説明

非接触ICタグと非接触ICタグのICチップ装着検査方法

【課題】 ICチップとアンテナ端子間の接続が確実に行われているか否かを的確に判定できる非接触ICタグとICチップ装着検査方法を提供する。
【解決手段】 本発明の非接触ICタグは、非接触ICタグのアンテナパターンに接着剤または接着フィルムを用いてフェイスダウン方式により装着したICチップ2が、非接触インターフェース用の2個の端子t1,t2と2個または2個以上のダミー端子d1,d2を有するICチップである場合において、当該装着したICチップ2の少なくとも2個のダミー端子間には、ICチップの内部に短絡回路が形成されていることを特徴とする。 本発明のICチップ装着検査方法は、当該ダミー端子d1,d2を接続したアンテナの検査用端子6a,6b間の抵抗値を測定することにより判定する特徴がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICタグにおいて、アンテナパターンにICチップを装着する際の接続の確実性を検証可能にする技術に関する。従って、本発明の利用分野は非接触ICタグの製造や利用の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触ICタグは、RFID(Radio Frequency Identification) とも称され、個体の識別が可能な情報を保持するICチップを備え、この情報を無線通信によって非接触で読み取りできるようにされている。このようなICタグは、例えば、運送や流通、工場工程管理、荷物の取り扱い、施設の管理等の分野で利用される。
【0003】
非接触ICタグには各種の形態のものがあるが、一般的には平面な形態にして物品等に貼着して使用する場合が多い。この場合には、平面なベースフィルムにアンテナパターンを形成して、当該アンテナにICチップを装着して非接触ICタグとする。
13.56MHzの電磁誘導型アンテナの場合は、平面コイル状のアンテナパターンを形成し、当該アンテナパターンの両端部にICチップを装着する。一方、UHF帯に属する860MHz〜960MHz帯では、半波長ダイポール型アンテナが用いられ、その左右の1/4波長アンテナの中心である給電部にICチップを装着する。
【0004】
図6は、電磁誘導型のアンテナパターンの例を示す図である。13.56MHz用として透明なベースフィルム5面に、ラミネートしたアルミ箔や銅箔をエッチングして形成されたアンテナコイル3をベースフィルム5のアンテナ面とは反対側面から見ている。
アンテナコイル2は、幅幅が0.8mm〜1.0mm程度で、図示のものはベースフィルム5面を6ターンするようにされている。部材11は、アンテナコイルの一方側を端部3aに導くための導通回路であって、ベースフィルム5の裏面に薄いかしめ金具を用いている。ICチップ2は、アンテナコイル3の端部3a,3bに装着されている。なお、アルミ箔や銅箔には厚み10μmから40μm程度のものが使用され、表面抵抗値は、通常1.0〜1.5mΩ/□程度の範囲となるようにされている。
【0005】
ICチップのアンテナ面への実装は、導電性接着剤や異方性導電接着フィルム(ACF;Anisotropic Conductive Film)、その他の材料を使用して行われており、硬化型の液状接着剤やホットメルト型のフィルム状のものなどが使用される。導電性接着フィルム(ICF;Isotropic Conductive Film)、非導電性接着剤(NCP;Non Conductive Paste) や非導電性接着フィルム (NCF;Non Conductive Film)が使用される場合もある。
装着部を平面にする目的からフェイスダウン方式が採用されるのが通例である。ICチップ側のパッドは凹凸の無い平面状のものが使用される場合もあるが、異方性導電接着フィルムを使用する場合や非導電性の接着剤や接着フィルムを使用する場合は、突出したバンプ形状となっているものが用いられる。接続を確実にするため、ICチップのバンプの先端を鋭角にしてアンテナ面に食い込む形状にしたものなども用いられている。
【0006】
ICチップ側の端子(パッドまたはバンプを総称する意味で、特許請求の範囲および以降において「端子」と表現する。)は、アンテナの両端に接続するため、2端子で十分であるが、近年、ICチップを装着した際の安定性、主として姿勢安定性の目的から、ダミーとして2端子またはそれ以上の端子を加える場合が多くなってきている。前記、図6中の端子6a,6bは当該目的のための端子である。
【0007】
しかし、このようにしてICチップを装着した非接触ICタグであっても、アンテナとICチップ側の端子間が確実に接続しているか否かについては、的確な検査方法が無いという問題があった。すなわち、ICチップの内部は高い抵抗値(通常、直流抵抗値を測定すると1KΩから1MΩ程度になる。)にされているので、アンテナパターンに装着した後は、アンテナを切断した状態であってもICチップの両側の端子とアンテナ端部間の接続抵抗値のみを測定できない問題があった。ダイポール型アンテナのICチップも同様である。
【0008】
したがって、アンテナの接続が不完全であるのに、ICチップの動作不良を疑ったり、逆に、ICチップの動作やリーダライタが不完全なのに、アンテナの接続方法や導電性接着剤を完全にすることを求めるような問題が生じる場合があった。
一方、回路設計に際しては、内部抵抗のないICチップ(極めて小さい抵抗値のTEGチップ)を使用して回路を評価しプロセスを確立してからICチップを設計することが行われている。
【0009】
そこで、本発明はICチップの非接触インターフェースの2個の端子の他に、チップ内部で実質的に抵抗値が "ゼロ”になるか極めて低抵抗となるように短絡している2個のダミー端子(検査端子と表現してもよいが、本明細書ではICチップ側を「ダミー端子」とし、アンテナ側を「検査用端子」とする。)を設けたICチップを用い、非接触インターフェースは通常のようにアンテナ端部に接続し、短絡したダミー端子をベースフィルムのアンテナ端部の2つの検査用端子面に固定して装着し、2つの検査用端子間の抵抗値を測定することによりこの問題を解決しようとするものである。
すなわち、ダミー端子を装着した2つの検査用端子間の抵抗値が、ICチップ自体の短絡抵抗値に近ければ、非接触インターフェース間の接続も同様に低い抵抗値で接続されたと推定するものである。
【0010】
本願に直接関連する先行技術を検出できないが、ICカードのICチップの実装方法について特許文献1や特許文献2がある。また、非接触ICカードにおける異方導電性接着剤によるICチップ実装について記載したものに、非特許文献1がある。
【0011】
【特許文献1】特開平 8−287208号公報
【特許文献2】特開平11−345302号公報
【非特許文献1】「エレクトロニクス実装学会誌第3巻第3号」203頁〜206頁 「非接触ICカード」2000年5月1日発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従来、非接触ICタグのアンテナに接着剤や接着フィルムを用いてフェイスダウン方式でICチップを装着する場合に、ICチップが確実に装着されたか否かを的確に判定する方法はなく、製品の最終検査において正しく機能するか否かにより判定する方法のみが採用されていた。そのため、不良品が製品に紛れこんだり、工程へのフィードバックが遅れ、大量の不良品を製造してしまう問題があった。
そこで、本発明は非接触ICタグに装着するICチップに、短絡した2個のダミー端子を形成し、ICチップをアンテナに装着後に当該ダミー端子を固定して装着した2個の検査用端子間の抵抗値を測定することにより装着不良を検出すべく研究して本発明の完成に至ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する本発明の要旨の1は、非接触ICタグのアンテナパターンに接着剤または接着フィルムを用いてフェイスダウン方式により装着したICチップが、非接触インターフェース用の2個の端子と2個または2個以上のダミー端子を有するICチップである場合において、当該装着したICチップの少なくとも2個のダミー端子間には、ICチップの内部に短絡回路が形成されていることを特徴とする非接触ICタグ、にある。
【0014】
上記非接触ICタグにおいて、フェイスダウン方式による装着が、導電性接着剤、導電性接着フィルム、異方性導電接着フィルムのいずれかを用いてICチップをアンテナパターンに装着したものとすることができ、あるいは非導電性接着剤または非導電性接着フィルムのいずれかを用いて装着したものとすることができる。
【0015】
上記課題を解決する本発明の要旨の2は、非接触ICタグのアンテナパターンにICチップをフェイスダウン方式により装着する場合の装着の確実性を検査する方法であって、(1)非接触ICタグのベースフィルム面にアンテナパターンと当該アンテナパターンの両端部であって、ICチップに接続する2つの端子と、2つの検査用端子をICチップ装着部に形成する工程、(2)前記アンテナパターンの接続端子と検査用端子に、非接触インターフェース用の2個の端子と2個または2個以上のダミー端子を有するICチップであって、当該ICチップの少なくとも2個のダミー端子間には、ICチップの内部に短絡回路が形成されているICチップを、接着剤または接着フィルムを用いて固定して装着する工程、(3)ICチップの装着後に、2つの検査用端子間の抵抗値を測定する工程、を有することを特徴とする非接触ICタグのICチップ装着検査方法、にある。
【0016】
上記非接触ICタグのICチップ装着検査方法において、接着剤が導電性接着剤または非導電性接着剤であるようにでき、接着フィルムが導電性接着フィルム、異方性導電接着フィルムまたは非導電性接着フィルムであるようにすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
(1)本発明の非接触ICタグは、装着しているICチップが、アンテナに接続する非接触インターフェース用の2個の端子の他に、2個またはそれ以上のダミー端子を有していて、当該ダミー端子の少なくとも2つの端子間は、ICチップ内部に短絡回路を有している。従って、ICチップをアンテナパターンに装着した後、当該ダミー端子の固定されたアンテナ側の2個の検査用端子間の抵抗値を測定し、規定の端子間接続抵抗値よりも高い抵抗値を有する場合は、正常な接続がされなかったものとして判定することができる。
(2)本発明の非接触ICタグのICチップ装着検査方法は、ICチップとして、非接触インターフェース用の2個の端子と2個または2個以上のダミー端子を有し、当該ICチップの少なくとも2個のダミー端子間に、短絡回路が形成されているものを使用し、当該ICチップを接着剤または接着フィルムを用いて検査用端子に固定して装着するので、ICチップの装着後に2つの検査用端子間の抵抗値を測定することにより、正常な接続がされたか否かを簡単に検査することができ、装着不良を低減させることができる。
(3)ICチップ装着直後の検査に限らず、接続部の高温、高湿度耐性試験や熱衝撃試験による経時的劣化などの信頼性試験も容易に行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明は、ICチップの端子にダミー端子としての短絡回路を設けて、ICチップのアンテナへの装着の確実性を検証しようとするものである。いわば、ICチップに簡易なテストエレメントグループ(TEG)を形成すると同様の考えによるものである。
ここに、「テストエレメントグループ(TEG)」とは、「LSIを構成している素子、構造または回路を単体レベルに分離独立させ、評価を容易にした評価用単体素子群でありテスト構造とも呼ばれる。TEGを用いることにより、LSIで発生する複雑な問題を単独のメカニズムに分離することができる。そのため、現象の把握が容易であり、かつ、単独に現象を発生することにより特性を定量化できる。」(「半導体大事典」株式会社工業調査会発行)と記載されるように、評価を容易にするテスト構造に関するものである。 ただし、本発明の提案は、ICチップの広範な機能評価を行う目的ではなく、単に、アンテナとICチップ間が確実に接続できたか否かを、簡易に判別するための手段に関するものである。
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の非接触ICタグのICチップ装着状態を示す図、図2は、本発明に使用するICチップの概念図、図3は、ICチップを導電性接着剤により固定する方法の状態図、図4は、同異方性導電接着フィルムにより固定する方法の状態図、図5は、同非導電性接着剤により固定する方法の状態図、である。
【0020】
図1は、本発明の非接触ICタグのICチップ装着部を示す図であって、図1(A)または図1(B)の装着方法を採用できる。各図は、ICチップ2の表面から見た平面図であるため、各端子t1,t2,d1,d2は破線で図示している。
図1(A)の場合は平面正方形状のICチップ2において、非接触インターフェース用の端子t1,t2とダミー端子d1,d2が、それぞれ対向する位置になるように配置されている。端子t1,t2は、非接触ICタグのコイル状アンテナ3の両端部3a,3bに固定され、ダミー端子d1,d2は、ベースフィルム面に形成されアンテナコイル3と同じ厚みからなる検査用端子6a,6bに固定されている。なお、コイル状アンテナ3は簡略化して図示しているが、通常は端子3a,3bとほぼ同等の太さで形成される。
【0021】
図1(B)の場合は、平面長方形状のICチップ2において、非接触インターフェース用の端子t1,t2とダミー端子d1,d2が、それぞれ対角の位置になるように配置されている。端子t1,t2は、非接触ICタグのダイポール型アンテナ4の両端部4a,4bに固定され、ダミー端子d1,d2は、ベースフィルム面に形成されたアンテナ4と同じ厚みからなる検査用端子6a,6bに固定されている。
【0022】
ただし、ダイポール型アンテナ4の場合が、上記装着方法に限定されるものではなく、図1(A)の装着方法であっても構わない。アンテナコイル3が、図1(B)の装着方法になることも勿論構わない。上記のようなICチップの装着方法は、現在でも一般的に行われている。非接触インターフェースは2端子であるが、当該2端子が、ICチップのいずれかの辺に偏っている場合は、バンプが突出していることと、アンテナ自体も厚み10〜40μm程度の金属箔からなるため、装着後にICチップ2の上面がベースフィルム面に対して平行平面にならない場合が生じるからである。したがって、主として姿勢安定の目的から従来もICチップ2にダミー端子を形成して、ベースフィルム面にも当該端子固定用の端子部を形成して装着することが行われてはいる。
【0023】
本発明では、ベースフィルム面の端子6a,6bを単に、ダミー端子固定用として用いるのではなく、ICチップのダミー端子固定とともに検査用端子としても用いる特徴がある。したがって、後に電気的にも測定できるように、ある程度の面積からなる接点6ap,6bpを有することが好ましい。後に、ICチップ2のアンテナ接続の合否を判定する場合は、接点6ap,6bpに測定器のプローブを接触させて測定することになるからである。
【0024】
図2は、本発明に使用するICチップの概念図である。非接触ICチップ2は、通常のように、電波インターフェースとCPU、RAM,ROM,EEPROM等を有し非接触インターフェース用の端子t1,t2に接続している。本発明に使用するICチップ2の特徴は上記要素の他に、ダミー端子d1,d2を有し、当該ダミー端子d1,d2間には、ICチップの内部に短絡回路21が形成され、実質的にそのダミー端子d1,d2間の直流抵抗値が "ゼロ”になるか極めて低抵抗となるようにされていることにある。
低抵抗の短絡回路21は、概略100mΩ程度以下の直流抵抗値になるように、導体で直結した回路を既知の方法により形成すればよい。端子t1,t2とダミー端子d1,d2は金バンプ等に形成される。
【0025】
一般に、ICチップを安定して動作させるためには低抵抗で安定した回路との接続が必要である。以下の導電性フィルム等による良好な接続では、10mΩ以下の接続抵抗で、2000mA程度までオーミック特性を示す接続が可能と言われる。
【0026】
次に、ICチップのアンテナへの固定方法について説明する。
図3は、ICチップを導電性接着剤により固定する方法の状態図である。導電性接着剤はエポキシ系等の絶縁性ペースト中にAu,Ag,Ni,Cu,Co,Pt等の金属粒子(粒径1μm〜数μm)や粉末、カーボン等の導電性粒子(粒径1μm〜数μm)を分散した接着剤である。等方的に導通するので導電性接着剤はICP(Isotropic Conductive Paste) とも呼ばれる。導電性接着剤を用いる場合は、インターフェース用端子t1,t2つの領域を分けてアンテナに接続する必要がある。すなわち、短絡しないように端子t1と端子t2との領域に分けて導電性接着剤6を塗布し、当該塗布域にそれぞれのアンテナ側端子3a,3bが位置するように位置合わせしてICチップを載置し、圧縮してから接着剤6を乾燥または硬化して固定する。2個のダミー端子d1,d2も短絡しないように領域を分ける必要があるのは同様である。
【0027】
端子t1と端子t2は、平面なパッドであっても、突出したバンプであってもよいが、通常、金バンプを用いて接続する方法が行われる。ICチップ2のバンプの高さは、数μmから最大100μm程度で、一般的には10μm〜60μm程度のものが多い。大きさは、30μmから100μm程度の円形(径)や正方形型(辺)が用いられる。
図示していないが、導電性フィルムを用いる場合も同様である。ホットメルト性の導電フィルムを使用し、熱圧をかけて熱溶融し導電性粒子間を接触させて導通させる。その後、温度を下げて固定させる方法が用いられることも多い。
【0028】
図4は、異方性導電接着フィルムにより固定する方法の状態図である。この場合は、端子t1と端子t2との領域に分ける必要はなく、装着部の全面に異方性導電接着フィルム7を敷きつめればよい。図示してない2個のダミー端子d1,d2も同様である。端子t1,t2,d1,d2は、一般に突出したバンプを有するものが使用される。
非接触ICタグでは、ホットメルト性の硬化型異方性導電接着フィルム7を使用することが多い。この場合は、ICチップ2上からヒーターブロックを短時間あてがい比較的に低い温度で加熱溶融させ、導電粒子7pが端子間に介在するようにして仮接着する。
本格的な加熱硬化は、その後、別途熱工程を設けて行う。ICチップ2のバンプ高さよりもやや厚めの異方性導電接着フィルム7を使用することが好ましいとされている。
【0029】
異方性導電接着フィルム7は、良く知られるように導電粒子を分散したテープ状接着剤であり、加熱加圧により面方向の絶縁性を維持したまま厚み方向に導電性を示す微細回路の接続材料である。導電粒子の添加量が一定の範囲で一方向性となり、添加量が増大するにつれて等方性になる。厚み方向には低い抵抗率であって高い導電性が得られることが好ましく、面方向は高い絶縁性があって隣接回路と電気的に遮断されるのが好ましい。このような相反する特性を備えるフィルムは、異方導電フィルム等とも呼ばれ、市販品として日立化成社製の「アニソルム(商標)」やソニーケミカル社製の各種製品等がある。
【0030】
異方性導電接着フィルム7には、導電性接着剤と同様の金属粒子が用いられるほか、直径数μmから数十μmのプラスチック微粒子を核とし、その表面に、ニッケル/金めっき等の導電性層を被覆した材料が用いられる。プラスチック微粒子は圧縮されて端子との接触面積が増大するため良好な導通がされると言われる。また、フィルムの圧力がかかった方向にのみ導通するので、非接触インターフェース用端子t1,t2やダミー端子d1,d2の領域を分ける必要はない。ただし、圧力により導通するので突出したバンプを有することが必要になる。接続する双方の端子間に1粒の導電粒子7pが挟まれば導通が確保されると言われる。図4よりも、さらに圧縮された状態で端子t1,t2と端子3a,3b間に導電粒子7pが挟まれた状態になる。異方性導電接着フィルム7には、粘着性のものも用いられるが、非接触ICタグでは熱硬化性やホットメルト性の樹脂フィルムを使用し熱溶融させて導通させることが多い。工程の短縮のため、低温度、短時間で接続可能なことが必要となる問題がある。
【0031】
図5は、同非導電性接着剤により固定する方法の状態図である。非導電性接着剤8の場合は、ICチップ2側の端子とアンテナ3の端子間に接着剤が介在するのではなく、ICチップ2の端子とアンテナ間を接触させた状態で、周囲を接着剤で固めて固定する方法である。まず、図5(A)のように、アンテナ3の両端部3a,3bの間に非導電性接着剤8をディスペンサーまたはスクリーン印刷法により供給する。次に、図5(B)のように、ICチップ2の端子t1,t2をアンテナ3の両端部3a,3bに密着させ、非導電性接着剤8を仮キュアさせた後、熱をかけて最終的な硬化(キュア)をさせる。
【0032】
非導電性接着フィルムの場合も非導電性接着剤と同様であるが、接着フィルムをアンテナ端子面に置いてからICチップ2を載せて位置合わせし、ヒーターブロックで熱圧をかけてフィルムを溶融させ、ICチップ2の端子t1,t2がアンテナの両端部3a,3bに接触するようにする。その後、冷却してICチップ2をアンテナ面に固定する。
【0033】
ICチップの装着には上記のような装着方法が採用されている。一般に、非接触ICタグの装着ではICチップの破壊を防止するため、あまり高温、高圧をかけないようにしている。従って、接続不良が生じ易い問題もある。
以上のようにして、アンテナパターン3にICチップ2を装着すると、アンテナシートが完成するが、その状態のままでも非接触ICタグとして使用できる。アンテナシートのアンテナ面に表面保護シートを被覆すれば、アンテナ3やICチップ2の保護強化を図れる。表面保護シートは後にもダミー端子間の抵抗値を測定可能にするため、接点6ap,6bp部分を開口しておくこともできる。
【0034】
なお、検査用端子間の抵抗値の測定は、ICチップに高い電流が流れないようにして行うのが好ましい。また、低抵抗値であるため端子自体の抵抗値が測定されないようにするのが好ましいが、接続部に接近した位置の検査用端子であれば、当該抵抗値は略一定のものとすることがきる。
【実施例1】
【0035】
非接触ICチップ2として、通常の非接触インターフェース用の2個の端子(t1,t2)の他に2個のダミー端子(d1,d2)を有し、当該2個のダミー端子間がICチップ内部で短絡し、ダミー端子間の直流抵抗値が100mΩ以下の試験品を使用した。
なお、ICチップ2の平面外形は1.2mm角、厚み125μmのものである。
非接触ICタグ1のベースフィルム5として、厚み20μmの透明2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用し、その片面に厚み25μmのアルミニウム箔をラミネートして使用した。このベースフィルム5のICチップ2装着面側に、図6のようなアンテナコイル3とアンテナ端部3a,3b、検査用端子6a,6bを設けたアンテナパターンをエッチングして形成した。図6には図示してないが、接点6ap,6bpをICチップ2のエッジから2mm以内になるように形成した。アンテナコイル3自体の外形は、46mm×76mm程度となった。
【0036】
前記試験品のICチップ2のフェース面に、厚み16μmの異方性導電接着フィルム(ソニーケミカル株式会社製「SCCFP20626」)7を圧着した後、アンテナコイル3の端部3a,3bにICチップ2の端子t1,t2が位置し、検査用端子6a,6bにダミー端子d1,d2が位置するように位置合わせしてから、ヒータブロックを用いICチップ2を温度80°C、圧力10kgf/cm2 、時間1秒の条件で、アンテナ端部に仮貼りした。仮貼り後、温度200°C、500gf/cm2 、時間20秒の条件で熱圧をかけて本固定し装着を完了した。なお、ICチップ2の2個の端子(t1,t2)と2個のダミー端子(d1,d2)の金バンプの高さは12μm、大きさは径50μmのものである。
【0037】
接点6ap,6bp間の直流抵抗値を、1mAの電流値により測定した後、ベースフィルム5のアンテナ表面側に厚み20μmの2軸延伸PETフィルムを積層して表面保護シートとし、ベースフィルム5のアンテナ表面とは反対側面には粘着剤加工を行って、非接触ICタグ1を完成した。なお、表面保護シートの接点6ap,6bpに相当する部分には、径1mmの開口を設けた。
【実施例2】
【0038】
非接触ICチップ2は、実施例1と同一の試験品を使用した。従って、ICチップ2のバンプの高さも実施例1と同一である。非接触ICタグ1のベースフィルム5も実施例1と同一のものを使用し、実施例1と同一のアンテナコイル3を形成した。
アンテナコイル3と端部3a,3bにICチップ2の端子t1,t2が位置し、検査用端子6a,6bにダミー端子d1,d2が位置するように位置合わせし、各端子t1,t2とダミー端子d1,d2が短絡しないように領域を分けて、液状導電性熱硬化性接着剤(九州松下電器株式会社社製「DBC230S」)6を塗布して、前記試験品のICチップ2をアンテナコイル端部に装着した。装着条件は、ヒータブロックを用いICチップ2を温度160°C、圧力10kgf/cm2 、時間5秒の条件で、アンテナ端部に本固定する方法によった。
【0039】
接点6ap,6bp間の直流抵抗値を、1mAの電流値により測定した後、ベースフィルム5のアンテナ表面側に厚み20μmの2軸延伸PETフィルムを積層して表面保護シートとし、ベースフィルム5のアンテナ表面とは反対側面には粘着剤加工を行って、非接触ICタグ1を完成した。
【0040】
実施例1と実施例2による非接触ICタグ1の検査用端子の接点6ap,6bp間の直流抵抗値を前記方法により測定したところ、いずれも160mΩ以内の抵抗値であり、異常が認められないことが確認できた。リーダライタ(ウェルトキャット株式会社製「RCT−200−1」)によるリードライトも確実にできることが確認された。
【0041】
上記実施例では、試験品のICチップが少数であったため、アンテナへの実装で接続の不具合が生じる場合を検出できなかったが、実際の量産においては接続不良が、1%以下の率ではあるが発生することが想定される。非接触ICタグの通信不良が生じた場合、その原因がICチップに基づくものが、ICチップとアンテナ間の接続不良に基づくものかを、本発明の非接触ICタグまたはICチップ装着検査方法によれば、迅速かつ確実に判定することができる。また、ICチップとアンテナ間の接続の各種方法による信頼性試験、例えば高温、高湿度耐性試験や熱衝撃試験、等についても試験を行うことができ、ICタグの信頼性向上に寄与できるものと確信する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の非接触ICタグのICチップの装着状態を示す図である。
【図2】本発明に使用するICチップの概念図である。
【図3】ICチップを導電性接着剤により固定する方法の状態図である。
【図4】同異方性導電接着フィルムにより固定する方法の状態図である。
【図5】同非導電性接着剤により固定する方法の状態図である。
【図6】電磁誘導型のアンテナパターンの例を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1 非接触ICタグ
2 ICチップ
3 アンテナコイル、アンテナ
4 ダイポール型アンテナ
5 ベースフィルム
6 導電性接着剤
7 異方性導電接着フィルム
8 非導電性接着剤
11 導通回路



【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触ICタグのアンテナパターンに接着剤または接着フィルムを用いてフェイスダウン方式により装着したICチップが、非接触インターフェース用の2個の端子と2個または2個以上のダミー端子を有するICチップである場合において、当該装着したICチップの少なくとも2個のダミー端子間には、ICチップの内部に短絡回路が形成されていることを特徴とする非接触ICタグ。
【請求項2】
フェイスダウン方式による装着が、導電性接着剤、導電性接着フィルム、異方性導電接着フィルムのいずれかを用いてICチップをアンテナパターンに装着したものであることを特徴とする請求項1記載の非接触ICタグ。
【請求項3】
フェイスダウン方式による装着が、非導電性接着剤または非導電性接着フィルムのいずれかを用いてICチップをアンテナパターンに装着したものであることを特徴とする請求項1記載の非接触ICタグ。
【請求項4】
非接触ICタグのアンテナパターンにICチップをフェイスダウン方式により装着する場合の装着の確実性を検査する方法であって、(1)非接触ICタグのベースフィルム面にアンテナパターンと当該アンテナパターンの両端部であって、ICチップに接続する2つの端子と、2つの検査用端子をICチップ装着部に形成する工程、
(2)前記アンテナパターンの接続端子と検査用端子に、非接触インターフェース用の2個の端子と2個または2個以上のダミー端子を有するICチップであって、当該ICチップの少なくとも2個のダミー端子間には、ICチップの内部に短絡回路が形成されているICチップを、接着剤または接着フィルムを用いて固定して装着する工程、
(3)ICチップの装着後に、2つの検査用端子間の抵抗値を測定する工程、
を有することを特徴とする非接触ICタグのICチップ装着検査方法。
【請求項5】
接着剤が導電性接着剤または非導電性接着剤であることを特徴とする請求項4記載の非接触ICタグのICチップ装着検査方法。
【請求項6】
接着フィルムが導電性接着フィルム、異方性導電接着フィルムまたは非導電性接着フィルムであることを特徴とする請求項4記載の非接触ICタグのICチップ装着検査方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−287062(P2007−287062A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116303(P2006−116303)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】