非水電解液二次電池用負極
【課題】 充放電に起因する活物質の体積変化に起因する応力を緩和でき、負極の変形を防止し得る非水電解液二次電池用負極を提供すること。
【解決手段】 非水電解液二次電池用負極10は、活物質の粒子2aを含む活物質層2を備えている。活物質層2には、電解めっきによって析出した金属材料4が粒子間に浸透している。負極10は、その少なくとも一方の面において開孔し且つ活物質層2の厚み方向に延びる縦孔5を多数有している。電解液と接する一対の集電層3a,3bを更に備え、集電層3a,3b間に活物質層2が介在配置されている。
【解決手段】 非水電解液二次電池用負極10は、活物質の粒子2aを含む活物質層2を備えている。活物質層2には、電解めっきによって析出した金属材料4が粒子間に浸透している。負極10は、その少なくとも一方の面において開孔し且つ活物質層2の厚み方向に延びる縦孔5を多数有している。電解液と接する一対の集電層3a,3bを更に備え、集電層3a,3b間に活物質層2が介在配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池用の負極に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムと合金を作る金属元素とリチウムと合金を作らない金属元素を構成要素として有し、負極の電解液と接し正極と対向する表面及び出力端子につながる部分で、リチウムと合金を作らない金属元素の含有率が高いリチウム二次電池用の負極が提案されている(特許文献1参照)。この負極によれば、充放電に起因してリチウムと合金を作る金属元素が微粉化しても、リチウムと合金を作らない金属を介して導電性が保たれるとされている。
【0003】
前記の特許文献1には、負極の具体的な構造として、リチウムと合金を作る金属元素を含有する粉体状の部材を、結着剤で、リチウムと合金を作らない金属の集電部材に結着させた構造や、それを焼成した構造が提案されている。また、リチウムと合金を作る金属元素を含有する層の上に、リチウムと合金を作らない金属元素を配置することも提案されている。リチウムと合金を作らない金属元素は例えばめっきによって形成される。
【0004】
しかし、前記の特許文献1に記載の負極は、負極表面を覆う、リチウムと合金を作らない金属の層の厚さが50nm程度と非常に薄いことに起因して、十分な表面被覆率及び強度を得ることができない。その結果、充放電によって活物質が膨張収縮することに起因する体積変化による応力を十分に緩和できず、負極の著しい変形が生じてしまう。また活物質が膨張収縮することに起因して微粉化した場合に、その脱落を効果的に防止することができない。従って負極のサイクル特性を向上させることは容易でない。
【0005】
前記の特許文献とは別に、活物質層を貫通する孔を有する非水電解液二次電池用負極が提案されている(特許文献2参照)。しかしこの負極においては、活物質が膨張収縮することに起因して微粉化した場合に、導電性を維持させることは困難であるし、貫通孔の側壁からの活物質の脱落が起こる可能性がある。従って負極のサイクル特性を向上させることは容易でない。
【0006】
【特許文献1】特開平8−50922号公報
【特許文献2】特開2001−76761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る非水電解液二次電池用負極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、活物質の粒子を含む活物質層を備えた非水電解液二次電池用負極において、
前記活物質層には、電解めっきによって析出した金属材料が粒子間に浸透しており、また
前記負極の少なくとも一方の面において開孔し且つ前記活物質層の厚み方向に延びる縦孔を多数有することを特徴とする非水電解液二次電池用負極を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
また本発明は、前記負極を備えていることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、活物質層の厚さ方向に延びる縦孔が、充放電に起因する活物質の体積変化に起因する応力を十分に緩和することができるので、負極の著しい変形を効果的に防止することができる。従ってサイクル寿命が大幅に長くなり、充放電効率も高くなる。また、活物質層における活物質の粒子間に金属材料が析出しているので、充放電に起因して活物質の粒子が微粉化しても、電気的に孤立した活物質が存在することが効果的に防止され、十分な集電性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。先ず図1に示す第1の実施形態の負極について説明する。本実施形態の負極10は、電解液と接する表裏一対の面である第1の面1a及び第2の面1bを有している。負極10は、活物質層2を備えている。活物質層2は、該層2の各面にそれぞれ形成された一対の集電層3a,3bによって連続的に被覆されている。各集電層3a,3bは、第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含んでいる。また図1から明らかなように電極10は、従来の電極に用いられてきた集電体と呼ばれる集電用の厚膜導電体(例えば厚さ12〜35μm程度の金属箔やエキスパンドメタル)を有していない。
【0012】
集電層3a,3bは、本実施形態の負極10における集電機能を担っている。また集電層3a,3bは、活物質層2に含まれる活物質が充放電に起因して体積変化し微粉化して脱落することを防止するためにも用いられている。
【0013】
各集電層3a,3bは、従来の電極に用いられている集電用の厚膜導電体よりもその厚みが薄いものである。具体的には0.3〜10μm程度、特に0.4〜8μm程度、とりわけ0.5〜5μm程度の薄層であることが好ましい。これによって、必要最小限の厚みで活物質層2をほぼ満遍なく連続的に被覆することができる。その結果、微粉化した活物質の脱落を防止することができる。またこの程度の薄層とすること、及び集電用の厚膜導電体を有していないことで、負極全体に占める活物質の割合が相対的に高くなり、単位体積当たり及び単位重量当たりのエネルギー密度を高めることができる。従来の電極では、電極全体に占める集電用の厚膜導電体の割合が高かったので、エネルギー密度を高めることに限界があった。前記範囲の集電層3a,3bは、後述するように電解めっきによって形成されることが好ましい。なお2つの集電層3a,3bはその厚みが同じでもよく、或いは異なっていてもよい。
【0014】
先に述べた通り、2つの集電層3a,3bは第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含んでいる。本実施形態の負極10が電池に組み込まれた場合、第1の面1a及び第2の面1bは電解液と接する面となる。これとは対照的に、従来の電極における集電用の厚膜導電体は、その両面に活物質層が形成されている場合には電解液と接することはなく、また片面に活物質層が形成されている場合であっても一方の面しか電解液と接しない。つまり本実施形態の負極10には、従来の電極で用いられていた集電用の厚膜導電体が存在せず、電極の最外面に位置する層、即ち集電層3a,3bが、集電機能と、微粉化した活物質の脱落を防止する機能とを兼ねている。
【0015】
第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含む各集電層3a,3bは何れも集電機能を有しているので、本実施形態の負極10を電池に組み込んだ場合には、何れの集電層3a,3bにも電流取り出し用のリード線を接続することができるという利点がある。
【0016】
各集電層3a,3bは、非水電解液二次電池の集電体となり得る金属から構成されている。特にリチウムイオン二次電池の集電体となり得る金属から構成されていることが好ましい。そのような金属としては例えば、リチウム化合物の形成能の低い元素が挙げられる。リチウム化合物の形成能の低い元素としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。これらの金属のうち銅若しくはニッケル又はそれらの合金を用いることが特に好適である。特に、ニッケル−タングステン合金を用いると、集電層3a,3bを高強度となすことができるので好ましい。2つの集電層3a,3bは、その構成材料が同じであってもよく、或いは異なっていてもよい。「リチウム化合物の形成能が低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
【0017】
各集電層3a,3b間に位置する活物質層2は、活物質の粒子2aを含んでいる。活物質層2は例えば、活物質の粒子2aを含む導電性スラリーを塗布して形成されている。
【0018】
活物質としては、例えばシリコン系材料やスズ系材料、アルミニウム系材料、ゲルマニウム系材料が挙げられる。特にシリコン系材料が好ましい。活物質層2は2つの集電層3a,3bによって被覆されているので、充放電に起因して活物質が微粉化して脱落することが効果的に防止される。また、後述する縦孔が形成されていることによって、活物質の粒子2aは電解液と接することができるので、電極反応が妨げられることもない。
【0019】
活物質の粒子2aはその最大粒径が好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。また粒子の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜2μmであることが好ましい。最大粒径が30μm超であると、粒子の脱落が起こりやすくなり、電極の寿命が短くなる場合がある。粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好ましい。該粒子の製造方法に鑑みると、下限値は0.01μm程度である。粒子の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定、電子顕微鏡観察(SEM観察)によって測定される。
【0020】
負極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると活物質の脱落が起こりやすくなる傾向にある。これらを勘案すると、活物質の量は負極全体に対して好ましくは5〜80重量%であり、更に好ましくは10〜50重量%、一層好ましくは20〜50重量%である。
【0021】
活物質層2の厚みは、負極全体に対する活物質の量の割合や活物質の粒径に応じて適宜調節することができ、本実施形態においては特に臨界的なものではない。一般には1〜100μm、特に3〜60μm程度である。活物質層は、後述するように、活物質の粒子を含む導電性スラリーを塗布することによって形成されることが好ましい。
【0022】
活物質層2においては、図1に示すように、該層中に含まれる粒子間に、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4が浸透している。金属材料4は、電解めっきによって粒子間に析出したものである。金属材料4は、活物質層2の厚み方向全域に亘って浸透していることが好ましい。そして浸透した当該材料中に活物質の粒子2aが存在していることが好ましい。つまり活物質の粒子2aは負極10の表面に実質的に露出しておらず集電層3a,3bの内部に包埋されていることが好ましい。これによって、活物質層2と集電層3a,3bとの密着性が強固なものとなり、活物質の脱落が一層防止される。また活物質層2中に浸透した前記材料4を通じて集電層3a,3bと活物質との間に電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質が生成すること、特に活物質層2の深部に電気的に孤立した活物質が生成することが効果的に防止され、集電機能が保たれる。その結果、負極としての機能低下が抑えられる。更に負極の長寿命化も図られる。このことは、活物質として半導体であり電子伝導性の乏しい材料、例えばシリコン系材料を用いる場合に特に有利である。
【0023】
活物質層2中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い金属材料4は導電性を有するものであり、その例としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などの金属材料が挙げられる。当該材料は、集電層3a,3bを構成する材料と同種の材料であってもよく、或いは異種の材料であってもよい。
【0024】
活物質層2中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い金属材料4は、活物質層2をその厚み方向に貫いていることが好ましい。それによって2つの集電層3a,3bは金属材料4を通じて電気的に導通することになり、負極全体としての電子伝導性が一層高くなる。つまり本実施形態の負極10は、その全体が一体として集電機能を有する。リチウム化合物の形成能の低い金属材料4が活物質層2の厚み方向全域に亘って浸透していることは、該材料を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって確認できる。リチウム化合物の形成能の低い金属材料4を、活物質層2中に浸透させるための好ましい方法は後述する。
【0025】
活物質層2における活物質の粒子2aの間は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4で完全に満たされているのではなく、該粒子間に空隙が存在していることが好ましい。この空隙の存在によって、充放電に起因する活物質の粒子2aの体積変化に起因する応力が緩和される。この観点から、活物質層2における空隙の割合は0.1〜30体積%程度、特に0.5〜5体積%程度であることが好ましい。空隙の割合は、電子顕微鏡マッピングによって求めることができる。活物質層2は活物質の粒子2aを含む導電性スラリーを塗布し乾燥させることによって形成されることから、活物質層2には自ずと空隙が形成される。従って空隙の割合を前記範囲にするためには、例えば活物質の粒子2aの粒径、導電性スラリーの組成、スラリーの塗布条件を適切に選択すればよい。またスラリーを塗布乾燥して活物質層2を形成した後、適切な条件下でプレス加工して空隙の割合を調整してもよい。なお、ここでいう空隙には、後述する縦孔5は含まれないことに留意すべきである。
【0026】
活物質層中には活物質の粒子2aに加えて導電性炭素材料が含まれていても良い。これによって負極10に電子伝導性が一層付与される。この観点から活物質層中に含まれる導電性炭素材料の量は0.1〜20重量%、特に1〜10重量%であることが好ましい。導電性炭素材料としては例えばアセチレンブラックやグラファイトなどの粒子が用いられる。これらの粒子の粒径は40μm以下、特に20μm以下であることが、電子伝導性の一層付与の点から好ましい。該粒子の粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好ましい。該粒子の製造方法に鑑みると、その下限値は0.01μm程度となる。
【0027】
図1に示すように、負極10においては、負極10の表面において開孔し且つ活物質層2及び各集電層3a,3bの厚み方向に延びる縦孔5を多数有している。縦孔5は、負極10の厚み方向に貫通している。活物質層2においては、縦孔5の壁面において活物質層2が露出している。縦孔5の役割は大別して次のようなものが挙げられる。
【0028】
一つは、縦孔5の壁面において露出した活物質層2を通じて電解液を活物質層内に供給する役割である。この場合、縦孔5の壁面において活物質層2が露出しているが、活物質層内の活物質の粒子2a間に金属材料4が浸透しているので、該粒子2aが脱落することが防止されている。
【0029】
もう一つは、充放電に起因して活物質層内の活物質の粒子2aが体積変化した場合、その体積変化に起因する応力を緩和する役割である。体積変化に起因する応力の緩和は、主として負極10の平面方向に生ずる。即ち、充電によって体積が増加した活物質の粒子2aの体積の増加分が、空間となっている縦孔5に吸収される。その結果、負極10の著しい変形が効果的に防止される。
【0030】
縦孔5の他の役割として、負極内に発生したガスを、その外部に放出できるという役割がある。詳細には、負極中に微量に含まれている水分に起因して、H2、CO、CO2等のガスが発生することがある。これらのガスが負極内に蓄積すると分極が大きくなり、充放電のロスの原因となる。縦孔5を形成することで、これを通じて前記のガスが負極の外部に放出されるので、該ガスに起因する分極を小さくできる。更に、縦孔5の他の役割として、負極の放熱の役割がある。詳細には、縦孔5が形成されることによって負極の比表面積が増大するので、Liの吸蔵に伴い発生する熱が負極外部に効率よく放出される。また、活物質の粒子2aの体積変化に起因して応力が発生すると、それが原因で熱が発生する場合がある。縦孔5が形成されることで、その応力が緩和されるので、熱の発生自体が抑えられる。
【0031】
活物質層内に電解液を十分に供給する観点及び活物質の粒子2aの体積変化に起因する応力を効果的に緩和する観点から、負極10の表面において開孔している縦孔5の開孔率、即ち縦孔5の面積の総和を、負極10の表面の見掛けの面積で除して100を乗じた値は0.3〜30%、特に2〜15%であることが好ましい。同様の理由により、負極10の表面において開孔している縦孔5の開孔径は5〜500μm、特に20〜100μmであることが好ましい。また、縦孔5のピッチを好ましくは20〜600μm、更に好ましくは45〜400μmに設定することで、活物質層内に電解液を十分に供給でき、また活物質の粒子2aの体積変化による応力を効果的に緩和できるようになる。更に、負極10の表面における任意の部分に着目したとき、1cm×1cmの正方形の観察視野内に平均して100〜250000個、特に1000〜40000個、とりわけ5000〜20000個の縦孔5が開孔していることが好ましい。
【0032】
本実施形態の負極10においては、縦孔5は負極10の厚さ方向に貫通している。しかし、活物質層内に電解液を十分に供給し、また活物質の粒子2aの体積変化に起因する応力を緩和するという縦孔5の役割に鑑みると、縦孔5は負極10の厚さ方向に貫通している必要はなく、負極10の表面において開孔し且つ少なくとも活物質層2にまで達していればよい。
【0033】
図1に示すように負極10は、各集電層3a,3bはそれらの表面である第1の面1a及び第2の面1bにおいて開孔し且つ活物質層2と通ずる多数の微細空隙6(微細空隙6は、活物質層2に形成された空隙とは異なるものであることに留意すべきである)を有していることが好ましい。微細空隙6は各集電層3a,3bの厚さ方向へ延びるように該集電層3a,3b中に存在している。微細空隙6は電解液の流通が可能なものである。微細空隙6は、先に説明した縦孔5よりも微細な構造を有するものである。微細空隙6の役割は、活物質層内に電解液を十分に供給するという縦孔5の役割を補助するものである。従って、本発明において微細空隙6は必須の構造ではない。
【0034】
微細空隙6は、集電層3a,3bを断面観察した場合にその幅が約0.1μmから約10μm程度の微細なものである。微細であるものの、微細空隙6は電解液の浸透が可能な程度の幅を有している。尤も非水電解液は水系の電解液に比べて表面張力が小さいことから、微細空隙6の幅が小さくても十分に浸透が可能である。微細空隙6は、好ましくは集電層3a,3bを電解めっきで形成する際に同時に形成される。
【0035】
第1の面1a及び第2の面1bを電子顕微鏡観察により平面視したとき、少なくとも一方の面における微細空隙6の平均開孔面積は、0.1〜50μm2であり、好ましくは0.1〜20μm2、更に好ましくは0.5〜10μm2程度である。この範囲の開孔面積とすることで、電解液の十分な浸透を確保しつつ、活物質の脱落を効果的に防止することができる。また充放電の初期段階から充放電容量を高めることができる。
【0036】
第1の面1a及び第2の面1bのうち、平均開孔面積が前記の範囲を満たす面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、観察視野の面積に対する微細空隙6の開孔面積の総和の割合(この割合を開孔率という)は、好ましくは0.1〜20%であり、更に好ましくは0.5〜10%である。この理由は微細空隙6の開孔面積を前記の範囲内とすることと同様の理由である。更に同様の理由により、第1の面1a及び第2の面1bのうち、平均開孔面積が前記の範囲を満たす面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、どのような観察視野をとっても、100μm×100μmの正方形の視野範囲内に1個〜2万個、特に10個〜1千個、とりわけ30個〜500個の微細空隙6が存在していることが好ましい(この値を分布率という)。
【0037】
次に本実施形態の負極10の好ましい製造方法を、図2を参照しながら説明する。本製造方法では、電解めっきによって集電層3bを形成し、次いでその上に活物質層2を形成し、更にその上に電解めっきによって集電層3aを形成し、最後に縦孔5を形成するという工程が行われる。先ず図2(a)に示すようにキャリア箔11を用意する。キャリア箔11は、負極10を製造するための支持体として用いられるものである。また製造された負極10をその使用の前まで、或いは電池組立加工の最中に支持しておき、負極10の取り扱い性を向上させるために用いられるものである。これらの観点から、キャリア箔11は、負極10の製造工程において及び製造後の搬送工程や電池組立工程等においてヨレ等が生じないような強度を有していることが好ましい。従ってキャリア箔11は、その厚みが10〜50μm程度であることが好ましい。先に述べた通り、キャリア箔11の重要な役割は負極10を製造するための支持体である。従って集電層3bの強度が十分である場合は必ずしもキャリア箔を用いて負極10を製造することを要しない。
【0038】
キャリア箔11としては導電性を有するものを用いることが好ましい。この場合、導電性を有していれば、キャリア箔11は金属製でなくてもよい。しかし金属製のキャリア箔11を用いることで、負極10の製造後にキャリア箔11を溶解・製箔してリサイクルできるという利点がある。金属製のキャリア箔11を用いる場合、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag、Au、Al及びTiのうちの少なくとも1種類の金属を含んでキャリア箔11が構成されていることが好ましい。
【0039】
キャリア箔11としては、例えば圧延箔や電解箔などの各種方法によって製造された箔を特に制限なく用いることができる。キャリア箔11上に形成される集電層3b中の微細空隙の孔径や存在密度をコントロールする観点から、キャリア箔11の表面は、或る程度凹凸形状になっていることが好ましい。圧延箔は、その製造方法に起因して各面が平滑になっている。これに対して電解箔は一面が粗面であり、他面が平滑面になっている。粗面は、電解箔を製造する際の析出面である。そこで、電解箔からなるキャリア箔11における粗面上に集電層3bを形成すれば、別途キャリア箔に粗化処理をする手間が省けるので簡便である。粗面を用いる利点については後述する。かかる粗面上に集電層3bを形成する場合、その表面粗さRa(JIS B 0601)は0.05〜5μm、特に0.2〜0.8μmであることが、所望の径及び存在密度を有する微細空隙を容易に形成し得る点から好ましい。
【0040】
次にキャリア箔11の一面に剥離剤を施して剥離処理を行う。剥離剤はキャリア箔11における粗面に施すことが好ましい。剥離剤は、後述する剥離工程において、キャリア箔11から負極10を首尾良く剥離するために用いられる。剥離剤としては有機化合物を用いることが好ましく、特に窒素含有化合物又は硫黄含有化合物を用いることが好ましい。窒素含有化合物としては、例えばベンゾトリアゾール(BTA)、カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)、トリルトリアゾール(TTA)、N',N'−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(BTD−U)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(ATA)などのトリアゾール系化合物が好ましく用いられる。硫黄含有化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、チオシアヌル酸(TCA)及び2−ベンズイミダゾールチオール(BIT)などが挙げられる。これらの有機化合物はアルコール、水、酸性溶媒、アルカリ性溶媒などに溶解して用いられる。例えばCBTAを用いた場合、その濃度は2〜5g/1とするのが好ましい。剥離性は、剥離剤の濃度や塗布量によって制御できる。一方、有機化合物による剥離層に代えて、クロム、鉛、クロメート処理などによる無機系剥離層を形成させることも有効である。剥離剤を施す工程は、あくまでも、後述する剥離工程(図2(g))において、キャリア箔11から負極10を首尾良く剥離するために行われるものである。従って、この工程を省いても集電層3bに微細空隙を形成することができる。
【0041】
次に図2(b)に示すように、剥離剤(図示せず)を施した上に、導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜12を形成する。塗工液はキャリア箔11の粗面に塗工されるので、該粗面における凹部に溜まりやすくなる。この状態で溶媒が揮発すると、塗膜12の厚みは不均一になる。つまり粗面の凹部に対応する塗膜の厚みは大きく、凸部に対応する塗膜の厚みは小さくなる。本製造方法においては、塗膜12の厚みの不均一性を利用して、集電層3bに多数の微細空隙を形成する。
【0042】
導電性ポリマーとしては、その種類に特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。特に、リチウムイオン伝導性ポリマーを用いることが好ましい。また、導電性ポリマーはフッ素含有の導電性ポリマーであることが好ましい。フッ素含有ポリマーは、熱的及び化学的安定性が高く、機械的強度に優れているからである。これらのことを考慮すると、リチウムイオン伝導性を有するフッ素含有ポリマーであるポリフッ化ビニリデンを用いることが特に好ましい。
【0043】
導電性ポリマーを含む塗工液は、導電性ポリマーが揮発性の有機溶媒に溶解してなるものである。有機溶媒としては、導電性ポリマーとして例えばポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、N−メチルピロリドンなどを用いることができる。
【0044】
本製造方法において、キャリア箔11上に多数の微細空隙を有する集電層3bが形成されるメカニズムは次のように考えられる。塗膜12が形成されたキャリア箔11は電解めっき処理に付されて、図2(c)に示すように塗膜12上に集電層3bが形成される。この状態を図2(c)の要部拡大図である図3に示す。塗膜12を構成する導電性ポリマーは、金属ほどではないが電子伝導性を有する。従って塗膜12はその厚みに応じて電子伝導性が異なる。その結果、導電性ポリマーを含む塗膜12の上に電解めっきによって金属を析出させると、電子伝導性に応じて電析速度に差が生じ、その電析速度の差によって集電層3bに微細空隙6が形成される。つまり、電析速度の小さい部分、換言すれば塗膜12の厚い部分が微細空隙6になりやすい。なお、先に述べた通り、集電層に微細空隙を形成することは、本発明において必須ではないので、集電層に微細空隙を形成しない場合には、導電性ポリマーを含む塗工液の塗工工程は不要である。
【0045】
キャリア箔11の粗面の表面粗さRaによって微細空隙6の孔径や存在密度をコントロールできることは先に述べた通りであるが、これに加えて塗工液に含まれる導電性ポリマーの濃度によっても微細空隙6の孔径や存在密度をコントロールできる。例えば導電性ポリマーの濃度が薄い場合には孔径は小さくなる傾向にあり、存在密度も小さくなる傾向にある。逆に、導電性ポリマーの濃度が濃い場合には孔径は大きくなる傾向にある。この観点から、塗工液における導電性ポリマーの濃度は0.05〜5重量%、特に1〜3重量%であることが好ましい。
【0046】
集電層3bを形成するためのめっき浴やめっき条件は、集電層3bの構成材料に応じて適切に選択される。集電層3bを例えば銅から構成する場合には、めっき浴として以下の組成を有する硫酸銅浴やピロリン酸銅浴を用いることができる。これらのめっき浴を用いる場合の浴温は40〜70℃程度であり、電流密度は0.5〜50A/dm2程度であることが好ましい。
・CuSO4・5H2O 150〜350g/l
・H2SO4 50〜250g/l
尚、有機剤により構成される剥離剤層や導電性ポリマー層は塗工の他、浸漬によっても形成させることが可能である。
【0047】
次に図2(d)に示すように集電層3b上に、活物質の粒子を含む導電性スラリーを塗布して活物質層2を形成する。スラリーは、活物質の粒子の他に、導電性炭素材料の粒子、結着剤及び希釈溶媒などを含んでいる。これらの成分のうち、活物質の粒子及び導電性炭素材料の粒子については先に説明した通りである。結着剤としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが用いられる。希釈溶媒としてはN−メチルピロリドン、シクロヘキサンなどが用いられる。スラリー中における活物質の粒子の量は14〜40重量%程度とすることが好ましい。導電性炭素材料の粒子の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。結着剤の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。これらに希釈溶媒を加えてスラリーとする。
【0048】
スラリーの塗膜を乾燥させて活物質層2を形成する。形成された活物質層2は、粒子間に多数の微小空間を有する。活物質層2が形成されたキャリア箔11を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬して電解めっきを行う。めっき浴への浸漬によって、めっき液が活物質層2内の前記微小空間に浸入して、活物質層2と集電層3bとの界面にまで達する。その状態下に電解めっきが行われる(以下、このめっきを浸透めっきともいう)。その結果、(a)活物質層2の内部、及び(b)活物質層2の内面側(即ち集電層3bと対向している面側)において、リチウム化合物の形成能の低い金属材料が析出して、該材料が活物質層2の厚み方向全域に亘って浸透する。
【0049】
浸透めっきの条件は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を活物質層2中に析出させるために重要である。例えばリチウム化合物の形成能の低い金属材料として銅を用いる場合、硫酸銅系溶液を用いるときには、銅の濃度を30〜100g/l、硫酸の濃度を50〜200g/l、塩素の濃度を30ppm以下とし、液温を30〜80℃、電流密度を1〜100A/dm2とすればよい。ピロ燐酸銅系溶液を用いる場合には、銅の濃度2〜50g/l、ピロ燐酸カリウムの濃度100〜700g/lとし、液温を30〜60℃、pHを8〜12、電流密度を1〜10A/dm2とすればよい。これらの電解条件を適宜調節することで、リチウム化合物の形成能の低い金属材料が活物質層2の厚み方向全域に亘って析出する。特に重要な条件は電解時の電流密度である。電流密度が高すぎると、活物質層2の内部での析出が起こらず、活物質層2の表面でのみ析出が起こってしまう。
【0050】
次に、活物質層2の上に集電層3aを形成する。ところで、活物質層2は、活物質の粒子2a等を含むものであるから、その表面は粗面となっている。従って、集電層3aを形成するために、電解箔からなるキャリア箔11の粗面上に集電層3bを形成した手段と同様の手段を採用すれば、集電層3aにも多数の微細空隙6を形成させることも可能である。即ち、活物質層2の表面に導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜を形成する。次いで、集電層3bを形成したときの条件と同様の条件を用い、図2(e)に示すように、該塗膜の上に電解めっきによって集電層3aを形成する。なお、先に述べた通り、集電層に微細空隙を形成することは、本発明において必須ではないので、集電層に微細空隙を形成しない場合には、導電性ポリマーを含む塗工液の塗工工程は不要である。
【0051】
次に、図2(f)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3a,3b及び活物質層2を貫通する縦孔5を形成する。縦孔5の形成方法に特に制限はない。例えばレーザー加工によって縦孔5を形成することができる。或いは針やポンチによって機械的に穿孔を行うこともできる。両者を比較すると、レーザー加工を用いる方が、サイクル特性及び充放電効率が良好な負極を得やすい。この理由は、レーザ加工の場合、加工によって溶解・再凝固した金属材料が縦孔5の壁面に存在する活物質粒子の表面を覆うので、活物質が直接露出することが防止され、それによって活物質が縦孔5の壁面から脱落することが防止されるからである。なお、縦孔5の他の形成手段として、サンドブラスト加工を用いたり、フォトレジスト技術を利用して縦孔5を形成することもできる。縦孔5は、実質的に等間隔に存在するように形成されることが好ましい。そうすることによって、電極全体が均一に反応を起こすことが可能となるからである。
【0052】
最後に、図2(g)に示すようにキャリア箔11を集電層3bから剥離分離する。これによって負極10が得られる。なお、図2(g)においては導電性ポリマーの塗膜12が集電層3b側に残るように描かれているが、該塗膜12はその厚さや導電性ポリマーの種類によってキャリア箔11側に残る場合もあれば、集電層3b側に残る場合もある。或いはこれら双方に残る場合もある。なお、先に述べた通り、負極10をその使用の前まではキャリア箔11から剥離せず、キャリア箔11に支持させておいてもよい。
【0053】
このようにして得られた本実施形態の負極は、公知の正極、セパレータ、非水系電解液と共に用いられて非水電解液二次電池となされる。正極は、正極活物質並びに必要により導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これを集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスし、さらに裁断、打ち抜きすることにより得られる。正極活物質としては、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物等の従来公知の正極活物質が用いられる。セパレーターとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレン又はポリプロピレン多孔質フイルム等が好ましく用いられる。非水電解液は、リチウム二次電池の場合、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、例えば、LiC1O4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiSCN、LiC1、LiBr、LiI、LiCF3SO3、LiC4F9SO3等が例示される。
【0054】
次に、本発明の負極の第2の実施形態を、図4を参照しながら説明する。第2の実施形態に関し特に説明しない点については、第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図4において、図1〜図3と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0055】
本実施形態の負極10は、その基本構成部材として、二つの負極前駆体20及び金属リチウム層7を有している。金属リチウム層7は、負極前駆体20の間に挟持されている。
【0056】
負極前駆体20は、集電層3と、該集電層3の一面に配された活物質層2とを備えている。図4に示すように、金属リチウム層7は、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し且つ集電層3が外方を向くように両負極前駆体20間に挟持されている。
【0057】
二つの活物質層2間に介在配置された金属リチウム層7は、非水電解液の存在下に、活物質(負極活物質)との間に局部電池を構成する。これによって金属リチウムが、金属リチウム層7の近傍に位置する活物質と化学的に反応してリチウム化物を形成する。或いはリチウムの濃度勾配に起因してリチウムが活物質と反応してリチウム化物を形成する。このように、金属リチウム層7はリチウムの供給源として作用する。その結果、充放電サイクル或いは長期保存時における電解液との反応などによってリチウムが消費されても、リチウム化物からリチウムが供給されるので、リチウム枯渇の問題が解消される。それによって負極10の長寿命化が図られる。金属リチウム層7は、負極10の表面に露出しておらず、負極10の内部に位置しており、またリチウムは活物質中と反応してリチウム化物を形成するので、内部短絡や発火の原因となるリチウムのデンドライトが生成するおそれも少ない。リチウムが反応した後の金属リチウム層7にはリチウムと活物質とが反応して体積膨張したリチウム化合物が存在する。
【0058】
特筆すべきは、負極10を電池に組み込んで充電を行わずとも、金属リチウムと活物質との反応が起こることである。この現象は本発明者らが初めて見いだしたものである。電池の組み込み前に金属リチウムと活物質との反応が起こることで、活物質は、電池の組み込み前に既に体積が増加した状態になっている。従って、その後に負極10を電池に組み込み充放電を行っても、充放電に起因する負極10の膨張率は極めて小さい。その結果、本実施形態の負極10は、充放電による活物質の体積変化に起因する変形が極めて起こりづらいという非常に有利な効果を奏する。
【0059】
金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して0.1〜70%、特に5〜30%であることが、容量回復特性が良好になることから好ましい。
【0060】
次に図4に示す負極10の好ましい製造方法を、図5を参照しながら説明する。なお本製造方法に関し特に説明しない点については、図2及び図3に示す製造方法に関する説明が適宜適用される。先ず、負極前駆体20を製造する。負極前駆体20の製造には、図5(a)に示すようにキャリア箔11を用意する。次に、必要に応じ、キャリア箔11の一面上に、剥離剤を施して剥離処理を行う。その上に、図5(b)に示すように、導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜12を形成する。次に図5(c)に示すように、塗膜12を施した上に、集電層3の構成材料を電解めっきによって電析させて集電層3を形成する。集電層3上には、図5(d)に示すように、活物質の粒子を含む導電性スラリーを塗布して活物質層2を形成する。スラリーの塗膜が乾燥して活物質層2が形成された後、該活物質層2が形成されたキャリア箔11を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬して浸透めっきを行う。
【0061】
このようにしてキャリア箔11上に集電層3と活物質層2とをこの順で備えた負極前駆体20を形成する。これを一対用い、図5(e)に示すように、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向するように、金属リチウム箔30を両負極前駆体20間に挟み込む。それによって金属リチウム箔30と両負極前駆体20とを貼り合わせにより一体化させる。この場合、金属リチウム箔30と両負極前駆体20とを単に重ね合わせて圧着させるだけの操作でこれら三者を貼り合わせることができる。貼り合わせを強固にしたい場合には、導電性ペースト等の導電性接着材料を用いてこれら三者を貼り合わせてもよい。或いは、一対の負極前駆体20を張り合わせる前に予めキャリア箔を分離除去しても良い。
【0062】
次に、図5(f)に示すように、一方のキャリア箔11を集電層3から剥離させ、集電層3を露出させる。一方の集電層3が露出したら、図5(g)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3,3、両活物質層2,2及び金属リチウム箔30を貫通する縦孔5を形成する。最後に、図5(h)に示すように、もう一方のキャリア箔11をもう一方の集電層3から剥離分離する。これによって目的とする負極10が得られる。
【0063】
次に、本発明の負極の第3〜第5の実施形態について図6〜図9を参照しながら説明する。第3〜第5の実施形態に関し特に説明しない点については、第1及び第2の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図6〜図9において、図1〜図5と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0064】
図6に示す第3の実施形態の負極10においては、一対の集電層3a,3b間に、一層の活物質層2及び一層の金属リチウム層7が介在配置されている。そして、負極10をその厚み方向に貫通する縦孔5が多数形成されている。活物質層2とそれに隣接する集電層3aは、第2の実施形態の負極における負極前駆体20に相当するものである。活物質層2に隣接する集電層3aには必要に応じて微細空隙(図示せず)が形成される。一方、金属リチウム層7に隣接する集電層3bには微細空隙が形成されていない。
【0065】
図7に示す第4の実施形態の負極10は、活物質層2とそれに隣接する集電層3からなる負極前駆体20を一対備えている。また各面に金属リチウム層7が配された導電性箔8も備えている。各面に金属リチウム層7が配された導電性箔8は、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し且つ集電層3が外方を向くように両負極前駆体20間に挟持されている。集電層3には必要に応じて微細空隙(図示せず)が形成される。更に、負極10をその厚み方向に貫通する縦孔5が多数形成されている。
【0066】
図7に示す実施形態の負極10は、図6に示す実施形態の負極に比較して、導電性箔8を備えている分だけ強度が高いものである。このことは、ジェリー・ロール・タイプの電池を作製する場合に有利である。この観点から、導電性箔8はその厚さが好ましくは5〜20μmである。導電性箔8は一般に金属箔から構成される。導電性箔8を構成する材料としては、リチウム化合物の形成能の低い金属材料が挙げられる。そのような材料としては、集電層3や、浸透めっきに用いられる金属材料4として先に説明した材料と同様のものを用いることができる。また、強度を高める観点から、ステンレス箔や高強度圧延合金箔を用いることも有効である。
【0067】
図7に示す実施形態の負極10の好ましい製造方法は次の通りである。先ず、図8(a)に示すように、導電性箔8を用意し、その各面に金属リチウム層7を形成する。金属リチウム層7は公知の薄膜形成手段、例えば真空蒸着法等によって形成することができる。これとは別に、図2に示す第1の実施形態の負極の製造方法に従い、活物質層2とそれに隣接する集電層3からなる負極前駆体20を予め製造しておき、図8(b)に示すように、金属リチウム層7が形成された導電性箔8を、一対の負極前駆体20によって挟み込む。負極前駆体20はキャリア箔11によって支持されている。挟み込みに際しては、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し、集電層3が外方を向くようにする。次いで図8(c)に示すように、一方のキャリア箔11を集電層3から剥離させ、集電層3を露出させる。一方の集電層3が露出したら、図8(d)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3,3、両活物質層2,2、両金属リチウム層7,7及び導電性箔8を貫通する縦孔5を形成する。最後に、図8(e)に示すように、もう一方のキャリア箔11をもう一方の集電層3から剥離分離する。これによって目的とする負極10が得られる。
【0068】
図9に示す実施形態の負極10は、これまでに説明した実施形態の負極と異なり、集電体9を有している。負極10は、集電体9上に活物質層2を有している。本実施形態の負極10は集電体9を有しているので、活物質層2上に集電層を設ける必要はない。活物質層2は、活物質の粒子2aを含み、粒子2a間に、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4が浸透している。負極10においては、活物質層2の表面において開孔し、且つ活物質層2の厚み方向に延びる多数の縦孔5を多数有している。
【0069】
集電体9は、非水電解液二次電池用負極の集電体として従来用いられているものと同様のものを用いることができる。集電体は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4から構成されていることが好ましい。そのような金属材料の例は既に述べた通りである。特に、銅、ニッケル、ステンレス等からなることが好ましい。集電体9の厚みは本実施形態において臨界的ではないが、負極10の強度維持と、エネルギー密度向上とのバランスを考慮すると、10〜30μmであることが好ましい。
【0070】
本実施形態の負極10は、第1の実施形態の負極の製造方法と類似の方法で製造できる。先ず、集電体9の一面に活物質の粒子2aを含むスラリーを塗工して塗膜を形成する。塗膜が形成された集電体9を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬して電解めっきを行う。これによって活物質層2が形成される。最後に、活物質層2に対して孔あけ加工を施すことで、活物質層2の厚み方向に延びる多数の縦孔5を該活物質層2に形成する。
【0071】
なお、本実施形態の負極10においては集電体9の片面にのみ活物質層2が形成されているが、これに代えて集電体9の両面に活物質層2を形成し、各活物質層2に縦孔5を形成してもよい。また、縦孔5は集電体9を貫通していてもよい。
【0072】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず種々の変更が可能である。例えば、図9に示す実施形態の負極においては、集電体としてエキスパンドメタルを用いてもよい。
【0073】
また、従来の電極に用いられてきた集電体と呼ばれる集電用の厚膜導電体の各面に、負極前駆体20を重ね合わせ、これらを厚さ方向に貫通する縦孔を形成して負極を構成してもよい。
【0074】
また、図4及び図6に示す実施形態の負極においては、金属リチウム層7に縦孔5を形成しなくてもよい。同様に、図7に示す実施形態の負極においては、金属リチウム層7及び導電性箔8に縦孔5を形成しなくてもよい。
【0075】
また、前記の各実施形態の負極は、これを単独で用いることも可能であり、或いは該負極を負極前駆体として用い、該負極前駆体を複数枚積層して使用することも可能である。後者の場合、隣り合う負極前駆体間に、芯材となる導電性箔(例えば金属箔)を介在配置することも可能である。
【0076】
また前記の各実施形態においては集電層3(3a,3b)は単層構造であったが、これに代えて、材料の異なる2種以上の層からなる多層構造にしても良い。例えば集電層3(3a,3b)をニッケルからなる内層と銅からなる外層の2層構造とすることで、活物質の体積変化に起因する負極の著しい変形を一層効果的に防止することができる。
【0077】
また集電層3(3a,3b)の材料と、活物質層2中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い金属材料とが異なる場合には、活物質層2中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い金属材料は、活物質層2と集電層3(3a,3b)との境界部まで存在していてもよい。或いは、リチウム化合物の形成能の低い金属材料は、当該境界部を越えて集電層3(3a,3b)の一部を構成していてもよい。逆に、集電層3(3a,3b)の構成材料が、当該境界部を越えて活物質層2内に存在していてもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0079】
〔実施例1〕
図2に示す方法に従い図1に示す負極を製造した。先ず、電解によって得られた銅製のキャリア箔(厚さ35μm)を室温で30秒間酸洗浄した。引き続き室温で30秒間純水洗浄した。次いで、40℃に保った状態の3.5g/lのCBTA溶液中に、キャリア箔を30秒間浸漬した。これにより剥離処理を行った。剥離処理後、溶液から引き上げて15秒間純水洗浄した。
【0080】
キャリア箔の粗面(表面粗さRa=0.5μm)に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解した濃度2.5重量%の塗工液を塗布した。溶媒が揮発して塗膜が形成された後、H2SO4/CuSO4系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。これによって銅からなる集電層を塗膜上に形成した。めっき浴の組成は、CuSO4が250g/l、H2SO4が70g/lであった。電流密度は5A/dm2とした。集電層は9μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
【0081】
次に、集電層上に負極活物質の粒子を含むスラリーを膜厚20μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質粒子はSiからなり、平均粒径はD50=2μmであった。スラリーの組成は、活物質:アセチレンブラック:スチレンブタジエンゴム=98:2:1.7であった。
【0082】
活物質層が形成された後に、キャリア箔を、以下の浴組成を有するワット浴に浸漬させ、電解により、活物質層に対してニッケルの浸透めっきを行った。電流密度は5A/dm2、浴温は50℃、pHは5であった。陽極にはニッケル電極を用いた。電源は直流電源を用いた。この浸透めっきは、めっき面から一部の活物質粒子が露出する程度に行った。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
・NiSO4・6H2O 250g/l
・NiCl2・6H2O 45g/l
・H3BO3 30g/l
【0083】
次に、Cu系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。めっき浴の組成は、H3PO4が200g/l、Cu3(PO4)2・3H2Oが200g/lであった。また、めっきの条件は、電流密度5A/dm2、浴温度40℃であった。これによって銅からなる集電層を活物質層上に形成した。この集電層は8μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
【0084】
次に、活物質層上に形成された集電層に向けてYAGレーザを照射し、縦孔を規則的に形成した。縦孔は、両集電層及びそれらの間に位置する活物質層を貫通するように形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。
【0085】
最後に、キャリア箔とそれに接する集電層とを剥離して、一対の集電層間に活物質層が挟持されてなる非水電解液二次電池用負極を得た。得られた負極の使用前及び1サイクル後の外観を図10に示す。また得られた負極の表面及び縦断面の走査型電子顕微鏡写真を図11に示す。走査型電子顕微鏡による観察の結果、キャリア箔から剥離した側の集電層には、100μm×100μmの正方形の範囲内に平均して30個の微細孔が存在していることを確認した。
【0086】
〔実施例2〕
図5に示す方法に従い図4に示す負極を製造した。先ず、キャリア箔の粗面(表面粗さRa=0.5μm)に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解した濃度2.5重量%の塗工液を塗布した。溶媒が揮発して塗膜が形成された後、H2SO4/CuSO4系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。これによって銅からなる集電層を塗膜上に形成した。めっき浴の組成は、CuSO4が250g/l、H2SO4が70g/lであった。電流密度は5A/dm2とした。集電層は5μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
【0087】
次に、集電層上に負極活物質の粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質粒子はSiからなり、平均粒径はD50=2μmであった。スラリーの組成は、活物質:アセチレンブラック:スチレンブタジエンゴム=98:2:1.7であった。
【0088】
活物質層が形成されたにキャリア箔を、以下の浴組成を有するワット浴に浸漬させ、電解により、活物質層に対してニッケルの浸透めっきを行った。電流密度は5A/dm2、浴温は50℃、pHは5であった。陽極にはニッケル電極を用いた。電源は直流電源を用いた。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。このようにしてキャリア箔に支持された負極前駆体を得た。
・NiSO4・6H2O 250g/l
・NiCl2・6H2O 45g/l
・H3BO3 30g/l
【0089】
負極前駆体とは別に用意しておいた厚さ25μmの金属リチウム箔を、一対の負極前駆体で挟み込んだ。挟み込みは、各負極前駆体における活物質層どうしが対向するように行った。これによって各負極前駆体と金属リチウムとを貼り合わせて一体化させた。
【0090】
次に、一方のキャリア箔を集電層から剥離させて集電層を露出させた。露出した集電層に向けてYAGレーザを照射し、各負極前駆体及び金属リチウム箔を貫通する縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。最後に、もう一方のキャリア箔と集電層とを剥離して目的とする負極を得た。負極における金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して30%であった。
【0091】
〔実施例3〕
図6に示す負極を製造した。先ず、実施例2と同様の操作によって、キャリア箔に支持された負極前駆体を得た。次に、負極前駆体とは別に、厚さ5μmの銅箔(集電層)の一面に、真空蒸着法によって厚さ10μmの金属リチウム層を形成した。この銅箔と、先に製造しておいた負極前駆体とを貼り合わせて一体化させた。貼り合わせは、銅箔における金属リチウム層と、負極前駆体における活物質層とが当接するように行った。
【0092】
次に、銅箔に向けてYAGレーザを照射し、銅箔、金属リチウム層及び負極前駆体を貫通する縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。最後に、キャリア箔と集電層とを剥離して目的とする負極を得た。負極における金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して25%であった。
【0093】
〔実施例4〕
図8に示す方法に従い図7に示す負極を製造した。先ず、実施例2と同様の操作によって、キャリア箔に支持された負極前駆体を得た。負極前駆体とは別に、厚さ10μmの銅箔の各面に、真空蒸着法によって厚さ10μmの金属リチウム層を形成した。次いで、この銅箔を、先に製造しておいた一対の負極前駆体で挟み込んだ。挟み込みは、各負極前駆体における活物質層どうしが対向し、集電層が外方を向くように行った。これによって、金属リチウム層を各面に有する銅箔と、各負極前駆体とを貼り合わせて一体化させた。
【0094】
次に、一方のキャリア箔を集電層から剥離させて集電層を露出させた。露出した集電層に向けてYAGレーザを照射し、各負極前駆体及び金属リチウム層を各面に有する銅箔を貫通する縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。最後に、もう一方のキャリア箔と集電層とを剥離して目的とする負極を得た。負極における金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して25%であった。
【0095】
〔実施例5〕
実施例4と同様の操作で、一対の負極前駆体を得た。これら負極前駆体における活物質層が露出している面に向けてYAGレーザを照射し、該負極前駆体を貫通する縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。
【0096】
次いで、実施例4と同様の操作で得られた、両面に金属リチウム層を有する銅箔を、縦孔が形成された一対の負極前駆体で挟み込んだ。挟み込みは、各負極前駆体における活物質層どうしが対向し、集電層が外方を向くように行った。これによって、金属リチウム層を各面に有する銅箔と、各負極前駆体とを重ね合わせて一体化させた。最後に、キャリア箔と集電層とを剥離して目的とする負極を得た。負極における金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して27%であった。
【0097】
〔実施例6〕
実施例5において、縦孔の直径を15μm、ピッチを100μm(10000孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0098】
〔実施例7〕
実施例5において、縦孔の直径を25μm、ピッチを200μm(2500孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0099】
〔実施例8〕
実施例5において、縦孔の直径を50μm、ピッチを100μm(10000孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0100】
〔実施例9〕
実施例5において、縦孔の直径を50μm、ピッチを200μm(2500孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0101】
〔実施例10〕
実施例5において、縦孔の直径を100μm、ピッチを300μm(1111孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0102】
〔実施例11〕
実施例5において、縦孔の直径を250μm、ピッチを1000μm(100孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0103】
〔実施例12〕
実施例5において、負極前駆体の作製時に、以下の組成を有するピロリン酸銅浴を用い、以下の条件で活物質層に対して浸透めっきを行った以外は実施例5と同様にして負極を得た。
<ピロリン酸銅浴の組成>
・K4P2O7 450g/l
・Cu2P2O7・3H2O 105g/l
・KNO3 15g/l
<浸透めっきの条件>
・電流密度:3A/dm2
・浴温度:55℃
・pH:8.2
・陽極:DSE電極
【0104】
〔実施例13〕
実施例10において、縦孔の形成方法として、YAGレーザに代えてポンチによる機械的穿孔を用いた以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0105】
〔実施例14〕
実施例10において、縦孔の形成方法として、YAGレーザに代えてサンドブラスト法を用いて穿孔を行った以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0106】
〔実施例15〕
図9に示す負極を製造した。厚さ18μmの電解銅箔の片面に、負極活物質の粒子を含むスラリーを膜厚20μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質粒子はSiからなり、平均粒径はD50=2μmであった。スラリーの組成は、活物質:アセチレンブラック:スチレンブタジエンゴム=98:2:1.7であった。次いで、活物質層に対してニッケルの浸透めっきを行った。浸透めっきの条件は実施例1と同様とした。このようにして得られた活物質層に向けてYAGレーザを照射し、縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。
【0107】
〔比較例1〕
電解によって得られた銅箔(厚さ35μm)の各面に、実施例1で用いたスラリーと同様のスラリーを、膜厚15μmになるように塗布して活物質層を形成し、非水電解液二次電池用負極を得た。
【0108】
〔性能評価〕
実施例及び比較例にて得られた負極を用い、以下の方法で非水電解液二次電池を作製した。この電池の1サイクル後の放電容量、1サイクル後の不可逆容量、100サイクル後の容量維持率、100サイクル後の充放電効率、及び負極厚み変化率を以下の方法で測定、算出した。これらの結果を以下の表1に示す。
【0109】
〔非水電解液二次電池の作製〕
実施例及び比較例で得られた負極を作用極とし、対極(正極)としてLiCoO2を用い、両極を、セパレーターを介して対向させた。非水電解液としてLiPF6/エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合液(1:1容量比)を用いて通常の方法によって非水電解液二次電池を作製した。電池は、正極と負極との容量比が1:1及び1:2の二種類を作製した。正極と負極との容量比が1:1の電池を、1サイクル後の放電容量及び1サイクル後の不可逆容量の測定に用いた。正極と負極との容量比が1:2の電池を、100サイクル後の容量維持率、100サイクル後の充放電効率及び負極厚み変化率の測定に用いた。
【0110】
〔1サイクル後の放電容量〕
単位重量当たり及び単位容積当たりの放電容量を測定した。単位重量当たりの放電容量は、活物質(Si)の重量を基準とした。単位容積当たりの放電容量は、負極の体積を基準とした。但し、充電時の負極の膨張は考慮しなかった。
【0111】
〔1サイクル後の不可逆容量〕
不可逆容量(%)=(1−初回放電容量/初回充電容量)×100
即ち、充電したが放電できず、活物質に残存した容量を示す。
【0112】
〔100サイクル後の容量維持率〕
100サイクル後の放電容量を測定し、その値を最大負極放電容量で除し、100を乗じて算出した。
【0113】
〔100サイクル後の充放電効率〕
100サイクル後の充放電効率(%)=100サイクル後の放電容量/100サイクル後の充電容量×100
【0114】
〔負極厚み変化率〕
宝泉株式会社製HS変位セルを用いて、1サイクルにおける充電に伴う負極の厚み変化を測定した。この変位セルでは、負極+セパレーター+正極LiCoO2の、全体の厚み変化が測定される。しかし、正極は充放電によってほとんど膨張せず、負極の厚み変化の寄与率が大きいので、測定している厚み変化は実質的に負極の厚み変化とみなせる。負極厚み変化率は次式から算出する。
負極厚み変化率(%)=[(1サイクル充電状態での厚み)−(充電前の厚み)/充電前の厚み]×100
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の負極を用いた電池は、放電容量が高く、また不可逆容量が小さいことが判る。更に、容量維持率及び充放電効率が高いことが判る。更に、負極の厚み変化率が小さいことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の負極の第1の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図2】図1に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】集電層及び微細空隙が形成される状態を示す模式図である。
【図4】本発明の負極の第2の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図5】図4に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。
【図6】本発明の負極の第3の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図7】本発明の負極の第4の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図8】図7に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。
【図9】本発明の負極の第5の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図10】実施例1で得られた負極の使用前及び1サイクル後の外観を示す写真である。
【図11】実施例1で得られた負極の表面及び縦断面を拡大して示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0118】
1a,1b 表面
2 活物質層
3,3a,3b 集電層
4 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
5 縦孔
6 微細空隙
7 金属リチウム層
8 導電性箔
10 負極
20 負極前駆体
30 金属リチウム箔
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの非水電解液二次電池用の負極に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムと合金を作る金属元素とリチウムと合金を作らない金属元素を構成要素として有し、負極の電解液と接し正極と対向する表面及び出力端子につながる部分で、リチウムと合金を作らない金属元素の含有率が高いリチウム二次電池用の負極が提案されている(特許文献1参照)。この負極によれば、充放電に起因してリチウムと合金を作る金属元素が微粉化しても、リチウムと合金を作らない金属を介して導電性が保たれるとされている。
【0003】
前記の特許文献1には、負極の具体的な構造として、リチウムと合金を作る金属元素を含有する粉体状の部材を、結着剤で、リチウムと合金を作らない金属の集電部材に結着させた構造や、それを焼成した構造が提案されている。また、リチウムと合金を作る金属元素を含有する層の上に、リチウムと合金を作らない金属元素を配置することも提案されている。リチウムと合金を作らない金属元素は例えばめっきによって形成される。
【0004】
しかし、前記の特許文献1に記載の負極は、負極表面を覆う、リチウムと合金を作らない金属の層の厚さが50nm程度と非常に薄いことに起因して、十分な表面被覆率及び強度を得ることができない。その結果、充放電によって活物質が膨張収縮することに起因する体積変化による応力を十分に緩和できず、負極の著しい変形が生じてしまう。また活物質が膨張収縮することに起因して微粉化した場合に、その脱落を効果的に防止することができない。従って負極のサイクル特性を向上させることは容易でない。
【0005】
前記の特許文献とは別に、活物質層を貫通する孔を有する非水電解液二次電池用負極が提案されている(特許文献2参照)。しかしこの負極においては、活物質が膨張収縮することに起因して微粉化した場合に、導電性を維持させることは困難であるし、貫通孔の側壁からの活物質の脱落が起こる可能性がある。従って負極のサイクル特性を向上させることは容易でない。
【0006】
【特許文献1】特開平8−50922号公報
【特許文献2】特開2001−76761号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って本発明の目的は、前述した従来技術が有する種々の欠点を解消し得る非水電解液二次電池用負極を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、活物質の粒子を含む活物質層を備えた非水電解液二次電池用負極において、
前記活物質層には、電解めっきによって析出した金属材料が粒子間に浸透しており、また
前記負極の少なくとも一方の面において開孔し且つ前記活物質層の厚み方向に延びる縦孔を多数有することを特徴とする非水電解液二次電池用負極を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0009】
また本発明は、前記負極を備えていることを特徴とする非水電解液二次電池を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、活物質層の厚さ方向に延びる縦孔が、充放電に起因する活物質の体積変化に起因する応力を十分に緩和することができるので、負極の著しい変形を効果的に防止することができる。従ってサイクル寿命が大幅に長くなり、充放電効率も高くなる。また、活物質層における活物質の粒子間に金属材料が析出しているので、充放電に起因して活物質の粒子が微粉化しても、電気的に孤立した活物質が存在することが効果的に防止され、十分な集電性を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。先ず図1に示す第1の実施形態の負極について説明する。本実施形態の負極10は、電解液と接する表裏一対の面である第1の面1a及び第2の面1bを有している。負極10は、活物質層2を備えている。活物質層2は、該層2の各面にそれぞれ形成された一対の集電層3a,3bによって連続的に被覆されている。各集電層3a,3bは、第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含んでいる。また図1から明らかなように電極10は、従来の電極に用いられてきた集電体と呼ばれる集電用の厚膜導電体(例えば厚さ12〜35μm程度の金属箔やエキスパンドメタル)を有していない。
【0012】
集電層3a,3bは、本実施形態の負極10における集電機能を担っている。また集電層3a,3bは、活物質層2に含まれる活物質が充放電に起因して体積変化し微粉化して脱落することを防止するためにも用いられている。
【0013】
各集電層3a,3bは、従来の電極に用いられている集電用の厚膜導電体よりもその厚みが薄いものである。具体的には0.3〜10μm程度、特に0.4〜8μm程度、とりわけ0.5〜5μm程度の薄層であることが好ましい。これによって、必要最小限の厚みで活物質層2をほぼ満遍なく連続的に被覆することができる。その結果、微粉化した活物質の脱落を防止することができる。またこの程度の薄層とすること、及び集電用の厚膜導電体を有していないことで、負極全体に占める活物質の割合が相対的に高くなり、単位体積当たり及び単位重量当たりのエネルギー密度を高めることができる。従来の電極では、電極全体に占める集電用の厚膜導電体の割合が高かったので、エネルギー密度を高めることに限界があった。前記範囲の集電層3a,3bは、後述するように電解めっきによって形成されることが好ましい。なお2つの集電層3a,3bはその厚みが同じでもよく、或いは異なっていてもよい。
【0014】
先に述べた通り、2つの集電層3a,3bは第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含んでいる。本実施形態の負極10が電池に組み込まれた場合、第1の面1a及び第2の面1bは電解液と接する面となる。これとは対照的に、従来の電極における集電用の厚膜導電体は、その両面に活物質層が形成されている場合には電解液と接することはなく、また片面に活物質層が形成されている場合であっても一方の面しか電解液と接しない。つまり本実施形態の負極10には、従来の電極で用いられていた集電用の厚膜導電体が存在せず、電極の最外面に位置する層、即ち集電層3a,3bが、集電機能と、微粉化した活物質の脱落を防止する機能とを兼ねている。
【0015】
第1の面1a及び第2の面1bをそれぞれ含む各集電層3a,3bは何れも集電機能を有しているので、本実施形態の負極10を電池に組み込んだ場合には、何れの集電層3a,3bにも電流取り出し用のリード線を接続することができるという利点がある。
【0016】
各集電層3a,3bは、非水電解液二次電池の集電体となり得る金属から構成されている。特にリチウムイオン二次電池の集電体となり得る金属から構成されていることが好ましい。そのような金属としては例えば、リチウム化合物の形成能の低い元素が挙げられる。リチウム化合物の形成能の低い元素としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などが挙げられる。これらの金属のうち銅若しくはニッケル又はそれらの合金を用いることが特に好適である。特に、ニッケル−タングステン合金を用いると、集電層3a,3bを高強度となすことができるので好ましい。2つの集電層3a,3bは、その構成材料が同じであってもよく、或いは異なっていてもよい。「リチウム化合物の形成能が低い」とは、リチウムと金属間化合物若しくは固溶体を形成しないか、又は形成したとしてもリチウムが微量であるか若しくは非常に不安定であることを意味する。
【0017】
各集電層3a,3b間に位置する活物質層2は、活物質の粒子2aを含んでいる。活物質層2は例えば、活物質の粒子2aを含む導電性スラリーを塗布して形成されている。
【0018】
活物質としては、例えばシリコン系材料やスズ系材料、アルミニウム系材料、ゲルマニウム系材料が挙げられる。特にシリコン系材料が好ましい。活物質層2は2つの集電層3a,3bによって被覆されているので、充放電に起因して活物質が微粉化して脱落することが効果的に防止される。また、後述する縦孔が形成されていることによって、活物質の粒子2aは電解液と接することができるので、電極反応が妨げられることもない。
【0019】
活物質の粒子2aはその最大粒径が好ましくは30μm以下であり、更に好ましくは10μm以下である。また粒子の粒径をD50値で表すと0.1〜8μm、特に0.3〜2μmであることが好ましい。最大粒径が30μm超であると、粒子の脱落が起こりやすくなり、電極の寿命が短くなる場合がある。粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好ましい。該粒子の製造方法に鑑みると、下限値は0.01μm程度である。粒子の粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定、電子顕微鏡観察(SEM観察)によって測定される。
【0020】
負極全体に対する活物質の量が少なすぎると電池のエネルギー密度を十分に向上させにくく、逆に多すぎると活物質の脱落が起こりやすくなる傾向にある。これらを勘案すると、活物質の量は負極全体に対して好ましくは5〜80重量%であり、更に好ましくは10〜50重量%、一層好ましくは20〜50重量%である。
【0021】
活物質層2の厚みは、負極全体に対する活物質の量の割合や活物質の粒径に応じて適宜調節することができ、本実施形態においては特に臨界的なものではない。一般には1〜100μm、特に3〜60μm程度である。活物質層は、後述するように、活物質の粒子を含む導電性スラリーを塗布することによって形成されることが好ましい。
【0022】
活物質層2においては、図1に示すように、該層中に含まれる粒子間に、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4が浸透している。金属材料4は、電解めっきによって粒子間に析出したものである。金属材料4は、活物質層2の厚み方向全域に亘って浸透していることが好ましい。そして浸透した当該材料中に活物質の粒子2aが存在していることが好ましい。つまり活物質の粒子2aは負極10の表面に実質的に露出しておらず集電層3a,3bの内部に包埋されていることが好ましい。これによって、活物質層2と集電層3a,3bとの密着性が強固なものとなり、活物質の脱落が一層防止される。また活物質層2中に浸透した前記材料4を通じて集電層3a,3bと活物質との間に電子伝導性が確保されるので、電気的に孤立した活物質が生成すること、特に活物質層2の深部に電気的に孤立した活物質が生成することが効果的に防止され、集電機能が保たれる。その結果、負極としての機能低下が抑えられる。更に負極の長寿命化も図られる。このことは、活物質として半導体であり電子伝導性の乏しい材料、例えばシリコン系材料を用いる場合に特に有利である。
【0023】
活物質層2中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い金属材料4は導電性を有するものであり、その例としては銅、ニッケル、鉄、コバルト又はこれらの金属の合金などの金属材料が挙げられる。当該材料は、集電層3a,3bを構成する材料と同種の材料であってもよく、或いは異種の材料であってもよい。
【0024】
活物質層2中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い金属材料4は、活物質層2をその厚み方向に貫いていることが好ましい。それによって2つの集電層3a,3bは金属材料4を通じて電気的に導通することになり、負極全体としての電子伝導性が一層高くなる。つまり本実施形態の負極10は、その全体が一体として集電機能を有する。リチウム化合物の形成能の低い金属材料4が活物質層2の厚み方向全域に亘って浸透していることは、該材料を測定対象とした電子顕微鏡マッピングによって確認できる。リチウム化合物の形成能の低い金属材料4を、活物質層2中に浸透させるための好ましい方法は後述する。
【0025】
活物質層2における活物質の粒子2aの間は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4で完全に満たされているのではなく、該粒子間に空隙が存在していることが好ましい。この空隙の存在によって、充放電に起因する活物質の粒子2aの体積変化に起因する応力が緩和される。この観点から、活物質層2における空隙の割合は0.1〜30体積%程度、特に0.5〜5体積%程度であることが好ましい。空隙の割合は、電子顕微鏡マッピングによって求めることができる。活物質層2は活物質の粒子2aを含む導電性スラリーを塗布し乾燥させることによって形成されることから、活物質層2には自ずと空隙が形成される。従って空隙の割合を前記範囲にするためには、例えば活物質の粒子2aの粒径、導電性スラリーの組成、スラリーの塗布条件を適切に選択すればよい。またスラリーを塗布乾燥して活物質層2を形成した後、適切な条件下でプレス加工して空隙の割合を調整してもよい。なお、ここでいう空隙には、後述する縦孔5は含まれないことに留意すべきである。
【0026】
活物質層中には活物質の粒子2aに加えて導電性炭素材料が含まれていても良い。これによって負極10に電子伝導性が一層付与される。この観点から活物質層中に含まれる導電性炭素材料の量は0.1〜20重量%、特に1〜10重量%であることが好ましい。導電性炭素材料としては例えばアセチレンブラックやグラファイトなどの粒子が用いられる。これらの粒子の粒径は40μm以下、特に20μm以下であることが、電子伝導性の一層付与の点から好ましい。該粒子の粒径の下限値に特に制限はなく小さいほど好ましい。該粒子の製造方法に鑑みると、その下限値は0.01μm程度となる。
【0027】
図1に示すように、負極10においては、負極10の表面において開孔し且つ活物質層2及び各集電層3a,3bの厚み方向に延びる縦孔5を多数有している。縦孔5は、負極10の厚み方向に貫通している。活物質層2においては、縦孔5の壁面において活物質層2が露出している。縦孔5の役割は大別して次のようなものが挙げられる。
【0028】
一つは、縦孔5の壁面において露出した活物質層2を通じて電解液を活物質層内に供給する役割である。この場合、縦孔5の壁面において活物質層2が露出しているが、活物質層内の活物質の粒子2a間に金属材料4が浸透しているので、該粒子2aが脱落することが防止されている。
【0029】
もう一つは、充放電に起因して活物質層内の活物質の粒子2aが体積変化した場合、その体積変化に起因する応力を緩和する役割である。体積変化に起因する応力の緩和は、主として負極10の平面方向に生ずる。即ち、充電によって体積が増加した活物質の粒子2aの体積の増加分が、空間となっている縦孔5に吸収される。その結果、負極10の著しい変形が効果的に防止される。
【0030】
縦孔5の他の役割として、負極内に発生したガスを、その外部に放出できるという役割がある。詳細には、負極中に微量に含まれている水分に起因して、H2、CO、CO2等のガスが発生することがある。これらのガスが負極内に蓄積すると分極が大きくなり、充放電のロスの原因となる。縦孔5を形成することで、これを通じて前記のガスが負極の外部に放出されるので、該ガスに起因する分極を小さくできる。更に、縦孔5の他の役割として、負極の放熱の役割がある。詳細には、縦孔5が形成されることによって負極の比表面積が増大するので、Liの吸蔵に伴い発生する熱が負極外部に効率よく放出される。また、活物質の粒子2aの体積変化に起因して応力が発生すると、それが原因で熱が発生する場合がある。縦孔5が形成されることで、その応力が緩和されるので、熱の発生自体が抑えられる。
【0031】
活物質層内に電解液を十分に供給する観点及び活物質の粒子2aの体積変化に起因する応力を効果的に緩和する観点から、負極10の表面において開孔している縦孔5の開孔率、即ち縦孔5の面積の総和を、負極10の表面の見掛けの面積で除して100を乗じた値は0.3〜30%、特に2〜15%であることが好ましい。同様の理由により、負極10の表面において開孔している縦孔5の開孔径は5〜500μm、特に20〜100μmであることが好ましい。また、縦孔5のピッチを好ましくは20〜600μm、更に好ましくは45〜400μmに設定することで、活物質層内に電解液を十分に供給でき、また活物質の粒子2aの体積変化による応力を効果的に緩和できるようになる。更に、負極10の表面における任意の部分に着目したとき、1cm×1cmの正方形の観察視野内に平均して100〜250000個、特に1000〜40000個、とりわけ5000〜20000個の縦孔5が開孔していることが好ましい。
【0032】
本実施形態の負極10においては、縦孔5は負極10の厚さ方向に貫通している。しかし、活物質層内に電解液を十分に供給し、また活物質の粒子2aの体積変化に起因する応力を緩和するという縦孔5の役割に鑑みると、縦孔5は負極10の厚さ方向に貫通している必要はなく、負極10の表面において開孔し且つ少なくとも活物質層2にまで達していればよい。
【0033】
図1に示すように負極10は、各集電層3a,3bはそれらの表面である第1の面1a及び第2の面1bにおいて開孔し且つ活物質層2と通ずる多数の微細空隙6(微細空隙6は、活物質層2に形成された空隙とは異なるものであることに留意すべきである)を有していることが好ましい。微細空隙6は各集電層3a,3bの厚さ方向へ延びるように該集電層3a,3b中に存在している。微細空隙6は電解液の流通が可能なものである。微細空隙6は、先に説明した縦孔5よりも微細な構造を有するものである。微細空隙6の役割は、活物質層内に電解液を十分に供給するという縦孔5の役割を補助するものである。従って、本発明において微細空隙6は必須の構造ではない。
【0034】
微細空隙6は、集電層3a,3bを断面観察した場合にその幅が約0.1μmから約10μm程度の微細なものである。微細であるものの、微細空隙6は電解液の浸透が可能な程度の幅を有している。尤も非水電解液は水系の電解液に比べて表面張力が小さいことから、微細空隙6の幅が小さくても十分に浸透が可能である。微細空隙6は、好ましくは集電層3a,3bを電解めっきで形成する際に同時に形成される。
【0035】
第1の面1a及び第2の面1bを電子顕微鏡観察により平面視したとき、少なくとも一方の面における微細空隙6の平均開孔面積は、0.1〜50μm2であり、好ましくは0.1〜20μm2、更に好ましくは0.5〜10μm2程度である。この範囲の開孔面積とすることで、電解液の十分な浸透を確保しつつ、活物質の脱落を効果的に防止することができる。また充放電の初期段階から充放電容量を高めることができる。
【0036】
第1の面1a及び第2の面1bのうち、平均開孔面積が前記の範囲を満たす面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、観察視野の面積に対する微細空隙6の開孔面積の総和の割合(この割合を開孔率という)は、好ましくは0.1〜20%であり、更に好ましくは0.5〜10%である。この理由は微細空隙6の開孔面積を前記の範囲内とすることと同様の理由である。更に同様の理由により、第1の面1a及び第2の面1bのうち、平均開孔面積が前記の範囲を満たす面を電子顕微鏡観察により平面視したときに、どのような観察視野をとっても、100μm×100μmの正方形の視野範囲内に1個〜2万個、特に10個〜1千個、とりわけ30個〜500個の微細空隙6が存在していることが好ましい(この値を分布率という)。
【0037】
次に本実施形態の負極10の好ましい製造方法を、図2を参照しながら説明する。本製造方法では、電解めっきによって集電層3bを形成し、次いでその上に活物質層2を形成し、更にその上に電解めっきによって集電層3aを形成し、最後に縦孔5を形成するという工程が行われる。先ず図2(a)に示すようにキャリア箔11を用意する。キャリア箔11は、負極10を製造するための支持体として用いられるものである。また製造された負極10をその使用の前まで、或いは電池組立加工の最中に支持しておき、負極10の取り扱い性を向上させるために用いられるものである。これらの観点から、キャリア箔11は、負極10の製造工程において及び製造後の搬送工程や電池組立工程等においてヨレ等が生じないような強度を有していることが好ましい。従ってキャリア箔11は、その厚みが10〜50μm程度であることが好ましい。先に述べた通り、キャリア箔11の重要な役割は負極10を製造するための支持体である。従って集電層3bの強度が十分である場合は必ずしもキャリア箔を用いて負極10を製造することを要しない。
【0038】
キャリア箔11としては導電性を有するものを用いることが好ましい。この場合、導電性を有していれば、キャリア箔11は金属製でなくてもよい。しかし金属製のキャリア箔11を用いることで、負極10の製造後にキャリア箔11を溶解・製箔してリサイクルできるという利点がある。金属製のキャリア箔11を用いる場合、Cu、Ni、Co、Fe、Cr、Sn、Zn、In、Ag、Au、Al及びTiのうちの少なくとも1種類の金属を含んでキャリア箔11が構成されていることが好ましい。
【0039】
キャリア箔11としては、例えば圧延箔や電解箔などの各種方法によって製造された箔を特に制限なく用いることができる。キャリア箔11上に形成される集電層3b中の微細空隙の孔径や存在密度をコントロールする観点から、キャリア箔11の表面は、或る程度凹凸形状になっていることが好ましい。圧延箔は、その製造方法に起因して各面が平滑になっている。これに対して電解箔は一面が粗面であり、他面が平滑面になっている。粗面は、電解箔を製造する際の析出面である。そこで、電解箔からなるキャリア箔11における粗面上に集電層3bを形成すれば、別途キャリア箔に粗化処理をする手間が省けるので簡便である。粗面を用いる利点については後述する。かかる粗面上に集電層3bを形成する場合、その表面粗さRa(JIS B 0601)は0.05〜5μm、特に0.2〜0.8μmであることが、所望の径及び存在密度を有する微細空隙を容易に形成し得る点から好ましい。
【0040】
次にキャリア箔11の一面に剥離剤を施して剥離処理を行う。剥離剤はキャリア箔11における粗面に施すことが好ましい。剥離剤は、後述する剥離工程において、キャリア箔11から負極10を首尾良く剥離するために用いられる。剥離剤としては有機化合物を用いることが好ましく、特に窒素含有化合物又は硫黄含有化合物を用いることが好ましい。窒素含有化合物としては、例えばベンゾトリアゾール(BTA)、カルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)、トリルトリアゾール(TTA)、N',N'−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア(BTD−U)及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール(ATA)などのトリアゾール系化合物が好ましく用いられる。硫黄含有化合物としては、メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、チオシアヌル酸(TCA)及び2−ベンズイミダゾールチオール(BIT)などが挙げられる。これらの有機化合物はアルコール、水、酸性溶媒、アルカリ性溶媒などに溶解して用いられる。例えばCBTAを用いた場合、その濃度は2〜5g/1とするのが好ましい。剥離性は、剥離剤の濃度や塗布量によって制御できる。一方、有機化合物による剥離層に代えて、クロム、鉛、クロメート処理などによる無機系剥離層を形成させることも有効である。剥離剤を施す工程は、あくまでも、後述する剥離工程(図2(g))において、キャリア箔11から負極10を首尾良く剥離するために行われるものである。従って、この工程を省いても集電層3bに微細空隙を形成することができる。
【0041】
次に図2(b)に示すように、剥離剤(図示せず)を施した上に、導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜12を形成する。塗工液はキャリア箔11の粗面に塗工されるので、該粗面における凹部に溜まりやすくなる。この状態で溶媒が揮発すると、塗膜12の厚みは不均一になる。つまり粗面の凹部に対応する塗膜の厚みは大きく、凸部に対応する塗膜の厚みは小さくなる。本製造方法においては、塗膜12の厚みの不均一性を利用して、集電層3bに多数の微細空隙を形成する。
【0042】
導電性ポリマーとしては、その種類に特に制限はなく、従来公知のものを用いることができる。例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)及びポリメチルメタクリレート(PMMA)等が挙げられる。特に、リチウムイオン伝導性ポリマーを用いることが好ましい。また、導電性ポリマーはフッ素含有の導電性ポリマーであることが好ましい。フッ素含有ポリマーは、熱的及び化学的安定性が高く、機械的強度に優れているからである。これらのことを考慮すると、リチウムイオン伝導性を有するフッ素含有ポリマーであるポリフッ化ビニリデンを用いることが特に好ましい。
【0043】
導電性ポリマーを含む塗工液は、導電性ポリマーが揮発性の有機溶媒に溶解してなるものである。有機溶媒としては、導電性ポリマーとして例えばポリフッ化ビニリデンを用いる場合には、N−メチルピロリドンなどを用いることができる。
【0044】
本製造方法において、キャリア箔11上に多数の微細空隙を有する集電層3bが形成されるメカニズムは次のように考えられる。塗膜12が形成されたキャリア箔11は電解めっき処理に付されて、図2(c)に示すように塗膜12上に集電層3bが形成される。この状態を図2(c)の要部拡大図である図3に示す。塗膜12を構成する導電性ポリマーは、金属ほどではないが電子伝導性を有する。従って塗膜12はその厚みに応じて電子伝導性が異なる。その結果、導電性ポリマーを含む塗膜12の上に電解めっきによって金属を析出させると、電子伝導性に応じて電析速度に差が生じ、その電析速度の差によって集電層3bに微細空隙6が形成される。つまり、電析速度の小さい部分、換言すれば塗膜12の厚い部分が微細空隙6になりやすい。なお、先に述べた通り、集電層に微細空隙を形成することは、本発明において必須ではないので、集電層に微細空隙を形成しない場合には、導電性ポリマーを含む塗工液の塗工工程は不要である。
【0045】
キャリア箔11の粗面の表面粗さRaによって微細空隙6の孔径や存在密度をコントロールできることは先に述べた通りであるが、これに加えて塗工液に含まれる導電性ポリマーの濃度によっても微細空隙6の孔径や存在密度をコントロールできる。例えば導電性ポリマーの濃度が薄い場合には孔径は小さくなる傾向にあり、存在密度も小さくなる傾向にある。逆に、導電性ポリマーの濃度が濃い場合には孔径は大きくなる傾向にある。この観点から、塗工液における導電性ポリマーの濃度は0.05〜5重量%、特に1〜3重量%であることが好ましい。
【0046】
集電層3bを形成するためのめっき浴やめっき条件は、集電層3bの構成材料に応じて適切に選択される。集電層3bを例えば銅から構成する場合には、めっき浴として以下の組成を有する硫酸銅浴やピロリン酸銅浴を用いることができる。これらのめっき浴を用いる場合の浴温は40〜70℃程度であり、電流密度は0.5〜50A/dm2程度であることが好ましい。
・CuSO4・5H2O 150〜350g/l
・H2SO4 50〜250g/l
尚、有機剤により構成される剥離剤層や導電性ポリマー層は塗工の他、浸漬によっても形成させることが可能である。
【0047】
次に図2(d)に示すように集電層3b上に、活物質の粒子を含む導電性スラリーを塗布して活物質層2を形成する。スラリーは、活物質の粒子の他に、導電性炭素材料の粒子、結着剤及び希釈溶媒などを含んでいる。これらの成分のうち、活物質の粒子及び導電性炭素材料の粒子については先に説明した通りである。結着剤としてはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン(PE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などが用いられる。希釈溶媒としてはN−メチルピロリドン、シクロヘキサンなどが用いられる。スラリー中における活物質の粒子の量は14〜40重量%程度とすることが好ましい。導電性炭素材料の粒子の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。結着剤の量は0.4〜4重量%程度とすることが好ましい。これらに希釈溶媒を加えてスラリーとする。
【0048】
スラリーの塗膜を乾燥させて活物質層2を形成する。形成された活物質層2は、粒子間に多数の微小空間を有する。活物質層2が形成されたキャリア箔11を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬して電解めっきを行う。めっき浴への浸漬によって、めっき液が活物質層2内の前記微小空間に浸入して、活物質層2と集電層3bとの界面にまで達する。その状態下に電解めっきが行われる(以下、このめっきを浸透めっきともいう)。その結果、(a)活物質層2の内部、及び(b)活物質層2の内面側(即ち集電層3bと対向している面側)において、リチウム化合物の形成能の低い金属材料が析出して、該材料が活物質層2の厚み方向全域に亘って浸透する。
【0049】
浸透めっきの条件は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を活物質層2中に析出させるために重要である。例えばリチウム化合物の形成能の低い金属材料として銅を用いる場合、硫酸銅系溶液を用いるときには、銅の濃度を30〜100g/l、硫酸の濃度を50〜200g/l、塩素の濃度を30ppm以下とし、液温を30〜80℃、電流密度を1〜100A/dm2とすればよい。ピロ燐酸銅系溶液を用いる場合には、銅の濃度2〜50g/l、ピロ燐酸カリウムの濃度100〜700g/lとし、液温を30〜60℃、pHを8〜12、電流密度を1〜10A/dm2とすればよい。これらの電解条件を適宜調節することで、リチウム化合物の形成能の低い金属材料が活物質層2の厚み方向全域に亘って析出する。特に重要な条件は電解時の電流密度である。電流密度が高すぎると、活物質層2の内部での析出が起こらず、活物質層2の表面でのみ析出が起こってしまう。
【0050】
次に、活物質層2の上に集電層3aを形成する。ところで、活物質層2は、活物質の粒子2a等を含むものであるから、その表面は粗面となっている。従って、集電層3aを形成するために、電解箔からなるキャリア箔11の粗面上に集電層3bを形成した手段と同様の手段を採用すれば、集電層3aにも多数の微細空隙6を形成させることも可能である。即ち、活物質層2の表面に導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜を形成する。次いで、集電層3bを形成したときの条件と同様の条件を用い、図2(e)に示すように、該塗膜の上に電解めっきによって集電層3aを形成する。なお、先に述べた通り、集電層に微細空隙を形成することは、本発明において必須ではないので、集電層に微細空隙を形成しない場合には、導電性ポリマーを含む塗工液の塗工工程は不要である。
【0051】
次に、図2(f)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3a,3b及び活物質層2を貫通する縦孔5を形成する。縦孔5の形成方法に特に制限はない。例えばレーザー加工によって縦孔5を形成することができる。或いは針やポンチによって機械的に穿孔を行うこともできる。両者を比較すると、レーザー加工を用いる方が、サイクル特性及び充放電効率が良好な負極を得やすい。この理由は、レーザ加工の場合、加工によって溶解・再凝固した金属材料が縦孔5の壁面に存在する活物質粒子の表面を覆うので、活物質が直接露出することが防止され、それによって活物質が縦孔5の壁面から脱落することが防止されるからである。なお、縦孔5の他の形成手段として、サンドブラスト加工を用いたり、フォトレジスト技術を利用して縦孔5を形成することもできる。縦孔5は、実質的に等間隔に存在するように形成されることが好ましい。そうすることによって、電極全体が均一に反応を起こすことが可能となるからである。
【0052】
最後に、図2(g)に示すようにキャリア箔11を集電層3bから剥離分離する。これによって負極10が得られる。なお、図2(g)においては導電性ポリマーの塗膜12が集電層3b側に残るように描かれているが、該塗膜12はその厚さや導電性ポリマーの種類によってキャリア箔11側に残る場合もあれば、集電層3b側に残る場合もある。或いはこれら双方に残る場合もある。なお、先に述べた通り、負極10をその使用の前まではキャリア箔11から剥離せず、キャリア箔11に支持させておいてもよい。
【0053】
このようにして得られた本実施形態の負極は、公知の正極、セパレータ、非水系電解液と共に用いられて非水電解液二次電池となされる。正極は、正極活物質並びに必要により導電剤及び結着剤を適当な溶媒に懸濁し、正極合剤を作製し、これを集電体に塗布、乾燥した後、ロール圧延、プレスし、さらに裁断、打ち抜きすることにより得られる。正極活物質としては、リチウムニッケル複合酸化物、リチウムマンガン複合酸化物、リチウムコバルト複合酸化物等の従来公知の正極活物質が用いられる。セパレーターとしては、合成樹脂製不織布、ポリエチレン又はポリプロピレン多孔質フイルム等が好ましく用いられる。非水電解液は、リチウム二次電池の場合、支持電解質であるリチウム塩を有機溶媒に溶解した溶液からなる。リチウム塩としては、例えば、LiC1O4、LiA1Cl4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiSCN、LiC1、LiBr、LiI、LiCF3SO3、LiC4F9SO3等が例示される。
【0054】
次に、本発明の負極の第2の実施形態を、図4を参照しながら説明する。第2の実施形態に関し特に説明しない点については、第1の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図4において、図1〜図3と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0055】
本実施形態の負極10は、その基本構成部材として、二つの負極前駆体20及び金属リチウム層7を有している。金属リチウム層7は、負極前駆体20の間に挟持されている。
【0056】
負極前駆体20は、集電層3と、該集電層3の一面に配された活物質層2とを備えている。図4に示すように、金属リチウム層7は、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し且つ集電層3が外方を向くように両負極前駆体20間に挟持されている。
【0057】
二つの活物質層2間に介在配置された金属リチウム層7は、非水電解液の存在下に、活物質(負極活物質)との間に局部電池を構成する。これによって金属リチウムが、金属リチウム層7の近傍に位置する活物質と化学的に反応してリチウム化物を形成する。或いはリチウムの濃度勾配に起因してリチウムが活物質と反応してリチウム化物を形成する。このように、金属リチウム層7はリチウムの供給源として作用する。その結果、充放電サイクル或いは長期保存時における電解液との反応などによってリチウムが消費されても、リチウム化物からリチウムが供給されるので、リチウム枯渇の問題が解消される。それによって負極10の長寿命化が図られる。金属リチウム層7は、負極10の表面に露出しておらず、負極10の内部に位置しており、またリチウムは活物質中と反応してリチウム化物を形成するので、内部短絡や発火の原因となるリチウムのデンドライトが生成するおそれも少ない。リチウムが反応した後の金属リチウム層7にはリチウムと活物質とが反応して体積膨張したリチウム化合物が存在する。
【0058】
特筆すべきは、負極10を電池に組み込んで充電を行わずとも、金属リチウムと活物質との反応が起こることである。この現象は本発明者らが初めて見いだしたものである。電池の組み込み前に金属リチウムと活物質との反応が起こることで、活物質は、電池の組み込み前に既に体積が増加した状態になっている。従って、その後に負極10を電池に組み込み充放電を行っても、充放電に起因する負極10の膨張率は極めて小さい。その結果、本実施形態の負極10は、充放電による活物質の体積変化に起因する変形が極めて起こりづらいという非常に有利な効果を奏する。
【0059】
金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して0.1〜70%、特に5〜30%であることが、容量回復特性が良好になることから好ましい。
【0060】
次に図4に示す負極10の好ましい製造方法を、図5を参照しながら説明する。なお本製造方法に関し特に説明しない点については、図2及び図3に示す製造方法に関する説明が適宜適用される。先ず、負極前駆体20を製造する。負極前駆体20の製造には、図5(a)に示すようにキャリア箔11を用意する。次に、必要に応じ、キャリア箔11の一面上に、剥離剤を施して剥離処理を行う。その上に、図5(b)に示すように、導電性ポリマーを含む塗工液を塗工し乾燥させて塗膜12を形成する。次に図5(c)に示すように、塗膜12を施した上に、集電層3の構成材料を電解めっきによって電析させて集電層3を形成する。集電層3上には、図5(d)に示すように、活物質の粒子を含む導電性スラリーを塗布して活物質層2を形成する。スラリーの塗膜が乾燥して活物質層2が形成された後、該活物質層2が形成されたキャリア箔11を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬して浸透めっきを行う。
【0061】
このようにしてキャリア箔11上に集電層3と活物質層2とをこの順で備えた負極前駆体20を形成する。これを一対用い、図5(e)に示すように、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向するように、金属リチウム箔30を両負極前駆体20間に挟み込む。それによって金属リチウム箔30と両負極前駆体20とを貼り合わせにより一体化させる。この場合、金属リチウム箔30と両負極前駆体20とを単に重ね合わせて圧着させるだけの操作でこれら三者を貼り合わせることができる。貼り合わせを強固にしたい場合には、導電性ペースト等の導電性接着材料を用いてこれら三者を貼り合わせてもよい。或いは、一対の負極前駆体20を張り合わせる前に予めキャリア箔を分離除去しても良い。
【0062】
次に、図5(f)に示すように、一方のキャリア箔11を集電層3から剥離させ、集電層3を露出させる。一方の集電層3が露出したら、図5(g)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3,3、両活物質層2,2及び金属リチウム箔30を貫通する縦孔5を形成する。最後に、図5(h)に示すように、もう一方のキャリア箔11をもう一方の集電層3から剥離分離する。これによって目的とする負極10が得られる。
【0063】
次に、本発明の負極の第3〜第5の実施形態について図6〜図9を参照しながら説明する。第3〜第5の実施形態に関し特に説明しない点については、第1及び第2の実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、図6〜図9において、図1〜図5と同じ部材に同じ符号を付してある。
【0064】
図6に示す第3の実施形態の負極10においては、一対の集電層3a,3b間に、一層の活物質層2及び一層の金属リチウム層7が介在配置されている。そして、負極10をその厚み方向に貫通する縦孔5が多数形成されている。活物質層2とそれに隣接する集電層3aは、第2の実施形態の負極における負極前駆体20に相当するものである。活物質層2に隣接する集電層3aには必要に応じて微細空隙(図示せず)が形成される。一方、金属リチウム層7に隣接する集電層3bには微細空隙が形成されていない。
【0065】
図7に示す第4の実施形態の負極10は、活物質層2とそれに隣接する集電層3からなる負極前駆体20を一対備えている。また各面に金属リチウム層7が配された導電性箔8も備えている。各面に金属リチウム層7が配された導電性箔8は、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し且つ集電層3が外方を向くように両負極前駆体20間に挟持されている。集電層3には必要に応じて微細空隙(図示せず)が形成される。更に、負極10をその厚み方向に貫通する縦孔5が多数形成されている。
【0066】
図7に示す実施形態の負極10は、図6に示す実施形態の負極に比較して、導電性箔8を備えている分だけ強度が高いものである。このことは、ジェリー・ロール・タイプの電池を作製する場合に有利である。この観点から、導電性箔8はその厚さが好ましくは5〜20μmである。導電性箔8は一般に金属箔から構成される。導電性箔8を構成する材料としては、リチウム化合物の形成能の低い金属材料が挙げられる。そのような材料としては、集電層3や、浸透めっきに用いられる金属材料4として先に説明した材料と同様のものを用いることができる。また、強度を高める観点から、ステンレス箔や高強度圧延合金箔を用いることも有効である。
【0067】
図7に示す実施形態の負極10の好ましい製造方法は次の通りである。先ず、図8(a)に示すように、導電性箔8を用意し、その各面に金属リチウム層7を形成する。金属リチウム層7は公知の薄膜形成手段、例えば真空蒸着法等によって形成することができる。これとは別に、図2に示す第1の実施形態の負極の製造方法に従い、活物質層2とそれに隣接する集電層3からなる負極前駆体20を予め製造しておき、図8(b)に示すように、金属リチウム層7が形成された導電性箔8を、一対の負極前駆体20によって挟み込む。負極前駆体20はキャリア箔11によって支持されている。挟み込みに際しては、各負極前駆体20における活物質層2どうしが対向し、集電層3が外方を向くようにする。次いで図8(c)に示すように、一方のキャリア箔11を集電層3から剥離させ、集電層3を露出させる。一方の集電層3が露出したら、図8(d)に示すように、所定の孔あけ加工によって両集電層3,3、両活物質層2,2、両金属リチウム層7,7及び導電性箔8を貫通する縦孔5を形成する。最後に、図8(e)に示すように、もう一方のキャリア箔11をもう一方の集電層3から剥離分離する。これによって目的とする負極10が得られる。
【0068】
図9に示す実施形態の負極10は、これまでに説明した実施形態の負極と異なり、集電体9を有している。負極10は、集電体9上に活物質層2を有している。本実施形態の負極10は集電体9を有しているので、活物質層2上に集電層を設ける必要はない。活物質層2は、活物質の粒子2aを含み、粒子2a間に、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4が浸透している。負極10においては、活物質層2の表面において開孔し、且つ活物質層2の厚み方向に延びる多数の縦孔5を多数有している。
【0069】
集電体9は、非水電解液二次電池用負極の集電体として従来用いられているものと同様のものを用いることができる。集電体は、リチウム化合物の形成能の低い金属材料4から構成されていることが好ましい。そのような金属材料の例は既に述べた通りである。特に、銅、ニッケル、ステンレス等からなることが好ましい。集電体9の厚みは本実施形態において臨界的ではないが、負極10の強度維持と、エネルギー密度向上とのバランスを考慮すると、10〜30μmであることが好ましい。
【0070】
本実施形態の負極10は、第1の実施形態の負極の製造方法と類似の方法で製造できる。先ず、集電体9の一面に活物質の粒子2aを含むスラリーを塗工して塗膜を形成する。塗膜が形成された集電体9を、リチウム化合物の形成能の低い金属材料を含むめっき浴中に浸漬して電解めっきを行う。これによって活物質層2が形成される。最後に、活物質層2に対して孔あけ加工を施すことで、活物質層2の厚み方向に延びる多数の縦孔5を該活物質層2に形成する。
【0071】
なお、本実施形態の負極10においては集電体9の片面にのみ活物質層2が形成されているが、これに代えて集電体9の両面に活物質層2を形成し、各活物質層2に縦孔5を形成してもよい。また、縦孔5は集電体9を貫通していてもよい。
【0072】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されず種々の変更が可能である。例えば、図9に示す実施形態の負極においては、集電体としてエキスパンドメタルを用いてもよい。
【0073】
また、従来の電極に用いられてきた集電体と呼ばれる集電用の厚膜導電体の各面に、負極前駆体20を重ね合わせ、これらを厚さ方向に貫通する縦孔を形成して負極を構成してもよい。
【0074】
また、図4及び図6に示す実施形態の負極においては、金属リチウム層7に縦孔5を形成しなくてもよい。同様に、図7に示す実施形態の負極においては、金属リチウム層7及び導電性箔8に縦孔5を形成しなくてもよい。
【0075】
また、前記の各実施形態の負極は、これを単独で用いることも可能であり、或いは該負極を負極前駆体として用い、該負極前駆体を複数枚積層して使用することも可能である。後者の場合、隣り合う負極前駆体間に、芯材となる導電性箔(例えば金属箔)を介在配置することも可能である。
【0076】
また前記の各実施形態においては集電層3(3a,3b)は単層構造であったが、これに代えて、材料の異なる2種以上の層からなる多層構造にしても良い。例えば集電層3(3a,3b)をニッケルからなる内層と銅からなる外層の2層構造とすることで、活物質の体積変化に起因する負極の著しい変形を一層効果的に防止することができる。
【0077】
また集電層3(3a,3b)の材料と、活物質層2中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い金属材料とが異なる場合には、活物質層2中に浸透しているリチウム化合物の形成能の低い金属材料は、活物質層2と集電層3(3a,3b)との境界部まで存在していてもよい。或いは、リチウム化合物の形成能の低い金属材料は、当該境界部を越えて集電層3(3a,3b)の一部を構成していてもよい。逆に、集電層3(3a,3b)の構成材料が、当該境界部を越えて活物質層2内に存在していてもよい。
【実施例】
【0078】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲はかかる実施例に制限されるものではない。
【0079】
〔実施例1〕
図2に示す方法に従い図1に示す負極を製造した。先ず、電解によって得られた銅製のキャリア箔(厚さ35μm)を室温で30秒間酸洗浄した。引き続き室温で30秒間純水洗浄した。次いで、40℃に保った状態の3.5g/lのCBTA溶液中に、キャリア箔を30秒間浸漬した。これにより剥離処理を行った。剥離処理後、溶液から引き上げて15秒間純水洗浄した。
【0080】
キャリア箔の粗面(表面粗さRa=0.5μm)に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解した濃度2.5重量%の塗工液を塗布した。溶媒が揮発して塗膜が形成された後、H2SO4/CuSO4系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。これによって銅からなる集電層を塗膜上に形成した。めっき浴の組成は、CuSO4が250g/l、H2SO4が70g/lであった。電流密度は5A/dm2とした。集電層は9μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
【0081】
次に、集電層上に負極活物質の粒子を含むスラリーを膜厚20μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質粒子はSiからなり、平均粒径はD50=2μmであった。スラリーの組成は、活物質:アセチレンブラック:スチレンブタジエンゴム=98:2:1.7であった。
【0082】
活物質層が形成された後に、キャリア箔を、以下の浴組成を有するワット浴に浸漬させ、電解により、活物質層に対してニッケルの浸透めっきを行った。電流密度は5A/dm2、浴温は50℃、pHは5であった。陽極にはニッケル電極を用いた。電源は直流電源を用いた。この浸透めっきは、めっき面から一部の活物質粒子が露出する程度に行った。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
・NiSO4・6H2O 250g/l
・NiCl2・6H2O 45g/l
・H3BO3 30g/l
【0083】
次に、Cu系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。めっき浴の組成は、H3PO4が200g/l、Cu3(PO4)2・3H2Oが200g/lであった。また、めっきの条件は、電流密度5A/dm2、浴温度40℃であった。これによって銅からなる集電層を活物質層上に形成した。この集電層は8μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
【0084】
次に、活物質層上に形成された集電層に向けてYAGレーザを照射し、縦孔を規則的に形成した。縦孔は、両集電層及びそれらの間に位置する活物質層を貫通するように形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。
【0085】
最後に、キャリア箔とそれに接する集電層とを剥離して、一対の集電層間に活物質層が挟持されてなる非水電解液二次電池用負極を得た。得られた負極の使用前及び1サイクル後の外観を図10に示す。また得られた負極の表面及び縦断面の走査型電子顕微鏡写真を図11に示す。走査型電子顕微鏡による観察の結果、キャリア箔から剥離した側の集電層には、100μm×100μmの正方形の範囲内に平均して30個の微細孔が存在していることを確認した。
【0086】
〔実施例2〕
図5に示す方法に従い図4に示す負極を製造した。先ず、キャリア箔の粗面(表面粗さRa=0.5μm)に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチルピロリドンに溶解した濃度2.5重量%の塗工液を塗布した。溶媒が揮発して塗膜が形成された後、H2SO4/CuSO4系のめっき浴にキャリア箔を浸漬させて電解めっきを行った。これによって銅からなる集電層を塗膜上に形成した。めっき浴の組成は、CuSO4が250g/l、H2SO4が70g/lであった。電流密度は5A/dm2とした。集電層は5μmの厚さに形成した。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。
【0087】
次に、集電層上に負極活物質の粒子を含むスラリーを膜厚15μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質粒子はSiからなり、平均粒径はD50=2μmであった。スラリーの組成は、活物質:アセチレンブラック:スチレンブタジエンゴム=98:2:1.7であった。
【0088】
活物質層が形成されたにキャリア箔を、以下の浴組成を有するワット浴に浸漬させ、電解により、活物質層に対してニッケルの浸透めっきを行った。電流密度は5A/dm2、浴温は50℃、pHは5であった。陽極にはニッケル電極を用いた。電源は直流電源を用いた。めっき浴から引き上げた後、30秒間純水洗浄して大気中で乾燥させた。このようにしてキャリア箔に支持された負極前駆体を得た。
・NiSO4・6H2O 250g/l
・NiCl2・6H2O 45g/l
・H3BO3 30g/l
【0089】
負極前駆体とは別に用意しておいた厚さ25μmの金属リチウム箔を、一対の負極前駆体で挟み込んだ。挟み込みは、各負極前駆体における活物質層どうしが対向するように行った。これによって各負極前駆体と金属リチウムとを貼り合わせて一体化させた。
【0090】
次に、一方のキャリア箔を集電層から剥離させて集電層を露出させた。露出した集電層に向けてYAGレーザを照射し、各負極前駆体及び金属リチウム箔を貫通する縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。最後に、もう一方のキャリア箔と集電層とを剥離して目的とする負極を得た。負極における金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して30%であった。
【0091】
〔実施例3〕
図6に示す負極を製造した。先ず、実施例2と同様の操作によって、キャリア箔に支持された負極前駆体を得た。次に、負極前駆体とは別に、厚さ5μmの銅箔(集電層)の一面に、真空蒸着法によって厚さ10μmの金属リチウム層を形成した。この銅箔と、先に製造しておいた負極前駆体とを貼り合わせて一体化させた。貼り合わせは、銅箔における金属リチウム層と、負極前駆体における活物質層とが当接するように行った。
【0092】
次に、銅箔に向けてYAGレーザを照射し、銅箔、金属リチウム層及び負極前駆体を貫通する縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。最後に、キャリア箔と集電層とを剥離して目的とする負極を得た。負極における金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して25%であった。
【0093】
〔実施例4〕
図8に示す方法に従い図7に示す負極を製造した。先ず、実施例2と同様の操作によって、キャリア箔に支持された負極前駆体を得た。負極前駆体とは別に、厚さ10μmの銅箔の各面に、真空蒸着法によって厚さ10μmの金属リチウム層を形成した。次いで、この銅箔を、先に製造しておいた一対の負極前駆体で挟み込んだ。挟み込みは、各負極前駆体における活物質層どうしが対向し、集電層が外方を向くように行った。これによって、金属リチウム層を各面に有する銅箔と、各負極前駆体とを貼り合わせて一体化させた。
【0094】
次に、一方のキャリア箔を集電層から剥離させて集電層を露出させた。露出した集電層に向けてYAGレーザを照射し、各負極前駆体及び金属リチウム層を各面に有する銅箔を貫通する縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。最後に、もう一方のキャリア箔と集電層とを剥離して目的とする負極を得た。負極における金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して25%であった。
【0095】
〔実施例5〕
実施例4と同様の操作で、一対の負極前駆体を得た。これら負極前駆体における活物質層が露出している面に向けてYAGレーザを照射し、該負極前駆体を貫通する縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。
【0096】
次いで、実施例4と同様の操作で得られた、両面に金属リチウム層を有する銅箔を、縦孔が形成された一対の負極前駆体で挟み込んだ。挟み込みは、各負極前駆体における活物質層どうしが対向し、集電層が外方を向くように行った。これによって、金属リチウム層を各面に有する銅箔と、各負極前駆体とを重ね合わせて一体化させた。最後に、キャリア箔と集電層とを剥離して目的とする負極を得た。負極における金属リチウムの量は、活物質の飽和可逆容量に対して27%であった。
【0097】
〔実施例6〕
実施例5において、縦孔の直径を15μm、ピッチを100μm(10000孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0098】
〔実施例7〕
実施例5において、縦孔の直径を25μm、ピッチを200μm(2500孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0099】
〔実施例8〕
実施例5において、縦孔の直径を50μm、ピッチを100μm(10000孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0100】
〔実施例9〕
実施例5において、縦孔の直径を50μm、ピッチを200μm(2500孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0101】
〔実施例10〕
実施例5において、縦孔の直径を100μm、ピッチを300μm(1111孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0102】
〔実施例11〕
実施例5において、縦孔の直径を250μm、ピッチを1000μm(100孔/cm2)とする以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0103】
〔実施例12〕
実施例5において、負極前駆体の作製時に、以下の組成を有するピロリン酸銅浴を用い、以下の条件で活物質層に対して浸透めっきを行った以外は実施例5と同様にして負極を得た。
<ピロリン酸銅浴の組成>
・K4P2O7 450g/l
・Cu2P2O7・3H2O 105g/l
・KNO3 15g/l
<浸透めっきの条件>
・電流密度:3A/dm2
・浴温度:55℃
・pH:8.2
・陽極:DSE電極
【0104】
〔実施例13〕
実施例10において、縦孔の形成方法として、YAGレーザに代えてポンチによる機械的穿孔を用いた以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0105】
〔実施例14〕
実施例10において、縦孔の形成方法として、YAGレーザに代えてサンドブラスト法を用いて穿孔を行った以外は実施例5と同様にして負極を得た。
【0106】
〔実施例15〕
図9に示す負極を製造した。厚さ18μmの電解銅箔の片面に、負極活物質の粒子を含むスラリーを膜厚20μmになるように塗布し活物質層を形成した。活物質粒子はSiからなり、平均粒径はD50=2μmであった。スラリーの組成は、活物質:アセチレンブラック:スチレンブタジエンゴム=98:2:1.7であった。次いで、活物質層に対してニッケルの浸透めっきを行った。浸透めっきの条件は実施例1と同様とした。このようにして得られた活物質層に向けてYAGレーザを照射し、縦孔を規則的に形成した。縦孔の直径は25μm、ピッチは100μm(10000孔/cm2)とした。
【0107】
〔比較例1〕
電解によって得られた銅箔(厚さ35μm)の各面に、実施例1で用いたスラリーと同様のスラリーを、膜厚15μmになるように塗布して活物質層を形成し、非水電解液二次電池用負極を得た。
【0108】
〔性能評価〕
実施例及び比較例にて得られた負極を用い、以下の方法で非水電解液二次電池を作製した。この電池の1サイクル後の放電容量、1サイクル後の不可逆容量、100サイクル後の容量維持率、100サイクル後の充放電効率、及び負極厚み変化率を以下の方法で測定、算出した。これらの結果を以下の表1に示す。
【0109】
〔非水電解液二次電池の作製〕
実施例及び比較例で得られた負極を作用極とし、対極(正極)としてLiCoO2を用い、両極を、セパレーターを介して対向させた。非水電解液としてLiPF6/エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合液(1:1容量比)を用いて通常の方法によって非水電解液二次電池を作製した。電池は、正極と負極との容量比が1:1及び1:2の二種類を作製した。正極と負極との容量比が1:1の電池を、1サイクル後の放電容量及び1サイクル後の不可逆容量の測定に用いた。正極と負極との容量比が1:2の電池を、100サイクル後の容量維持率、100サイクル後の充放電効率及び負極厚み変化率の測定に用いた。
【0110】
〔1サイクル後の放電容量〕
単位重量当たり及び単位容積当たりの放電容量を測定した。単位重量当たりの放電容量は、活物質(Si)の重量を基準とした。単位容積当たりの放電容量は、負極の体積を基準とした。但し、充電時の負極の膨張は考慮しなかった。
【0111】
〔1サイクル後の不可逆容量〕
不可逆容量(%)=(1−初回放電容量/初回充電容量)×100
即ち、充電したが放電できず、活物質に残存した容量を示す。
【0112】
〔100サイクル後の容量維持率〕
100サイクル後の放電容量を測定し、その値を最大負極放電容量で除し、100を乗じて算出した。
【0113】
〔100サイクル後の充放電効率〕
100サイクル後の充放電効率(%)=100サイクル後の放電容量/100サイクル後の充電容量×100
【0114】
〔負極厚み変化率〕
宝泉株式会社製HS変位セルを用いて、1サイクルにおける充電に伴う負極の厚み変化を測定した。この変位セルでは、負極+セパレーター+正極LiCoO2の、全体の厚み変化が測定される。しかし、正極は充放電によってほとんど膨張せず、負極の厚み変化の寄与率が大きいので、測定している厚み変化は実質的に負極の厚み変化とみなせる。負極厚み変化率は次式から算出する。
負極厚み変化率(%)=[(1サイクル充電状態での厚み)−(充電前の厚み)/充電前の厚み]×100
【0115】
【表1】
【0116】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例の負極を用いた電池は、放電容量が高く、また不可逆容量が小さいことが判る。更に、容量維持率及び充放電効率が高いことが判る。更に、負極の厚み変化率が小さいことが判る。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の負極の第1の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図2】図1に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。
【図3】集電層及び微細空隙が形成される状態を示す模式図である。
【図4】本発明の負極の第2の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図5】図4に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。
【図6】本発明の負極の第3の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図7】本発明の負極の第4の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図8】図7に示す負極の製造方法の一例を示す工程図である。
【図9】本発明の負極の第5の実施形態の断面構造を示す模式図である。
【図10】実施例1で得られた負極の使用前及び1サイクル後の外観を示す写真である。
【図11】実施例1で得られた負極の表面及び縦断面を拡大して示す走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0118】
1a,1b 表面
2 活物質層
3,3a,3b 集電層
4 リチウム化合物の形成能の低い金属材料
5 縦孔
6 微細空隙
7 金属リチウム層
8 導電性箔
10 負極
20 負極前駆体
30 金属リチウム箔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質の粒子を含む活物質層を備えた非水電解液二次電池用負極において、
前記活物質層には、電解めっきによって析出した金属材料が粒子間に浸透しており、また
前記負極の少なくとも一方の面において開孔し且つ前記活物質層の厚み方向に延びる縦孔を多数有することを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項2】
電解液と接する集電層を更に備え、該集電層よりも内側に前記活物質層が配されており、
前記縦孔が、前記集電層及び前記活物質層の厚み方向に延びている請求項1記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項3】
一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層とを備えている請求項2記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項4】
一対の前記集電層の少なくとも一方の厚みが0.3〜10μmである請求項3記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項5】
一対の前記集電層の厚みがそれぞれ0.3〜10μmである請求項4記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項6】
一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層及び金属リチウム層とを更に備えている請求項3記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項7】
一対の前記活物質層を備え、該活物質層間に前記金属リチウム層が介在配置されている請求項6記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項8】
一対の前記金属リチウム層を備え、該金属リチウム層間に導電性箔が介在配置されている請求項7記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項9】
負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔率が0.3〜30%である請求項1ないし8の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項10】
負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔径が5〜500μmである請求項1ないし9の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項11】
前記縦孔が負極の厚み方向に貫通している請求項1ないし10の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項12】
縦孔がレーザー加工により形成されている請求項1ないし11の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項13】
縦孔が機械的な穿孔により形成されている請求項1ないし11の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項14】
請求項1記載の負極を負極前駆体として用い、該負極前駆体が複数枚積層されてなることを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項15】
隣り合う前記負極前駆体間に導電性箔が介在配置されている請求項14記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れかに記載の負極を備えていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質の粒子を含む活物質層を備えた非水電解液二次電池用負極において、
前記活物質層には、電解めっきによって析出したリチウム化合物の形成能の低い金属材料が粒子間に浸透しており、また
前記負極の少なくとも一方の面において開孔し且つ前記活物質層の厚み方向に延びる縦孔を多数有することを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項2】
電解液と接する集電層を更に備え、該集電層よりも内側に前記活物質層が配されており、
前記縦孔が、前記集電層及び前記活物質層の厚み方向に延びている請求項1記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項3】
一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層とを備えている請求項2記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項4】
一対の前記集電層の少なくとも一方の厚みが0.3〜10μmである請求項3記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項5】
一対の前記集電層の厚みがそれぞれ0.3〜10μmである請求項4記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項6】
一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層及び金属リチウム層とを更に備えている請求項3記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項7】
一対の前記活物質層を備え、該活物質層間に前記金属リチウム層が介在配置されている請求項6記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項8】
一対の前記金属リチウム層を備え、該金属リチウム層間に導電性箔が介在配置されている請求項7記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項9】
負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔率が0.3〜30%である請求項1ないし8の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項10】
負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔径が5〜500μmである請求項1ないし9の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項11】
前記縦孔が負極の厚み方向に貫通している請求項1ないし10の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項12】
縦孔がレーザー加工により形成されている請求項1ないし11の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項13】
縦孔が機械的な穿孔により形成されている請求項1ないし11の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項14】
請求項1記載の負極を負極前駆体として用い、該負極前駆体が複数枚積層されてなることを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項15】
隣り合う前記負極前駆体間に導電性箔が介在配置されている請求項14記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れかに記載の負極を備えていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【請求項1】
活物質の粒子を含む活物質層を備えた非水電解液二次電池用負極において、
前記活物質層には、電解めっきによって析出した金属材料が粒子間に浸透しており、また
前記負極の少なくとも一方の面において開孔し且つ前記活物質層の厚み方向に延びる縦孔を多数有することを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項2】
電解液と接する集電層を更に備え、該集電層よりも内側に前記活物質層が配されており、
前記縦孔が、前記集電層及び前記活物質層の厚み方向に延びている請求項1記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項3】
一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層とを備えている請求項2記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項4】
一対の前記集電層の少なくとも一方の厚みが0.3〜10μmである請求項3記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項5】
一対の前記集電層の厚みがそれぞれ0.3〜10μmである請求項4記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項6】
一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層及び金属リチウム層とを更に備えている請求項3記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項7】
一対の前記活物質層を備え、該活物質層間に前記金属リチウム層が介在配置されている請求項6記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項8】
一対の前記金属リチウム層を備え、該金属リチウム層間に導電性箔が介在配置されている請求項7記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項9】
負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔率が0.3〜30%である請求項1ないし8の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項10】
負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔径が5〜500μmである請求項1ないし9の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項11】
前記縦孔が負極の厚み方向に貫通している請求項1ないし10の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項12】
縦孔がレーザー加工により形成されている請求項1ないし11の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項13】
縦孔が機械的な穿孔により形成されている請求項1ないし11の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項14】
請求項1記載の負極を負極前駆体として用い、該負極前駆体が複数枚積層されてなることを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項15】
隣り合う前記負極前駆体間に導電性箔が介在配置されている請求項14記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れかに記載の負極を備えていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質の粒子を含む活物質層を備えた非水電解液二次電池用負極において、
前記活物質層には、電解めっきによって析出したリチウム化合物の形成能の低い金属材料が粒子間に浸透しており、また
前記負極の少なくとも一方の面において開孔し且つ前記活物質層の厚み方向に延びる縦孔を多数有することを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項2】
電解液と接する集電層を更に備え、該集電層よりも内側に前記活物質層が配されており、
前記縦孔が、前記集電層及び前記活物質層の厚み方向に延びている請求項1記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項3】
一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層とを備えている請求項2記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項4】
一対の前記集電層の少なくとも一方の厚みが0.3〜10μmである請求項3記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項5】
一対の前記集電層の厚みがそれぞれ0.3〜10μmである請求項4記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項6】
一対の前記集電層と、該集電層間に介在配置された前記活物質層及び金属リチウム層とを更に備えている請求項3記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項7】
一対の前記活物質層を備え、該活物質層間に前記金属リチウム層が介在配置されている請求項6記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項8】
一対の前記金属リチウム層を備え、該金属リチウム層間に導電性箔が介在配置されている請求項7記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項9】
負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔率が0.3〜30%である請求項1ないし8の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項10】
負極の表面において開孔している前記縦孔の開孔径が5〜500μmである請求項1ないし9の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項11】
前記縦孔が負極の厚み方向に貫通している請求項1ないし10の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項12】
縦孔がレーザー加工により形成されている請求項1ないし11の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項13】
縦孔が機械的な穿孔により形成されている請求項1ないし11の何れかに記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項14】
請求項1記載の負極を負極前駆体として用い、該負極前駆体が複数枚積層されてなることを特徴とする非水電解液二次電池用負極。
【請求項15】
隣り合う前記負極前駆体間に導電性箔が介在配置されている請求項14記載の非水電解液二次電池用負極。
【請求項16】
請求項1ないし15の何れかに記載の負極を備えていることを特徴とする非水電解液二次電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−108066(P2006−108066A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47827(P2005−47827)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【特許番号】特許第3764470号(P3764470)
【特許公報発行日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【特許番号】特許第3764470号(P3764470)
【特許公報発行日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000006183)三井金属鉱業株式会社 (1,121)
【Fターム(参考)】
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