説明

非水系用の活性水素部分含有液状流動学的添加剤、および該液体流動学的添加剤を含有する非水組成物系

【課題】非水組成物の増粘に特に有用な液体であって、100%まで注入可能でポンプで扱うことができ、インク、エポキシ、ポリエステル、塗料、グリースおよび分散させやすい他の系などの組成物系に対して光沢を損なうことなく優れた増粘効果を発揮する。この添加剤は結合と反応機構との両方の作用によって流動学的粘性を与えると考えられ、水系にも有用である。
【解決手段】a)ポリオール、アミノアルコールおよびジアミンよりなる群から選択される一種以上の化合物と、b)ポリカルボン酸およびポリイソシアネートよりなる群から選択される一種以上の化合物(但し、化合物(a)の活性水素部分は、化合物(b)の反応性部分よりも化学量論的に過剰である)との反応から得られ、その末端部に少なくとも2個の活性水素部分を有する反応生成物を含有する液体流動学的添加剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系に使用する、液体状であって室温で注入可能な改良型の流動学的添加剤に関する。このような添加剤は、塗料、塗膜、シーラント、インクおよびワニスを含む非水系の組成物及び組成物系に、向上した流動学的活性を与えることができる。さらに本発明はそのような添加剤を含む非水組成物および非水組成物系に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、増粘剤、チキソトロープ剤または流動学的制御剤等と呼ばれる流動学的添加剤は、様々な目的の塗料組成物において長いこと使用されてきた。したがって、粘度制御剤、貯蔵安定剤、抗硬化剤、サグ制御剤および他の材料のような添加剤が非水塗料組成物及び塗膜組成物に、少量、加えられているものである。流動学的添加剤または流動学的改質剤(増粘剤、流動学的制御剤および改質チキソトロープ剤等とも称される)がこのような組成物に添加されるのは、塗膜組成物の粘度を変えるためだけではなく、様々な処理条件および最終使用状況の下で望ましいレベルの粘度を維持するためである。流動学的改質剤から得られる他の効果としては、顔料の懸濁状態、均展性および流動性の改善を挙げることができる。これらの性質の中には、例えば、油井掘削流体などの他の種類の組成物においても望まれるものがある。本発明においては、上記性質の内少なくとも一つ以上を与える化学組成物が流動学的添加剤と称され、流動学的添加剤によって与えられた性質は全てチキソトロピーという用語に含まれることとする。
【0003】
このような、特に塗料および塗膜に有効な流動学的制御剤は、該流動学的制御剤が使用される系に適切な制御的性質を与えなくてはならない。
【0004】
例えば、親有機性粘土が様々な有機組成物及び溶媒を基材とする組成物の増粘に有効であることが示されている。本発明の譲受人であるレオックス株式会社によって所有されている数多くの米国特許の中には、流動学的添加剤として有機的に改質された様々な種類の粘土を記載しているものがいくつかある(米国特許 Nos. 4,208,218; 4,412,018; 4,517,112; 4,695,402および5,075,033を参照のこと)。ヒュームドシリカおよび沈降シリカもある型の有機組成物系を増粘するのに使用されてきた。
【0005】
しかしながら、有機的に改質された粘土や珪素性の材料は、非水組成物を増粘するのには不都合な点がある。有機的に改質された粘土もヒュームドシリカも共に固体粒子状または粉末状であり、これらの材料は、通常、増粘する組成物の製造過程の粉砕工程中に固体として添加しなければならない。有機粘土は、固体の増粘剤を使用する不都合を回避するために、有機粘土を有機液体中に分散させた液体状のゲルとして販売されていることがあるが、そのような商品の市場での受入は限られている。
【0006】
この型の添加剤を使用すると、光沢がなくなったり、最終的に得られる塗料や塗膜の質が低下する場合もある。さらに、これらの添加剤を使用すると、添加剤が使用された系が剪断の後に極端に早く回復するので、これらの添加剤が使用されている組成物の均展性または平滑性を制限してしまう。
【0007】
固体または粉末型の有機粘土のような増粘剤の使用および分散性に関する問題の中には、ポリアミド系流動学的添加剤を使用することによって解消されるものがある。例えば、レオックス株式会社の米国特許No. 4,778,843には有機溶媒を基材とする組成物用に特に設計された固体ポリアミド流動学的添加剤が記載されており、該添加剤はポリカルボン酸と、特定の炭素鎖長および構造を有する活性水素化合物と、モノカルボン酸キャッピング剤との反応生成物を含有している。レオックス株式会社の最近の米国特許No. 5,349,011には有機性の溶媒を基材とする組成物用に特に設計されたポリアミドエステル流動学的添加剤が記載されており、該添加剤はポリカルボン酸と、特定の構造を有する活性水素組成物と、アルコキシル化ポリオールと、モノカルボン酸キャッピング剤との反応生成物を含有している。この添加剤は優れた効率を有すると共に脂肪族溶媒を基材とする塗膜組成物に使用されたときに容易に分散し、また、溶媒に分散させても有効であると記載されている。
【0008】
米国特許 No. 4,337,184は、ポリアルキレンオキサイドと、ポリオール、アミン、アミンアルコール、チオールおよびジイソシアネートなどのポリイソシアネートを含む多官能基価の材料と、水との反応から得られ、水を基材とする組成物および有機溶媒を基材とする組成物に使用することのできる流動学的改質剤を記載している。この改質剤は、分岐構造を有していることと、末端に疎水性の部分が実質的にないこととによって特徴づけられている。
【0009】
流動学的添加剤ではないが、米国特許 No. 4,072,641はフレキソ印刷インクのビヒクルとして使用することのできるポリアミド樹脂を記載しており、該ポリアミド樹脂は重合性脂肪酸と、アルキレンジアミンと、分岐もエトキシ化もしていないモノアミノアルコールと、特定の分岐鎖モノカルボキシル脂肪酸を含む連鎖反応停止剤との反応によって調製される。米国特許 No. 5,100,438は石炭水スラリーに使用することのできるエステル−アミド添加剤を記載しており、該添加剤はポリカルボン酸とポリエーテルグリコールおよび脂肪質アミンとの反応によって得られる。これらエステル−アミドの塩も開示されている。得られた材料を水と合わせ、次いで、その水を石炭とミキサー中で混合する。得られたスラリーは室温で液体である。
【0010】
レオックスの米国特許 No. 4,499,233は水系用の増粘組成物として水に分散可能な改質ポリウレタンポリマーを記載している。このポリマーは、ポリイソシアネートと、所定の分子範囲にあるポリエーテルポリオールと、改質剤と、前記ポリイソシアネート、前記ポリエーテルポリオールおよび前記改質剤の反応生成物と反応性のあるキャッピング剤との反応製造物であると記述されている。記載されているキャッピング剤には、例えば、メルカプタン、第一および第二アミン、並びにモノイソシアネート等がある。
【0011】
最近の米国特許 No. 5,319,055は溶媒含有組成物増粘用の増粘剤を示しており、該増粘剤は、少なくとも2個の水酸基を含有するポリオールと、少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、式R-X(但し、Xは第一アミノ、第二アミノおよびヒドロキシルよりなる群から選択され、Rは1〜30の炭素原子を有する基を表す)を有する活性水素化合物との反応生成物として記載されている。例に示されている活性水素化合物は、例5および例15の二官能性を有している化合物を除いて、全て一官能性である。生成した増粘剤は、非水分散系への増粘剤として使用する前に、トルエンを含有する溶液に分散させる。
【0012】
レオックス株式会社に発行された最近の2つの特許は、2タイプのアルコキシル化窒素含有化学薬品を基材とする液状の注入可能な流動学的添加剤を記載している。米国特許Nos. 5,536,871および5,510,452を参照せよ。なお、これらの教示はこの参照により本願明細書に取り込む。
【0013】
前記増粘剤は、溶媒と混合しない限り、主として固体製造物である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許 No. 4,208,218
【特許文献2】米国特許 No. 4,412,018
【特許文献3】米国特許 No. 4,517,112
【特許文献4】米国特許 No. 4,695,402
【特許文献5】米国特許 No. 5,075,033
【特許文献6】米国特許 No. 4,778,843
【特許文献7】米国特許 No. 5,349,011
【特許文献8】米国特許 No. 4,337,184
【特許文献9】米国特許 No. 4,072,641
【特許文献10】米国特許 No. 5,100,438
【特許文献11】米国特許 No. 4,499,233
【特許文献12】米国特許 No. 5,319,055
【特許文献13】米国特許 No. 5,536,871
【特許文献14】米国特許 No. 5,510,452
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
過去において、ポリアミドや類似の化学薬品を基材とする非水系用の市販の流動学的組成物は固体状で調製されていることが殆どで、乾燥した固体状の増粘剤として製造され、使用されてきた。最終調合品における分散状態は添加剤の活性にとって非常に重要であり、粘度効率は増粘しようとする系へうまく分散させるのに直接的な影響を与える。しかしながら、固体の流動学的添加剤が有機系に添加された場合には不十分な流動性しか示していなかった。さらに、関係する塵芥の問題はヒュームドシリカのような他の型の粒子状材料が有する問題に類似している。したがって、例えば有機塗料に添加された場合は、その性質によって固体添加剤は凝集して塊を形成する傾向がある。このような凝集は添加剤を攪拌しながら系に加えることによって低減することができる。分散は非常に遅いことが多く、ある特定の製造操作の効率を著しく低減させることも多い。
【0016】
特に、塗料系に使用される型の他の薬剤や成分を含有する調合品にあっては、固体の増粘剤を適切に組み込むためには、長時間に亘る攪拌とエージングが必要になる。このような添加剤が希釈された分散剤として提供されたとしても、添加剤は依然として分散しにくい。
【0017】
製造業者は非水系に様々な増粘剤を導入するためのより効率的な方法を捜し求めてきた。この要求を満たすために、今日、いくつかの市販のポリアミド型増粘剤および他の流動学的添加剤が、塗料や他の組成物用に液体として販売されている。しかしながら、これら市販の増粘組成物の殆どは、固体の流動学的添加剤を有機液体媒体または溶媒に溶解または分散させて製造されている。液体媒体の性質および量は増粘組成混合物に必要とされる粘度に応じて選択される。典型的には、注入可能な増粘組成混合物の粘度は約250〜300,000 cP(ブルックフィールド(Brookfield) RVT粘度計を用いて10 RPMで)よりも小さいのがよい。そのようにすることにより、増粘組成混合物を液体として容易に貯蔵容器から注ぎ出して、室温で、増粘される系に素早く組み入れることができる。このような市販の組成物用に選択された溶媒は、この時点まで、通常、トルエン、プロパノール、またはブチルカルビトール(CARBITOL(登録商標))のような揮発性のある有機溶媒であった。そのような市販の液体製造物には50%〜80%の溶媒に対して20%〜50%の流動学的添加剤の割合という範囲が一般的である。
【0018】
様々なタイプの塗料の使用に際して、また、インク、ポリエステル、および被覆部材の製造に際して、有機蒸気の放出を少なくすることは、大気汚染の低減の取り組みにおいて重要になってきている。米国による、そのようなガスを大気に放出することへの規制はどんどん厳しくなってきている。
【0019】
上記のように、流動学的添加剤と共に揮発性の有機溶媒を使用すると、有機溶媒は増粘しようとする系の全揮発性有機物量(VOC)を増加させることになる。流動学的添加剤は有機系および水系において、比較的低い濃度で使用されている。しかしながら、一般に、流動学的添加剤は、溶液として、または前記有機溶媒混合物に分散させて提供されるので、やはり、組成物系の全VOCを増加させる場合がある。この揮発性有機溶媒は流動学的添加剤のような薬剤を含有する製造物が使用された後に蒸発し、組成物系が乾燥および/または硬化する間に大気中に入って行く。インク、シーラントおよびグリースの製造中に同じような蒸発が起こる。
【0020】
VOCが殆ど無いか皆無である液体増粘組成物は、注入が可能であることの際だった優位性を有しつつ、本質的に、増粘される系のVOCに殆どまたは全く影響しない。
【0021】
流動学的添加剤は、該流動学的添加剤を添加する前はあまり粘稠性のないことが多い系に対して高いレベルの粘度または稠度を与えなくてはならない。グリースのように、添加の結果としてゲル状にならなくてはならない系もある。非常に小さい相対重量濃度で添加されたとしても流動学的添加剤は充分に機能しなくてはならず、それ故に、そのような濃度で添加しても、相対的にはるかに大きな容量を有する有機系の粘度を著しく増加させる能力を有さなくてはならない。事実、流動学的添加剤は、非常に小さな剪断速度では固体に近い挙動を系に与えなくてはならない。これらの要求から、多くの科学者は、このような添加剤はそれ自身非常に高い粘度レベルを有していなくてはならず、添加剤自身が固体か固体様でなくてはならないと結論づけるに至っている。ある状況においては液体であって注入可能であり、同時に(増粘剤が約0.1〜3%の濃度で存在する場合には)増粘しようとする系よりも100%濃度における粘度が小さいという流動学的添加剤は、物理的および理論的に不可能なものであると思われていたし、未だに不可能であるとする科学者もいる。
【0022】
この技術分野では非常に様々な流動学的添加剤が知られているにもかかわらず、注入可能な形態であって、効率が高く、増粘する組成物中に容易に分散させることのできる活性液体増粘剤と、さらに、従来技術の揮発溶媒混合増粘剤に関連した欠点を克服する非VOC含有流動学的添加剤との両方を得ることを目的として、独立かつ同時に研究がなされてきた。
【0023】
本発明はこれら2つの長い間求められてきた目標を満たすものである。
【0024】
(発明の目的)
本発明の目的は、容易に注入することができてポンプで扱うことができ、揮発性の溶媒が全く含まれていないか、非常に少量しか含まれておらず、室温で流体であり、インク、塗料、エポキシ、ポリエステルおよび塗膜に使用することのできるほぼ100%活性の液体流動学的チキソトロープを提供することを目的とする。
【0025】
非水系組成物を増粘し、非水系組成物に流動学的性質を与えることを効率よく行うことのできる注入可能な液体状の前記流動学的添加剤を提供することが、本発明の具体的な目的である。
【0026】
本発明の更なる目的は、容易に入手することのできる安価な化学原材料から比較的単純で容易な化学反応を用いて液体流動学的添加剤を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、このような液体流動学的添加剤を含有する改良型の有機組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0028】
(発明の要約)
本発明は流動学的添加剤に関する。該流動学的添加剤は室温で注入することができ、非水系で低濃度で使用されたときに効果的に効率よくチキソトロープ性を与えることができる。従来の添加剤とは異なり、本発明の流動学的液体添加剤はほぼ完全な流動学的活性と効率とを有しており、液状を維持するのに希釈を必要としない。本発明は、このような流動学的添加剤を含有する改良された有機系および溶媒系をも包摂する。非水系という用語は、本願明細書では、溶媒のない組成物および溶媒を含有している組成物の両方を含んで使用される。
【0029】
従来技術に対する本発明の長所は実に数多くある。これらの新しい流動学的添加剤は溶媒が無くてもよく(無揮発性溶媒化合物 (“VOC”))、室温で容易に注入することができると共にポンプで扱うことのできる液体であり、さらに、取り扱いが容易である。これらの添加剤は低い剪断速度で高い効率を与え、流体状の塗膜に抗垂れ性を与える。本願添加剤は溶媒基材の系に容易に分散させることができ、系に混入するときに特定の最低温度または最高温度に注意を払う必要がない。
【0030】
本発明の一つの重要な側面は、
a) 一種以上の活性水素化合物(但し、該活性水素化合物は少なくとも2個の活性水素部分を有する)と、
b) 前記(a)の活性水素部分と反応することのできる少なくとも2つの反応性部分を有する一種以上の化合物
(但し、化合物(a)の活性水素部分は、化合物(b)の反応性部分よりも化学量論的に過剰である)との反応から得られ、その末端部に少なくとも2個の活性水素部分を有する反応生成物を含有する液体流動学的添加剤組成物に関する。
【0031】
本発明の範囲、性質および利用性と共に本発明の更なる利点と特徴とは、以下に記載する本発明の好ましい態様の記載から当業者には明らかになって来るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(好ましい態様の記述)
この発明の液体添加物は様々な材料を用いて、以下に開示する、またはこの特許が公開されたときに明らかになるであろう様々な方法によって作ることができる。出願人は以下の記載によってこのような添加物を製造する材料または方法を限定するつもりはない。
【0033】
一面において、本発明は、実質的に希釈剤を含んでいないときに液体で、室温で注入可能であり、このような系にチキソトロピーを与える、
a) 一種以上の活性水素化合物(但し、該活性水素化合物は少なくとも2個の活性水素部分を有する)と、
b) 前記(a)の活性水素部分と反応することのできる少なくとも2つの反応性部分を有する一種以上の化合物
(但し、化合物(a)の活性水素部分は、化合物(b)の反応性部分よりも化学量論的に過剰である)との反応から得られ、その末端部に少なくとも2個の活性水素部分を有する反応生成物を含有する非水系用の流動学的添加組成物を含む。
【0034】
この発明の目的を達成するのに好ましい活性水素化合物は、式(H-X)m-R-(Y-H)n(但し、XおよびYはヘテロ原子よりなる群から独立に選択され、mおよびnは≧1であり、Rは2〜100の炭素原子を含有する基を示し、成分b)と反応しない他の官能基を含んでもよい。好ましいヘテロ原子は酸素および窒素である。)を有する化合物である。
【0035】
要素a)に使用することのできる化合物はポリオール、アミノアルコールおよびジアミンから選択することができる。
【0036】
使用することのできるポリオールとしては、例えば、少なくとも2個の炭素原子を、より好ましくは2〜40個の炭素原子を有する、芳香族、脂肪族もしくは脂環式、直鎖もしくは分岐鎖、飽和もしくは不飽和ポリオールであればいかなるものも使用することができる。これらの例としては、1,2-エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、1,4-および1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオールなどで単独またはそれらの混合物を挙げることができる。二量体のジオールは、エメリーグループのヘンケル社(Henkel Corporation-Emery Group)からエンポール(Empol)という商品名で市販されている。二量体のジオールとしては Empol 1075を例示することができる。
【0037】
本発明において使用することのできるポリオールには、繰り返し単位:
−[OCR4R5−CR6R7−]− (I)
(ここで、各オキシアルキレン単位のR4、R5、R6およびR7はH、CH3およびC2H5よりなる群から独立に選択される。)を有する単独重合体、またはブロックもしくはランダム共重合体であるポリエーテルポリオールも含むことができる。これらのポリエーテルポリオールはポリエーテル鎖の各末端部に1のヒドロキシル官能価(hydroxy functionality)を有している。このようなポリエステルポリオールの好適な例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール、ポリブチレンオキサイドおよびポリテトラヒドロフランを挙げることができる。
【0038】
例えばジェフアミン(Jeffamine)D-400などのα,ω−ジアミノポリエーテルのような第一ジアミンは、また別の種類の、本発明の実施の際に有用である好ましい活性水素化合物である。
【0039】
要素a)に特に好ましい化合物としては、室温で液体であるアルコキシル化脂肪族アミンジオールおよびアルコキシル化脂肪族アミドジオールを挙げることができる。このような化合物は、1個のアルキル基および好ましくは2個のヒドロキシアルキルまたはポリオキシアルキレン基が窒素原子に結合していて、以下の式によって示される一般的な化学構造を有する第三アミンから、通常、選択される。
【0040】
【化1】

(II)
(ここで、
(1) R1は直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和アルキルであり、6〜40の炭素原子、好ましくは8〜20の炭素原子、より好ましくは10〜18の炭素原子、最も好ましくは12〜18の炭素原子を有するラジカルである。特に好ましいのは、R1が1〜17の炭素原子を有する脂肪アルキルであって、ヤシ油、ステアリル、大豆、牛脂、水素化牛脂、オレイルおよびそれらの混合物などであり、
(2) R2は>C=Oまたは−CH2−であり、
(3) R3は水素またはメチルである。)
使用されるときのオキシアルキレン基は次の式で示される。
【0041】
【化2】

【0042】
ここで、R3は水素またはメチル基であり、xは1または2であり、好ましくはエトキシル、プロポキシまたはそれらの混合物である。xまたはyの少なくとも1つは少なくとも1であり、好ましくはxおよびyの両方が少なくとも1であり、x+yの合計が1〜40、好ましくは2〜30、最も好ましくは2〜20である。
【0043】
この発明に使用することのできる、式(II)で示されるアルコキシル化脂肪族アミンジオールの例としては、ウィトコ株式会社(Witco Corporation)の商品名バロニック(Varonic)、およびアクゾケミーアメリカ(Akzo Chemie America)のエソミーン(Ethomeen)として入手することができる。「エソミーン」の商品名を持つ化学製品は、様々な(一本の鎖に対して12〜18の炭素原子を有する)脂肪源から得られる1つの脂肪アルキル基と窒素原子に結合している2つ以上のポリオキシエチレン基とを有する第三アミンである。この発明においては、2つのポリオキシエチレン基を有する化学商品が有用である。
【0044】
室温で液体である低分子量化合物が特に使用に適している。
【0045】
本発明の要素(a)として使用することのできるアミノアルコールは1個の第一または第二アミノ基および1個以上の水酸基を有しているのがよい。使用することのできるアミノアルコールの例としては、モノエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、3-アミノ-1-プロパノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノールおよびそれらの混合物を挙げることができる。3以上の活性水素基を有する化合物を含有する、より官能性の高い活性水素を全ジオールの一部分として使用してもよい。しかしながら、そのような活性水素を使用すると架橋されたゲルの形成につながることがあり、本発明が使用される有機調合品という環境下では不適切であるので、ある状況下に限って使用するのがよいかもしれない。
【0046】
ある場合においては、1,6-ヘキサンジオールのような固体が有効であることがわかっているが、化合物a)は室温で液体であると共に液体の反応生成物が得られる可能性を最大にするために低分子量であるのが最も好ましい。
【0047】
要素b)に使用することのできる化合物は、化合物a)の活性水素部分と反応することのできる少なくとも2つの部分を有する化合物であれば、いかなるものでもよい。好ましくは、該活性機能部分はカルボニル基を含有する化合物から選択されるのがよい。これらの化合物は、一種以上のポリカルボン酸または一種以上のポリイソシアネートのいずれか、および両者の混合物から選択される。好ましいのは一種以上のポリカルボン酸である。
【0048】
この発明に使用することのできるポリカルボン酸は、芳香族、脂肪族または脂環族、直鎖または分岐鎖、飽和または不飽和ジカルボン酸であって、少なくとも2個の炭素原子、より好ましくは3〜40個の炭素原子から選択されるのがよい。使用することのできる製造物の例としては、アジピン酸、蓚酸、マロン酸、琥珀酸、グルタル酸、ペラルゴン酸、スベリン酸、アゼライン酸、ウンデカンジオン酸(undecanedioic acid)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジオン酸(dodecanedioic acid)、ヘキサデカンジオン酸(hexadecanedioic acid)、ドコサンジオン酸(docosanedioic acid)、マレイン酸、およびフマル酸等を挙げることができるが、これらの中でもアジピン酸が好ましい。同様に、ポリブタジエンジカルボン酸などの重合性の多酸を使用することができる。ポリカルボン酸という用語はヒドロキシ置換ジカルボン酸およびオキサジカルボン酸を含む。ヒドロキシ置換ジカルボン酸の典型例は、酒石酸、クエン酸およびヒドロキシイソフタル酸である。使用に適するオキサジカルボン酸の代表は3,6,9-トリオキサウンデカンジオン酸(trioxaundecanedioic acid)およびポリグリコール二酸である。
【0049】
炭素原子が16〜20個である炭素鎖を有する脂肪酸のオリゴマーのジカルボン酸は化合物b)として好ましい。脂肪酸の例としては、大豆油、タル油、トウモロコシ油、アマニ油、綿実油、ヒマシ油、パンヤ実油、米ぬか油、およびそれらの混合物を挙げることができる。さらに好ましいのは、よく「二量体酸」と称される、二量化された脂肪酸から実質的になる脂肪酸のオリゴマーである。これらの二量化された脂肪酸は、二塩基酸の少なくとも75重量%を構成する。オリゴマー化された脂肪酸は約8重量%未満である程度にモノマー量が少ないのが好ましい。さらに、オリゴマー化された脂肪酸は約20重量%に満たない程度に多塩基酸の含有量が少ない。エメリー工業(Emery Industries)から商品名エンポールダイマーアシド(Empol Dimer Acids)で市販されている二量体酸、およびユニケマインターナショナル(Unichema, International)からプリポールダイマーアシド(Pripol Dimer Acids)として市販されている二量体酸を使用することができる。使用に適する二量体酸の市販品の例は、エンポール1004(Empol 1004)、エンポール1008(Empol 1008)、エンポール1018(Empol 1018)、エンポール1016(Empol 1016)等である。ポリカルボン酸の混合物も使用することができる。エンポール二量体酸はC18脂肪酸の重合によって製造された粘稠性を有する液体である。実際には、この製品は二塩基酸、三塩基酸および一塩基酸の混合物である。一塩基酸は重合で未反応のC18脂肪酸である。二塩基酸、即ち純二量体酸は、実質的に2つのアルキル側鎖を有する長鎖ジカルボン酸の構造を有するC36脂肪族二塩基酸である。この構造中には、少なくとも1つのエチレン結合と二量体酸を形成する2つの不飽和脂肪酸分子の重合に起因する他の結合とが含まれているようである。三塩基酸、即ち純三量体酸は、その構造が二量体酸の構造に類似しているが、さらに18の炭素原子を有しているためにより複雑になっているC54長鎖トリカルボン酸である。エンポール二量体酸(Empol Dimer Acids)は75重量%以上の二塩基酸を含有している。
【0050】
ジカルボン酸に加えて、3個以上のカルボン酸基を含有する多塩基酸も使用することができる。これらの多塩基酸の代表的な例としては、トリメリット酸、トリメシン酸、クエン酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸などである。3個以上のカルボン酸基を含有する重合多塩基酸も多塩基酸の定義に含まれる。特に好ましい重合多塩基酸は炭素数48〜60の炭素鎖を有する脂肪酸である。3個のカルボン酸基を有する重合性多塩基酸は「三量体酸」として知られている。これらの三量体酸はエメリー(Emery)グループのヘンケル株式会社(Henkel Corporation)から商品名エンポール(Empol)で、ユニオンキャンプ株式会社(Union Camp Corporation)からユニダイン(Unidyne)として購入することができる。これらの三量体酸の代表例は、エンポール1040(Empol 1040)、エンポール1041(Empol 1041)、エンポール1052(Empol 1052)およびユニダイム60(Unidyme 60)である。エンポールの一般的な説明については、先の記載を参照されたい。ユニダイム60(Unidyme 60)は約63%のC54三塩基酸からなる三量体酸と、少量のそれよりも分子量の大きい多塩基酸と、約37%の二量体酸とを含有する。これらの二量体酸および三量体酸はC18不飽和脂肪酸の重合によって作られる。C18不飽和脂肪酸はオレイン酸、リノール酸またはそれらの混合物である。最も好ましい三量体はエンポール1040(Empol 1040)である。エンポール1040は実質的に多塩基酸(67重量%)と、二塩基酸(31重量%)と、一塩基酸(2重量%)とからなっている。酸の使用量は重要な意味を持っている。使用量が過剰であると、高弾性で不溶性の材料ができてしまう場合がある。
【0051】
本発明で使用することのできるポリイソシアネートは一分子当たり少なくとも2個のイソシアネートを含有する、直鎖状または分岐脂肪族、芳香族または脂環式化合物である。このようなポリイソシアネートは、2以上の未反応イソシアネート部分を有し、平均分子量が約500〜約2000であるプレポリマーの形態であってもよい。前記ポリイソシアネートは、一分子当たり2個のイソシアネート部分を有しているのが好ましい。より機能性の高いポリイソシアネートを必要なイソシアネートの全量の一部分として使用してもよい。しかしながら、本発明の目的を達成するのに適さない架橋した不溶性のゲルを形成する可能性があるので、より機能性の高いポリイソシアネートの使用は制限される。
【0052】
本発明の組成物を調製するのに使用することのできるポリイソシアネートの例としては、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ジイソシアネートヘキサン、1,10-デカメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4'-メチレンビス(イソシアネートシクロヘキサン)、1-イソシアネート-3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、m-およびp-フェニレンジイソシアネート、2,6-および2,4-トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4-クロロ-1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4'-ビフェニレンジイソシアネート、4,4'-メチレンジフェニルイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5'-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、およびヘンケル株式会社によって「DDI 1410」という商品名で販売されている二量体酸を基材とするC36二量体酸ジイソシアネートを挙げることができる。「DDI 1410ジイソシアネート」は36個の炭素原子を有する二量体化脂肪酸主鎖である長鎖を基礎とする脂肪族ジイソシアネートである。この製造物は、広い範囲の極性および無極性溶媒に対して優れた溶解性を有する低粘稠性の液体である。好ましいポリイソシアネートは、1,6-ヘキサンジイソシアネートおよびC36二量体ジイソシアネートである。
【0053】
本発明のポリマーを調製するのに、最終反応物が液体である限り、多種多様の反応体をさらに使用することができることを理解されたい。そのような反応体としては、ジアミン、最も好ましくはα,ω-ジアミンを含有する連鎖延長改質剤を例示することができる。
【0054】
本発明による優れた流動学的化合物はa)とb)との反応から形成される。化合物a)の量は約15から95重量部まで変化させることができ、化合物b)の量は約5から85重量部まで変化させることができる。反応が終了した後に未反応の化合物a)が実質的に残らないように、化合物a)の活性水素部分の量が化合物b)の反応部分の量より化学量論的に過剰であることが本発明にとって非常に重要である。
【0055】
この反応による生成物が、分子量が50000未満の液体であるポリマーであることが好ましい。高分子量の生成物は固体物を生じることが多い。このような固体は流動学的添加物として機能し得るが、本発明の目的に照らして適していない。本発明の流動学的添加物は完全な液体であり、注入することのできる分子量を有する。
【0056】
一緒に反応させる反応体を添加する順序は一般的に重要ではない。一般に、化合物a)とb)とは同時に添加される。化合物a)の活性水素部分は化合物b)の反応部分よりも化学量論的に過剰でなくてはならない。例えば、二量体酸および三量体酸と活性水素化合物との反応においては、反応体を全て一度に添加して反応させることができる。
【0057】
他の調製法としては、まず、化合物a)の活性水素部分が化学量論的に過剰である状態で化合物a)を二塩基酸と反応させ、次いで例えば三量体酸を加えて本発明の反応生成物を形成することもできる。
【0058】
ポリマーは事実として様々な分子長および分子量を有する様々な統計的置換化合物の混合物であるから、ポリマーは反応生成物として最も有効に定義される。この事柄を変えるつもりはないが、以下に本発明の理想的な反応生成物の化学式を示す。以下に反応生成物の化学式を示すことの目的は、その末端に反応性部分を保持しているポリマー反応生成物を提供する本発明の原理を示すことにある。活性水素基は各長鎖の右端にある。
【0059】
三量体酸で作られる本発明の製造物は次の一般的な理想式で示すことができる。
【0060】
【化3】

【0061】
ここで、Rは直鎖状または分岐状、飽和または不飽和の炭素数45〜60の脂肪アルキル基であり、R1は直鎖状または分岐状、飽和または不飽和の炭素数6〜40の脂肪基であり、R2は>C=Oまたは−CH2−であり、R3は水素またはメチルであり、各nは30〜40であり、各zは約60〜80であり、各x+yは1〜40であり、各mは1〜100(100を含む)である。
【0062】
本発明の反応生成物を調製する簡便な方法は以下の通りである。反応体の一般的な割合は、水を排除するための加熱に供する段階で、化合物(a)約3モルに対して化合物(b)2モルである。3モルのアルコキシル化アミンジオールと2モルの二量体化脂肪酸との温度200℃での反応において、形成された反応生成物は次の一般的な理想式によって示される。
【0063】
【化4】

【0064】
ここで、R1は6〜40の炭素原子を有する直鎖状または分岐状、飽和または不飽和脂肪アルキル基であり、R2は>C=Oまたは−CH2−であり、R3は水素またはメチル、nは30〜40、zは約60〜80、各x+yは1〜40、mの平均値は2である。
【0065】
上記生成物の約3モルをさらに約1モルの三量体化脂肪酸と、水を除去するために加熱して縮合反応させることによって、次の一般的な理想式によって表される反応生成物を形成することができる。ここで、各直鎖は末端に活性水素基を有していることに再度注意されたい。
【0066】
【化3】

【0067】
ここで、Rは45〜60の炭素原子を有する直鎖状または分岐状、飽和または不飽和脂肪アルキル基であり、R1は6〜40の炭素原子を有する直鎖状または分岐状、飽和または不飽和脂肪アルキル基であり、R2は>C=Oまたは−CH2−であり、R3は水素またはメチル、nは30〜40、zは約60〜80、各x+yは1〜40、mの平均値は2である。
【0068】
第一段階または第二段階のいずれかにおいて、特に三量体酸等の三官能基反応体との反応において、ある程度の架橋が起こる場合があることに注意されたい。ある程度の架橋は避けることができず、そのような架橋は室温で最終生成物が液体である限り拒否するものではなく、また、ある場合には有利となることもあり得る。しかしながら、過剰な架橋は望ましくなく、不溶性で扱うのが困難なゲルとなり、本発明の目的に照らして不適切である。
【0069】
機械的攪拌機、温度計、ディーン−スターク(Dean-Stark)アダプターまたは他の水回収器、および窒素導入口を備えた適当な反応容器に、反応体を過剰量(in increments)に仕込むことができる。反応は大気圧下または真空下で行うことができる。
【0070】
合成で用いられる反応温度は、反応体によって異なってくる。したがって、活性水素化合物とポリカルボン酸との反応で用いられる反応温度は、室温から300℃の範囲で好適に選択することができる。より好ましくは、反応温度は室温から250℃であり、最も好ましくは120℃〜220℃である。この反応中に形成される水は反応が進むにつれて縮合物として除去される。反応が完了した後に、得られた添加剤は冷却・放出される。活性水素化合物とイソシアネートとの反応において用いられる反応温度は、好ましくは、室温から150℃である。より好ましくは、反応温度は室温から110℃であり、最も好ましくは60℃〜100℃である。反応が完了した後に、もし使用していれば、溶媒をロータリーエバポレータによって除去するか、または80℃の真空オーブン中で一晩かけて溶媒を蒸発させておく。
【0071】
本発明の添加剤は触媒を用いて、または触媒を用いることなく合成することができる。もし、触媒を使用するのであれば、該触媒は縮合反応に通常使用されるものから選択することができる。このような触媒の例としては、硫酸、p-トルエンスルホン酸、ジブチル錫ジラウレート、テトラアルキル錫またはチタン化合物、水素化金属などであるが、これらに限定されない。活性水素含有化合物と二塩基酸との反応に最も好ましい触媒はp-トルエンスルホン酸であり、活性水素含有化合物とイソシアネートとの反応にはジブチル錫ジラウレートであり、触媒は一般に反応体の全重量の0.001〜2.5重量%の量で使用されるのがよい。
【0072】
本発明の添加剤は有機溶媒を使用して、または使用することなく製造することができる。流動学的制御剤の形態は溶媒のない注入可能な液体であるから、生成物は溶媒のない環境下で合成するのが好ましい。溶媒のない生成物は粘稠性のある注入可能な液体であるので、該生成物をより注入しやすくするためには合成中の溶解段階で溶媒を使用するのが適当である場合もある。合成中に溶媒が使用される場合は、溶媒の種類は、本発明の増粘剤成分と反応しない限り重要ではない。合成中に溶媒を使用するのが適切であれば、得られる流動学的添加剤が組み入れられる塗料組成物において同じ溶媒が使用されるのが好ましい場合がある。溶媒が使用されるような場合には、本発明の流動学的添加剤を合成するのに好ましい溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのようなエステル、トルエン、キシレンなどの芳香族溶媒、芳香族石油蒸留物およびその混合物、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族溶媒、並びに脂肪族石油蒸留物およびその混合物などである。最も好ましい溶媒は、エクソン化学株式会社(Exxon Chemical Company)からアロマティック100(Aromatic 100)という商品名で販売されている芳香族石油蒸留物である。溶媒を組み合わせて使用することは、組み合わせる溶媒間に相容性がある限り可能である。一般に、溶媒は反応混合物の0〜25重量%使用するのがよい。
【0073】
本発明の組成物は希釈剤を使用しない流動学的液体であって、該組成物が使用される系に効果的にチキソトロープ性を与えることができる。これらの性質は、以前から公知である固体チキソトロープに少なくとも匹敵するものである。使用に際しては、添加剤は溶媒を含有しなくてもよく、必要に応じて実質的に少量の溶媒を含有してもよい。製造または使用に都合がよいのであれば、有機溶媒または他の溶媒を約10〜25重量%よりも少ない量で使用することができる。本発明の流動学的添加剤は公知の添加剤を大幅に改良したものである。ある特定の型の流動学的添加剤に対して、本発明の流動学的添加剤は、優れた効率および分散特性と共に優れた流動性およびレベリング性を有している。従来技術に開示されている最近の固体流動学的添加剤に比べると、本発明の流動学的添加剤は流動学的液体として系に組み込むことができる。
【0074】
理論に縛られることはないが、本発明の液体流動学的添加剤は、添加剤自身の相互作用、および増粘される系の樹脂および顔料等の成分との相互作用によって、一部増粘剤としても機能すると考えられている。添加剤の構造において、活性水素基による水素結合の形成はランダムネットワークの構築に恐らく影響を与えており、それによって、増粘される組成物における樹脂および顔料とポリマーとの間の相互作用が増加されている。少量で使用される注入可能な液体がはるかに容積の大きな系に十分な粘度を与えることができることの理由が、このような増粘機構によって、多分、説明されるであろう。
【0075】
さらに、組成物系および溶液の先に示した結合性増粘機構は、一部、増粘分子における化合物a)と結びついていることの多い、官能基を有する側鎖部分間の物理的な相互作用にもよる。これらの部分の相互結合は、系に分散したときに非常に高粘度になる増粘分子の三次元ネットワークを形成する可能性がある。有機系に添加されたときには、鎖の末端基の相互作用に関連する複数の機構の組み合わせによって、増粘剤同士の結合が小さくなる。そして、増粘剤分子は有機組成物および増粘剤分子自身と(i) 相互作用および(ii)結合の両方を行い、このことによって新規で独特な方法で増粘すると考えられている。分散前の流動学的添加剤は注入可能な粘度の完全な液体である。
【0076】
本発明の液体流動学的添加剤は、様々な有機組成物および溶媒を基材とする組成物を増粘するのに使用することができ、この流動学的添加剤は非溶媒組成物にも使用することができる。例えば、ミネラルスピリット中のアルキドの溶液などの非水ポリマー溶液、非水媒体中のポリマー分散液(非水分散液と呼ばれる)、並びに非水塗料、塗料除去剤、接着剤、インク、シーラント、マスチック、コーキング材、顔料分散液および顔料捺染ペーストを含む非水溶媒は、本発明の流動学的添加剤によって、好都合に増粘される。この添加剤は、例えば、脂肪族および芳香族溶媒を基材とする組成物を増粘するのに特に有用であり、極性溶媒(ケトン、アルコール、エステル)を基材とする組成物にも使用することができる。有機組成物としては、「汎用(trade sales)」塗料などの脂肪族アルキド塗料、ワニス、エポキシ基材塗料、ポリエステル、変性アルキド基材塗料、並びに標準品質工業塗料、ある種のシーラントおよび不飽和ポリエステル樹脂調合品などのアルキド、ポリエステルおよびアクリル焼付エナメルを挙げることができる。この添加剤は、家庭器具用エナメルおよび設備用エナメルなどの、アルキド/メラミン系、アクリル/メラミン系およびポリエステル/メラミン系を基材とする組成物系を含有する芳香族ハイソリッド焼付エナメルに使用することができる。さらに、アルキドおよび変性アルキド調合品を基材とするハイソリッド自然乾燥エナメルにもこの添加剤を使用することができる。
【0077】
芳香族および脂肪族の溶媒を基材とする系に加えて、本発明の添加剤は石油基材および植物油基材の系においても使用することができる。石油系溶剤の典型例としては、マジーブロス(Magie Bros.)から販売されているマジーソル52(Magiesol 52)、サン株式会社(Sun Inc.)によって市販されているサンプリントHP 750(Sunprint HP 750)、およびエクソン化学会社(Exxon Chemical Company)から販売されているイクスプリント705(Exprint 705)を挙げることができる。植物油の例としては大豆油、ナタネ油、カノラ油、パーム油、米ぬか油などを挙げることができるが、これらに限定されない。本発明の添加剤は有機組成物中に容易に分散させることができ、改良された粘度特性を与えることができる。この添加剤は、その生産に通常使用されるあらゆる温度で組成物中に分散させることができる。
【0078】
この添加剤は容易に注入することのできる、またはポンプで扱うことのできる流動学的液体であるので、組成物調製の様々な段階で様々な組成物中に非常に容易に組み込むことができる。本発明の組成物は調合過程のあらゆる段階で添加することもできる。これら添加物は、調合処理の開始時、もしくは調合処理中に添加することができ、または後添加成分として添加することもできる。
【0079】
具体的な例において使用される流動学的添加剤の量は、増粘される有機溶媒を基材とする組成物の型、および所望される増粘の程度を含む数多くの要因によって決定される。しかしながら、一般的な使用量範囲は調合品100ガロンに対して約1.5〜約30ポンドである。重量基準では、流動学的添加剤の量は一般に、増粘される系の、約0.1〜約10重量%、好ましくは約0.1〜約8重量%、より好ましくは約0.1〜約5重量%、最も好ましくは約0.2〜約3重量%である。
【0080】
本発明の流動学的添加剤によって様々な有機被覆組成物は重要な長所を得ることができる。本発明の流動学的組成物は溶媒がないか(無VOC)実質的に低減された量の溶媒(低VOC)を有しているので、VOCの詳細に関わらず、被覆、インク、またはポリエステル系と相溶性がある。本発明の流動学的添加剤は増粘される系と相溶性を有しているので、殆ど全ての系において低活性温度で高い分散性を示す。さらに、流動学的添加剤は組成物に有効な流動学的性質を与えるので、これを使用することにより、垂直面に塗布したときに過度に垂れ下がったり流れたりしないように塗膜調合物を調製することができる。さらなる利点としては、本発明の流動学的添加剤は一般に塗膜組成物の黄変を起こすことがなく、とりわけ、元の塗料または塗膜組成物の光沢や粉砕物の細かさに重大な影響を与えることがない。
【実施例】
【0081】
(実施例)
以下の例で、本発明の例を示し、比較する。しかしながら、これらの例は本発明を限定するものを解釈すべきではない。
【0082】
以下の例において、エソメーンC-15(Ethomeen C-15)はポリオキシエチレン(5)ココアミン(CTFA適用名-PEG-5ココアミン)、エンポール1004(Empol 1004)はC18脂肪酸の二量体化によって製造された水素化二量体酸であり、エンポール1040(Empol 1040)はC18脂肪酸の重合によって製造された三量体酸であり、DDI 1410は36の炭素原子を有する長鎖二量化脂肪酸主鎖に基づく二量体酸ジイソシアネートである。エンポール1040(Empol 1040)に関しては、先に説明した。
【0083】
例1
この方法は二段階反応を説明している。
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、50.64グラム(0.12モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と45.36グラム(0.08モル)のエンポール1004(Empol 1004)を仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価とアミン価とがそれぞれ8未満と70未満とであって一定になっていたら、11.28グラム(0.013モル)のエンポール1040(Empol 1040)を仕込んで、酸価が8未満、アミン価が70未満にそれぞれなるまで反応を継続した。反応の終わりに、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0084】
例2
この方法は一段階反応を説明している。
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、50.64グラム(0.12モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と45.36グラム(0.08モル)のエンポール1004(Empol 1004)と11.28グラム(0.013モル)のエンポール1040(Empol 1040)とを仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価が8未満、アミン価が70未満にそれぞれなっている反応終了時に、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0085】
例3
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、63.3グラム(0.15モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と56.7グラム(0.10モル)のエンポール1004(Empol 1004)を仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価とアミン価とがそれぞれ8未満と70未満とであって一定になっていたら、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0086】
例4
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、52.75グラム(0.125モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と56.70グラム(0.10モル)のエンポール1004(Empol 1004)と7.20グラム(0.0083モル)のエンポール1040(Empol 1040)とを仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価が8未満、アミン価が70未満にそれぞれなっている反応終了時に、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0087】
例5
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、52.75グラム(0.125モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と56.7グラム(0.10モル)のエンポール1004(Empol 1004)を仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価とアミン価とがそれぞれ8未満と70未満とであって一定になっていたら、7.20グラム(0.0083モル)のエンポール1040(Empol 1040)を仕込んで、酸価が8未満、アミン価が70未満にそれぞれなるまで反応を継続した。反応の終わりに、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0088】
例6
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、50.64グラム(0.12モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と56.7グラム(0.10モル)のエンポール1004(Empol 1004)を仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価とアミン価とがそれぞれ8未満と70未満とであって一定になっていたら、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0089】
例7
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、50.64グラム(0.12モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と59.54グラム(0.105モル)のエンポール1004(Empol 1004)を仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価とアミン価とがそれぞれ8未満と70未満とであって一定になっていたら、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0090】
例8
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、51.19グラム(0.1213モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と0.64グラム(0.0038モル)のイソホロンジアミンと56.70グラム(0.10モル)のエンポール1004(Empol 1004)とを仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価とアミン価とがそれぞれ8未満と70未満とであって一定になっていたら、7.20グラム(0.0083モル)のエンポール1040(Empol 1040)を仕込んで、酸価が8未満、アミン価が70未満にそれぞれなるまで反応を継続した。反応の終わりに、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0091】
例9
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、42.20グラム(0.10モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と3.35グラム(0.02モル)のイソホロンジアミンと45.36グラム(0.08モル)のエンポール1004(Empol 1004)とを仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌しながら200℃にまで加熱した。水は170℃で蒸発し始めた。200℃になってから1時間経過した後から、アリコートを一時間毎に採取して酸価とアミン価とを測定した。酸価とアミン価とがそれぞれ8未満と70未満とであって一定になっていたら、11.54グラム(0.0133モル)のエンポール1040(Empol 1040)を仕込んで、酸価が8未満、アミン価が70未満にそれぞれなるまで反応を継続した。反応の終わりに、生成物を抜き出して室温まで冷却した。生成物は液体であった。
【0092】
例10
温度計、ディーン-シュタルクアダプター(Dean-Stark adapter)、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mlの4つ口丸底フラスコに、37.98グラム(0.09モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と140mLのメチルイソブチルケトンとを仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌した。次いで、メチルイソブチルケトンに溶かしたエソメーンC-15(Ethomeen C-15)を120℃にまで加熱し、溶液中の水分を共沸蒸留した。溶液を60℃にまで冷却し、36.00グラム(0.06モル)のDDI 1410と0.001グラムのジブチル錫ジラウレートとを反応容器に仕込んだ。反応混合物を2〜3時間90℃に保った。反応生成物を50℃に冷却し、80℃の真空オーブン中で一晩かけて溶媒を蒸発させた。生成物は液体であった。
【0093】
例11〜18
反応体を表1に示すように変えた以外は例10に概説した一般的な方法を採用した。全ての例において、室温で粘性があり注入可能な液体が得られた。
【0094】
【表1】

【0095】
例19
機械攪拌機、温度計、水冷式凝縮器、および窒素導入口を備えた250mLの3つ口丸底フラスコに、67.52グラム(0.16モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と140mLのメチルエチルケトンとを仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌した。次いで、メチルエチルケトンに溶かしたエソメーンC-15(Ethomeen C-15)を85℃にまで加熱し、溶液中の水分を共沸蒸留した。溶液を50℃にまで冷却し、19.51グラム(0.116モル)の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと2.4グラム(0.004モル)のDDI 1410と0.001グラムのジブチル錫ジラウレートとを反応容器に仕込んだ。反応混合物を3〜4時間75℃に保った。反応生成物を50℃に冷却し、70℃の真空オーブン中で一晩かけて溶媒を蒸発させた。生成物は液体であった。
【0096】
例20
機械攪拌機、温度計、水冷式凝縮器、機械攪拌機および窒素導入口を備えた250mLの3つ口丸底フラスコに、62.67グラム(0.1485モル)のエソメーンC-15(Ethomeen C-15)と140mLのメチルエチルケトンとを仕込んだ。この混合物を窒素シール下に攪拌した。次いで、メチルエチルケトンに溶かしたエソメーンC-15(Ethomeen C-15)を86℃にまで加熱し、溶液中の水分を共沸蒸留した。溶液を50℃にまで冷却し、0.25グラムのイソホロンジアミンを仕込んだ。次いで、20.18グラム(0.12モル)の1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートと0.001グラムのジブチル錫ジラウレートとを反応容器に仕込んだ。反応混合物を3〜4時間75℃に保った。反応生成物を50℃に冷却し、70℃の真空オーブン中で一晩かけて溶媒を蒸発させた。生成物は液体であった。
【0097】
例21
反応体を表2に示すように変えた以外は、例20に概説した一般的な方法を採用した。例において、室温で粘性があり注入可能な液体が得られた。
【0098】
【表2】

【0099】
流動学的添加剤の評価
例1〜21で調製された液体材を、100ガロン当たり5ポンド(pphg)の添加量で低VOCエポキシ−ポリアミド2成分系に分散させ、各流動学的添加剤の有効性を実証するために数多くの試験が行われた。
【0100】
ハイソリッドポリエステル−メラミン焼付エナメル塗料の調製方法および成分は配合表Aに記載されている。強力50 mm径羽根を備えた高速ディソルバーであるディスパーマット モデルCV(Dispermat model CV)で成分を混合した。
【0101】
塗料を調製した後に室温で一晩平衡させ、塗料の性質を以下に示すようにして測定した。
【0102】
(1) 粉砕物の細かさ(分散性の指標となる)をASTM D1210-79に従ってワイドパスヘグマン計器を用いてヘグマン単位(Hegman units)で測定した。
(2) 10 RPMおよび100 RPMでのブルックフィールド粘度をASTM D2196-81に従ってブルックフィールドRVT型粘度計で測定した。粘度データから、チキソトロピー指数(TI)を次のようにして算出した。
チキソトロピー指数(TI)=10 RPM粘度÷ 100 RPM粘度
(3) 垂れ下がり抵抗は、ASTM D4400-84に従って、室温でレネタサグマルチノッチアプリケータ(Leneta Sag multi notch applicator)を用いてミル単位で測定した。
(4) いくつかの例においては、ストーマー粘度をASTM D562-81に従ってトーマスストーマー機器(Thomas Stormer Instrument)、モデル #09730-G15を用いてクレブス単位(Krebs Units(KU))で測定した。
(5) 光沢測定は、ASTM D523-80に従って60°および/または20°で行われた。配合表Aに従って塗料の垂れ下りを調製し、室温で24時間フィルムを硬化させた後に60°および/または20°での光沢を測定した。
(6) 明度をASTM E-308に従ってハンターラブ(Hunterlab)モデルD25-9で測定した。
【0103】
さらに、本発明による流動学的添加剤の試料を低VOCエポキシ−ポリアミド二成分塗料系に5pphgの添加量で配合して、先に記述した方法を用いて、ブルックフィールドおよびストーマー粘度、サグ並びに光沢を評価した。前記低VOCエポキシ−ポリアミド二成分塗料系の調製方法および成分は、以下の配合表Bに記されている。
試験の結果は表4に示されている。
【0104】
(比較例1)
流動学的添加剤を添加することなく、配合表Aに記載されている手順に従ってハイソリッドポリエステル焼付エナメル塗料を調製した。塗料の性質を評価して表3に示した。
【0105】
配合表A
ハイソリッドポリエステル−メラミン焼付エナメル塗料
材料 一般名 製造者 重量(g)
ポリエステル57− ハイソリッドポリエス McWhorter 407.3
5784 テル樹脂 Technologies
KRONOS2090 二酸化チタン NL INDUSTRIES, INC. 391.1
Byk-300 滑り助剤 Byk-Chemie,USA 1
流動学的添加剤 9
プロピレングリコ 溶媒 ARCO 19.6
ールモノメチルエ
ーテルアセテート
125°Fの温度を維持しながら15分間5,000RPMで分散。
メラミン 2347 メラミン樹脂 McWhorter 122.2
Technologies
VP-451 p-トルエンスルホン酸 Byk-Chemie,USA 9.8
のアミン塩
プロピレングリコ 溶媒 ARCO 211.2
ールモノメチルエ
ーテルアセテート
低速(2000RPM)で3分間混合。
【0106】
【表3】

【0107】
(比較例2)
流動学的添加剤を添加することなく、配合表Bに記載されている手順に従って低VOCエポキシ−ポリアミド二成分塗料を調製した。塗料の性質を評価して表4に示した。
【0108】
配合表B
0.6(Ibs/gal)VOCエポキシ−ポリアミド二成分塗膜
材料 一般名 製造者 重量(g)
パートA
Epon 828 エポキシ樹脂 SHELL CHEMICAL CO. 343.8
シリコーン樹脂 シリコーン樹脂 G.E.SILICON 7
SR 882 溶液
Nuosperse 700 リン酸エステル HULS AMERICA, INC. 1
界面活性剤
流動学的添加剤 14.3
3000RPMで5分間混合した後以下を添加。
TITANOX 2101 二酸化チタン NL INDUSTRIES, INC. 380
キシレン 溶媒 ASHLAND CHEMICAL CO. 26

130°Fにおいて15分間5,000RPMで分散させた後に速度を1,500RPMに低下させ、以下を添加。
Epon 828 エポキシ樹脂 SHELL CHEMICAL CO. 115.2
1,500RPMで3分間混合、そして冷却。
パートB
Ancamide 506 アミドアミン PACIFIC ANCHOR 129
CHEMICAL
ANCAMIDE 1693 環式アミン PACIFIC ANCHOR 129
Chemical
トルエン 溶媒 ASHLAND CHEMICAL CO. 32

Red Devil攪拌機で10分間振盪。
MixパートA 226グラムとパートB 74グラムを混合し、Red Devil攪拌機で3分間振盪。
【0109】
【表4】

【0110】
(結果の検討)
上に示したデータからわかるように、例1〜9に記載されている液体流動学的添加剤は、非水系において、優れた粘性結果、抗垂れ抵抗性、および高チキソトロピー指数を示す効果的な流動学的添加剤である。表4に示されているように、例10〜21の添加剤は、エポキシ−ポリアミド二成分塗料系において、例1〜9よりは低いが依然として有用な抗垂れ抵抗性を有している。したがって、全ての例のポリマーが、比較例2のものよりも、ブルックフィールドおよびストーマー粘度、TI並びに垂れ抵抗性においてより効果的であることがわかる。
【0111】
上記データよりわかるように、非水系におけるいくつかの比較例に比べて、本発明の液体流動学的添加剤は優れた粘性成績を有する効果的な塗料添加剤であると言うことができる。
【0112】
本発明についてこのように記述してきたが、本発明は様々に変更することができ、明らかな多種多様の改質を行うことができるのは自明である。このような変更は先に記載した特許請求の範囲および精神から乖離するものとは見なされず、本発明の精神によって包摂されるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 一種以上の活性水素化合物(但し、該活性水素化合物は少なくとも2個の活性水素部分を有する)と、
b) 前記(a)の活性水素部分と反応することのできる少なくとも2つの反応性部分を有する一種以上の化合物
(但し、化合物(a)の活性水素部分は、化合物(b)の反応性部分よりも化学量論的に過剰である)との反応から得られ、その末端部に少なくとも2個の活性水素部分を有する反応生成物を含有する、実質的に希釈剤を含んでいないときに液体で、室温で注入可能であり、このような系にチキソトロピーを与える、非水系用流動学的添加剤。
【請求項2】
前記a)の一種以上の活性水素化合物は、式(H-X)m-R-(Y-H)n(但し、XおよびYはヘテロ原子よりなる群から独立に選択され、mおよびnは≧1であり、Rは2〜100の炭素原子を含有する基を示す。)を有する請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
前記ヘテロ原子が酸素および窒素よりなる群から選択される請求項2に記載の添加剤。
【請求項4】
前記反応生成物が
a) 約15〜95重量部の化合物a)と、
b) 約5〜85重量部の化合物b)とからなり、
化合物a)の活性水素部分が化合物b)の反応性部分よりも化学量論的に過剰であり、前記反応生成物がその末端部に少なくとも2個の活性水素部分を有する請求項1に記載の添加剤。
【請求項5】
化合物a)がポリオール、アミノアルコールおよびジアミンよりなる群から選択される請求項1に記載の添加剤。
【請求項6】
前記ポリオールが一種以上のポリエーテルポリオールである請求項5に記載の添加剤。
【請求項7】
前記ポリエーテルポリオールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(エチレン−プロピレン)グリコール、ポリブチレンオキサイドおよびポリテトラヒドロフランよりなる群から選択される請求項6に記載の添加剤。
【請求項8】
化合物a)が、室温で液体であるアルコキシル化脂肪族アミンジオールおよびアルコキシル化アミドジオールよりなる群から選択される請求項1に記載の添加剤。
【請求項9】
一種以上のジオールが1つのアルキル基を有する第三アミンよりなる群から選択される請求項8に記載の添加剤。
【請求項10】
化合物a)がポリオキシエチレン(5)ココアミンである請求項1に記載の添加剤。
【請求項11】
化合物b)が一種以上のポリカルボン酸である請求項1に記載の添加剤。
【請求項12】
化合物b)がポリイソシアネートである請求項1に記載の添加剤。
【請求項13】
化合物b)が1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートである請求項12に記載の添加剤。
【請求項14】
化合物b)が二種以上の異なる化合物の混合物である請求項1に記載の添加剤。
【請求項15】
請求項1の添加剤を含有する非水組成物系。
【請求項16】
前記非水組成物系が、塗料、塗膜、インク、エポキシおよびポリエステルよりなる群から選択される請求項15に記載の非水組成物系。
【請求項17】
前記非水組成物系が塗料である請求項15に記載の非水組成物系。
【請求項18】
a) ポリオール、アミノアルコールおよびジアミンよりなる群から選択される一種以上の化合物と、
b) ポリカルボン酸およびポリイソシアネートよりなる群から選択される一種以上の化合物
(但し、化合物(a)の活性水素部分は、化合物(b)の反応性部分よりも化学量論的に過剰である)との反応から得られ、その末端部に少なくとも2個の活性水素部分を有する反応生成物を含有する、室温で注入可能であり、このような系にチキソトロピーを与える、非水系用液体流動学的添加剤。
【請求項19】
化合物a)が前記反応生成物の約15〜95重量部を占める請求項18に記載の添加剤。
【請求項20】
化合物a)が1,2-エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、1,4-および1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール並びにそれらの混合物よりなる群から選択されるポリオールである請求項18に記載の添加剤。
【請求項21】
化合物a)が一種以上のアルコキシル化脂肪族アミンジオールである請求項18に記載の添加剤。
【請求項22】
化合物a)が、次式:
【化1】

(但し、
(1) R1は直鎖状または分岐鎖状の飽和または不飽和アルキルであり、6〜40の炭素原子を有するラジカルであり、
(2) R2は>C=Oまたは−CH2−であり、
(3) R3は水素またはメチルである。)
で示される一般的な化学構造を有する1または2のアルキル基を有する第三アミンから選択される、一種以上の液体アルコキシル化脂肪族アミンジオールまたはアルコキシル化脂肪族アミドジオールである請求項21に記載の添加剤。
【請求項23】
1が10〜18の炭素原子を有する請求項22に記載の添加剤。
【請求項24】
1が12〜18の炭素原子を有する脂肪アルキルである請求項22に記載の添加剤。
【請求項25】
前記脂肪アルキルがヤシ油、ステアリル、大豆、牛脂、水素化牛脂、オレイルおよびそれらの混合物よりなる群から選択される請求項24に記載の添加剤。
【請求項26】
前記反応生成物がその末端部に2つの活性水素部分を有している請求項18に記載の添加剤。
【請求項27】
希釈剤に溶解させた請求項18に記載の添加剤。
【請求項28】
請求項18の添加剤を含有する非水組成物系。
【請求項29】
塗料、塗膜、インク、エポキシおよびポリエステルよりなる群から選択される請求項28に記載の組成物系。

【公開番号】特開2010−242099(P2010−242099A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160884(P2010−160884)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【分割の表示】特願平11−35548の分割
【原出願日】平成11年2月15日(1999.2.15)
【出願人】(501121831)エレメンティス スペシャルティーズ,インコーポレイテッド., (4)
【住所又は居所原語表記】P.O.BOX 700,329 Wrckoffs Mill Road,Hightstown,NJ 08520 U.S.A.
【Fターム(参考)】