説明

非接触通信方式

【課題】 ID等の情報を記憶した複数の応答装置の情報を効率的に読み取れるようにする。
【解決手段】 ID等の情報が記憶された不揮発メモリ、乱数発生手段、応答時間設定手段、応答時間設定手段により設定された待ち時間を計数する計数手段、非接触通信手段を備え、待ち時間経過後に応答信号を送出すると共に通信完了許可時間を設定し、情報送出が設定時間経過しても完了しないときは次の起動信号を待つ複数の応答装置と、情報の読み取り時にタイムスロット数を含む起動信号を複数の応答装置に送出すると共に1タイムスロット時間を設定し、設定時間内に応答信号を受けることができた応答装置より順次情報を読み取り、読み取りができない応答装置が残った場合、再度起動信号を送出する起動装置より成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、IDチップ等の複数の応答装置と、それらのID等の情報を非接触にて同時に読み取る読み取り装置等の起動装置から成る非接触通信方式に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、例えば特許文献1には、乱数演算の一部の演算で得られる仮乱数を記憶し、リーダライタからのリクエストを受信すると、前記仮乱数から乱数を発生する非接触ICカードが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、処理装置本体との通信の間だけICカードに特定の固定値を記憶させ、処理装置本体からの特定値と一致すると通信命令に含まれる要求を実行するものが記載されている。
【0004】
また、上記特許文献1の従来技術して、リーダライタは非接触ICカードの存在を確認するためスロット数を含む初期応答リクエストコマンドを非接触ICカードに送信し、非接触ICカードは特定時間から設けられるタイムスロットへ初期応答を返し、応答に用いるタイミングはカード自身が乱数で発生するものが記載されている(特許文献3)。
【0005】
また、上記特許文献2の従来技術して、R/W装置が複数枚の無線カードからの応答データ(レスポンス)を一度に受信できるようにするために、無線カードへのカードアドレス要求などのコマンドの送信に対する、各無線カードからの応答データを受信するための受信時間を所定数(たとえば、通信可能エリア内に同時に存在し得る無線カードの最大枚数)により区分し、各無線カードは、R/W装置からのカードアドレス要求などのコマンドの送信に対し、乱数値を発生させて受信時間区分の1つを選択し、それぞれに選択した受信時間区分内に、カードアドレスなどの応答データをR/W装置に返送するものが記載されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2002−203219号公報
【特許文献2】特開2003−168091号公報
【特許文献3】特開平9−6934号公報
【特許文献4】特開平10−222622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述したような従来技術においては、応答装置側で設定時間内に情報送出が完了しない場合あるいは完了した場合の次の起動信号受信時についてや、起動装置側で設定時間内に応答信号受信と情報の読み取りができない場合や通信の成功と失敗に応じたタイムスロット数の設定変更について考慮されていないので、ID等の情報を記憶した複数の応答装置の情報を効率的に読み取れることができないという課題があった。
【0007】
そこで、本願発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、ID等の情報を記憶した複数の応答装置の情報を効率的に読み取れるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような目的を達成するために、本願発明は、ID等の情報が記録された不揮発メモリ、起動信号を受けると当該起動信号により指定されたタイムスロット数の範囲の乱数を発生する乱数発生手段、当該乱数発生手段により発生された乱数より応答時間を決定し応答までの待ち時間として設定する応答時間設定手段、当該応答時間設定手段により設定された待ち時間を計数する計数手段、及び非接触通信手段を備え、前記待ち時間経過後に応答信号を送出すると共に通信完了許可時間を設定し、情報送出が設定時間経過しても完了しないときは次の起動信号を待つ複数の応答装置と、前記情報の読み取り時にタイムスロット数を含む起動信号を前記複数の応答装置に送出すると共に1タイムスロット時間を設定し、設定時間内に応答信号を受けることができた応答装置より順次情報を読み取り、読み取りができない応答装置が残った場合、再度起動信号を送出する起動装置より成ることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、前記応答装置は、前記通信が完了した場合、完了フラグをセットし、次に起動信号を受けても応答信号を送出しないことを特徴とするものである。
【0010】
一方、前記起動装置は、前記通信の成功と失敗の割合に応じて、前記起動信号により指定するタイムスロット数を設定することを特徴とするものである。
【0011】
具体的には、前記起動装置は、前記起動信号により指定するタイムスロット数を前記通信の成功の発生回数分削減し、通信失敗の発生回数分増加させることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、タイムスロット数に加えて、通信完了許可時間や1タイムスロット時間に基づき複数の応答装置と順次通信を行っているので、効率的な読み取り処理ができる。
【0013】
さらに、応答装置は、通信が完了した場合、完了フラグをセットして、次に起動信号を受けても応答信号を送出しないので、次に読み取り処理ができる確率を高めることができる。
【0014】
一方、起動装置は、通信の成功,失敗の割合に応じてタイムスロット数を設定しているので、通信の成功に応じてタイムスロット数を減らしたり、通信の失敗に応じてタイムスロット数を増加させて衝突の確率を低減させることにより、短時間に読み取り処理を行うことができる。
【0015】
具体的には、タイムスロット数を通信成功の発生回数分削減し、通信失敗の発生回数分増加させて衝突の確率を低減させるので、短時間に読み取り処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本願発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0017】
図1は、本願発明が適用される一例としての記録装置の構成図である。
【0018】
記録装置1には、図2に示す外観のプロセスカードリッジ2が着脱可能な形式で装着されていると共に、図示しないポリゴンモーター,ポリゴンミラー,Fθレンズ,レーザダイオード,ミラー等で構成される光学系1a、給紙コロ1b、記録紙3を収納する給紙カセット1c、転写ローラー1d、定着ローラー1e等が備えられている。
【0019】
プロセスカートリッジ2は、帯電ローラー2a、現像手段及びトナー収納部2b,クリーニング手段及び廃トナー回収部2c,感光体2d等が一体化されたカートリッジとして構成されている。
【0020】
次に、上記記録装置1の動作の概略を説明する。
【0021】
給紙カセット1cに収納された記録紙3は、給紙コロ1bにより感光体2dへ搬送される。感光体2bは、矢印で示す時計回り方向に回転駆動され、その際、帯電ローラー2aによって帯電され、光学系1aからレーザー光が照射されて、感光体2d上に静電潜像が形成される。
【0022】
この静電潜像は、現像手段及びトナー収納部2bを通る際に、トナーによって可視像化される。可視像は、転写ローラー1dにより、感光体2dへ搬送された記録紙3に転写され、可視像が転写された記録紙3は、定着ローラー1eに搬送され、記録紙3上の可視像が定着され、記録装置1の外部に排出される。
【0023】
図2は、上記記録装置1に着脱可能に装着されるプロセスカートリッジ2の斜視図である。
【0024】
プロセスカートリッジ2は、前述したように帯電ローラー2a、現像手段及びトナー収納部2b、クリーニング手段及び廃トナー回収部2c、感光体2dを一体化したものである。当該プロセスカートリッジ2の図示の所定部位には、ID(識別情報)等の情報が記憶されたIDチップ22が装着されている。
【0025】
上記IDチップ22の後述する不揮発メモリには、各プロセスカートリッジ2の制御に必要な情報,カートリッジID,製造年月日,使用開始年月日,リサイクル回数,コピー枚数,現在の年月日,図示しないトナー残量センサから得られたトナー残量情報等が記憶されている。
【0026】
図3は、上記プロセスカートリッジ2が装着された記録装置1のブロック構成図である。
【0027】
記録装置1は、CPU等から成る制御手段4と、この制御手段4にシステムバス5を介してそれぞれ接続される記憶手段6、記録手段7、通信手段8等より構成される。
【0028】
上記記録手段7には、上述したようなプロセスカートリッジ2が着脱可能に装着され、このプロセスカートリッジ2にはIDチップ22が装着される。
【0029】
図4は、本願発明の非接触通信方式の実施形態を示す概略ブロック構成図である。
【0030】
本願発明の応答装置は、複数のプロセスカートリッジ(A)2A〜(D)2Dから成り、起動装置はその読み取り装置10から成る。この読み取り装置10と各プロセスカートリッジ(A)2A〜(D)2Dはお互いの非接触通信手段により非接触通信を行う。
【0031】
図5は、上記各プロセスカートリッジ(A)2A〜(D)2Dに装着されるIDチップの一例を示すブロック構成図である。
【0032】
IDチップ22には、ID等の情報を記憶した不揮発メモリ221、乱数発生手段222、応答時間設定手段223、計数手段224、非接触通信手段225より構成される。
【0033】
図6は、読み取り装置10と複数のIDチップ22間の通信状態の一例を示すシーケンス図である。
【0034】
読み取り装置10は各IDチップ22に起動信号を送出し、IDチップ22から応答信号を受けると、IDチップ10からの読み取り動作を行う。
【0035】
複数のIDチップ22が破線で示すように同時に応答信号を返すと、信号が衝突してしまい応答信号が受けられなくなる(失敗)。
【0036】
読み取り装置10は、応答信号を受けたIDチップ22から順次読み取り動作を行っていく。応答信号の受信に失敗があると、再度起動信号を送出して、応答信号の受信動作と情報の読み取り動作を繰り返す。
【0037】
図7は、上記読み取り装置10と複数のIDチップ22間の通信状態を示すタイミングチャートである。
【0038】
通信はタイムスロットに分けて行われる。本例ではタイムスロットが8(0〜7)の場合である。
【0039】
先ず、読み取り装置10がタイムスロット数を含む起動信号を送出する。起動信号を受けたIDチップ22は、起動信号に含まれるタイムスロット数の範囲の中で、前記乱数発生手段222によって乱数を算出し、自身の応答するタイムスロットを決定し、タイムスロットがくると応答を返す。
【0040】
タイムスロットが一致してしまったIDチップ22(図の応答チップAとC)は、応答信号が衝突し通信が失敗する。
【0041】
読み取り装置10は、所定のタイムスロットが終了するまで、応答信号を待って順次読み取りを行う。その中に、通信失敗があると、再度起動信号を送出し、再度応答信号を待って、読み取り動作を行う。この動作は、全てのIDチップ22との通信が成功するまで行われる。
【0042】
図8は、各IDチップ22の動作を示すフローチャートである。
【0043】
動作開始時、先ず完了フラグ(flag)を“0”に初期化して(ステップS1)、起動信号を待つ(ステップS2のNoループ)。起動信号を受けると、完了フラグが“1”でないことを確認して(ステップS3のNo)、タイムスロット数を抽出し(ステップS4)、タイムスロット数の範囲内の乱数を算出する(ステップS6)。
【0044】
次に、算出された乱数より、応答待ち時間を算出し(ステップS6)、応答待ち時間Aを設定する(ステップS7)。そして、応答待ち時間Aが経過すると応答信号を送出し(ステップS8のYes→ステップS9)、データ通信完了許可時間Bを設定する(ステップS10)。
【0045】
そして、読み取り装置10からの指令により情報を送出し(ステップS11)、情報送出が完了すると完了フラグを“1”に設定して(ステップS12のYes→ステップS13)、前記ステップS2に戻る。
【0046】
応答信号送出後、情報送出が完了しない間にデータ通信完了許可時間Bが経過すると(ステップS12のNo→ステップS14のYes)、前記ステップS2に戻って次の起動信号の受信を待つ。
【0047】
次に、再度起動信号を受けた場合、前の起動信号による通信が完了していれば完了フラグが立っている(完了フラグ=1)ので何も行わない(ステップS2のYes→ステップS3のYesループ)。通信が失敗して完了フラグが立っていないと、再度起動信号に含まれるタイムスロット数を抽出し、通信を行う(ステップS3のNo→ステップS4以降)。
【0048】
図9は、読み取り装置10の動作を示すフローチャートである。
【0049】
読み取り装置10は読み取り動作が起動されると、タイムスロット数を選択し、カウンタにタイムスロット数を設定し、タイムスロット数を含む起動信号を送出する(ステップS21,S22,S23)。
【0050】
次に、1タイムスロット時間を設定して、応答信号を受信し、通信が成功するとIDチップ22からの情報を読み取る(ステップS24→ステップS25のYes→ステップS26のYes→ステップS27)。
【0051】
そして、1タイムスロット時間が経過するのを待って(ステップS28のNoループ)、1タイムスロット時間が経過すると次のタイムスロット数から“1”を引く(ステップS28のYes→ステップS29)。タイムスロット数から“1”を引いて“0”になると、エラーフラグが立っていなければ終了する(ステップS30のYes→ステップS31のNo)。
【0052】
前記ステップS25で、1タイムスロット時間が経過しても応答信号が得られない場合、再度1タイムスロット時間を設定して、次のIDチップ22からの応答信号を待つ(ステップS25のNo→ステップS32のYes→ステップS24,S25のループ)。
【0053】
また、ステップS25で応答信号を受信し、通信が失敗すると、エラーフラグを“1”に設定し、次のタイムスロット数に“1”を加え、再度1タイムスロット時間を設定して、次のIDチップからの応答信号を待つ(ステップS25のYes→ステップS26のNo→ステップS33,S34,S24,S25のループ)。
【0054】
また、前記ステップS30で、タイムスロット数から“1”を引いても“0”にならない場合は、再度タイムスロット時間を設定する(ステップS30のNo→ステップS24)。
【0055】
さらに、ステップS30でタイムスロット数から“1”を引いて“0”になっても、エラーフラグが立っている(エラーフラグ=1)場合はカウンタに次のタイムスロット数を設定し、再度次のタイムスロット数を含む起動信号を送出する(ステップS30のYes→ステップS31のYes→ステップS22,S23)。
【0056】
以上のように、本実施形態においては、タイムスロット数に加えて、通信完了許可時間や1タイムスロット時間に基づき複数のIDチップ22と順次通信を行っているので、効率的な読み取り処理ができる。
【0057】
また、IDチップ22は、通信が完了した場合、完了フラグをセットして、次に起動信号を受けても応答信号を送出しないので、次に読み取り処理ができる確率を高めることができる。
【0058】
さらに、タイムスロット数を通信成功の発生回数分削減し、通信失敗の発生回数分増加させて衝突の確率を低減させるので、短時間に読み取り処理を行うことができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、記録装置1のプロセスカートリッジ2を例に説明したが、他の非接触通信方式のIDチップ等を読み取る通信方式にも適用できる。また、複数の着信端末との非接触通信方式にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本願発明が適用される一例としての記録装置の構成図。
【図2】上記記録装置に着脱可能に装着されるプロセスカートリッジの斜視図。
【図3】上記プロセスカートリッジが装着された記録装置のブロック構成図。
【図4】本願発明の非接触通信方式の実施形態を示す概略ブロック構成図。
【図5】上記プロセスカートリッジに装着されるIDチップの一例を示すブロック構成図。
【図6】読み取り装置と複数のIDチップ間の通信状態の一例を示すシーケンス図。
【図7】上記読み取り装置と複数のIDチップ間の通信状態を示すタイミングチャート。
【図8】IDチップの動作を示すフローチャート。
【図9】読み取り装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0061】
1 記録装置
2,2A〜2D プロセスカートリッジ
4 制御手段
7 記録手段
22 IDチップ(応答装置)
221 不揮発メモリ
222 乱数発生手段
223 応答時間設定手段
224 係数手段
225 非接触通信手段























【特許請求の範囲】
【請求項1】
ID等の情報が記録された不揮発メモリ、起動信号を受けると当該起動信号により指定されたタイムスロット数の範囲の乱数を発生する乱数発生手段、当該乱数発生手段により発生された乱数より応答時間を決定し応答までの待ち時間として設定する応答時間設定手段、当該応答時間設定手段により設定された待ち時間を計数する計数手段、及び非接触通信手段を備え、前記待ち時間経過後に応答信号を送出すると共に通信完了許可時間を設定し、情報送出が設定時間経過しても完了しないときは次の起動信号を待つ複数の応答装置と、
前記情報の読み取り時にタイムスロット数を含む起動信号を前記複数の応答装置に送出すると共に1タイムスロット時間を設定し、設定時間内に応答信号を受けることができた応答装置より順次情報を読み取り、読み取りができない応答装置が残った場合、再度起動信号を送出する起動装置より成ることを特徴とする非接触通信方式。
【請求項2】
前記応答装置は、前記通信が完了した場合、完了フラグをセットし、次に起動信号を受けても応答信号を送出しないことを特徴とする請求項1記載の非接触通信方式。
【請求項3】
前記起動装置は、前記通信の成功と失敗の割合に応じて、前記起動信号により指定するタイムスロット数を設定することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の非接触通信方式。
【請求項4】
前記起動装置は、前記起動信号により指定するタイムスロット数を前記通信の成功の発生回数分削減し、通信失敗の発生回数分増加させることを特徴とする請求項3記載の非接触通信方式。


























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−262065(P2006−262065A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−76519(P2005−76519)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】