説明

非水系二次電池用負極板およびこれを用いた非水系二次電池

【課題】粘度とエーテル化度の異なる2種類のカルボキシメチルセルロースで構成した増粘材を用いた負極板とすることで、負極合剤層と負極集電体の剥離強度を増大し、かつ凝集物が少なく負極合剤層に欠陥の少ない負極板を提供する。
【解決手段】少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる負極活物質と結着材および増粘剤を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体5の上に付着させて負極合剤層6を形成した非水系二次電池用負極板7であって、増粘剤を低粘度で高エーテル化度の第一のカルボキシメチルセルロースと、高粘度で低エーテル化度の第二のカルボキシメチルセルロースを組み合わせて構成したことを特徴とする非水系二次電池用負極板7を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池に関し、特に非水系二次電池用負極板およびこれを用いた非水系二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器や通信機器の小型化および軽量化が急速に進んでおり、これらの駆動用電源として用いられる二次電池に対しても小型化および軽量化が要求されている。このため、従来のアルカリ蓄電池に代わり、高エネルギー密度で高電圧を有する非水系二次電池、代表的なものとしてリチウムイオン二次電池が実用化されている。
【0003】
このリチウムイオン二次電池用正極板の正極活物質としては、Li−Mn系複合酸化物、Li−Co系複合酸化物、Li−Ni系複合酸化物などが提案され、それらの一部が実用化に至っている。また、これらの複合酸化物の特性を改良すべく、さらに種々の元素置換を試みたLi−Mn−Ni系複合酸化物、Li−Co−Al系複合酸化物、Li−Mg−Co系複合酸化物なども提案されている。
【0004】
これらの複合酸化物を正極活物質として用い、そのような正極活物質と結着材とを分散媒に分散または溶解させてスラリー状の正極合剤塗料を調整し、この正極合剤塗料を金属箔からなる正極集電体の上に塗布して正極合剤層を形成することにより非水系二次電池用正極板は作製される。
【0005】
一方、非水系二次電池用負極板は、充電時に正極合剤層から放出されるリチウムイオン等の陽イオンを吸蔵できるカーボン等の炭素材料を負極活物質として用い、そのような負極活物質と増粘剤および結着材とを適当な分散媒に分散または溶解させてスラリー状の負極合剤塗料を調整し、この負極合剤塗料を金属箔からなる負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成することにより作製される。
【0006】
この負極合剤層は、欠陥が存在したり製造工程にて負極合剤層が脱落したりすると安全性に大きな影響を及ぼす。具体的には負極合剤層の脱落部にLiが析出して多孔質絶縁体としてのセパレータを突き破ることで短絡し発熱などの不具合を生じる場合がある。
【0007】
そこで、負極合剤層に発生するピンホールやクレーターなどの不良を改良するために、1重量%の水溶液の粘度が異なる2種類の増粘剤を使用し、2段階に分けて分散させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、乾燥時に生ずる負極合剤層の面質の悪化を抑制するために、増粘剤として親水性が高いエーテル化度が1.15〜1.45のカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
また、負極活物質をイオン透過性のカルボキシメチルセルロース(CMC)とスチレンブタジエンラバー(SBR)で被覆することで初充電時のガス発生量を低減し初充電効率を向上することができ、さらにはサイクル試験におけるガス発生を抑制し容量維持率を改善することができる。このような目的でエーテル化度が0.5〜1.5で、かつ重量平均分子量が5000〜500000のカルボキシメチルセルロースを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−99441号公報
【特許文献2】特開2009−140637号公報
【特許文献3】特開2005−5113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1の従来技術では増粘剤の1重量%の水溶液の粘度を規定しているが、増粘剤として使用されるカルボキシメチルセルロースはエーテル化度によっても接着性が変化するため、1重量%の水溶液の粘度を規定するだけでは剥離強度が高くピンホールやクレーターなどの不良が少ない非水系二次電池用負極板を提供するには不十分である。
【0012】
また、上述した特許文献2の従来技術では増粘剤として使用するカルボキシメチルセルロースのエーテル化度を1.15〜1.45の範囲で規定しているが、このような高エーテル化度のカルボキシメチルセルロースは結着力が低いため、負極合剤層が負極集電体から脱落する不具合や脱落に伴う電池特性の劣化および安全性の低下を引き起こす場合がある。また、負極合剤層が負極集電体から脱落するのを防ぐために増粘剤を多く使用した場合には、負極合剤層に含まれる負極活物質の比率が低下し電池の容量が低下する。
【0013】
さらに上述した特許文献3の従来技術ではエーテル化度が0.5〜1.5で、かつ重量平均分子量が5000〜500000のカルボキシメチルセルロースを使用する方法が提案されているが、この範囲の規定では負極活物質に対するカルボキシメチルセルロースの被覆状態がばらつくためガス発生の抑制やサイクル特性の改善に対して十分な効果が得られない。
【0014】
本発明は上記従来の課題を鑑みてなされたもので、低粘度で高エーテル化度の第一のカルボキシメチルセルロースと、高粘度で低エーテル化度の第二のカルボキシメチルセルロースを組み合わせて構成した増粘剤を用いて非水系二次電池用負極板とすることで、少量の添加で適度の増粘作用および負極合剤層と負極集電体の間における剥離強度の増大作用を得ること、また合剤脱落などの不良の少ない非水系二次電池用負極板を提供すること、さらに負極活物質をカルボキシメチルセルロースで被覆することでガス発生を抑制しサイクル特性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記従来の目的を達成するために本発明の非水系二次電池用負極板は、少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる負極活物質と結着材および増粘剤を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成した非水系二次電池用負極板であって、増粘剤を低粘度で高エーテル化度の第一のカルボキシメチルセルロースと、高粘度で低エーテル化度の第二のカルボキシメチルセルロースを組み合わせて構成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の非水系二次電池用負極板によると、少量の添加で適度の増粘作用および負極合剤層と負極集電体の間における剥離強度の増大作用を得ることで負極合剤層の脱落による欠陥の発生を抑制し、安全性の高い非水系二次電池用負極板を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態の非水系二次電池における電極群の構成を示した断面模式図。
【図2】本発明の一実施の形態の非水系二次電池の一例としての円筒形リチウムイオン二次電池の一部切欠斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の発明においては、少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる負極活物質と結着材および増粘剤を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成した非水系二次電池用負極板であって、増粘剤を低粘度で高エーテル化度の第一のカルボキシメチルセルロースと、高粘度で低エーテル化度の第二のカルボキシメチルセルロースを組み合わせて構成することで、負極活物質への吸着性が良好な第一のカルボキシメチルセルロースで負極活物質を被覆して接着作用の大きい第二のカルボキシメチルセルロースを負極活物質へ吸着しやすくすることで、負極集電体と負極合剤層との剥離強度を高めることができる。
【0019】
本発明の第2の発明においては、第一のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度を1.0〜1.5とすることで、ミクロゲルを抑制しかつ少量で効率的に負極活物質を被覆することができる。
【0020】
本発明の第3の発明においては、第一のカルボキシメチルセルロースの1重量%の水溶液の粘度を10〜1,800mPa・sとすることで、分散媒への溶解が容易となり負極合剤塗料中での凝集物の発生を抑制することができる。
【0021】
本発明の第4の発明においては、第二のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度を0.5〜0.8としたことで、少量でも高い剥離強度を得ることができる。
【0022】
本発明の第5の発明においては、第二のカルボキシメチルセルロースの1重量%の水溶液の粘度を3,000〜10,000mPa・sとしたことで、少量でも高い増粘作用を得ることができる。
【0023】
本発明の第6の発明においては、負極合剤塗料として負極活物質を100重量部とした場合、前記第一のカルボキシメチルセルロースおよび第二のカルボキシメチルセルロースの総量を0.4重量部以上1.2重量部以下含有したことで、負極合剤層中の負極活物質の比率を高め電池の容量を高めることができる。
【0024】
本発明の第7の発明においては、負極合剤塗料として負極活物質を100重量部とした場合、第一のカルボキシメチルセルロースを0.1重量部以上0.4重量部以下含有し、第二のカルボキシメチルセルロースを0.3重量部以上0.8重量部以下含有したことで、第一のカルボキシメチルセルロースで活物質を適度に被覆して非水電解液の分解を抑制し、かつ第二のカルボキシメチルセルロースを負極活物質に効果的に吸着させることで、適度な増粘作用と剥離強度を得ることができる。
【0025】
本発明の第8の発明においては、前記負極合剤塗料として負極活物質の比表面積を3.0〜5.5m/gとしたことで、電池のサイクル特性と負極合剤層の剥離強度の向上を両立することができる。
【0026】
本発明の第9の発明においては、負極合剤塗料として結着材にスチレンブタジエンラバーを用いることで、非水系二次電池用負極板に適度の柔軟性を付与することができる。
【0027】
本発明の第10の発明においては、少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる正極活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に付着させて正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質と結着材および増粘剤を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成し負極板との間に多孔質絶縁体を介在させて渦巻状に捲回または積層して構成した電極群を非水電解液とともに電池ケースに封入した非水系二次電池であって、負極板に上記第1〜9の発明に記載の非水系二次電池用負極板を用いることで、負極合剤層の脱落などの不具合を抑制し、負極合剤層の脱落による電池特性の劣化を抑制し、電池の容量を高めることができる。
【0028】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
まず、図1は本発明の一実施の形態の非水系二次電池における電極群1の構成を示した断面模式図である。同図1に示したように正極集電体2の両面に正極合剤層3を形成した正極板4および負極集電体5の両面に負極合剤層6を形成した負極板7により構成されており、これら正極板4と負極板7の間に多孔質絶縁体としてのセパレータ8を介してA方向に渦巻状に巻回して電極群1を構成している。
【0030】
次に、電極群1の構成要素について、さらに詳しく説明する。
【0031】
本発明のリチウムイオン二次電池用の負極板7は、負極集電体5の一面又は両面に形成される少なくとも炭素材料からなる負極活物質と結着材を含む負極合剤層6から構成される。負極板7の負極集電体5としては、電解銅箔や圧延銅箔等の銅箔が好ましく用いられる。
【0032】
このときの負極集電体5の厚さは通常、5〜50μm程度とする。炭素材料は特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛、球状あるいは繊維状の人造黒鉛、コークス等の易黒鉛化性炭素、フェノール樹脂焼成体等の難黒鉛化性炭素等を用いることができる。負極活物質は、塗工層中に均一に分散させるために1〜100μmの範囲の粒径を有し、且つ平均粒径が3〜30μmの粉体であることが好ましい。なお、これらの1種を単独であるいは2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
また、人造黒鉛は、例えば、易黒鉛化性炭素を2800℃以上の高温で熱処理して製造することができる。この場合の原料となる易黒鉛化性炭素には、コークス、ピッチ類を400℃前後で加熱する過程で得られる光学異方性の小球体(メソカーボンマイクロビーズ:MCMB)等がある。
【0034】
ここで、上述した負極活物質の比表面積は3.0m/gより小さいと第一のカルボキシメチルセルロースによる被覆が過剰となり初期効率が低下し、5.5m/gより大きいと第一のカルボキシメチルセルロースによる被覆が不足してサイクル特性が悪化するために3.0〜5.5m/gとすることが好ましい。
【0035】
このときの結着材は水に溶解し得る結着材であれば特に限定されるものではない。ペースト状の負極合剤塗料を負極集電体5に塗布、乾燥した後における負極活物質どうしおよび負極合剤層6と負極集電体5との結着を良好なものとしかつ水に容易に溶解または分散し得るという観点から、スチレンブタジエンラバーを採用することが望ましい。
【0036】
また、増粘剤は負極活物質である粉末状の炭素粒子に吸着し、その炭素粒子を負極合剤塗料中に分散させる役割を果たすとともに、負極活物質どうしおよび負極合剤層6と負極集電体5とを結着させる役割を果たすものである。
【0037】
さらに、本発明の特徴である増粘剤は低粘度で高エーテル化度の第一のカルボキシメチルセルロースと高粘度で低エーテル化度の第二のカルボキシメチルセルロースを組み合わせて構成している。ここで、負極活物質への吸着性が良好な第一のカルボキシメチルセルロースで負極活物質を被覆して接着作用の大きい第二のカルボキシメチルセルロースで負極活物質へ吸着しやすくする役割を果たしている。
【0038】
また、この増粘剤は添加量も電池特性に影響を及ぼす。増粘剤が過剰な場合、それが炭素粒子の表面に吸着して過剰な被膜を形成する。その結果、リチウムイオンの移動が妨げられ、さらには炭素材料の電気絶縁性が大きくなるために、負極板7を構成した場合に電気抵抗が大きくなってしまうからである。 具体的には、負極合剤塗料中の増粘剤の含有割合を負極活物質を100重量部とした場合0.4重量部以上で1.2重量部以下とすることが望ましい。
【0039】
一方、0.4重量部未満であると負極合剤層6と負極集電体5との密着性が悪く、極板製造工程で負極合剤層6が負極集電体5から脱落する不具合や脱落に伴う電池特性の劣化および安全性の低下を引き起こす場合がある。
【0040】
ここで、増粘剤は、例えば、ポリエチレンオキサイド(POE)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン(PVP)等の合成高分子や、セルロースエーテル系の樹脂を用いることができる。これらの中でもセルロースエーテル系樹脂は、人体に毒性を示すことはなく生体系に対しても無害であるという利点があることからこれを用いるのが望ましい。
【0041】
さらには、分散媒としての水に負極活物質を分散させるために親油性物質である黒鉛と分散媒である水をつなぐ材料であるため、親水性と疎水性(親油性)の両方の性質をもつ界面活性剤としての機能を有する必要があることからもセルロースエーテル系樹脂が望ましい。セルロースエーテル系樹脂は、エーテル化度、平均分子量、変性等が異なる種々のものがある。
【0042】
セルロースエーテル系樹脂は、セルロースが有する水酸基の一部をエーテル化したものである。セルロース単位には3つの水酸基が存在する。例えば、セルロースエーテルのすべてのセルロース単位において、水酸基の1つがエーテル化されている場合は、エーテル化度が1.0となる。つまり、エーテル化度は、セルロースに含まれる水酸基がどれだけエーテル化されているかを示す指標である。また、セルロースエーテル系樹脂は、付加する官能基によって種々のものを用いることができ、例えば、セルロースエーテルのナトリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。
【0043】
これらの塩のいずれか1種以上を用いればよい。セルロースエーテルとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、トリエチルセルロース、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミノエチルセルロース、およびオキシエチルセルロース等のグループから選ばれる1種または2種以上を用いることができる。
【0044】
また、カルボキシメチルセルロースは分子量の異なる種類も市販されており、分子量が小さいと水に溶解したときの粘度が低くなり、結果として塗料の粘度が低くなり沈降する可能性が高くなる。しかしながら、分子量が小さいと負極活物質への吸着が容易となり分散もしやすくなる。一方、分子量が大きくなると水に溶解したときの粘度が高いため、沈降しにくく塗料は安定する。しかしながら、分子量が高いため負極活物質へ吸着しにくくなり、分散が悪くなるといった欠点を有する。このような粘度、分散の観点からも、分子量の異なるカルボキシメチルセルロースを使用することが望ましい。
【0045】
つまり、負極活物質への吸着が容易で、かつ分散媒である水への分散性が良好な分子量が小さいカルボキシメチルセルロースを第一の増粘剤として用い、増粘作用が得やすい分子量の大きいカルボキシメチルセルロースを第二の増粘剤として用いることで、凝集物が少なく沈降しにくい負極合剤塗料を得ることができる。
【0046】
ここで、第一のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が1.0より小さいと負極活物質への吸着性が悪くなり、1.5より大きいと負極活物質の被覆状態にむらが生じ均一な被覆が困難となるため、1.0以上1.5以下であることが好ましい。
【0047】
また、第一のカルボキシメチルセルロースの1重量%の水溶液の粘度が10mPa・sより小さいと負極合剤塗料の粘度が不足し負極活物質を十分に被覆することが困難となり、1,800mPa・sより大きいと負極活物質への吸着性が悪くなるため、10mPa・s以上1,800mPa・s以下であることが好ましい。
【0048】
また、第二のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が0.5より小さいとカルボキシメチルセルロースに存在するミクロゲルが多くなり負極合剤層6に発生するスジなどの欠陥が増加し、エーテル化度が0.8より大きいと結着力が低くなり負極合剤層6と負極集電体5との密着性が低下するため、0.5以上0.8以下であることが好ましい。
【0049】
また、第二のカルボキシメチルセルロースの1重量%の水溶液の粘度が3,000mPa・sより小さいと負極合剤塗料の粘度が不足し均一に分散した負極合剤塗料を得ることが困難となり、10,000mPa・sより大きいと負極合剤塗料の粘度が高くなり負極合剤塗料を均一に塗布することが困難となるため、3,000mPa・s以上10,000mPa・s以下であることが好ましい。
【0050】
また、第一のカルボキシメチルセルロースと第二のカルボキシメチルセルロースの総量が0.4重量部より少ないと負極合剤塗料の粘度が不足し均一に分散した負極合剤塗料を得ることが困難となり、1.2重量部より多いと非水系二次電池のサイクル特性が劣化するため、0.4重量部以上1.2重量部以下であることが好ましい。
【0051】
さらに、第一のカルボキシメチルセルロースが0.1重量部より少ないと負極活物質への被覆量が不足し、0.4重量部より多いと負極活物質の被覆状態にむらが生じ均一な被覆が困難となる。第二のカルボキシメチルセルロースが0.3重量部より少ないと負極合剤層6と負極集電体5との密着性が低くなり負極合剤層の脱落が生じ、0.8重量部より多くなると負極合剤塗料の粘度が高くなり負極合剤塗料を均一に塗布することが困難となる。よって、第一のカルボキシメチルセルロースは0.1重量部以上0.4重量部以下であることが好ましく、また第二のカルボキシメチルセルロースは0.3重量部以上0.8重量部以下であることが好ましい。
【0052】
本発明のリチウムイオン二次電池用の負極板7は、上述した負極活物質と増粘剤及び結着材とを含む負極合剤層6から形成されるものであり、その形成方法は特に限定するものではない。負極活物質に増粘剤を分散した後に結着材を混合し分散媒として水を加えてペースト状にした負極合剤塗料を、銅等の金属箔からなる負極集電体5の表面に塗布、乾燥し、必要に応じて活物質密度を高めるべくプレスして形成することができる。
【0053】
分散媒として加える水の配合割合は特に制限されるものではない。水の配合割合によりペースト状の負極合剤塗料の粘度を調整することができるため、負極集電体5の表面への塗布方法によってその割合を適宜調整すればよい。一般に、ある負極集電体5の表面に負極合剤塗料を塗布し負極合剤層6を形成した場合、その負極合剤層6と負極集電体5との密着性は、負極合剤塗料を塗布後の乾燥による負極合剤層6の収縮と関係がある。つまり、負極合剤層6の収縮が大きいほど密着性は低下する。また、負極合剤層6の収縮は、負極合剤塗料の固形分濃度と関係があり、負極合剤塗料の固形分濃度が低くなると負極合剤層6の収縮は大きくなる。
【0054】
したがって、ペースト状の負極合剤塗料を負極集電体5に塗布、乾燥して負極板7を形成する場合、塗布する負極合剤塗料の固形分濃度を高くすることで、乾燥後の負極合剤層6の収縮を小さくすることができる。すなわち、負極合剤塗料の固形分濃度が高いほど負極合剤層6と負極集電体5との密着性が高くなる。このような観点から、分散媒として加える水の配合割合は、ペースト状とした負極合剤塗料の全体の重量を100重量部とした場合の50重量部以下(固形分濃度50重量%以上)とすることが望ましい。
【0055】
塗工時の負極合剤塗料の粘度は、負極合剤塗料の経時変化を抑制するためには3,000mPa・s以上が望ましく、負極合剤塗料を塗布、乾燥して形成した負極板7の幅方向の重量ばらつきを抑制するためには12,000mPa・s以下とすることが望ましい。
【0056】
塗工後の剥離強度は、負極板7の加工をする上で重要な評価項目である。剥離強度が4N/m以下では、塗工後のプレス工程で負極合剤層6が脱落する可能性がある。
【0057】
本発明のリチウムイオン二次電池用の正極板4は、正極集電体2の一面又は両面に少なくとも正極活物質、導電材及び通常は結着材を含有する正極合剤層3を形成して構成される。正極板4の正極集電体2としては通常、アルミニウム箔が好ましく用いられる。正極集電体2の厚さは通常、5〜50μm程度とする。正極活物質としては、従来から非水電解液二次電池の正極活物質として用いられている材料を用いることができ、例えば、LiMn(マンガン酸リチウム)、LiCoO(コバルト酸リチウム)若しくはLiNiO(ニッケル酸リチウム)等のリチウム酸化物、またはTiS、MnO、MoOもしくはV等のカルコゲン化合物を例示することができる。
【0058】
正極活物質は、正極合剤塗料中に均一に分散させるために、1〜100μmの範囲の粒径を有し、且つ平均粒径が3〜30μmの粉体であることが好ましい。これらの正極活物質は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
正極合剤塗料中の正極活物質の配合割合は、分散媒を除く配合成分を基準(固形分基準)とした時に、高い電池容量の実現とサイクル特性とのバランスの点から90〜98.5重量%とすることが好ましく、更に96〜98.5重量%とすることが好ましい。
【0060】
また、正極合剤塗料には通常結着材が添加される。結着材としては従来から用いられているもの、例えば、熱可塑性樹脂、より具体的にはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂、PTFEやポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂、または、ポリイミド樹脂あるいはスチレンブタジエンラバー等のゴム系樹脂等を使用することができる。この際、反応性官能基を導入したアクリレートモノマーまたはオリゴマーを結着材中に混入させることも可能である。そのほかにも、ゴム系の樹脂や、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリレートモノマー、アクリレートオリゴマー或いはそれらの混合物からなる電離放射線硬化性樹脂、上記各種の樹脂の混合物を使用することもできる。
【0061】
正極活物質、導電材、結着材、及び他の配合成分を適切な溶剤中に入れ、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミルまたはプラネタリーミキサー等の分散機により混合分散してペースト状の正極合剤塗料を作製する。
【0062】
正極合剤塗料の塗布方法は特に限定されないが、例えばダイコート、コンマダイレクトコート、コンマリバースコート等のように厚い正極合剤層3を形成できる方法が適している。ただし、正極合剤層3に求められる厚さが比較的薄い場合には、グラビアコートやグラビアリバースコート等により塗布してもよい。正極合剤層3は複数回塗布、乾燥を繰り返すことにより形成してもよい。
【0063】
乾燥工程における熱源としては、熱風、赤外線、遠赤外線、マイクロ波、高周波、或いはそれらを組み合わせて利用できる。乾燥工程において集電体をサポート又はプレスする金属ローラや金属シートを加熱して放出させた熱によって乾燥してもよい。また、乾燥後電子線または放射線を照射することにより結着材を架橋反応させて合剤層を得ることもできる。
【0064】
さらに、得られた正極合剤層3及び負極合剤層6をプレス加工することにより、合剤層の密度、集電体に対する密着性、均質性を向上させることができる。
【0065】
プレス加工は、例えば、金属ローラ、弾性ローラ、加熱ローラまたはシートプレス機等を用いて行う。本発明においてプレス温度は、合剤層の塗工膜を乾燥させる温度よりも低い温度とする限り、室温で行っても良いし又は加温して行っても良いが、通常は室温(室温の目安としては15〜35℃である。)で行う。
【0066】
ロールプレスは、ロングシート状の電極板を連続的にプレス加工できるので好ましい。ロールプレスを行う場合には定位プレス、定圧プレスいずれを行っても良い。プレスのライン速度は通常、5〜75m/min.とする。ロールプレスの圧力を線圧で管理する場合、加圧ローラの直径に応じて調節するが、通常は線圧を0.5kgf/cm〜2tf/cmとする。
【0067】
正極合剤層3及び負極合剤層6の塗工量は通常、20〜350g/m2とし、その厚さは、乾燥、プレス後に通常10〜250μm、好ましくは50〜190μmの範囲にする。
【0068】
以下、上述した正極板4および負極板7を使用した本発明の非水系二次電池について説明する。図2に、非水系二次電池の一例としての円筒形のリチウムイオン二次電池9を縦に切断した斜視図により示す。
【0069】
同図2の円筒形のリチウムイオン二次電池9においては、複合リチウム酸化物を正極活物質とする正極板4とリチウムを保持しうる材料を負極活物質とする負極板7とを多孔質絶縁体としてのセパレータ8を介し渦巻状に巻回して電極群1が作製される。
【0070】
電極群1は、有底円筒形の電池ケース10の内部に絶縁板11により電池ケース10とは絶縁されて収容される一方で、電極群1の下部より導出した負極リード12が電池ケース10の底部に接続されるとともに、電極群1の上部より導出した正極リード13が封口板14に接続される。また、電池ケース10は、所定量の非水電解液(図示せず)が注液された後、開口部に封口ガスケット15を周縁に取り付けた封口板14を挿入し、電池ケース10の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口される。
【0071】
ここで、セパレータ8は、リチウムイオン二次電池9の使用範囲に耐えうる組成であればよいが、特にポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂の微多孔フィルムを単一あるいは複合して用いるのが好ましい。このセパレータ8の厚みは10〜25μmとするのが良い。
【0072】
このときの非水電解液は、電解質塩としてLiPFおよびLiBFなどの各種リチウム化合物を用いることができる。また溶媒としてエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、プロピレンカーボネート(PC)を単独および組み合わせて用いることができる。また、正極板4または負極板7の上に良好な被膜を形成させるためおよび過充電時の安定性を保証するために、ビニレンカーボネート(VC)およびシクロヘキシルベンゼン(CHB)、並びにその変性体を用いるのが好ましい。
【0073】
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。
【0074】
まず、実施例1として低粘度で高エーテル化度の第一のカルボキシメチルセルロースと高粘度で低エーテル化度の第二のカルボキシメチルセルロースを使用した場合を示し、高粘度で低エーテル化度の第二のカルボキシメチルセルロースを使用しない場合を比較例1として示す。
【実施例1】
【0075】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0076】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0077】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は8000mPa・sであった。
【0078】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は8N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0079】
(比較例1)
負極活物質と分散機械は実施例1で用いたものを用い、増粘剤はエーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩を負極活物質100重量部に対し、0.8重量部を投入し実施例1に記載のミキサーでプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として0.6重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら、減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は15000mPa・sであった。
【0080】
負極板7の作製手順は実施例1と同様の方法で行った。負極合剤層6の剥離強度は4N/mであった。
【0081】
以上、実施例1および比較例1の結果を(表1)に示す。
【0082】
【表1】

【0083】
(表1)から明らかなように、第二のカルボキシメチルセルロースを用いない比較例1の非水系二次電池は、合剤の脱落が多く、90度剥離強度が低く、また500サイクル後の容量維持率が低いことがわかる。
【0084】
次に、第一のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が1.0〜1.5の適正な範囲に入っている場合を実施例2と実施例3に示し、エーテル化度が適正な範囲である1.0〜1.5から外れる場合を比較例2と比較例3に示す。
【実施例2】
【0085】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.00、1重量%水溶液の粘度にて460mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0086】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0087】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は8200mPa・sであった。
【0088】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は9N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【実施例3】
【0089】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.50、1重量%水溶液の粘度にて400mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0090】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0091】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は7800mPa・sであった。
【0092】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は7.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0093】
(比較例2)
比較例2として第一のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が下限の1.0よりも小さい場合を示す。
【0094】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が0.95、1重量%水溶液の粘度にて480mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0095】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0096】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は9200mPa・sであった。
【0097】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は10N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0098】
(比較例3)
比較例3として第一のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が上限の1.5よりも大きい場合を示す。
【0099】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.55、1重量%水溶液の粘度にて350mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0100】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0101】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は7800mPa・sであった。
【0102】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0103】
【表2】

【0104】
(表2)から明らかなように、第一のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が適正な範囲である1.0〜1.5の下限から外れて0.95である比較例2の非水系二次電池は合剤の脱落が多く、500サイクル後の容量維持率が低いことがわかる。またエーテル化度が適正な範囲である1.0〜1.5の上限から外れて1.55である比較例3の非水系二次電池は90度剥離強度が低く、500サイクル後の容量維持率が低いことがわかる。
【0105】
次に、第一のカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度が10〜1800mPa・sの適正な範囲に入っている場合を実施例4と実施例5に示し、1重量%水溶液の粘度が適正な範囲である10〜1800mPa・sを外れる場合を比較例4と比較例5に示す。
【実施例4】
【0106】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.28、1重量%水溶液の粘度にて10mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0107】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0108】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は7500mPa・sであった。
【0109】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は7N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【実施例5】
【0110】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.26、1重量%水溶液の粘度にて1800mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0111】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0112】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は11,000mPa・sであった。
【0113】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は8.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0114】
(比較例4)
比較例4として第一のカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度が下限の10mPa・sよりも小さい比較例を以下に示す。
【0115】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.25、1重量%水溶液の粘度にて9mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0116】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0117】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は6200mPa・sであった。
【0118】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は4N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0119】
(比較例5)
比較例5として第一のカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度が上限の1800mPa・sよりも大きい比較例を以下に示す。
【0120】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて1850mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0121】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0122】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は13500mPa・sであった。
【0123】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は9N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0124】
【表3】

【0125】
(表3)から明らかなように、第一のカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度が適正な範囲である10〜1800mPa・sの下限から外れて9mPa・sである比較例4の非水系二次電池は負極合剤塗料の粘度が低く、90度剥離強度が低いことが分かる。また1重量%水溶液の粘度が適正な範囲である10〜1800mPa・sの上限から外れて1850mPa・sである比較例5の非水系二次電池は負極合剤塗料の粘度が高く、500サイクル後の容量維持率が低いことが分かる。
【0126】
次に、第一のカルボキシメチルセルロースの投入量が0.1〜0.4重量部の適正な範囲に入っている場合を実施例6と実施例7に示し、投入量が0.1〜0.4重量部の適正な範囲を外れる場合を比較例6と比較例7に示す。
【実施例6】
【0127】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.10重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0128】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0129】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は7800mPa・sであった。
【0130】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は8N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【実施例7】
【0131】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.40重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0132】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0133】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は8200mPa・sであった。
【0134】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は8.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0135】
(比較例6)
比較例6として第一のカルボキシメチルセルロースの含有量が下限の0.1重量部よりも小さい比較例を以下に示す。
【0136】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.09重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0137】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0138】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は7500mPa・sであった。
【0139】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は8N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0140】
(比較例7)
比較例7として第一のカルボキシメチルセルロースの含有量が上限の0.4重量部よりも大きい比較例を以下に示す。
【0141】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.41重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0142】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0143】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は8400mPa・sであった。
【0144】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は8.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0145】
【表4】

【0146】
(表4)から明らかなように、第一のカルボキシメチルセルロースの投入量が0.1〜0.4重量部の適正な範囲の下限から外れて0.09重量部である比較例6の非水系二次電池は500サイクル後の容量維持率が低いことが分かる。また投入量が0.1〜0.4重量部の適正な範囲の上限から外れて0.41重量部である比較例7の非水系二次電池は500サイクル後の容量維持率が低いことが分かる。
【0147】
次に、第二のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が0.5〜0.8の適正な範囲に入っている場合を実施例8と実施例9に示し、エーテル化度が適正な範囲である0.5〜0.8を外れる場合を比較例8と比較例9に示す。
【実施例8】
【0148】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0149】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.50、1重量%水溶液の粘度にて7400mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0150】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は8000mPa・sであった。
【0151】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は10N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【実施例9】
【0152】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0153】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.80、1重量%水溶液の粘度にて7100mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0154】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は7800mPa・sであった。
【0155】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は7N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0156】
(比較例8)
比較例8として第二のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が下限の0.5よりも小さい比較例を以下に示す。
【0157】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0158】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.48、1重量%水溶液の粘度にて7600mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0159】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は8100mPa・sであった。
【0160】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は11N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0161】
(比較例9)
比較例9として第二のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が上限の0.8よりも大きい比較例を以下に示す。
【0162】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0163】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.82、1重量%水溶液の粘度にて7100mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0164】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は7600mPa・sであった。
【0165】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は5.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0166】
【表5】

【0167】
(表5)から明らかなように、第二のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度が適正な範囲である0.5〜0.8の下限から外れて0.48である比較例8の非水系二次電池は合剤の脱落が多く、90度剥離強度が低く、500サイクル後の容量維持率が低いことがわかる。またエーテル化度が適正な範囲である0.5〜0.8の上限から外れて0.82である比較例9の非水系二次電池は90度剥離強度が低いことがわかる。
【0168】
次に、第二のカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度が3000〜10000mPa・sの適正な範囲に入っている場合を実施例10と実施例11に示し、1重量%水溶液の粘度が適正な範囲である3000〜10000mPa・sを外れる場合を比較例10と比較例11に示す。
【実施例10】
【0169】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0170】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.7、1重量%水溶液の粘度にて3000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0171】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は3200mPa・sであった。
【0172】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は6.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【実施例11】
【0173】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0174】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.7、1重量%水溶液の粘度にて10000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0175】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は7800mPa・sであった。
【0176】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は11N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0177】
(比較例10)
比較例10として第二のカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度が下限の3000mPa・sよりも小さい比較例を以下に示す。
【0178】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0179】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.7、1重量%水溶液の粘度にて2900mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0180】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は2500mPa・sであった。
【0181】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は4.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0182】
(比較例11)
比較例11として第二のカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度が上限の10000mPa・sよりも大きい比較例を以下に示す。
【0183】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0184】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて11000mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.55重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0185】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は14000mPa・sであった。
【0186】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は12N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0187】
【表6】

【0188】
(表6)から明らかなように、第二のカルボキシメチルセルロースの1重量%水溶液の粘度が適正な範囲である3000〜10000mPa・sの下限から外れて2900mPa・sである比較例10の非水系二次電池は負極合剤塗料の粘度が低く、90度剥離強度が低いことが分かる。また1重量%水溶液の粘度が適正な範囲である3000〜10000mPa・sの上限から外れて11000mPa・sである比較例11の非水系二次電池は負極合剤塗料の粘度が高いことが分かる。
【0189】
次に、第二のカルボキシメチルセルロースの投入量が0.3〜0.8重量部の適正な範囲に入っている場合を実施例12と実施例13に示し、投入量が0.3〜0.8重量部の適正な範囲を外れる場合を比較例12と比較例13に示す。
【実施例12】
【0190】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0191】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.30重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0192】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は3200mPa・sであった。
【0193】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は6.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【実施例13】
【0194】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0195】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.80重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0196】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は10000mPa・sであった。
【0197】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は10N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0198】
(比較例12)
比較例12として第二のカルボキシメチルセルロースの含有量が下限の0.3重量部よりも小さい比較例を以下に示す。
【0199】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0200】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.29重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0201】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は2800mPa・sであった。
【0202】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0203】
(比較例13)
比較例13として第二のカルボキシメチルセルロースの含有量が上限の0.8重量部よりも大きい比較例を以下に示す。
【0204】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.25重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0205】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.82重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0206】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は1300mPa・sであった。
【0207】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は12N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0208】
【表7】

【0209】
(表7)から明らかなように、第二のカルボキシメチルセルロースの投入量が0.3〜0.8重量部の適正な範囲の下限から外れて0.29重量部である比較例12の非水系二次電池は90度剥離強度が低いことが分かる。また投入量が0.3〜0.8重量部の適正な範囲の上限から外れて0.82重量部である比較例13の非水系二次電池は負極合剤塗料の粘度が高いことが分かる。
【0210】
次に、第一のカルボキシメチルセルロースと第二のカルボキシメチルセルロースの合計が0.4〜1.2重量部の適正な範囲に入っている場合を実施例14と実施例15に示し、適正な範囲である0.4〜1.2重量部を外れる場合を比較例14と比較例15に示す。
【実施例14】
【0211】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.20重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0212】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.30重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0213】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は3100mPa・sであった。
【0214】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は6.5N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【実施例15】
【0215】
負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.40重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0216】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.80重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0217】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は10000mPa・sであった。
【0218】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は10N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0219】
(比較例14)
比較例14として第一のカルボキシメチルセルロースと第二のカルボキシメチルセルロースの総量が下限の0.4重量部よりも小さい比較例を以下に示す。
【0220】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.2重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0221】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.18重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0222】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は2200mPa・sであった。
【0223】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は3N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0224】
(比較例15)
比較例15として第一のカルボキシメチルセルロースと第二のカルボキシメチルセルロースの総量が上限の1.2重量部よりも大きい比較例を以下に示す。
【0225】
まず、負極活物質100重量部を3軸遊星方式の分散・混合・混練機に入れ、第一の増粘剤としてエーテル化度が1.23、1重量%水溶液の粘度にて420mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.3重量部を粉のまま加えプラネタリーの回転数を10回転で5分間混ぜた。その後、分散媒としてのイオン交換水65重量部を投入し、10rpmの回転速度で5分間、その後40rpmの回転速度で30分間分散した。
【0226】
次に、第二の増粘剤として、エーテル化度が0.69、1重量%水溶液の粘度にて7200mPa・sのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.95重量部を粉のまま加え40rpmの回転速度で10分間分散した。
【0227】
その後、分散媒としてのイオン交換水と、結着材としてスチレンブタジエンラバーを固形分として1重量部加え、プラネタリーの回転数を40rpm、ディスパーの回転数3000rpmで20分間分散したのち、プラネタリーの回転数を20rpmで攪拌しながら減圧下で脱泡し、50重量%の固形分の負極合剤塗料として得た。得られた負極合剤塗料の粘度は13000mPa・sであった。
【0228】
得られた負極合剤塗料を銅箔(10μmの厚み)に一面当りの乾燥重量が120g/m2になるように両面にダイコーターを用いて負極合剤塗料を塗布した後60℃で乾燥して負極合剤層6を形成した。この負極合剤層6の剥離強度は12N/mであった。両面に塗工した後、負極板7の厚みが150μmになるようにプレスを行い所定の幅にスリットして負極板7を得た。
【0229】
【表8】

【0230】
(表8)から明らかなように、第一のカルボキシメチルセルロースと第二のカルボキシメチルセルロースの合計が0.4〜1.2重量部の適正な範囲の下限から外れて0.38重量部である比較例14の非水系二次電池は負極合剤塗料の粘度が低く、90度剥離強度が低く、500サイクル後の容量維持率が低いことが分かる。また第一のカルボキシメチルセルロースと第二のカルボキシメチルセルロースの合計が0.4〜1.2重量部の適正な範囲の上限から外れて1.25重量部である比較例15の非水系二次電池は負極合剤塗料の粘度が高く、500サイクル後の容量維持率が低いことが分かる。
【0231】
なお実施例および比較例では比表面積が3.8m/gの負極活物質を使用したが、比表面積は3.0〜5.5m/gの範囲でも問題ない。
【0232】
またカルボキシメチルセルロースに関しては、アンモニウム塩、ナトリウム塩などあるが、ナトリウム塩が望ましい。
【0233】
以下に評価方法を示す。
【0234】
塗料粘度はBH型粘度計を用い、塗料温度を25℃に調整してからローターを20rpmで回転させて測定した。塗工時の条件に依存するが、負極合剤塗料の粘度は3,000〜12,000mPa・sの範囲であることが望ましいため、得られた負極合剤塗料の粘度を測定した。
【0235】
塗工面の評価は塗布乾燥後の負極合剤層6の100cmに存在するφ0.5mm以上の欠陥部を目視で観察し欠陥数を評価した。
【0236】
密着力はJIS−C6481−1995に準拠した90度剥離強度試験行った。負極集電体5への負極合剤層6の密着力は、片方の負極合剤層6を取り除いた後にもう片方の負極合剤層6を両面テープで固定し、負極集電体5を負極合剤層6に対して垂直になる方向に引張り、毎分50mmの速さで連続的に約30mm剥がして、この間での荷重の平均値を剥離強度として負極集電体5への負極合剤層6の密着力の評価に用いた。本検討の負極合剤層6の剥離強度が低いと、負極板7の加工(例えば、スリット、プレス)で負極合剤層6が脱落する危険性がある。
【0237】
正極板4の作製方法は、正極活物質100重量部に導電材としてアセチレンブラックを2重量部と、結着材としてポリフッ化ビニリデンを2重量部と、分散媒としてN−メチル−2−ピロリドンとを攪拌混合し、ペースト状の正極合剤塗料を得た。一面あたりの塗工量は約260.0g/m2とし、厚さ15μmのアルミニウム箔の両面にダイコーターを用いて正極合剤塗料を塗工した。その後、乾燥し、ロールプレスにより圧延、乾燥後、所定の寸法に切断して正極板4を得た。
【0238】
上記の正極板4と負極板7とをセパレータ8を介して、図2に示したようにA方向に渦巻状に巻回して電極群1を作製した。この電極群1を有底円筒形の電池ケース10の内部に、絶縁板11により電池ケース10とは絶縁されて収容する一方で、電極群1の下部より導出した負極リード12が電池ケース10の底部に接続するとともに、電極群1の上部より導出した正極リード13が封口板14に接続した。また、電池ケース10に所定量の非水電解液を注液した後、開口部に封口ガスケット15を周縁に取り付けた封口板14を挿入し、電池ケース10の開口部を内方向に折り曲げてかしめ封口して円筒形リチウムイオン二次電池9を作製した。
【0239】
サイクル特性の評価は25℃の環境下で0.3Cレートでの4.2V定電流・定電圧の5時間充電と、1Cレートの2.5V放電のサイクルを繰り返し、500サイクル後の容量維持率を測定した。
【0240】
これら実施例1〜15および比較例1〜15の結果より、本発明の方法により形成した非水系二次電池用負極板の不良が減少し、サイクル特性と安全性に優れた非水系二次電池を生産することが可能となることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0241】
本発明にかかる非水系二次電池用負極板を用いた非水系二次電池は電池特性に優れたポータブル機器の電源として有用である。
【符号の説明】
【0242】
1 電極群
2 正極集電体
3 正極合剤層
4 正極板
5 負極集電体
6 負極合剤層
7 負極板
8 セパレータ
9 リチウムイオン二次電池
10 電池ケース
11 絶縁板
12 負極リード
13 正極リード
14 封口板
15 封口ガスケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質と結着材および増粘剤を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成した非水系二次電池用負極板であって、前記増粘剤を低粘度で高エーテル化度の第一のカルボキシメチルセルロースと、高粘度で低エーテル化度の第二のカルボキシメチルセルロースを組み合わせて構成したことを特徴とする非水系二次電池用負極板。
【請求項2】
前記第一のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度を1.0〜1.5としたことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用負極板。
【請求項3】
前記第一のカルボキシメチルセルロースの1重量%の水溶液の粘度が10〜1,800mPa・sとしたことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用負極板。
【請求項4】
前記第二のカルボキシメチルセルロースのエーテル化度を0.5〜0.8としたことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用負極板。
【請求項5】
前記第二のカルボキシメチルセルロースの1重量%の水溶液の粘度が3,000〜10,000mPa・sとしたことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用負極板。
【請求項6】
前記負極合剤塗料として負極活物質を100重量部とした場合前記第一のカルボキシメチルセルロースおよび第二のカルボキシメチルセルロースの総量が0.4重量部以上1.2重量部以下含有したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用負極板。
【請求項7】
前記負極合剤塗料として負極活物質を100重量部とした場合、第一のカルボキシメチルセルロースを0.1重量部以上0.4重量部以下含有し、第二のカルボキシメチルセルロースを0.3重量部以上0.8重量部以下含有したことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用負極板。
【請求項8】
前記負極合剤塗料として負極活物質の比表面積を3.0〜5.5m/gとしたことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用負極板。
【請求項9】
前記負極合剤塗料として結着材にスチレンブタジエンラバーを用いたことを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用負極板。
【請求項10】
少なくともリチウム含有複合酸化物よりなる正極活物質と導電材および結着材を分散媒にて混練分散した正極合剤塗料を正極集電体の上に付着させて正極合剤層を形成した正極板と少なくともリチウムを保持しうる材料よりなる活物質と結着材および増粘剤を分散媒にて混練分散した負極合剤塗料を負極集電体の上に付着させて負極合剤層を形成し負極板との間に多孔質絶縁体を介在させて渦巻状に捲回または積層して構成した電極群を非水電解液とともに電池ケースに封入した非水系二次電池であって、前記負極板に請求項1〜9のいずれか一つに記載の非水系二次電池用負極板を用いたことを特徴とする非水系二次電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−59488(P2012−59488A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200658(P2010−200658)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】