説明

非水電解液二次電池の製造方法

【課題】長寿命駆動が可能な非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】負極結着剤と、充放電による体積変化率が異なる複数種の負極活物質を含み、かつ体積変化率の最も大きい負極活物質の割合が負極活物質全体の5質量部より多く95質量部より少ない負極を有する非水電解液二次電池を製造するにあたり、前記電極素子を内包する前記外装体中に、前記非水電解液を注液する第1の工程と、前記第1の工程で得られたセルを少なくとも1回充電する第2の工程と、前記第2の工程の開始時刻から5時間以上経過させる第3の工程と、前記第3の工程を経たセルの前記外装体中に、以下で規定されるA値の0.5〜2.0倍質量の前記非水電解液を注液する第4の工程とを行う。
A(g)=非水電解液の密度(g/ml)×[(第4の工程開始時のセル体積(ml))−(第1の工程終了時のセル体積(ml))]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に係る実施形態は、非水電解液二次電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコン、携帯電話、電気自動車などの急速な市場拡大に伴い、高エネルギー密度の二次電池が求められている。二次電池としては、特に、非水電解液二次電池やリチウムイオン二次電池の開発が進められている。高エネルギー密度の非水電解液二次電池を得る手段として、容量の大きな負極材料を用いる方法や、安定性に優れた非水電解液を使用する方法などが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ケイ素の酸化物またはケイ酸塩を二次電池の負極活物質に利用することが開示されている。特許文献2には、リチウムイオンを吸蔵放出し得る炭素材料粒子と、リチウムと合金可能な金属粒子と、リチウムイオンを吸蔵放出し得る酸化物粒子を含む活物質層を備えた二次電池用負極が開示されている。特許文献3には、ケイ素の微結晶がケイ素化合物に分散した構造を有する粒子の表面を炭素でコーティングした二次電池用負極材料が開示されている。
【0004】
特許文献4および特許文献5には、負極活物質がケイ素を含む場合に、負極用結着剤としてポリイミドを用いることが記載されている。
【0005】
特許文献6には、電解液を注入し、注入口の封止工程より前に、少なくとも1回の充電工程を有するリチウムイオン二次電池の製造方法が開示されている。また、特許文献7には、注液後、充電し、静置し、放電し、2回目の注液を行うリチウムイオン二次電池の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−325765号公報
【特許文献2】特開2003−123740号公報
【特許文献3】特開2004−47404号公報
【特許文献4】特開2004−22433号公報
【特許文献5】特開2007−95670号公報
【特許文献6】特開2006−260864号公報
【特許文献7】特開2009−199756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたケイ素の酸化物を負極活物質に利用した二次電池を45℃以上で充放電をさせると、充放電サイクルに伴う容量低下が著しく大きいという問題点があった。特許文献2に記載された二次電池用負極は、3種の成分の充放電電位の違いや膨張収縮率の違いにより、リチウムを吸蔵放出する際、負極全体としての体積変化を緩和させる効果があるが、非水電解液二次電池の製造方法に関する詳細な記述や、非水電解液二次電池を形成する上で不可欠な結着剤、電解液、電極素子構造、および外装体について、十分に検討されていない点が多く見られた。特許文献3に記載された二次電池用負極材料も、負極全体として体積変化を緩和させる効果があるが、非水電解液二次電池の製造方法に関する詳細な記述や、非水電解液二次電池を形成する上で不可欠な結着剤、電解液、電極素子構造、および外装体について、十分に検討されていない点が多く見られた。
【0008】
特許文献4および特許文献5では、負極活物質の状態に関する検討が不十分であることに加え、非水電解液二次電池の製造方法に関する詳細な記述や、非水電解液二次電池を形成する上で不可欠な電解液、電極素子構造、および外装体について、十分に検討されていない点が多く見られた。
【0009】
特許文献6では、ガス発生による膨れを回避するために封止工程を遅らせているが、電極活物質に合わせた電解液量の最適化は行われていなかった。また、特許文献7では、一部の負極活物質を用いた系では一定の効果が得られたが、特定の負極活物質を用いた系において、2回目の注液工程で注液する電解液量が少なすぎて、目的とした効果が得られなかった。
【0010】
そこで、本発明に係る実施形態は、長寿命駆動が可能な非水電解液二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る実施形態は、正極および負極が対向配置された電極素子と、非水電解液と、前記電極素子および前記非水電解液を内包する外装体とを有し、前記負極が、負極結着剤と、充放電による体積変化率が異なる複数種の負極活物質を含み、かつ体積変化率の最も大きい負極活物質の割合が負極活物質全体の5質量部より多く95質量部より少ない非水電解液二次電池の製造方法であって、
前記電極素子を内包する前記外装体中に、前記非水電解液を注液する第1の工程と、
前記第1の工程で得られたセルを少なくとも1回充電する第2の工程と、
前記第2の工程の開始時刻から5時間以上経過させる第3の工程と、
前記第3の工程を経たセルの前記外装体中に、以下で規定されるA値の0.5〜2.0倍質量の前記非水電解液を注液する第4の工程と
を有することを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法である。
A(g)=非水電解液の密度(g/ml)×[(第3の工程開始時のセル体積(ml))−(第1の工程終了時のセル体積(ml))]
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る実施形態によれば、長寿命駆動が可能な非水電解液二次電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】積層ラミネート型の二次電池が有する電極素子の構造を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について、詳細に説明する。
【0015】
本実施形態に係る非水電解液二次電池は、正極および負極が対向配置された電極素子と、非水電解液とが外装体に内包されている。非水電解液二次電池の形状は、円筒型、扁平捲回角型、積層角型、コイン型、扁平捲回ラミネート型および積層ラミネート型のいずれでもよいが、積層ラミネート型が好ましい。以下、積層ラミネート型の非水電解液二次電池について説明する。
【0016】
図1は、積層ラミネート型の非水電解液二次電池が有する電極素子の構造を示す模式的断面図である。この電極素子は、正極cの複数および負極aの複数が、セパレータbを挟みつつ交互に積み重ねられて形成されている。各正極cが有する正極集電体eは、正極活物質に覆われていない端部で互いに溶接されて電気的に接続され、さらにその溶接箇所に正極端子fが溶接されている。各負極aが有する負極集電体dは、負極活物質に覆われていない端部で互いに溶接されて電気的に接続され、さらにその溶接箇所に負極端子gが溶接されている。なお、正極端子fと負極端子gは、短絡しなければ積層体の4辺のうち同じ辺に位置していてもよい。
【0017】
このような平面的な積層構造を有する電極素子は、Rの小さい部分(捲回構造の巻き芯に近い領域、あるいは、折り返す部位にあたる領域)がないため、捲回構造を持つ電極素子に比べて、充放電に伴う電極の体積変化に対する悪影響を受けにくいという利点がある。すなわち、体積膨張を起こしやすい活物質を用いた電極素子として有効である。一方で、捲回構造を持つ電極素子では電極が湾曲しているため、体積変化が生じた場合にその構造が歪みやすい。特に、シリコンやシリコン酸化物のように充放電に伴う体積変化が大きい負極活物質を用いた場合、捲回構造を持つ電極素子を用いた非水電解液二次電池では、充放電に伴う容量低下が大きくなる場合が多い。
【0018】
ところが、平面的な積層構造を持つ電極素子には、電極間にガスが発生した際に、その発生したガスが電極間に滞留しやすい問題点がある。これは、捲回構造を持つ電極素子の場合には電極に張力が働いているため電極間の間隔が広がりにくいのに対して、積層構造を持つ電極素子の場合には電極間の間隔が広がりやすいためである。外装体がアルミニウムラミネートフィルムであった場合、この問題は特に顕著となる。
【0019】
また、外装体がアルミニウムラミネートフィルムである場合、非水電解液を多く入れすぎると、あふれた非水電解液が封止部に付着し、封止時にアルミニウムラミネート表面の絶縁樹脂を溶かし、アルミニウムラミネート内部のアルミニウム材同士の短絡を招くことがある。この短絡は、それだけで電池の直接的な短絡に繋がる訳ではないが、磨耗やキズといった要因で、電極素子がアルミニウムラミネート内部のアルミニウム材に接触した場合には電池の短絡に繋がるので、避けるべき現象である。そのため、非水電解液があふれないよう注意すべきであるが、仕様によっては必要とする非水電解液が多くなるため、1回の注液工程で十分な非水電解液を注液することは難しかった。
【0020】
本実施形態では、充放電に伴う体積膨張の変化が大きい負極活物質を用いた場合は、充放電を伴う複数の注液工程により、十分な非水電解液を注液することが可能となることを見出した。換言するならば、上記の問題と解決方法に着目し、充放電に伴う体積膨張の変化が大きい負極活物質を用いた積層ラミネート型の非水電解液二次電池においても、長寿命駆動が可能となることを見出した。
【0021】
以下、非水電解液二次電池およびその製造方法の詳細を説明する。
【0022】
[1]負極
負極は、負極活物質が負極用結着剤によって負極集電体を覆うように結着されてなる。そして、本実施形態では、負極活物質として、充放電による体積変化率が異なる2種類以上の活物質を含み、かつ、その体積変化率の最も大きい負極活物質の割合が5質量部より多く95質量部より少ない。負極活物質として、リチウムと合金を作ることが可能なシリコンを用いることが好ましい。
【0023】
さらに、リチウムを吸蔵放出可能な炭素材料(a)と、リチウムと合金を作ることが可能な金属(b)と、リチウムを吸蔵放出可能な金属酸化物(c)とからなる負極活物質を用いることが好ましい。炭素材料(a)の割合は、炭素材料(a)、金属(b)および金属酸化物(c)の合計に対し、2質量%以上50質量%以下とすることが好ましく、2質量%以上30質量%以下とすることが好ましい。一般的に、金属(b)は充放電による体積変化率が他の成分に比べて大きく、この場合の金属(b)の割合は、炭素材料(a)、金属(b)および金属酸化物(c)の合計に対し、5質量%より多く95質量%より少なくするが、10質量%以上85質量%以下とすることが好ましい。金属酸化物(c)の割合は、炭素材料(a)、金属(b)および金属酸化物(c)の合計に対し、5質量%以上90質量%以下とすることが好ましく、5質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。
【0024】
炭素材料(a)としては、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物を用いることができる。ここで、結晶性の高い黒鉛は、電気伝導性が高く、銅などの金属からなる正極集電体との接着性および電圧平坦性が優れている。そのため、高出力・高エネルギーの二次電池を設計する上で有利である。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくい。そのため、長寿命・高ロバスト性の二次電池を設計する上で有利である。
【0025】
金属(b)としては、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La、またはこれらの2種以上の合金を用いることができる。特に、金属(b)としてシリコン(Si)を含むことが好ましい。
【0026】
金属酸化物(c)としては、酸化シリコン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物を用いることができる。特に、金属酸化物(c)として、金属(b)を構成する金属の酸化物を含むことが好ましく、酸化シリコンを含むことがより好ましい。これは、酸化シリコンは、比較的安定で他の化合物との反応を引き起こしにくいからである。また、金属酸化物(c)に、窒素、ホウ素およびイオウの中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%添加することもできる。こうすることで、金属酸化物(c)の電気伝導性を向上させることができる。
【0027】
金属酸化物(c)は、その全部または一部がアモルファス構造を有することが好ましい。アモルファス構造の金属酸化物(c)は、他の負極活物質である炭素材料(a)や金属(b)の体積膨張を抑制することができ、非水電解液の分解を抑制することもできる。このメカニズムは明確ではないが、金属酸化物(c)がアモルファス構造であることにより、炭素材料(a)と非水電解液の界面への皮膜形成に何らかの影響があるものと推定される。また、アモルファス構造は、結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する要素が比較的少ないと考えられる。なお、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有することは、エックス線回折測定(一般的なXRD測定)にて確認することができる。具体的には、金属酸化物(c)がアモルファス構造を有しない場合には、金属酸化物(c)に固有のピークが観測されるが、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造を有する場合は、金属酸化物(c)に固有ピークがブロードとなって観測される。
【0028】
また、金属(b)は、その全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることが好ましい。金属(b)の少なくとも一部を金属酸化物(c)中に分散させることで、負極全体としての体積膨張をより抑制することができ、非水電解液の分解も抑制することができる。なお、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散していることは、透過型電子顕微鏡観察(一般的なTEM観察)とエネルギー分散型X線分光法測定(一般的なEDX測定)を併用することで確認することができる。具体的には、金属粒子(b)を含むサンプルの断面を観察し、金属酸化物(c)中に分散している金属粒子(b)の酸素濃度を測定し、金属粒子(b)を構成している金属が酸化物となっていないことを確認することができる。
【0029】
このような炭素材料(a)と金属(b)と金属酸化物(c)との複合体において、金属酸化物(c)の全部または一部がアモルファス構造であり、金属(b)の全部または一部が金属酸化物(c)中に分散しているような負極活物質は、例えば、特許文献3で開示されているような方法で作製することができる。すなわち、金属酸化物(c)をメタンガスなどの有機物ガスを含む雰囲気下でCVD処理を行うことで、金属酸化物(c)中の金属(b)がナノクラスター化し、かつ表面が炭素材料(a)で被覆された複合体を得ることができる。この複合体を負極活物質として用いることができる。
【0030】
負極用結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。なかでも、結着性が強いことから、ポリイミドまたはポリアミドイミドが好ましい。負極における負極用結着剤の含有量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、負極活物質100質量部に対して、5〜25質量部が好ましい。
【0031】
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、銅、ニッケル、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
【0032】
負極活物質として炭素材料(a)を含む負極活物質層や、負極活物質として炭素材料(a)と金属(b)と金属酸化物(c)との複合体を含む負極活物質層は、一般的なスラリー塗布法で形成することができる。すなわち、負極集電体に、炭素材料(a)を含む負極スラリーを塗布・乾燥し、圧縮・成型することで形成することができる。負極スラリーは、炭素材料(a)や他の負極活物質を、負極結着剤とともに、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤中に分散混練することで得ることができる。負極スラリーの塗布方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法などが挙げられる。このとき、負極活物質層は、負極活物質が負極用結着剤によって負極集電体を覆うように結着されてなる。
【0033】
負極活物質としての金属(b)からなる負極活物質層は、前述したスラリー塗布法に加え、融液冷却方式、液体急冷方式、アトマイズ方式、真空蒸着方式、スパッタリング方式、プラズマCVD方式、光CVD方式、熱CVD方式、ゾル−ゲル方式などの方式で形成することができる。また、負極活物質としての金属酸化物(c)からなる負極活物質層は、前述したスラリー塗布法に加え、蒸着法、CVD法、スパッタリング法などの方式で形成することができる。さらに、あらかじめ負極活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法で負極集電体となる金属の薄膜を形成するような方法で複合負極を作製することもできる。
【0034】
[2]正極
正極は、例えば、正極活物質が正極用結着剤によって正極集電体を覆うように結着されてなる。
【0035】
正極活物質としては、LiMnO2、LixMn24(0<x<2)等の層状構造を持つマンガン酸リチウムまたはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;LiCoO2、LiNiO2またはこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの;LiNi1/3Co1/3Mn1/32などの特定の遷移金属が半数を超えないリチウム遷移金属酸化物;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの等が挙げられる。特に、LiαNiβCoγAlδ2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)、LiαNiβCoγMnδ2(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.6、γ≦0.2)、またはLiαNiβCoγMnδAlεMgζ2(1≦α≦1.2、β+γ+δ+ε+ζ=1、β≧0.5、0≦γ≦0.2、0.01≦δ≦0.49、0≦γ≦0.3、0≦γ≦0.1)が好ましい。正極活物質は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0036】
正極用結着剤としては、負極用結着剤と同様のものと用いることができる。なかでも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンが好ましい。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、正極活物質100質量部に対して、2〜10質量部が好ましい。
【0037】
正極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、銀、SUS、バルブメタル、およびそれらの合金を使用することができ、特に、アルミニウムが好ましい。
【0038】
正極活物質を含む正極活物質層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック等の炭素質微粒子が挙げられる。
【0039】
[3]非水電解液
非水電解液としては、非水系溶媒に支持塩を溶解したものを用いる。
【0040】
非水系溶媒は、非水電解液の溶媒として通常よく用いられるものであり、例えばカーボネート類、塩素化炭化水素、エーテル類、ケトン類、エステル類、ニトリル類等を用いることができる。非水系溶媒は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、非水系溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、およびそれらをフッ素置換したもの等の高誘電率の非水系溶媒の少なくとも一種と、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γ−ブチロラクトン以外のエステル類(特にリン酸エステル類)、エーテル類、およびそれらをフッ素置換したもの等の低誘電率の非水系溶媒の少なくとも一種を混合した混合液を用いることが好ましく、(ECもしくはPC、またはEC+PC)+(DEC、EMCおよびDMCからなる群より選ばれた1種、2種もしくは3種の混合液、またはそれらにフッ素化エーテルもしくはリン酸エステル類を混合したもの)が好ましい。
【0041】
フッ素化エーテルとしては、下記式(1):
H−(CX12−CX34n−CH2O−CX56−CX78−H (1)
[式(1)中、nは1、2、3または4であり、X1〜X8はそれぞれ独立にフッ素原子または水素原子である。ただし、X1〜X4の少なくとも1つはフッ素原子であり、X5〜X8の少なくとも1つはフッ素原子である。また、式(1)の化合物に結合しているフッ素原子と水素原子の原子比〔(フッ素原子の総数)/(水素原子の総数)〕≧1である。]
で表される化合物が好ましく、下記式(2):
H−(CF2−CF2n−CH2O−CF2−CF2−H (2)
[式(2)中、nは1または2である。]
がより好ましい。フッ素化エーテルは、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0042】
リン酸エステル類としては、トリエチルフォスフェート、トリス(2,2,2−トリフルオロエチル)ホスフェートを用いることができる。
【0043】
支持塩としては、LiPF6、LiAsF6、LiAlCl4、LiClO4、LiBF4、LiSbF6、LiCF3SO3、LiC49SO3、Li(CF3SO22、LiN(CF3SO22等のリチウム塩を用いることができる。支持塩は、一種を単独で、または二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
[4]セパレータ
セパレータとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等の多孔質フィルムや不織布を用いることができる。また、セパレータとしては、それらを積層したものを用いることもできる。
【0045】
[5]電極素子構造
電極素子構造としては、円筒型捲回構造、偏平型捲回構造、つづら折構造、積層構造などが挙げられるが、特に、積層構造が好ましい。平面的な積層構造を有する電極素子は、Rの小さい部分(捲回構造の巻き芯に近い領域または折り返す部位にあたる領域)がないため、充放電に伴う体積変化が大きい活物質を用いた場合、捲回構造を持つ電極素子に比べて、充放電に伴う電極の体積変化に対する悪影響を受けにくいという利点がある。
【0046】
[6]外装体
外装体としては、非水電解液に安定で、かつ十分な水蒸気バリア性を持つものであれば、適宜選択することができる。例えば、アルミニウムを主材とした缶、鉄やステンレスを取材とした缶、ラミネート樹脂などを用いることができる。特に、ラミネート樹脂が好ましい。ラミネート樹脂を外装体に用いた非水電解液二次電池の場合の外装体としては、アルミニウム、シリカをコーティングしたポリプロピレン、ポリエチレン等のラミネートフィルムを用いることができる。特に、汎用性やコスト面などの観点から、アルミニウムラミネートフィルムを用いることが好ましい。
【0047】
本実施形態では複数回に分けて非水電解液を注液するので、開封、注液および再封止が容易なラミネートフィルム外装体を用いることが特に好ましい。なお、開封作業の方法としては、(1)穴をあける、(2)予備部分を切断する、(3)2回目以降の注液口をあらかじめ用意しておきその注液口を開封する、などの方法が挙げられる。
【0048】
[7]製造方法
本実施形態に係る非水電解液二次電池の製造方法は、4つの工程を含む。以下、それらの詳細を説明する。
【0049】
まず、電極素子を内包する外装体中に、非水電解液を注液する(第1の工程)。第1の工程では、1種類の非水電解液を1度に注液してもよく、複数種類の非水電解液を1度に注液してもよく、1種類の非水電解液を複数回に分けて注液してもよく、複数種類の非水電解液を複数回に分けて注液してもよい。複数回の注液作業を行う際には、その間隔を数秒から数時間あけてもよい。
【0050】
次いで、第1の工程で得られたセルを少なくとも1回充電する(第2の工程)。第2の工程では、1度で満充電状態まで充電してもよく、複数回に分けて満充電状態まで充電してもよい。満充電状態は電圧で規定され、具体的には4.0〜4.4Vが好ましく、4.1V〜4.25Vがより好ましい。充電方法は、定電流定電圧充電が好ましい。その際の定電流値は、二次電池内に含まれる正極活物質の全てを1時間で充電できる電流値を1C電流値としたときに1C以下の電流値とすることが好ましく、0.02〜0.3Cの電流値とすることがより好ましい。また、充電を行う時間は、1〜20時間程度が好ましく、5〜12時間程度がより好ましい。充電後放電してもよいが、放電後は再度充電することが好ましい。
【0051】
次いで、第2の工程の開始時刻から5時間以上経過させる(第3の工程)。具体的には、第2の工程を経たセルを所定時間放置すればよい。このときのセルは、充電状態でもよく放電状態でもよいが、満充電状態で放置されることが好ましく、満充電状態で充電のための電流が流れない状態で放置されることがより好ましい。第2の工程の開始時刻から経過させる時間は、5時間以上であればよいが、24〜504時間とすることが好ましく、168〜336時間とすることがより好ましい。セル放置時の環境温度は、20〜60℃が好ましい。なお第2の工程の開始時刻から5時間以上の時間が確保されていれば、セル放置時の環境温度が高いほど、短い放置時間で目的とした効果を得られる。
【0052】
次いで、第3の工程を経たセルの外装体中に、非水電解液を再度注液する(第4の工程)。第4の工程では、1種類の非水電解液を1度に注液してもよく、複数種類の非水電解液を1度に注液してもよく、1種類の非水電解液を複数回に分けて注液してもよく、複数種類の非水電解液を複数回に分けて注液してもよい。複数回の注液作業を行う際には、その間隔を数秒から数時間あけてもよい。第4の工程は、第3の工程後すぐに行ってもよいが、第3の工程での環境温度によっては、当該電池の温度が室温になるまで待ってから行ってもよい。第4の工程は、セルが満充電状態のまま行ってもよいが、放電させてから行ってもよい。
【0053】
ただし、第4の工程で注液する非水電解液の量を、以下で規定されるA値の0.5〜2.0倍質量とする。より好ましくは、0.8〜1.2倍質量とする。なお、セル体積は、例えばアルキメデス法で測定することができる。
A(g)=非水電解液の密度(g/ml)×[(第4の工程開始時のセル体積(ml))−(第1の工程終了時のセル体積(ml))]
充放電による体積変化率が異なる複数種の負極活物質を含み、かつ、その体積変化率の最も大きい物質の割合が5質量部より多く95質量部より少ない場合、第2の工程により、電極内に空隙が発生しやすい。具体的には、体積変化率の異なる2種類の粒子がもたらす膨張・収縮に伴う電極内の粒子配列のズレによる空隙が発生しやすい。その後、第3の工程により、電極内の空隙に非水電解液が十分に拡散し、空隙に対し非水電解液が均一に配置される。そして、第4の工程により、非水電解液があふれることなく、外装体内に十分な量の非水電解液を具備する非水電解液二次電池が得られる。
【0054】
なお、本実施形態に係る製造方法は、リチウムイオン二次電池に限らず、ナトリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、アルミニウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池にも応用できる。
【実施例】
【0055】
以下、本実施形態を実施例により具体的に説明する。
【0056】
(実施例1)
金属(b)としての平均粒径5μmのシリコンと、金属酸化物(c)としての平均粒径13μmの非晶質酸化シリコン(SiOx、0<x≦2)とを、32:68の質量比で計量し、いわゆるメカニカルミリングで24時間混合して、負極活物質を得た。なお、この負極活物質において、金属(b)であるシリコンは、金属酸化物(c)である酸化シリコン(SiOx、0<x≦2)中に分散している。また、シリコンは、非晶質酸化シリコンより充放電による体積変化が大きい。得られた負極活物質(平均粒径D50=5μm)と、負極用結着剤としてのPVdF(株式会社クレハ製、商品名:KFポリマー#9210)とを、80:20の質量比で計量し、それらをn−メチルピロリドンと混合して、負極スラリーとした。負極スラリーを厚さ15μmの銅箔に1cm2当たり2.5mgの量となるように塗布した後に乾燥・プレスし、170mm×88mmに切断することで、負極を作製した。
【0057】
正極活物質としてのニッケル酸リチウム(LiNi0.80Co0.15Al0.152)と、導電補助材としてのカーボンブラックと、正極用結着剤としてのポリフッ化ビニリデンとを、90:5:5の質量比で計量し、それらをn−メチルピロリドンと混合して、正極スラリーとした。正極スラリーを厚さ20μmのアルミ箔に1cm2当たり20mgの量となるように塗布した後に乾燥・プレスし、166mm×84mmに切断することで、正極を作製した。
【0058】
得られた正極の8層と負極の9層を、セパレータとしてのポリプロピレン多孔質フィルムを挟みつつ交互に重ねた。正極活物質に覆われていない正極集電体および負極活物質に覆われていない負極集電体の端部をそれぞれ溶接し、さらにその溶接箇所に、アルミニウム製の正極端子およびニッケル製の負極端子をそれぞれ溶接して、平面的な積層構造を有する電極素子を得た。この電極素子を、外装体としてのアルミニウムラミネートフィルムで包み、タブが出ている2辺を熱シール機で封止した。1辺はアルミニウムラミネートの折り返し部のため、封止はしていない。
【0059】
次に、第1の工程として、外装体中に非水電解液を20g注液した。非水電解液としては、LiPF6を1モル/Lの濃度で含むEC/PC/DMC/EMC/DEC/HF2C−CF2−CH2−O−CF2−CF2H=10/10/10/10/20/40(体積比)の混合溶媒を用いた。この非水電解液の密度は、1.3g/mlであった。その後、真空包装機(TOSPAC製、商品名:V305GII)を用いて、0.1気圧以下まで減圧しつつ封止することで、非水電解液二次電池を作製した。
【0060】
次に、第2の工程として、当該電池を定電流定電圧充電(1回目)した。この時の充電電流は、当該電池内に含まれる正極活物質の全てを1時間で充電できる電流値を1C電流値とした場合における0.1C電流値とし、充電時間を10時間とした。その後1C電流値で放電し、1C電流値で満充電状態まで再充電した。第2の工程は室温で行った。
【0061】
次に、第3の工程として、第2の工程の開始時刻から15時間(管理時間)が経過するまで当該電池を放置した。第3の工程は、60℃環境下で行った。
【0062】
次に、第4の工程として、再度外装体中に非水電解液を注液した。なお、当該電池の体積変化量((第4の工程開始時のセル体積(ml))−(第1の工程終了時のセル体積(ml))、以下同様)は5mlであったので、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。なお、電池の体積は、アルキメデス法にて測定した。
【0063】
(実施例2)
負極用結着剤としてポリイミド(宇部興産株式会社製、商品名:UワニスA)を用い、負極スラリーを塗布した後に乾燥し、さらに窒素雰囲気下350℃の熱処理を行ったこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0064】
(実施例3)
一般式SiOで表される酸化シリコン粉末(酸化シリコンとシリコンとの混合物)を、メタンガスを含む雰囲気下1150℃で6時間CVD処理を行うことで、酸化シリコン中のシリコンがナノクラスター化し、かつ表面がカーボンで被覆されたシリコン−酸化シリコン−カーボン複合体(負極活物質)を得た。また、シリコンは、酸化シリコンおよびカーボンより充放電による体積変化が大きい。得られた負極活物質(平均粒径D50=5μm)と、負極用結着剤としてのポリイミド(宇部興産株式会社製、商品名:UワニスA)とを、80:20の質量比で計量し、それらをn−メチルピロリドンと混合して、負極スラリーとした。負極スラリーを厚さ10μmの銅箔の表面に1cm2当たり2.5mgの量となるように塗布した後に乾燥し、同様に裏面にも塗布・乾燥し、さらに窒素雰囲気下350℃の熱処理を行うことで、負極を作製した。
【0065】
上記のように作製した負極を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0066】
(比較例1)
黒鉛材料(平均粒径D50=20μm)と、負極用結着剤としてのポリイミド(宇部興産株式会社製、商品名:UワニスA)とを、80:20の質量比で計量し、それらをn−メチルピロリドンと混合して、負極スラリーとした。負極スラリーを厚さ15μmの銅箔に1cm2当たり18.0mgの量となるように塗布した後に乾燥・プレスし、さらに窒素雰囲気下350℃の熱処理を行った後、170mm×88mmに切断することで、負極を作製した。
【0067】
上記のように作製した負極を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は2.5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる3.25gの非水電解液を注液した。
【0068】
(実施例4)
第2の工程として、1回目の充電のみ行い、放電および再度の充電を行わなかったこと以外は、実施例3と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0069】
(実施例5)
第2の工程での1回目の充電を0.5C電流値で行い、充電時間を1時間とし、第3の工程で当該電池を放置する時間を第2の工程の開始時刻から第4の工程の開始時刻までの時間が5時間となるように調整したこと以外は、実施例3と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0070】
(実施例6)
第3の工程を60℃環境下で行うこととし、第3の工程で当該電池を放置する時間を第2の工程の開始時刻から第4の工程の開始時刻までの時間が168時間となるように調整したこと以外は、実施例3と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0071】
(実施例7)
第4の工程において、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の0.5倍となる3.25gの非水電解液を注液したこと以外は、実施例3と同様に実施した。
【0072】
(実施例8)
第4の工程において、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の2倍となる13gの非水電解液を注液したこと以外は、実施例3と同様に実施した。
【0073】
(実施例9)
負極用結着剤としてポリアミドイミド(東洋紡績株式会社製、商品名:バイロマックス(登録商標))を用いたこと以外は、実施例3と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0074】
(比較例2)
第2の工程での1回目の充電を0.5C電流値で行い、充電時間を1時間とし、第3の工程で当該電池を放置する時間を第2の工程の開始時刻から第4の工程の開始時刻までの時間が4時間となるように調整したこと以外は、実施例3と同様に実施した。ただし、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の0.25倍となる1.625gの非水電解液を注液した。
【0075】
(比較例3)
第2の工程を行わなわずに、第3の工程として、第1の工程の終了時刻から15時間が経過するまで当該電池を放置したこと以外は、実施例3と同様に実施した。ただし、当該電池の体積変化量は1mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の0.25倍となる0.325gの非水電解液を注液した。
【0076】
(比較例4)
第2の工程を行わなわずに、第3の工程として、第1の工程の終了時刻から4時間が経過するまで当該電池を放置したこと以外は、実施例3と同様に実施した。ただし、当該電池は体積変化を起こしていなかった(0ml)ので、第4の工程での非水電解液の注液も行わなかった(注液量:0g)。
【0077】
(比較例5)
第2の工程を行わなわずに、第3の工程として、第1の工程の終了時刻から15時間が経過するまで当該電池を放置したこと以外は、実施例3と同様に実施した。ただし、当該電池は体積変化を起こしていなかった(0ml)ので、第4の工程での非水電解液の注液も行わなかった(注液量:0g)。
【0078】
(比較例6)
第2の工程での1回目の充電を0.5C電流値で行い、充電時間を1時間とし、第3の工程で当該電池を放置する時間を第2の工程の開始時刻から第4の工程の開始時刻までの時間が4時間となるように調整したこと以外は、実施例3と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0079】
(比較例7)
第4の工程において、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の0.25倍となる1.625gの非水電解液を注液したこと以外は、実施例3と同様に実施した。
【0080】
(比較例8)
第4の工程において、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の2.5倍となる16.25gの非水電解液を注液したこと以外は、実施例3と同様に実施した。
【0081】
(実施例10)
平均粒径5μmのシリコンと平均粒径13μmの非晶質酸化シリコン(SiOx、0<x≦2)とを、25:75の質量比で計量し、いわゆるメカニカルミリングで24時間混合して、負極活物質を得たこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0082】
(実施例11)
平均粒径5μmのシリコンと平均粒径13μmの非晶質酸化シリコン(SiOx、0<x≦2)とを、85:15の質量比で計量し、いわゆるメカニカルミリングで24時間混合して、負極活物質を得たこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0083】
(実施例12)
金属(b)としての平均粒径5μmのスズと、金属酸化物(c)としての平均粒径13μmの非晶質酸化スズ(SnOx、0<x≦2)とを、85:15の質量比で計量し、いわゆるメカニカルミリングで24時間混合して、負極活物質を得たこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。また、スズは、非晶質酸化スズより充放電による体積変化が大きい。
【0084】
(比較例9)
平均粒径5μmのシリコンと平均粒径13μmの非晶質酸化シリコン(SiOx、0<x≦2)とを、5:95の質量比で計量し、いわゆるメカニカルミリングで24時間混合して、負極活物質を得たこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0085】
(比較例10)
平均粒径5μmのシリコンと平均粒径13μmの非晶質酸化シリコン(SiOx、0<x≦2)とを、95:5の質量比で計量し、いわゆるメカニカルミリングで24時間混合して、負極活物質を得たこと以外は、実施例1と同様に実施した。なお、当該電池の体積変化量は5mlであったので、第4の工程では、当該電池の体積変化量に非水電解液の密度をかけた値の1倍となる6.5gの非水電解液を注液した。
【0086】
(実施例13)
HF2C−CF2−CH2−O−CF2−CF2Hをトリエチルフォスフェート(PO(OCH2CH33)に変更したこと以外は、実施例1と同様に実施した。
【0087】
<評価>
作製した非水電解液二次電池に対し、60℃に保った恒温槽中で、2.5Vから4.1Vの電圧範囲で充放電を繰り返すサイクル試験を行い、容量維持率および体積変化を評価した。その試験結果を表1に示す。なお、表1中の「60℃50サイクル維持率」は、(50サイクル目の放電容量)/(1サイクル目の放電容量)(単位:%)を表す。また「60℃50サイクル体積変化」は、(50サイクル後のアルキメデス法による当該電池の体積)/(1サイクル前のアルキメデス法による当該電池の体積)(単位:%)を表す。なお、非水電解液のあふれが激しく、設定通りの非水電解液を注液することができなかった非水電解液二次電池は、NG品としてサイクル評価は行わなかった。
【0088】
【表1】

【0089】
表1に示すように、実施例1乃至13で作製した非水電解液二次電池の60℃50サイクル維持率と60℃50サイクル体積変化は、比較例1乃至10で作製した非水電解液二次電池のそれらよりも優れていた。この結果から、本実施形態により、長寿命駆動が可能な非水電解液二次電池を提供することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本実施形態は、電源を必要とするあらゆる産業分野、ならびに電気的エネルギーの輸送、貯蔵および供給に関する産業分野にて利用することができる。具体的には、携帯電話、ノートパソコンなどのモバイル機器の電源;電気自動車、ハイブリッドカー、電動バイク、電動アシスト自転車などの電動車両を含む、電車や衛星や潜水艦などの移動・輸送用媒体の電源;UPSなどのバックアップ電源;太陽光発電、風力発電などで発電した電力を貯める蓄電設備;などに、利用することができる。
【符号の説明】
【0091】
a 負極
b セパレータ
c 正極
d 負極集電体
e 正極集電体
f 正極端子
g 負極端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極が対向配置された電極素子と、非水電解液と、前記電極素子および前記非水電解液を内包する外装体とを有し、前記負極が、負極結着剤と、充放電による体積変化率が異なる複数種の負極活物質を含み、かつ、その体積変化率の最も大きい負極活物質の割合が負極活物質全体の5質量部より多く95質量部より少ない非水電解液二次電池の製造方法であって、
前記電極素子を内包する前記外装体中に、前記非水電解液を注液する第1の工程と、
前記第1の工程で得られたセルを少なくとも1回充電する第2の工程と、
前記第2の工程の開始時刻から5時間以上経過させる第3の工程と、
前記第3の工程を経たセルの前記外装体中に、以下で規定されるA値の0.5〜2.0倍質量の前記非水電解液を注液する第4の工程と
を有することを特徴とする非水電解液二次電池の製造方法。
A(g)=非水電解液の密度(g/ml)×[(第4の工程開始時のセル体積(ml))−(第1の工程終了時のセル体積(ml))]
【請求項2】
前記体積変化率の最も大きい負極活物質が、リチウムと合金を作ることが可能なシリコンであることを特徴とする請求項1に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項3】
前記負極活物質が、リチウムを吸蔵放出可能な炭素材料(a)と、リチウムと合金を作ることが可能な金属(b)と、リチウムを吸蔵放出可能な金属酸化物(c)とからなることを特徴とする請求項1または2に記載の非水電解液二次電池の製造方法。
【請求項4】
前記金属酸化物(c)が、前記金属(b)を構成する金属の酸化物であることを特徴とする請求項3に記載の非水電解液二次電池。
【請求項5】
前記負極結着剤が、ポリイミドまたはポリアミドイミドであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項6】
前記外装体が、アルミニウムラミネートフィルムであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項7】
前記電極素子が、平面的な積層構造を有していることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。
【請求項8】
前記非水電解液が、フッ素化エーテルまたはリン酸エステルを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−43691(P2012−43691A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184954(P2010−184954)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(310010081)NECエナジーデバイス株式会社 (112)
【Fターム(参考)】