付部160を経由する迂回路を通る必要があるため、従来の非接触温度センサに比べて、その伝熱経路が有意に延長されている。
【0048】
すなわち、第1実施形態に係る非接触温度センサ100においては、従来の非接触温度センサに比べて、上ケース部130から樹脂フィルム150までの伝熱経路が延長されていることで、上ケース部130における発熱が、樹脂フィルム150に伝わりにくくなっている。それにより、樹脂フィルム150上に配置されたサーミスタ152Aの検知精度の向上が実現されている。
【0049】
また、下ケース部140の底板部142に樹脂フィルム150を直接設置せずに、フィルム取付部160を介して設置することで、底板部142と樹脂フィルム150とが離間されるため、上ケース部130における発熱が、樹脂フィルム150により伝わりにくくなっている。さらに、フィルム取付部160から突出するネジ受け部160bによって、樹脂フィルム150を支持することで、底板部142から樹脂フィルム150までの伝熱経路の断面積が低減されているため、樹脂フィルム150への伝熱がより効果的に抑制されている。
【0050】
また、非接触温度センサ100では、上ケース部130と下ケース部140とが別体であることにより、熱伝導における連続性が低下されており、上ケース部130から下ケース部140への伝熱がより効果的に抑えられている。
【0051】
また、非接触温度センサ100では、下ケース部140とフィルム取付部160とが別体であることにより熱伝導における連続性が低下されているため、底板部142から樹脂フィルム150への伝熱がより効果的に抑えられている。特に、上述したPPS製のフィルム取付部160は、ケース120を構成するアルミニウムよりも低い熱伝導率を有するため、底板部142から樹脂フィルム150への伝熱が効果的に抑制されている。
【0052】
さらに、従来の非接触温度センサのケースはAlダイカストによって作製されることが多いが、第1実施形態に係る非接触温度センサ100のケース120はプレス成型(曲げ、絞り、打ち抜き)で作製されるため、従来の非接触温度センサに比べて作製が容易であり、且つ、軽量化を容易に図ることができる。
(第2実施形態)
【0053】
次に、第2実施形態に係る非接触温度センサについて、図8及び図9を参照しつつ説明する。図8及び図9に示すように、本発明の第2実施形態に係る非接触温度センサ200は、上述した第1実施形態に係る非接触温度センサ100と、上ケース部130の入射孔132aの縁に導光部202が設けられている点で異なる。
【0054】
すなわち、非接触温度センサ200においては、上ケース部130の入射孔132aの縁に沿って管状の導光部202が立設されている。この導光部202は、絞り加工によって形成されており、上ケース部130の天板部132aからケース120外部に向かって、天板部132aに直交する方向(図8のZ方向)に延びている。また、導光部202の内側面202aには黒体処理が施されており、この黒体処理が施された内側面202aにおいて赤外線が吸収されることにより、内側面202aにおける赤外線の反射が抑えられている。具体的には、内側面202aにプラスチックやゴム等を塗布したり所定条件で熱処理したりして、内側面202aの赤外線反射率を低減する。
【0055】
このような導光部202が設けられた非接触温度センサ200においては、上述した非接触温度センサ100と同様の効果を得ることができる上に、導光部202の高さ分だけ、実質的に入射孔132aが被検知体に近づけることができるため、被検知体の赤外線検出における指向性が向上している。また、導光部202の内側面202aを黒体処理することで、図9に示すように、導光部202の延在方向(図9のZ方向)から大きく逸れた赤外線βのケース120内への入射を防止することができ、導光部202の延在方向に沿う赤外線αを選択的にケース120内に入射させることができる。それにより、導光部202の内側面202aに黒体処理を施さない場合に比べて、被検知体の赤外線検出における指向性が向上する。
【0056】
さらに、導光部202は絞り加工によって形成されるため、従来のAlダイカストで作製される非接触温度センサに比べて、作製が容易であり、且つ、軽量化を容易に図ることができる。
【0057】
ここで、非接触温度センサ200が設置される組み込み装置の内部では、被検知体に起因する熱の対流が起こっている。そして、この対流する熱がケース120内の樹脂フィルム150に当たった場合には、樹脂フィルム150上のサーミスタ152Aの出力が乱れることが知られている。ところが、非接触温度センサ200のように、ある程度の高さを有する導光部202によって入射孔132aの周囲を覆うことで、その対流熱のケース120内への侵入が抑制される。そのため、この非接触温度センサ200においては、サーミスタ152Aの出力の乱れが有意に抑制されている。
(第3実施形態)
【0058】
次に、第3実施形態に係る非接触温度センサについて、図10及び図11を参照しつつ説明する。図10及び図11に示すように、本発明の第3実施形態に係る非接触温度センサ300は、上述した第1実施形態に係る非接触温度センサ100と、上ケース部130の入射孔132aの縁に導光部302が設けられている点で異なる。
【0059】
すなわち、非接触温度センサ300においては、上ケース部130の入射孔132aの縁に沿って管状の導光部302が立設されている。この導光部302は、上ケース部130の天板部132aからケース120内部に向かって、天板部132aに直交する方向(図8のZ方向)に延びており、導光部202同様に絞り加工によって形成されている。また、この導光部302の内側面302aも、第2実施形態に係る導光部202と同様に、黒体処理が施されている。
【0060】
このような導光部302が設けられた非接触温度センサ300においては、上述した非接触温度センサ100と同等の効果を得ることができる上に、導光部302によって、被検知体からの赤外線を受けるフィルム領域151が入射孔132aの開口領域と略同じ程度に限定される。それにより、非接触温度センサ300においては、サーミスタ152Aの周囲で効果的に熱変換させることができるため、検知精度が向上している。また、導光部302の内側面302aを黒体処理することにより、第2実施形態に係る非接触温度センサ200と同様に、被検知体の赤外線検出における指向性が向上している。
【0061】
さらに、導光部302は絞り加工によって形成されるため、従来のAlダイカストで作製される非接触温度センサに比べて、作製が容易であり、且つ、軽量化を容易に図ることができる。
(第4実施形態)
【0062】
次に、第4実施形態に係る非接触温度センサについて、図12〜図14を参照しつつ説明する。図12〜図14に示すように、本発明の第4実施形態に係る非接触温度センサ400は、上述した第2実施形態に係る非接触温度センサ200と、フィルム取付部160の代わりに下ケース部140と一体であるフィルム取付部460が設けられている点で異なる。
【0063】
すなわち、非接触温度センサ400においては、下ケース部140の底板部142には、底板部142に直交する方向(Z方向)に延びる円柱状のフィルム取付部460が4つ設けられている。そして、このフィルム取付部460の上部には、上述した第1〜3実施形態に係るネジ受け部160bと同様のネジ受け部460bが設けられており、ネジ受け部460bとネジ162とでフィルム取付部460に樹脂フィルム150が固定される。これらのフィルム取付部460も、フィルム取付部160同様、上ケース部130の入射孔132aから見えない位置に配される。
【0064】
下ケース部140と一体であるこのようなフィルム取付部460が設けられた非接触温度センサ400においては、上述した非接触温度センサ200と同様の効果を得ることができる上に、部品点数の低減が図られる。
(第5実施形態)
【0065】
次に、第5実施形態に係る非接触温度センサについて、図15を参照しつつ説明する。図15は、本発明の第5実施形態に係る非接触温度センサ500の要部拡大図である。この第5実施形態に係る非接触温度センサ500は、第1の実施形態に係る非接触温度センサ100と、樹脂フィルム150のフィルム取付部160への取り付け方が異なっている。
【0066】
すなわち、図15に示すように、ネジ受け部460bのネジ受け穴460cが、上ケース部130と下ケース部140との相対移動の方向であるX方向に延びた長穴となっている。このようなネジ受け部460bを有する非接触温度センサ500においては、ネジ受け部460bに樹脂フィルム150を載置してネジ留めする際に、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153とサーミスタ152Aとの相対位置を調整することができる。すなわち、ネジ受け部460bに樹脂フィルム150を載置し、樹脂フィルム150を所定長さだけスライドさせて位置決めした後、ネジ162で樹脂フィルム150を固定する。このようにして、入射孔対応部分153とサーミスタ152Aとの相対位置を調整した場合であっても、上述した実施形態と同様に、サーミスタ152Aの出力を調整することができる。
【0067】
また、図16に示すように、ネジ受け部460bに、上記長穴の代わりに、上ケース部130と下ケース部140との相対移動の方向であるX方向に並んだネジ穴群460dが形成された非接触温度センサ600であっても、非接触温度センサ500と同様に、ネジ受け部460bに樹脂フィルム150を載置してネジ留めする際に、樹脂フィルム150の入射孔対応部分153とサーミスタ152Aとの相対位置を調整して、サーミスタ152Aの出力を調整することができる。すなわち、この第5実施形態に係る非接触温度センサ500,600においても、ネジ等の遮蔽部を用いることなく、入射孔132aとサーミスタ152Aとの相対位置を調整することができるため、従来の非接触温度センサよりも小型化することができると共に、部品点数の削減が実現される。
【0068】
なお、以上で説明した非接触温度センサ500及び非接触温度センサ600においては、必ずしも、ケース120が、上ケース部130と下ケース部140との2物体で構成されている必要はなく、適宜、上ケース部130と下ケース部140とが一体となったケースを用いることもできる。
【0069】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上ケース部130と下ケース部140との相対移動の方向は、天板部132(若しくは底板部142)の長手方向(図1のX方向)に限らず、天板部132(若しくは底板部142)の厚さ方向(図1のZ方向)であってもよい。また、ガイド部は、下ケース部の側板部を案内する上ケース部の側板部のように、面と面で移動方向を規制する構造以外に、突起とガイド溝とを有する構造など、公知のガイド構造に適宜変更することができる。さらに、上ケース部のみにガイド部及び把持部が設けられた非接触温度センサを示したが、ガイド部や把持部が、下ケース部のみに設けられている態様や、上ケース部と下ケース部の両方に設けられている態様であってもよい。下ケース部上ケース部さらに、下ケース部の底板部と樹脂フィルムとの間に、赤外線を反射する赤外線反射膜等のエネルギー線反射膜を介在させて、より効率よく樹脂フィルムに赤外線を吸収させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の第1実施形態に係る非接触温度センサの平面図である。
【図2】図1に示す非接触温度センサのII−II線断面図である。
【図3】図1に示す非接触温度センサの(a)左側面図及び(b)右側面図である。
【図4】図1に示す非接触温度センサの正面図である。
【図5】図1に示す非接触温度センサの底面図であり
【図6】図1に示す非接触温度センサの内部構造を示した部分破断図である。
【図7】樹脂フィルムの配線パターンを含む非接触温度センサの配線回路図を示した図である。
【図8】本発明の第2実施形態に係る非接触温度センサの平面図である。
【図9】図8に示す非接触温度センサのIX−IX線断面図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る非接触温度センサの平面図である。
【図11】図10に示す非接触温度センサのXI−XI線断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る非接触温度センサの平面図である。
【図13】図12に示す非接触温度センサのXIII−XIII線断面図である。
【図14】図12に示す非接触温度センサの内部構造を示した部分破断図である。
【図15】本発明の第5実施形態に係る非接触温度センサの要部拡大図である。
【図16】図15に示す非接触温度センサの変形例を示した要部拡大図である。
【図17】サーミスタが各位置にあるときの差動出力及び差動出力の偏差を示したグラフである。
【符号の説明】
【0071】
100,200,300,400,500,600…非接触温度センサ、110…センサ本体部、120…ケース、130…上ケース部、132…天板部、132a…入射孔、140…下ケース部、142…底板部、150…樹脂フィルム、152A,152B…サーミスタ、153…入射孔対応部分、160,460…フィルム取付部、202,302…導光部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側から赤外線が入射される入射孔が形成された第1のケース部材と、
前記第1のケース部材の、前記入射孔の他端側に配置された第2のケース部材と、
前記第1のケース部材と前記第2のケース部材との間に配置されると共に、前記第2のケース部材に取り付けられ、前記入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、
前記入射孔によって露出される前記基体の入射孔対応部分に設けられ、前記基体によって熱変換された前記赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える、非接触温度センサ。
【請求項2】
前記第1のケース部材及び前記第2のケース部材の少なくとも一方に、前記第1のケース部材と前記第2のケース部材との間の相対移動を所定方向に規制するガイド部が設けられている、請求項1に記載の非接触温度センサ。
【請求項3】
前記第1のケース部材及び前記第2のケース部材の少なくとも一方に、他方のケース部材を把持する把持部が設けられている、請求項1又は2に記載の非接触温度センサ。
【請求項4】
赤外線が入射される入射孔が形成されたケースと、
前記ケース内において前記入射孔に対して位置調整可能に配置され、前記入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、
前記入射孔によって露出される前記基体の入射孔対応部分に設けられ、前記基体によって熱変換された前記赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える、非接触温度センサ。
【請求項5】
前記基体には、前記第1の感熱素子が感知する熱量から、前記基体が熱変換した赤外線の熱量を除いた熱量を感知する第2の感熱素子が設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触温度センサ。
【請求項6】
赤外線が入射される入射孔が形成されたケースと、前記ケース内に配置され、前記入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、前記入射孔によって露出される前記基体の入射孔対応部分に設けられ、前記基体によって熱変換された前記赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える非接触温度センサの出力調整方法であって、
前記基体を前記ケース内に配置する際に前記第1の感熱素子の前記入射孔に対する相対位置を調整して、前記非接触温度センサの出力を調整する、非接触温度センサの出力調整方法。
【請求項1】
一端側から赤外線が入射される入射孔が形成された第1のケース部材と、
前記第1のケース部材の、前記入射孔の他端側に配置された第2のケース部材と、
前記第1のケース部材と前記第2のケース部材との間に配置されると共に、前記第2のケース部材に取り付けられ、前記入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、
前記入射孔によって露出される前記基体の入射孔対応部分に設けられ、前記基体によって熱変換された前記赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える、非接触温度センサ。
【請求項2】
前記第1のケース部材及び前記第2のケース部材の少なくとも一方に、前記第1のケース部材と前記第2のケース部材との間の相対移動を所定方向に規制するガイド部が設けられている、請求項1に記載の非接触温度センサ。
【請求項3】
前記第1のケース部材及び前記第2のケース部材の少なくとも一方に、他方のケース部材を把持する把持部が設けられている、請求項1又は2に記載の非接触温度センサ。
【請求項4】
赤外線が入射される入射孔が形成されたケースと、
前記ケース内において前記入射孔に対して位置調整可能に配置され、前記入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、
前記入射孔によって露出される前記基体の入射孔対応部分に設けられ、前記基体によって熱変換された前記赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える、非接触温度センサ。
【請求項5】
前記基体には、前記第1の感熱素子が感知する熱量から、前記基体が熱変換した赤外線の熱量を除いた熱量を感知する第2の感熱素子が設けられている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触温度センサ。
【請求項6】
赤外線が入射される入射孔が形成されたケースと、前記ケース内に配置され、前記入射孔から入射される赤外線の熱変換をおこなう基体と、前記入射孔によって露出される前記基体の入射孔対応部分に設けられ、前記基体によって熱変換された前記赤外線の熱量を感知する第1の感熱素子とを備える非接触温度センサの出力調整方法であって、
前記基体を前記ケース内に配置する際に前記第1の感熱素子の前記入射孔に対する相対位置を調整して、前記非接触温度センサの出力を調整する、非接触温度センサの出力調整方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−118993(P2006−118993A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307296(P2004−307296)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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