説明

非接触送電システム

【課題】送電を行うに当り、送電条件の認識や設定に始まり送電開始を経て送電終了に至るまでの一連の送電シーケンスにより非接触送電を好適に実行可能な非接触送電システムを提供することを目的とする。
【解決手段】電気エネルギーを動力源として利用する車両等の機器に対して非接触状態で送電を行うシステムにおいて、機器に搭載されて電力を受電する受電側アンテナと、受電側アンテナに対して電力を送電する送電側アンテナとを備えて、共振周波数で振動する交流電力がアンテナ間の電磁的結合により送電される際、前記送電側アンテナが給電可能なエリア内に前記受電側アンテナが存在することが検知されると送電が開始され、送電された電力を用いて充電される機器に搭載された電源の充電が完了すると送電を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、電気エネルギーを動力源として利用する機器に非接触で送電する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車両の新たな走行駆動技術として、電気エネルギーを動力源として電動機により駆動力を発生する電気自動車や、内燃機関と電動機との補完により駆動力を発生する、いわゆるハイブリッド自動車車両の開発が進められ実用化されてきている。
【0003】
電気エネルギーは車両に搭載されている蓄電装置により車両内に蓄積される。蓄電装置にはニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの再充電可能な二次電池が使用されており、二次電池への充電は車両外部の電源からの送電により行われることが一般的である。送電の方法として、車両外部の電源と二次電池を含む蓄電装置との間をケーブルで接続する場合の他、非接触状態で送電する方法が注目されている。
【0004】
車両外部の電源から非接触状態で充電電力を電動車両へ送電するために、高周波電力ドライバと、一次コイルと、一次自己共振コイルとを備える車両用給電装置が開示されている。高周波電力ドライバにより電源からの電力が高周波電力に変換され、一次コイルによって一次自己共振コイルに与えられる。一次自己共振コイルは車両にある二次自己共振コイルとの間で磁気的に結合され、非接触状態で車両に電力が送電される(特許文献1)。
【0005】
また、コイルまたはアンテナを利用して非接触送電を行う技術として、特許文献2、非特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【特許文献2】特表2009−501510号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アリステディス カラリス(Aristeidis Karalis)、他2名、「エフィシェント ワイヤレス ノンラディエイティブ ミッドレンジ エネルギー トランスファ(Efficient wireless non-radiative mid-range energy transfer)」、[online]、2007年4月27日、アニュアル オブ フィジックス(Annals of Physics)323 (2008) p.34-48、[平成21年11月20日検索], インターネット<URL:www.sciencedirect.com>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、背景技術は、コイル・アンテナにより非接触状態で電力送電を行うための回路構成を例示するに過ぎない。送電を行うに当っての送電条件の認識や設定に始まり送電開始を経て送電終了に至るまでの一連の送電シーケンスに関しては何ら開示されていない。非接触送電を行う回路構成は的確な送電シーケンスにより動作することで効率的な送電が可能となるものである。
【0009】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、送電を行うに当り、送電条件の認識や設定に始まり送電開始を経て送電終了に至るまでの一連の送電シーケンスにより非接触送電を好適に実行可能な非接触送電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される技術に係る非接触送電システムは、電気エネルギーを動力源として利用する機器に対して非接触状態で送電を行う非接触送電システムである。機器に搭載され、電磁気的結合により受電する受電側アンテナと、受電側アンテナに対して電磁気的結合により送電する送電側アンテナと、送電側アンテナに接続され、送電時に所定周波数の交流電力を供給すると共に、送電に先立ち周波数を走査して交流電力を供給する交流電力ドライバと、交流電力ドライバにおいて周波数が走査される際、交流電力ドライバと送電側アンテナおよび受電側アンテナとを含む系の反射特性を検出する検出回路とを備え、前記検出回路により検出される反射特性が共振状態となる共振周波数を前記所定周波数とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願に開示される技術に係る非接触送電システムによれば、送電に先立ち周波数走査を行い、反射特性を検出する検出回路より検出された反射特性から共振周波数を検出し、該共振周波数で交流電力ドライバから交流電力を供給することで、効率よく電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】非接触送電システムを示す図である。
【図2】送電動作における共振周波数を示す図である。
【図3】給電可能領域内に送受信アンテナが両方、同一離間距離にある時の定在波比(Standing Wave Ratio、以下SWRと略記する)値の負荷抵抗依存特性を示す図である。
【図4】送電装置の回路ブロック図である。
【図5】受電装置の回路ブロック図である。
【図6】送電装置の動作時のフローチャートである。
【図7】受電装置の動作時のフローチャートである。
【図8】給電可能領域内に送受信アンテナが両方ある時のSWR値の周波数特性を示す図である。
【図9】送信側アンテナ単独時のSWR値の周波数特性を示す図である。
【図10】送電装置の周波数走査のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は非接触送電システムを電気自動車あるいはハイブリッド自動車への送電に適用する場合のシステム構成図である。車両2が電気自動車あるいはハイブリッド自動車である。車両2が送電エリア1に入庫している状態を示す。送電エリア1には送電装置10が埋設されており、車両2に搭載されている受電装置20との間で、非接触送電が行われる。
【0014】
非接触送電では、送電装置10の送電側アンテナ11から受電装置20の受電側アンテナ21への電磁波による電磁的結合により電力の送電が行われる。送電側アンテナ11は、送電エリア1の地表面に沿って、電磁的結合がなされる結合面11Aが配置される。受電側アンテナ21は、車両2の下面に沿って、電磁的結合がなされる結合面21Aが配置される。送電側アンテナ11は、所定周波数の交流電力を送電する交流電力ドライバを含む送電部12により駆動される。送電部12は制御回路13により制御される。また、受電側アンテナ21にて受電された交流電力は受電部22により整流されて蓄電池等に蓄積される。受電部22は制御回路23により制御される。
【0015】
ここで、送電部12の交流電力ドライバより送電側アンテナ11に送電される交流電力の所定周波数とは、送電側アンテナ11および受電側アンテナ21を含む系の共振周波数である。図2に系の共振周波数の特性図を示す。横軸は送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との離間距離(L)であり、縦軸は共振周波数(f)である。離間距離(L)がL=L0以上の領域は、受電側アンテナ21との電磁的結合の影響が無視される領域である。系は受電側アンテナ21を含まず送電側アンテナ11が有する固有の共振周波数(f=f0)で共振する。離間距離(L)がL=L0以下の領域では、系は送電側アンテナ11と受電側アンテナ21とが電磁的結合された状態となる。電磁的結合に伴う相互インダクタンスによる影響を受ける領域である。この領域では、共振周波数は離間距離(L)に依存して変化する。送電側アンテナ11の固有の共振周波数(f=f0)を挟んで2つの共振点が存在し、離間距離(L)が短くなることに応じて互いの共振周波数が離れる特性となる。また、この領域での共振周波数で高い送電効率が得られる。
【0016】
図2の曲線は、例えば、図3に例示する送電側アンテナ11から受電側アンテナ21への電力伝送時における周波数に対するSWR値の特性曲線において、SWR値の極小点をとる周波数をプロットしたものである。送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との離間距離(L)が同一である場合、負荷抵抗の大きさにより図2に示す系の共振周波数の周波数値の離れ度合いが異なる。すなわち、負荷抵抗が小さいほど(図3において実線で示す特性曲線)離れ度合いは大きくなり所定の離間距離に近づき、正確に離間距離(L)を検出することができる。図3では、負荷抵抗が大きくなると、SWR値の極小点が互いに近づくと共にピークが不明瞭になる特性を例示する。負荷抵抗が大きくなるとSWR値の極小点が分離されず1点になる結果、送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との離間距離(L)の検出が困難になる。即ち、実際には給電可能領域内にあるにも関わらず、給電可能領域内とは判断できない場合もある。このことから、送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との離間距離(L)を正確に検出するためには、受電側アンテナ21を短絡(閉ループ)状態とし負荷抵抗分を極力低減して離間距離(L)を所定の距離に近づけ、検出精度を向上させることが必要である。
【0017】
図4は送電装置10の回路ブロック図である。制御回路13、発振器14、駆動回路12A、整合回路12B、SWR計12C、および送電側アンテナ11を備える。更に、送電エリア1にはエリア内検出センサ15を備える。
【0018】
発振器14から出力されるクロック信号は、制御回路13へ入力され、制御回路13内の動作クロックおよび駆動回路12Aの交流電力の送電などの周期制御に用いられる。
【0019】
制御回路13は、発振器14、SWR計12C、エリア内検出センサ15から受信した信号をもとに、駆動回路12A、整合回路12Bを制御する。
【0020】
駆動回路12Aはインバータや増幅器などで構成される交流電力ドライバを含み、整合回路12BおよびSWR計12Cを通じて送電側アンテナ11に交流電力を供給する。該交流電力は制御回路13により所定周波数の交流電力として周期制御される。
【0021】
整合回路12Bは、駆動回路12Aから供給される交流電力を送電側アンテナ11へ効率よく供給するために、制御回路13からの制御により、送電側アンテナ11と駆動回路12Aとのインピーダンス整合をとる。
【0022】
SWR計12Cは駆動回路12Aから送電側アンテナ11へと送られる交流電力についてのSWR値を計測し制御回路13に結果を送信する。交流電力の伝搬による反射波の有無を検出する。
【0023】
送電側アンテナ11はインダクタンス成分とキャパシタンス成分とを有するLC共振コイルであり、後述する受電装置20の受電側アンテナ21との間で磁気的に結合され、受電側アンテナ21へ電力を送電する。
【0024】
エリア内センサ15は送電エリア1に車両2が進入したか否かを検出し、その結果を制御回路13に送信する。
【0025】
図5は、受電装置20の回路ブロック図である。受電装置20は、制御回路23、発振器24、受電側アンテナ21、受電検出回路22A、切替回路22B、整合回路22C、整流平滑回路22D、および充電回路22Eを備える。
【0026】
発振器24から出力されるクロック信号は、制御回路23に入力され、制御回路23内の動作クロックとして用いられる。
【0027】
制御回路23は、発振器24、および受電検出回路22Aから受信した信号をもとに、切替回路22B,および充電回路22Eを制御する。
【0028】
受電検出回路22Aは、例えば、電流センサを備え、受電側アンテナ21に流れる電流を検出する。送電装置10からの交流電力の送電が行われているか否かを検出する。
【0029】
切替回路22Bは、制御回路23から受信した信号により、受電側アンテナ21を閉ループ状態にするか、充電回路22Eに接続するか、開ループ状態にするかを切替える。
【0030】
整合回路22Cは、受電側アンテナ21に受電された交流電力が反射されずに整流平滑回路22Dを通じて充電回路22Eへと供給されるように、受電側アンテナ21から整流平滑回路22Dに至る系のインピーダンス整合をとる。
【0031】
整流平滑回路22Dは、受電側アンテナ21から供給される交流電力を直流電力に変換および平滑化し、充電回路22Eに供給する。
【0032】
充電回路22Eは、整流平滑回路22Dから供給される電力をバッテリー等の蓄電装置(不図示)に充電する回路である。ここで、蓄電装置とは、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池や大容量のキャパシタから成る。制御回路23から制御され充電制御を行う。
【0033】
受電側アンテナ21は、インダクタ成分とキャパシタンス成分とを有するLC共振コイルであり、送電側アンテナ11との間で磁気的に結合され、送電側アンテナ11より交流電力を受電する。
【0034】
次に、送電装置10と受電装置20の動きについてフローチャートを用いて説明する。
【0035】
送電装置10の動作時のフローチャートを図6に示す。送電装置10の動作開始(ST0)後、送電装置10はエリア内検出センサ15により受電装置20の進入が検知されるまで待機する(ST2)。エリア内検出センサ15により受電装置20の進入を検出されるまで待機し、受電装置20の進入を検出した後、周波数走査及び送電を行うことで、消費電力を低減することが可能となる。
【0036】
エリア内検出センサ15により受電装置20の進入が検知された後、駆動回路12Aは受電側の受電側アンテナ21に電流が流れる程度の低電力で電流を出力し始め(ST4)、送電を行う(ST8)まで低電力での出力を維持する。これにより、消費電力を低減することが可能となる。
【0037】
該電流の出力開始の後、駆動回路12Aは制御回路13の制御により出力電力の周波数を走査する(ST6)。周波数を走査しながらSWR計12CでSWR値を計測することで、出力電力の周波数とSWR値の特性が得られる。ここで、SWR値が極小となる周波数が共振周波数である。
【0038】
出力周波数の走査は2つの共振周波数が検出されるまで行われる(ST8:NO)。共振周波数が2つ確認される場合は、受電側アンテナ21が送電側アンテナ11の給電可能領域内に存在していると確認される(ST8:YES)。受電側アンテナ21が送電側アンテナ11の給電可能領域内に存在しているときのSWR値の周波数特性を図8に示す。また、共振周波数が1つのみ存在する場合は、受電側アンテナ21が送電側アンテナ11の給電可能領域内に存在していないと言える。送電側アンテナ単独時のSWR値の周波数特性を図9に示す。受電側アンテナ21が送電側アンテナ11の給電可能領域内に存在していた場合は前記2つの共振周波数のどちらか一方で送電を行う(ST8)。なお、周波数走査の動作の詳細については後述する。
【0039】
さらに、送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との距離と共振周波数との特性(図2)から、送電側アンテナ11と受電側アンテナ21の距離が得られる(ST10)。
【0040】
このアンテナ間の距離に対応し制御回路13は整合回路12Bを設定する(ST12)。そして、送電装置10から受電装置20に送電を行うため、駆動回路12Aは制御回路13の制御により、出力を増大させる(ST14)。
【0041】
受電装置20は、充電が終わると受電側アンテナ21のループを開く。これにより、送電部のSWR計12Cにより計測されるSWR値が変化することで、受電装置20の充電完了が検出され、送電部は充電終了を検知する(ST16:YES)。充電終了を検知した送電装置10の制御回路13は駆動回路12Aの出力を停止させる(ST18)。送電部は動作を終了する(ST20)。
【0042】
次に受電装置20の動作時のフローチャートを図7に示す。動作開始(SR0)時において受電装置20の切替回路22Bは受電側アンテナ21を閉ループ状態にするように接続する(SR2)。これにより、充電回路22Eに接続した場合に比べて、伝送路のインピーダンスを正確に検出できる効果があり、その情報に基づいて送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との離間距離(L)をより正確に推定することができる。また、非常に小さな電力にて動作するために消費電力を低減することができる。受電検出回路22Aは送電装置10から電力が供給され受電側アンテナ21に電力が流れるまで待機する(SR4)。
【0043】
受電側アンテナ21に電力が流れた後、受電検出回路22Aは受電側アンテナ21に流れる電力が大きく増加するのを検知するまで、すなわち、送電を検知するまで待機する(SR6:NO)。送電を検知した後(SR6:YES)、受電側アンテナ21から充電回路22Eまでを接続するように、受電装置20の制御回路23は切替回路22Bを制御する(SR8)。
【0044】
受電側アンテナ21に接続された充電回路22Eはバッテリーの充電を開始する(SR10)。バッテリーの充電が終了するまで以上の状態が保持される(SR12:NO)。バッテリーの充電が終了すると(SR12:YES)、制御回路23は切替回路22Bを制御し、受電側アンテナ21と充電回路22Eの接続を切断した上で、受電側アンテナ21のループを開く(SR14)。これにより、受電終了後の電力消費を低減することができる。受電部は動作を終了する(SR16)。
【0045】
図10に駆動回路12Aの周波数走査時のフローチャートを示す。周波数走査において、駆動回路12Aの出力周波数Fを初期周波数Fsから終了周波数Feまで周波数増分Δfづつ逐次増加させるとする。
【0046】
駆動回路12Aの動作を開始し(SF0)、初期設定を行う。カウンタnを0に設定し(SF2)、カウンタmを0に設定する(SF4)。出力周波数Fを初期周波数Fsに設定する(SF6)。以上で初期設定を終了し、以下カウンタnの値を一周毎に1加算し、出力周波数Fを一周毎にΔf増加させるループ動作を開始する(SF8〜SF26)。
【0047】
駆動回路12Aは出力周波数Fで交流電力を出力する(SF8)。SWR計でSWR値を計測し(SF10)、得られたSWR値をn回目のループ動作時のSWR値Snとして格納する(SF12)。
【0048】
カウンタnが2以上の時(SF14:YES)、n回目のループ動作時のSWR値Snとn−1回目のループ動作時のSWR値Sn−1、n−1回目のループ動作時のSWR値Sn−1とn−2回目のループ動作時のSWR値Sn−2を比較する(SF16)。SWR値Sn−2に比してSWR値Sn−1が小さく、かつ、SWR値Sn−1に比してSnの方が大きい時(SF16:YES)、n−1回目のループ動作時の出力周波数Fn−1近辺においてSWR値は極小をとる。すなわち、n−1回目のループ動作時の出力周波数Fn−1が共振周波数に近しい周波数であると言える。よって、n−1回目のループ動作時の出力周波数Fn−1を共振周波数Dmとして格納し(SF18)、カウンタmの値を1加算する(SF20)。その後、処理(SF22)に移る。ここで、SWR値Sn−2に比してSWR値Sn−1が大きいか、あるいはSWR値Sn−1に比してSnの方が小さいかの少なくとも何れかの条件となる場合には(SF16:NO)、処理(SF18)、(SF20)は行わず処理(SF22)に移る。
【0049】
処理(SF22)では、カウンタnの値を1加算する。現在の出力周波数Fに周波数増分Δfを加算した周波数を、出力周波数Fとして再設定する(SF24)。出力周波数Fが終了周波数Fe以下の場合はSF8に戻る(SF26:NO)。
【0050】
出力周波数Fが終了周波数Feより大きい場合は周波数走査を終え次の処理(SF28)に移る(SF26:YES)。周波数走査終了時におけるカウンタmの値は、走査した周波数帯域FsからFeの間に存在する共振周波数の個数である。受信アンテナ21が給電エリア内に存在するか否かをmの値により判断する(SF28)。
【0051】
カウンタmの値が2ではない場合(SF28:NO)、即ち、共振周波数が0もしくは1つのみ存在した場合は、送電可能エリア内に受信アンテナが存在しないと判断される(SF30)。カウンタmの値が2である場合(SF28:YES)、即ち、共振周波数が2つ存在した場合は、送電可能エリア内に受信アンテナが存在すると判断される(SF32)。以上で、周波数走査を終了する(SF34)。
【0052】
送電可能エリア内に受信アンテナが存在すると判断された場合には、駆動回路12Aの出力する交流電力の出力周波数Fを共振周波数D0あるいはD1とすることで効率よく電力を供給できる。
【0053】
ここで、駆動回路12Aは交流電力ドライバの一例であり、SWR計12Cは反射特性を検出する検出回路の一例である。
【0054】
以上、詳細に説明したように、実施形態によれば、送電エリア1への車両2の進入が検知されると自動的に送電装置10から車両内の受電装置20へ電力を供給し充電することが出来る。
【0055】
また、実際に送電を行う前に、送電部12の出力する交流電力の周波数を微弱な出力で走査し、SWR計での計測により共振周波数を得る。これにより、受電側アンテナ21が送電側アンテナ11の給電可能領域内に存在するか否かを判別することが出来る。さらに、得られた共振周波数で送電部12から送電側アンテナ11に電力を供給することで、効率よく電力を送電することが出来る。
【0056】
また、エリア内検出センサ15により受電装置20の進入が検知された後、駆動回路12Aは受電側の受電側アンテナ21に電流が流れる程度の低電力で電流を出力し始め(図6、ST4)、送電を行う(図6、ST8)まで低電力での出力を維持する。これにより、消費電力を低減することが可能となる。
【0057】
また、バッテリーの充電が終了すると(図7、SR12:YES)、制御回路23は切替回路22Bを制御し、受電側アンテナ21と充電回路22Eの接続を切断した上で、受電側アンテナ21のループを開く(図7、SR14)。これにより、受電終了後の電力消費を低減することができる。
【0058】
また、動作開始(図7、SR0)時において受電装置20の切替回路22Bは受電側アンテナ21を閉ループ状態にするように接続する(図7、SR2)。これにより、充電回路22Eに接続した場合に比べて、伝送路のインピーダンスを正確に検出できる効果があり、その情報に基づいて送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との離間距離(L)をより正確に推定することができる。また、非常に小さな電力にて動作するために、消費電力を低減することができる。
【0059】
また、受電装置20は、充電が終わると受電側アンテナ21のループを開く。これにより、送電部のSWR計12Cにより計測されるSWR値が変化することで、受電装置20の充電完了が検出され、送電部は充電終了を容易に検知することができる(図7、SR16)。
【0060】
送電装置10の動作開始(図6、ST0)後、送電装置10はエリア内検出センサ15により受電装置20の進入が検知されるまで待機する(図6、ST2)。エリア内検出センサ15により受電装置20の進入を検出されるまで待機し、受電装置20の進入を検出した後、周波数走査及び送電を行うことで、消費電力を低減することが可能となる。
【0061】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
電気エネルギーを動力源として利用する機器は、本願の実施例における車両でなくとも良く、例えば、携帯電話機、デジタル・カメラ、およびノート・パソコンといった携帯型機器、ならびに、テレビ、ホームシアターおよびデジタル・フォト・フレームといった据え置き型機器でもよい。
反射特性を検出する検出回路は、本願の実施例におけるSWR計でなくとも良く、例えば、送電部12から送電側アンテナ11へと供給される電流量を計測する回路や供給される電圧の波形を計測する回路など、交流電力の反射の多少を検出することができるものであればよい。
【符号の説明】
【0062】
1 送電エリア
2 車両
10 送電装置
11 送電側アンテナ
11A 結合面
12 送電部
13、23 制御回路
12A 駆動回路
12B 整合回路
12C 定在波比(SWR)計
14、24 発振器
15 エリア内検出センサ
20 受電装置
21 受電側アンテナ
21A 結合面
22 受電部
22A 受電検出回路
22B 切替回路
22C 整合回路
22D 整流平滑回路
22E 充電回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを動力源として利用する機器に対して非接触状態で送電を行う非接触送電システムであって、
前記機器に搭載され、電磁気的結合により受電する受電側アンテナと、
前記受電側アンテナに対して前記電磁気的結合により送電する送電側アンテナと、
前記送電側アンテナに接続され、送電時に所定周波数の交流電力を供給すると共に、送電に先立ち周波数走査を行い交流電力を供給する交流電力ドライバと、
前記交流電力ドライバにおいて周波数が走査される際、前記交流電力ドライバと前記送電側アンテナおよび前記受電側アンテナとを含む系の反射特性を検出する検出回路とを備え、
前記検出回路により検出される反射特性が共振状態となる共振周波数を前記所定周波数とすることを特徴とする非接触送電システム。
【請求項2】
前記機器が送電側アンテナの送電可能エリア内に進入したことを検出した後、前記周波数走査を行うことを特徴とする請求項1に記載の非接触送電システム。
【請求項3】
前記検出回路により検出される前記共振周波数が2つ確認される場合に電力供給を開始することを特徴とする請求項1又は2の少なくとも何れか1項に記載の非接触送電システム。
【請求項4】
前記交流電力ドライバは、
前記周波数走査の際の交流電力の供給を送電時に比して低電力で行うことを特徴とする請求項1乃至3の少なくとも何れか1項に記載の非接触送電システム。
【請求項5】
前記受電側アンテナの接続先を切り替える切替回路を備え、
前記切替回路は、前記周波数走査の際、前記受電側アンテナを負荷の含まない閉ループとすることを特徴とする請求項1乃至4の少なくとも何れか1項に記載の非接触送電システム。
【請求項6】
前記切替回路は、受電終了時に前記受電側アンテナを開ループとすることを特徴とする請求項5に記載の非接触送電システム。
【請求項7】
前記検出回路は、更に、
前記反射特性が共振状態から変化することをもって、前記受電側アンテナの開ループによる受電終了を検出することを特徴とする請求項6に記載の非接触送電システム。
【請求項8】
前記機器が送電可能エリア内に進入したことを検出するエリア内検出センサを備えることを特徴とする請求項1乃至7の少なくとも何れか1項に記載の非接触送電システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−177009(P2011−177009A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11631(P2011−11631)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】