説明

非放出Muc1およびMuc16に対する抗体、およびその使用

本発明は、抗体、抗体フラグメント、抗体および抗体フラグメントと細胞毒性物質とのコンジュゲート、ならびに抗体および抗体フラグメントを産生するハイブリドーマであって、抗体および抗体フラグメントが、細胞膜タンパク質の細胞外液中へリリースされない細胞外エピトープを認識するもの;ならびに抗体、抗体フラグメントおよびコンジュゲートを用いて、悪性疾患、たとえば胸部癌および卵巣癌を検出、モニタリングおよび処置する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
[01] 本発明は、細胞膜エピトープ指向性抗体に関する。詳細には本発明は、抗体、それらの抗体を産生するハイブリドーマ、および抗体を含有する組成物、ならびにその使用に関するものであり、これらの抗体は、細胞膜上に保持されており実質的に細胞外媒質中へ放出(shed)されていないタンパク質の細胞外部分にあるエピトープを認識する。本発明はさらに、そのような抗体および抗体含有組成物を、癌、たとえばMuc1および/またはMuc16タンパク質レベルが変化した卵巣癌および胸部癌の検出、処置およびモニタリングに使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[02] 細胞表面抗原は、しばしばタンパク質分解開裂により細胞から放出される。生じたフラグメントは血液中に循環した状態でみられる。循環している放出抗原は疾病状態のモニタリングにはしばしば有用であるが、免疫療法の効果に対してはマイナスの影響をもつ可能性がある。このため、放出(shedding)後も細胞会合(cell−associated)したままの細胞膜タンパク質の細胞外傍膜領域をターゲットとする抗体は、免疫療法にとって理想的である。
【0003】
[03] Muc1(エピシアリン(episialin)、多型性上皮ムチン、PEM、PUM、MAM−6、PAS−O、EMA、NPG、DF−3)およびMuc16(CA−125)は、多様な悪性疾患においてアップレギュレーションされる細胞膜ムチンである(Jacobs and Bast,1989;Taylor−Papadimitriou et al.,1999)。Muc1およびMuc16は両方ともタイプI膜タンパク質であり、下記のものを含む:(a)短かい細胞質ドメイン(Muc1についてはアミノ酸69個、Muc16についてはアミノ酸31個)、これは細胞内シグナル伝達機構と相互作用する(Li et al.,1998;Li and Kufe,2001;Li et al.,2001;Li et al.,2001;Fendrick et al.,1997;Konishi et al.,1994);(b)膜貫通ドメイン;および(c)著しくグリコシル化された大きな細胞外ドメイン。両タンパク質の細胞外ドメインは大きなタンデム・リピート領域を含み、Muc1はアミノ酸20個の長さのタンデム・リピート、Muc16はアミノ酸156個の長さのタンデム・リピートを含む。Muc1が含むタンデム・リピートの数は変動する(対立遺伝子に応じて25〜100)(Devine and McKenzie,1992;O’Brien et al.,2001;O’Brien et al.,1998;Taylor−Papadimitriou et al.,1999)。現在のところ、Muc16の遺伝子多型性を支持する証拠はない。生じるMuc1およびMuc16のペプチドコアは、それぞれ約125〜200kDaおよび2.5MDaの分子量をもつ(O’Brien,2002)。
【0004】
[04] Muc1は、共通前駆物質から誘導されるヘテロ二量体として上皮細胞上に発現する(Ligtenberg et al.,1992;Parry et al.,2001)。小胞体内でカリクレイン様プロテアーゼによる翻訳時タンパク質分解プロセシングが起きると思われる(Parry et al.,2001)。その細胞外サブユニットは、細胞内プロセシングおよび細胞表面への輸送に際して、膜貫通領域および細胞質テイルを含むサブユニットと非共有結合的に会合した状態を維持する。Muc16が同様にタンパク質分解プロセシングされるかどうかはまだ分かっていない。しかしMuc16は、膜貫通ドメインからアミノ酸約100個離れた位置の細胞外ドメイン内に、保存されたフューリン開裂部位(RXK/RR)をもつ(Bassi et al.,2000;Molloy et al.,1999;O’Brien et al.,2001)。フューリンは、細胞表面受容体を含めたいくらかのタンパク質のトランスゴルジ網タンパク質分解プロセシングに関与することが示唆されている(Molloy et al.,1999)。
【0005】
[05] Muc1およびMuc16は両方とも、悪性疾患を診断し、処置の進行をモニタリングするための血清マーカーとして利用できる。たとえばMuc1抗体アッセイ法を用いて胸部癌を診断し、処置の進行をモニタリングすることができ(Bon et al.,1997)、一方、卵巣癌の場合は抗Muc16抗体、たとえばOC125およびM−11を使用できる(Cannistra,1993)。放出(shedding)(すなわち、これらのムチンまたはそれらのフラグメントが血液その他の細胞外液中へリリースされること)の機序は十分には分かっていない。Muc16の場合、放出はEGF刺激に応答したMuc16の細胞質ドメインのセリン/トレオニンリン酸化により調節されると思われる(O’Brien et al.,1998)。Muc1もEGF刺激に応答してリン酸化されるが、現在のところMuc1の部分の放出機序におけるそのようなリン酸化の役割については証拠がない。放出されたMuc1部分が小胞体でのMuc1タンパク質の開裂により産生された細胞外サブユニットに対応するかどうか、あるいはストローマプロテアーゼがターゲットとする開裂部位がさらにあるかどうかも不明である。現在、Muc16のプロセシングおよび放出に関しては、これよりさらに情報がない。配列情報から、Muc16は潜在フューリン開裂部位のほかに、膜貫通ドメインからアミノ酸約50個上流に位置する潜在ストロモライシン(stromolysin)開裂部位(SPLA)をもち、その開裂によりCA125のフラグメントがリリースされ、これにモノクローナル抗体OC125およびM−11が結合することが示唆される。
【0006】
[06] 毒性の高いメイタンシノイド(maytansinoid)薬物およびプロドラッグにコンジュゲートした腫瘍細胞特異性モノクローナル抗体は、マウスモデルにおいて腫瘍の治療に有効であることが示された(Liu et al.,1996)。Muc1およびMuc16タンパク質は、たとえば腫瘍活性化プロドラッグ(TAP)と呼ぶことができるそのような抗体含有コンジュゲートの開発のための有望なエピトープ源である。これらのエピトープの発現が腫瘍においてしばしば増大するからである(前記を参照)。
【0007】
[07] しかし、Muc1およびMuc16抗体を疾病状態のモニタリングに利用できる(前記を参照)ことにより証明されるように、腫瘍細胞が発現するMuc1またはMuc16全体のうちの一部は、血流中へ放出される。種々のターゲット抗原に対する裸または薬物結合モノクローナル抗体を用いた臨床試験は、ある患者に存在する高濃度の循環抗原が問題であることを示唆している(Baselga et al.,1996;Pegram et al.,1998;Tolcher et al.,2001)。高濃度の循環抗原は抗体クリアランス速度を大幅に高め、その結果、腫瘍への抗体送達が低下する。さらに、放出された抗原を認識する薬物結合抗体の場合、クリアランス速度増大の結果、用量を制限する肝毒性が生じる。ある患者が比較的低いレベルの放出抗原を示す可能性はあるが、分子当たりのエピトープ数を増加させる可能性のあるMuc1およびMuc16のようなムチンのタンデム・リピート性は、放出エピトープの絶対定量の達成を困難にする。したがって、これらの分子の放出部分に対する現在入手可能なMuc1およびMuc16抗体では、患者の放出抗原レベルが抗体療法を妨害するほど高いかどうかについて信頼性をもって患者を評価することはできない。したがって、Muc1またはMuc16の非放出部分に含まれるエピトープに特異的であり、よってMuc1およびMuc16の高濃度の循環放出フラグメントの存在下ですらそのような抗体の細胞毒性薬物コンジュゲートを効率的に腫瘍細胞へ向けることができる抗体が求められている。現在まで、放出型タンパク質の非放出−細胞外ドメインと反応すると規定された抗体は報告されていない。
【0008】
[08] 本発明者らは、先行技術において確認された前記の欠点および問題点に対処する抗体、抗体フラグメント、およびそのような抗体またはフラグメントのコンジュゲート、そのような抗体の調製法およびスクリーニング法、診断スクリーニング法、ならびにそのような抗体およびコンジュゲートを用いた処置方法を開発した。本発明の多数の利点は、以下の開示内容を読むと当業者に明らかになるであろう。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
[09] 本発明者らは、放出型抗原の非放出−細胞外部分にあるエピトープを指向する抗体が、特定の悪性疾患の検出、モニタリングおよび処置のための改良された特性をもつことを見いだした。
【0010】
[10] 第1態様において本発明は、放出型抗原の非放出−細胞外部分のエピトープに結合しうる単離されたモノクローナル抗体、およびその抗体を産生しうるハイブリドーマに関する。この態様は無傷抗体に限定されず、抗体フラグメント、および抗体フラグメントを含む組換え融合タンパク質をも包含する。抗体産生手段には特に制限はなく、動物の免疫化およびハイブリドーマの調製のほか、たとえば抗体または抗体フラグメントのファージディスプレイライブラリーのパニングによる組換え抗体フラグメントのスクリーニングも包含される。さらに本発明は、放出型抗原の細胞外−非放出部分を含む組換え融合タンパク質による動物の免疫化、または放出型抗原の組換え−非放出−細胞外ドメインを発現する細胞による動物の免疫化を包含する。
【0011】
[11] この態様の抗体は、放出型抗原の非放出−細胞外部分にあるエピトープを指向する。例示的な1態様において、放出型抗原はヒトMuc1またはMuc16である。好ましくは、Muc1エピトープの少なくとも一部はMuc1細胞外ドメインの最後の(したがってMuc1細胞外ドメインのカルボキシ末端の)アミノ酸90個内に位置し、Muc16エピトープの少なくとも一部はMuc16細胞外ドメインの最後の(したがってMuc16細胞外ドメインのカルボキシ末端の)アミノ酸110個内に位置する。
【0012】
[12] たとえば、Muc1の好ましいエピトープは、少なくとも一部が下記のアミノ酸配列:
【0013】
【化1】

【0014】
内に位置し、Muc16の好ましいエピトープは、少なくとも一部が下記のアミノ酸配列:
【0015】
【化2】

【0016】
内に位置する。
[13] しかしこの態様は、少なくとも一部がSEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:2に示す配列内に位置するエピトープを認識する抗体のみに限定されず、ヒトMuc1またはMuc16タンパク質の非放出−細胞外部分にあるすべてのエピトープを指向する抗体をも包含する。したがってこの態様は、放出型抗原の非放出−細胞外部分の多型(現在知られているもの、またはまだ見いだされていないもの)を含めたエピトープを指向する抗体または抗体フラグメントをも包含する。
【0017】
[14] 第2態様において本発明は、細胞毒性物質または細胞毒性物質プロドラッグに共有結合した本発明抗体を含む、コンジュゲートに関する。好ましい態様において、細胞毒性物質はメイタンシノイド類、メイタンシノイド類の類似体、メイタンシノイド類のプロドラッグ、またはメイタンシノイド類の類似体のプロドラッグである。そのようなコンジュゲートは、腫瘍細胞特異的療法薬として有用である(参照:USP No.6,333,410;5,475,092;5,585,499;および5,846,545)。さらに、好ましい細胞毒性薬物はタキサン(taxane)類またはCC−1065類似体である(参照:タキサン類についてはUSP No.6,340,701および6,372,738、そしてCC−1065類似体についてはUSP No.5,846,545;5,585,499および5,475,092)。
【0018】
[15] 第3態様において本発明は、放出型抗原の非放出−細胞外部分のエピトープに結合しうる抗体または該抗体のコンジュゲート(抗体フラグメントのコンジュゲートを含む)および医薬的に許容できるキャリヤーを含む、組成物を提供する。
【0019】
[16] 第4態様において本発明は、有効量の本発明の第2または第3態様の医薬組成物を投与することにより、処置を必要とする対象、たとえばヒトMuc1またはMuc16などの放出型抗原が増加している悪性疾患を伴う対象を処置する方法を提供する。好ましい態様においてこの処置は、卵巣癌または胸部癌を伴う対象に関する。
【0020】
[17] 第5態様において本発明は、放出型抗原レベルが増大している状態について対象をスクリーニングする方法を提供する。この態様においては、現在知られているものまたはまだ開発されていないものを含めた任意の免疫学的方法に本発明の抗体を利用して、その状態を伴う疑いのある対象における放出型抗原レベルを測定することができる。放出型抗原の非放出−細胞外部分に結合する抗体を用いて、対象から得た組織試料中の放出型抗原の量を適切な対照試料中の量または既知のベースラインレベルと比較することにより、放出型抗原レベルが増大している状態について対象をスクリーニングする。
【0021】
[18] 最後に第6態様において本発明は、抗体または抗体フラグメントのライブラリーから本発明の抗体をスクリーニングする方法を提供する。この態様においては、下記により抗体またはフラグメントが同定される:(1)Muc1および/またはMuc16を発現している組織培養物または腫瘍検体に由来する細胞の使用により、放出型抗原の非放出−細胞外部分のエピトープが認識されること、ならびに(2)細胞外媒質、たとえば組織培養培地または癌患者の血液中へ放出されたヒトMuc1またはMuc16タンパク質が認識されないこと。この方法(任意の順序で適用)により、放出型タンパク質、たとえばヒトMuc1またはMuc16、の非放出−細胞外部分にあるエピトープを指向する抗体が同定される。
【0022】
発明の詳細な説明
[38] 本発明を放出型抗原Muc1およびMuc16に関して記載する。ただし、本発明がこれらに限定されるとみなすべきではない。
【0023】
[39] 本発明は、放出型抗原、たとえばMuc1およびMuc16、の非放出−細胞外ドメインに特異的に結合するモノクローナル抗体、ならびにその使用を提供する。
[40] 本発明を詳述する前に、下記の用語を定義するのは本発明の理解に有用であろう。
【0024】
[41] 本明細書中で用いる用語”モノクローナル抗体”は、実質的に均一な抗体集団を表わす。すなわちその集団を構成する個々の抗体は、少量存在する可能性のある自然に起きる変異を除いて、特異性および親和性において同一である。モノクローナル抗体組成物が1種類より多いモノクローナル抗体を含む可能性があることを留意されたい。したがって”モノクローナル”という修飾語は実質的に均一な抗体集団としての抗体の性質を表わし、いずれか特定の方法で抗体を産生する必要があると解釈すべきではない。
【0025】
[42] 抗原、たとえばMuc1またはMuc16、の”非放出−細胞外部分(non−shed extracellular portion)”は、本明細書において、細胞外培地または血液中へ実質的にリリースされない抗原の細胞外部分と定義される。
【0026】
[43] 本明細書中で用いる用語”傍膜(juxtamembrane)”は、放出型抗原、たとえばMuc1またはMuc16、の膜貫通ドメイン(図1Aおよび2Aの二重下線ドメインを参照)とそのタンパク質の放出部分とでほぼ囲まれたアミノ酸部分を表わす。したがって放出型抗原の傍膜部分は、それらの非放出−細胞外部分に対応する。
【0027】
[44] 本明細書中で用いる”コンジュゲート”は、細胞毒性物質に共有結合で連結した本発明抗体を表わす。共有結合にはジスルフィド結合などの開裂性結合を含めることができ、これらはターゲット細胞の還元性環境内で共有結合を有利に開裂させることができる。
【0028】
[45] 本明細書中で用いる”プロドラッグ”は、活性化工程を経るまでは実質的に細胞毒性をもたない細胞毒性物質類似体を表わす。活性化工程には、酵素による開裂、化学的活性化工程、たとえば還元性物質への暴露、または物理的活性化工程、たとえば光分解を含めることができる。
【0029】
[46] 本明細書中で用いる”細胞毒性物質”は、ターゲット細胞の増殖を阻害し、またはターゲット細胞を殺すことができる、いずれかの物質である。
[47] ”発現ベクター”は、関心のあるポリペプチドをコードするセグメントがその転写をもたらす追加セグメントに機能可能な状態で連結したものを含む、線状または環状のDNA分子を表わす。そのような追加セグメントには、プロモーター配列およびターミネーター配列が含まれ、1以上の複製起点、1以上の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなども含めることができる。発現ベクターは一般にプラスミドまたはウイルスDNAに由来し、あるいは両方の要素を含んでもよい。
【0030】
[48] タンパク質のアミノ酸配列の一部を番号で表わす場合、別途記載しない限り番号表示は配列のN末端から始まることを理解すべきである。
[49] 本発明のモノクローナル抗体は、合成または組換えペプチドを用いて放出型抗原の細胞外傍膜部分に対して産生させることができる。いずれかのモノクローナル抗体形成方法、たとえばファージディスプレイ技術によるin vitro産生およびマウスなどの動物の免疫化によるin vivo産生を本発明に使用できる。これらの方法には下記に記載のものが含まれる:免疫学的方法:Kohler and Milstein,Nature 256,495−497(1975)、およびCampbell,”モノクローナル抗体技術、げっ歯類とヒトのハイブリドーマの作製と特性解明”,編者Burdon et al.,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology,Vol.13,Elsevier Science Publishers,アムステルダム(1985);ならびに組換えDNA法:Huse et al.,Science 246,1275−1281(1989)。標準組換えDNA技術は、Sambrook et al.,”Molecular Cloning”,第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1987)およびAusubel et al.(編者),”Current Protocols in Molecular Biology”,Green Publishing Associates/Wily−Interscience,ニューヨーク(1990)。
【0031】
[50] 放出型抗原の傍膜領域は、常法により実験的に測定できる。放出型タイプIおよびタイプII膜タンパク質抗原の開裂部位は、当該抗原の組換え−エピトープタグ付きcDNAを用いて、ParryらがMuc1小胞体プロセシング開裂部位の同定に用いた方法の改変法により同定できる(Parry,S.,Silverman,H.S.,McDermott,K.,Willis,A.,Hollingsworth,M.A.,and Harris,A.(2001)in vivo MUC1タンパク質分解開裂部位の同定,Biochem Biophys Res Commun 283,715−20)。タイプI膜抗原の場合、エピトープタグをC末端(非放出フラグメント)に挿入する。次いでこの組換え抗原を適宜な細胞系において一過性発現または安定発現させる。エピトープタグ付き抗原を細胞溶解物から精製し、N末端配列決定を行う。得られた配列情報は、全長および開裂したエピトープタグ付き細胞会合抗原のN末端を構成するであろう。開裂抗原のN末端は、”傍膜”領域の境界を規定する。タイプII膜抗原の場合、エピトープタグをN末端(非放出フラグメント)に挿入する。エピトープタグ付き材料を細胞溶解物から精製し、質量分析を行って、細胞会合フラグメントの分子量を決定する。開裂部位は細胞会合フラグメントの分子量から外挿でき、この場合も、細胞会合した開裂抗原の”傍膜”領域の境界を推測できる。
【0032】
[51] あるいは、当該抗原の細胞内ドメインを指向するモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて内因性の細胞会合抗原を精製し、タイプI膜タンパク質の場合はN末端配列決定に、タイプII膜タンパク質の場合は質量分析に使用できる。
【0033】
[52] in vivo免疫化のためには、ペプチドを好ましくは免疫原タンパク質キャリヤー、たとえばキーホール・リンペット・ヘモシニアン(KLH)にコンジュゲートさせ、あるいは組換えグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)融合タンパク質として調製および使用できる。よって、ペプチド自体を免疫原として使用してもよく、あるいはキャリヤータンパク質またはビーズのような他の物体、たとえばセファロースビーズ、に結合させてもよい。免疫化された動物が抗体を産生した後、抗体産生細胞、たとえば脾細胞、の混合物を単離する。モノクローナル抗体は、個々の抗体産生細胞を混合物から単離し、たとえばそれらを骨髄腫細胞などの腫瘍細胞と融合させて細胞を不死化することにより調製してもよい。好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による安定な高レベルの抗体発現を支持し、かつHAT培地などの培地に感受性の細胞である。これらの好ましい骨髄腫細胞には下記のものに由来するものが含まれる:ネズミ骨髄腫細胞系、たとえばMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍、Salk Institute Cell Distribution Center,米国カリフォルニア州サンディエゴから入手可能;およびSP−2細胞、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、米国バージニア州マナッサスから入手可能;またはP3X63Ag8U.1ネズミ骨髄腫細胞(Yelton et al.,Curr.Top.Microbiol.Immunol.81,1(1978))。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞系も、ヒトモノクローナル抗体の産生用として記載されている(Kozbor,J.Immunol.133:3001(1984))。得られたハイブリドーマを培養保存し、モノクローナル抗体を発現させ、培地から採集する。抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギおよびヒトを含めた任意の哺乳動物において調製させてもよい。抗体は下記の免疫グロブリンクラス:IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE、およびそのサブクラスのいずれかのメンバーであってよく、好ましくはIgG抗体である。サブクローンが分泌したモノクローナル抗体を培地、腹水または血清から一般的な免疫グロブリン精製法、たとえばプロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーにより適宜分離する。
【0034】
[53] 本発明の抗Muc1およびMuc16抗体の産生に用いる抗原は、Muc1またはMuc16タンパク質の傍膜−細胞外−非放出部分に由来するペプチド抗原である(図1Aおよび2A)。Muc1およびMuc16タンパク質は、特にVNTR領域のタンデム・リピート数に関して多型性である。そのような多型性は、現在知られているものならびにまだ同定されていないMuc1およびMuc16多型性のいずれも、本発明の範囲に含まれることは明らかである。たとえば、VNTRリピートの数およびこれらのリピートに隣接する配列が異なる多型形のMuc1が知られている。たとえばGENBANK 寄託番号J05582は、VNTR配列:
PDTRPAPGSTAPPAHGVTSA (SEQ ID NO:3)
の40タンデム・リピートをもつヒトMuc1タンパク質であり、一方GENBANK 寄託番号NM 002456は、このVNTR配列を1コピーだけもつヒトMuc1タンパク質である。ただし、傍膜配列はこれらの配列例間で保存されている。
【0035】
[54] 図1Aには、1つのVNTRタンデム・リピート(下線)および膜貫通領域(二重下線を施した領域)をもつMuc1配列の一例(SEQ ID NO:19)(GENBANK 寄託番号NM 002456)を示す。細胞外ドメインはアミノ酸24〜422からなり、細胞内ドメインはアミノ酸447〜515からなる。小胞体において表面へのトランスロケーション前に起きると思われる開裂部位(アミノ酸23または27におけるN末端シグナルペプチド開裂、およびアミノ酸357における翻訳後開裂部位)を示す。翻訳後開裂部位が放出部分を表わすか、あるいは翻訳後開裂部位に対するN末端またはC末端における第2開裂事象が放出抗原のリリースを引き起こすと思われる。
【0036】
[55] 図1Bに、Muc1傍膜ドメイン−GST融合ペプチド(SEQ ID NO:7)、およびMuc1の細胞外−非放出領域に対する抗体を産生するのに用いたMuc1傍膜配列からなる合成ペプチド(ペプチドa〜e、SEQ ID NO:8〜12)を示す。
【0037】
[56] 同様に図2Aに、ヒトMuc16タンパク質配列の一例(SEQ ID NO:20)を示す。これは、そのC末端にGENBANK 寄託番号AF361486の翻訳配列(Yin,B.W.T.,Lloid,K.O.(2001)CA125卵巣癌抗原の分子クローニング,J Biol Chem 276,27371−37375)をもち、かつGENBANK 寄託番号AF414442から翻訳されるアミノ末端配列およびタンデム・リピート配列(O’Brien et al.(2000)Tumor Biology 22,348−366;この参考文献にはCA125の全配列が含まれるであろう)をもつ。図2Aには、それぞれアミノ酸156個を含むタンデム・リピート単位の最初の2つのみを示す(/−/は、残りのタンデム・リピートが起きるギャップを示す;Muc16はMuc1と異なり、同一のリピートを含まない)。これまでに45の異なるタンデム・リピート配列が同定されたが、個々のリピートが1回より多く起きるので、Muc16配列中に存在する数は最高60の可能性がある。O’BrienらのC末端ドメインは、Yinら(前掲)が発表したものと数個のアミノ酸が異なるにすぎない。本明細書に引用したMuc1の例の場合のように、本明細書中の2例のMuc16の傍膜配列も保存されている。
【0038】
[57] Muc16のC末端ドメイン内には下記の特色がある:
下記の配列をもつ膜貫通ドメイン
FWAVILIGLAGLLGLITCLICGVLV (SEQ ID NO:4);
下記の配列をもつ潜在フューリン開裂部位
RNKR (SEQ ID NO:5);
下記の配列をもつ潜在ストロモライシン部位
SPLA (SEQ ID NO:6)。
【0039】
[58] フューリン開裂部位は小胞体において起きる翻訳後開裂の部位を表わすと思われ、一方ストロモライシン部位は放出型Muc16の放出を生じる開裂であると思われる。
[59] 図2Bに、Muc16傍膜ドメイン−GST融合ペプチド(SEQ ID NO:13)、およびMuc16の細胞外−非放出領域に対する抗体を産生するのに用いたMuc16傍膜配列を含む合成ペプチド(a〜e、SEQ ID NO:14〜18)を示す。Muc16傍膜ドメイン−GST融合ペプチドおよび合成ペプチドが含む”傍膜”領域は、実際の非放出Muc16細胞外ドメインより長くても、または短かくてもよい。
【0040】
[60] ヒトMuc1タンパク質の非放出−細胞外部分のエピトープに結合しうる本発明抗体は、たとえば膜貫通領域のN末端アミノ酸約90個内の領域から選択した抗原ペプチドを用いて調製できる(図1A)。好ましくは、抗原ペプチドはアミノ酸10〜30個の長さである。下記の合成ペプチド(図1B):
【0041】
【化3】

【0042】
は抗原として最も好ましいものであり、好ましくはキーホール・リンペット・ヘモシニアン(KLH)に結合している。
[61] あるいは、ヒトMuc1タンパク質の非放出−細胞外部分のエピトープに結合しうる本発明抗体は、融合タンパク質、たとえばMuc1傍膜ドメイン−GST融合タンパク質である抗原を用いて産生することもできる。たとえば下記の構築体が好ましい:
【0043】
【化4】

【0044】
ここで”GST−”はグルタチオン−S−トランスフェラーゼを表わす(図1B)。
[62] ヒトMuc16タンパク質の非放出−細胞外部分のエピトープに結合しうる本発明抗体は、たとえば膜貫通領域のN末端アミノ酸約110個内の領域から選択した抗原ペプチドを用いて調製できる(図2A)。下記の合成ペプチド(図2B):
【0045】
【化5】

【0046】
は抗原として最も好ましいものであり、好ましくはKLHに結合している。
[63] あるいは、ヒトMuc16タンパク質の非放出−細胞外部分のエピトープに結合しうる本発明抗体は、融合タンパク質、たとえばMuc16傍膜ドメイン−GST融合タンパク質である抗原を用いて産生することもできる。たとえば下記の構築体:
【0047】
【化6】

【0048】
が好ましい(図2B)。
[64] 本発明の抗体は、たとえば図3に示す方法によりスクリーニングできる。この例においては、まずMuc1またはMuc16を発現する細胞と反応する能力について抗体をスクリーニングする。後続または同時工程において、抗原発現細胞の組織培養培地中へ放出されたMuc1またはMuc16エピトープと反応しない抗体を選択する。これにより、Muc1またはMuc16エピトープと反応はするが、組織培養培地中へ放出されたMuc1またはMuc16エピトープとは反応しない抗体が同定される。これらの抗体を、卵巣癌患者からの血清との反応性について、サンドイッチELISAアッセイによりさらにスクリーニングする。この場合、捕獲抗体はスクリーニングすべき抗体であり、トレーサー抗体は放出抗原ドメインに含まれるエピトープを認識する抗体である。あるいはトレーサー抗体は、捕獲抗体の場合とは異なるが同様に傍膜ドメインに含まれるエピトープを認識する抗体であってもよい。そのような血清と反応しない抗体を、次いで免疫組織化学的染色法により正常組織および腫瘍組織に暴露する。腫瘍組織反応性をもつが血漿成分および正常組織に対しては実質的に非反応性であると同定された抗体は、癌の処置のための候補抗体である。所望により、そのような抗体を細胞毒性薬物、たとえばメイタンシノイドDM1(Chari et al.,1992)に結合させることができる。
【0049】
[65] あるいは、組換え放出型抗原またはその一部、たとえば非放出ドメインのみを含む部分を安定に発現する細胞で、哺乳動物を免疫化することができる。哺乳動物細胞における発現に適したベクターには、SV−40、アデノウイルス、レトロウイルスに由来するDNA配列の周知の誘導体、ならびに機能性哺乳動物ベクター、機能性プラスミドおよびファージDNAの組合わせにより得られるシャトルベクターが含まれる。他の真核細胞性発現ベクターが当技術分野で知られている(たとえばP.J.Southern and P.Berg,J.Mol.Appl.Genet.1,327−341(1982);S.Subramani et al.,Mol.Cell.Biol.1,854−864(1981);R.J.Kaufmann and P.A.Sharp,”モジュラージヒドロ葉酸レダクターゼ相補的DNA遺伝子と同時トランスフェクションした配列の増幅と発現”,J.Mol.Biol.159,601−621(1982);R.J.Kaufmann and P.A.Sharp,Mol.Cell.Biol.159,601−664(1982);S.I.Scahill et al.,”チャイニーズハムスター卵巣細胞におけるヒト免疫インターフェロンDNA遺伝子の発現と生成物の特性解明”,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,80,4654−4659(1983);G.Urlaub and L.A.Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4216−4220(1980))。制御シグナル、および発現させるDNA、たとえば抗体または抗体均等物をコードするDNAを含む適切なベクターを、発現のための宿主細胞に挿入する。
【0050】
[66] 本発明には、本明細書に記載する抗体の機能均等物も含まれる。機能均等物は本発明の抗体のものに匹敵する結合特性をもち、たとえばキメラ抗体、ヒト化抗体および一本鎖抗体、ならびにそのフラグメントが含まれる。そのような機能均等物の調製方法は、PCT出願WO93/21319;欧州特許出願239,400;PCT出願WO89/09622;欧州特許出願338,745;および欧州特許EP332,424に開示されている。
【0051】
[67] 機能均等物には、本発明の抗体の可変部または超可変部のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列をもつポリペプチドが含まれる。本明細書においてアミノ酸配列に適用する”実質的に同一”とは、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85,2444−2448(1988)によるFASTA検索法によって判定して、少なくとも80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%の配列が他のアミノ酸配列と配列同一性をもつ配列であると定義される。
【0052】
[68] キメラ抗体は、実質的に、または専ら、ヒト抗体定常部に由来する定常部、および実質的に、または専ら、ヒト以外の哺乳動物の抗体可変部の配列に由来する可変部をもつことが好ましい。ヒト化型の抗体は、たとえばマウス抗体の相補性決定領域をヒト枠組みドメイン中へ置換することにより作製される;たとえばPCT公開番号WO92/22653を参照。ヒト化抗体は、実質的に、または専ら、相補性決定領域(CDR)以外の対応するヒト抗体領域に由来する定常部および可変部、ならびに実質的に、または専ら、ヒト以外の哺乳動物に由来するCDRをもつことが好ましい。
【0053】
[69] 機能均等物には、一本鎖抗体(scFv)として知られる一本鎖抗体フラグメントも含まれる。本発明の一本鎖抗体フラグメントは、非放出Muc1またはMuc16エピトープを結合するが放出Muc1またはMuc16エピトープを結合しない、組換えポリペプチドである。これらのフラグメントは、抗体可変部L鎖アミノ酸配列(VL)の少なくとも1つのフラグメントに、1以上の連結リンカーを介して、または介さずに連繋した、抗体可変部H鎖アミノ酸配列(VH)の少なくとも1つのフラグメントを含む。そのようなリンカーは、(VL)ドメインと(VH)ドメインが結合した場合にそれらの適正な三次元フォールディングが確実に起き、これにより一本鎖抗体フラグメントが由来した抗体全体のターゲット分子結合特異性が保持されるように選択された、短かいフレキシブルなペプチドであってよい。一般に(VL)または(VH)配列のカルボキシ末端はそのようなペプチドリンカーにより、相補的な(VL)および(VH)配列のアミノ酸末端に共有結合により連結してもよい。一本鎖抗体フラグメントは、分子クローニング、抗体ファージディスプレイライブラリー、またはこれらに類する方法により得てもよい。これらのタンパク質を、真核細胞、または細菌を含めた原核細胞において産生させてもよい。
【0054】
[70] 一本鎖抗体フラグメントは、本明細書に記載する抗体全体の可変部または相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つをもつアミノ酸配列を含むが、これらの抗体の定常ドメインの一部または全部を欠如する。これらの定常ドメインは抗原結合には必ずしも必要ないが、抗体全体の構造の主要な部分を構成する。したがって一本鎖抗体フラグメントは、定常ドメインの一部または全部を含む抗体の使用に伴う問題のうち若干を克服することができる。たとえば一本鎖抗体フラグメントは、生体分子とH鎖定常部の不都合な相互作用または他の目的外の生物活性を生じにくい。さらに、一本鎖抗体フラグメントは抗体全体よりかなり小さいので抗体全体より大き毛細血管透過性をもち、したがって一本鎖抗体フラグメントはより効率的にターゲット抗原結合部位へ局在して結合できる。また抗体フラグメントは原核細胞において比較的大規模に産生させることができ、このためそれらの生産が容易になる。さらに、比較的小さいサイズの一本鎖抗体フラグメントであるため、それらは抗体全体よりレシピエントにおいて免疫応答を誘発しにくい。
【0055】
[71] 機能均等物にはさらに、抗体全体と同一または同等の結合特性をもつ抗体フラグメントが含まれる。そのようなフラグメントは、FabフラグメントまたはF(ab’)フラグメントのうち一方または両方を含んでもよい。好ましくは、抗体フラグメントは抗体全体の6つの相補性決定領域を全部含むが、全部より少ないそのような領域、たとえば3、4または5つのCDRを含むフラグメントも機能性である。さらに、機能均等物は下記の免疫グロブリンクラスのいずれかのメンバーであってもよく、それらのメンバーを組み合わせてもよい:IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE、およびそのサブクラス。
【0056】
コンジュゲート
[72] 本発明のコンジュゲートは、細胞毒性物質に結合した、本明細書に開示する抗体、フラグメント、およびそれらの類似体を含む。好ましい細胞毒性物質はメイタンシノイド類、タキサン類、またはCC−1065の類似体である。コンジュゲートはin vitro法で調製できる。細胞毒性物質を抗体に連結させるために、連結基を用いる。適切な連結基は当技術分野で周知であり、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定基、光不安定基、ペプチダーゼ不安定基およびエステラーゼ不安定基が含まれる。好ましい連結基はジスルフィド基およびチオエーテル基である。たとえば、コンジュゲートはジスルフィド交換反応を用いて、または抗体と細胞毒性物質の間にチオエーテル結合を形成することにより構築できる。
【0057】
[73] メイタンシノイド類およびメイタンシノイド類似体は、好ましい細胞毒性物質に含まれる。適切なメイタンシノイド類の列には、メイタンシノールおよびメイタンシノール類似体が含まれる。適切なメイタンシノイド類はUSP No.
【0058】
【化7】

【0059】
に開示されている。
[74] タキサン類も好ましい細胞毒性物質である。本発明に使用するのに適したタキサン類は、USP No.6,372,738および6,340,701に開示されている。
【0060】
[75] CC−1065およびその類似体も、本発明に使用するのに好ましい細胞毒性物質である。CC−1065およびその類似体は、USP No.6,372,738;6,340,701;5,846,545および5,585,499に開示されている。
【0061】
[76] そのような細胞毒性コンジュゲートの調製に有望な候補はCC−1065であり、これはストレプトミセス・ゼレンシス(Streptomyces zelensis)の培養ブロスから単離された有効な抗腫瘍性抗生物質である。CC−1065は一般に用いられる抗癌薬、たとえばドキソルビシン(doxorubicin)、メトトレキセートおよびビンクリスチン(vincristine)よりin vitroで約1000倍有効である(B.K.Bhuyan et al.,Cancer Res.,42,3532−3537(1982))。
【0062】
[77] 細胞毒性薬物、たとえばメトトレキセート、ダウノルビシン(daunorubicin)、ドキソルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン(vinblastine)、メルファラン(melphalan)、マイトマイシンC、クロラムブシル(chlorambucil)およびカリケアマイシン(calicheamicin)も本発明のコンジュゲートの調製に適切であり、これらの薬物分子は中間キャリヤー分子、たとえば血清アルブミンを介して抗体に連結させることもできる。
【0063】
診断用途
[78] 診断用途のためには、本発明の抗体を一般に検出可能な部分で標識する。検出可能な部分は、検出可能な信号を直接または間接的に発生できるいかなるものであってもよい。たとえば検出可能な部分は、放射性同位体、たとえばH、14C、32P、35Sもしくは125I;蛍光性もしくは化学発光性化合物、たとえばフルオレセインイソチオシアネート、ローダミンもしくはルシフェリン;または酵素、たとえばアルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼもしくは西洋ワサビペルオキシダーゼであってもよい。
【0064】
[79] 抗体を検出可能な部分に結合させるための当技術分野で既知の方法をいずれも使用でき、これには下記に記載の方法が含まれる:Hunter,et al.,Nature 144:945(1962);David,et al.,Biochemistry 13:1014(1974);Pain,et al.,J.Immunol.Meth.40:219(1981);およびNygren,J.Histochem.and Cytochem.30:407(1982)。
【0065】
イムノアッセイ
[80] 本発明の抗体をいずれか既知のアッセイ法、たとえば競合結合アッセイ、直接および間接サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイに使用できる(Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,pp.147−158(CRC Press,Inc.,1987))。
【0066】
[81] 本発明の抗体はin vivoイメージングにも有用である。この場合、検出可能な部分、たとえば放射線不透性物質または放射性同位体で標識した抗体を、対象(好ましくは血流中)に投与し、受容者における標識抗体の存在および位置をアッセイする。このイメージング法は悪性疾患の病期判定および処置に有用である。抗体を、核磁気共鳴、放射線分析そのほか当技術分野で既知の手段で受容者において検出可能な部分により標識してもよい。
【0067】
[82] 本発明の抗体はアフィニティー精製試薬としても有用である。この方法では、当技術分野で周知の方法により、適切な支持体、たとえばセファデックス樹脂または濾紙に抗体を固定化する。
【0068】
療法用途
[83] 療法用途のためには、本発明の抗体またはコンジュゲートを医薬的に許容できる剤形で対象に投与する。それらをボーラスとしてまたは一定期間にわたる連続注入により静脈内に投与し、筋肉内、皮下、関節内、滑液内、クモ膜下、経口、局所または吸入経路で投与することができる。抗体は、全身療法効果と共に局所療法効果を及ぼすために、腫瘍内、腫瘍周囲、病変部内または病変部周囲経路によっても投与してもよい。
【0069】
[84] 医薬的に許容できる適切なキャリヤー、希釈剤および賦形剤は周知であり、臨床状況に応じて当業者が決定できる。適切なキャリヤー、希釈剤および/または賦形剤の例には下記のものが含まれる:(1)ダルベッコのリン酸緩衝化生理食塩水、pH約7.4、1〜25mg/mlのヒト血清アルブミンを含有、(2)0.9%生理食塩水(0.9% w/vのNaCl)、および(3)5%(w/v)デキストロース。
【0070】
[85] 本発明方法は、in vitro、in vivoまたはex vivoで実施できる。
[86] 本発明方法は、Muc1またはMuc16の発現が増大している癌のスクリーニングおよび/または処置に使用してもよい。少なくともMuc1が増加しているそのような癌の例には卵巣癌、胸部癌、肺癌、膵臓癌および前立腺癌が含まれるが、これらに限定されない。少なくともMuc16が増加しているそのような癌の例には卵巣の重篤な嚢腺腫、ならびに膵臓、肝臓または結腸の癌腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0071】
[87] 抗体が凍結乾燥状態ではなく水性剤形である場合、一般に約0.1〜100mg/mlの濃度で配合されるが、これらの範囲外の広範な変更が可能である。
[88] 疾患の処置について抗体またはコンジュゲートの適切な用量は、上記に定義した処置すべき疾患のタイプ、疾患の重症度および経過、抗体を予防または治療のいずれの目的で投与するのか、それまでの療法の経過、患者の病歴および抗体への応答性、ならびに担当医の決定に依存するであろう。抗体は1回の処置で、または一連の処置にわたって、患者に適切に投与する。
【0072】
[89] たとえば1回以上の個別の投与または連続注入のいずれであっても、疾患のタイプおよび重症度に応じて抗体約0.015〜15mg/kg(患者体重)が患者に投与する初期候補用量である。症状に応じて数日以上にわたって反復投与するには、疾患の症状が目的どおりに抑制されるまで処置を反復する。しかし、他の用量方式が有用な可能性があり、それらが除外されることはない。
【実施例】
【0073】
実施例
実施例1:Muc1およびMuc16の細胞外−細胞会合ドメインに対するモノクローナル抗体の産生
[90] ヒトMuc1またはMuc16の細胞外傍膜領域から選択した20または21個のアミノ酸を表わす合成ペプチド(Boston BioMolecules,Inc.)でマウスを免疫化することにより、ヒトMuc1またはMuc16の推定非放出−細胞外エピトープ(1以上)に対するモノクローナル抗体(Mab)のパネルを作製した。具体的には、CA125(Muc16;SEQ ID NO:20)の残基11644〜11663を表わすMuc16ペプチドa、SSVLVDGYSPNRNEPLTGNS(SEQ ID NO:14);Muc1(SEQ ID NO:19)の残基362〜382を表わすMuc1ペプチドa、QLTLAFREGTINVHDVETQFN(SEQ ID NO:8)を用いて、モノクローナル抗体を産生した。
【0074】
[91] マウスにおける免疫応答性を高めるために、これらの合成ペプチドを、合成時にペプチドのアミノ末端に付加したシステイン残基を介してキャリヤータンパク質キーホール・リンペット・ヘモシニアン(KLH)に結合させ(Boston BioMolecules,Inc.)、免疫化前に完全または不完全フロイントアジュバントと混合した。各ペプチドにつき2または3匹の雌Balb/cマウスに、1匹当たり20μgの抗原を皮下注射し、続いて抗原−プラス−フロイントアジュバントで5回以上の追加免疫を行った。最終注射後3日目に、免疫化マウスを屠殺し、脾細胞調製のために無菌条件下でそれらの脾臓を摘出した。
【0075】
[92] ポリエチレングリコール−1500を融合誘導剤(fusogen)として用い、標準プロトコル(Harlow and Lane,1988,Antibodies:A Laboratory Manual)を改変したものに従って、免疫化マウスからの脾細胞をマウス骨髄腫P3X63Ag8.653細胞と融合させ、ハイブリドーマクローンを作製した。細胞融合の後に細胞を96ウェルプレート内のHAT選択培地に接種し、37℃、5%CO中で培養した。各抗原につき1回の細胞融合実験を行い、385個のMuc16ハイブリドーマおよび692個のMuc1ハイブリドーマの上清が得られた。これらを、後記のようにペプチドELISAおよびフローサイトメトリーにより特異性抗体の存在についてスクリーニングした。両アッセイにおいて良好な反応性を示した幾つかのハイブリドーマクローンの上清を増殖させ、さらに特性解明した。ハイブリドーマは、15%の熱不活性化ウシ胎仔血清(Atlas)、50単位/mlペニシリン/50μg/mlストレプトマイシン(Cambrex)、2mMのL−グルタミン(Cambrex)を補充したRPMI(Cambrex)中に維持した。
【0076】
実施例2:Muc1およびMuc16の細胞外−細胞会合ドメインに対するモノクローナル抗体のELISAによるスクリーニング
[93] ハイブリドーマ上清中のペプチド特異性抗体を、まず固相ペプチドELISAによりスクリーニングした;その際、KLHコンジュゲートしていない特異的ペプチドのビオチニル化調製物(Boston BioMolecules,Inc.)を捕獲抗原として用いた。Immulon H2B 96ウェルプレートを、ウェル当たり250ng(5μg/mlのもの50μl)のNeutrAvidin(Pierce)[0.5M炭酸塩緩衝液、pH10中]により、室温で4〜6.5時間、揺動しながらコーティングした。ウェルをウェル当たり300μlの洗浄用緩衝液(トリス緩衝化生理食塩水(TBS)/0.1%Tween−20)で2回洗浄し、ウェル当たり200μlのTBS/3%BSAにより室温で1時間、揺動しながらブロックした。ウェル当たり50ng(1μg/mlのもの50μl)のビオチニル化ペプチドと共に室温で1時間(Muc16)または4℃で一晩(Muc1)、揺動しながらインキュベートすることにより、ビオチニル化されたMuc1ペプチドaまたはMuc16ペプチドaをNeutrAvidinで捕獲した。ウェルを300μlのTBS/0.1%Tween−20で2回洗浄した後、20μlのTBS/0.1%Tween−20/1.5%BSA(Muc1については1%BSA)、および免疫化ペプチドに対応するハイブリドーマ上清30μlを添加し、プレートを4℃で一晩(Muc16)または室温で1時間(Muc1)揺動した。ウェルを再び300μlのTBS/0.1%Tween−20で2回洗浄した。第2抗体である西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(Jackson Laboratories、115−035−062)を、TBS/0.1%Tween−20/1.5%BSA(Muc1については1%BSA)中に1:3000に希釈したもの100μl(Muc1については50μl)を添加し、揺動しながら室温に1時間おいた。ウェルをTBS/0.1%Tween−20で5回洗浄し、0.03%Hを含有するクエン酸緩衝液(pH4.2)中1mg/mlの2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウム塩(ABTS)(Fluka)基質100μlで発色させ、10〜20分後、EL808 Micro Plate Reader(Bio−Tek Instruments)によりA405で発色を測定した。
【0077】
Muc16
[94] Muc16ペプチドaで免疫化したマウスに由来する385個の被験ハイブリドーマ上清のうち、28個はペプチド抗原への結合について強い陽性、54個は中等度に陽性であった。免疫化用ペプチドへの結合についてのハイブリドーマ上清中の抗体の特異性を、コンパニオンELISAにより確認し、無関係なペプチド(Muc16ペプチドb、SEQ ID NO:15;データは示されていない)への検出可能な結合はみられなかった。
【0078】
Muc1
[95] Muc1ペプチドaで免疫化したマウスに由来する692クローンのハイブリドーマ上清を、ビオチニル化型の免疫化用ペプチドへの結合についてELISAによりスクリーニングした。結果を表1にまとめる。72%のクローンがこのペプチドへの結合を示し、これらのうち約25%が強い結合を示した。
【0079】
【表1】

【0080】
実施例3:Muc1の細胞外−細胞会合ドメインに対するモノクローナル抗体のフローサイトメトリーによるスクリーニング
[96] ELISAスクリーニングに加えて、ハイブリドーマ上清を抗原陽性腫瘍細胞系への結合についてフローサイトメトリーによりスクリーニングした。Muc1ハイブリドーマ上清をCaOV−3細胞によりスクリーニングし、Muc16ハイブリドーマ上清をOVCAR−3細胞によりスクリーニングした。Muc1スクリーニングについては、CaOV−3細胞を15cmの組織培養プレート上で、10%の熱不活性化ウシ胎仔血清(Atlas)、50単位/mlペニシリン/50μg/mlストレプトマイシン(Cambrex)、2mMのL−グルタミン(Cambrex)を補充した完全培地RPMI(Cambrex)中において、37℃、5%CO中で、95%集密度まで増殖させた。収穫の1日前に、細胞に30mlの新鮮な培地を供給した。細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、3mlのCellstripper(Mediatech,Inc.)と共に37℃で10分間インキュベートすることによりプレートから離脱させた。細胞を20mlの氷冷FACS緩衝液(RPMI中2%のヤギ血清)で洗浄し、血球計数器で計数し、濃度をFACS緩衝液中10個/mlに調整した。細胞を10個/ウェル(100μl)で96ウェル丸底プレート(Falcon)に接種した。30μlのハイブリドーマ上清を各ウェルに添加した後、プレートを氷上で約3時間インキュベートした。卓上遠心機で細胞をペレット化し(400×g,5分,4℃)、150μlのFACS緩衝液で2回洗浄し、15μg/mlのFITCコンジュゲート−ヤギ抗マウスIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)100μlに再懸濁した。プレートをアルミニウム箔で覆い、氷上で1時間インキュベートした。細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、PBS中1%ホルムアルデヒド175μlで固定した。試料をBecton Dickinson FACSCaliburフローサイトメーターで走査および分析した。個数の変動するタンデム・リピート(variable number tandem repeat,VNTR)ドメインを認識する市販のMuc1抗体CM1(Applied Immunochemicals,Inc.)を、フローサイトメトリースクリーニングのための対照として含めた。
【0081】
[97] 結果は、CM1が98%以上のCaOV3細胞に結合することを示した。これに対し、ハイブリドーマ上清中の抗体はおおまかに2つのカテゴリーに属する結合を示した:全細胞集団に結合すると思われるもの、および細胞集団のサブセットに結合すると思われるもの。両カテゴリーを代表する合計12のクローンを後続試験のために選択した(図4Aおよび4Bならびに表2を参照)。これらのクローンを凍結用に増殖させ、サブクローニングした。
【0082】
【表2】

【0083】
[98] Muc16ハイブリドーマスクリーニングのために、わずかに変更してMuc1と同様にフローサイトメトリーを実施した。Muc16抗原の細胞表面発現を高めるために、OVCAR−3細胞を15cmの組織培養プレート上で集密状態にまで増殖させ、2日間インキュベーションを続けた後、細胞を収穫した。FACS緩衝液は、PBS中1mg/mlのウシ血清アルブミン(BSA)であった。細胞を200μlのFACS緩衝液で洗浄した後、200μlの1%ホルムアルデヒドで固定した。放出ドメインを認識するMuc16抗体M11(アーカンサス大学Dr.Timothy O’Brienからの贈与)を、フローサイトメトリースクリーニングのための対照抗体として用いた。
【0084】
[99] Muc16ハイブリドーマスクリーニングから得た24の代表クローンのヒストグラムを図5Aに示す。このヒストグラムは一般に3つのカテゴリーに属する:細胞のサブ集団が蛍光シフトを示すヒストグラム、細胞の全集団が蛍光シフトを示すヒストグラム、細胞の2集団が異なる規模の蛍光シフトを示すヒストグラム。図5Bに、比較のためにMuc16放出ドメインに対する抗体M11のヒストグラムを示す。この場合、約17%の細胞が蛍光シフトを示す。表3に、図5Aおよび5Bに示した24のヒストグラムについての相対蛍光単位(RFU)、ヒストグラムに示すM1ゲートゾーンへシフトした細胞の%、および対応するELISA結果をまとめる。
【0085】
[100] これら24のMuc16ハイブリドーマクローンを増殖させ、下記に従って培養物上清中の抗体をさらに特性解明した。次いで2つのMuc16ハイブリドーマ2F9および4E2をサブクローニングし、IgG1κのイソタイプと判定した。これらのサブクローンからのモノクローナル抗体を細胞培養物上清からプロテインAセファロースにより精製し、細胞ベースの実験でさらに特性解明した。
【0086】
【表3】

【0087】
実施例4:抗体の精製
[101] 安定サブクローンのハイブリドーマ上清を用いて、Isostripイソタイプ判定ストリップ(Roche)により抗体イソタイプを判定した後、抗体を精製した。精製した抗体はすべてIgG/κであった。抗体精製のために、5%のIgG超低含量ウシ胎仔血清(Gibco)、50単位/mlペニシリン/50μg/mlストレプトマイシン(Cambrex)、0.6mMのL−グルタミン(Cambrex)を補充したハイブリドーマ用無血清培地(Gibco)中8×10個/mlで、ハイブリドーマを15cmの組織培養プレートに接種した。細胞密度が1.8×10個/mlに達した時点で培養物上清を収穫した。塩化ナトリウムをハイブリドーマ上清に添加して濃度を3Mにし、上清を0.22ミクロンMillex GV PVDFフィルターユニット(Millipore)で濾過した。100mlのハイブリドーマ上清から、100mMトリス(pH8.5)プラス2.5M NaClで平衡化したHiTrap組換えプロテインAカラム(Pharmacia)1mlにより抗体を精製した。カラムにハイブリドーマ上清を装入した後、カラムを10mlの平衡化用緩衝液で洗浄した。抗体を100mM酢酸(pH2.8)プラス150mM NaClで溶離した。ピーク画分を採集し、2Mリン酸カリウム(pH10)で中和し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に対して透析した。透析した抗体を0.22ミクロンMillex GV PVDFフィルターユニット(Millipore)で濾過した。
【0088】
実施例5:哺乳動物細胞における組換えMuc16 Stumpタンパク質発現のためのプラスミドの構築
[102] Muc16の1形態を哺乳動物細胞において発現させるために、DNAプラスミドを構築した。本明細書において組換えMuc16 Stump(図6Aおよび6B)と呼ぶこの形態は、Muc16の野生型の細胞質ドメインおよび膜貫通ドメインと、この分子の非放出部分を含むと推定されるトランケートした細胞外ドメインを含んでいた。このpcDNA3ベースのプラスミド(pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3)は、C末端における3コピーのMycエピトープタグおよびN末端における1コピーのFlagエピトープでフランキングされたMuc16アミノ酸11576〜11722をコードする。組換えタンパク質を小胞体および細胞表面へ指向させるために、Muc1シグナルペプチドを用いた。このプラスミドを構築するための各工程の詳細な記載を以下に示す。
【0089】
PCRによるMuc16のクローニング:
[103] Muc16/CA125 Genbank配列(Yin and Loyd,2001−寄託番号NM 024690)を再検討して、CA125遺伝子の3’末端の3.4kbをクローニングするためのプライマーを設計した。下記のプライマー:
【0090】
【化8】

【0091】
を用いて、オーバーラップPCRクローニング方式を考案した。
[104] 第1ラウンドのPCRにより、3.4kb CA125配列の5’末端(Muc−5kozおよびMuc−BG1Rを使用)および3’末端(Muc−BG1RおよびMuc−3を使用)に対応する2つの1.7kb生成物が生成した。Origenヒト卵巣cDNAライブラリー(ロット#3012−3)をPCR反応の鋳型として用いた(反応体積50μl:5μlの10×増幅反応緩衝液(Roche)、4μlの10mM dNTPミックス、0.5μlの100μM 左プライマー、0.5μlの100μM 右プライマー、1μlのcDNA、0.75μlの増幅ポリメラーゼ(Roche)および38.25μlの2回蒸留水)。MJ Researchサーモサイクラーにより下記のプログラムでPCR反応を実施した:1)94℃で2分間、2)94℃で20秒間、3)56℃で30秒間、4)72℃で1.5分間、5)工程2へ戻って35回、6)72℃で8分間、7)終了。PCR生成物を1%低融点アガロースゲルに流し、陽性バンドを切り取り、65℃で融解させ、第2ラウンドの反応のために37℃に平衡化した。第1ラウンドと同様であるが、ただしMuc5endプライマーおよびMuc3endプライマーを用い、2.5μlずつのゲル切片を鋳型として用い、伸長時間を72℃で2分間に延長して、オーバーラップPCR反応を実施した。オーバーラップPCR反応物をHindIIIおよびBamHIで消化し、1%低融点アガロースゲルに流し、pBluescriptII(Promega)ベクター中へライゲートさせた。このオーバーラップPCRクローニング方式により、2kbの3’末端配列のクローニングが可能になった。
【0092】
stump発現ベクターのためのCA125配列のクローニング
[105] クローニングしたCA125配列は、その3’末端までの推定CA125 stump配列全体を含んでいたので、これらのクローンをCA125 stump発現構築体の作製のための鋳型として用いた。CA125の567bp 3’末端をMuc1シグナルペプチド、そしてFlagタグをその5’末端に、およびMycタグをその3’末端に、読み枠が一致するようにクローニングしてプライマーを設計した。最終的なクローニング方式には、後続の二重ライゲーションクローニングのための内部KpnI部位を利用する2回のPCR反応が含まれていた(下記のプライマーを参照)。
【0093】
【化9】

【0094】
[106] CAXbaFおよびCAKpnRプライマーを5’側半分のために用い、CAKpnFおよびCA3endNotプライマーを3’側半分のために用いた。PCR反応ミックスを前記と同様に調製し、ただし5μlの20ng/μl CA125クローンDNAを鋳型として用い、Roche Taqポリメラーゼ酵素を用いた。MJ Researchサーモサイクラーにより下記のプログラムで反応を実施した:1)94℃で1分間、2)94℃で15秒間、3)55℃で1分間、4)72℃で1分間、5)工程2へ戻って29回、6)72℃で4分間、7)終了。次いでPCR反応物をKpnIおよびXbaIまたはNotIで消化し、1%低融点アガロースゲルに流し、切り取り、XbaI+NotI切断したpBluescriptIIベクター(Promega)中へ一緒にライゲートした。陽性クローンを配列決定して、配列統合性を確認した。
【0095】
RTPCRによるMuc1シグナルペプチドのクローニング
[107] Qiagen Qianeasy miniprepキットを用い、キットプロトコルに従って全RNAをT47D細胞から精製した。2.4μgのT47D RNAを用い、供給されたランダムヘキサマープライマーの使用のためのGibco SuperscriptIIプロトコルに従って、RT反応を実施した。示された反応条件(25℃で10分間、42℃で50分間、70℃で15分間)をMJ Researchサーモサイクラーにより実施した。RT反応物から37℃で1μl RnaseH(Gibco SSIIキット中に供給)と共にインキュベートすることによりRNAを除き、次いで反応物をそのままPCR反応に用いた。
【0096】
[108] Genbank Muc1配列(Schroeder et al.,2003−寄託番号NM 002456)に基づいて、Muc1シグナルペプチド配列をクローニングするためのプライマーを設計した。ターゲット配列は、シグナルペプチド全体およびその開裂部位を含めたMuc1配列の最初のアミノ酸30個を発現する。5’末端プライマーはBamHIクローニング部位をも含み、3’末端プライマーはCA125配列の5’末端に読み枠を一致させてクローニングするように設計したFlagタグ配列およびXbaI部位を含んでいた(下記のプライマーを参照)。
【0097】
【化10】

【0098】
[109] PCR反応ミックスをCA125 stumpについて記載したと同様に調製し、ただし2μlのRT反応物を鋳型として用いた。PCR反応物をBamHIおよびXbaIで消化し、1%低融点アガロースゲルに流し、切り取り、pBluescriptIIベクター(Promega)中へライゲートした。陽性クローンを配列決定して、配列統合性を確認した。
【0099】
最終発現構築体の組立て
[110] 各片を構築して配列を確認したのち、簡単な制限消化およびpcDNA3/Myc3発現プラスミド(Gibco/Life Technologies)中へのライゲーションにより、最終発現構築体を作製した。図6Aの図は、最終的に組み立てた構築体の地図を示し、続いてその配列を図6Bに示す。このpcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3プラスミドの模式図を図7に示す。
【0100】
実施例6:モデルMuc16抗原発現細胞系の作製
[111] 実施例5に記載したpcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3プラスミドを用い、293T細胞の一過性トランスフェクション体およびHeLa細胞の安定なトランスフェクション体の両方を利用して、組換えMuc16 Stumpタンパク質を発現させた(Qiagen SuperFectトランスフェクション試薬、製造業者のプロトコル)。10%のウシ胎仔血清、1mMのL−グルタミン、50単位/mlペニシリン/50μg/mlストレプトマイシンを含有するDMEM培地(Cambrex)中で293T細胞およびHeLa細胞を増殖させ、pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3プラスミドまたは空のベクタープラスミド対照でトランスフェクションした。一過性トランスフェクションした293T細胞を、トランスフェクションの25時間後にPBS中で洗浄し、プロテアーゼ阻害剤(Sigma)フッ化フェニルメチルスルホニル(1mM)、ペプスタチン(1μg/ml)およびロイペプチン(1μg/ml)を含有するRIPA緩衝液(50mMのトリス−HCl、pH7.2、150mMのNaCl、1%のNP−40、0.5%のデオキシコール酸ナトリウム、0.1%のSDS)中で溶解することにより、ウェスタンブロット用に収穫した。組換えMuc16 Stumpタンパク質を安定発現するHeLa細胞系を選択するために、トランスフェクション後に細胞を1mg/mlのG418(Bio Whittaker)の存在下で培養した。薬物耐性コロニーが出現すると、RIPA細胞溶解物を抗Myc MAb 9E10(Invitrogen)でウェスタンブロットすることにより、Mycタグ付き組換えMuc16 Stumpタンパク質の発現を確認した。最高発現を示す幾つかのHeLa/pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3クローンをサブクローニングして、抗Muc16ペプチドaモノクローナル抗体の特性解明に用いた。
【0101】
実施例7:SDS−PAGEおよびウェスタンブロット法
[112] トランスフェクションした細胞からの細胞溶解物を試料用緩衝液(62.5mMトリス−HCl緩衝液、pH6.8;2%w/vのSDS、10%v/vのグリセロール、0.001%w/vのブロモフェノールブルー、および5%v/vのβ−メルカプトエタノールを含有)中で5分間煮沸することにより変性させ、Laemmli(1970)の方法に従って4〜20%アクリルアミド/2.6%ビス−アクリルアミド トリス−グリシン−プレキャストミニゲル(Novex)に流した。32.5mMトリス/25mMグリシン/0.037%SDS/20%メタノール緩衝液中で2時間、SemiPhor TE70半乾燥トランスファーユニット(Hoefer Scientific Instruments)により、タンパク質をゲルから0.2μニトロセルロースフィルター(Novex)上へエレクトロブロットした。0.1%Tween 20および5%脱脂粉乳を含有するTBS中で1時間、ブロットをブロックし(Johnson et al.,1984)、第1抗体と共に一晩インキュベートし、そして西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートした第2抗体(Amersham Life Science)およびECL(Amersham Life Science)を製造業者の指示に従って用いて処理した。第1モノクローナル抗体を1〜2μg/mlで使用した。
【0102】
[113] 使用した第1抗体は、抗Mycタグ抗体(MAb 9E10、Invitrogen)および抗Flagタグ抗体(M2、Sigma)であった。図8から分かるように、抗Myc抗体または抗Flag抗体のいずれによっても、二重試験培養物からのpcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3トランスフェクションした細胞の溶解物中において約42kDの位置に泳動する単一バンドが検出された(列1、2)が、pcDNA3空ベクターでトランスフェクションした対照細胞溶解物中には検出されなかった(列3)。
【0103】
[114] 同じpcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3プラスミドをHeLa細胞にトランスフェクションし、安定なトランスフェクション体をG418中で選択した。クローンは組換えMuc16 Stumpタンパク質を発現することが細胞溶解物のウェスタンブロット法により示され、幾つかの高発現細胞系を増殖させてサブクローニングした。
【0104】
[115] 哺乳動物細胞において発現した組換えMuc16 Stumpタンパク質に関連して提示される適宜なエピトープを抗体が検出できるかどうかを判定するために、pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3で一過性トランスフェクションした293T細胞の溶解物を用いてウェスタンブロット法を実施した。図9に示すように、幾つかのハイブリドーマ上清中の抗体が、抗Mycによる検出により同定された組換えMuc16 Stumpバンドと共泳動する42kDバンドに結合した。
【0105】
実施例8:Muc16ペプチドaに対するモノクローナル抗体の結合親和性−ペプチドELISAによるKの推定
[116] ハイブリドーマ2F9および4E2を増殖させてサブクローニングした。すべてIgGκサブタイプのモノクローナル抗体を、サブクローン2F9−1E8−1D7(以下、MJ−173と呼ぶ)、2F9−1F8−1C10(以下、MJ−172と呼ぶ)、および4E2−2D1−1B10(以下、MJ−171と呼ぶ)の培養物上清から前記に従って精製した。2つの精製モノクローナル抗体について、ハイブリドーマ上清の初期スクリーニングについて記載したものと同様な固相ビオチニル化ペプチド捕獲プロトコルを用いるペプチドELISAにより見掛けKを判定した。ただし、ハイブリドーマ上清の代わりに、TBS/0.1%Tween 20/1%BSA中に希釈した種々の濃度の精製抗体100μlを用いた。精製モノクローナル抗体とのインキュベーションを、室温で1時間行った。図10から分かるように、MJ−173およびMJ−171は合成ペプチド抗原に良好に結合し、両方のモノクローナル抗体が飽和結合を示し、最大の半分の結合を達成するのに要した抗体濃度から推定して3×10−10〜5×10−10Mの見掛けKを示した。
【0106】
実施例9:Muc1ペプチドaに対するMJ−170の結合親和性−ペプチドELISAによるKの推定
[117] ハイブリドーマクローン3A3をサブクローニングして3A3−2A6(以下、MJ−170と呼ぶ)を得た。MJ−170ハイブリドーマからの抗体を前記に従って精製した。本質的にELISAスクリーニング法に記載したように、ただしハイブリドーマ上清の代わりにTBS/0.1%Tween−20/1%BSA中に希釈した種々の濃度の精製抗体100μlを用いたELISAによって、免疫化用ペプチドMuc1ペプチドへの精製MJ−170の結合親和性を測定した。結果を図11に示す。最大の半分の結合を達成するのに要した抗体濃度から、Muc1ペプチドaへのMJ−170結合について4.5×10−10Mの見掛けKが推定され、この抗体は免疫化用ペプチドに対する高い親和性をもつことが示された。
【0107】
実施例10:抗Muc16ペプチドaモノクローナル抗体を用いた間接免疫蛍光法および吸着エンドサイトーシス
[118] 抗ペプチドモノクローナル抗体が細胞関連の抗原を認識する能力を、安定なHeLa/pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3細胞系、サブクローン#54−1を用いる間接免疫化蛍光試験により評価した。細胞において発現した際にMuc16 Stumpが適正に局在していれば、Mycタグは細胞内にあり、Muc16ペプチドaエピトープ(1以上)は細胞外にあると予想される。第1実験では、サブクローン#54−1、または空のベクターでトランスフェクションした対照HeLa細胞を、カバーガラス上、24ウェルプレート内の培地に、8×10個/ウェルで接種し、37℃、5%COのインキュベーター内で一晩付着させた。細胞単層をPBSで洗浄し、2%パラホルムアルデヒド/PBS中で25分間固定し、洗浄し、0.1%Triton X−100/PBS中で10分間透過処理し、洗浄し、そして2.5%正常ヤギ血清/PBS中で1時間ブロックした(すべて室温)。第1モノクローナル抗体を2.5%正常ヤギ血清/PBS中に1μg/mlに希釈し、単層と共に1時間40分間、穏やかに揺動しながらインキュベートした。透過処理した細胞中の組換えMuc16 Stumpタンパク質を検出するための陽性対照として、抗Mycを用いた;陰性対照抗体としては、MOPC21(Sigma)を用いた。PBS中で5分間ずつ3回の洗浄により、非結合モノクローナル抗体を除去した。AlexaFluor 488コンジュゲートしたヤギ抗マウスIgG(Molecular Probes A−11001、2.5%正常ヤギ血清/PBS中に1:2000)を1時間添加して、細胞結合したモノクローナル抗体を検出した。第2抗体インキュベーションに際して添加したHoechst #33258(Sigma)により、核を染色した。カバーガラスを3回洗浄し(5分間、PBS)、vinolマウンティング媒質中にマウントした。Nikon Microphot−FXA顕微鏡により蛍光を観察し、Spotデジタルカメラ(Diagnostics Instruments,Inc.)により撮影した。モノクローナル抗体MJ−173およびMJ−171はHeLa/pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3細胞を染色し、個々の細胞が広範な蛍光強度を示した。この不均一パターンは、抗Mycによる染色後にも観察された。対照(組換えMuc16 Stumpを発現しない)HeLa/pcDNA3細胞においては、抗Muc16ペプチドモノクローナル抗体についてかすかな細胞質染色がみられたが、抗Mycについてはみられなかった。
【0108】
[119] 第2実験では、前記の間接免疫蛍光プロトコルの変法を用いて、生存細胞について吸着エンドサイトーシスを実施した。増殖中の細胞の培養培地に第1モノクローナル抗体を直接添加して最終濃度2μg/mlにし、細胞単層と共に37℃、5%COのインキュベーター内で時々揺動しながら1時間インキュベートした。モノクローナル抗体を細胞表面エピトープに結合させ、そしてこの抗原−抗体複合体をインターナリゼーションさせるためのこのインキュベーション期間の後、細胞単層をPBSで速やかに3回洗浄し、次いで固定し、透析し、AlexaFluor標識した第2抗体およびHoechstで前記と同様に検査した。細胞外表面に存在し、速やかにインターナリゼーションしうると予想されるタンパク質を追跡するための陽性対照として、トランスフェリン受容体モノクローナル抗体(CD71、Santa Cruz #7327)を用いた。組換えMuc16 Stumpタンパク質上のMycエピトープタグは細胞内にあり、細胞外媒質に添加したモノクローナル抗体による結合に利用できないと予想されたので、この実験の陰性対照として抗Mycを用いた。予想どおり、生存する対照HeLa細胞においては抗トランスフェリン受容体モノクローナル抗体のみが細胞表面に結合して細胞内コンパートメント中へエンドサイトーシスされた。HeLa/pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3細胞の場合、抗トランスフェリン受容体モノクローナル抗体ならびにMuc16モノクローナル抗体MJ−173およびMJ−171がいずれも良好に結合し、インターナリゼーションされた。抗Mycを生存細胞培養物に添加した場合には染色がみられず、細胞膜における組換えMuc16 Stumpタンパク質の配向が推定どおりであることが確認された。
【0109】
実施例11:腫瘍細胞への精製Muc16モノクローナル抗体の結合
[120] 精製Muc16クローンMJ−173およびMJ−171に由来する抗体の、種々の腫瘍細胞系への結合を、フローサイトメトリーにより分析した。Muc16細胞表面発現を最適化するために、組織培養プレートの約50%を覆う密度で細胞を接種した。消費された培地を交換せずに6〜8日間インキュベーションを続けた(Konishi et al.,1994)のち、細胞を収穫し、本質的には前記のスクリーニングについて記載したようにフローサイトメトリーを実施した。ただし、ハイブリドーマ上清の代わりに、FACS緩衝液(PBS中のBSA 1mg/ml)中に種々の濃度で希釈した精製抗体100μlを用いた。最大の半分の結合を達成するのに要した抗体濃度の判定により、細胞に対する精製抗体の結合度(avidity)を推定した。Muc16の放出タンデム・リピートドメインを認識する市販抗体(OC125;Cell Marque CMC242)の、WISH細胞への結合を対照として含めた。
【0110】
[121] 結果を図12および表4に示す。クローンMJ−171は数種類の腫瘍細胞系に対して飽和性結合を示した。OV90細胞へのクローンMJ−173の結合は、実質的にクローンMJ−171の結合と識別できなかった。すべての場合、非放出ドメインのみを認識する抗体は、細胞周期依存性のエピトープ発現変化または到達可能性を示すと思われる細胞集団サブセットに結合した。これに対し、95%のWISH細胞が、放出ドメインエピトープを認識するOC125抗体に結合した。WISH細胞の飽和結合時における蛍光シフトは、クローンMJ−171(41RFU)と比較してOC125抗体については5倍より高かった(248RFU)。これは、MJ−171抗体に対して1つの傍膜エピトープがあるのと比較して、OC125抗体に対してはMuc16分子当たり多数のタンデム・リピートエピトープがあることと一致した。卵巣細胞系OVCAR3およびPA−1は、最高のRFUを示した。これは、これらの細胞系が高レベルの到達可能なMuc16非放出エピトープを発現することを示唆する。種々の腫瘍細胞系に対するMJ−171およびMJ−173の推定見掛け結合度は、1〜9×10−9の範囲であり、これは免疫化用ペプチドへの結合について測定した見掛けKより低かった。
【0111】
【表4】

【0112】
飽和結合における相対蛍光単位(RFU);
最大の半分の結合を示す抗体濃度から推定;
このOC125抗体の純度が不明であるため、結合度を推定できない;
この実験は異常に高いバックグラウンド蛍光(約200RFU)を示した。
【0113】
実施例12:腫瘍細胞への精製Muc1モノクローナル抗体の結合
[122] 卵巣癌腫瘍細胞系CaOV3への結合を、前記のMuc16抗体スクリーニングについて記載したようにフローサイトメトリーにより分析した。ただし、ハイブリドーマ上清の代わりに、FACS緩衝液(PBS中のBSA 1mg/ml)中に希釈した種々の濃度の精製抗体100μlを用いた。結果を図13Aに示す。あるサブセットの細胞集団が、抗体結合を示す蛍光シフトを示した。最大の半分の結合を達成するのに要した抗体濃度から、CaOV3細胞に対するMJ−170の見掛け結合度が1.3×10−8Mであると推定され、MJ−170は細胞より免疫化用ペプチドに対して、より緊密に結合することが示唆された。図13Bは、CaOV3細胞へのCM1(Applied Immunochemicals)、すなわちMuc1 VNTR抗体の結合を示す。予想どおり、CM1についてみられた最大相対蛍光は、MJ−170のものよりかなり高い(約40倍)。これは、Muc1分子当たり1つのMJ−170エピトープと対比して、Muc1分子当たり多数のVNTRエピトープがあることを反映する。
【0114】
実施例13:HeLa/組換えMuc16 Stump細胞およびヒト卵巣癌組織アレイの免疫組織化学的染色
[123] HeLa/Muc16 Stump #54−1および対照HeLa空ベクターでトランスフェクションした細胞を用いて、モノクローナル抗体MJ−173およびMJ−171についての免疫組織化学的染色条件を最適化した。細胞を培養皿からPBS/2mM EDTA緩衝液中に取り出し、洗浄し、ペレット化し、10%緩衝化ホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋した。ホルマリン固定し、パラフィン包埋したヒト卵巣腫瘍外科検体の組織マイクロアレイをImgenexから購入した(IMH−347)。モノクローナル抗体MJ−173およびMJ−171を、HeLa/Muc16 Stump #54−1の最適染色およびHeLa/pcDNA3対照細胞ペレットの最小バックグラウンド染色を示す濃度で用いた。抗メイタンシンモノクローナル抗体(ImmunoGen,Inc.)をIgGκイソタイプ対照として用いた。
【0115】
[124] 前記実験に用いた条件は下記のとおりであった。5μmの細胞ペレット切片中または卵巣癌組織アレイ中に存在するMuc16ペプチドエピトープを、高pH BORGDECLOAKER中で、製造業者(BioCare Medical)の指示に従って1工程脱パラフィン/熱誘発抗原回復法により回復させた。すべての後続工程を室温で実施した。非特異的結合部位をPBS/[1×]Power Block(BioGenex)/10%正常ウマ血清(Vector Laboratories)で20分間ブロックした。第1モノクローナル抗体である抗Muc16ペプチドおよび対照抗体をブロッキング緩衝液中に1μg/mlに希釈し、切片と共に45分間インキュベートした。次いでスライドをPBS中で5分ずつ3回洗浄した。ビオチニル化ウマ抗マウスIgG第2抗体およびVectastain ABC Eliteキット(Vector Laboratories)を用い、続いてDAB基質クロマゲン(chromagen)(Dako Laboratories)と共に10分間インキュベートすることにより、結合した第1抗体を検出した。切片をヘマトキシリン(Shandon)で対比染色した。スライドをマウントし、Nikon MicroPhot顕微鏡により明視野レンズ下で観察した。Spotデジタルカメラ(Diagnostics Instruments,Inc.)により顕微鏡写真を作製した。
【0116】
[125] 前記の間接免疫蛍光実験と同様に、モノクローナル抗体MJ−173およびMJ−171は不均一なHeLa/pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3細胞染色を生じた。これは、広範な細胞−対−細胞範囲の抗原発現レベルを示す。対照HeLa/pcDNA3細胞は、抗メイタンシンイソタイプ対照よりわずかに高い均一なバックグラウンド染色レベルを示したが、発現の強い抗原陽性HeLa/Muc16 Stump細胞にみられた染色レベルよりはるかに弱かった。
【0117】
[126] モノクローナル抗体MJ−173およびMJ−171を用い、Imgenexから購入した組織マイクロアレイ中のホルマリン固定ヒト卵巣癌試料を染色した。この実験の結果から、試験した57の卵巣癌試料の約42%においてCA125ペプチドa抗原を検出できることが示唆された。
【0118】
実施例14:DM1への精製モノクローナル抗体のコンジュゲーション
[127] Muc16またはMuc1の細胞会合ドメインを認識する抗体が細胞毒性薬物の送達に適するかどうかを判定するために、メイタンシノイド薬物DM1をMJ−171(Muc16)にコンジュゲートさせてMJ−171−DM1を形成し、またはMJ−170(Muc1)にコンジュゲートさせてMJ−170−DM1を形成した。Chari et al.(1992)が記載した方法の変法により、精製抗体を細胞毒性メイタンシノイド薬物DM1にコンジュゲートさせた。要約すると、Centriprep Plus−20遠心濾過ユニット(Millipore)により抗体を1〜5mg/mlに濃縮し、緩衝液A(50mMのリン酸カリウム/50mMのNaCl/2mMのEDTA、pH6.5)中へ透析した。抗体を二官能性リンカー、N−スルホスクシンイミジル−4−(5−ニトロ−2−ピリジルジチオ)ペンタノエート(SSNPP)で修飾して、ニトロジチオピリジル基を導入した。この抗体を、緩衝液A中12モル当量の(SSNPP)プラス5%ジメチルアセトアミド(DMA)と共に、周囲温度で撹拌しながら90分間インキュベートした。Slide−A−Lyzer透析カセット(Pierce)で透析することにより未反応リンカーを除去した。325nmにおける吸光度を測定することにより修飾度を判定した。325nmにおけるSSNPPの吸光係数10,964M−1cm−1を用いて、ニトロジチオピリジル基の濃度を計算した。280における吸光度を測定し、280nmにおける吸光係数224,000M−1cm−1を用いて、抗体濃度を判定した。分光測光法により、抗体は抗体当たり平均3〜6個のニトロジチオピリジル基で修飾されたことが示された。この修飾抗体をN2’−デアセチル−N−2’(3−メルカプト−1−オキソプロピル)−メイタンシン(DM1)にジスルフィド交換によりコンジュゲートさせた。ニトロジチオピリジル基当たり2当量のDM1を、1〜3mg/mlの修飾抗体と共に、緩衝液Aプラス3%DMA中、室温で3時間、撹拌しながらインキュベートした。遊離DM1を前記の透析によりコンジュゲートから除去し、Chari et al.(1992)の記載に従って分光測光法によりDM1および抗体の濃度を測定した。得られたMuc16コンジュゲート(MJ−171−DM1)は、抗体分子当たり平均2.98個のDM1分子を含んでいた。得られたMuc1コンジュゲート(MJ−170−DM1)は、抗体分子当たり平均1.2個のDM1分子を含んでいた。
【0119】
実施例15:細胞毒性アッセイ−MTT
[128] MJ−171−DM1コンジュゲートおよびMJ−170−DM1コンジュゲートを2種類のin vitro細胞毒性アッセイ法で試験した:標準MTT細胞生存率アッセイおよびコロニー形成アッセイ(clonogenic assay)。MTTアッセイに際しては、10%の熱不活性化ウシ胎仔血清(Atlas)、50単位/mlペニシリン/50μg/mlストレプトマイシン(Cambrex)、2mMのL−グルタミン(Cambrex)を補充した完全培地RPMI(Cambrex)中において、37℃、5%CO中で、接着性腫瘍細胞系を培養した。細胞を組織培養プレートからトリプシン−ベルシン(Versin)(EDTA)(Cambrex)により脱離させ、血球計を用いて計数した。細胞を96ウェル組織培養プレートに、100μlの完全培地中、2000細胞/ウェルの密度で接種した。種々の濃度の抗体−DM1コンジュゲート(100μl)を各ウェルに添加し、細胞を4〜5日間培養した。3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)アッセイにより、細胞生存率を評価した。要約すると、PBS中の5mg/mlのMTT(Sigma)ストック溶液を完全培地中に1mg/mlに希釈した。50μlの1mg/ml MTTを各ウェルに添加し、プレートを37℃のインキュベーターに戻した。3〜4時間後、各ウェルからMTTおよび培地を慎重に除去し、150μlのDMSO(Burdick and Jackson)を用いてMTT−ホルマザンを溶解させた。EL808 UltraMicro Plate Reader(Bio−tek Instruments Inc.)により、540nmのフィルターを用いて光学濃度を読み取った。
【0120】
[129] MJ−171−DM1コンジュゲートについての結果を図14に示す。MJ−171−DM1コンジュゲートがWISH細胞(図14A)に対して示す細胞毒性には限度があった。しかし卵巣腫瘍細胞系PA−1は約5×10−9の推定IC50で死滅した(図14B)。同様にこのコンジュゲートはモデル細胞系HeLa/Muc16 Stump #54−1に対しても細胞毒性であり、PA−1細胞と類似のIC50を示した(図14C)。コンジュゲートしていないMJ−171については死滅がみられなかったので、細胞毒性はDM1コンジュゲートに依存していた。
【0121】
[130] MJ−170−DM1コンジュゲートについての結果を図15に示す。IC50は1.6×10−9Mと推定される。
【0122】
実施例16:細胞毒性アッセイ−コロニー形成
[131] コロニー形成アッセイ法では、コンジュゲート暴露が腫瘍細胞系のプレーティング効率に及ぼす影響を測定する。腫瘍細胞系は、10%の熱不活性化ウシ胎仔血清(Atlas)、50μg/mlゲンタマイシン(Gibco)、および2mMのL−グルタミン(Cambrex)を補充したRPMI(Cambrex)中で増殖させた。HeLa/Muc16 Stump #54−1細胞は、10%の熱不活性化ウシ胎仔血清(Atlas)、2mMのL−グルタミンおよび1mg/mlのG418を補充したDMEM(Cambrex)中で増殖させた。細胞を6ウェルプレートに1000細胞/ウェルの密度で接種した。種々の濃度のコンジュゲートを各ウェルに添加し、37℃、5%CO中で、コロニーが形成されるまで(7〜8日間)細胞をインキュベートした。培地を除去し、コロニーを固定し、1mlのクリスタルバイオレット溶液(0.1%のクリスタルバイオレット、10%のホルムアルデヒド、PBS中)と共に室温で15〜30分間インキュベートすることにより染色した。ウェルを脱イオン水で3回洗浄し、乾燥させ、コロニーを計数した。コロニー数をウェル当たり接種した細胞数で割ることにより、プレーティング効率を計算した。
【0123】
[132] その結果は、MJ−172−DM1によりHeLa/Muc16 Stump #54−1細胞が選択的に1.9×10−9Mの推定IC50で死滅したことを示す(図16)。対照HeLa細胞系(空のベクターで安定にトランスフェクションされたもの)については細胞毒性がみられなかった。これらの結果は、Muc16の非放出ドメインを認識する抗体が細胞毒性薬物、たとえばメイタンシノイド、DM1を効率的に腫瘍細胞へ送達して殺すことができることを示唆する。
【0124】
[133] Muc1 MJ−170−DM1コンジュゲートについて、結果は3.4×10−10と推定されるIC50を示した(図17)。これらの結果は、Muc1の非放出ドメインを認識するクローンMJ−170が、細胞毒性薬物を効率的に腫瘍細胞へ送達して殺すことができることを示す。
【0125】
実施例17:放出抗原アッセイ
[134] MJ−172およびMJ−173が卵巣癌患者の血流中へ放出されていないMuc16ドメインを認識することを証明するために、これらの抗体とX306、すなわち放出されたMuc16を認識する抗体を、それらがCanAg CA125 EIAキット標準品または卵巣癌患者血清から放出されたMuc16を捕獲する能力について、固相サンドイッチELISAにおいて比較した。
【0126】
[135] MJ−170が非放出Muc1ドメインを認識することを証明するために、これとCM1、すなわちMuc1 VNTR抗体を、CanAg CA15−3 EIAキット標準品または卵巣癌患者血清から放出されたMuc1を捕獲する能力について、固相サンドイッチELISAにおいて比較した。
【0127】
[136] 卵巣癌患者血清中の放出抗原を、CanAg Diagnosticsからの酵素免疫測定キット(Muc16についてはCA125 EIAキット、Muc1についてはCA15−3 EIAキット)により、若干改変して測定した。Muc16放出抗原スクリーニングのためには、Immunlon H2Bの96ウェルプレートを、500ng/ウェル(5μg/mlのもの100μl)の、放出されたMuc16を認識するCA125様モノクローナル抗体X306(Advanced ImmunoChemical,Inc.)またはMuc16−細胞会合ドメイン抗体(MJ−171またはMJ−172)[0.5M 炭酸塩緩衝液(pH10)中]により、4℃で一夜揺動しながらコーティングした。ウェルを300μl/ウェルの洗浄用緩衝液(トリス緩衝化生理食塩水(TBS)/0.1%Tween−20)で3回洗浄し、200μl/ウェルのブロッキング緩衝液(TBS/0.1%Tween−20/1%BSA)により室温で2時間揺動しながらブロックした。次いで12.5μlのCA125標準品(0、10、40、200、500U/ml)または患者血清試料(ブロッキング緩衝液中1:9に希釈)を50μlのブロッキング緩衝液と共に室温で2時間揺動しながらインキュベートした。ウェルを300μl/ウェルの洗浄用緩衝液で3回洗浄し、次いで40μl/ウェルのトレーサー緩衝液(トレーサー希釈液中におけるHRPコンジュゲート抗CA125の1:40希釈液)と共に室温で1時間揺動しながらインキュベートした。次いでプレートを300μl/ウェルの洗浄用緩衝液で6回洗浄し、100μlのテトラメチルベンジジン(BioFX Laboratories)を用いて発色させた。EL808 Microplate Reader(Bio−Tek Instruments)により630nmで吸光度を読み取った。
【0128】
[137] MJ−171およびMJ−172についてのELISA結果を表5に示す。標準品についての630nmにおける吸光度を用いて標準曲線を作成し、これから血清CA125レベルを推定した。X306と対比して、MJ−171およびMJ−172はバックグラウンド(0U/mlのCA125)を超える吸光度値を示さなかった。これは、これらの抗体がMuc16放出抗原を捕獲できないことを示す。しかしMJ−171およびMJ−172は、同様な様式のELISAアッセイにおいてビオチニル化Muc16ペプチドaを容易に捕獲できる(データを示していない)。これらの結果から、MJ−171およびMJ−172がMuc16の放出ドメインではなく細胞会合ドメインを認識することが確認される。
【0129】
【表5】

【0130】
[138] Muc1については、Immunlon H2Bの96ウェルプレートを、250ng/ウェル(5μg/mlのもの50μl)の、放出されたMuc1を認識するMuc1 VNTRモノクローナル抗体CM1(Advanced Immunochemical,Inc.)またはMuc1−細胞会合ドメイン抗体(MJ−170)[0.5M 炭酸塩緩衝液中]でコーティングした。他の操作は本質的にMuc16について記載したものに従い、ただし25μlのCA15−3標準品(0、15、50、125、250U/ml)を用いた。
【0131】
[139] ELISA結果を表6に示す。CA15−3標準品のCM1捕獲による吸光度値を用いて標準曲線を作成し、これから血清試料についてCA15−3のU/mlを計算した。MJ−170は、CA15−3標準品または患者血清のいずれにおいてもMuc1放出抗原を捕獲する能力の証拠を示さなかった。これは、この抗体が非放出Muc1ドメインを認識することを示す。
【0132】
【表6】

【0133】
ハイブリドーマの寄託
[140] 前記に述べた4種類のハイブリドーマ(MJ−170、MJ−171、MJ−172、MJ−173)を、ブダペスト条約の条項に基づいてアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(PO Box 1549,Manassas,VA 20108)に、2003年6月24、24、24および26日に寄託した。これら4クローンの寄託番号は、それぞれ および である。
【0134】
[141] 特定の特許および印刷刊行物を本明細書に引用したが、それらの教示内容はここでそれぞれの全体を本明細書に援用する。
[142] 本発明をその特定の態様について詳述したが、本発明の精神および範囲を逸脱することなくそれらを多様に変更および改変できることは当業者には明らかであろう。
【0135】
【表7】

【0136】
【表8】

【0137】
【表9】

【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1−a】図1Aは、Muc1タンパク質の一例(SEQ ID NO:19)(GENBANK 寄託番号NM 002456)のアミノ酸配列および特色を示す;これは、1つのVNTRタンデム・リピート(下線)、推定シグナルペプチド開裂部位および翻訳後開裂部位(矢印で示す)、ならびに膜貫通領域(二重下線で示す)をもつ。
【図1−b】図1Bは、Muc1傍膜ドメインGST融合タンパク質の一例およびこの融合タンパク質に含まれるアミノ酸に由来する合成ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図2−a】図2Aは、Muc16 GST−融合タンパク質の一例(SEQ ID NO:20)(AF414442;O’Brien et al.(2000)Tumor Biology 22,348−366)のアミノ酸配列および特色を示す。RNKRは潜在フューリン部位、SPLAは潜在ストロモライシン開裂部位であり、膜貫通領域には二重下線を引いてある。
【図2−b】図2Bは、Muc16傍膜ドメインGST融合タンパク質の一例およびこの融合タンパク質に含まれるアミノ酸に由来する合成ペプチドのアミノ酸配列を示す。
【図3】図3は、癌療法薬候補としての抗体をスクリーニングするためのフローチャートを示す。所望により、これを用いて抗癌療法コンジュゲートを製造することができる(破線)。
【図4−a1】図4Aおよび4Bは、ハイブリドーマ上清スクリーニングによりMuc1ペプチドから選択したクローンのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。30μlのハイブリドーマ上清を用いて、Muc1抗原陽性細胞系CaOV3への結合を測定した。図4A:後続試験のために選択した12クローンのヒストグラム。
【図4−a2】図4Aおよび4Bは、ハイブリドーマ上清スクリーニングによりMuc1ペプチドから選択したクローンのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。30μlのハイブリドーマ上清を用いて、Muc1抗原陽性細胞系CaOV3への結合を測定した。図4A:後続試験のために選択した12クローンのヒストグラム。
【図4−b】図4Aおよび4Bは、ハイブリドーマ上清スクリーニングによりMuc1ペプチドから選択したクローンのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。30μlのハイブリドーマ上清を用いて、Muc1抗原陽性細胞系CaOV3への結合を測定した。図4B:1×10−7M濃度における、CaOV3細胞への精製CM1モノクローナル抗体の結合のヒストグラム。CM1は、放出VNTRドメイン内のMuc1エピトープを認識する。
【図5−a1】図5Aおよび5Bは、ハイブリドーマ上清スクリーニングによりMuc16ペプチドから選択したクローンのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。30μlのハイブリドーマ上清を用いて、Muc16抗原陽性細胞系OVCAR3への結合を測定した。図5A:後続試験のために選択した24クローンのヒストグラム。図5B:6.7×10−8M濃度における、OVCAR3細胞への精製M11の結合のヒストグラム。
【図5−a2】図5Aおよび5Bは、ハイブリドーマ上清スクリーニングによりMuc16ペプチドから選択したクローンのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。30μlのハイブリドーマ上清を用いて、Muc16抗原陽性細胞系OVCAR3への結合を測定した。図5A:後続試験のために選択した24クローンのヒストグラム。
【図5−a3】図5Aおよび5Bは、ハイブリドーマ上清スクリーニングによりMuc16ペプチドから選択したクローンのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。30μlのハイブリドーマ上清を用いて、Muc16抗原陽性細胞系OVCAR3への結合を測定した。図5A:後続試験のために選択した24クローンのヒストグラム。
【図5−a4】図5Aおよび5Bは、ハイブリドーマ上清スクリーニングによりMuc16ペプチドから選択したクローンのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。30μlのハイブリドーマ上清を用いて、Muc16抗原陽性細胞系OVCAR3への結合を測定した。図5A:後続試験のために選択した24クローンのヒストグラム。
【図5−b】図5Aおよび5Bは、ハイブリドーマ上清スクリーニングによりMuc16ペプチドから選択したクローンのフローサイトメトリーヒストグラムを示す。30μlのハイブリドーマ上清を用いて、Muc16抗原陽性細胞系OVCAR3への結合を測定した。図5B:6.7×10−8M濃度における、OVCAR3細胞への精製M11の結合のヒストグラム。
【図6】図6は、Muc16 Stumpプラスミド構築体の地図および配列(SEQ ID NO:21)を示す。Muc16推定Stumpのヌクレオチド配列は、図2Aに示したアミノ酸11576〜11722をコードする。
【図7】図7は、組換えMuc16 Stumpタンパク質発現のための発現プラスミドの模式図を示す。Muc16/CA125のアミノ酸11576〜11722を表わすヌクレオチド配列を、Muc1由来の上流Flagエピトープタグおよびシグナルペプチド配列、ならびに3つのMycエピトープタグに対応する下流配列と読み枠を一致させて、pcDNA3/Myc3哺乳動物発現ベクター内へクローニングした。pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3と表示するこの構築体を、組換えMuc16 Stumpタンパク質の発現のために哺乳動物組織培養細胞のトランスフェクションに用いた。
【図8】図8は、組換えMuc16 Stumpタンパク質を発現する293T細胞からの細胞溶解物のウェスタンブロットを示す。293T細胞をpcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3またはpcDNA3空ベクターで一過性トランスフェクションした。トランスフェクションの25時間後、細胞単層をRIPA緩衝液中で溶解し、溶解物の一部をSDS−PAGEおよびウェスタンブロット法により分析した。同じ試料をマウス抗Flagタグ抗体(ブロットの左半分)または抗−Mycタグ抗体(ブロットの右半分)で検査した。列1および2:pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3でトランスフェクションした細胞からの溶解物の二重検体;列3:pcDNA3空ベクターでトランスフェクションした細胞からの溶解物。矢印は、抗Flag抗体および抗−Myc抗体の両方により検出された組換えMuc16 Stumpタンパク質を指す。
【図9】図9は、組換えMuc16 Stumpタンパク質を発現する293T細胞を用いた、ハイブリドーマ上清の抗Muc16ペプチドのウェスタンブロットスクリーニングを示す。pcDNA3 Muc1FlagMuc16Myc3で一過性トランスフェクションした293T細胞から調製したRIPA溶解物を、大型ウェルSDSゲル上に流し、ニトロセルロース上にブロットし、種々のハイブリドーマ上清または陽性対照モノクローナル抗体であるマウス抗Mycにより、Miniblotter 28装置(Immuneticsから)を用いて、ブロットを個別の列に分割した。”α−Myc”列中のバンドにより同定された組換えMuc16 Stumpタンパク質の位置を水平矢印で示す。ハイブリドーマ上清で検査して陽性と判定された列(2F9、4E2、9G4、10G2)およびマウス抗Mycで検査した列のみを表示する。
【図10】図10は、Muc16ペプチドaへの精製Muc16抗体の結合を示したペプチドELISAの結果を示す。マウスの免疫化に用いたMuc16ペプチドaのビオチニル化型を、96ウェルプレートのウェル内に固定化した。種々の濃度の精製抗体MJ−171(図10A)、MJ−173(図10B)、およびMJ−172(図10C)をウェルに添加し(体積100μlで)、室温で1時間、揺動しながらインキュベートした。HRP標識ヤギ抗マウスIgGおよび基質ABTSにより、抗体結合を検出した。405nmで発色を測定した。最大結合の半分を達成するのに要した抗体濃度から、見掛けK値を推定した。
【図11】図11は、Muc1ペプチドaへの精製Muc1抗体MJ−170の結合を示したペプチドELISAの結果を示す。マウスの免疫化に用いたMuc1ペプチドaのビオチニル化型を、96ウェルプレートのウェル内に固定化した。種々の濃度の精製MJ−170(100μl)をウェルに添加し、室温で1時間、揺動しながらインキュベートした。HRP標識ヤギ抗マウスIgGにより基質ABTSを用いて抗体結合を検出し、405nmで発色を測定した。最大結合の半分を達成するのに要した抗体濃度から、見掛けK値を推定した。
【図12−a】図12は、腫瘍細胞系への抗Muc16抗体結合のフローサイトメトリー分析を示す。結合曲線は、表4に示すようにゲートした細胞集団の平均相対蛍光を表わす。種々の濃度の精製Muc16抗体を、指示した腫瘍細胞系と共に氷上で約3時間インキュベートした。抗体結合をFITC標識ヤギ抗マウスIgGにより検出し、Becton Dickinson FACSCaliburフローサイトメーターで分析した。図12A:WISH細胞への市販OC125の結合。OC125の純度が不明であったので、濃度ではなく系列希釈度を用いた。図12B:WISH細胞へのMJ−171の結合。図12C:SkBr3細胞へのMJ−171の結合。図12D:OV90細胞へのMJ−173およびMJ−171の結合。
【図12−b】図12は、腫瘍細胞系への抗Muc16抗体結合のフローサイトメトリー分析を示す。結合曲線は、表4に示すようにゲートした細胞集団の平均相対蛍光を表わす。種々の濃度の精製Muc16抗体を、指示した腫瘍細胞系と共に氷上で約3時間インキュベートした。抗体結合をFITC標識ヤギ抗マウスIgGにより検出し、Becton Dickinson FACSCaliburフローサイトメーターで分析した。図12E:PA−1細胞へのMJ−171の結合。図12F:OvCar3H細胞へのMJ−171の結合。図12G:Tov112−D細胞へのMJ−171の結合。
【図13】図13Aおよび図13B。図13A:CaOV3卵巣腫瘍細胞系への抗Muc1 MJ−170抗体の結合のフローサイトメトリー分析。種々の濃度の精製MJ−170を、CaOV3細胞と共に氷上で約3時間インキュベートした。抗体結合をFITC標識ヤギ抗マウスIgGにより検出し、Becton Dickinson FACSCaliburフローサイトメーターで分析した。図13B:CaOV3卵巣腫瘍細胞へのMuc1 VNTRドメイン認識抗体CM1の結合のフローサイトメトリー分析。結合曲線は、ゲートした細胞集団(全体の約5%)の平均相対蛍光を表わす。
【図14】図14は、種々の腫瘍細胞系に対するMJ−171−DM1コンジュゲートの細胞毒性を示す。細胞を96ウェルプレートにウェル当たり2000個の密度で接種した。種々の濃度のMJ−171−DM1コンジュゲートを添加し、細胞を37℃/5%COで5日間インキュベートした。MTTを添加し、3.5時間インキュベーションを続けた。培養物上清を慎重に取り出し、MTT−ホルマザン複合体をDMSOに溶解し、540nmにおける吸光度をプレートリーダーにより測定した。図14A)WISH細胞。図14B:PA−1細胞。図14C:HeLa/Muc16 Stump#54−1。
【図15】図15は、CaOV3細胞に対するMJ−170−DM1コンジュゲートの細胞毒性を示す。CaOV3細胞を96ウェル組織培養プレートにウェル当たり2000個の密度で接種した。指示した濃度のコンジュゲートと共に細胞を4日間インキュベートし、その時点で図14について記載したようにMTTにより細胞生存率を評価した。
【図16】図16は、連続暴露コロニー形成アッセイにおけるMJ−172−DM1コンジュゲートの細胞毒性を示す。HeLa/Muc16 Stump#54−1またはHeLa/pcDNA3(空のベクターでトランスフェクションしたもの)対照細胞を6ウェル組織培養プレートにウェル当たり1000個の密度で接種した。種々の濃度のコンジュゲートを各ウェルに添加し、コロニーが樹立するまで(7〜8日間)細胞をインキュベートした。コロニーをクリスタルバイオレット/ホルムアルデヒド溶液で固定および染色し、計数した。
【図17】図17は、連続暴露コロニー形成アッセイにおけるCaOV3細胞に対するMJ−170−DM1コンジュゲートの細胞毒性を示す。細胞を6ウェル組織培養プレートにウェル当たり1000個の密度で接種した。指示した濃度のコンジュゲートと共に7日間、細胞をインキュベートし、その時点でコロニーをクリスタルバイオレット/ホルムアルデヒド溶液で染色および固定し、計数した。
【配列表】























【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出型抗原の非放出−細胞外部分のエピトープに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項2】
ヒトMuc1またはMuc16タンパク質の非放出−細胞外部分のエピトープに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項4】
抗体が、組換え抗体、組換え抗体のフラグメント、ヒト化抗体、およびファージの表面にディスプレイされた抗体よりなる群から選択される、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項5】
抗体が、抗原の非放出−細胞外部分を免疫原性タンパク質キャリヤーに結合させたものを用いて調製された、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項6】
抗体が、抗原の細胞外−非放出部分を含む組換え融合タンパク質による動物の免疫化により産生された、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項7】
融合タンパク質がグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質である、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
抗体が、抗原の組換え−非放出−細胞外部分を発現する細胞による動物の免疫化により産生された、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項9】
エピトープの少なくとも一部が、Muc1の細胞外ドメインのカルボキシ末端アミノ酸90個内に位置する、請求項2に記載の抗体。
【請求項10】
エピトープの少なくとも一部が下記のアミノ酸配列内に位置する、請求項9に記載の抗体:
【化1】

【請求項11】
抗体が、下記よりなる群から選択される少なくとも1つのペプチドに結合する、請求項10に記載の抗体:
【化2】

【請求項12】
エピトープの少なくとも一部が、Muc16の細胞外ドメインのカルボキシ末端アミノ酸110個内に位置する、請求項2に記載の抗体。
【請求項13】
エピトープの少なくとも一部が下記のアミノ酸配列内に位置する、請求項12に記載の抗体:
【化3】

【請求項14】
抗体が、下記よりなる群から選択される少なくとも1つのペプチドに結合する、請求項13に記載の抗体:
【化4】

【請求項15】
細胞毒性物質または細胞毒性物質プロドラッグに結合した、請求項1または2に記載の抗体を含むコンジュゲート。
【請求項16】
細胞毒性物質が低分子薬物である、請求項15に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
細胞毒性物質がメイタンシノイド類、タキソイド類、またはCC−1065類似体である、請求項15に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
請求項1または2に記載の抗体および医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項19】
請求項15に記載のコンジュゲートおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項20】
有効量の請求項18に記載の組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象を処置する方法。
【請求項21】
有効量の請求項19に記載の組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象を処置する方法。
【請求項22】
対象が癌を伴う、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
対象が癌を伴う、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
癌は、Muc1またはMuc16が過剰発現した癌である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
癌は、Muc1またはMuc16が過剰発現した癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
癌を伴う疑いのある対象をスクリーニングする方法であって、
(a)該対象からの組織試料を用意し;
(b)請求項1に記載の抗体を用いて、該試料中の放出型抗原の非放出−細胞外部分の量を測定し;そして
(c)その抗原の量を癌性対照および非癌性対照における該抗原の量と比較し、これにより該対象のスクリーニングを行う
ことを含む方法。
【請求項27】
抗原がヒトMuc1またはMuc16である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
癌が卵巣癌または胸部癌である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
表面抗原の非放出部分に特異的に結合する抗体をスクリーニングする方法であって、
(a)表面に抗原を発現している細胞への候補抗体の結合を測定し;
(b)細胞から細胞外媒質中へ放出された抗原フラグメントへの候補抗体の結合を測定し;そして
(c)工程(a)および工程(b)の結合測定値を比較し、これにより該抗体をスクリーニングする
ことを含む方法。
【請求項30】
表面抗原がMuc1またはMuc16である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託番号HB− として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−170により産生される、単離されたモノクローナル抗体MJ−170。
【請求項32】
ATCCに寄託番号HB− として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−171により産生される、単離されたモノクローナル抗体MJ−171。
【請求項33】
ATCCに寄託番号HB− として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−172により産生される、単離されたモノクローナル抗体MJ−172。
【請求項34】
ATCCに寄託番号HB− として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−173により産生される、単離されたモノクローナル抗体MJ−173。
【請求項35】
ATCCに寄託番号HB− として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−170。
【請求項36】
ATCCに寄託番号HB− として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−171。
【請求項37】
ATCCに寄託番号HB− として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−172。
【請求項38】
ATCCに寄託番号HB− として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−173。
【請求項39】
請求項31、32、33または34に記載のモノクローナル抗体の機能均等物である抗体であって、モノクローナル抗体、組換え抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR−グラフト抗体、ファージの表面にディスプレイされた抗体、およびそのフラグメントよりなる群から選択される抗体。
【請求項40】
細胞毒性物質または細胞毒性物質プロドラッグに結合した、請求項31、32、33または34に記載の抗体を含むコンジュゲート。
【請求項41】
細胞毒性物質が低分子薬物である、請求項40に記載のコンジュゲート。
【請求項42】
細胞毒性物質がメイタンシノイド類、タキソイド類、またはCC−1065類似体である、請求項40に記載のコンジュゲート。
【請求項43】
請求項31、32、33または34に記載の抗体および医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項44】
請求項40に記載のコンジュゲートおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項45】
有効量の請求項43に記載の組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象を処置する方法。
【請求項46】
有効量の請求項44に記載の組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象を処置する方法。
【請求項47】
対象が癌を伴う、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
対象が癌を伴う、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
癌は、Muc1またはMuc16が過剰発現した癌である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
癌は、Muc1またはMuc16が過剰発現した癌である、請求項48に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放出型抗原の非放出−細胞外部分のエピトープに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項2】
ヒトMuc1またはMuc16タンパク質の非放出−細胞外部分のエピトープに特異的に結合する、単離されたモノクローナル抗体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項4】
抗体が、組換え抗体、組換え抗体のフラグメント、ヒト化抗体、およびファージの表面にディスプレイされた抗体よりなる群から選択される、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項5】
抗体が、抗原の非放出−細胞外部分を免疫原性タンパク質キャリヤーに結合させたものを用いて調製された、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項6】
抗体が、抗原の細胞外−非放出部分を含む組換え融合タンパク質による動物の免疫化により産生された、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項7】
融合タンパク質がグルタチオン−S−トランスフェラーゼ融合タンパク質である、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
抗体が、抗原の組換え−非放出−細胞外部分を発現する細胞による動物の免疫化により産生された、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項9】
エピトープの少なくとも一部が、Muc1の細胞外ドメインのカルボキシ末端アミノ酸90個内に位置する、請求項2に記載の抗体。
【請求項10】
エピトープの少なくとも一部が下記のアミノ酸配列内に位置する、請求項9に記載の抗体:
【化1】

【請求項11】
抗体が、下記よりなる群から選択される少なくとも1つのペプチドに結合する、請求項10に記載の抗体:
【化2】

【請求項12】
エピトープの少なくとも一部が、Muc16の細胞外ドメインのカルボキシ末端アミノ酸110個内に位置する、請求項2に記載の抗体。
【請求項13】
エピトープの少なくとも一部が下記のアミノ酸配列内に位置する、請求項12に記載の抗体:
【化3】

【請求項14】
抗体が、下記よりなる群から選択される少なくとも1つのペプチドに結合する、請求項13に記載の抗体:
【化4】

【請求項15】
細胞毒性物質または細胞毒性物質プロドラッグに結合した、請求項1または2に記載の抗体を含むコンジュゲート。
【請求項16】
細胞毒性物質が低分子薬物である、請求項15に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
細胞毒性物質がメイタンシノイド類、タキソイド類、またはCC−1065類似体である、請求項15に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
請求項1または2に記載の抗体および医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項19】
請求項15に記載のコンジュゲートおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項20】
有効量の請求項18に記載の組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象を処置する方法。
【請求項21】
有効量の請求項19に記載の組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象を処置する方法。
【請求項22】
対象が癌を伴う、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
対象が癌を伴う、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
癌は、Muc1またはMuc16が過剰発現した癌である、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
癌は、Muc1またはMuc16が過剰発現した癌である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
癌を伴う疑いのある対象をスクリーニングする方法であって、
(a)該対象からの組織試料を用意し;
(b)請求項1に記載の抗体を用いて、該試料中の放出型抗原の非放出−細胞外部分の量を測定し;そして
(c)その抗原の量を癌性対照および非癌性対照における該抗原の量と比較し、これにより該対象のスクリーニングを行う
ことを含む方法。
【請求項27】
抗原がヒトMuc1またはMuc16である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
癌が卵巣癌または胸部癌である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
表面抗原の非放出部分に特異的に結合する抗体をスクリーニングする方法であって、
(a)表面に抗原を発現している細胞への候補抗体の結合を測定し;
(b)細胞から細胞外媒質中へ放出された抗原フラグメントへの候補抗体の結合を測定し;そして
(c)工程(a)および工程(b)の結合測定値を比較し、これにより該抗体をスクリーニングする
ことを含む方法。
【請求項30】
表面抗原がMuc1またはMuc16である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)に寄託番号PTA−5286として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−170により産生される、単離されたモノクローナル抗体MJ−170。
【請求項32】
ATCCに寄託番号PTA−5287として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−171により産生される、単離されたモノクローナル抗体MJ−171。
【請求項33】
ATCCに寄託番号PTA−5288として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−172により産生される、単離されたモノクローナル抗体MJ−172。
【請求項34】
ATCCに寄託番号PTA−5302として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−173により産生される、単離されたモノクローナル抗体MJ−173。
【請求項35】
ATCCに寄託番号PTA−5286として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−170。
【請求項36】
ATCCに寄託番号PTA−5287として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−171。
【請求項37】
ATCCに寄託番号PTA−5288として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−172。
【請求項38】
ATCCに寄託番号PTA−5302として寄託されたハイブリドーマ細胞系MJ−173。
【請求項39】
請求項31、32、33または34に記載のモノクローナル抗体の機能均等物である抗体であって、モノクローナル抗体、組換え抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、CDR−グラフト抗体、ファージの表面にディスプレイされた抗体、およびそのフラグメントよりなる群から選択される抗体。
【請求項40】
細胞毒性物質または細胞毒性物質プロドラッグに結合した、請求項31、32、33または34に記載の抗体を含むコンジュゲート。
【請求項41】
細胞毒性物質が低分子薬物である、請求項40に記載のコンジュゲート。
【請求項42】
細胞毒性物質がメイタンシノイド類、タキソイド類、またはCC−1065類似体である、請求項40に記載のコンジュゲート。
【請求項43】
請求項31、32、33または34に記載の抗体および医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項44】
請求項40に記載のコンジュゲートおよび医薬的に許容できるキャリヤーを含む組成物。
【請求項45】
有効量の請求項43に記載の組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象を処置する方法。
【請求項46】
有効量の請求項44に記載の組成物を対象に投与することを含む、その必要がある対象を処置する方法。
【請求項47】
対象が癌を伴う、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
対象が癌を伴う、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
癌は、Muc1またはMuc16が過剰発現した癌である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
癌は、Muc1またはMuc16が過剰発現した癌である、請求項48に記載の方法。

【図1−a】
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【図1−b】
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【図2−a】
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【図2−b】
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【図3】
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【図4−a1】
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【図4−a2】
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【図4−b】
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【図5−a1】
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【図5−a2】
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【図5−a3】
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【図5−a4】
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【図5−b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図12−a】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2006−502110(P2006−502110A)
【公表日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−519814(P2004−519814)
【出願日】平成15年7月3日(2003.7.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/020907
【国際公開番号】WO2004/005470
【国際公開日】平成16年1月15日(2004.1.15)
【出願人】(504039155)イミュノジェン・インコーポレーテッド (36)
【Fターム(参考)】