説明

非晶質アトルバスタチンの医薬組成物及びその製造のための方法

【課題】 非晶質アトルバスタチンの医薬組成物及びその製造のための方法の提供。
【解決手段】 結晶アトルバスタチンを、溶融加工可能なポリマー並びに任意成分である安定剤及び任意成分である可塑剤と、ポリマーを軟化又は溶融させて結晶アトルバスタチンをポリマー中に溶融又は溶解するのに十分に高い温度で混合し、これによって非晶質アトルバスタチンの分散物を形成することによって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質アトルバスタチンを含有する固体医薬組成物を製造するための方法及び物質並びに熱溶融押出によって製造される非晶質アトルバスタチンの安定な医薬組成物の関する。
【背景技術】
【0002】
アトルバスタチンカルシウム又は[R−(R,R)]−2−(4−フルオロフェニル)−β,δ−ジヒドロキシ−5−(1−メチルエチル)−3−フェニル−4−[(フェニルアミノ)カルボニル]−1H−ピロール−1−ヘプタン酸カルシウム塩(2:1)三水和物は、LIPITOL(登録商標)中の活性な医薬成分であり、そして以下の構造式:
【0003】
【化1】

【0004】
で表される。
アトルバスタチン並びにその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物、及び水和物は、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−補酵素A(HMG−CoA)レダクターゼの選択的な競合的阻害剤であり、これは、HMG−CoAのメバロン酸への転換、即ち、コレステロール生合成経路の初期の律速段階を触媒する。参照により本明細書に組み込まれる B.D.Roth への米国特許第5,273,995号を参照されたい。
【0005】
薬剤の結晶形態(又は諸形態)と比較した場合、同一薬剤の非晶質形態(又は諸形態)は、異なった in virto の溶解特性を示すことができる。非晶質形態は、更に異なったバイオアベイラビリティを示すこともでき、これは、全身性の治療効果を与えることを意図した薬剤に対して、薬剤動態学的(PK)特性、又は時間の関数としての薬剤の血漿中濃度の差によって特徴づけることができる。T.Konno,Chem.Pharm.Bull.38:2003-2007(1990) を参照されたい。いくつかの治療的適応症について、一つのPKプロフィールが別のものより有益である場合がある。従って、例えばアトルバスタチンのいくつかの潜在的使用は、血流への薬剤の比較的迅速な吸収から恩恵があり得る。例えば、急性の脳卒中の患者の治療について記載している、M.Takemoto et al.,Journal of Clinical Investigation 108(10):1429-1437(2001) を参照されたい。
【0006】
非晶質アトルバスタチンを製造するための各種の方法が記載され、そしてこれらの方法の多くは、揮発性有機溶媒を使用している。例えば、Lin 等への米国特許第6,087,511号は、結晶アトルバスタチンを、テトラヒドロフランのような非ヒドロキシル系溶媒中に溶解し、そしてその後、非ヒドロキシル系溶媒を除去して、非晶質アトルバスタチンを得ることによって、非晶質アトルバスタチンを形成することを記載している。更に、その全開示が参照により本明細書に組み込まれる Y.Kumar et al へのWO00/71116;Z.Greff et al へのWO01/28999;及び Z.Phlaum へのWO01/42209を参照されたい。非晶質アトルバスタチンが製造されると、これを医薬的に受容可能な賦形剤と組合わせて、医薬組成物及び剤形を得ることができる。
【0007】
望まれるのは、揮発性有機溶媒の使用を含まない非晶質アトルバスタチンを製造するための方法、及び非晶質アトルバスタチンを含有する安定な医薬組成物である。
【発明の開示】
【0008】
【発明の要旨】
【0009】
本発明は、非晶質アトルバスタチンと一つ又はそれより多い任意成分である医薬的に受容可能な賦形剤との固体分散物を含んでなる固体医薬組成物を提供する。一つの態様において、固体分散物は、非晶質アトルバスタチン或いはその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物、及び溶融加工可能なポリマーを含む。もう一つの態様において、固体分散物は、非晶質アトルバスタチン或いはその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物、溶融加工可能なポリマー、及び非晶質アトルバスタチンの化学劣化を減少するための安定剤を含む。
【0010】
本発明の更なる側面は、固体医薬組成物を製造する方法を提供する。この方法は:(a)結晶アトルバスタチン或いはその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物を、溶融加工可能なポリマーと、その溶融加工可能なポリマーを軟化又は溶融させて結晶アトルバスタチンをその溶融加工可能なポリマー中に溶融又は溶解するのに十分に高い温度で混合し、これによって非晶質アトルバスタチンの分散物を形成し;そして(b)この分散物を冷却させることの工程を含む。
【詳細な説明】
【0011】
定義及び略語
他に示さない限り、本開示は、以下に与える定義を使用する。
“約”は、数字的変数に関連して使用された場合、一般的に実験誤差内(例えば、平均に対する95%信頼区間内)の又は示された値の±10%内のいずれか大きい方の変数の値及び変数の全ての値を指す。
【0012】
“医薬的に受容可能な”は、健全な医学的判断の範囲内で、不都合な毒性、刺激、アレルギー反応等を伴わずに患者の組織との接触における使用に適した、妥当な利益/危険度比で均衡し、そしてその意図した使用に有効である物質を指す。
【0013】
“治療すること”は、このような用語が適用される疾患若しくは症状の進行を逆転、緩和、阻害又は緩慢化し、又はそれらを予防し、或いは一つ又はそれより多いこのような疾患或いは症状を予防することを指す。
【0014】
“治療”は、“治療すること”の作用を指す。
“薬剤”、“薬剤物質”、“活性な医薬成分”等は、治療を必要とする患者を治療するために使用することができる化合物を指す。
【0015】
“賦形剤”又は“アジュバント”は、薬剤物質ではない医薬組成物の何らかの成分を指す。
“薬剤産物”、“医薬剤形”、“最終剤形”等は、治療を必要とする患者に投与される一つ又はそれより多い薬剤物質と一つ又はそれより多い賦形剤との組合せ(即ち、医薬組成物)を指し、そして錠剤、カプセル剤、液体懸濁液剤、貼布剤等の形態であることができる。
【0016】
“不活性”は、薬剤のバイオアベイラビリティに積極的に影響することができるが、他の点では反応性ではない物質を指す。
“非晶質”は、規則的な結晶構造を欠き、従って、拡散した、即ち非示差的(non-distinctive)粉末X線回折(PXRD)図形を与える固体状態の粒子を指す。
【0017】
“結晶”は、非晶質物質と対照的に、定義されたピークを持つ示差的(distinctive)PXRD図形を示す規則的な秩序構造を有する固体状態の粒子を指す。
“固体分散物”、“非晶質固体分散物”等は、担体又は分散媒体中に分散或いは分布された薬剤物質を指す。一般的に、薬剤物質の少なくとも一部、そして多くの場合大部分が非晶質である。薬剤は、分散物中に(a)分散した薬剤に富んだ領域として存在することができ、又は(b)担体中に均質に分布されることができ(即ち固溶液)或いは(a)及び(b)のある程度の混合物であることができる。医薬的固体分散物の考察については、参照により本明細書に組み込まれる W.L.Chiou & S.Riegelman,J.Pharm.Sci 60(9):1282-1302(1971) を参照されたい。
【0018】
“粒子サイズ”は、中央値、又は試料中の粒子の平均寸法を指し、そして粒子の数、粒子の体積、又は粒子の質量に基づくことができ、そしてレーザー回折法、遠心沈降技術、光子相関分光法(動的光散乱又は準弾性光散乱法)、又は標準的篩を使用する分篩分析を含む、標準的測定技術のいくつかを使用して得ることができる。異なって記述しない限り、本明細書中の粒子サイズに対する全ての言及は、質量に基づいた中央値の粒子のサイズを指す。
【0019】
“溶媒和物”は、薬剤物質及び化学量論的又は非化学量論的量の一つ又はそれより大きい医薬的に受容可能な溶媒分子(例えば、エタノール)を含んでなる分子複合体を記述する。溶媒が薬剤に強固に接続している場合、得られた複合体は、湿度とは独立した十分に限定された化学量論を有するものである。然しながら、溶媒が、チャネル溶媒和物及び吸湿性化合物の場合のように弱く結合している場合、溶媒含有率は、湿度及び乾燥条件に依存するものである。このような場合、複合体は、しばしば非化学量論的であるものである。
【0020】
“水和物”は、薬剤物質及び化学量論的又は非化学量論的量の水を含んでなる溶媒和物を記述する。
表1は、本明細書を通して使用される略語を掲載するものである。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
先に記述したように、医薬組成物は、固体分散物と一つ又はそれより多い医薬的に受容可能な賦形剤とを含んでなる。固体分散物は、非晶質アトルバスタチン或いはその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物、任意成分である安定剤、及び任意成分である可塑剤を含み、これらは、溶融加工可能なポリマー中に分散されている。活性成分、即ち、アトルバスタチンは、一般的に固体分散物の約10%ないし約90%、しばしば固体分散物の約20%ないし約60%、そして更に典型的には、固体分散物の約30%ないし約50%を、重量に基づいて構成する。
【0025】
アトルバスタチンは、多くの方法を使用して製造することができる。例えば、D.E.Butler、C.F.Deering、A.Millar、T.N.Nanninga & B.D.Roth への米国特許第5,003,080号;5,097,045号;5,124,482号;5,149,837号;号5,216,174号;5,245,047号;及び5,280,126号;A.Miller & D.E.Butler への米国特許第5,103,024号及び5,248,793号;D.E.Butler、T.V.Le、A.Millar & T.N.Nanninga への米国特許第5,155,251号;D.E.Butler、T.V.Le & T.N.Nanninga への米国特許第5,397,792号;5,342,952号;5,298,627号;5,446,054号;5,470,981号;5,489,690号;5,489,691号;及び5,510,488号;T.E.Jacks & D.E.Butler への米国特許第5,998,633号;M.Lin & D.Schweiss への米国特許第6,087,511号;R.L.Bosch、R.J.McCabe、T.N.Nanninga & R.J.Stahl への米国特許第6,433,213号;及び D.E.Butler、R.L.DeJong、J.D.Nelson、M.L.Pamment & T.L.Stuk への米国特許第6,476,235を参照されたく、これらの全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
本医薬組成物は、制約されるものではないが、その遊離の形態並びにその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物、水和物、及び多形を含むいずれもの医薬的に受容可能な形態のアトルバスタチンを使用することができる。塩は、制約されるものではないが、半塩を含む塩基付加塩を含む。医薬的に受容可能な塩基付加塩は、アルカリ又はアルカリ土類金属カチオンのような金属カチオン、並びにアミンを含む塩基から誘導された非毒性の塩を含むことができる。潜在的に有用な塩の例は、制約されるものではないが、アルミニウム、アルギニン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、グリシン、リシン、マグネシウム、N−メチルグリカミン、オラミン、カリウム、プロカイン、ナトリウム、トロメタミン、亜鉛等を含む。有用な塩基付加塩の説明については、S.M.Berge et al.,J.of Pharm.Sci.,66:1-19(1977) を参照されたく;更に Stahl and Wermuth,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(2002) も参照されたい。
【0027】
アトルバスタチンの医薬的に受容可能な塩は、その遊離酸を所望の塩基と反応させることによって;アトルバスタチンの適した前駆体から酸又は塩基に不安定な保護基を除去することによって;適した環式前駆体(ラクトン)を所望の塩基を使用して開環することによって;或いはアトルバスタチンの一つの塩を、適当な酸又は塩基との反応によって、又は適したイオン交換カラムとの接触によって別の塩に転換することによって製造することができる。これらの転換の全ては、典型的には溶媒中で行われる。得られた塩は、沈澱させることができ、そして濾取することができ、或いは溶媒の蒸発によって回収することができる。得られた塩のイオン化の程度は、完全なイオン化から殆んど非イオン化まで変化することができる。
【0028】
アトルバスタチンは、溶媒和されていない形態及び溶媒和された形態(水和物を含む)で、そしてその薬剤と少なくとも一つの更なる成分が、化学量論的又は非化学量論的量で存在する多成分複合体の他の形態で、存在することができる。多成分複合体(塩及び溶媒和物以外)は、包接体(薬剤−宿主封入体複合物)及び医薬的共結晶を含む。後者は、非共有相互作用によって一緒に結合した中性分子状構成要素の結晶複合体と定義される。共結晶は、溶融結晶化、溶媒からの再結晶、又は諸成分を一緒に物理的に粉砕することによって製造することができる。例えば、O.Almarsson & M.J.Zaworotko,Chem.Comm.1889-1896(2004) を参照されたい。多成分複合体の一般的な考察については、J.K.Haleblian,J.Pharm.Sci.64(8):1269-88(1975) を参照されたい。
【0029】
アトルバスタチンの潜在的に有用な形態は、全てのその多形、晶癖、光学異性体、及び互変異性体を、純粋であるか否かを問わずに含む。
更に、本医薬組成物は、アトルバスタチンのプロドラッグを使用することができる。このようなプロドラッグは、アトルバスタチンの適当な官能基を、例えば H.Bundgaar,Design of Prodrugs(1985) 中に記載されているような“プロ部分”として知られる官能基で置換することによって製造することができる。従って、プロドラッグの例は、エステル基がカルボン酸基と置き換わったか、或いはエーテル基が一つ又はそれより多いヒドロキシ基と置き換わった、アトルバスタチンの誘導体を含むものである。
【0030】
アトルバスタチンの有用な形態は、医薬的に受容可能な同位体的に標識された化合物であって、更に一つ又はそれより多い原子が、同一原子番号を有するものの、原子質量又は質量数が天然において優勢である原子質量又は質量数と異なる原子によって置換えられている化合物を含む。アトルバスタチン中に含まれるのに適した同位体の例は、水素(H及びH)、炭素(11C、13C及び14C)、及び窒素(13N及び15N)の同位体を含む。アトルバスタチンの同位体的に標識された形態は、当業者にとって既知の技術によって製造することができる。
【0031】
上記のように、本固体分散物は、非晶質アトルバスタチンの結晶形態への転換を、個々のアトルバスタチンの分子又はアトルバスタチン分子のクラスターを隔離することによって、減少又は防止する溶融加工可能なポリマーを含む。固体分散物中の非晶質であるアトルバスタチンの割合は、約5%ないし約100%の範囲であることができるが、一般的に、重量に基づいて約50%ないし約100%の範囲である。この開示の目的のために、非晶質アトルバスタチンの画分が、それぞれ約60%、75%又は90%より大きいか或いはそれに等しく残部が結晶質である場合、本薬剤物質は、優勢に、実質的に若しくは本質的に、非晶質であると考えられる。現実的な意味で、有用なアトルバスタチンの固体分散物は、結晶アトルバスタチンのPXRDパターン中に別のやり方で存在するピークを欠くPXRDパターンによって特徴づけられる。
【0032】
溶融加工可能なポリマーは、一般的に得られた固体分散物の約10%ないし約90%、しばしば固体分散物の約40%ないし約80%、そして更に典型的には、固体分散物の約50%ないし約70%を重量基準で構成する。適したポリマーは、非晶質アトルバスタチンの結晶形態への転換を減少又は防止するが、その他の点では上記で定義したように不活性であり、そして1ないし8を含むpHの範囲の少なくとも一部にわたって水溶解性を示すものを含む。従って、有用なポリマーは、制約されるものではないが、エーテル又はエステル或いはエーテルとエステル置換基とを有するものを含むイオン化可能な又はイオン化不可能なセルロース系ポリマー、並びにいわゆる“腸溶性”及び“非腸溶性”ポリマーを含むそれらのコポリマー;ヒドロキシ、アルキルアシルオキシ、及び環式アミド置換基を有するビニルポリマー及びコポリマーであって、メタクリル酸コポリマー及びメタクリル酸アミノアルキルコポリマーを含むもの;各種の合成及び天然に存在する多価アルコールの高分子エーテル及びエステル;並びにこれらの混合物を含む。一つの態様において、溶融加工可能なポリマーは、本明細書中で記載したようなイオン性又はイオン化可能なセルロース系ポリマーである。一つの態様において、溶融加工可能なポリマーは、本明細書中で記載したようなイオン化不可能なセルロース系ポリマーである。一つの態様において、溶融加工可能なポリマーは、本明細書中で記載したようなビニルポリマーである。一つの態様において、溶融加工可能なポリマーは、本明細書中で記載したようなビニルコポリマーである。一つの態様において、溶融加工可能なポリマーは、本明細書中で記載したようなメタクリル酸コポリマーである。一つの態様において、溶融加工可能なポリマーは、本明細書中で記載したようなメタクリル酸アミノアルキルコポリマーである。一つの態様において、溶融加工可能なポリマーは、本明細書中で記載したような多価アルコールの高分子エーテルである。一つの態様において、溶融加工可能なポリマーは、本明細書中で記載したような多価アルコールの高分子エステルである。
【0033】
例示的なイオン性セルロース系ポリマーは、制約されるものではないが、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びそのナトリウム又はカルシウム塩;カルボキシエチルセルロース(CEC);カルボキシメチルエチルセルロース(CMEC);酢酸フタル酸ヒドロキシエチルメチルセルロース;酢酸コハク酸ヒドロキシエチルメチルセルロース;フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCP);コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース(HPCAP);酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルセルロース(HPCAS);酢酸フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAP);酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAS);酢酸トリメリト酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAT);酪酸フタル酸ヒドロキシプロピルセルロース;カルボキシメチルエチルセルロース及びそのナトリウム塩;酢酸フタル酸セルロース(CAP);酢酸フタル酸メチルセルロース;酢酸トリメリト酸セルロース(CAT);酢酸テレフタル酸セルロース;酢酸イソフタル酸セルロース;プロピオン酸フタル酸セルロース;プロピオン酸トリメリト酸セルロース;酪酸トリメリト酸セルロース;並びにこれらの混合物を含む。
【0034】
例示的な非イオン性セルロース系ポリマーは、制約されるものではないが、メチルセルロース(MC);エチルセルロース(EC);ヒドロキシエチルセルロース(HEC);ヒドロキシプロピルセルロース(HPC);ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);酢酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース;酢酸ヒドロキシエチルセルロース;ヒドロキシエチルエチルセルロース;及びこれらの混合物を含む。
【0035】
例示的なビニルポリマー及びコポリマーは、制約されるものではないが、メタクリル酸コポリマー及びメタクリル酸アミノアルキルコポリマーを含み、これらは、例えば Rohm Pharma からの EUDRAGIT(登録商標)L、S、NE、RL、RS、及びEの商標名で入手可能である。他の例示的なポリマーは、カルボン酸で官能化されたポリメタクリレート及びアミンで官能化されたポリメタクリレート;ジエチルアミノ酢酸ポリ(酢酸ビニル);ポリビニルアルコール(PVA);及びポリビニルアルコール/ポリ酢酸ビニル(PVA/PVAc)コポリマー;並びにこれらの混合物を含む。
【0036】
更なるビニルポリマー及びコポリマーは、制約されるものではないが、例えば、KOLLIDON(登録商標)12PF、17PH、25、30、及び90Fのような、水溶性ポリビニルピロリドン(PVP又はポビドン)を含むN−ポリビニルピロリドン(NVP)のホモポリマー;KOLLIDON(登録商標)VA64のようなPVP及び酢酸ビニル(VA)の水溶性コポリマー;並びにBASFから入手可能である KOLLIDON(登録商標)CL、CL−M、及びSRのような水溶性架橋ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、並びにこれらの混合物を含む。
【0037】
例示的な多価アルコールの高分子エーテル及びエステルは、制約されるものではないが、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール(PPG)ホモポリマー及びコポリマー(PEG/PPG);ポリエチレン/ポリビニルアルコール(PE/PVA)コポリマー;デキストリン;プルラン;アカシア;トラガカント;アルギン酸ナトリウム;アルギン酸プロピレングリコール;寒天粉末;ゼラチン;デンプン;加工デンプン;グルコマンナン;キトサン;並びにこれらの混合物を含む。他の例示的な高分子エーテルは、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、及び BASF から LUTROL(登録商標)F68、F127、及びF127−Mの商標名で入手可能なもののような、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(ポロキサマー);並びにこれらの混合物を含む。
【0038】
本固体分散物は可塑剤を含むことができ、これは、溶融加工可能なポリマー中での活性成分の分散を補助する。可塑剤は、得られる固体分散物の約50%までを構成することができが、しかし典型的には固体分散物の約5%ないし約25%を重量基準で構成する。有用な可塑剤は、制約されるものではないが、BASFから入手可能である LUTROL(登録商標)E300、E400、及びE600のような低分子量PEG(約600又はそれより少ないMw)、及び BASF から PLURONIC(登録商標)の商標名で入手可能なもののようなポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレンの三ブロック(ABA)コポリマー;トリアセチン;クエン酸トリエチル(TEC);並びにこれらの混合物を含む。
【0039】
非晶質アトルバスタチンの固体分散物は、更に安定剤を含むこともでき、これは、固体分散物の製造中又はその薬剤産物の貯蔵中に起こり得るアトルバスタチンの化学劣化を減少又は防止する。安定剤は、固体分散物の約0%ないし約30%を構成することができ、一般的には固体分散物の約1%ないし約20%を構成し、そして更に典型的には、固体分散物の約5%ないし約15%を、重量に基づいて構成する。有用な安定剤は、塩基性化合物であり、そして制約されるものではないが、炭酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、アルミン酸マグネシウム、水酸化マグネシウムアルミニウム、並びにこれらの混合物のようなアルカリ(1族)金属及びアルカリ土類(2族)金属の医薬的に受容可能な塩を含む。有用な安定剤の考察については、参照により本明細書に組み込まれる Mills 等への米国特許第5,686,104号を参照されたい。
【0040】
先に記載したように、非晶質アトルバスタチンの固体分散物は、結晶アトルバスタチン或いはその医学的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物を、一つ又はそれより多い溶融加工可能なポリマー、任意成分である安定剤、及び任意成分である可塑剤と混合することによって製造される。混合は、ポリマーを軟化又は溶融させてアトルバスタチン及び安定剤をポリマーの担体中に分散するのに十分に高い温度で行う。混合温度は、しばしば結晶アトルバスタチンを、溶融加工可能なポリマーの存在下で溶融するのに十分に高く、そして典型的には、約130℃、140℃、150℃、160℃、170℃又は180℃で、或いはそれより上である。得られた固体分散物は、その後冷却させられる。
【0041】
多くの機械式混合機を、アトルバスタチン及び任意成分である安定剤をポリマーの担体中に分散するために使用することができる。これらは、二軸スクリュー押出機(混合機)、並びに溶融造粒操作において使用される高剪断力縦型及び横型混合機を含む。潜在的に有用な二軸スクリュー混合機(TSM)は、制約されるものではないが、APV/Baker、Haake、Werner Pfleiderer、及びDACAから入手可能なものを含む。潜在的に有用な高剪断力混合機は、制約されるものではないが、Niro A/S、L.B.Bohle、Machine Collette N.V.(Gral)、Dierks and Sohne(Diosna)、Lodige、Moritz、Processall、Roto、及び Glatt から入手可能なものを含む。
【0042】
非晶質アトルバスタチンの固体分散物は、錠剤、カプセル剤、散剤等のような最終剤形を含む固体医薬組成物を製造するために、更なる加工を受けることができる。例えば、押出された固体分散物を切断して、例えば約0.250mmないし約2mmの粒子サイズの中央値を有する顆粒を得ることができる。顆粒を、薬剤産物を製造するために直接使用することができ、又は例えば約1μmないし約150μmの粒子サイズの中央値まで粉砕することができる。有用な粉砕機器は、ジェットミル(乾式)、ボールミル、ハンマーミル等を含む。次いで粉砕された粒子は、更なる医薬的に受容可能な賦形剤と混合することができる。得られた混合物は、乾式ブレンド(例えば、Vコーンブレンダー中で)して、薬剤産物を形成することができ、これは、所望により薬剤産物の最終剤形を製造するために、更に錠剤化又はカプセル化、被覆等のような操作を受けることができる。粉砕、乾式ブレンド、錠剤化、カプセル化、被覆等の考察については、参照により本明細書に組み込まれる A.R.Gennaro(ed.)Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.,2000);H.A.Lieberman et al.(ed.),Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Vol.1-3(2d ed.,1990);及び D.K.Parikh & C.K.Parikh,Handbook of Pharmaceutical Granulation Technology,Vol.81(1997) を参照されたい。
【0043】
錠剤の剤形において、投与量にもよるが、本薬剤は、剤形の約1%ないし約80%を構成することができるが、しかし更に典型的には剤形の約5%ないし約60%を、重量で構成する。アトルバスタチンに加えて、錠剤は、一つ又はそれより多い崩壊剤、界面活性剤、滑剤、潤滑剤、結合剤、及び希釈剤を、単独で又は組合せのいずれかで含むことができる。崩壊剤の例は、制約されるものではないが、グリコール酸デンプンナトリウム;そのナトリウム及びカルシウム塩を含むCMC;クロスカルメロース;そのナトリウム炎を含むクロスポビドン;PVP、MC;微結晶セルロース;1ないし6個の炭素のアルキルで置換されたHPC;デンプン;アルファ化デンプン;アルギン酸ナトリウム;及びこれらの混合物を含む。崩壊剤は、一般的に剤形の約1%ないし約25%、更に典型的には剤系の約5%ないし約20%を、重量に基づいて構成する。
【0044】
錠剤は、所望によりラウリル硫酸ナトリウム及びポリソルベート80のような界面活性剤;二酸化ケイ素及びタルクのような滑剤;並びにステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物のような潤滑剤を含むことができる。存在する場合、界面活性剤は、錠剤の約0.2%ないし約5%を;滑剤は、錠剤の約0.2%ないし約1%を構成することができ;そして潤滑剤は、錠剤の約0.25%ないし約10%、又は更に典型的には、錠剤の約0.5%ないし約3%を、重量に基づいて構成することができる。
【0045】
先に記述したように、錠剤の製剤は、結合剤及び希釈剤を含むことができる。結合剤は、一般的に錠剤の製剤に接着特性を与えるために使用され、そして典型的には錠剤の約10%又はそれより多くを、重量に基づいて構成する。結合剤の例は、制約されるものではないが、微結晶セルロース、ゼラチン、糖、ポリエチレングリコール、天然及び合成のゴム、PVP、アルファ化デンプン、HPC、及びHPMCを含む。一つ又はそれより多い希釈剤が、錠剤製剤の残部を構成することができる。希釈剤の例は、制約されるものではないが、ラクトース一水和物、噴霧乾燥されたラクトース一水和物、無水ラクトース等;マンイトール;キシリトール;デキスチロース;スクロース;ソルビトール;微結晶セルロース;デンプン;二塩基性リン酸カルシウム二水和物;及びこれらの混合物を含む。
【実施例】
【0046】
実施例1ないし実施例17
以下の実施例は、例示的であり、そして非制約的であることを意図し、そして本発明の具体的な態様を表す。
【0047】
表2は、実施例1ないし実施例17において使用された医薬製剤の成分を収載する。結晶アトルバスタチンカルシウム薬剤物質は、内部供給者から得た。微小化された EUDRAGIT E 100(メタクリル酸ジアミノエチル及び中性メタクリル酸エステルのカチオン性コポリマー)である EUDRAGIT E PO は、Rohm America Inc から Chemical Marketing Concepts を経由して得た。ポリエチレングリコール400(PEG400)、炭酸カルシウム(CaCO)、及びクエン酸トリエチル(TEC)は、それぞれ BASF、MDL Information Systems Inc、及び Morflex から得た。PVP K30、KOLLIDON SR、及び KOLLIDON VA64は、BASF から得た。HPMCAS(MG級)は、Shin-Etsu Chemical Co,Ltd から得た。
【0048】
表2に示したそれぞれの製剤の成分を、押出前に予備混合又は予備ブレンドした。少なくとも一つの液体成分を含有する製剤において、固体(粉末)成分を秤量し、そしてスパチュラを使用して約1分間手作業で混合した。適当な量の液体成分(PEG400又はTEC)を、乾燥成分のそれぞれのブレンド物に加えた。得られた混合物を約15分間乳鉢及び乳棒を使用して混合し、そして次いで No. 20US標準篩(0.85mm)を通して篩い分けして、ブレンド中に形成することができるいずれもの塊りを除去した。粉末化された物質が No. 20篩を通して通過することができるまで、塊りを乳鉢及び乳棒で粉砕した。それぞれの混合物を、更に30分間HDPE容器(100cm)内でTURBULA震盪混合機(Glen Mills Inc.)を使用して混合した。押出前に、それぞれのブレンド物を No. 20篩を通して篩い分けして、粉末の均一性を確実にした。
【0049】
液体成分を有しない製剤において、固体(粉末)成分を秤量し、そしてスパチュラを使用して約1分間手作業で混合した。それぞれの得られた混合物を、その後、更に30分間HDPE容器(100cm)内で TURBULA 震盪混合機を使用して混合した。押出前に、それぞれのブレンド物を No. 40US標準篩(0.425mm)を通して篩い分けして、粉末の均一性を確実にした。
【0050】
DACA Instruments の MicroCompounder 二軸スクリュー混合機(TSM)を、表2に収載した医薬組成物を製造するために使用した。押出機は、二軸の円錐形同時回転スクリューを使用して、小量の物質(例えば、製剤によるが、約0.5g/分ないし約1g/分)を、制御されたスクリュー回転速度、バレル温度、及び圧力のような制御された条件下で運搬し、混合し、そして押出した。押出機は、加工前に望まれる加工温度(170℃)で、30分間平衡させた。それぞれの予備混合された製剤を、押出機の供給口に手作業で供給した。押出物の試料を、押出機が定常状態になった後(例えば約5分後)に収集し、室温に冷却し、そしてその後の粉砕及び分析のためにデシケーター中に貯蔵した。加工温度、スクリュー回転速度、及び圧力を、それぞれの試験を通してモニターし、そして記録した。ポリマー(担体)の交換の間に、押出機を分解し、そして清掃した。
【0051】
表3は、加工パラメーター(TSM速度)、押出物外観、並びに粉砕された押出物及び押出前のブレンド物のpHを収載している。それぞれの試料のpHは、0.16mg/mLの濃度を有する水性試料を使用して決定した。それぞれの試料をリストシェーカーを使用して攪拌した後、0.5時間、1時間、及び24時間目で採取してpH測定した。表3は、より長い撹拌時間ではpHが有意に変化しなかったので、0.5時間攪拌した後のpHの測定値を示している。
【0052】
SPEX 6800 冷凍機/ミルを、押出物試料を粉砕するために使用した。それぞれの試料を15分間予備冷却し、そして毎秒15回の衝撃で最小4サイクル、そしてそれぞれ2分間の粉砕、続いて1分間の冷却からなるサイクルの最大6サイクルで粉砕した。粉砕した試料を、200(0.075mm)、100(0.150mm)、及び60(0.250mm)のサイズのUS標準篩を有する ATM SONIC SIFTER を使用することによりサイズに基づいて分離した。ある場合には、粉砕サイクルが望まれる粒子サイズの範囲の十分な試料を製造できなかったために、0.250mmより大きい粒子サイズを有する粉砕された試料を更に粉砕した。
【0053】
0.075mmないし0.150mm間の粒子サイズを持つ押出試料を、粉末X線回折(PXRD)、変調型(modulated)示差走査熱量測定(MDSC)、熱重量分析(TGA)、pH、水溶解性、及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって特性決定した。
【0054】
いくつかの粉砕した押出物試料を、密閉したHDPEビン中で30℃及び60%RH、並びに40℃及び75%RHで1及び3ヶ月貯蔵した。殆どの部分において、30℃及び60%RHで貯蔵された粉砕した押出物の試料は、粉末の形態のままであった。40℃及び75%RHで貯蔵された押出物の試料は、硬いゲルとなった粉砕した PVP K30 押出物(実施例10及び11)を除き、ケーキ化した。ケーキ化した試料は、スパチュラを使用して容易に粉末に壊れたが、しかし PVP K30 のゲルは、分析の前に乳鉢及び乳棒による粉砕を必要とした。40℃及び75%RHで貯蔵された試料を、水分含有率並びに物理的及び化学的安定性について、それぞれTGA、PXRD、及びHPLCを使用して分析した。
【0055】
粉末X線回折図形を、Rigaku Ultima +X線粉末回折計(銅ターゲット生成1.54ÅX線)を使用して得て、シータ/2−シータ角度計を使用してスキャンした。回折図形を高感度条件(2.0mmの発散及び散乱スリット;2.0及び0.6mmの受信モノクロメータースリット)下で、1度の2θ/分のスキャン速度、及び0.02°の2θの試料採取間隔で、40kV/40mAのX線パワーで操作される装置により得た。試料を、3ないし50度の2θ範囲にわたってスキャンした。
【0056】
図1及び図2は、結晶アトルバスタチンカルシウム及び炭酸カルシウムのブレンド前の粉末X線回折(PXRD)パターンを示す。図3は、実施例1ないし実施例7のアトルバスタチンの固体分散物の熱溶融押出及び粉砕後のPKRDパターンを示す。図4は、実施例6の製剤の、ブレンド後のしかし押出前の並びに押出及び粉砕後のしかし貯蔵前の押出及び粉砕並びにその後の40℃及び75%RHにおける60時間の暴露後のPXRDパターン(それぞれ回折図形A、B、及びC)を示す。同様に、図5及び図6は、それぞれ実施例8、10、12、14、及び16並びに実施例9、11、13、15、及び17のアトルバスタチンの固体分散物の熱溶融押出及び粉砕後のしかし貯蔵前のPXRDパターンを示す。図7及び図8は、それぞれ実施例8、10、12、14、及び16並びに実施例9、11、13、15、及び17のアトルバスタチンの固体分散物の熱溶融押出及び粉砕並びにその後の40℃及び75%RHに対する3ヶ月の暴露後のPXRDパターンを示す。
【0057】
図3ないし図8に示すPXRD回折図形によって示されるように、押出及び粉砕の直後の並びに40℃及び75%RHにおける3ヶ月の貯蔵後の全ての試料は非晶質であった。押出物のPXRDパターンの38°の2θで観察された単一の弱いピークの起源は未知である。このピークが、KOLLIDON SR 及び HPMCAS-MG のような非晶質賦形剤のPXRDパターンにおいても見られるために、これはアトルバスタチンによるものではない。
【0058】
表4は、粉砕された押出物のUSP水中の溶解を時間の関数として示す。試料をUSPのII型溶解装置(37℃、50RPM)を使用して試験した。それぞれ約20mgの活性成分を含有する三つの試料をUSPの精製水中に溶解した。試料を、15、30、45、及び60分に吸引した。更なる試料を、パドルの速度を20分間100RPMに増加した後で吸引した。試料を Millipore Millex GV フィルター(0.22μm細孔)を通して濾過し、そしてUV/可視分光光度法(244nmの波長、0.5cmのパス長さのセル)により、純粋なアトルバスタチンカルシウムを標準として使用して分析した。
【0059】
薬剤物質及び劣化生成物の分析は、均一濃度HPLC法を使用して行った。この方法は、Phenomenex Ultremex の粒子サイズ5μmの250×4.6mmC18逆相カラムを使用し、27:20:53容積/容積/容積のACN:THF:クエン酸アンモニウム(0.05M、pH4)の移動相成分を使用した。試料を、HP 1100 のHPLC装置を使用して、1.5mL/分の流量及び244nmにおけるUV検出で分析した。試料を、10mgの活性成分の等価物を、50:50容積/容積のクエン酸アンモニウム(pH7.4):ACNで抽出して、0.1mg/mLの最終濃度を得ることによって調製した。予備実験において15分を超えても劣化生成物が観察されなかったために、試料を15分間試験した。アトルバスタチンカルシウムの劣化の量は、全面積のパーセントに基づいて計算した。
【0060】
表5は、薬剤物質、並びに押出前ブレンド物、及び粉砕直後の押出物、並びに密閉ビン中の40℃及び75%RHにおける、1及び3ヶ月の貯蔵後の全劣化生成物の量を示す。1及び3ヶ月間貯蔵された押出物の試料の分析データは、水分含有率のいずれもの変化を考慮して、貯蔵前の押出物試料から調節した。
【0061】
本明細書及び特許請求の範囲中で使用された場合、単数の表記が、文脈が明白に異なって示していない限り、単一の対象又は複数の対象を指すことは注意すべきである。従って、例えば、“化合物”を含有する組成物は、単一の化合物或いは二つ又はそれより多い化合物を含むことができる。
【0062】
上記の説明が、例示的であり、そして制限的ではないことは理解されることである。多くの態様は、上記の説明を読むことによって当業者にとって明白となるものである。従って、本発明の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、しかし代わりに、特許請求の範囲を参照して、そのような特許請求の範囲が資格を与える均等物の全ての範囲と共に決定されるべきである。特許、特許出願及び刊行物を含む全ての文献及び参考文献の開示は、その全て及び全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
【表6】

【0066】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、結晶アトルバスタチンカルシウムについてのPXRD(1.54Å)回折図形を示す。
【図2】図2は、CaCOについてのPXRD(1.54Å)回折図形を示す。
【図3】図3は、熱溶融押出及び粉砕後の実施例1ないし実施例7のアトルバスタチンの固体分散物についてのPXRD(1.54Å)回折図形を示す。
【図4】図4は、実施例6の製剤についての、ブレンド後のしかし押出前(回折図形A)の;押出及び粉砕後のしかし貯蔵前(回折図形B)の;押出及び粉砕並びにその後の40℃及び75%RHへの60時間の暴露後(回折図形C)のPXRD(1.54Å)パターンを示す。
【図5】図5は、実施例8、10、12、14及び16のアトルバスタチンの固体分散物についての、熱溶融押出及び粉砕後のPXRD(1.54Å)回折図形を示す。
【図6】図6は、実施例9、11、13、15及び17のアトルバスタチンの固体分散物についての、熱溶融押出及び粉砕後のPXRD(1.54Å)回折図形を示す。
【図7】図7は、実施例8、10、12、14及び16のアトルバスタチンの固体分散物についての、熱溶融押出、粉砕並びにその後の40℃及び75%RHへの3ヶ月の暴露後のPXRD(1.54Å)回折図形を示す。
【図8】図8は、実施例9、11、13、15及び17のアトルバスタチンの固体分散物についての、熱溶融押出、粉砕並びにその後の40℃及び75%RHへの3ヶ月の暴露後のPXRD(1.54Å)回折図形を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質アトルバスタチンと一つ又はそれより多い任意成分である医薬的に受容可能な賦形剤との固体分散物を含んでなる固体医薬組成物であって:
非晶質アトルバスタチン或いはその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物;及び
溶融加工可能なポリマー;
を含んでなる固体医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の固体医薬組成物であって、該溶融加工可能なポリマーが、単独又は組合せの、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ビニルコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、多価アルコールの高分子エーテル、或いは多価アルコールの高分子エステルである固体医薬組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の固体医薬組成物であって、該溶融加工可能なポリマーが、メタクリル酸アミノアルキルコポリマーである固体医薬組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の固体医薬組成物であって、更に可塑剤を含んでなる固体医薬組成物。
【請求項5】
請求項4に記載の固体医薬組成物であって、該可塑剤が、クエン酸トリエチル或いは約600又はそれより小さい重量平均分子量を有するポリエチレングリコールである固体医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の固体医薬組成物であって、該非晶質アトルバスタチンが、重量基準で該固体分散物の約10%ないし約90%を構成する固体医薬組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の固体医薬組成物であって、該非晶質アトルバスタチンが、重量基準で該固体分散物の約20%ないし約60%を構成する固体医薬組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の固体医薬組成物であって、該非晶質アトルバスタチンが、重量基準で該固体分散物の約30%ないし約50%を構成する固体医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の固体医薬組成物であって、該医薬組成物が、最終剤形である固体医薬組成物。
【請求項10】
請求項9に記載の固体医薬組成物であって、該最終剤形が、錠剤、カプセル剤又は散剤である固体医薬組成物。
【請求項11】
非晶質アトルバスタチンと一つ又はそれより多い任意成分である医薬的に受容可能な賦形剤との固体分散物を含んでなる固体医薬組成物であって:
非晶質アトルバスタチン或いはその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物;
溶融加工可能なポリマー;及び
該非晶質アトルバスタチンの化学劣化を減少するための安定剤;
を含んでなる固体医薬組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の固体医薬組成物であって、該安定剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の医薬的に受容可能な塩である固体医薬組成物。
【請求項13】
固体医薬組成物を製造する方法であって:
結晶アトルバスタチン或いはその医薬的に受容可能な複合体、塩、溶媒和物又は水和物を、溶融加工可能なポリマーと、該溶融加工可能なポリマーを軟化又は溶融させて該結晶アトルバスタチンを該溶融可能なポリマー中に溶融又は溶解するのに十分に高い温度で混合し、これによって非晶質アトルバスタチンの分散物を形成し;そして
該分散物を冷却させること;
を含んでなる方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、混合を、該溶融可能なポリマーの存在下で結晶アトルバスタチンを溶融するのに十分に高い温度で行う方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、混合を、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、又は180℃の温度で又はそれより高い温度で行う方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法であって、該溶融加工可能なポリマーが、単独又は組合せの、ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸アミノアルキルコポリマー、多価アルコールの高分子エーテル、或いは多価アルコールの高分子エステルである方法。
【請求項17】
請求項13に記載の方法であって、更に、アトルバスタチンを可塑剤と混合することを含んでなる方法。
【請求項18】
請求項13に記載の方法であって、更に、アトルバスタチンを可塑剤と混合することを含んでなり、ここにおいて、該可塑剤が、クエン酸トリエチル或いは約600又はそれより小さいMwを有するポリエチレングリコールである方法。
【請求項19】
請求項13に記載の方法であって、更に、アトルバスタチンを安定剤と混合することを含んでなり、該安定剤が、アトルバスタチンの化学劣化を減少するために適合される方法。
【請求項20】
請求項13に記載の方法であって、更に、アトルバスタチンを安定剤と混合することを含んでなり、ここにおいて、該安定剤が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の医薬的に受容可能な塩である方法。
【請求項21】
請求項13に記載の方法であって、更に、結晶アトルバスタチンと溶融加工可能なポリマーとを二軸スクリュー混合機中で混合することを含んでなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−521878(P2008−521878A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543944(P2007−543944)
【出願日】平成17年11月23日(2005.11.23)
【国際出願番号】PCT/IB2005/003661
【国際公開番号】WO2006/059224
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(503181266)ワーナー−ランバート カンパニー リミテッド ライアビリティー カンパニー (167)
【Fターム(参考)】