説明

非接触空中超音波による管体超音波探傷装置及びその方法

【課題】鋼管等の被検査管に対する超音波探傷を非接触で高精度に実施する。
【解決手段】送信超音波探触子18と受信超音波探触子20とを被検査管14の周上に離間配置し、送信超音波探触子18の入射角θ1の被検査管14の外周面14aの法線に対する傾き方向と、受信超音波探触子20の外周面14aの法線に対する傾き方向とが互いに逆方向に設定することによって、送信超音波探触子18から出力された超音波パルスbが被検査管14でガイド波の伝搬モードで伝搬し、この超音波パルスが欠陥42に当接したときに、この欠陥から生じる超音波パルスbに対して逆方向にガイド波の伝搬モードで伝搬する欠陥エコーdを検出できるように受信超音波探触子20の外周面に対する姿勢を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管体超音波探傷装置、及び管体超音波探傷方法に係わり、特に、被検査管に対して非接触空中超音波で超音波探傷を実施できる管体超音波探傷装置、及び管体超音波探傷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に鋼管等の管内に存在する欠陥を探傷する手法として、図16(a)、(b)に示す超音波探傷手法が知られている。図16(a)においては、図示しない治具でもって、被検査管1の外周面に斜角探触子2をシュー3等の超音波伝搬媒体を介して押し付け、この斜角探触子2の振動子4から出力されるパルス状の超音波5を被検査管1内に印加する。超音波5は被検査管1内の外周面と内周面とで反射を繰返し円周方向に伝搬していく。そして、欠陥6が存在すれば、この欠陥6にて超音波5の一部が反射して、欠陥エコーとして、もと来た伝搬路を逆進して、斜角探触子2の振動子4に入力され、この振動子4で電気信号に変換される。そして、この欠陥エコーの超音波の出力時刻からの経過時間で欠陥5の周方向位置を特定し、信号レベルにて欠陥5の規模を算出する。
【0003】
図16(b)は、垂直探触子7から出力された超音波5を水8の超音波伝搬媒体を介して、被検査管1の外周面から被検査管1内へ所定の入射角で入射させている。したがって、図16(a)と同様に、超音波5は被検査管1の肉厚部分の外周面と内周面とで反射を繰返し円周方向に伝搬していく。
【0004】
なお、斜角探触子から出力された超音波を水の超音波伝搬媒体を介して、被検査管の外周面から被検査管内へ入射させて、鋼管の超音波探傷を行う技術が特許文献1に開示されている。
【0005】
例えば、被検査管1が鋼管等の金属製の場合、図16(a)、(b)のように、超音波5が被検査管1の肉厚部分を円周方向に伝搬するために、超音波5の被検査管1の外周面に対する入射角の範囲が定まる。被検査管1が鋼管の場合、入射角は30°〜36°程度であり、被検査管1の肉厚部分を円周方向に伝搬する超音波5の伝搬モードは「横波」である。
【特許文献1】特開平10−90239号公報
【非特許文献1】層状平面板における音波の透過 鳥飼安生 日本機械学誌 第8巻 第1号 (1952年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図16(a)、(b)に示した鋼管等の管内に存在する欠陥を探傷する超音波探傷手法においても解消すべき次のような課題があった。
【0007】
すなわち、被検査管に対する超音波探傷における実用レベル以上の欠陥検出精度を得るためには、被検査体内を伝搬する超音波のレベル、及び各探触子から出力されるエコー信号のレベルも所定レベルを確保する必要がある。
【0008】
そのため、各探触子2、7から出力された超音波5を効率的に被検査管に入射させるために、各探触子2、7と被検査管1との間に、前述したシュー3や水8等の超音波伝搬媒体を介在させる必要がある。
【0009】
しかしながら、一般に、被検査管1の探傷は円周方向のみならず、軸方向も探傷する必要があるので、被検査管1を軸方向に一定速度で移動させながら、各軸方向位置での周方向の探傷を実施する必要がある。
【0010】
また、高温状態の被検査管1に超音波伝搬媒体を介在させることはできないので、高温状態の被検査管1に対する超音波探傷は実施できない。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、被検査管内を周方向に伝搬する超音波の伝搬モードをガイド波とすることにより、たとえ超音波が被検査管の外周面に対して空気を経由して入出力される場合であったとしても、被検査管内を周方向に伝搬する超音波を十分なレベルに維持でき、被検査管に対する非接触で超音波探傷を実現でき、さらに、高い超音波探傷精度を実現できる非接触空中超音波による管体超音波探傷装置、及び管体超音波探傷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明の請求項1の管体超音波探傷装置は、パルス状の超音波を出力する送信超音波探触子と、この送信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して、空間を介して対向し、かつ送信超音波探触子から前記被検査管内に入射した超音波が第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬するような姿勢角で支持する送信側支持機構と、被検査管内を第1の周方向に伝搬する前記超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換して出力する受信超音波探触子と、この受信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して、空間を介して対向し、かつ前記送信超音波探触子の姿勢角に等しい姿勢角で支持する受信側支持機構と、この受信側支持機構に支持された前記受信超音波探触子から出力されたエコー信号の信号レベルを検出する信号レベル検出部と、この信号レベル検出部で検出されたエコー信号の信号レベルに基づき前記被検査管の欠陥を評価する探傷解析部とを備えている。
【0013】
このように構成された請求項1の管体超音波探傷装置においては、被検査管に対してパルス状の超音波を入射する送信超音波探触子、被検査管で生じた欠陥のエコーを受ける受信超音波探触子は、それぞれ空間を介して、被検査管の外周面に対向しているので、被検査管に対して非接触で空中超音波による超音波探傷ができる。
【0014】
また、送信超音波探触子から被検査管内に入射した超音波は第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬するように、送信超音波探触子から被検査管の外周面に対する超音波の入射角が、送信側支持機構にて送信超音波探触子の姿勢角として設定されている。また、受信超音波探触子は、ガイド波の伝搬モードで伝搬している超音波が、欠陥に当接した場合に、この欠陥から前記超音波の伝搬方向に対して逆方向(第2の周方向)に伝搬する欠陥エコーを受信超音波探触子で受ける。この場合、超音波の反射波である欠陥エコーの伝搬モードはガイド波の伝搬モードであるので、ガイド波の伝搬モードで伝搬しているエコーを受ける受信超音波探触子は、被検査管の外周面に対して、送信超音波探触子の姿勢角と同じ姿勢角に支持されている。受信超音波探触子は逆方向(第2の周方向)に伝搬する超音波(エコー)を受けてエコー信号に変換する。このエコー信号の信号レベルで欠陥が評価される。
【0015】
周知のように、物質内を伝搬する超音波の伝搬モードの主なものは、「縦波」、「横波」、「板波」、「ガイド波」等が存在する。そして、「縦波」はどのような物質内も伝搬可能であるが、「横波」、「板波」、「ガイド波」は、固体内にのみ存在可能である。
【0016】
なお、「板波」及び「ガイド波」はほぼ同じ伝搬モードを示し、平板内を伝搬する場合を「板波」と称し、曲面板内を伝搬する場合を「ガイド波」と称する。図4(a)、(b)に「ガイド波」の1種である「ラム波」の振動モードを示す。
【0017】
超音波探傷において高い探傷精度を維持するためには、送信超音波探触子から出力された超音波が受信超音波探触子に受波されるまでに透過する各部材の合成した透過率Tが大きいことが条件となる。
【0018】
この場合、超音波は、(空気→被検査管→空気)の経路を通過する。次に、超音波が空中から入射角θ1で被検査管へ入射して、被検査管内を「横波」の伝搬モードで伝搬して、被検体から空中へ出力された場合の超音波の(空気→被検査管→空気)の透過率TYは、超音波が空中から被検査管へ入射したときの透過率T12に、超音波が被検査管から空中へ入射したときの透過率T21を乗算したものである。
【0019】
Y=T12×T21
そして、この「横波」の伝搬モード時における(空気→被検査管→空気)の透過率TYは、空気、被検体の密度、音速、被検体に対する入射角等の音響パラメータを用いて論理的に求められている。
【0020】
さらに、超音波が空中から入射角θ1で被検査管へ入射して、被検査管内を「ガイド波」の伝搬モードで伝搬して、被検査管から空中へ出力された場合の超音波の(空気→被検査管→空気)の透過率TGは、空気、被検査管の密度、音速、被検査管の厚さ、超音波の振動周波数、被検査管に対する入射角等の音響パラメータを用いて示される(非特許文献1)。
【0021】
G=4K2/[4M2+(K2―M2+1)]
但し、
K=(Z2L・cos22θL)/(Z1・sinkLYt)
+(Z2S・sin22θS)/(Z1・sinkSYt)
M=(Z2L・cos22θL)/(Z1・tankLYt)
+(Z2S・sin22θL)/(Z1・tankSYt)]
1=ρ1・C1/cosθ1
2L=ρ2・C2L/cosθL2S=ρ2・C2S/cosθS
LY=(ω/C2L)cosθLSY=(ω/C2S)cosθS
sinθL=(C2L/C1)sinθ1 sinθS=(C2S/C1)sinθ1
ここで、
ρ1 ;空気蜜津
ρ2 ;被検査管の密度
θL ;縦波屈折率
θS ;横波屈折率
1 ;空気音速
2S ;被検査管横波速度
2L ;被検査管縦何速度
t ;被検査管の厚さ
ω ;超音波の振動周波数(ω=2πf)
LY ;被検査管の厚さ方向の「縦波」の波数成分
SY ;被検査管の厚さ方向の「横波」の波数成分
1 ;空気の音響インピーダンス
2L ;被検査管の「縦波」時の音響インピーダンス
2S ;被検査管の「横波」時の音響インピーダンス
このように、ガイド波の伝搬モード時における(空気→被検査管→空気)の透過率TGは入射角θ1の他に、被検査管の厚さt、超音波の振動周波数fにより変化する。
【0022】
そして、被検査管として鋼管を採用した場合における、「ガイド波」の伝搬モード時における(空気→被検査管→空気)の透過率TGを、入射角θ1、超音波の振動周波数fに被検査管の厚みtを乗算した乗算値[f・t]を、横軸及び縦軸とする理論特性を図11に示す。
【0023】
この理論特性においては、超音波の振動周波数fと被検査管の厚みtが定まれば、乗算値[f・t]が定まる。そして、入射角θ1が、縦波や横波の伝搬モードが生じない例えば4°以上の角度範囲において、透過率Tが最大値を示す特性における先に定めた乗算値[f・t]と入射角θ1との組合せを選択すればよい。
【0024】
さらに、超音波の振動周波数fは超音波探触子に組込まれた振動子の特性で定まるので、この振動周波数fを一定とすると、被検査管の厚みtが定まれば、透過率TGが最大値を示す最適の入射角θ1が求まる。
【0025】
なお、図10内に記載した各周波数(467kHz、375kHz、332kHz、763kHz)における各点は、外径D=318.5mmの被検査管を用いて実測された透過率TGの値である。このように、透過率TGの理論特性は、実測値とよく一致する。
【0026】
したがって、送信超音波探触子から被検査管内に入射した超音波は第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬するように、送信超音波探触子から被検査管の外周面に対する超音波の入射角が、送信側支持機構にて送信超音波探触子の姿勢角として設定することによって、高い超音波探傷精度を実現できる。
【0027】
また請求項2の管体超音波探傷装置においては、連続する所定個数の矩形波からなる矩形波バースト信号を作成して出力する信号発生部と、この信号発生部から出力された矩形波バースト信号を超音波に変換して出力する送信超音波探触子と、この送信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して空間を介して対向し、かつ超音波の出力方向が前記被検査管の任意に定めた第1の半径線に対して、平行でかつ所定距離だけ一方方向にシフトさせて支持する送信側支持機構と、この送信側支持機構で支持された送信超音波探触子から出力されて前記被検査管内を第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬する超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換して出力する受信超音波探触子と、この受信超音波探触子を、前記被検査管の外周面に対して空間を介して対向し、かつ超音波の入力方向が前記被検査管の前記第1の半径線に直交する第2の半径線に対して、平行でかつ前記所定距離だけ送信超音波探触子に対して同一方向にシフトさせて支持する受信側支持機構と、この受信側支持機構に支持された前記受信超音波探触子から出力されたエコー信号の信号レベルを検出する信号レベル検出部と、この信号レベル検出部で検出されたエコー信号の信号レベルに基づき前記被検査管の欠陥を評価する探傷解析部とを備えている。
【0028】
このように構成された本発明の管体超音波探傷装置においては、信号発生部から出力される矩形波バースト信号は、従来の一つ(1周期分)のサイン波からなるパルス信号ではなくて、例えば、図3(a)に示すように、連続する所定個数の矩形波からなる矩形波バースト信号である。このように、送信超音波探触子内の振動子に印加するパルス信号を連続する所定個数の負の矩形波からなる矩形波バースト信号とすることによって、振動子における電気信号の超音波への高い変換効率を実現できる。
【0029】
また、送信超音波探触子及び受信超音波探触子は被検査管の外周面に対して空間を介して対向している。さらに、送信超音波探触子及び受信超音波探触子は互いに直交する半径線に対して平行にかつ同一方向に所定距離だけシフトさせている。結果的に、送信超音波探触子及び受信超音波探触子は、被検査管の外周面上の90度離れた位置に、所定距離と被検査管の半径で定まる入射角を有して配設されている。
【0030】
そして、送信超音波探触子から出力された超音波は前記入射角で被検査管内へ入射して、第1の周方向(時計回り)に「ガイド波」の伝搬モードで伝搬していく。そして、超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向(反時計回り)に伝搬するエコー(欠陥エコー)が生じる。受信超音波探触子は第2の周方向(反時計回り)に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換する。このエコー信号の信号レベルで欠陥が評価される。
【0031】
したがって、請求項1の発明とほぼ同じ効果を奏することが可能である。
【0032】
請求項3は、上記発明の管体超音波探傷装置において、前記送信超音波探触子における前記矩形波バースト信号を超音波に変換する振動子における超音波の出力面は曲面に形成されている。また、送信側支持機構は、前記送信超音波探触子を、前記振動子の曲面の曲率中心が前記被検査管の第2の半径線上に位置するように支持する。
【0033】
このような構成においては、送信超音波探触子における矩形波バースト信号を超音波に変換する振動子における超音波の出力面の各位置から出力される各超音波は被検査管の外周面に対してそれぞれ一定の入射角で入射されるので、入射された超音波の時間的バラツキを抑制できるので被検査管に対する探傷精度を向上できる。
【0034】
なお、超音波の出力面が平面であるときは、超音波の出力面の各位置から出力される各超音波は被検査管の外周面に対してそれぞれ異なる入射角で入射されるので、図9(a)に示すように、入射された超音波の時間的バラツキが大きくなる。このことを逆に言えば、種々の方向からの超音波を受け入れるので、欠陥エコーの超音波を受波する受信超音波探触子の採用するのが望ましい。
【0035】
請求項4は、「管体超音波探傷方法」である。そして、連続する所定個数の矩形波からなる矩形波バースト信号を送信超音波探触子に印加するステップと、この送信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して空間を介して対向させ、かつ超音波の出力方向が前記被検査管の任意に定めた第1の半径線に対して、平行でかつ所定距離だけ一方方向にシフトさせて支持するステップと、受信超音波探触子を、前記被検査管の外周面に対して空間を介して対向し、かつ超音波の入力方向が前記被検査管の前記第1の半径線に直交する第2の半径線に対して、平行でかつ前記所定距離だけ送信超音波探触子に対し同一方向にシフトさせて支持するステップと、前記支持された送信超音波探触子から出力され前記被検査管内に入射した超音波を前記被検査管内を第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬させるステップと、前記支持された受信超音波探触子で前記第1の周方向に伝搬する超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換して出力するステップと、受信超音波探触子から出力されたエコー信号の信号レベルを検出し、信号レベルに基づき前記被検査管の欠陥を評価するステップとを備えている。
【0036】
このような構成の管体超音波探傷方法においては、先の発明の管体超音波探装置とほぼ同様の作用効果を奏する。
【0037】
請求項5の「管体超音波探傷方法」においては、連続する所定個数の矩形波からなる矩形波バースト信号を送信超音波探触子に印加するステップと、この送信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して空間を介して対向させ、かつ超音波の出力方向が前記被検査管の任意に定めた第1の半径線に対して、平行でかつ所定距離だけ一方方向にシフトさせて支持するステップと、受信超音波探触子を、前記被検査管の外周面に対して空間を介して対向し、かつ入力される超音波の方向が被検査管の前記第1の半径線に直交する第2の半径線に対して、平行でかつ前記所定距離だけ送信超音波探触子に対し反対方向にシフトさせて支持するステップと、前記支持された送信超音波探触子から出力され前記被検査管内に入射した超音波を前記被検査管内を第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬させるステップと、前記支持された受信超音波探触子で前記第1の周方向に伝搬する超音波を受けて電気信号に変換するステップと、前記所定距離を順次変化させた場合における前記変換された電気信号のレベルが最大となる所定距離を最適距離として求めるステップと、
前記送信超音波探触子を、前記第1の半径線に対して、平行でかつ前記最適距離だけシフトさせて支持するステップと、前記受信超音波探触子を、第2の半径線に対して、平行でかつ前記最適距離だけ前記送信超音波探触子に対して同一方向にシフトさせて支持するステップと、前記支持された受信超音波探触子で、前記第1の周方向に伝搬する超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換して出力するステップと、このステップで受信超音波探触子から出力されたエコー信号の信号レベルを検出し、信号レベルに基づき前記被検査管の欠陥を評価するステップとを備えている。
【0038】
このような構成の超音波探傷方法においては、最初に、送信超音波探触子の超音波の送信方向と、受信超音波探触子の超音波の受信方向を対向させているので、送信超音波探触子から出力された超音波は被検査管内をガイド波の伝搬モードで伝搬して、受信超音波探触子へ受信される、そして、所定距離を順次移動させて、最大受信レベルが得られる所定距離を最適距離(最適入射角θM)とする。
【0039】
そして、送信超音波探触子の入射角が決まると、受信超音波探触子の超音波の受信方向を、先に決めた最適入射角θMを逆向きに設定する。受信超音波探触子の超音波の受信方向を逆向きにすると、送信超音波探触子から一方の周方向(時計回り)に伝搬する超音波は受信されずに、超音波で反対方向(反時計回り)へ進む欠陥エコーが受信超音波探触子で受信される。
【0040】
このように、送信超音波探触子と受信超音波探触子とを個別に設けることによって、欠陥エコーを個別に受信でき、管体に対する超音波探傷精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、被検査管の探傷を非接触で実施できるのみならず、送信超音波探触子を、被検査管内で超音波が「ガイド波」の伝搬モ−ドで伝搬するように、送信側支持機構で支持固定しているので、欠陥検出精度の向上を図ることができる。さらに、欠陥エコーを送信側の超音波に対して、独立に検出しているので、さらに測定精度がより一層向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の一実施形態を図面を用いて説明する。
【0043】
図1は本発明の一実施形態に係わる管体超音波探傷方法が適用される管体超音波探傷装置の概略構成を示す模式図である。
【0044】
信号発生部10は、図3(a)に示すように、連続する所定個数Nの矩形波11からなる矩形バースト信号aを作成して送信部12、信号ケーブル13を介して例えば鋼管等の被検査管14に対する取付装置のコ字形状を有したフレーム15の垂直部16の中央部の組込まれた送信側支持機構17に取付けられた送信超音波探触子18へ送信する。また、このフレーム15の水平部19には、受信超音波探触子20が取付けられた受信側支持機構21が組込まれてぃる。
【0045】
前記信号発生部10が作成する、図3(a)に示す、矩形波バースト信号aにおいて、電圧VHは矩形波バースト信号aにおける負の矩形波11の電圧であり、例えば、最大600V(ボルト)まで設定可能である。周波数Fは、送信超音波探触子18及び受信超音波探触子20における振動子に印加する矩形波バースト信号aにおける連続する負の矩形波11の周期Tに対応する周波数F(=1/2πT)に設定される。また、波数Nは、矩形波バースト信号aにおける連続する負の矩形波11の数に設定する。
【0046】
一般的に、超音波は空気中を伝搬すると、大きく減衰するので、十分な探傷精度を確保できない。そこで、本願発明においては、送信超音波探触子18と受信超音波探触子20とを別回路にして、送信超音波探触子18に対しては、最大600V(ボルト)の矩形波バースト信号aを印加することにより、30〜40dBの利得を得、受信超音波探触子20の経路にプリアンプ32へ送出する。このプリアンプ32は、稼働時における欠陥エコー信号を約60dB増幅する。この信号発生部10とプリアンプ32とで約90dBの利得得ているので、後述するように、十分な探傷精度を確保できた。
【0047】
図1における外径D、厚みtを有する長尺の被検査管14は搬送機構22a、22bでもって、フレーム15の中心位置を矢印方向へ搬送されている。
【0048】
フレーム15の垂直部16の中央部に組込まれた送信側支持機構17においては、先端に送信超音波探触子18が固定されたスライド部材23を上下方向に平行移動させる機構が組込まれている。図5に示すように、被検査管14の第1の半径線(水平半径線)24からの上方(時計回り)への移動距離(所定距離)Xが、送信探触子位置設定部25の指示に基づいて自動的に移動設定される。この場合、送信超音波探触子18は、第1の半径線(水平半径線)24に対して平行を維持しているので、この送信超音波探触子18の被検査管14の外周面14aに対する超音波の入射角θ1は、被検査管14の外径Dを用いて下式で求まる。
【0049】
θ1=Sin-1(2X/D)
フレーム15の水平部17の中央部に組込まれた送信側支持機構21においては、先端に受信超音波探触子20が固定されたスライド部材26を水平方向に平行移動させる機構が組込まれている。図5に示すように、被検査管14の第1の半径線(水平半径線)24に直交する第2の半径線(垂直半径)27からの左方(時計回り)への移動距離Yが、受信探触子位置設定部28の指示に基づいて自動的に移動設定される。
【0050】
この場合、この管体超音波探傷装置の探傷稼働まえの調整時においては、受信探触子位置設定部28は、第2の半径線(水平半径線)24に対して、図5に示すように右方向(反時計回り)に受信超音波探触子20を移動させる。また、調整が終了して、この管体超音波探傷装置の探傷稼働時においては、図6に示すように左方向(時計回り)に受信超音波探触子20を移動させる。
【0051】
この場合、受信超音波探触子21は、第2の半径線(水平半径線)24に対して平行を維持しているので、この受信超音波探触子21の被検査管14の外周面に対する超音波の入射角θ2は、被検査管14の外径Dを用いて下式で求まる。
【0052】
θ2=sin-1(2Y/D)
前記送信超音波探触子18内には、図2(a)に示すように、送信部12から送信された図3に示す矩形波バースト信号aを図2(b)に示す波形の超音波パルスbに変換する振動子29が収納されている。この振動子29の超音波パルスbが出力される出力面29bは曲面に形成されている。この曲面の曲率中心Uは、前記被検査管14の第2の半径線27上に位置する。そして、この送信超音波探触子18は被検査管14の外周面14aに対して空間を介して対向している。
【0053】
このように出力面29aを曲面に形成した場合の効果を、図7を用いて説明する。図7において、幅Wの振動子29の中心線と被検査管14の外周面14aとの交点Qでの入射角θ1は、送信超音波探触子18の移動距離Xを用いて、θ1=Sin-1(2X/D)で示され、幅Wの振動子29から曲率中心Dをみた角度2θは、θ=Sin-1(W/2R)で表せる。また、
<RUO=(π/2―θ)
ΔODRで正弦法則を用いて、
Sin(π/2―θ)/OR=sin(θ1min)/OU
θ1min=Sin(π/2―θ)X/UO/2)
以上の式の数値計算を、移動距離X=20mm、振動子29の幅W=14の送信超音波探触子18に対して、外径D=318.5mm、振動子29の幅W=20、厚みt=14.3mmの被検査管14を用いて実施して、Q点、R点、P点における各入射角θ1、θ1min、θ1maxの値を求めると、共に等しく「7,2°」であった。
【0054】
したがって、このような構成においては、図7に示すように、送信超音波探触子18における矩形波バースト信号aを超音波パルスbに変換する振動子29における超音波の出力面29aの各位置から出力される各超音波は被検査管14の外周面14aに対してそれぞれ一定の入射角θ1で入射されるので、図9(b)に示すように、入射された超音波の時間的バラツキを抑制できるので被検査管14に対する探傷精度を向上できる。
【0055】
なお、この図9(b)は、送信超音波探触子18から超音波パルスbを被検査管14の外周面14aに、前述した移動距離X=20mm(入射角θ1=7.2°)の条件で、入射して、受信超音波探触子20を図5に示すように、移動距離Y=―20mmに位置させた場合におけるこの受信超音波探触子20で観測された超音波パルスbの波形図である。図9(a)は、図8に示す振動子の入射面が平坦である送信超音波探触子を用いて測定した、波形図である。
【0056】
両者を比較すれば明らかなように、振動子に曲面が存在すれは、図9(a)に示すように示すように、超音波パルスbは被検査管14内を長時間かけて伝搬される。しかしながら、平面の振動子を採用した場合は、図9(a)に示すように、測定された超音波パルスbの波形が広くなり、超音波パルスbは比較的短時間で消滅する。
【0057】
図8は、平面の振動子を採用した受信超音波探触子21を送信超音波探触子として採用した場合における、平面の振動子30の各位置から出力された各超音波の被検査管14の外周面14aに対する各入射角被検査管14の外周面14aに被検査管14の外周面14aに対する各入射角θ1、θ1min、θ1maxを求める図である。
この図8から、各入射角θ1、θ1min、θ1maxは、外径D、振動子幅a、移動距離Xを用いて、以下のように求まる。
【0058】
θ1=Sin-1(2X/D)
θ1min=Sin-1{2(X―a/2)/D}
θ1max=Sin-1{2(X+a/2)/D}
図10に、振動子幅a=14,20、30、40mm、移動距離X=10〜30mmに設定した場合の各入射角θ1、θ1min、θ1maxの各算出値を示す。このように、各入射角θ1は振動子30の各位置で値が異なる。
【0059】
また、前記受信超音波探触子20内には、図2(b)に示すように、厚みtの被検査管14内をガイド波の伝搬モードで第1の周方向(時計回り)に伝搬されてきた超音波パルスb(調整時)、または、厚みtの被検査管14内をガイド波の伝搬モードで第2の周方向(反時計回り)に伝搬されてきた欠陥エコーd(稼働時)を受波する振動子30が収納されている。この振動子30の超音波パルスb又は欠陥エコーdが入射される入射面30aは平面に形成されている。
【0060】
振動子30は超音波パルスb又は欠陥エコーdを電気信号のパルス信号又は欠陥エコー信号に変換して、信号ケーブル31を介してプリアンプ32へ送出する。このプリアンプ32は、稼働時における欠陥エコー信号を約60dB増幅して、信号レベル検出部33へ送出する。なお、調整時におけるパルス信号は信号レベルが高いので、スイッチ34を閉じてプリアンプ32をバイパスして、信号レベル検出部33へ送出する。
【0061】
信号レベル検出部33は入力したパルス信号又は欠陥エコー信号の各信号レベルを検出して、送信探触子位置設定部25、受信探触子位置設定部28、欠陥判定部36、データ処理部37へ送出する。
【0062】
欠陥判定部36は、欠陥エコー信号の信号レベルが予め設定された許容値を超えた場合は、欠陥ありと判定し、判定結果をメモリ38に書込むとともに、表示器39に表示出力する。データ処理部37は、受信超音波探触子20から出力されたパルス信号又は欠陥エコー信号に対して、又は、信号レベルに対して例えば統計処理等のデータ処理を行い、処理結果をメモリ38に書き込むと共に、表示部39に表示出力する。
【0063】
受信探触子位置移動部40は、送信超音波探触子18及び受信超音波探触子20の移動位置X、Yの調整処理が終了すると、受信側支持機構21に対して、受信超音波探触子20の、図5に示す現在の−側(右側)の移動位置―Yを、図6に示す+側(左側)の移動位置+Yに移動させる。キーボード等の操作部40は、操作者の操作指示に基づいて各部に指令を送出する。
【0064】
このように構成された管体超音波探傷装置の各部の動作を順番に説明する。なお、この管体超音波探傷装置で探傷する各被検査管14におけるガイド波の伝搬モードが生じる最適入射角θMは、前述したように、概略、被検査管14の厚みtに基づいて定まるので、各被検査管14の厚みtにて、最適入射角θMを求め、この最適入射角θMの入射角θ1が得られる異動距離X、Yを予め外径Dを用いて算出しておく。
【0065】
θ1=Sin-1(2X/D)、 θ2=sin-1(2Y/D)
ちなみに、実験に用いた鋼管(D=318,5mm、t=14.3mm)においては、入射角θ1、θ2=7.2°であり、移動距離X、Yは20mmである。
【0066】
以上の準備が終了すると、被検査管14を、図1に示すように、フレーム15内に搬入する。搬送機構22a、22bで被検査管14の中心軸をフレーム5の中心軸に合わせる。
【0067】
そして、操作者は、各移動距離X、Yを操作部41から操作入力して、「調整処理」の実行を送信探触子位置設定部25,受信探触子位置設定部28へ指示する。送信探触子位置設定部25は送信側支持機構17に移動距離Xの初期設定を指示する。その結果、送信側支持機構17は、送信超音波探触子18を図5に示すように、上方に移動距離Xだけシフト(移動)させる。
【0068】
受信探触子位置設定部28は受信側支持機構21に移動距離Yの初期設定を指示する。その結果、受信側支持機構21は、受信超音波探触子20を図5に示すように、右方に移動距離―Yだけシフト(移動)させる。
【0069】
なお、スイッチ34は閉じて、プリアンプ32をバイパスさせておく。
【0070】
次に、信号発生部10を起動すると、送信超音波探触子18から被検査管14内に超音波パルスが入射され、この超音波パルスは、この被検査管14内を第1の周方向(時計回り9)にガイド波の伝搬モードで伝搬する。そして、受信超音波探触子20で第1の周方向(時計回り)に伝搬する超音波パルスを受けてパルス信号に変換する。パルス信号の信号レベルは信号レベル検出部33で検出されて送信探触子位置設定部25及び受信探触子位置設定部28へ帰還する。
【0071】
次に、送信探触子位置設定部25は、送信超音波探触子18の移動位置Xを順次変化させた場合における前記帰還されたパルス信号の信号レベルが最大となる移動距離Xを最適移動距離Xとして固定する。
【0072】
続いて、受信探触子位置設定部28は、受信超音波探触子20の移動位置Yを順次変化させた場合における受信超音波探触子20で検出されて信号レベル検出部33を介して帰還されたパルス信号の信号レベルが最大となる移動距離Yを最適移動距離Yとして決定する。そして、この決定した最適移動距離Yを受信探触子位置移動部40へ送出する。
【0073】
受信探触子位置移動部40は、前述したように、送信超音波探触子18及び受信超音波探触子20の移動位置X、Yの調整処理が終了すると、受信側支持機構21に対して、受信超音波探触子20の、図5に示す現在の−側(右側)の移動位置―Yを、図6に示す+側(左側)の移動位置+Yに移動させる。さらに、スイッチ34を開放して、受信超音波探触子20で検出される欠陥エコー信号をプリアンプ32で60dB増幅するように再設定しておく。
【0074】
以上で各超音波探触子18,20の最適感度が得られる移動位置X、―Yが定まったので、調整処理を終了したので、被検査管14に対する探傷処理を実施する。
【0075】
操作者は、操作部41から探傷指示を入力すると、図12に示すように、送信超音波探触子18から、被検査管14内に超音波パルスbが入射され、この超音波パルスbは、この被検査管14内を第1の周方向(時計回り)にガイド波の伝搬モードで伝搬する。この超音波パルスbが欠陥42に当接すると、この欠陥42にて、その一部が欠陥エコーdとして、被検査管14内をガイド波の伝搬モードで反対方向である第2の周方向(反時計回り)に伝搬する。そして外周面14aにおける超音波の入力方向が反転された受信超音波探触子20dで受信して欠陥エコー信号に変換されて、欠陥の信号レベルになる。欠陥判定部36はこの欠陥の信号レベルに基づいて欠陥の有無を判定してメモリ38に書き込むと共に表示部39に表示する。
【0076】
次に、上述した図1に示す管体超音波探傷装置の特徴を確認するために図13に示す4種類の試験管45、46,47、48を作成した。試験管45は欠陥がない標準の試験管、試験管46は内周面に3mmのノッチが存在し、試験管47は5mmφの貫通孔があり、試験管48は内周面に直径4mm、深さ4mmの疵がある。各試験管45〜48は外径D=318.5mm、厚みt=14.3mmの鋼管である。
【0077】
そして、図14(a)は図13(b)の3mmのノッチが存在する試験管46の表示部39に表示された超音波探傷結果を示す欠陥エコーdを示す波形図である。図示するように、送信超音波探触子18から出力された超音波パルスbが試験管を時計方向に1周(360°)する期間に欠陥に当接して、この欠陥に対応する欠陥エコーdが反時計方向にガイド波の伝搬モードで試験管46の円周を繰り返し伝搬するが、受信超音波探触子20はこの欠陥エコーdを1周毎に検索する。なお、基本エコーは送信超音波探触子18から出力された超音波パルスbの直接波である。
【0078】
図14(b)は図13(c)の5mmφの貫通孔が存在する試験管47の表示部39に表示された欠陥エコーdを示す波形図である。図14(c)は図13(d)の直径4mm、深さ4mmの疵がある試験管48の表示部39に表示された欠陥エコーdを示す波形図である。このように、被検査管14内に存在する小さな欠陥42を高い精度で検出できる。
【0079】
図15(a)〜(d)は、被検査管14内に存在する欠陥(きず)42の位置(周上位置)と、送信超音波探触子18及び受信超音波探触子20の位置(周上位置)ととの関係を示す図である。
【0080】
図15(a)は、図13(c)で示した5mmφの貫通孔が存在する試験管47を、5mmφの貫通孔の欠陥42が受信超音波探触子20から時計回り方向に約80°離れた位置に位置させている。図15(b)は、この状態において、受信超音波探触子20て検出されて表示部39に表示された欠陥エコーdを示す波形図である。
【0081】
この場合、送信超音波探触子19の超音波パルスbの欠陥42までの距離PLと、欠陥42から受信超音波探触子20までの欠陥エコーdの距離DLとの合計距離(PL+DL)が比較的短いので、超音波減衰が小さく、表示された欠陥エコーdのレベルは比較的高い。
【0082】
図15(c)は、図13(c)で示した5mmφの貫通孔が存在する試験管47を、5mmφの貫通孔の欠陥42が受信超音波探触子20から反時計回り方向に約45°離れた位置に位置させている。図15(d)は、この状態において、受信超音波探触子20検出されて表示部39に表示された欠陥エコーdを示す波形図である。
【0083】
この場合、送信超音波探触子18の超音波パルスbの欠陥42までの距離PLは非常に短いが、欠陥42から反時計回りで受信超音波探触子20までの欠陥エコーdの距離DLは非常に長いので、合計距離(PL+DL)が長くなるので、超音波減衰が大きく、表示された欠陥エコーdのレベルは低い。
【0084】
しかしながら、送信超音波探触子18から出力された超音波パルスbの直接波である基準エコー(超音波パルスb)と欠陥エコーdとが同時に表示されるので、欠陥42の規模を評価できる。
【0085】
なお、送信超音波探触子18と受信超音波探触子20との円周方向における設置間隔の最適間隔は、上述した合計距離(PL+DL)が最短になるのが望ましいが、欠陥42の発生位置は円周上に一様に分布すると仮定すると、受信超音波探触子20を送信超音波探触子18から出力される超音波パルスbの進行方向後半部分に設定すると、統計的に上述した合計距離が大きくなるので、受信超音波探触子20の設置位置を送信超音波探触子18から超音波パルスbの進行方向に90°離れた位置に設定した。
【0086】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。送信超音波探触子18と受信超音波探触子20との位置関係を円周方向に必ずしも90°離す必要はない。0°から180°の間の任意の角度に設定可能である。すなわち、送信超音波探触子18の入射角θ1の被検査管14の外周面14aの法線に対する傾き方向と、受信超音波探触子20の外周面14aの法線に対する傾き方向とが互いに逆方向に設定することによって、送信超音波探触子18から出力された超音波パルスbが被検査管14でガイド波の伝搬モードで伝搬し、この超音波パルスが欠陥42に当接したときに、この欠陥から生じる超音波パルスbに対して逆方向にガイド波の伝搬モードで伝搬する欠陥エコーを検出できるように受信超音波探触子20の外周面濡に対する確姿勢を設定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施形態に係わる管体超音波探傷方法が適用される管体超音波探傷装置の概略構成を示す模式図
【図2】送信超音波探触子及び受信超音波探触子の断面図
【図3】送信超音波探触子波形バースト信号を示す図
【図4】ガイド波の伝搬モードの一例を示す図
【図5】調整時における送信超音波探触子と受信超音波探触子との位置関係を示す図
【図6】稼働時における送信超音波探触子と受信超音波探触子との位置関係を示す図
【図7】送信超音波探触子の振動子の形状を示す図
【図8】同じく送信超音波探触子の振動子の形状を示す図
【図9】送信超音波探触子の振動子の形状と特性との関係を示す図
【図10】送信超音波探触子の振動子の形状と移動距離と入射角との関係を示す図
【図11】鋼管の伝搬モードにおける算出された透過率、入射角、乗算値[f・t]との関係を示す図
【図12】稼働状態時における超音波パルスと欠陥位置と欠陥エコーとの関係を示す図
【図13】各試験管の欠陥位置を示す図
【図14】各試験管の探傷結果を示す図
【図15】欠陥位置と送信超音波探触子及び受信超音波探触子との位置関係を示す図
【図16】従来の鋼管に対する超音波探傷を示す図
【符号の説明】
【0088】
10…信号発生部、11…矩形波、12…送信部、14…被検査管、14a…外周面、15…フレーム、17…送信側支持機構、18…送信超音波探触子、20…受信超音波探、21…受信側支持機構、22a,22b…搬送機構、23、26…スライド部材、24…第1の半径線、25…送信探触子位置設定部、27…第2の半径線、28…受信探触子位置設定部、29.30…振動子、32…プリアンプ、33…信号レベル検出部、34……スイッチ、36…欠陥判定部、37…データ処理部、38…メモリ、39…表示部、40…受信探触子位置移動部、41…操作部、42…欠陥、45〜48…試験管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス状の超音波を出力する送信超音波探触子と、
この送信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して、空間を介して対向し、かつ送信超音波探触子から前記被検査管内に入射した超音波が第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬するような姿勢角で支持する送信側支持機構と、
前記被検査管内を第1の周方向に伝搬する前記超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換して出力する受信超音波探触子と、
この受信超音波探触子を、前記被検査管の外周面に対して、空間を介して対向し、かつ前記送信超音波探触子の姿勢角に等しい姿勢角で支持する受信側支持機構と、
この受信側支持機構に支持された前記受信超音波探触子から出力されたエコー信号の信号レベルを検出する信号レベル検出部と、
この信号レベル検出部で検出されたエコー信号の信号レベルに基づき前記被検査管の欠陥を評価する探傷解析部と
を備えたことを特徴とする管体超音波探傷装置。
【請求項2】
連続する所定個数の矩形波からなる矩形波バースト信号を作成して出力する信号発生部と、
この信号発生部から出力された矩形波バースト信号を超音波に変換して出力する送信超音波探触子と、
この送信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して空間を介して対向し、かつ超音波の出力方向が前記被検査管の任意に定めた第1の半径線に対して、平行でかつ所定距離だけ一方方向にシフトさせて支持する送信側支持機構と、
この送信側支持機構で支持された送信超音波探触子から出力されて前記被検査管内を第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬する超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換して出力する受信超音波探触子と、
この受信超音波探触子を、前記被検査管の外周面に対して空間を介して対向し、かつ超音波の入力方向が前記被検査管の前記第1の半径線に直交する第2の半径線に対して、平行でかつ前記所定距離だけ送信超音波探触子に対して同一方向にシフトさせて支持する受信側支持機構と、
この受信側支持機構に支持された前記受信超音波探触子から出力されたエコー信号の信号レベルを検出する信号レベル検出部と、
この信号レベル検出部で検出されたエコー信号の信号レベルに基づき前記被検査管の欠陥を評価する探傷解析部と
を備えたことを特徴とする管体超音波探傷装置。
【請求項3】
前記送信超音波探触子における前記矩形波バースト信号を超音波に変換する振動子における超音波の出力面は曲面に形成されており、
前記送信側支持機構は、前記送信超音波探触子を、前記振動子の曲面の曲率中心が前記被検査管の前記第2の半径線上に位置するように支持する
ことを特徴とする請求項2記載の管体超音波探傷装置。
【請求項4】
連続する所定個数の矩形波からなる矩形波バースト信号を送信超音波探触子に印加するステップと、
この送信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して空間を介して対向させ、かつ超音波の出力方向が前記被検査管の任意に定めた第1の半径線に対して、平行でかつ所定距離だけ一方方向にシフトさせて支持するステップと、
受信超音波探触子を、前記被検査管の外周面に対して空間を介して対向し、かつ超音波の入力方向が前記被検査管の前記第1の半径線に直交する第2の半径線に対して、平行でかつ前記所定距離だけ送信超音波探触子に対し同一方向にシフトさせて支持するステップと、
前記支持された送信超音波探触子から出力され前記被検査管内に入射した超音波を前記被検査管内を第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬させるステップと、
前記支持された受信超音波探触子で前記第1の周方向に伝搬する超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換して出力するステップと、
受信超音波探触子から出力されたエコー信号の信号レベルを検出し、信号レベルに基づき前記被検査管の欠陥を評価するステップと
を備えたことを特徴とする管体超音波探傷方法。
【請求項5】
連続する所定個数の矩形波からなる矩形波バースト信号を送信超音波探触子に印加するステップと、
この送信超音波探触子を、被検査管の外周面に対して空間を介して対向させ、かつ超音波の出力方向が前記被検査管の任意に定めた第1の半径線に対して、平行でかつ所定距離だけ一方方向にシフトさせて支持するステップと、
受信超音波探触子を、前記被検査管の外周面に対して空間を介して対向し、かつ入力される超音波の方向が被検査管の前記第1の半径線に直交する第2の半径線に対して、平行でかつ前記所定距離だけ送信超音波探触子に対し反対方向にシフトさせて支持するステップと、
前記支持された送信超音波探触子から出力され前記被検査管内に入射した超音波を前記被検査管内を第1の周方向にガイド波の伝搬モードで伝搬させるステップと、
前記支持された受信超音波探触子で前記第1の周方向に伝搬する超音波を受けて電気信号に変換するステップと、
前記所定距離を順次変化させた場合における前記変換された電気信号のレベルが最大となる所定距離を最適距離として求めるステップと、
前記送信超音波探触子を、前記第1の半径線に対して、平行でかつ前記最適距離だけシフトさせて支持するステップと、
前記受信超音波探触子を、第2の半径線に対して、平行でかつ前記最適距離だけ前記送信超音波探触子に対して同一方向にシフトさせて支持するステップと、
前記支持された受信超音波探触子で、前記第1の周方向に伝搬する超音波が欠陥に当接したとき、この欠陥から第2の周方向に伝搬するエコーを受けてエコー信号に変換して出力するステップと、
このステップで受信超音波探触子から出力されたエコー信号の信号レベルを検出し、信号レベルに基づき前記被検査管の欠陥を評価するステップと
を備えたことを特徴とする管体超音波探傷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−25817(P2010−25817A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−188907(P2008−188907)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(591041417)ジャパンプローブ株式会社 (12)
【Fターム(参考)】