非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送方法
【課題】簡単な構成で特定の受電装置に対して選択的に電力伝送が可能な非接触電力伝送装置を提供する。
【解決手段】送電用共鳴コイル4a及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置1と、受電用共鳴コイル4b及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置2とを備えた非接触電力伝送装置。補助コイル10及び共振容量11により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置9を更に備え、送電補助装置を送電装置と対向させて配置して、送電用共鳴コイルと補助コイルの間に、受電用共鳴コイルが配置される受電空間を形成可能であり、共振周波数f3を調整することにより、送電共振器と補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整可能である。
【解決手段】送電用共鳴コイル4a及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置1と、受電用共鳴コイル4b及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置2とを備えた非接触電力伝送装置。補助コイル10及び共振容量11により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置9を更に備え、送電補助装置を送電装置と対向させて配置して、送電用共鳴コイルと補助コイルの間に、受電用共鳴コイルが配置される受電空間を形成可能であり、共振周波数f3を調整することにより、送電共振器と補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電コイルと受電コイル間の電力の伝送を、磁界共鳴を介して非接触(ワイヤレス)で行う非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送する方法として、電磁誘導(数100kHz)による電磁誘導型、電界または磁界共鳴を介したLC共振間伝送による電界・磁界共鳴型、電波(数GHz)によるマイクロ波送電型、あるいは可視光領域の電磁波(光)によるレーザ送電型が知られている。この中で既に実用化されているのは、電磁誘導型である。これは簡易な回路(トランス方式)で実現可能であるなどの優位性はあるが、送電距離が短いという課題もある。
【0003】
そこで、最近になって近距離伝送(〜2m)が可能な電界・磁界共鳴型の電力伝送が注目を浴びてきた。このうち、電界共鳴型の場合、伝送経路中に手などを入れると、人体が誘電体であるため、エネルギーを熱として吸収して誘電体損失を生じる。これに対して磁界共鳴型の場合、人体がエネルギーをほとんど吸収せず、誘電体損失を避けられる。この点から磁界共鳴型に対する注目度が上昇してきている。
【0004】
図7は、従来の磁界共鳴を利用した電力伝送装置の構成例の概略を示した正面図である。送電装置1は、ループコイル3aと送電用共鳴コイル4aを組み合わせた送電コイル、受電装置2は、ループコイル3bと受電用共鳴コイル4bを組み合わせた受電コイルを備えている。送電装置1のループコイル3aには高周波電力ドライバー5が接続され、交流電源(AC100V)6の電力を送電可能な高周波電力に変換して供給する。受電装置2のループコイル3bには、整流器7を介して負荷として例えば充電池8が接続されている。
【0005】
ループコイル3aは、高周波電力ドライバー5から供給される電気信号により励起され、電磁誘導により送電用共鳴コイル4aに電気信号を伝送する誘電素子である。送電用共鳴コイル4aはループコイル3aから出力された電気信号に基づいて磁界を発生させる。この送電用共鳴コイル4aは、共振周波数f0=1/{2π(LC)1/2}(Lは送電側の送電用共鳴コイル4aのインダクタンスで、Cは浮遊容量を示す)において磁界強度が最大となる。送電用共鳴コイル4aに供給された電力は、磁界共鳴により受電用共鳴コイル4bに非接触で伝送される。伝送された電力は、受電用共鳴コイル4bから電磁誘導によりループコイル3bへ伝送され、整流器7により整流されて充電池8に供給される。この場合、送電用共鳴コイル4aと受電装置2の共振周波数は同一に設定される。
【0006】
このような磁界共鳴型の非接触電力伝送において、一つの送電装置に対して複数の受電装置を設け、その中から特定の受電装置を選択的に充電する方法が、特許文献1に開示されている。すなわち、送電装置は共振周波数を可変する機構を有し、複数の受電装置はそれぞれ固有の共振周波数を有し、送電装置の共振周波数を変えることにより、それぞれ異なる固有の共振周波数を有する受電装置に対して選択的に送電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−63245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術においては、送電装置の共振周波数を個々の受電装置の固有の共振周波数に合わせるための可変機構として、例えば、コイルの線長をリレー開閉によって切り換えることにより共鳴コイルのインダクタンスを可変とする構造を用いる。あるいは、送電装置の共振周波数の可変機構として、アクチュエータにより物理的に共振コイルの全長を切り換える構造を用いる。
【0009】
更には、他の従来技術として、送電装置の交流電源の発振周波数を受電先の受電装置の共振周波数に切り換えることにより、それぞれ異なる固有の共振周波数を有する受電装置に対して選択的に送電することも検討されている。
【0010】
しかしながら、このような従来技術による送電装置の共振周波数の可変方法では、装置の構造及び制御が複雑化したり、送電装置の小型化が難しい問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術における問題点を解決するものであり、簡単な構成で特定の受電装置に対して選択的に電力伝送が可能な非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の非接触電力伝送装置は、基本構成として、送電用共鳴コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、受電用共鳴コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを備え、前記送電用共鳴コイルと前記受電用共鳴コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の非接触電力伝送装置は、補助コイル及び共振容量により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置を更に備え、前記送電補助装置を前記送電装置と対向させて配置して、前記送電用共鳴コイルと前記補助コイルの間に、前記受電用共鳴コイルが配置される受電空間を形成可能であり、前記共振周波数f3を調整することにより、前記送電共振器と前記補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明の非接触電力伝送方法は、送電用共鳴コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、受電用共鳴コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを用い、前記送電用共鳴コイルと前記受電用共鳴コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する方法であって、補助コイル及び共振容量により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置を更に用い、前記送電補助装置を前記送電装置と対向させて配置して、前記送電用共鳴コイルと前記補助コイルの間に形成された受電空間に前記受電用共鳴コイルを配置し、前記共振周波数f3を調整することにより、前記送電共振器と前記補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整して電力伝送を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送電装置と受電装置の他に送電補助装置を設け、送電装置と送電補助装置の間の受電空間に受電装置を配置することにより、送電側共振系の共振周波数を送電補助装置により調整することが可能であり、複数の受電装置のうちの、固有の共振周波数を持つ特定の受電装置に対して選択的に非接触電力伝送が可能となる。
【0016】
また、受電装置の受電共鳴コイルの位置によらず、電力伝送効率がほぼ平坦な距離依存性が得られる。更に、送電補助装置が無い場合に比べて大幅に電力伝送可能距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1における非接触電力伝送装置の構成を示す模式断面図
【図2A】同非接触電力伝送装置の送電側共振系に対するVNA(ベクトルネットワークアナライザ)による測定時の各要素装置の配置を示す模式断面図
【図2B】同非接触電力伝送装置の送電側共振系について、補助共振器の共振周波数f3に対する共振周波数ftの推移を示すグラフ
【図2C】同非接触電力伝送装置の送電側共振系について、補助共振器の共振周波数f3の3つの値の各々におけるVNA測定の出力を示す波形図
【図3A】同非接触電力伝送装置に対するVNA測定時の各要素装置の配置を示す模式断面図
【図3B】同非接触電力伝送装置について、補助共振器の共振周波数f3に対する電力伝送効率の依存性を示すグラフ
【図4A】同非接触電力伝送装置に対する送電共振器の共振周波数f1を変化させたVNA測定時の各要素装置の配置を示す模式断面図
【図4B】同非接触電力伝送装置について、電力伝送効率の送電共振器の共振周波数f1に対する依存性を示すグラフ
【図5A】実施の形態2における非接触電力伝送装置の構成を示す模式断面図
【図5B】同非接触電力伝送装置の平面図
【図5C】同非接触電力伝送装置について、図5Aの配置における一方の受電装置への電力伝送効率の送電共振器の共振周波数f1に対する依存性を示すグラフ
【図5D】同非接触電力伝送装置について、図5Aの配置における他方の受電装置への電力伝送効率の送電共振器の共振周波数f1に対する依存性を示すグラフ
【図6】実施の形態3における非接触電力伝送装置の構成を示す模式断面図
【図7】従来技術における非接触電力伝送装置の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の非接触電力伝送装置は、上記構成を基本として、以下のような態様を採ることができる。
【0019】
すなわち、前記送電補助装置の前記共振容量が可変コンデンサにより構成され、前記可変コンデンサを調整することにより前記補助共振器の共振周波数f3を調整可能である構成とすることができる。
【0020】
また、前記送電補助装置の前記共振容量がそれぞれ異なる容量値を有する複数の固定コンデンサにより構成され、前記補助コイルに選択的に接続される前記固定コンデンサを切り替えることにより、前記補助共振器の共振周波数f3を調整可能である構成とすることができる。
【0021】
また、前記送電用共鳴コイルの直径d1と、受電用共鳴コイルの直径d2と、補助コイルの直径d3が、d1>d2、かつd2<d3の関係を満足することが好ましい。この関係を保っていれば電力伝送可能距離の増大等の効果が得られる。特に、d1=d3、かつd1>d2の関係を満足することが好ましい。それにより、伝送効率特性(受電可能範囲の拡大など)の向上について大きな効果が得られる。もちろん、円形のコイルに限らず、四角形のコイル等をそれぞれ配置した形態でも、同様の効果は得られる。
【0022】
また、前記送電用共鳴コイルの中心軸と、前記補助コイルの中心軸と、前記受電用共鳴コイルの中心軸が、同一軸上にあることが好ましい。
【0023】
また、1台の前記送電装置に対して1台の前記受電装置が配置され、f1≠f3の条件で前記共振周波数f3が設定される構成とすることができる。この場合、f1<f3の条件で前記共振周波数f3が設定されることが好ましい。
【0024】
また、1台の前記送電装置に対して複数台の前記受電装置が配置され、複数台の前記受電装置の受電共振器の共振周波数f2はすべて異なり、かつf2≠f3である構成とすることができる。
【0025】
また、1台の前記送電装置に対して複数台の前記受電装置が配置され、複数台の前記受電装置の受電共振器の少なくとも一部は前記共振周波数f2が互いに異なり、かつf1≠f2である構成とすることができる。
【0026】
また、前記送電装置及び前記送電補助装置を保持し、前記送電装置と前記送電補助装置の相互の位置関係を、前記受電空間が形成されるように設定することが可能な筐体を備え、前記受電装置を前記受電空間に対して着脱可能に装着することが可能であり、少なくとも前記送電用共鳴コイル、前記補助コイル、及び前記受電用共鳴コイルの周囲が前記筐体内で電磁シールドされている状態で電力伝送を行う構成とすることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置の構成を示す断面図である。なお、図7に示した従来例の非接触電力伝送装置と同様の要素については、同一の参照番号を付して説明の繰り返しを簡略化する。ここでは、送電装置1と受電装置2がそれぞれ1つずつの場合に関して説明する。
【0029】
この非接触電力伝送装置は、従来例の送電装置1と受電装置2に送電補助装置9を加えて構成され、送電装置1と送電補助装置9の間の受電空間に受電装置2が配置された状態で非接触電力伝送が行われる。送電装置1は、交流電源(AC100V)の電力を送電可能な高周波電力に変換して電力を伝送し、受電装置2は電力を受け取る。送電補助装置9は、電力伝送時における、送電装置1に関わる共振系の共振周波数を、受電装置2の共振系の共振周波数に対して適切な関係に調整する機能を有する。
【0030】
送電装置1は、交流電源(AC100V)6の電力を送電可能な高周波電力に変換する高周波電力ドライバー5、送電用のループコイル3a、及び送電用共鳴コイル4aを備えている。場合によっては、送電用のループコイル3aは無くても良い。すなわち、他の周知の構成により給電することも可能である。図示は省略するが、送電用共鳴コイル4aには共振容量が接続されて、送電共振器を構成している。共振容量としては、回路素子として可変コンデンサーあるいは固定コンデンサを接続してもよいし、浮遊容量を利用した構成としてもよい。なお、以下の記載においては、送電共振器の単独での共振周波数f1を、図示との関係が判り易いように「送電装置1の共振周波数f1」と記述する。
【0031】
送電補助装置9は、補助コイル(空芯コイルなど)10と調整用コンデンサ11を有し、両要素により補助共振器が構成されている。調整用コンデンサ11は、容量値が可変である可変コンデンサにより構成され、以下の記載では、調整用バリコン11と称する。但し、調整用コンデンサ11としては、可変コンデンサに代えてそれぞれ異なる容量値を有する複数の固定コンデンサを用い、補助コイル10に対して選択的にいずれかの固定コンデンサを接続して、容量値を変更する構成とすることもできる。なお、以下の記載においては、補助共振器の単独での共振周波数f3を、図示との関係が判り易いように「送電補助装置9の共振周波数f3」と記述する。
【0032】
また図示は省略されているが、必要に応じて送電用共鳴コイル4aの反射電力、共振周波数、流れる電流、あるいは電圧などをモニターする手段や、送電装置1、受電装置2及び送電補助装置9の相互間で情報のやり取りをするための回路等を含むことができる。そのような構成を採用する場合は、調整用バリコン11の容量値を自動的に制御可能とすることもできる。
【0033】
受電装置2には、受電コイルとして受電用共鳴コイル4bとループコイル3bが組合わされて配置されている。ループコイル3bで得られた電力は、少なくとも整流回路7を経由して充電池8に蓄えられる。図示は省略するが、受電用共鳴コイル4bには共振容量が接続されて、受電共振器を構成している。共振容量としては、回路素子として可変コンデンサーあるいは固定コンデンサを接続してもよいし、浮遊容量を利用した構成としてもよい。なお、以下の記載においては、受電共振器の単独での共振周波数f2を、図示との関係が判り易いように「受電装置2の共振周波数f2」と記述する。
【0034】
充電池8として小型電池(コイン電池など)を用いた場合には、ループコイル3bと充電池8を重ね合わせて設置面積を小さくするのが好ましい(例えば、コイルオン電池など)。この場合、ループコイル3bから充電池8に磁束が漏れて渦電流が発生し損失(渦電流損)となるので、このループコイル3bと充電池8の間に、伝送時の共振周波数において高透磁率を有する電波吸収体を配置することが望ましい。また、トータルの厚さを薄くするために、電波吸収体を挟んでループコイル3bと充電池8とを密着させても良い。
【0035】
以上のように、送電補助装置9と送電装置1を対向させて配置することにより、送電用共鳴コイル4aと補助コイル10の間に受電空間が形成され、その受電空間に、受電装置2の受電用共鳴コイル4bが配置される。
【0036】
本実施の形態では、送電装置1におけるループコイル3aと送電用共鳴コイル4aは、図7に示したものと機能は同じであるが、薄型化のために、例えば、直径1mm程度のCuコイル(リッツ線、被覆あり)を同一平面上にスパイラル状に巻いた平面コイルを用いる(直径は70mmΦ)。更に受電装置2におけるループコイル3bと受電用共鳴コイル4bは、図7に示したものと機能は同じであるが、小型化のために、例えば、厚さ0.4mmの薄型プリント基板に、厚さ70μm程度のCu箔を同一平面上にスパイラル状に形成した薄膜コイルにより構成する(直径は20mmΦ)。このように送電側のコイルの直径を大きく、受電側の直径を小さくすることにより、電力伝送可能距離を伸ばすことができる。また、基板の厚さを薄くするために、基板の両面に受電用のループコイル3bと受電用共鳴コイル4bをそれぞれ別に形成しても良い。
【0037】
本実施の形態の非接触電力伝送装置の特徴である送電補助装置9の機能について、より詳細に説明する。上記構成によれば、送電用共鳴コイル4aと補助コイル10の結合により、送電用共鳴コイル4aを含む送電共振器と補助コイル10を含む補助共振器による共振系が構成され、以下の記載では、これを送電側共振系と称する。また、送電側共振系の共振周波数をftと記述する。
【0038】
本実施の形態の構成によれば、送電補助装置9が無い場合に比べて、電力伝送可能な距離が拡大する。これは、送電用共鳴コイル4aに対して補助コイル10を対向配置することにより、送電用共鳴コイル4aからの磁束の到達距離が長くなるためと思われる。これにより、送電装置1に対して受電装置2の受電に適する面が適正に対向していない等、送電用共鳴コイル4aに対して受電用共鳴コイル4bが適切に配置されていない場合であっても、受電装置2内に調整回路を設けることなく効率的な電力伝送が可能となる。
【0039】
一方、図1に示したような構成においては、送電用共鳴コイル4aと補助コイル10との距離が短い場合には両者間の結合状態が強くなり(密結合状態)、送電共振器と補助共振器による送電側共振系の共振周波数は二つに分かれる(双峰特性)。即ち、送電補助装置9を対向させることにより、送電用共鳴コイル4aの固有の共振周波数の両側に二つのピークが現れて移動する。これに対して、補助コイル10に接続される調整用バリコン11の容量値Cを調整して送電補助装置9の共振周波数f3を適切に設定することにより、送電側共振系の共振周波数ftを受電装置2の共振周波数f2と一致させることができる。これにより、送電用共鳴コイル4aからの電力伝送効率を実用上十分な程度に維持して、電力伝送可能距離などの特性を向上させることができる。
【0040】
調整用バリコン11の容量値Cの調整は、共振周波数ftが共振周波数f2と一致するように行うことが望ましいが、完全に一致させなくとも相応の効果が得られる。すなわち、送電側共振系の共振周波数ftのピークが、送電装置1の共振周波数f1と比べて、受電装置2の共振周波数f2に十分に近づくように、送電補助装置9の共振周波数f3を調整すればよい。すなわち、共振周波数ftをf2に一致させるとは、共振周波数ftがf2に一致している場合と実用上同等の電力伝送効率が得られる程度まで、共振周波数ftがf2に近接している場合も含む意味で用いられる。
【0041】
このような調整による効果を十分に得るためには、送電補助装置9を構成する補助コイル10は、送電用共鳴コイル4aの直径とほぼ同じとし、両者のコイルの中心軸もほぼ同軸に配置することが望ましい。但し、電力伝送可能距離の増大等の効果は、送電用共鳴コイル4aの直径をd1、受電用共鳴コイル4bの直径をd2、補助コイル10の直径をd3としたとき、d1>d2、かつd2<d3の関係を満足すれば、相応に得られる。これは、送電用共鳴コイル4aの直径d1が受電用共鳴コイル4bの直径d2よりも大きければ、補助コイル10との間の磁束を利用することができ、また、補助コイル10の直径d3が受電用共鳴コイル4bの直径d2よりも大きければ、送電用共鳴コイル4aとの間の磁束を利用することができるためである。
【0042】
ここで、補助コイル10の影響を調べるために、微小電力によるVNA(ベクトルネットワークアナライザ)測定を行った結果について説明する。送電装置1の共振周波数f1は、共振容量として設けられた固定コンデンサの容量値により設定した。具体的には、f1=12.1MHzとした。
【0043】
先ず、送電補助装置9の共振周波数f3を変化させたときの、送電側共振系の共振周波数の変化を調べた結果について説明する。図2Aに、各コイルの配置の一例を示す。すなわち、送電用共鳴コイル4aと補助コイル10を対向させて30mm長さの受電空間を形成するように配置し、ループコイル3aにVNAを接続した。共振周波数f3は、調整用バリコン11の調整により可変である。
【0044】
この配置におけるVNA測定結果を図2Bに示す。図2Bは、横軸に送電補助装置9の共振周波数f3をとり、縦軸にVNA測定時における送電側共振系の共振周波数ftの値をプロットしたものである。また、共振周波数f3が、9MHz、12.1MHz及び16MHzの場合におけるVNA測定の出力波形図を図2Cに示す。
【0045】
例えば、f3をf1と同じ共振周波数(12.1MHz)に調整した場合には、図2C(b)の波形図に示すように、12.1MHzをほぼ中心にして二つの共振周波数が現れる(密結合状態)。低周波側の左の共振周波数をftL、高周波側の右の共振周波数をftHと記述する。図2Bには、低周波側の共振周波数ftLに対応する特性線と、高周波側の共振周波数ftHに対応する特性線が記載されている。
【0046】
送電補助装置9の共振周波数f3を変化させていくと、低周波側の共振周波数ftLは徐々に高周波側へシフトして、最終的にはf1と同じ12.1MHzに近づいていき、図2C(c)に示すように、信号も大きくなってくる。高周波側の共振周波数ftHも段々と高周波側へシフトしていくものの、低周波側の共振周波数ftLとの差が大きくなっていき、信号レベルも小さくなりゼロに近づいていく。このように、補助共振器の単体での共振周波数f3を種々変化させることにより、送電側共振系の共振周波数ftを変化させることが可能となる。
【0047】
一方、共振周波数f3を低周波側へ変化させていくと、高周波側の共振周波数ftHが徐々に低周波側へシフトして、最終的にはf1と同じ12.1MHzに近づいてゆく。但し、信号は低周波側の共振周波数ftLの場合に比べると、図2C(a)に示すように、あまり大きくはならない。低周波側の共振周波数ftLも段々と低周波側へシフトしてゆき、高周波側の共振周波数ftHとの差が大きくなっていき、信号も小さくなりゼロに近づいていく。
【0048】
次に、図3Aに示す各コイルの配置により、送電補助装置9の共振周波数f3を変化させたときの電力伝送効率の変化を調べた結果を示す。図3Aの配置は、図2Aの配置における送電用共鳴コイル4aと補助コイル10の間の受電空間中に、受電用共鳴コイル4bとループコイル3bを配置したものである。ループコイル3a、3bにVNAを接続した。なお、ここで言う電力伝送効率とは、送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4b間での数値であり、回路などの効率は含まない。受電装置2の共振周波数はf2は、共振容量として設けられた固定コンデンサの容量値により設定し、具体的には、f2=f1=12.1MHzとした。
【0049】
この配置におけるVNA測定結果を図3Bに示す。図3Bには、低周波側の共振周波数ftLに対応する特性線と、高周波側の共振周波数ftHに対応する特性線が記載されている。図3Bから判るように、例えば、f1=f2=f3=12.1MHzの場合(矢印で示す)には、電力伝送効率は約44%と小さい。f3をこれよりも大きくしていくと、低周波側の共振周波数ftLに対応する電力伝送効率も大きくなっていく。f3=16MHzの場合には約64%の電力伝送効率が得られる。
【0050】
以上のように、送電補助装置9の共振周波数f3をf1及びf2よりも大きくすることにより、電力伝送時の共振周波数ftを共振周波数f2に近づけることができ、それにより、その時の電力伝送効率も大きくできる。
【0051】
一方、共振周波数f3を低周波側へ変化させていくと、高周波側の共振周波数ftHに対応する電力伝送効率が大きくなっていく。f3=5MHzの場合には約46%の電力伝送効率が得られる。これにより、送電補助装置9の共振周波数f3をf1及びf2よりも小さくすることにより、電力伝送時の共振周波数ftを共振周波数f2に近づけることができ、それにより、その時の電力伝送効率も大きくできる。但し、低周波側の共振周波数ftLに対応する電力伝送効率の最大領域に比べると、高周波側の共振周波数ftHに対応する電力伝送効率の最大領域における値は小さい。
【0052】
以上のことから、送電装置が1台で受電コイルも1台の場合には、電力伝送時における各装置の個々の共振周波数は、f1≠f3の関係となるように設定する。特に、f1<f3となる場合が、電力伝送効率の面から好ましい。受電装置2の共振周波数f2は、送電装置1の共振周波数f1と同じ方が好ましいが、場合によっては異なっていても良い。
【0053】
図2B及び図3Bのように得られた結果によれば、送電側共振系の共振周波数ftは、送電補助装置9の共振周波数f3の調整により、送電装置1の共振周波数f1の値に関わらず容易に変化させることができる。それにより、送電側共振系の共振周波数ftを、受電装置2の共振周波数f2に合わせることが容易である。
【0054】
そこで、図4Aに示す各コイルの配置により、送電装置1の共振周波数f1と、受電装置2の共振周波数f2とが異なった場合での特性を調べた。図4Aの配置は、図2Aの配置における送電用共鳴コイル4aと補助コイル10の間の受電空間中に、受電用共鳴コイル4bとループコイル3bを配置したものである。ループコイル3a、3bにVNAを接続した。
【0055】
ここでは、受電装置2の固有の共振周波数f2を11.85MHzで固定とし、送電装置1の共振周波数f1を変化させた。送電装置1の共振周波数f1を変化させるために、送電用共鳴コイル4aの両端に、送電共振器の共振容量である固定コンデンサとは別に可変コンデンサ(以下「バリコン」と記述する)12を接続した。このバリコン12を手動で調整することにより、送電装置1の共振周波数f1を変化させた。
【0056】
送電装置1の共振周波数f1は受電装置2の共振周波数f2である11.85MHzを基準に、±2MHzの範囲内で1MHz間隔で変化させた。そして、送電装置1の共振周波数f1の各々において、受電装置2の共振周波数f2での電力伝送効率が最大(共振周波数は11.85MHz)となるように、送電補助装置9の調整用バリコン11を操作して共振周波数f3を調整した。実験の結果を図4Bに示す。
【0057】
図4Bにおいて、横軸は送電装置1の共振周波数f1の値、縦軸は送電装置1と受電装置2間の電力伝送効率である。この図から、送電装置1の共振周波数f1と受電装置2の共振周波数f2とが同じ場合(f1=f2=11.85MHz)において電力伝送効率が最大となっていることが分かる。しかし、送電装置1の共振周波数f1を12.85MHzと1MHz大きくした場合(丸印)においても(f1≠f2)、電力伝送効率は50%以上と、大きな値が得られている。即ち、固有の共振周波数が異なる送電装置1と受電装置2を用いて電力伝送を行ったとしても、送電補助装置9を用いて送電側共振系の共振周波数ftを調整する(受電装置2の共振周波数f2に近づける)ことにより、高効率の電力伝送が可能なことが判る。
【0058】
なお、非接触電力伝送装置の構成としては、上述の実験とは異なり、送電装置1の共振周波数f1は固定であり、受電装置2の共振周波数f2が変化する。当然ながら、この場合も、送電補助装置9を用いて送電側共振系の共振周波数ftを調整する(受電装置2の共振周波数f2に近づける)ことにより、高効率の電力伝送が可能である。
【0059】
<実施の形態2>
実施の形態2における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置について、図5A〜5Dを参照して説明する。本実施の形態では、実施の形態1の場合と同様の作用に基づく構成を用いる。すなわち、図4Aに示した配置と同様、送電装置1と送電補助装置9の間の受電空間中に、受電装置の受電用共鳴コイル4bとループコイル3bが配置される。従って、図4Aに示した配置の説明で述べた要素と同様の要素については、同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0060】
図5A、5Bには、各コイルの配置の一例が示される。図5Aは模式断面図である。図5Bは、図5Aにおける受電用共鳴コイル4bの左側から調整コイル10の方向を見た正面図である。この構成では、2つの受電装置A、B(図示せず)における受電用共鳴コイル4bA、4bBが、受電空間内に並列に配置されている。受電用共鳴コイル4bA、4bBは十分に小さいので、送電用共鳴コイル4aや調整コイル10の円環中に、二つの受電用共鳴コイル4bA、4bBが包囲された状態に配置されている。
【0061】
本実施の形態の構成を用いれば、送電装置1を含む送電側共振系の共振周波数ftを、送電補助装置9を用いて受電装置A、Bの共振周波数に合わせることが可能である。受電装置が2台を超える複数台配置される場合も、同様な効果を得ることができる。受電用共鳴コイル4bA、4bBを含む受電共振器は、共振周波数が同一であってもよいし、互いに異なる共振周波数を有するように構成されてもよい。
【0062】
共振周波数が略同一の受電装置A、Bを用いた場合には、同時の電力伝送による充電が可能であり、共振周波数が異なる受電装置A、Bを用いた場合には、選択的な電力伝送による充電が可能となる。以下の説明では、固有の共振周波数が異なる二つの受電装置を用いた場合を例として、一つの送電装置1による選択的な電力伝送の動作について説明する。図5A、5Bに示した構成において、受電用共鳴コイル4bAを含む受電装置Aの固有の共振周波数f2Aを12MHz、受電用共鳴コイル4bBを含む受電装置Bの固有の共振周波数f2Bを13.6MHzに設定する場合を例として説明する。
【0063】
図5A、5Bに示した状態に配置した後、まず受電用共鳴コイル4bBを無負荷の状態として、受電用共鳴コイル4bAにのみVNAを接続した。それにより、送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4bA間で電力伝送特性を調べた。ここでは図4A、4Bを参照して説明した方法と同様の方法で測定を行った。
【0064】
まず、受電装置Aの固有の共振周波数f2Aを12MHzで固定とし、送電装置1の共振周波数f1を変化させた。送電装置1の共振周波数f1を変化させるために、送電用共鳴コイル4aの両端に、送電共振器の共振容量である固定コンデンサとは別にバリコン12を接続した。このバリコン12を手動で調整することにより、送電装置1の共振周波数f1を変化させた。そして、送電装置1の共振周波数f1の各々において、受電装置Aの共振周波数f2Aでの電力伝送効率が最大(共振周波数は12MHz)となるように、調整用バリコン11を操作して送電補助装置9の共振周波数f3を調整した。実験の結果を図5Cに示す。
【0065】
図5Cにおいて、横軸は送電装置1の共振周波数f1の値、縦軸は送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4b間の電力伝送効率である。この図から、送電装置1の共振周波数f1と受電装置Aの共振周波数f2Aとが同じ場合(f1=f2=12MHz)において電力伝送効率が最大となっていることが分かる。但し、f2≠f3である。
【0066】
一方、送電装置1の共振周波数f1を13MHzと1MHz大きくした場合においても(f1≠f2)、電力伝送効率は60%以上と、大きな値が得られている。即ち、固有の共振周波数が異なる送電装置1と受電装置Aを用いて電力伝送を行った場合に、送電補助装置9を用いて送電側共振系の共振周波数ftを調整する(受電装置Aの共振周波数f2Aに近づける)ことにより、高効率の電力伝送が可能なことが判る。但し、f2≠f3である。
【0067】
次に、送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4bB間での電力伝送特性を調べるために、受電用共鳴コイル4bAを無負荷の状態として、受電用共鳴コイル4bBにのみVNAを接続した。即ち、受電用共鳴コイル4bBの固有の共振周波数f2Bを13.6MHzで固定とし、送電装置1の共振周波数f1をバリコン12により変化させた。そして、送電装置1の共振周波数f1の各々において、受電装置Bの共振周波数f2Bでの電力伝送効率が最大(共振周波数は13.6MHz)となるように、送電補助装置9の調整用バリコン11を操作して送電補助装置9の共振周波数f3を調整した。実験の結果を図5Dに示す。
【0068】
図5Dにおいて、横軸は送電装置1の共振周波数f1の値、縦軸は送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4b間の電力伝送効率である。この図から、送電装置1の共振周波数f1と受電装置Bの共振周波数f2Bとが同じ場合(f1=f2=13.6MHz)において電力伝送効率が最大となっていることが分かる。しかし、送電装置1の共振周波数f1が受電装置Bの共振周波数f2Bと異なっていても、(f1≠f2)、電力伝送効率は60%以上と、大きな値が得られている。即ち、固有の共振周波数が異なる送電装置1と受電装置Bを用いて電力伝送を行った場合に、送電補助装置9を用いて送電側共振系の共振周波数ftを調整する(受電装置Bの共振周波数f2Bに近づける)ことにより、高効率の電力伝送が可能なことが判る。
【0069】
以上の結果から、送電装置1の共振周波数f1を13.2MHzに固定し(図の丸印)、受電装置Aの共振周波数f2Aまたは受電装置Bの共振周波数f2Bに合わせることにより、どちらの場合でも電力伝送効率60%以上を得ることができることが判る。この場合には、送電装置1の共振周波数f1と、受電装置A、Bの共振周波数f2A、f2Bが異なっても良い(f1≠f2A≠f2B)。
【0070】
以上のように、本実施の形態の非接触電力伝送装置によれば、例えば、受電装置Aの固有の共振周波数f2A=12MHzと受電装置Bの固有の共振周波数f2B=13.6MHzの間の共振周波数となるように送電装置1の共振周波数f1を設定し、送電補助装置9の調整用バリコン11を受電装置A、Bの一方の共振周波数に合わせることにより、選択的な電力伝送が可能である。
【0071】
本実施の形態により、一つの送電装置に対して複数の受電装置を配置し、その受電装置の中から特定の一つの受電装置のみに電力伝送を行う選択的な電力伝送の場合、例えば受電装置が二つの場合における各装置の個々の共振周波数の値は、例えば次の通りに設定する。すなわち、それぞれの共振周波数はf2A≠f2B≠f3の関係に設定する。送電装置1のの共振周波数f1は、受電装置の共振周波数f2A及びf2Bのどちらかと同じでもかまわないが、異なっている方が送電装置1の共振周波数f1を調整しなくてすむために好ましい。この場合、送電装置1の共振周波数f1は、受電装置A、Bの共振周波数f2Aとf2Bの間の周波数帯域にあることが望ましい。
【0072】
なお、実施の形態において、送電装置に対向して複数の受電装置を並列に配置する場合、種々の受電装置の共振コイルが重ならないようにすることが望ましい。
【0073】
<実施の形態3>
図6は、実施の形態3における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置を示す断面図である。この非接触電力伝送装置は、化粧箱タイプ(あるいはオルゴール型)をした筐体13と、開閉自在の蓋14を備え、筐体13の下側の内部に送電装置1が保持され、蓋14に送電補助装置9が保持されている。送電装置1の上部に受電装置2を置くための台座15が設けられ、その台座15上に受電装置2(例えば、携帯電話や補聴器など)を装着することができる。そして蓋14を閉じることにより、送電装置1と送電補助装置9の間に受電装置2が配置される。この形態で非接触電力伝送が行われる。
【0074】
筐体13には、交流電源(AC100V)から受けた電力を電力伝送可能な電力に変換する高周波電力ドライバー5、インピーダンス整合を取るための制御回路16等が設けられている。また、送電装置1と送電補助装置9が配置された領域を包囲して、電磁シールド材17が配置されている。蓋14を閉じた状態では、送電装置1と送電補助装置9及び受電装置2の周囲は完全に電磁シールドされることになり、電磁波が人体に影響することが防止され、安全である。
【0075】
磁界共鳴により電力を伝送する場合、実用に際して伝送周波数としては数MHz〜数100MHz帯を活用することが考えられる。電界共鳴型に比べて人体への影響が少ないとはいえ、送電パワーの値によっては人体への影響も考慮しなければならない。そこで本実施の形態のように、非接触電力伝送中に電磁波を外部に漏らさないために、送受電空間を囲むようにコイル全体を電磁シールドすることが望ましい。即ち、化粧箱タイプの筐体においては、電磁気的に閉じられた空間内に、送電装置1及び受電装置2の共鳴コイルや、送電補助装置9の補助コイルを配置し、外部への電磁波の漏洩を防ぐ構成とする。
【0076】
筐体13の表面にはディスプレイやLEDなどの表示器18が必要に応じて設けられている。主に、携帯電話などの充電状態やメールなどの着信情報を表示するためである。また、インターロック機能用の突起19が設けられ、蓋14を完全に閉めた状態でないと送電が始まらないように構成されている。
【0077】
共鳴型電力伝送においては、共振周波数において磁界強度が最大となる。また制御回路16は、受電装置2や送電補助装置9との情報のやり取りをするための回路、あるいは受電装置2の位置情報を得るための回路等を含んでもよい。
【0078】
本実施の形態の非接触電力伝送装置は、送電補助装置9に設けられている調整用バリコンを調整して、電力伝送時における送電側共振系と受電共振器の共振周波数を整合させることが特徴である。予め蓋14を閉じた状態で、補助コイル10が所定の位置に配置され、その状態で送電側共振系の共振周波数と受電共振器の共振周波数が同じになるように調整用バリコンを調整しておくと、蓋14をした時に直ちに充電を開始することが可能である。あるいは、蓋14を閉じた後に、調整用バリコンが自動、あるいは手動で調整される構成とすることもできる。
【0079】
本実施の形態では、化粧箱タイプの筐体13を用いたが、他に、ボックスタイプや机の引き出し型などでも同様な効果が得られる。すなわち、化粧箱タイプの場合、蓋をした状態では外部との電波のやり取りが難しいので、その場合には、受電装置の挿入口が開いたボックスタイプの筐体とし、この挿入口以外はすべて電磁シールドを設けた構成とすればよい。ただし、ボックスタイプでは受電装置の挿入口があるために、外部への電磁波の漏洩が多少あると考えられるが、この挿入口に電波吸収体のシートを取り付けるなどすれば、人体への影響は低減される。
【0080】
また、以上の実施の形態では、受電装置2として携帯電話などの小型の装置を例として説明したが、電気自動車などの大型の受電装置にも本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の非接触電力伝送装置は、特定の受電装置に対して選択的に非接触電力伝送が可能であり、また、受電器が小さい場合においても良好な電力伝送を長い距離まで安定にできるので、携帯電話や補聴器等の小型機器、TVや電気自動車などへの非接触電力伝送に好適である。
【符号の説明】
【0082】
1 送電装置
2 受電装置
3a、3b ループコイル
4a 送電用共鳴コイル
4b、4bA、4bB 受電用共鳴コイル
5 高周波電力ドライバー
6 交流電源
7 整流回路
8 充電池
9 送電補助装置
10 補助コイル
11 調整用コンデンサ(調整用バリコン)
12 バリコン
13 筐体
14 蓋
15 台座
16 制御回路
17 電磁シールド材
18 表示器
19 インターロック用突起
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電コイルと受電コイル間の電力の伝送を、磁界共鳴を介して非接触(ワイヤレス)で行う非接触電力伝送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触で電力を伝送する方法として、電磁誘導(数100kHz)による電磁誘導型、電界または磁界共鳴を介したLC共振間伝送による電界・磁界共鳴型、電波(数GHz)によるマイクロ波送電型、あるいは可視光領域の電磁波(光)によるレーザ送電型が知られている。この中で既に実用化されているのは、電磁誘導型である。これは簡易な回路(トランス方式)で実現可能であるなどの優位性はあるが、送電距離が短いという課題もある。
【0003】
そこで、最近になって近距離伝送(〜2m)が可能な電界・磁界共鳴型の電力伝送が注目を浴びてきた。このうち、電界共鳴型の場合、伝送経路中に手などを入れると、人体が誘電体であるため、エネルギーを熱として吸収して誘電体損失を生じる。これに対して磁界共鳴型の場合、人体がエネルギーをほとんど吸収せず、誘電体損失を避けられる。この点から磁界共鳴型に対する注目度が上昇してきている。
【0004】
図7は、従来の磁界共鳴を利用した電力伝送装置の構成例の概略を示した正面図である。送電装置1は、ループコイル3aと送電用共鳴コイル4aを組み合わせた送電コイル、受電装置2は、ループコイル3bと受電用共鳴コイル4bを組み合わせた受電コイルを備えている。送電装置1のループコイル3aには高周波電力ドライバー5が接続され、交流電源(AC100V)6の電力を送電可能な高周波電力に変換して供給する。受電装置2のループコイル3bには、整流器7を介して負荷として例えば充電池8が接続されている。
【0005】
ループコイル3aは、高周波電力ドライバー5から供給される電気信号により励起され、電磁誘導により送電用共鳴コイル4aに電気信号を伝送する誘電素子である。送電用共鳴コイル4aはループコイル3aから出力された電気信号に基づいて磁界を発生させる。この送電用共鳴コイル4aは、共振周波数f0=1/{2π(LC)1/2}(Lは送電側の送電用共鳴コイル4aのインダクタンスで、Cは浮遊容量を示す)において磁界強度が最大となる。送電用共鳴コイル4aに供給された電力は、磁界共鳴により受電用共鳴コイル4bに非接触で伝送される。伝送された電力は、受電用共鳴コイル4bから電磁誘導によりループコイル3bへ伝送され、整流器7により整流されて充電池8に供給される。この場合、送電用共鳴コイル4aと受電装置2の共振周波数は同一に設定される。
【0006】
このような磁界共鳴型の非接触電力伝送において、一つの送電装置に対して複数の受電装置を設け、その中から特定の受電装置を選択的に充電する方法が、特許文献1に開示されている。すなわち、送電装置は共振周波数を可変する機構を有し、複数の受電装置はそれぞれ固有の共振周波数を有し、送電装置の共振周波数を変えることにより、それぞれ異なる固有の共振周波数を有する受電装置に対して選択的に送電することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−63245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術においては、送電装置の共振周波数を個々の受電装置の固有の共振周波数に合わせるための可変機構として、例えば、コイルの線長をリレー開閉によって切り換えることにより共鳴コイルのインダクタンスを可変とする構造を用いる。あるいは、送電装置の共振周波数の可変機構として、アクチュエータにより物理的に共振コイルの全長を切り換える構造を用いる。
【0009】
更には、他の従来技術として、送電装置の交流電源の発振周波数を受電先の受電装置の共振周波数に切り換えることにより、それぞれ異なる固有の共振周波数を有する受電装置に対して選択的に送電することも検討されている。
【0010】
しかしながら、このような従来技術による送電装置の共振周波数の可変方法では、装置の構造及び制御が複雑化したり、送電装置の小型化が難しい問題があった。
【0011】
本発明は、このような従来技術における問題点を解決するものであり、簡単な構成で特定の受電装置に対して選択的に電力伝送が可能な非接触電力伝送装置及び非接触電力伝送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の非接触電力伝送装置は、基本構成として、送電用共鳴コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、受電用共鳴コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを備え、前記送電用共鳴コイルと前記受電用共鳴コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明の非接触電力伝送装置は、補助コイル及び共振容量により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置を更に備え、前記送電補助装置を前記送電装置と対向させて配置して、前記送電用共鳴コイルと前記補助コイルの間に、前記受電用共鳴コイルが配置される受電空間を形成可能であり、前記共振周波数f3を調整することにより、前記送電共振器と前記補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明の非接触電力伝送方法は、送電用共鳴コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、受電用共鳴コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを用い、前記送電用共鳴コイルと前記受電用共鳴コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する方法であって、補助コイル及び共振容量により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置を更に用い、前記送電補助装置を前記送電装置と対向させて配置して、前記送電用共鳴コイルと前記補助コイルの間に形成された受電空間に前記受電用共鳴コイルを配置し、前記共振周波数f3を調整することにより、前記送電共振器と前記補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整して電力伝送を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、送電装置と受電装置の他に送電補助装置を設け、送電装置と送電補助装置の間の受電空間に受電装置を配置することにより、送電側共振系の共振周波数を送電補助装置により調整することが可能であり、複数の受電装置のうちの、固有の共振周波数を持つ特定の受電装置に対して選択的に非接触電力伝送が可能となる。
【0016】
また、受電装置の受電共鳴コイルの位置によらず、電力伝送効率がほぼ平坦な距離依存性が得られる。更に、送電補助装置が無い場合に比べて大幅に電力伝送可能距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1における非接触電力伝送装置の構成を示す模式断面図
【図2A】同非接触電力伝送装置の送電側共振系に対するVNA(ベクトルネットワークアナライザ)による測定時の各要素装置の配置を示す模式断面図
【図2B】同非接触電力伝送装置の送電側共振系について、補助共振器の共振周波数f3に対する共振周波数ftの推移を示すグラフ
【図2C】同非接触電力伝送装置の送電側共振系について、補助共振器の共振周波数f3の3つの値の各々におけるVNA測定の出力を示す波形図
【図3A】同非接触電力伝送装置に対するVNA測定時の各要素装置の配置を示す模式断面図
【図3B】同非接触電力伝送装置について、補助共振器の共振周波数f3に対する電力伝送効率の依存性を示すグラフ
【図4A】同非接触電力伝送装置に対する送電共振器の共振周波数f1を変化させたVNA測定時の各要素装置の配置を示す模式断面図
【図4B】同非接触電力伝送装置について、電力伝送効率の送電共振器の共振周波数f1に対する依存性を示すグラフ
【図5A】実施の形態2における非接触電力伝送装置の構成を示す模式断面図
【図5B】同非接触電力伝送装置の平面図
【図5C】同非接触電力伝送装置について、図5Aの配置における一方の受電装置への電力伝送効率の送電共振器の共振周波数f1に対する依存性を示すグラフ
【図5D】同非接触電力伝送装置について、図5Aの配置における他方の受電装置への電力伝送効率の送電共振器の共振周波数f1に対する依存性を示すグラフ
【図6】実施の形態3における非接触電力伝送装置の構成を示す模式断面図
【図7】従来技術における非接触電力伝送装置の構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の非接触電力伝送装置は、上記構成を基本として、以下のような態様を採ることができる。
【0019】
すなわち、前記送電補助装置の前記共振容量が可変コンデンサにより構成され、前記可変コンデンサを調整することにより前記補助共振器の共振周波数f3を調整可能である構成とすることができる。
【0020】
また、前記送電補助装置の前記共振容量がそれぞれ異なる容量値を有する複数の固定コンデンサにより構成され、前記補助コイルに選択的に接続される前記固定コンデンサを切り替えることにより、前記補助共振器の共振周波数f3を調整可能である構成とすることができる。
【0021】
また、前記送電用共鳴コイルの直径d1と、受電用共鳴コイルの直径d2と、補助コイルの直径d3が、d1>d2、かつd2<d3の関係を満足することが好ましい。この関係を保っていれば電力伝送可能距離の増大等の効果が得られる。特に、d1=d3、かつd1>d2の関係を満足することが好ましい。それにより、伝送効率特性(受電可能範囲の拡大など)の向上について大きな効果が得られる。もちろん、円形のコイルに限らず、四角形のコイル等をそれぞれ配置した形態でも、同様の効果は得られる。
【0022】
また、前記送電用共鳴コイルの中心軸と、前記補助コイルの中心軸と、前記受電用共鳴コイルの中心軸が、同一軸上にあることが好ましい。
【0023】
また、1台の前記送電装置に対して1台の前記受電装置が配置され、f1≠f3の条件で前記共振周波数f3が設定される構成とすることができる。この場合、f1<f3の条件で前記共振周波数f3が設定されることが好ましい。
【0024】
また、1台の前記送電装置に対して複数台の前記受電装置が配置され、複数台の前記受電装置の受電共振器の共振周波数f2はすべて異なり、かつf2≠f3である構成とすることができる。
【0025】
また、1台の前記送電装置に対して複数台の前記受電装置が配置され、複数台の前記受電装置の受電共振器の少なくとも一部は前記共振周波数f2が互いに異なり、かつf1≠f2である構成とすることができる。
【0026】
また、前記送電装置及び前記送電補助装置を保持し、前記送電装置と前記送電補助装置の相互の位置関係を、前記受電空間が形成されるように設定することが可能な筐体を備え、前記受電装置を前記受電空間に対して着脱可能に装着することが可能であり、少なくとも前記送電用共鳴コイル、前記補助コイル、及び前記受電用共鳴コイルの周囲が前記筐体内で電磁シールドされている状態で電力伝送を行う構成とすることができる。
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0028】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置の構成を示す断面図である。なお、図7に示した従来例の非接触電力伝送装置と同様の要素については、同一の参照番号を付して説明の繰り返しを簡略化する。ここでは、送電装置1と受電装置2がそれぞれ1つずつの場合に関して説明する。
【0029】
この非接触電力伝送装置は、従来例の送電装置1と受電装置2に送電補助装置9を加えて構成され、送電装置1と送電補助装置9の間の受電空間に受電装置2が配置された状態で非接触電力伝送が行われる。送電装置1は、交流電源(AC100V)の電力を送電可能な高周波電力に変換して電力を伝送し、受電装置2は電力を受け取る。送電補助装置9は、電力伝送時における、送電装置1に関わる共振系の共振周波数を、受電装置2の共振系の共振周波数に対して適切な関係に調整する機能を有する。
【0030】
送電装置1は、交流電源(AC100V)6の電力を送電可能な高周波電力に変換する高周波電力ドライバー5、送電用のループコイル3a、及び送電用共鳴コイル4aを備えている。場合によっては、送電用のループコイル3aは無くても良い。すなわち、他の周知の構成により給電することも可能である。図示は省略するが、送電用共鳴コイル4aには共振容量が接続されて、送電共振器を構成している。共振容量としては、回路素子として可変コンデンサーあるいは固定コンデンサを接続してもよいし、浮遊容量を利用した構成としてもよい。なお、以下の記載においては、送電共振器の単独での共振周波数f1を、図示との関係が判り易いように「送電装置1の共振周波数f1」と記述する。
【0031】
送電補助装置9は、補助コイル(空芯コイルなど)10と調整用コンデンサ11を有し、両要素により補助共振器が構成されている。調整用コンデンサ11は、容量値が可変である可変コンデンサにより構成され、以下の記載では、調整用バリコン11と称する。但し、調整用コンデンサ11としては、可変コンデンサに代えてそれぞれ異なる容量値を有する複数の固定コンデンサを用い、補助コイル10に対して選択的にいずれかの固定コンデンサを接続して、容量値を変更する構成とすることもできる。なお、以下の記載においては、補助共振器の単独での共振周波数f3を、図示との関係が判り易いように「送電補助装置9の共振周波数f3」と記述する。
【0032】
また図示は省略されているが、必要に応じて送電用共鳴コイル4aの反射電力、共振周波数、流れる電流、あるいは電圧などをモニターする手段や、送電装置1、受電装置2及び送電補助装置9の相互間で情報のやり取りをするための回路等を含むことができる。そのような構成を採用する場合は、調整用バリコン11の容量値を自動的に制御可能とすることもできる。
【0033】
受電装置2には、受電コイルとして受電用共鳴コイル4bとループコイル3bが組合わされて配置されている。ループコイル3bで得られた電力は、少なくとも整流回路7を経由して充電池8に蓄えられる。図示は省略するが、受電用共鳴コイル4bには共振容量が接続されて、受電共振器を構成している。共振容量としては、回路素子として可変コンデンサーあるいは固定コンデンサを接続してもよいし、浮遊容量を利用した構成としてもよい。なお、以下の記載においては、受電共振器の単独での共振周波数f2を、図示との関係が判り易いように「受電装置2の共振周波数f2」と記述する。
【0034】
充電池8として小型電池(コイン電池など)を用いた場合には、ループコイル3bと充電池8を重ね合わせて設置面積を小さくするのが好ましい(例えば、コイルオン電池など)。この場合、ループコイル3bから充電池8に磁束が漏れて渦電流が発生し損失(渦電流損)となるので、このループコイル3bと充電池8の間に、伝送時の共振周波数において高透磁率を有する電波吸収体を配置することが望ましい。また、トータルの厚さを薄くするために、電波吸収体を挟んでループコイル3bと充電池8とを密着させても良い。
【0035】
以上のように、送電補助装置9と送電装置1を対向させて配置することにより、送電用共鳴コイル4aと補助コイル10の間に受電空間が形成され、その受電空間に、受電装置2の受電用共鳴コイル4bが配置される。
【0036】
本実施の形態では、送電装置1におけるループコイル3aと送電用共鳴コイル4aは、図7に示したものと機能は同じであるが、薄型化のために、例えば、直径1mm程度のCuコイル(リッツ線、被覆あり)を同一平面上にスパイラル状に巻いた平面コイルを用いる(直径は70mmΦ)。更に受電装置2におけるループコイル3bと受電用共鳴コイル4bは、図7に示したものと機能は同じであるが、小型化のために、例えば、厚さ0.4mmの薄型プリント基板に、厚さ70μm程度のCu箔を同一平面上にスパイラル状に形成した薄膜コイルにより構成する(直径は20mmΦ)。このように送電側のコイルの直径を大きく、受電側の直径を小さくすることにより、電力伝送可能距離を伸ばすことができる。また、基板の厚さを薄くするために、基板の両面に受電用のループコイル3bと受電用共鳴コイル4bをそれぞれ別に形成しても良い。
【0037】
本実施の形態の非接触電力伝送装置の特徴である送電補助装置9の機能について、より詳細に説明する。上記構成によれば、送電用共鳴コイル4aと補助コイル10の結合により、送電用共鳴コイル4aを含む送電共振器と補助コイル10を含む補助共振器による共振系が構成され、以下の記載では、これを送電側共振系と称する。また、送電側共振系の共振周波数をftと記述する。
【0038】
本実施の形態の構成によれば、送電補助装置9が無い場合に比べて、電力伝送可能な距離が拡大する。これは、送電用共鳴コイル4aに対して補助コイル10を対向配置することにより、送電用共鳴コイル4aからの磁束の到達距離が長くなるためと思われる。これにより、送電装置1に対して受電装置2の受電に適する面が適正に対向していない等、送電用共鳴コイル4aに対して受電用共鳴コイル4bが適切に配置されていない場合であっても、受電装置2内に調整回路を設けることなく効率的な電力伝送が可能となる。
【0039】
一方、図1に示したような構成においては、送電用共鳴コイル4aと補助コイル10との距離が短い場合には両者間の結合状態が強くなり(密結合状態)、送電共振器と補助共振器による送電側共振系の共振周波数は二つに分かれる(双峰特性)。即ち、送電補助装置9を対向させることにより、送電用共鳴コイル4aの固有の共振周波数の両側に二つのピークが現れて移動する。これに対して、補助コイル10に接続される調整用バリコン11の容量値Cを調整して送電補助装置9の共振周波数f3を適切に設定することにより、送電側共振系の共振周波数ftを受電装置2の共振周波数f2と一致させることができる。これにより、送電用共鳴コイル4aからの電力伝送効率を実用上十分な程度に維持して、電力伝送可能距離などの特性を向上させることができる。
【0040】
調整用バリコン11の容量値Cの調整は、共振周波数ftが共振周波数f2と一致するように行うことが望ましいが、完全に一致させなくとも相応の効果が得られる。すなわち、送電側共振系の共振周波数ftのピークが、送電装置1の共振周波数f1と比べて、受電装置2の共振周波数f2に十分に近づくように、送電補助装置9の共振周波数f3を調整すればよい。すなわち、共振周波数ftをf2に一致させるとは、共振周波数ftがf2に一致している場合と実用上同等の電力伝送効率が得られる程度まで、共振周波数ftがf2に近接している場合も含む意味で用いられる。
【0041】
このような調整による効果を十分に得るためには、送電補助装置9を構成する補助コイル10は、送電用共鳴コイル4aの直径とほぼ同じとし、両者のコイルの中心軸もほぼ同軸に配置することが望ましい。但し、電力伝送可能距離の増大等の効果は、送電用共鳴コイル4aの直径をd1、受電用共鳴コイル4bの直径をd2、補助コイル10の直径をd3としたとき、d1>d2、かつd2<d3の関係を満足すれば、相応に得られる。これは、送電用共鳴コイル4aの直径d1が受電用共鳴コイル4bの直径d2よりも大きければ、補助コイル10との間の磁束を利用することができ、また、補助コイル10の直径d3が受電用共鳴コイル4bの直径d2よりも大きければ、送電用共鳴コイル4aとの間の磁束を利用することができるためである。
【0042】
ここで、補助コイル10の影響を調べるために、微小電力によるVNA(ベクトルネットワークアナライザ)測定を行った結果について説明する。送電装置1の共振周波数f1は、共振容量として設けられた固定コンデンサの容量値により設定した。具体的には、f1=12.1MHzとした。
【0043】
先ず、送電補助装置9の共振周波数f3を変化させたときの、送電側共振系の共振周波数の変化を調べた結果について説明する。図2Aに、各コイルの配置の一例を示す。すなわち、送電用共鳴コイル4aと補助コイル10を対向させて30mm長さの受電空間を形成するように配置し、ループコイル3aにVNAを接続した。共振周波数f3は、調整用バリコン11の調整により可変である。
【0044】
この配置におけるVNA測定結果を図2Bに示す。図2Bは、横軸に送電補助装置9の共振周波数f3をとり、縦軸にVNA測定時における送電側共振系の共振周波数ftの値をプロットしたものである。また、共振周波数f3が、9MHz、12.1MHz及び16MHzの場合におけるVNA測定の出力波形図を図2Cに示す。
【0045】
例えば、f3をf1と同じ共振周波数(12.1MHz)に調整した場合には、図2C(b)の波形図に示すように、12.1MHzをほぼ中心にして二つの共振周波数が現れる(密結合状態)。低周波側の左の共振周波数をftL、高周波側の右の共振周波数をftHと記述する。図2Bには、低周波側の共振周波数ftLに対応する特性線と、高周波側の共振周波数ftHに対応する特性線が記載されている。
【0046】
送電補助装置9の共振周波数f3を変化させていくと、低周波側の共振周波数ftLは徐々に高周波側へシフトして、最終的にはf1と同じ12.1MHzに近づいていき、図2C(c)に示すように、信号も大きくなってくる。高周波側の共振周波数ftHも段々と高周波側へシフトしていくものの、低周波側の共振周波数ftLとの差が大きくなっていき、信号レベルも小さくなりゼロに近づいていく。このように、補助共振器の単体での共振周波数f3を種々変化させることにより、送電側共振系の共振周波数ftを変化させることが可能となる。
【0047】
一方、共振周波数f3を低周波側へ変化させていくと、高周波側の共振周波数ftHが徐々に低周波側へシフトして、最終的にはf1と同じ12.1MHzに近づいてゆく。但し、信号は低周波側の共振周波数ftLの場合に比べると、図2C(a)に示すように、あまり大きくはならない。低周波側の共振周波数ftLも段々と低周波側へシフトしてゆき、高周波側の共振周波数ftHとの差が大きくなっていき、信号も小さくなりゼロに近づいていく。
【0048】
次に、図3Aに示す各コイルの配置により、送電補助装置9の共振周波数f3を変化させたときの電力伝送効率の変化を調べた結果を示す。図3Aの配置は、図2Aの配置における送電用共鳴コイル4aと補助コイル10の間の受電空間中に、受電用共鳴コイル4bとループコイル3bを配置したものである。ループコイル3a、3bにVNAを接続した。なお、ここで言う電力伝送効率とは、送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4b間での数値であり、回路などの効率は含まない。受電装置2の共振周波数はf2は、共振容量として設けられた固定コンデンサの容量値により設定し、具体的には、f2=f1=12.1MHzとした。
【0049】
この配置におけるVNA測定結果を図3Bに示す。図3Bには、低周波側の共振周波数ftLに対応する特性線と、高周波側の共振周波数ftHに対応する特性線が記載されている。図3Bから判るように、例えば、f1=f2=f3=12.1MHzの場合(矢印で示す)には、電力伝送効率は約44%と小さい。f3をこれよりも大きくしていくと、低周波側の共振周波数ftLに対応する電力伝送効率も大きくなっていく。f3=16MHzの場合には約64%の電力伝送効率が得られる。
【0050】
以上のように、送電補助装置9の共振周波数f3をf1及びf2よりも大きくすることにより、電力伝送時の共振周波数ftを共振周波数f2に近づけることができ、それにより、その時の電力伝送効率も大きくできる。
【0051】
一方、共振周波数f3を低周波側へ変化させていくと、高周波側の共振周波数ftHに対応する電力伝送効率が大きくなっていく。f3=5MHzの場合には約46%の電力伝送効率が得られる。これにより、送電補助装置9の共振周波数f3をf1及びf2よりも小さくすることにより、電力伝送時の共振周波数ftを共振周波数f2に近づけることができ、それにより、その時の電力伝送効率も大きくできる。但し、低周波側の共振周波数ftLに対応する電力伝送効率の最大領域に比べると、高周波側の共振周波数ftHに対応する電力伝送効率の最大領域における値は小さい。
【0052】
以上のことから、送電装置が1台で受電コイルも1台の場合には、電力伝送時における各装置の個々の共振周波数は、f1≠f3の関係となるように設定する。特に、f1<f3となる場合が、電力伝送効率の面から好ましい。受電装置2の共振周波数f2は、送電装置1の共振周波数f1と同じ方が好ましいが、場合によっては異なっていても良い。
【0053】
図2B及び図3Bのように得られた結果によれば、送電側共振系の共振周波数ftは、送電補助装置9の共振周波数f3の調整により、送電装置1の共振周波数f1の値に関わらず容易に変化させることができる。それにより、送電側共振系の共振周波数ftを、受電装置2の共振周波数f2に合わせることが容易である。
【0054】
そこで、図4Aに示す各コイルの配置により、送電装置1の共振周波数f1と、受電装置2の共振周波数f2とが異なった場合での特性を調べた。図4Aの配置は、図2Aの配置における送電用共鳴コイル4aと補助コイル10の間の受電空間中に、受電用共鳴コイル4bとループコイル3bを配置したものである。ループコイル3a、3bにVNAを接続した。
【0055】
ここでは、受電装置2の固有の共振周波数f2を11.85MHzで固定とし、送電装置1の共振周波数f1を変化させた。送電装置1の共振周波数f1を変化させるために、送電用共鳴コイル4aの両端に、送電共振器の共振容量である固定コンデンサとは別に可変コンデンサ(以下「バリコン」と記述する)12を接続した。このバリコン12を手動で調整することにより、送電装置1の共振周波数f1を変化させた。
【0056】
送電装置1の共振周波数f1は受電装置2の共振周波数f2である11.85MHzを基準に、±2MHzの範囲内で1MHz間隔で変化させた。そして、送電装置1の共振周波数f1の各々において、受電装置2の共振周波数f2での電力伝送効率が最大(共振周波数は11.85MHz)となるように、送電補助装置9の調整用バリコン11を操作して共振周波数f3を調整した。実験の結果を図4Bに示す。
【0057】
図4Bにおいて、横軸は送電装置1の共振周波数f1の値、縦軸は送電装置1と受電装置2間の電力伝送効率である。この図から、送電装置1の共振周波数f1と受電装置2の共振周波数f2とが同じ場合(f1=f2=11.85MHz)において電力伝送効率が最大となっていることが分かる。しかし、送電装置1の共振周波数f1を12.85MHzと1MHz大きくした場合(丸印)においても(f1≠f2)、電力伝送効率は50%以上と、大きな値が得られている。即ち、固有の共振周波数が異なる送電装置1と受電装置2を用いて電力伝送を行ったとしても、送電補助装置9を用いて送電側共振系の共振周波数ftを調整する(受電装置2の共振周波数f2に近づける)ことにより、高効率の電力伝送が可能なことが判る。
【0058】
なお、非接触電力伝送装置の構成としては、上述の実験とは異なり、送電装置1の共振周波数f1は固定であり、受電装置2の共振周波数f2が変化する。当然ながら、この場合も、送電補助装置9を用いて送電側共振系の共振周波数ftを調整する(受電装置2の共振周波数f2に近づける)ことにより、高効率の電力伝送が可能である。
【0059】
<実施の形態2>
実施の形態2における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置について、図5A〜5Dを参照して説明する。本実施の形態では、実施の形態1の場合と同様の作用に基づく構成を用いる。すなわち、図4Aに示した配置と同様、送電装置1と送電補助装置9の間の受電空間中に、受電装置の受電用共鳴コイル4bとループコイル3bが配置される。従って、図4Aに示した配置の説明で述べた要素と同様の要素については、同一の参照番号を付して、説明の繰り返しを簡略化する。
【0060】
図5A、5Bには、各コイルの配置の一例が示される。図5Aは模式断面図である。図5Bは、図5Aにおける受電用共鳴コイル4bの左側から調整コイル10の方向を見た正面図である。この構成では、2つの受電装置A、B(図示せず)における受電用共鳴コイル4bA、4bBが、受電空間内に並列に配置されている。受電用共鳴コイル4bA、4bBは十分に小さいので、送電用共鳴コイル4aや調整コイル10の円環中に、二つの受電用共鳴コイル4bA、4bBが包囲された状態に配置されている。
【0061】
本実施の形態の構成を用いれば、送電装置1を含む送電側共振系の共振周波数ftを、送電補助装置9を用いて受電装置A、Bの共振周波数に合わせることが可能である。受電装置が2台を超える複数台配置される場合も、同様な効果を得ることができる。受電用共鳴コイル4bA、4bBを含む受電共振器は、共振周波数が同一であってもよいし、互いに異なる共振周波数を有するように構成されてもよい。
【0062】
共振周波数が略同一の受電装置A、Bを用いた場合には、同時の電力伝送による充電が可能であり、共振周波数が異なる受電装置A、Bを用いた場合には、選択的な電力伝送による充電が可能となる。以下の説明では、固有の共振周波数が異なる二つの受電装置を用いた場合を例として、一つの送電装置1による選択的な電力伝送の動作について説明する。図5A、5Bに示した構成において、受電用共鳴コイル4bAを含む受電装置Aの固有の共振周波数f2Aを12MHz、受電用共鳴コイル4bBを含む受電装置Bの固有の共振周波数f2Bを13.6MHzに設定する場合を例として説明する。
【0063】
図5A、5Bに示した状態に配置した後、まず受電用共鳴コイル4bBを無負荷の状態として、受電用共鳴コイル4bAにのみVNAを接続した。それにより、送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4bA間で電力伝送特性を調べた。ここでは図4A、4Bを参照して説明した方法と同様の方法で測定を行った。
【0064】
まず、受電装置Aの固有の共振周波数f2Aを12MHzで固定とし、送電装置1の共振周波数f1を変化させた。送電装置1の共振周波数f1を変化させるために、送電用共鳴コイル4aの両端に、送電共振器の共振容量である固定コンデンサとは別にバリコン12を接続した。このバリコン12を手動で調整することにより、送電装置1の共振周波数f1を変化させた。そして、送電装置1の共振周波数f1の各々において、受電装置Aの共振周波数f2Aでの電力伝送効率が最大(共振周波数は12MHz)となるように、調整用バリコン11を操作して送電補助装置9の共振周波数f3を調整した。実験の結果を図5Cに示す。
【0065】
図5Cにおいて、横軸は送電装置1の共振周波数f1の値、縦軸は送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4b間の電力伝送効率である。この図から、送電装置1の共振周波数f1と受電装置Aの共振周波数f2Aとが同じ場合(f1=f2=12MHz)において電力伝送効率が最大となっていることが分かる。但し、f2≠f3である。
【0066】
一方、送電装置1の共振周波数f1を13MHzと1MHz大きくした場合においても(f1≠f2)、電力伝送効率は60%以上と、大きな値が得られている。即ち、固有の共振周波数が異なる送電装置1と受電装置Aを用いて電力伝送を行った場合に、送電補助装置9を用いて送電側共振系の共振周波数ftを調整する(受電装置Aの共振周波数f2Aに近づける)ことにより、高効率の電力伝送が可能なことが判る。但し、f2≠f3である。
【0067】
次に、送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4bB間での電力伝送特性を調べるために、受電用共鳴コイル4bAを無負荷の状態として、受電用共鳴コイル4bBにのみVNAを接続した。即ち、受電用共鳴コイル4bBの固有の共振周波数f2Bを13.6MHzで固定とし、送電装置1の共振周波数f1をバリコン12により変化させた。そして、送電装置1の共振周波数f1の各々において、受電装置Bの共振周波数f2Bでの電力伝送効率が最大(共振周波数は13.6MHz)となるように、送電補助装置9の調整用バリコン11を操作して送電補助装置9の共振周波数f3を調整した。実験の結果を図5Dに示す。
【0068】
図5Dにおいて、横軸は送電装置1の共振周波数f1の値、縦軸は送電用共鳴コイル4aと受電用共鳴コイル4b間の電力伝送効率である。この図から、送電装置1の共振周波数f1と受電装置Bの共振周波数f2Bとが同じ場合(f1=f2=13.6MHz)において電力伝送効率が最大となっていることが分かる。しかし、送電装置1の共振周波数f1が受電装置Bの共振周波数f2Bと異なっていても、(f1≠f2)、電力伝送効率は60%以上と、大きな値が得られている。即ち、固有の共振周波数が異なる送電装置1と受電装置Bを用いて電力伝送を行った場合に、送電補助装置9を用いて送電側共振系の共振周波数ftを調整する(受電装置Bの共振周波数f2Bに近づける)ことにより、高効率の電力伝送が可能なことが判る。
【0069】
以上の結果から、送電装置1の共振周波数f1を13.2MHzに固定し(図の丸印)、受電装置Aの共振周波数f2Aまたは受電装置Bの共振周波数f2Bに合わせることにより、どちらの場合でも電力伝送効率60%以上を得ることができることが判る。この場合には、送電装置1の共振周波数f1と、受電装置A、Bの共振周波数f2A、f2Bが異なっても良い(f1≠f2A≠f2B)。
【0070】
以上のように、本実施の形態の非接触電力伝送装置によれば、例えば、受電装置Aの固有の共振周波数f2A=12MHzと受電装置Bの固有の共振周波数f2B=13.6MHzの間の共振周波数となるように送電装置1の共振周波数f1を設定し、送電補助装置9の調整用バリコン11を受電装置A、Bの一方の共振周波数に合わせることにより、選択的な電力伝送が可能である。
【0071】
本実施の形態により、一つの送電装置に対して複数の受電装置を配置し、その受電装置の中から特定の一つの受電装置のみに電力伝送を行う選択的な電力伝送の場合、例えば受電装置が二つの場合における各装置の個々の共振周波数の値は、例えば次の通りに設定する。すなわち、それぞれの共振周波数はf2A≠f2B≠f3の関係に設定する。送電装置1のの共振周波数f1は、受電装置の共振周波数f2A及びf2Bのどちらかと同じでもかまわないが、異なっている方が送電装置1の共振周波数f1を調整しなくてすむために好ましい。この場合、送電装置1の共振周波数f1は、受電装置A、Bの共振周波数f2Aとf2Bの間の周波数帯域にあることが望ましい。
【0072】
なお、実施の形態において、送電装置に対向して複数の受電装置を並列に配置する場合、種々の受電装置の共振コイルが重ならないようにすることが望ましい。
【0073】
<実施の形態3>
図6は、実施の形態3における磁界共鳴型の非接触電力伝送装置を示す断面図である。この非接触電力伝送装置は、化粧箱タイプ(あるいはオルゴール型)をした筐体13と、開閉自在の蓋14を備え、筐体13の下側の内部に送電装置1が保持され、蓋14に送電補助装置9が保持されている。送電装置1の上部に受電装置2を置くための台座15が設けられ、その台座15上に受電装置2(例えば、携帯電話や補聴器など)を装着することができる。そして蓋14を閉じることにより、送電装置1と送電補助装置9の間に受電装置2が配置される。この形態で非接触電力伝送が行われる。
【0074】
筐体13には、交流電源(AC100V)から受けた電力を電力伝送可能な電力に変換する高周波電力ドライバー5、インピーダンス整合を取るための制御回路16等が設けられている。また、送電装置1と送電補助装置9が配置された領域を包囲して、電磁シールド材17が配置されている。蓋14を閉じた状態では、送電装置1と送電補助装置9及び受電装置2の周囲は完全に電磁シールドされることになり、電磁波が人体に影響することが防止され、安全である。
【0075】
磁界共鳴により電力を伝送する場合、実用に際して伝送周波数としては数MHz〜数100MHz帯を活用することが考えられる。電界共鳴型に比べて人体への影響が少ないとはいえ、送電パワーの値によっては人体への影響も考慮しなければならない。そこで本実施の形態のように、非接触電力伝送中に電磁波を外部に漏らさないために、送受電空間を囲むようにコイル全体を電磁シールドすることが望ましい。即ち、化粧箱タイプの筐体においては、電磁気的に閉じられた空間内に、送電装置1及び受電装置2の共鳴コイルや、送電補助装置9の補助コイルを配置し、外部への電磁波の漏洩を防ぐ構成とする。
【0076】
筐体13の表面にはディスプレイやLEDなどの表示器18が必要に応じて設けられている。主に、携帯電話などの充電状態やメールなどの着信情報を表示するためである。また、インターロック機能用の突起19が設けられ、蓋14を完全に閉めた状態でないと送電が始まらないように構成されている。
【0077】
共鳴型電力伝送においては、共振周波数において磁界強度が最大となる。また制御回路16は、受電装置2や送電補助装置9との情報のやり取りをするための回路、あるいは受電装置2の位置情報を得るための回路等を含んでもよい。
【0078】
本実施の形態の非接触電力伝送装置は、送電補助装置9に設けられている調整用バリコンを調整して、電力伝送時における送電側共振系と受電共振器の共振周波数を整合させることが特徴である。予め蓋14を閉じた状態で、補助コイル10が所定の位置に配置され、その状態で送電側共振系の共振周波数と受電共振器の共振周波数が同じになるように調整用バリコンを調整しておくと、蓋14をした時に直ちに充電を開始することが可能である。あるいは、蓋14を閉じた後に、調整用バリコンが自動、あるいは手動で調整される構成とすることもできる。
【0079】
本実施の形態では、化粧箱タイプの筐体13を用いたが、他に、ボックスタイプや机の引き出し型などでも同様な効果が得られる。すなわち、化粧箱タイプの場合、蓋をした状態では外部との電波のやり取りが難しいので、その場合には、受電装置の挿入口が開いたボックスタイプの筐体とし、この挿入口以外はすべて電磁シールドを設けた構成とすればよい。ただし、ボックスタイプでは受電装置の挿入口があるために、外部への電磁波の漏洩が多少あると考えられるが、この挿入口に電波吸収体のシートを取り付けるなどすれば、人体への影響は低減される。
【0080】
また、以上の実施の形態では、受電装置2として携帯電話などの小型の装置を例として説明したが、電気自動車などの大型の受電装置にも本発明を適用可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の非接触電力伝送装置は、特定の受電装置に対して選択的に非接触電力伝送が可能であり、また、受電器が小さい場合においても良好な電力伝送を長い距離まで安定にできるので、携帯電話や補聴器等の小型機器、TVや電気自動車などへの非接触電力伝送に好適である。
【符号の説明】
【0082】
1 送電装置
2 受電装置
3a、3b ループコイル
4a 送電用共鳴コイル
4b、4bA、4bB 受電用共鳴コイル
5 高周波電力ドライバー
6 交流電源
7 整流回路
8 充電池
9 送電補助装置
10 補助コイル
11 調整用コンデンサ(調整用バリコン)
12 バリコン
13 筐体
14 蓋
15 台座
16 制御回路
17 電磁シールド材
18 表示器
19 インターロック用突起
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電用共鳴コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、
受電用共鳴コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを備え、
前記送電用共鳴コイルと前記受電用共鳴コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送装置において、
補助コイル及び共振容量により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置を更に備え、
前記送電補助装置を前記送電装置と対向させて配置して、前記送電用共鳴コイルと前記補助コイルの間に、前記受電用共鳴コイルが配置される受電空間を形成可能であり、
前記共振周波数f3を調整することにより、前記送電共振器と前記補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整可能であることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記送電補助装置の前記共振容量が可変コンデンサにより構成され、前記可変コンデンサを調整することにより前記補助共振器の共振周波数f3を調整可能である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記送電補助装置の前記共振容量がそれぞれ異なる容量値を有する複数の固定コンデンサにより構成され、前記補助コイルに選択的に接続される前記固定コンデンサを切り替えることにより、前記補助共振器の共振周波数f3を調整可能である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記送電用共鳴コイルの直径d1、受電用共鳴コイルの直径d2、及び補助コイルの直径d3が、d1>d2、かつd2<d3の関係を満足する請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
d1=d3、かつd1>d2の関係を満足する請求項4記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
前記送電用共鳴コイルの中心軸と、前記補助コイルの中心軸と、前記受電用共鳴コイルの中心軸が、同一軸上にある請求項4記載の非接触電力伝送装置。
【請求項7】
1台の前記送電装置に対して1台の前記受電装置が配置され、f1≠f3の条件で前記共振周波数f3が設定される請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項8】
f1<f3の条件で前記共振周波数f3が設定される請求項7記載の非接触電力伝送装置。
【請求項9】
1台の前記送電装置に対して複数台の前記受電装置が配置され、複数台の前記受電装置の受電共振器の共振周波数f2はすべて異なり、かつf2≠f3である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項10】
1台の前記送電装置に対して複数台の前記受電装置が配置され、複数台の前記受電装置の受電共振器の少なくとも一部は前記共振周波数f2が互いに異なり、かつf1≠f2である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項11】
前記送電装置及び前記送電補助装置を保持し、前記送電装置と前記送電補助装置の相互の位置関係を、前記受電空間が形成されるように設定することが可能な筐体を備え、
前記受電装置を前記受電空間に対して着脱可能に装着することが可能であり、
少なくとも前記送電用共鳴コイル、前記補助コイル、及び前記受電用共鳴コイルの周囲が前記筐体内で電磁シールドされている状態で電力伝送を行う請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項12】
送電用共鳴コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、受電用共鳴コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを用い、前記送電用共鳴コイルと前記受電用共鳴コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送方法において、
補助コイル及び共振容量により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置を更に用い、
前記送電補助装置を前記送電装置と対向させて配置して、前記送電用共鳴コイルと前記補助コイルの間に形成された受電空間に前記受電用共鳴コイルを配置し、
前記共振周波数f3を調整することにより、前記送電共振器と前記補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整して電力伝送を行うことを特徴とする非接触電力伝送方法。
【請求項1】
送電用共鳴コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、
受電用共鳴コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを備え、
前記送電用共鳴コイルと前記受電用共鳴コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送装置において、
補助コイル及び共振容量により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置を更に備え、
前記送電補助装置を前記送電装置と対向させて配置して、前記送電用共鳴コイルと前記補助コイルの間に、前記受電用共鳴コイルが配置される受電空間を形成可能であり、
前記共振周波数f3を調整することにより、前記送電共振器と前記補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整可能であることを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記送電補助装置の前記共振容量が可変コンデンサにより構成され、前記可変コンデンサを調整することにより前記補助共振器の共振周波数f3を調整可能である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記送電補助装置の前記共振容量がそれぞれ異なる容量値を有する複数の固定コンデンサにより構成され、前記補助コイルに選択的に接続される前記固定コンデンサを切り替えることにより、前記補助共振器の共振周波数f3を調整可能である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項4】
前記送電用共鳴コイルの直径d1、受電用共鳴コイルの直径d2、及び補助コイルの直径d3が、d1>d2、かつd2<d3の関係を満足する請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項5】
d1=d3、かつd1>d2の関係を満足する請求項4記載の非接触電力伝送装置。
【請求項6】
前記送電用共鳴コイルの中心軸と、前記補助コイルの中心軸と、前記受電用共鳴コイルの中心軸が、同一軸上にある請求項4記載の非接触電力伝送装置。
【請求項7】
1台の前記送電装置に対して1台の前記受電装置が配置され、f1≠f3の条件で前記共振周波数f3が設定される請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項8】
f1<f3の条件で前記共振周波数f3が設定される請求項7記載の非接触電力伝送装置。
【請求項9】
1台の前記送電装置に対して複数台の前記受電装置が配置され、複数台の前記受電装置の受電共振器の共振周波数f2はすべて異なり、かつf2≠f3である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項10】
1台の前記送電装置に対して複数台の前記受電装置が配置され、複数台の前記受電装置の受電共振器の少なくとも一部は前記共振周波数f2が互いに異なり、かつf1≠f2である請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項11】
前記送電装置及び前記送電補助装置を保持し、前記送電装置と前記送電補助装置の相互の位置関係を、前記受電空間が形成されるように設定することが可能な筐体を備え、
前記受電装置を前記受電空間に対して着脱可能に装着することが可能であり、
少なくとも前記送電用共鳴コイル、前記補助コイル、及び前記受電用共鳴コイルの周囲が前記筐体内で電磁シールドされている状態で電力伝送を行う請求項1記載の非接触電力伝送装置。
【請求項12】
送電用共鳴コイル及び共振容量により構成された送電共振器を有する送電装置と、受電用共鳴コイル及び共振容量により構成された受電共振器を有する受電装置とを用い、前記送電用共鳴コイルと前記受電用共鳴コイルの間の磁界共鳴を介して前記送電装置から前記受電装置へ電力を伝送する非接触電力伝送方法において、
補助コイル及び共振容量により構成され、共振周波数f3が可変である補助共振器を有する送電補助装置を更に用い、
前記送電補助装置を前記送電装置と対向させて配置して、前記送電用共鳴コイルと前記補助コイルの間に形成された受電空間に前記受電用共鳴コイルを配置し、
前記共振周波数f3を調整することにより、前記送電共振器と前記補助共振器が構成する送電側共振系の共振周波数ftを調整して電力伝送を行うことを特徴とする非接触電力伝送方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2013−78166(P2013−78166A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215025(P2011−215025)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]