説明

非水溶性香料を含む水中油型エマルションの製造方法

【課題】非水溶性香料を、高剪断を付加せずに簡便に水中油型乳化分散液に乳化することができる非水溶性香料を含む乳化分散物の簡便な製造方法を提供すること。
【解決手段】(i)(a)非水溶性香料と、(b)両親媒性溶媒と、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤とを混合する工程、及び
(ii)工程(i)で得られた混合物を、別に調製した水中油型乳化分散液に混合させることを特徴とする非水溶性香料を含む乳化分散物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用柔軟仕上剤等として用いることができる、非水溶性香料を容易に乳化分散することができる非水溶性香料を含む水中油型エマルションの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアリンス、繊維処理剤や衣料用柔軟仕上げ剤柔軟剤等の水中油型エマルションに非水溶性の香料等を分散させる方法としては、水相中に香料を含有させて液晶形成工程を経ることなく水中油型エマルションを製造する方法(特許文献1)、水中油型エマルションを形成し、冷却後に香料を添加する方法(特許文献2)、脂質小球の水性分散液に香料及び油分を分散する方法(特許文献3)などが提案されている。
しかしながら、いずれの場合も香料等の非水溶性物質が連続相である水相中に裸に近い状態で分散されているため、非水溶性物質の分散安定性が悪いという欠点があった。製造性においても、乳化時に高剪断を要するため、特殊な装置を用いたり、高いエネルギーを必要とする。
油相に添加し液晶形成工程を経て水中油型エマルションを製造する方法(特許文献4)が考案されているが、油相に添加し液晶形成工程を経て水中油型エマルションを製造する方法では、香料成分が油相の融点以上に加熱されるため、沸点の低い香料成分は揮発したり香質が劣化する。また、香料を乳化する工程で粘度の高い液晶を形成させるため、操作が煩雑であり、香料を乳化する特殊設備が必要となる。更に香料を製造工程の初めに添加するため、香料違いの製品の品種が変わる度に、混合装置から貯蔵設備及び輸送配管に至るまで切替洗浄が必要となり、洗浄や殺菌に多量の水や労力を費やし、且つ、洗浄後の排水処理の負荷も増大することとなる。加えて、香料を含まない水中油型乳化分散液を調製後、簡便な攪拌装置しかない場所での香料違いの製品の作り分けが困難である。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−143830号公報
【特許文献2】特開昭57−38936号公報
【特許文献3】特公平2−10803号公報
【特許文献4】特開平6−269656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような状況下、香料成分を含まない水中油型乳化分散液に非水溶性香料を乳化する工程において、高剪断を付加せずに簡便に水中油型エマルションに乳化することができる非水溶性香料を含む水中油型エマルションの簡便な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(a)非水溶性香料と、(b)両親媒性溶媒と、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤とを混合溶解させることで、高剪断力下では勿論、低剪断力下であっても非水溶性香料を水中油型乳化分散液に容易に乳化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(i)(a)非水溶性香料と、(b)両親媒性溶媒と、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤とを混合する工程、及び
(ii)工程(i)で得られた混合物を、別に調製した水中油型エマルションに混合させることを特徴とする非水溶性香料を含む水中油型エマルションの製造方法を提供する。
本発明はまた、上記方法により得られる衣料用柔軟仕上げ剤を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の非水溶性香料の調製方法を用いれば非水溶性香料を水系に安定に配合可能であり、界面活性剤の選択によっては高温にする必要も無く、香気の劣化も無く、安定な非水溶性香料を乳化させた衣料用柔軟仕上げ剤を簡便な方法で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
<(a)非水溶性香料>
本発明の非水溶性香料は、様々な文献、例えば「Perfume and Flavor Chemicals 」,Vol.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)および「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin 」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)および「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)および「Perfumery Material Performance V.3.3」,Boelens Aroma Chemical Information Service(1996)および「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Lajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)等に開示されている香料成分をひとつまたは複数を混合し香料とし、常温(25℃)における水への溶解度が10%以下のものをいう。溶解度は、水と香料とを同じ質量量り取り、分液ロートにて混合し、2層に分離するまで静置後、香料相と水相を取り分け、香料相の質量を測定して、もとの香料成分質量から減少した量が水に溶解したと見なして下記式より算出する。
溶解度=香料相の質量減少量÷香料と混合する前の水の質量×100(%)
特に衣料用柔軟剤と用いる場合その嗜好性にもよるが、シトラール等を含むシトラス系やゲラニオール等を含むフローラル系やヒノキチオールやヒバ油等を含むウッディ系や酢酸アミルや酪酸アミル等を含むフルーツ系が好ましい。
(a)非水溶性香料と、(b)両親媒性溶媒と、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤との混合物中の(a)非水溶性香料の配合割合は、好ましくは10質量%〜80質量%、より好ましくは20質量%〜70質量%、更に好ましくは20質量%〜60質量%である。(a)非水溶性香料の配合割合が多すぎると、良好な乳化状態が得られず、少なすぎると生産効率が悪く経済的でない。
【0008】
<(b)両親媒性溶媒>
両親媒性溶媒としては、(a)非水溶性香料と水と任意の割合で可溶であるものならば特に制限はないが、特に衣料用柔軟仕上げ剤に使用することを考慮するならば、人体への有害性の強いものは避けるべきである。
具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコール類、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコール、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。中でも、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
(a)非水溶性香料と、(b)両親媒性溶媒と、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤との混合物中の(b)両親媒性溶媒の配合割合は、好ましくは3質量%〜80質量%、より好ましくは3質量%〜60質量%、更に好ましくは3質量%〜40質量%である。前記(b)両親媒性溶媒の配合比率が大きすぎると経済性が悪くなる場合があり、少なすぎると非水溶性香料が乳化時に分離してしまう場合がある。
【0009】
<(c)ノニオン性界面活性剤>
ノニオン性界面活性剤としては、高級アルコール、高級アミン、油脂又は高級脂肪酸から誘導される非イオン界面活性剤等を用いる事が出来る。一般的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドなどが挙げられる。これらのノニオン性界面活性剤のHLBは、エマルション形成を目的とするため8〜20程度が適当である。このうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテルが好ましい。非水溶性香料に低温で揮発する成分が含まれる場合は融点の低いものを選択することが好ましい。
【0010】
このようなノニオン性界面活性剤の具体例としては、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、ジイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸POE(15)グリセリル、モノイソステアリン酸POE(20)ソルビタン、モノヤシ油脂肪酸POE(20)ソルビタン、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン、トリオレイン酸POE(20)ソルビタン、テトラオレイン酸POE(40)ソルビット、テトラオレイン酸POE(60)ソルビット、POE(40)ひまし油、POE(50)ひまし油、POE(40)硬化ひまし油、POE(60)硬化ひまし油、POE(100)硬化ひまし油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(25EO)、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(40EO)、POE(20)セチルエーテル、POE(30)セチルエーテル、POE(40)セチルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(20)イソデシルエーテル、POE(60)イソヘキサデシルエーテル、POE(40)イソトリデシルエーテル、POE(50)イソトリデシルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(25)オクチルドデシルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(7.5)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ノニルフェニルエーテル、POE(15)ステアリルアミン、POE(15)ステアリン酸アミドなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、POE(20)セチルエーテル、POE(40)イソトリデシルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテルが好ましい。
【0011】
<(c)カチオン性界面活性剤>
カチオン性界面活性剤としては、下記一般式(I)に示すような4級アンモニウム塩、下記一般式(II)に示すようなアミンの中和物、又は下記一般式(III)に示すようなイミダゾリンの中和物、イミダゾリニウム塩、アミノ酸系カチオン界面活性剤などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、式(I)で表される4級アンモニウム塩が好ましい。
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中R1〜R4のうち1つ以上3つ以下の基は、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていてもよい。このうち、炭素数14〜20のアルキル基、アルケニル基が好ましく、分断の有無および分断する官能基の構造は限定されない。R1〜R4の残りの基は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜10の数である)で表される基又はベンジル基であり、このうち、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好ましい。特に、メチル基又はヒドロキシエチル基が好ましい。Xはハロゲン原子又はモノアルキル硫酸基である。〕
【0014】
【化2】

【0015】
〔式中R5〜R7のうち1つ以上2つ以下の基は、炭素数10〜26のアルキル基又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断若しくは−OH等の官能基で置換されていてもよい。R5〜R7の残りの基は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基若しくは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜10の数である)で表される基である。〕
【0016】
【化3】

【0017】
〔式中R8は炭素数10〜26のアルキル又はアルケニル基であり、更に無置換であっても、−O−,−CONH−,−NHCO−,−COO−,−OCO−等の官能基で分断もしくは−OH等の官能基で置換されていてもよい。R9は、R8又は炭素数1〜3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基あるいは−(CH2−CH(Y)−O)n−H(式中、Yは水素原子又はCH3であり、nは2〜10の数である)で表される基である。〕
前記一般式(I)の4級アンモニウム塩の具体例としては、オクチルトリメチルアンモニウムクロリド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロリド、牛脂トリメチルアンモニウムクロリド、ヤシ油トリメチルアンモニウムクロリド、オクチルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、デシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド、ジステアロイルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリド、ジオレオイルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリド、N−ステアロイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N,N−ジステアロイルオキシエチル−N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−オレオイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェートなどが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。このうち、ジステアロイルオキシエチルジメチルアンモニウムクロリド、N−ステアロイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N−オレオイルオキシエチル−N−,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェートが好ましい。
【0018】
前記一般式(II)のアミン又は一般式(III)のイミダゾリンの中和は、通常の酸を用いることができる。前記酸としては、具体的には、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸、安息香酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、アクリル酸等の有機酸などが挙げられる。
前記アミンの中和物としては、例えば、ジステアリルメチルアミン塩酸塩、ジオレイルメチルアミン塩酸塩、ジステアリルメチルアミン硫酸塩、N−(3−オクタデカノイルアミノプロピル)−N−(2−オクタデカノイルオキシエチル−N−メチルアミン塩酸塩などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
前記イミダゾリン塩の具体例としては、1−オクタデカノイルアミノエチル−2−ヘプタデシルイミダゾリン塩酸塩、1−オクタデセノイルアミノエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリン塩酸塩などが挙げられる。前記イミダゾリニウム塩としては、メチル−1−牛脂アミドエチル−2−牛脂アルキルイミダゾリニウムメチルサルフェート、メチル−1−ヘキサデカノイルアミドエチル−2−ペンタデシルイミダゾリニウムクロライド、エチル−1−オクタデセノイルアミドエチル−2−ヘプタデセニルイミダゾリニウムエチルサルフェートなどが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのカチオン性界面活性剤のうちでも、非水溶性香料に低温で揮発する成分が含まれる場合は融点の低いものを選択することが好ましい。
【0019】
好ましくは、混合物の全質量を基準にして、(a)非水溶性香料の含有量が10質量%〜80質量%であり、(b)両親媒性溶媒の含有量が3質量%〜80質量%であり、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤の総含有量が10質量%〜85質量%である。
(a)非水溶性香料と、(b)両親媒性溶媒と(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤との油性組成物中の(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤の配合割合は、好ましくは10質量%〜85質量%、より好ましくは20質量%〜75質量%、更に好ましくは30質量%〜70質量%である。(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤の配合比率が大きすぎると経済性が悪くなる場合があり、少なすぎると非水溶性香料が乳化時に分離してしまう場合がある。
本発明の非水溶性香料を含有する乳化分散物を製造する際には、前記(a),(b),(c)成分を必要により加熱して溶解させ混合するが、この場合、混合及び溶解条件については、特に制限されず一般的な条件でよい。温度は、使用するノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤の融点によって異なるが、通常、常温〜50℃ぐらいである。また、揮発しやすい低級アルコールを使用する場合は、なるべく低い温度が好ましい。混合装置は、プロペラ羽根やパドル羽根を備えた一般的な攪拌槽でよく、スタティックミキサーのような連続混合機を用いてもよい。
【0020】
前記(a),(b),(c)成分を混合させて得られる混合物は、工程(ii)の前に、工程(i)で得られた混合物を水相と混合することができる。通常はこの乳化分散にホモミキサー、ウルトラミキサー、フィルミックス、マイルダー、クレアミックスなどの高剪断型の乳化装置が使われるが、本発明においては、低剪断でも乳化できる。ここで、低剪断とは、通常の攪拌操作で用いられるプロペラ羽根やパドル羽根による攪拌剪断下のレベルである。剪断力は、通常固定された壁と移動している壁との間に生ずるずり速度のことであるが、攪拌槽を考えると槽壁を固定壁、攪拌羽根の先端を移動壁と見なして以下の数式によって定義される。
<数式1>
ずり速度γ=2π×n×d/(D−d) 単位[1/s]
(但し、nは羽根回転数[rps]、dは羽根径[m]、Dは撹拌槽径[m](ステーターが有る場合はステーター内径[m])である。)
【0021】
高剪断のレベルを上記ずり速度を用いて具体的に示すと、装置の大きさによって羽根と壁とのクリアランスの長さが異なるが、ラボスケールで10000(1/s)〜160000(1/s)程度であり、10000(1/s)以下が中剪断のレベル、低剪断になると、ずり速度100(1/s)未満である。また、ずり速度の下限は、液全体を流動させる観点から考えると、5(1/s)程度である。
前記(a),(b),(c)成分を混合させて混合物を調製し、この混合物を別に調製した水中油型エマルションもしくは水相に混合させる際のずり速度は、5[1/s]以上100[1/s]未満が好ましく、より好ましくは10〜60[1/s]である。上記低剪断となるようなずり速度の装置としては、プロペラ羽根やパドル羽根を備えた装置が好ましい。プロペラ羽根やパドル羽根を設置した攪拌槽を用いる場合には、邪魔板を設置して混合力を高めても構わない。本発明においては、高剪断は勿論、低剪断においても問題なく乳化することができ、簡便かつ効率よく乳化作業が行えるものである。
工程(ii)の前に、工程(i)で得られた混合物と混合する水相成分としては、水が主であるが、本発明の目的及び効果を妨げない範囲で、抗菌剤、防腐剤、殺菌剤、pH調整剤、色素、酸化防止剤、無機塩、有機酸塩などを任意に配合できる。また、衣料用柔軟仕上げ剤に通常使われる成分を予め水相に配合しておいても構わない。
このようにして調製される水中油型エマルションは、外観は半透明から白濁状態であり非水溶性香料の浮上分離などは認められない。また、界面活性剤の種類と配合比率によっては、透明度のある水中油型エマルションが得られることがある。水中油型エマルションの粘度は、非水溶性香料の濃度や界面活性剤の種類によって影響を受けるが、室温で数mPa・s〜1000mPa・s程度のハンドリング性の良いレベルである。なお、本明細書において、粘度は25℃においてBL型回転粘度計(ローターNo.2、30rpm、10回転目)を用いて測定される値をいう。
【0022】
<水中油型乳化分散液>
次に、工程(ii)において、工程(i)で得られた混合物又は水中油型エマルションを混合させる第2の水中油型エマルションについて説明する。
前記水中油型乳化分散液は、衣料用柔軟基剤として通常用いられているジアルキルジメチルアンモニウム塩やジアルキルメチルアミン塩などのカチオン性界面活性剤を主成分として水に乳化させることにより製造することができる。その構成成分は、カチオン性界面活性剤、分散安定化剤、抗菌剤、色素、香料、水などである。
前記カチオン性界面活性剤としては、前記(c)成分の項で記載したものが挙げられる。なお、カチオン性界面活性剤の配合量は、水中油型乳化分散液の全量を基準として3〜45質量%程度である。
【0023】
前記分散安定化剤としては、前記(c)成分の項で記載したノニオン性界面活性剤や水溶性高分子などが挙げられる。なお、分散安定化剤の配合量は前記水中油型乳化分散液の全量を基準として0.1〜5質量%程度である。
その他、抗菌剤、防腐剤、殺菌剤、無機酸(又は塩)、有機酸(又は塩)、色素などを適量配合することができる。これらの成分のうち、油性の強い成分はカチオン性界面活性剤を主とする油相に溶解させ、水性の強い成分は水を主とする水相に溶解させることが好ましい。
水中油型乳化分散液の乳化分散工程は、特開昭63−143935号公報、特開平5−310660号公報などに記載されている方法を用いることができる。
具体的には、衣料用柔軟基剤として通常用いられているカチオン性界面活性剤を含む油相を高剪断下に水相に乳化分散させる。この時使用する高剪断乳化装置としては、ホモミキサー、マイルダー、クレアミックス、フィルミックス、ウルトラミキサー、ラインミキサー、ベコミックス、レキサミックスなどが挙げられる。乳化温度は、使用するカチオン性界面活性剤の相転移温度以上が好ましいが、高剪断のレベルが高く、羽根直近に油相添加ノズルが設けられている場合には、使用するカチオン性界面活性剤の相転移温度以下でも乳化が可能である。
【0024】
連続式で製造する場合は、水と水溶性の原料の混合物である水相を第1の流体、カチオン性界面活性剤を含む油相を第2の流体として、水相とともに高剪断乳化機に同時に導入し乳化分散させる方法が好ましい。
バッチ式で製造する場合は、高剪断乳化機ベッセルに水相を仕込み、油相を導入して乳化分散させることが効率上好ましいが、上記水相とカチオン性界面活性剤を含む油相との乳化順序は特に問われない。なお、乳化分散後に減粘化のための無機塩水溶液や安定化のための水溶性高分子水溶液や色素水を添加してもかまわない。
本発明の方法により得られる乳化分散物は衣料用柔軟仕上げ剤として使用することができる。(a)成分の配合量は、衣料用柔軟仕上げ剤全量を基準として非水溶性香料で0.1〜5質量%程度であることが好ましく、更に好ましくは0.2〜3質量%程度である。(a)非水溶性香料の配合量が少なすぎると、効果が十分に発揮されない場合があり、経済的に見合わなかったり、香気が強すぎたりする。
また乳化に用いる水の量は(a)非水溶性香料と、(b)両親媒性溶媒と、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤とを混合溶解し、この混合溶解物中の(a)非水溶性香料と水の比率は特に問われない。
このようにして得られる本発明の衣料用柔軟仕上げ剤の性状は、液粘度が数mPa・s〜数100mPa・sである。非水溶性香料エマルションと柔軟基剤の乳化粒子とは、製造方法によって存在形態に違いがあるが、共に分散状態にあるか、又は、両者が吸着して一体となっているかのどちらかであると考えられる。
本発明の衣料用柔軟仕上げ剤は、香料を安定に保ち、衣類に香気を与えることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら制限されるものではない。
<(a)非水溶性香料>
(a)成分としてフローラル系としてローズ油(水への溶解度0.1%)、シトラス系としてオレンジ油(水への溶解度0.1%)、ウッディ系としてヒバ油(水への溶解度0.1%)を用意した。
<(b)(a)を可溶な両親媒性溶媒>
(b)成分の溶媒として表1の「b-1」〜「b-6」を用意した。
【0026】
【表1】

【0027】
<(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤>
(c)成分の界面活性剤として表2の「c-1」〜「c-7」を用意した。
【0028】
【表2】

【0029】
[実施例1〜6、比較例1、2]
表3に示した(a)非水溶性香料、(b)両親媒性溶媒、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤を、200mLのビーカーに合計100gとなるように所定量仕込み、25mmのプロペラ羽根(羽根最大幅15mm、3枚)を用い、600rpmで均一となるまで攪拌した。この時の外観は透明から微濁であった。
これとは別に水中油型乳化分散液を調製した。以下2種類の方法を用いた。
(I)表3記載の油相成分を記載比率で各成分の融点以上に加熱し均一になるように攪拌し油相とする。精製水240gと抗菌剤微量(0.03g)、色素微量(3mg)を40℃に加熱し水相とした。水相をプライミクス株式会社製ロボミクスホモミキサー(ローター径30mm、ステーターとのクリアランス0.5mm)、500MLベッセルに仕込み、ホモミキサー10000rpm回転下にて油相43gをノズル添加し均一に乳化後、15%塩化カルシウム水溶液を10g添加した。その後25℃まで冷却をして水中油型乳化分散液を得た。(II)表3記載の油相成分を記載比率で各成分の融点以上に加熱し均一になるように攪拌し油相とする。別に精製水240gと抗菌剤微量(0.03g)、色素微量(3mg)を40℃に加熱し水相とした。油相43gを500mLビーカーに仕込み、直径45mm幅10mm厚さ1.5mm45度左傾斜パドル4枚で800rpmで攪拌下水相を徐々に添加し、BH型粘度計No.7ローター2rpm10回転目で100Pa・s以上の高粘度の液晶を形成させ、その後残りを添加した。その後25℃まで冷却をして15%塩化カルシウム水溶液を10g添加混合し水中油型乳化分散液を得た。
この水中油型乳化分散液200gを300mLビーカーに取りマグネチックスターラーにて長さ25mmφ8mmのスターラーバー所定のずり速度となる回転数で攪拌し、前記した成分(a)(b)(c)の混合物5g添加し均一になるまで混合、衣料用柔軟仕上げ剤を得た。
【0030】
[実施例7〜9、比較例3、4]
表3に示した(a)非水溶性香料、(b)両親媒性溶媒、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤を、200mLのビーカーに100g仕込み、25mmのプロペラ羽根を用い均一となるまで攪拌した。この時の外観は透明から微濁であった。
これとは別に水中油型乳化分散液を前記方法にて調製した。
この水中油型乳化分散液200gを内径74mmの300MLビーカーに取りマグネチックスターラーにて長さ25mmφ8mmのスターラーバー600rpm攪拌し、別に100mLビーカーに64gの精製水をマグネチックスターラー長さ25mmφ8mmのスターラーバーで所定のずり速度となる回転数で攪拌下成分(a)(b)(c)の混合物5gを添加し均一にしたものを、前記水中油型乳化分散液に添加し衣料用柔軟仕上げ剤を得た。
【0031】
[比較例5]
表3に示した非水溶性香料を前記水中油型乳化分散液に添加し衣料用柔軟仕上げ剤を得た。
水中油型乳化分散液200gを内径74mmの300MLビーカーに取りマグネチックスターラーにて26mmのスターラーバーで所定のずり速度となる回転数で攪拌し、表3に示した非水溶性香料を1g添加し衣料用柔軟仕上げ剤を得た。
[比較例6]
表3に示した非水溶性香料を前記水中油型乳化分散液に添加し衣料用柔軟仕上げ剤を得た。
柔軟基材分散物240gと表3に示した非水溶性香料1.2gを前記ホモミキサー(ローター径30mm、ステーターとのクリアランス0.5mm)、500MLベッセルに仕込み、ホモミキサー10000rpm回転下にて均一に混合し衣料用柔軟仕上げ剤を得た。
<評価方法>
外観の判定は目視で行った。安定性は室温で一日後の状態で判断した。
◎:良好な乳化状態、○:香料浮きはほとんど見られない、×:分離、明確な香料浮き
【0032】
【表3】

【0033】
<実施例>
何れも良好な乳化状態の衣料用柔軟剤が得られ、衣料の柔軟剤として用いたときの効果も良好であった。
<比較例>
これに対して、(a)成分と(b)成分のみを混合し乳化した場合(比較例1)、(c)成分が少ない場合(比較例2)は柔軟基剤分散液と混合すると乳化粒子が粗大となり分離してしまった。予め水に分散し柔軟基剤分散液と混合する場合も(c)成分がない場合(比較例3)は香料の分離が見られ、(b)成分が無い場合(比較例4)は粗大粒子となって分離した。非水溶性香料を直接混合した場合(比較例5)、混合時のずり速度を上げた場合(比較例6)も香料浮きが見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)(a)非水溶性香料と、(b)両親媒性溶媒と、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤とを混合する工程、及び
(ii)工程(i)で得られた混合物を、別に調製した水中油型エマルションに混合させることを特徴とする非水溶性香料を含む水中油型エマルションの製造方法。
【請求項2】
工程(ii)において、工程(i)で得られた混合物を、別に調製した水中油型エマルションに5[1/s]以上100[1/s]未満のずり速度で混合させることを特徴とする請求項1の製造方法。
【請求項3】
工程(ii)の前に、工程(i)で得られた混合物を水相と混合する工程を含む請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
混合物の全質量を基準にして、(a)非水溶性香料の含有量が10質量%〜80質量%である、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項5】
混合物の全質量を基準にして、(a)非水溶性香料の含有量が10質量%〜80質量%であり、(b)両親媒性溶媒の含有量が3質量%〜80質量%であり、(c)ノニオン性界面活性剤及び/又はカチオン性界面活性剤の総含有量が10質量%〜85質量%である、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の製造方法により得られる衣料用柔軟仕上げ剤。

【公開番号】特開2007−270135(P2007−270135A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56641(P2007−56641)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】