説明

非晶質全芳香族ポリエステルアミド

本発明は、優れた延伸性を持ち、且つ異種ポリマーとの接着性に優れていることから、多層フィルム、多層ブロー成形品等に好適に用いられる非晶質全芳香族ポリエステルアミドを提供する。すなわち、(A)4−ヒドロキシ安息香酸、(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、(C)芳香族アミノフェノール、(D)芳香族ジカルボン酸を共重合させて得られる全芳香族ポリエステルアミドであって、
(1)(C)芳香族アミノフェノールの割合が7〜35モル%、
(2)原料モノマー中の屈曲性モノマーの割合が7〜35モル%、
(3)(A)4−ヒドロキシ安息香酸と(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸との比率((A)/(B))が0.15〜4.0、
(4)(D)芳香族ジカルボン酸中、イソフタル酸の割合が35モル%以上であり、
(5)20℃/minの昇温速度によるDSC測定で融点が観測されず、
(6)ガラス転移温度が100〜180℃
である非晶質全芳香族ポリエステルアミド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は非晶質全芳香族ポリエステルアミドに関する。 更に、多層フィルムもしくは多層シート、多層ブロー成形品等に用いられる。
【背景技術】
液晶性ポリマーは、優れた流動性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質をバランス良く有するため、高機能エンジニアリングプラスチックスとして好適に広く利用されているが、その大部分は専ら射出成形により得られるものであった。
一方、近年の著しい産業の発展に伴い、かかる液晶性ポリマーの用途も多岐にわたり一層高度化、特殊化する傾向にあり、液晶性ポリマーの耐気体透過性を活かし、ブロー成形及び溶融延伸加工等により効率良く経済的に成形加工してその優れた物性を保持した中空成形品、フィルムもしくはシート、繊維等を得ることが期待されてきている。例えば、自動車部品においても、燃料タンクや各種配管類には、ガソリン透過性が低いことが求められ、しかも高度の機械物性等も要求されるため、従来は専ら金属製のものが用いられてきた分野であるが、軽量化、防錆化、加工コスト低減等のためにプラスチック製部品に代替されつつあり、これらを上記の如き優れた特性を有する液晶性ポリマーのブロー成形により得ることが望まれている。
しかしながら、液晶性ポリマーは、流動性、機械物性に優れている反面、一般にブロー成形法を適用する上で最も重要とされる特性である溶融状態での粘度や張力が低いため、ブロー成形法により所望の形状の成形品を得ることは至難である。この改良法として、固有粘度の高い高重合度ポリエステル樹脂を用いる方法、分岐を有するポリエステル樹脂を用いる方法、更に各種フィラーを添加する方法等が考えられているが、いずれも改良効果は少なく、これらの加工法に対する材料として不充分である。
一方、ブロー成形性等を改善する目的で、アミノ化合物を共重合させた液晶性ポリエステルアミドが各種提案されている(特開昭57−177019号公報、特開昭61−239013号公報、特開昭63−191824号公報、特開平5−170902号公報、特開2001−200034号公報)。ところが、本発明者の追試によると、これら従来提案されている液晶性ポリエステルアミドは、ある程度優れた物性を示し、繊維、ブロー成形品等に利用可能ではあるが、延伸性が不充分な場合があり、また異種ポリマーとの接着性に劣るため、特に多層フィルムもしくは多層シート、多層ブロー成形品等には実質的に利用することができないという欠点があった。
【発明の開示】
本発明者らは前記問題点を解決し、良好な機械的物性を維持しつつ、優れた延伸性を持ち、且つ異種ポリマーとの接着性に優れている全芳香族ポリエステルアミドの提供を目的として鋭意研究した結果、ポリマー骨格中に原料モノマーとして特定の4種の選択組み合わせ、且つ原料モノマー中に特定量の屈曲性モノマーを導入することが上記目的達成のために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、
(A)4−ヒドロキシ安息香酸
(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸
(C)芳香族アミノフェノール
(D)芳香族ジカルボン酸
を共重合させて得られる全芳香族ポリエステルアミドであって、
(1)(C)芳香族アミノフェノールの割合が7〜35モル%、
(2)原料モノマー中の屈曲性モノマーの割合が7〜35モル%、
(3)(A)4−ヒドロキシ安息香酸と(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸との比率((A)/(B))が0.15〜4.0、
(4)(D)芳香族ジカルボン酸中、イソフタル酸の割合が35モル%以上であり、
(5)20℃/minの昇温速度によるDSC測定で融点が観測されず、
(6)ガラス転移温度が100〜180℃
であることを特徴とする軟化流動時に光学的異方性を示す非晶質全芳香族ポリエステルアミドである。
本発明は、ブロー成形品等に好適に用いられる上記非晶質全芳香族ポリエステルアミドに関する。更に詳しくは、優れた延伸性を持ち、且つ異種ポリマーとの接着性に優れていることから、多層フィルムもしくは多層シート、多層ブロー成形品等に特に好適に用いられる非晶質全芳香族ポリエステルアミドに関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
以下に本発明を構成する全芳香族ポリエステルアミドを形成するために必要な原料化合物について順を追って詳しく説明する。
本発明に用いる原料モノマーの第1成分は(A)4−ヒドロキシ安息香酸であり、その誘導体も使用できる。また、第2成分は(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸であり、その誘導体も使用できる。
本発明に用いる原料モノマーの第3成分は(C)芳香族アミノフェノールであり、p−アミノフェノール、p−N−メチルアミノフェノール、3−メチル−4−アミノフェノール、2−クロロ−4−アミノフェノールおよびこれらの誘導体が例示される。
本発明に用いる原料モノマーの第4成分は(D)芳香族ジカルボン酸であり、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、クロロテレフタル酸およびこれらの誘導体が例示される。
上記(A)〜(D)成分を共重合させて得られる本発明の全芳香族ポリエステルアミドにおいて、各成分の共重合比率は、本発明所期の目的である、機械的物性を良好に保ちつつ、優れた延伸性、異種ポリマーとの優れた接着性を発現するために重要である。
即ち、本発明の全芳香族ポリエステルアミドにおいて、(C)芳香族アミノフェノールの比率は7〜35モル%、好ましくは10〜25モル%であることが必要である。7モル%未満では目的とする接着性が発現できず、35モル%より多くなると軟化流動時に光学的異方性を示す非晶質全芳香族ポリエステルアミドが得られず、好ましくない。
また、上記原料モノマー中において、屈曲性モノマーの割合が7〜35モル%であることが必要である。ここで、屈曲性モノマーとは、フェニレン骨格を有する化合物において、エステル又はアミド形成性官能基(カルボキシル基、フェノール基、アミノ基)の位置がメタ又はオルトである化合物のように、分子鎖を屈曲させるような化合物であって、具体的には1,3−フェニレン骨格、2,3−フェニレン骨格及び2,3−ナフタレン骨格を有するものが挙げられる。
より具体的な屈曲性モノマーとしては、イソフタル酸、フタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸およびこれらの誘導体が例示され、3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,3’−ビフェニルジカルボン酸およびこれらの誘導体も屈曲性モノマーとして例示される。特に好ましいものはイソフタル酸である。
このことから、本発明の(D)芳香族ジカルボン酸として、全芳香族ジカルボン酸の35モル%以上をイソフタル酸とすることが好ましく、特に全部をイソフタル酸とすることが好ましい。
尚、屈曲性モノマーとして、(A)、(B)、(C)、(D)以外のモノマーとして、m−ヒドロキシ安息香酸、サリチル酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸を少量(10モル%以下)導入することもできる。
また、(A)4−ヒドロキシ安息香酸と(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸との合計は、一般的に30〜90モル%(好ましくは50〜80モル%)の範囲で用いられるが、(A)と(B)との比率((A)/(B))が0.15〜4.0、好ましくは0.25〜3であることが必要である。この比率を外れた場合は、結晶質のポリマーとなり、延伸性および接着性が悪くなり好ましくない。
本発明の全芳香族ポリエステルアミドにおいて、(A)〜(D)の最も望ましい共重合比率は、
(A)4−ヒドロキシ安息香酸;20〜60モル%
(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸;20〜60モル%
(C)芳香族アミノフェノール;10〜25モル%
(D)芳香族ジカルボン酸;10〜25モル%
である。
また、本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、20℃/minの昇温速度によるDSC測定で融点が観測されず、ガラス転移温度付近で軟化し、実質的に非晶質であることが必要である。非晶質LCPは溶融状態から冷却していく過程で結晶化せずにガラス転移温度まで溶融状態を保ち流動可能なことにより優れた延伸性を示すからであり、結晶質ポリマーでは延伸性が悪化し好ましくない。また、結晶質ポリマーでは、延伸性と同時に接着性も低下するため、本発明の全芳香族ポリエステルアミドが実質的に非晶質であることは、ブロー成形やフィルム製膜で良好な加工性を得るために重要な性質である。
更に、本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、ガラス転移温度が100〜180℃の範囲にあることが必要である。ガラス転移温度が100℃より低いと耐熱性が悪くなり好ましくなく、180℃より高いと延伸性、接着性が悪くなり好ましくない。
本発明の全芳香族ポリエステルアミドは、直接重合法やエステル交換法を用いて重合され、重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法等が用いられる。
本発明では、重合に際し、重合モノマーに対するアシル化剤や、酸塩化物誘導体として末端を活性化したモノマーを使用できる。アシル化剤としては、無水酢酸等の酸無水物等が挙げられ、使用量は、重合制御の観点からアミノ基及び水酸基の合計当量の1.01〜1.10倍が好ましく、さらに好ましくは1.02〜1.05倍である。
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものはジアルキル錫酸化物、ジアリール錫酸化物、二酸化チタン、アルコキシチタンけい酸塩類、チタンアルコラート類、カルボン酸のアルカリ及びアルカリ土類金属塩類、BFの如きルイス酸塩等が挙げられる。触媒の使用量は一般にはモノマーの全重量に基いて約0.001乃至1重量%、特に約0.003乃至0.2重量%が好ましい。
また、溶液重合又はスラリー重合を行う場合、溶媒としては流動パラフィン、高耐熱性合成油、不活性鉱物油等が用いられる。
反応条件としては、反応温度200〜380℃、最終到達圧力0.1〜760Torr(即ち、13〜101,080Pa)である。特に溶融反応では、反応温度260〜380℃、好ましくは300〜360℃、最終到達圧力1〜100Torr(即ち、133〜13,300Pa)、好ましくは1〜50Torr(即ち、133〜6,670Pa)である。
溶融重合は、反応系内が所定温度に達した後、減圧を開始して所定の減圧度にして行う。撹拌機のトルクが所定値に達した後、不活性ガスを導入し、減圧状態から常圧を経て、所定の加圧状態にして反応系からポリマーを排出する。
溶融時に光学的異方性を示す液晶性ポリマーであることは、本発明において熱安定性と易加工性を併せ持つ上で不可欠な要素である。上記構成単位からなる全芳香族ポリエステルアミドは、構成成分およびポリマー中のシーケンス分布によっては、異方性溶融相を形成しないものも存在するが、本発明に係わるポリマーは溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルアミドに限られる。
溶融異方性の性質は直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には溶融異方性の確認はオリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。上記ポリマーは光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
本発明の加工性の指標としては液晶性及びガラス転移温度が考えられる。液晶性を示すか否かは溶融時の流動性に深く係わり、本願のポリエステルアミドは溶融状態で液晶性を示すことが不可欠である。
一般的に、ネマチックな液晶性ポリマーは融点またはそれ以上の温度で液晶性を示し、各種成形加工が行われ、次いで結晶化温度以下にまで冷却されることで、成形品の形状が固化される。ところが、本発明の非晶性ポリエステルアミドは結晶化しないために、樹脂温がガラス転移温度付近に達するまで流動性が損なわれず、フィルム、シート、ブロー成形等の押出加工に好適な材料と言える。そこで、成形品の耐熱性や、樹脂ペレットの乾燥工程の効率化等の観点から、ガラス転移温度は100℃以上であることが好ましい。また、ガラス転移温度が180℃より高くなると、多層ブロー等でのポリエステルアミドと他樹脂との接着性が悪くなり好ましくない。
更に、ガラス転移温度より80〜120℃高い温度で、剪断速度1000sec−1における溶融粘度が1×10Pa・s以下であることが好ましい。更に好ましくは1×10Pa・s以下である。これらの溶融粘度は液晶性を具備することで概ね実現される。
次に本発明のポリエステルアミドは使用目的に応じて各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を配合することができる。
繊維状充填剤としてはガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、ウォラストナイトの如き珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などの無機質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維である。尚、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂などの高融点有機質繊維状物質も使用することが出来る。
一方、粉粒状充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
又、板状充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
有機充填剤の例を示せば芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊維等の耐熱性高強度合成繊維等である。
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上併用することが出来る。繊維状充填剤と粒状又は板状充填剤との併用は特に機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。無機充填剤の配合量は、全芳香族ポリエステルアミド100重量部に対し、120重量部以下、好ましくは20〜80重量部である。
これらの充填剤の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することができる。
また、本発明のポリエステルアミドには、本発明の企図する目的を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂を更に補助的に添加してもよい。
この場合に使用する熱可塑性樹脂の例を示すと、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ジカルボン酸とジオール等からなる芳香族ポリエステル、ポリアセタール(ホモ又はコポリマー)、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ABS、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、フッ素樹脂等を挙げることができる。またこれらの熱可塑性樹脂は2種以上混合して使用することができる。
本発明で得られる特定の構成単位よりなる溶融時に異方性を示す全芳香族ポリエステルアミド及びその組成物は、溶融状態での粘度が高いため、ブロー成形及び溶融延伸加工が容易であり、効率良く経済的に加工して液晶性ポリエステルアミドの優れた物性を保持したブロー成形品(特に燃料タンク等の自動車関連部品)、フィルムもしくはシートおよび繊維とすることが可能である。
また、優れた延伸性を持ち、且つ異種ポリマーとの接着性に優れているという特徴から、他のポリマーとから形成される多層フィルムもしくは多層シート、他のポリマーとから形成される多層ブロー成形品に特に好適に用いられる。ここで使用される他のポリマーは特に制限されないが、ポリオレフィン、特に高密度ポリエチレンが好適である。
【実施例】
以下に実施例をもって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、実施例中の物性測定の方法は以下の通りである。
[融点、ガラス転移温度]
示差走査熱量分析装置(パーキンエルマー社製DSC7)にて、20℃/分の昇温条件で測定した。
[溶融粘度]
温度250℃、剪断速度1000sec−1の条件で、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて東洋精機製キャピログラフで測定した。
[溶融伸び]
内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いて、温度250℃、剪断速度36sec−1の条件でオリフィスから排出したポリマーが破断した時の引き取り速度(m/min)を測定した。この値が延伸性の指標となる。
[接着強度]
三井化学製アドマーNF518の100μm厚シートを接着相手材として、220℃の温度で熱板溶着を行った後に、15mm幅の引き剥がし試験片を切り出し、最大引き剥がし強度を測定した。
【実施例1】
攪拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、金属触媒を生成樹脂に対し、K基準で30ppm、アシル化剤をアミノ基と水酸基との合計当量の1.02倍仕込み、窒素置換を開始した。
(A)4−ヒドロキシ安息香酸59.22g(20モル%)
(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸161.38g(40モル%)
(C)アセトキシ−4−アミノフェノール71.23g(20モル%)
(D)イソフタル酸64.81g(20モル%)
酢酸カリウム触媒22.5mg
無水酢酸178.6g
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に330℃まで3.3時間かけて昇温し、そこから20分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧にして、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら溶融重合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。
次いで、ホットプレスを用いて、230℃の温度で100μm厚のシートを作製し、接着試験の評価試料とした。
この結果を表1に示す。
比較例1
原料モノマーの種類、仕込み量を以下の通りとした以外は、実施例1と同様にして重合を行った。この結果を表2に示す。
(A)4−ヒドロキシ安息香酸82.69g(30モル%)
(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸112.65g(30モル%)
(D)イソフタル酸66.3g(20モル%)
4,4’−ビフェノール74.31g(20モル%)
酢酸カリウム触媒22.5mg
無水酢酸178.6g
実施例2〜10、比較例2〜6
原料モノマーの種類、仕込み量を表1〜2に示す通りとした以外は、実施例1と同様にして重合を行った。これらの結果を表1〜2に示す。尚、比較例3、4については、融点が高く、上述の実施条件では溶融粘度等を測定できなかった。比較例5については、樹脂を重合できなかった。


HBA;4−ヒドロキシ安息香酸
HNA;2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸
TA;テレフタル酸
IA;イソフタル酸
BP;4,4’−ビフェノール
APAP;アセトキシ−4−アミノフェノール
*1)溶融せず、測定不可。
*2)270℃にてフィルムを作製し、溶着温度を270℃に変更した以外は、実施例1と同様にして接着強度を測定しようとしたが、アドマーNF518が発泡し、測定できなかった。
実施例11 インフレーションフィルムの製造
実施例8のポリマーを、二軸押出機(池貝鉄鋼(株)製PCM30)を使用し、シリンダー温度230℃、吐出量8kg/hr、回転数150rpmにて溶融混練を行い、ペレット化した。
次いで、東洋精機製ラボプラストミルにダイ−コアのクリアランス0.7mmで25mmφのダイを取り付け、樹脂温度230℃、230℃のダイ温度でインフレーションフィルムを作製した。この際、樹脂吐出量、引き取り速度、及びブロワー風量を調節しながら、安定的に製膜できる範囲内で最大限に薄肉化してフィルム厚みとダイ−コアクリアランスとの比を求め、延伸性の指標とした。

比較例7
比較例3のポリマーを、シリンダー温度280℃とした以外は実施例8と同様に溶融混練を行い、ペレット化し、やはり樹脂温度280℃、280℃のダイ温度でインフレーションフィルムの作製を試みたが、樹脂吐出量、引き取り速度、及びブロワー風量を調節しても著しく偏肉することから薄肉部が破袋して安定的に製膜できる条件は見出せなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)4−ヒドロキシ安息香酸
(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸
(C)芳香族アミノフェノール
(D)芳香族ジカルボン酸
を共重合させて得られる全芳香族ポリエステルアミドであって、
(1)(C)芳香族アミノフェノールの割合が7〜35モル%、
(2)原料モノマー中の屈曲性モノマーの割合が7〜35モル%、
(3)(A)4−ヒドロキシ安息香酸と(B)2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸との比率((A)/(B))が0.15〜4.0、
(4)(D)芳香族ジカルボン酸中、イソフタル酸の割合が35モル%以上であり、
(5)20℃/minの昇温速度によるDSC測定で融点が観測されず、
(6)ガラス転移温度が100〜180℃
であることを特徴とする軟化流動時に光学的異方性を示す非晶質全芳香族ポリエステルアミド。
【請求項2】
屈曲性モノマーが、1,3−フェニレン骨格、2,3−フェニレン骨格及び2,3−ナフタレン骨格を有するものから選ばれる1種又は2種以上のモノマーである請求項1記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミド。
【請求項3】
屈曲性モノマーが、イソフタル酸、フタル酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸およびこれらの誘導体から選ばれる1種又は2種以上のモノマーである請求項1記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミド。
【請求項4】
屈曲性モノマーが、イソフタル酸である請求項1記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミド。
【請求項5】
(C)芳香族アミノフェノールが、p−アミノフェノールである請求項1〜4の何れか1項記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミド。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミドから形成される繊維。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミドから形成されるフィルムもしくはシート。
【請求項8】
請求項1〜5の何れか1項記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミドと他のポリマーとから形成される多層フィルムもしくは多層シート。
【請求項9】
他のポリマーがポリオレフィンである請求項8記載の多層フィルムもしくは多層シート。
【請求項10】
請求項1〜5の何れか1項記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミドから形成されるブロー成形品。
【請求項11】
請求項1〜5の何れか1項記載の非晶質全芳香族ポリエステルアミドと他のポリマーとから形成される多層ブロー成形品。
【請求項12】
他のポリマーがポリオレフィンである請求項11記載の多層ブロー成形品。
【請求項13】
ポリオレフィンが高密度ポリエチレンである請求項12記載の多層ブロー成形品。
【請求項14】
ブロー成形品が燃料タンクである請求項11〜13の何れか1項記載のブロー成形品。

【国際公開番号】WO2004/035659
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【発行日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544998(P2004−544998)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013435
【国際出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(390006323)ポリプラスチックス株式会社 (302)
【Fターム(参考)】