説明

非水電解液二次電池用電極板、非水電解液二次電池、電池パック

【課題】 出入力特性に優れた非水電解液二次電池用電極板を提供する。
【解決手段】 集電体と、前記集電体の少なくとも一部に形成され、活物質を含む電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用電極板について、温度150℃かつ気圧1Torrの空気中で1時間保持され、次いで、温度25℃、相対湿度60%RHかつ気圧760Torrの空気中で10分間保持された非水電解液二次電池用電極板のカールフィッシャー法で測定された水分量を該非水電解液二次電池用電極板の電極活物質層の重量で除算して算出された含水率が、0.15%以上1.0%以下であることで、出入力特性に優れた非水電解液二次電池用電極板がえられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解液二次電池用電極板、非水電解液二次電池、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池は、高エネルギー密度、高電圧を有し、また充放電時におけるメモリ効果(完全に放電させる前に電池の充電を行なうと次第に電池容量が減少していく現象)が無いことから、携帯機器、及び大型機器など様々な分野で用いられている。
【0003】
また、世界規模でCO排出抑制の取り組みが行われており、石油依存度を低減し、低環境負荷で走行可能とする点で、CO削減に寄与するプラグインハイブリッド自動車や電気自動車に代表される次世代クリーンエネルギー自動車の開発・普及が急務とされている。次世代クリーンエネルギー自動車の開発・普及には、ガソリンに依存しない駆動力が必須である。この駆動力としてリチウムイオン二次電池に代表される非水電解液二次電池が期待されている。
【0004】
非水電解液二次電池は、正極板、負極板、セパレータ、及び非水電解液から構成される。そして上記正極板及び負極板としては、金属箔などの集電体表面に、電極活物質層形成液を塗布して形成された電極活物質層を備えるものが一般に用いられている。
【0005】
電極活物質層形成液は、リチウムイオン挿入脱離反応を示すことにより充放電可能な活物質粒子、樹脂製結着剤、及び導電材(但し活物質が導電効果も発揮する場合などには、導電材は省略される場合がある)、あるいはさらに、必要に応じてその他の材料を用い、有機溶媒中で混練及び/又は分散させて、スラリー状に調製される。そして電極活物質層形成液を集電体表面に塗布し、次いで乾燥して集電体上に塗膜を形成し、必要に応じてプレスすることにより電極活物質層を備える電極板を製造する方法が一般的である(例えば特許文献1段落[0019]乃至[0026]、特許文献2[請求項1]、段落[0051]乃至[0055])。その際、非水電解液二次電池用電極板の電極活物質層は、非水電解液を含浸させるための空隙を設けて多孔質に形成されることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−310010号公報
【特許文献2】特開2006−107750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非水電解液二次電池は、電気自動車、ハイブリッド自動車のほかにも様々なパワーツールなど、高出入力特性が必要とされる産業分野に向けて、その開発が進められている。これに加え、携帯電話等の比較的小型の装置に用いられる二次電池についても、装置の多機能化傾向に対応するべく、出入力特性の向上が期待されている。
【0008】
二次電池において出入力特性の向上を実現するためには、電池のインピーダンスを下げる必要がある。それには、電極板において、電極活物質層におけるリチウムイオンの挿入脱離が効率的に実現されることが重要となる。
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を重ね、電極板の電極活物質層におけるリチウムイオンの挿入脱離の効率の良さが、電極板の吸水性の強さに関連していることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0010】
本発明は、電極板の電極活物質層におけるリチウムイオンの挿入脱離の効率に優れて出入力特性に優れた非水電解液二次電池用電極板、そのような電極板を備えて高出入力特性に優れる非水電解液二次電池および電池パックを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(1)集電体と、前記集電体の少なくとも一部に形成され、活物質を含む電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用電極板であって、
温度150℃かつ気圧1Torrの空気中で1時間保持され、次いで、温度25℃、相対湿度60%RHかつ気圧760Torrの空気中で10分間保持された非水電解液二次電池用電極板のカールフィッシャー法で測定された水分量を該非水電解液二次電池用電極板の電極活物質層の重量で除算して算出された含水率が、0.15%以上1.0%以下であることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板、
(2)正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であって、
前記正極板または前記負極板の少なくともいずれか一方が、上記(1)に記載の非水電解液二次電池用電極板である、ことを特徴とする非水電解液二次電池、
(3)収納ケースと、正極端子および負極端子を備える非水電解液二次電池と、過充電および過放電保護機能を有する保護回路とを少なくとも備え、前記収納ケースに前記非水電解液二次電池および前記保護回路が収納されて構成される電池パックにおいて、
前記非水電解液二次電池が、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であり、
前記正極板が、上記(1)に記載の非水電解液二次電池用電極板であることを特徴とする電池パック、を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電極板の電極活物質層におけるリチウムイオンの挿入脱離の効率に優れて出入力特性に優れた非水電解液二次電池用電極板、そのような電極板を備えて高出入力特性に優れる非水電解液二次電池、電池パックを得ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の非水電解液二次電池用電極板の一実施例を示す概略断面図である。
【図2】非水電解液二次電池の一形態を模式的に示す概略断面図である。
【図3】本発明の電池パックの一実施態様における概略分解図である。
【図4】(4A)(4B)は、いずれも本発明の電極板の一実施例について集電体面に略垂直に切断した際の断面を示す模式図である。
【図5】(5A)から(5D)は、いずれも本発明に用いられる集電体の例を示す概略断面図である。
【図6】実施例1の電極板についての電極活物質層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[非水電解液二次電池用電極板の構成]
本発明の非水電解液二次電池用電極板10は、集電体1と、集電体1表面の少なくとも一部の上に電極活物質層2を備える。ここに、集電体1表面の少なくとも一部の上とは、集電体1表面に対して直接もしくは間接に電極活物質層2が形成されていていることを示す。
【0015】
(集電体1)
集電体1は、一般的に非水電解液二次電池用電極板における集電体として用いられるものであれば、特に限定されない。集電体1は、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔、銅箔などの単体又は合金からなるものを好ましく用いることができるが、これらに限定されない。集電体は、必要に応じて、電極活物質層の形成が予定される面において、表面加工処理がなされている集電体であってもよい。表面加工処理がなされている集電体としては、導電性物質が積層されているもの、化学研磨処理、コロナ処理、酸素プラズマ処理などの表面処理がなされていてもの等が挙げられる。あるいは、上記集電体は、物理的に任意の凹凸などが表面に設けられていてもよい。
【0016】
図5Aから図5Dに例示する本発明の非水電解液二次電池用電極板20、20’、20’’、 20’’’を用いて、集電体の例をより具体的に説明する。
【0017】
図5Aに示すとおり、非水電解液二次電池用電極板20に用いられる集電体1として、例えば、それ自体が集電機能を有する金属箔などの集電基材3のみからなるものを用いることができる。集電基材3としては、上述するアルミニウム箔、ニッケル箔、カーボンシートなどが例示される。かかる場合には、集電基材3の表面101の少なくとも一部に電極活物質層2が設けられる。
【0018】
非水電解液二次電池用電極板20’に用いられる集電体として、図5Bに示すとおり、それ自体が集電機能を有する集電基材3の上面に、導電性を有する任意の導電性層4が設けられてなる集電体1’を用いることができる。導電性層4は、電極活物質層2と集電基材3と間の電子の移動を妨げない程度の導電性を示すものであればよい。例えば、導電性層4は、銅または銅合金からなる積層層、あるいは任意の導電性微粒子がメッキあるいはスパッタリングなどにより堆積されてなる層、あるいは一枚以上の導電性薄膜が設けられてなる層などであってよく、またこれらの例に限定されない。集電体1’において、導電性層4の表面が、集電体1’の表面102となり、電極活物質層2は、表面102の少なくとも一部に設けられる。尚、図5Bでは、任意の導電性層4が1層である態様を示した。しかし、集電体1’の構成はこれに限定されず、導電性層4は、2以上の任意の導電性層が積層された積層構成であってもよい。
【0019】
非水電解液二次電池用電極板20’’に用いられる集電体として、図5Cに示すとおり、それ自体が集電機能を有する集電基材3の上面に、断続的に形成された任意の断続層5が設けられてなる集電体1’’を用いることができる。断続層5は、上述する導電性層4と同じく導電性の層であってもよいし、あるいは導電性を示さない層であってもよい。非水電解液二次電池用電極板20’’において、集電体1’’の表面は、断続層5の表面である表面103と、断続層5が設けられておらず集電基材3自体の表面である表面103’とからなる。このとき、電極活物質層2は、表面103および表面103’のいずれとも接するよう形成することができる。非水電解液二次電池用電極板20’’では、断続層5は、導電性を有していても、有していなくてもよい。断続層5が導電性を有していない層であっても、集電体1’’の表面103’において電極活物質層2と集電基材3とが直接接するため、電極活物質層2と集電体1’’との間において電子の移動が確保される。ただし、非水電解液二次電池用電極板20’’自体の電気抵抗をより小さいものにするという観点からは、断続層5も、導電性を示すことが好ましい。
【0020】
また、断続層5が導電性を示す場合、図5Dに示すように、集電体1’’の表面であって断続層5上にのみ、選択的に電極活物質層2’を設けて、非水電解液二次電池用電極板20’’’を構成してもよい。即ち、集電体1’’の表面のうち、表面103の少なくとも一部に、選択的に電極活物質層2’を設けても良い。あるいは、図示しないが、断続層5が導電性を示さない場合、集電体1’’の表面103’の少なくとも一部に選択的に電極活物質層2’を設けてもよい。
【0021】
上述する各集電体は、例示であって、本発明に用いられる集電体を限定するものではない。本発明に用いられる集電体は、以上に例示するとおり、本発明において集電体とは、集電機能を有する集電基材のみであってもよく、かかる態様では、電極活物質層が設けられる集電体の表面とは、該集電基材の表面を指す。あるいは、本発明において、集電体とは、集電機能を有する集電基材と、該集電基材上に設けられる任意の層(積層層)との積層構造を有していてもよい。かかる態様では、電極活物質層が設けられる集電体の表面とは、集電基材と電極活物質層との間の少なくとも一領域で電子の移動が確保される範囲において、上記積層層の表面、あるいは、積層層が設けられていない集電基材表面、あるいは、上記積層層の表面および積層層が設けられていない集電基材表面の両方を指す。
【0022】
本発明に用いられる集電体1は、耐熱温度が800℃以下、さらには600℃以下、特には400℃以下のものを選択することが可能である。電極活物質層2を形成するにあたり集電体1に加熱が施されるような製造方法を用いて電極板10が製造される場合においては、集電体1の選択は、その加熱温度との関係によって決定される。例えば、400℃以下の加熱温度での加熱履歴を経由して集電体1上に直接に電極活物質層2が形成されることがある。この場合、集電体1としては、加熱履歴時の加熱温度まで耐熱性を有するものを選択されればよく、耐熱温度が800℃以下、さらには600℃以下、特には400℃以下のものを選択することができる。
【0023】
(電極活物質層2)
電極活物質層2は、活物質を含んでなる層であり、集電体1の表面の少なくとも一部の上に形成される。電極活物質層2の厚みは適宜選択可能であり、たとえば1μm以上500μm以下の膜厚に形成されてもよい。電極活物質層2の重さは、適宜選択可能であり、たとえば2g/m以上1000g/m以下となるように形成されてもよい。
【0024】
(活物質)
電極活物質層2に含まれる活物質は、膜状、粒子状、粒子隗状などその状態を特に限定されない。活物質は、電極活物質層2を多孔質に形成することが可能な状態であればよい。
【0025】
また、電極活物質層2に含まれる活物質としては、正極用、負極用いずれに使用される活物質(それぞれ正極用活物質、負極用活物質)ついても、一般的に非水電解液二次電池用電極板において用いられるリチウムイオン挿入脱離反応を示す充放電可能なものであれば、特に限定されない。
【0026】
正極用活物質としては、リチウム遷移金属複合酸化物やリチウム遷移金属複合リン酸化物などのリチウム遷移金属複合化合物が挙げられ、例えばLiCoO、LiMn、LiMnO、LiNiO、LiFeO、LiTiO、LiMnPO、LiFePOなどが挙げられる。
【0027】
また負極用活物質としては、例えば天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、カーボンブラック、またはこれらの成分に異種元素を添加したもののような炭素質材料からなる活物質、あるいは、LiTi12などのリチウム遷移金属複合化合物、金属リチウム、金属リチウムと他の金属との合金、スズ、ケイ素、及びそれらの合金等、リチウムイオンを吸蔵放出可能な金属材料が挙げられる。
【0028】
(結着剤)
結着剤は、電極活物質層2を積層形成しようとする集電体などの被積層部材に対して活物質を固着させる機能を有し、さらに、活物質が粒子状に形成されている場合に活物質同士を互いに固着させる機能を有するものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などの樹脂製の結着剤を好ましく挙げることができる。
【0029】
そのほかにも、結着剤として、金属化合物を用いることが可能である。金属化合物は、金属酸化物などを適宜選択可能である。金属化合物は、後述の製造方法3が進行する過程で生成されてくるものを使用することができる。金属化合物は、酸化物を形成しやすいという理由で、遷移金属からなる群から選ばれた金属を金属元素として含む化合物であることが好ましい。また、金属化合物は、リチウムイオン挿入脱離可能なリチウム複合化合物であることが、結着剤としての機能と活物質としての機能を併せて有することができるようになる点で好ましい。金属化合物は、リチウム複合化合物のなかでもリチウム複合酸化物であることが好ましい。リチウム複合酸化物は、結着剤としての機能と活物質としての機能を併せ持つことの可能な化合物として調製しやすいため好ましい。なお、遷移金属は、周期表の第3族から第11族の範囲内に属する金属を示すものとする。
【0030】
(その他の材料)
電極活物質層2には、上述した活物質を含むほか、結着剤以外にも、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、添加剤が含有されていてもよい。たとえば、電極活物質層には、適宜、添加剤として、黒鉛化されたカーボンファイバーなどの導電材が、さらに含有されて形成されてもよい。
【0031】
[非水電解液二次電池用電極板の吸水性]
非水電解液二次電池用電極板10は、温度150℃かつ気圧1Torrの空気中で1時間保持され、次いで、温度25℃、相対湿度60%RHかつ気圧760Torrの空気中で10分間保持された非水電解液二次電池用電極板のカールフィッシャー法で測定された水分量を該非水電解液二次電池用電極板の電極活物質層の重量で除算して算出された含水率が、0.15%以上1.0%以下である。吸水試験は、次のように実施される。
【0032】
(吸水試験)
非水電解液二次電池用電極板10を、温度が150℃で気圧が1Torr(およそ133Pa)の空気中で1時間乾燥させる(乾燥処理)。乾燥処理の後、更に相対湿度が60%RHで温度が25℃で気圧が760Torrの空気中に、非水電解液二次電池用電極板10を晒した状態で10分間保持する(吸湿処理)。上記の条件で乾燥処理を行なうことで、電極板10に含まれる水分を予め抜いておくことができるので、吸湿処理以外に由来する水分が電極板10に混入する虞を抑制して、後に実施される吸湿試験によって吸収された水分量を反映させた値として含水率を計測することができる。上記の条件で吸湿処理を行なうことで、電極板10に適切な量の水分を混入させることが容易となる。電極板が適切性に劣るものであるほど、吸湿処理を上記の条件で行っても電極板に水分を混入させにくくなる傾向がある。なお、乾燥処理あるいは吸湿処理をおこなっている間、温度、気圧、及び相対湿度は、上記数値に一致するように制御されることが望ましいが、温度でプラスマイナス10℃程度、気圧でプラスマイナス10%程度、相対湿度がプラスマイナス5%RH程度、の範囲内で振れることは許容される。
【0033】
この吸湿処理後、次のように非水電解液二次電池用電極板10に含まれる水分量が測定されることで、電極板10の含水率(%)が測定される。
【0034】
(含水率)
吸湿処理後の非水電解液二次電池用電極板10に含まれる水分量が、カールフィッシャー法により測定される。また、該非水電解液二次電池用電極板の電極活物質層の重量が、吸湿処理後の非水電解液二次電池用電極板10の重量からその非水電解液二次電池用電極板より電極活物質層を除去したものの重量を差し引くことにより測定される。このようにして測定した電極活物質層の水分量と重量の値に基づき、電極活物質層単位重量あたりに含まれる水分量の重量パーセントを算出し、その算出値を含水率(%)とする。なお、カールフィッシャー法による測定には、電量法が用いられ、また、公知のカールフィッシャー水分測定装置とカールフィッシャー試薬を適宜用いることができる。カールフィッシャー法による測定を用いるのは、測定される含水率の数値の信頼性の高さを理由とする。
【0035】
[非水電解液二次電池用電極板の吸水性と出入力特性]
含水率は、非水電解液二次電池用電極板10の吸水性の強さを示しており、含水率が所定の範囲に収まることは、吸水性の強さが所定範囲にあることを示す。この点、非水電解液二次電池用電極板10の吸水性の強さは、吸水試験後の電極板10の含水率が0.15%以上1.0%以下となるような範囲の強さである。このような吸水性の強さを示す非水電解液二次電池用電極板10によれば、リチウムの挿入脱離の効率に優れて出入力特性に優れる非水電解液二次電池を提供することが容易となる。その理由の詳細は明らかではないが、おおよそ、非水電解液二次電池用電極板10が吸水試験後の含水率が0.15%以上1.0%以下であるようなものであるとき、非水電解液二次電池用電極板10の電極活物質層2の構造が、ガスや液体といった流体の浸透や拡散に適した構造になっているものと考えられる。
【0036】
[非水電解液二次電池用電極板の選択方法]
また、吸水試験に基づく含水率(%)の測定は、集電体とその集電体の少なくとも一部上に形成される電極活物質層とを備える電極板を調製した場合に、非水電解液二次電池用電極板として好ましいものを選別する方法を提供する。
【0037】
すなわち、調製された電極板が非水電解液二次電池用電極板として好ましいものであるか否かを判別するにあたり吸水試験を用いるのである。具体的には、電極板を、温度が150℃で気圧が1Torrの空気中で、1時間乾燥させ、更に、相対湿度が60%RHで温度が25℃で気圧が760Torrの空気中で、10分間保持し、電極活物質層単位重量(g)あたりに含まれる水分量(g)の重量比率としての含水率(%)をカールフィッシャー法により測定し、含水率(%)が、0.15%以上1.0%以下である電極板を、非水電解液二次電池用電極板として選別する。これにより、出入力特性に優れた非水電解液二次電池用電極板を選別することができる。カールフィッシャー法は、水分の浸透・拡散性について精密に特定する方法として確立されている方法であるから含水率(%)の数値の信頼性が高く、含水率の値を基準に選別することには、数値誤差により出入力特性に優れた非水電解液二次電池用電極板の選別を誤る虞が抑制される点で、意義がある。
【0038】
[非水電解液二次電池用電極板の製造]
本発明の非水電解液二次電池用電極板10は、例えば次に説明する製造方法1や、製造方法2や、製造方法3等を用いて製造することができる。
【0039】
(製造方法1)
活物質と結着剤を溶媒に分散させて電極活物質層形成液を調製する。
【0040】
電極活物質層形成液に含まれる結着剤としては、樹脂製の結着剤など、従前より非水電解液二次電池用電極板に使用可能な結着剤を適宜選択することができる。
【0041】
電極活物質層形成液に含まれる溶媒は、活物質と結着剤を分散可能なものであれば特に限定されるものではなく、具体的に、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、プロパノール、ブタノール等の総炭素数が5以下の低級アルコール、アセチルアセトン、ジアセチル、ベンゾイルアセトン等のジケトン類、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、ベンゾイル酢酸エチル、ベンゾイル蟻酸エチル等のケトエステル類、Nーメチルピロリドン(NMP)などのピロリドン類、トルエン、およびこれらの混合溶媒、水等を挙げることができる。
【0042】
活物質と結着剤の溶媒に対する配合量については、適宜選択可能であるが、電極活物質層形成液の粘度の点で、溶媒100重量部に対して、活物質、結着剤が、それぞれ、30重量部〜60重量部、2重量部〜20重量部であることが好ましい。
【0043】
次に、調製された電極活物質層形成液を集電体1表面の所定領域に塗布して塗布膜を得る。そして、その後、集電体1の塗布膜を乾燥することによって、集電体1表面の塗布膜を電極活物質層2となす。そして、必要に応じて電極活物質層2がプレスされる(プレス工程)。こうして、非水電解液二次電池用電極板10が製造される。なお、電極活物質層形成液の塗布方法には、従前の非水電解液二次電池用電極板を製造する際に適用可能な、印刷法、スピンコート、ディップコート、バーコート、スプレーコート等といった公知方法を適宜採用することができる。塗布膜の乾燥方法についても、従前の非水電解液二次電池用電極板を製造する際に適用可能な方法を適宜採用できる。
【0044】
なお、上記プレス工程は次のように実施できる。集電体1上に形成された塗布膜を乾燥させて溶媒を除去して乾燥膜となし、乾燥膜を所定圧力でプレスすることによって実施することができる。プレスに使用する装置としては、従来の方法に使用される装置、すなわち樹脂製の結着剤が含まれるスラリー状の電極活物質層形成液を集電体1上に塗布して乾燥させ、次いで実施されるプレスに使用されるプレス装置と同様の装置を、適宜使用することができる。プレス工程におけるプレス圧力は、特に限定されない。ただし、プレス工程を実施する場合には、電極活物質層形成液に含まれる溶質の内容や、加熱工程における加熱条件も勘案した上、プレス圧力を調整してよい。
【0045】
(製造方法2)
活物質の前駆体となる化合物を溶媒に溶解することによって電極活物質層形成液を調製する。
【0046】
活物質の前駆体となる化合物は、活物質を構成する金属を金属元素として含有する金属元素含有化合物であり、加熱によって活物質となるものであれば特に限定されるものではなく、活物質に応じて適宜選択される。金属元素含有化合物としては、リチウム元素含有化合物と、コバルト、ニッケル、マンガン、鉄またはチタンから選択されるいずれかの金属元素を含む金属元素含有化合物の1種あるいは2種以上との組み合わせが用いられる。金属元素含有化合物としては、リチウム元素あるいはコバルト等の他の金属元素の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、過塩素酸塩、酢酸塩、リン酸塩、臭素酸塩、炭酸塩等を挙げることができる。
【0047】
電極活物質層形成液に含まれる溶媒は、活物質の前駆体となる化合物を溶解可能なものであれば特に限定されるものではなく、具体的に上記製造方法1で使用可能な溶媒と同様な溶媒の範囲から適宜選択することができる。
【0048】
次に、電極活物質層形成液を集電体1表面の所定領域に塗布して塗布膜を得る。さらに塗布膜に含まれる前駆体化合物からリチウム遷移金属複合酸化物などの活物質を集電体1表面に生成させる(電極活物質層形成工程)。電極活物質層形成工程の実施により、塗布膜は、電極活物質層2をなす。こうして、非水電解液二次電池用電極板10が製造される。この電極活物質層形成工程は、加熱法など適宜方法を採用することができる。加熱法は、塗布膜と集電体1の積層体を150℃以上800℃以下程度の温度範囲にて加熱すれ方法である。尚、上記塗布膜を形成後、加熱前に該塗布膜を乾燥させ所望の厚みにプレスしてもよく、あるいは塗布膜を加熱後に、プレスを実施してもよい。
【0049】
なお、積層体の加熱方法は、特に限定されず、ホットプレート、オーブン、加熱炉、赤外線ヒーター、ハロゲンヒーター、熱風送風機等を熱源として適宜用いて加熱する方法でよい。
【0050】
(製造方法3)
金属化合物の前駆体となる化合物を溶媒に溶解することによって金属化合物前駆体含有液を調製し、さらに粒子状の活物質を添加して電極活物質層形成液を分散液として調製する。この製造方法では、電極活物質層は、後述するように活物質を含むのみならず、更に金属化合物を含んだ層をなすこととなるが、ここに、金属化合物は、分散液に添加される活物質の粒子同士を互いに固着させるとともに活物質の粒子と集電体とを固着させる結着機能を有するものである。金属化合物は、結着機能を発揮可能なものであれば金属酸化物や金属リン酸化物など特に限定されず、リチウム遷移金属複合化合物などといった活物質をなす金属化合物でもよい。金属化合物の前駆体となる化合物は、特に限定されず、活物質の前駆体となる化合物などでよく、例えば、製造方法2に上述する金属元素含有化合物から適宜選択されたものでもよい。
【0051】
次に、電極活物質層形成液を集電体1表面の所定領域に塗布して塗布膜を得、そして電極活物質層形成工程が施される。この電極活物質層形成工程は、製造方法2の電極活物質層形成工程と同様の工程であり、この工程を施すことで、塗布膜に含まれる前駆体となる化合物から金属化合物が析出し、金属化合物で活物質同士が固着され、且つ、活物質が集電体の表面上に固着され、電極活物質層が形成されることとなり、非水電解液二次電池用電極板10が製造される。
【0052】
製造方法3においては、予め添加された粒子状活物質が、前駆体となる化合物から析出する金属化合物により相互に固着されることになり、また集電体に対しても固着できることになる。なお、金属化合物がリチウムイオン挿入脱離可能なリチウム遷移金属複合酸化物などのリチウム遷移金属複合化合物である場合には、リチウム遷移金属複合化合物が活物質としての機能のみならず予め添加された粒子状活物質の結着剤としての機能を有することとなる。すなわち、リチウムイオン挿入脱離反応を示す活物質としての機能と結着剤としての機能をあわせもつリチウム遷移金属複合化合物により、予め添加された粒子状の活物質が集電体面上に固定され、電極活物質層2が形成されることとなる。
【0053】
なお、製造方法3においては、粒子状活物質と金属化合物との組み合わせを限定されず、同じ化合物の組み合わせであってもよい。
【0054】
粒子状活物質と金属化合物とが同じ化合物であるとは、両者が実質的に同じ組成を示す化合物であることを意味する。このとき、実質的に同じ組成を示す化合物には、粒子状活物質と金属化合物の化学組成に示される組成比率が完全に同じものだけでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において異なっているものが含まれる。また、粒子状活物質と金属化合物のいずれか一方、あるいは両方に、任意の元素が本発明の趣旨を逸脱しない程度に置換されている場合にも、両化合物は同一と理解することができる。
【0055】
また粒子状活物質と金属化合物が同一の化合物であることを、化学組成の分析以外の別な手段で判断する方法として、化合物の結晶構造を確認してもよい。即ち、透過型電子顕微鏡で、粒子状活物質と金属化合物を観察し、2つの化合物の結晶構造が同じであれば、両者は同一の化合物を判断することができる。ここで結晶構造が同一とは、結晶構造が同一の結晶相に含まれる場合を意味する。換言すると、活物質粒子と金属化合物とが同一でないという場合は、両者の結晶構造が、それぞれ異なる結晶相に位置する場合をいい、結晶格子の対照性の差異に基づく狭義の否同一性を意図しない。
【0056】
粒子状活物質と金属化合物が同一の化合物である場合粒子状活物質と金属化合物の両方が充放電時においてリチウムイオンの出し入れに同じ電位レベルで関与でき、電極容量を実質的に増大させることが可能となる。
【0057】
さらに、製造方法2,3においては、電極活物質層形成液に粘度調整剤を添加してもよい。粘度調整剤としては、電極活物質層形成液の粘度を溶媒の粘度よりも高めることが可能なものであれば特に限定されないが、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチルセルロース、デンプン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、メチルエチルセルロース、ポリエチレングリコールなどの樹脂材料を例示できる。電極活物質層形成液に粘度調整剤が添加されていると、電極活物質層形成液を塗工し乾燥する一連の工程で、集電体1面上に形成される塗布膜の形状をより確実に維持することができる。電極活物質層形成液への粘度調整剤の添加量は、特に限定されず適宜選択可能である。
【0058】
製造方法1から3で製造された非水電解液二次電池用電極板10では、活物質を含む電極活物質層2が形成されている。
【0059】
製造方法1で製造された非水電解液二次電池用電極板10では、電極活物質層2は粒子状の活物質同士が結着剤を介して接合している状態に形成される。
【0060】
製造方法2で製造された非水電解液二次電池用電極板10では、電極活物質層2は、図4Aに示すように、集電体1の表面の少なくとも一部の上に、活物質6を含む層として形成されており、活物質6同士が部分的に接合して固着することにより、該活物質6が連続的に存在してなる層構造を形成しており、且つ、多数の空隙8を有する多孔質の層として形成される。また、電極活物質層2に含まれる活物質6の少なくとも一部が集電体1に接合して固着している。
【0061】
なお、製造方法2で得られる電極板10において活物質6同士が接合するとは、結着剤が存在しない場合であっても、活物質6同士が直接接触して結着し合うことを示す。また、活物質6が集電体1に接合するとは、結着剤が存在しない場合であっても、活物質6と集電体1が直接接触して結着し合うことを示す。ただし、上記は、製造方法2で製造される非水電解液二次電池用電極板10において、結着剤を用いることを禁止するものではなく、活物質6同士の接合や活物質6と集電体1の接合を補強するために、結着剤を用いてもよい。例えば、電極活物質層の形成後に、電極活物質層に結着剤を含む液を塗布し乾燥することで、製造方法2で製造される非水電解液二次電池用電極板10に結着剤を含有させることができる。
【0062】
製造方法3で製造される非水電解液二次電池用電極板10については、図4Bに示すように、電極活物質層2は、予め添加された粒子状の活物質からなり電極活物質層2内に分散する複数の核体9と、金属化合物からなりその複数の核体を包囲する包囲体7とを含んで構成されている。電極活物質層2は、具体的には金属化合物で予め添加された粒子状の活物質同士を部分的に固着してなる構造を有し、多数の空隙8を有する多孔質の層となっている。
【0063】
また、電極活物質層2において、金属化合物からなる包囲体7は、活物質からなる核体9の少なくとも一部を集電体1に固着させている。そして集電体1近傍に存在する包囲体7は、集電体1表面と繋がっており、これによって集電体1上に、直接に、電極活物質層2を備える電極板10が形成される。また、電極活物質層2には、上記したように随所に空隙8が存在しており、これによって電極板10を用いて電池を構成した際に、非水電解液が空隙8を通って電極活物質層2内部に浸透可能である。
【0064】
核体を包囲する包囲体7は、複数存在して、1つの核体には1つまたは複数の包囲体7が包囲している。これらの複数の包囲体7のうち、隣接する包囲体7同士の一部が互いに繋がっていてよい。あるいは、上記核体を包囲する包囲体7は、個の区別なく連続的に繋がって一体をなしていてもよい。あるいは、本発明における電極活物質層2において、上記複数の包囲体7と、上記個の区別なく連続する包囲体とが、混在していてもよい。電極活物質層2は、核体9を包囲体7で包囲されるように構成されているので、より出入力特性に優れた電極板10を得ることが可能となる。
【0065】
製造方法3で得られる非水電解液二次電池用電極板10において、包囲体7を構成する金属化合物による固着には、以下の2つの態様が含まれる。1つ目には、被固着物間(例えば、核体9を構成する活物質間、活物質と集電体1表面との間、あるいは導電材を使用する場合には、導電材と活物質間、導電材粒子間など)に、結着物質となる金属化合物が介在して両者を固着させる場合(以下、「固着態様1」)がある。2つ目には、被固着物同士が直接接触し、接触部分を囲んで結着物質となる金属化合物が存在することによって被固着物同士を固着させる場合(以下、「固着態様2」)がある。金属化合物による固着には、上述する固着態様1および2のいずれの状態で特定される固着状態であってもよい。したがって、電極活物質層2中に、固着態様1,2のいずれかの状態のみが形成されていてよいし、固着態様1,2の両方の状態が共存していてもよい。特に、電極活物質層2中に含まれる活物質の粒子径が小さくなるほど、固着態様2が増える傾向にある。また、電極活物質層2中に添加剤として添加されることのある導電材粒子の粒子径が小さくなるほど、活物質の場合と同様に、固着態様2が増える傾向にある。
【0066】
電極活物質層2において、上記固着態様1および2のいずれも含んで構成される場合には、電極板10は、導電性に優れたものとなることが可能である。その理由について、まず、導電材粒子を含む電極活物質層2において、特に導電材粒子間の固着に着目する。導電材粒子同士が、上記固着態様1によって固着されている場合、結着物質が金属化合物であるため、従来の樹脂製結着剤に比べて、導電材粒子間での電子のやりとりの障害となり難い。またさらに、導電材粒子同士が、上記固着態様2によって固着されている場合には、粒子同士は直接に接しているため、当然に電子の流れがスムーズであり、優れた導電性が確保される。このことは、導電材粒子間の固着のみならず、導電材粒子と活物質との固着に関しても、同様である。加えて、集電体1と電極活物質層2との境界においても、集電体1面と、活物質や導電材粒子とが、結着物質となる金属化合物を介して固着されるか、あるいはこれらが直接に接触して接触部分の周囲に結着物質が存在することによって固着される。そのため、上述と同様の理由で、集電体1と電極活物質層2間の電子の流れがスムーズである。即ち、製造方法3で得られる電極板10は、金属化合物が結着物質として機能するように電極活物質層2中に存在し、且つ、固着態様1および2によって種々の構成材料を固着させていることにより電気抵抗を低く保つことが可能であり、固着態様1および2が混在することが好ましい。
【0067】
製造方法2,3によれば、電極活物質層2を樹脂製の結着剤の含有量を抑えるように構成することや樹脂製の結着剤を含まないように構成することが容易になり、製造方法1で調製される電極活物質層よりも、多孔性に優れたものとすることができるのみならず、吸水試験後の電極板の含水率が好適な範囲内となるような電極板を調製することが容易となる。このため、製造方法2,3によれば、電極活物質層2内部に非水電解液を効果的に浸透させることができるような電極板を調製することが容易となり、電極板の電極容量を増大させることが可能となる。
【0068】
ただし、これらのことは、製造方法2,3において、電極活物質層2に樹脂製の結着剤を用いることを禁止するものではない。製造方法2,3において、樹脂製の結着剤が併用されてもよい。そして、製造方法2および3において、さらに樹脂製の結着剤が電極活物質層2中に含まれるようにしても良い。この場合、電極活物質層2の膜強度が高められる。なお、樹脂製の結着剤を含有させるタイミングは、電極活物質層2の形成前後問わない。例えば、電極活物質層形成液に樹脂製の結着剤を添加して、電極活物質層2の形成後に結着剤がその内部に残るように電極活物質層2の形成を実施してよい。また、電極活物質層2の形成後に樹脂製の結着剤を電極活物質層2に含浸させてもよい。
【0069】
製造方法1から3で得られる各電極活物質層2の様子は、走査型電子顕微鏡による観察により、倍率1万倍から5万倍程度で確認することができる。例えば、製造方法2で得られた電極活物質層2については、電極活物質層2を集電体面上に形成した非水電解液二次電池用正極板を集電体面に対して垂直方向に切断し、その切断面について走査型電子顕微鏡により倍率50,000倍程度で拡大観察した際の写真をみることで、集電体の表面上に、電極活物質層2が活物質を含む層として観察され、活物質の少なくとも一部が集電体に直接付着して固着している状態が観察可能である。
【0070】
なお、製造方法2,3で得られる電極活物質層2に関し「空隙」は、活物質同士が部分的に固着することにより、その周囲に形成され、電極活物質層2には、走査型電子顕微鏡において50,000倍の倍率で観察した際に肉眼において観察される程度の空隙が存在する。
【0071】
[非水電解液二次電池]
非水電解液二次電池は、一般的には、正極板及び負極板と、これらの間にポリエチレンなどのポリオレフィン製多孔質フィルムのようなセパレータが設けられて構成されており、これらが容器内に収納され、且つ容器内に非水電解液が充填された状態で密封されて製造される。
【0072】
(電極板)
本発明の非水電解液二次電池は、特に、対をなす電極板の少なくとも一方、すなわち正極板及び負極板の少なくとも一方として、上述する本発明の非水電解液二次電池用電極板10が用いられることを特徴とする。本発明の非水電解液二次電池において、正極板または負極板のいずれか一方のみ、本発明の非水電解液二次電池用電極板が用いられる場合には、他方の電極板は、非水電解液二次電池において使用される従来公知の電極板を適宜使用することができる。また本発明の非水電解液二次電池用電極板を、正極板および負極板の両方に用いて非水電解液二次電池を構成することもできる。
【0073】
本発明の非水電解液二次電池において、正極板または負極板のいずれか一方として、本発明の非水電解液二次電池用電極板10が用いられる場合を例とすると、非水電解液二次電池としては、図2に示すように構成されたものを例示できる。
【0074】
図2の非水電解液二次電池は、集電体55の一方面側に電極活物質層54が設けられてなる電極板50及びこれに組み合わされる集電体1の一方面側に電極活物質層2が設けられてなる電極板10と、これらの間にポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータ70とが設けられる。そして、これらが外装81、82内に収納され、且つ、外装81、82内に非水電解液90が充填された状態で密封されて製造されて、非水電解液二次電池100が構成される。電極板10が正極板であれば、電極板50は負極板であり、電極板10が負極板であれば、電極板50は正極板である。
【0075】
従来公知の正極板としては、一般的には本発明の非水電解液二次電池用電極板において用いられる正極用の集電体と同様の集電体表面上の少なくとも一部に、リチウム遷移金属複合酸化物などの活物質粒子、導電材、結着剤などが溶媒に分散されてなる組成物を塗布して、乾燥し、必要に応じてプレスすることにより形成されたものが使用される。
【0076】
一方、従来公知の負極板としては、集電体として厚み5〜50μm程度の電解銅箔や圧延銅箔等の銅箔を用い、上記集電体表面の少なくとも一部に、負極板を構成する電極活物質層形成液を塗布して塗布膜を得るとともに、塗布膜を乾燥し、必要に応じてプレスすることにより形成されたものが使用される。負極板における電極活物質層形成液には、一般的に、天然グラファイト、人造グラファイト、アモルファス炭素、カーボンブラック、またはこれらの成分に異種元素を添加したもののような炭素質材料からなる活物質、あるいは、金属リチウム及びその合金、スズ、ケイ素、及びそれらの合金等、リチウムイオンを吸蔵放出可能な材料などの活物質、および結着剤、必要に応じて導電材などの他の添加剤が分散混合されることが一般的である。
【0077】
(非水電解液)
本発明に用いられる非水電解液は、非水溶媒を含む電解液であり、一般的に、非水電解液二次電池用に用いられることの可能な非水電解液であれば、特に限定されないが、リチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解液が好ましく用いられる。
【0078】
上記リチウム塩の例としては、LiClO、LiBF、LiPF、LiAsF、LiCl、及びLiBr等の無機リチウム塩;LiB(C、LiN(SOCF、LiC(SOCF、LiOSOCF、LiOSO、LiOSO、LiOSO11、LiOSO13、及びLiOSO15等の有機リチウム塩;等が代表的に挙げられる。
【0079】
リチウム塩の溶解に用いられる有機溶媒としては、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネートなどの環状エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状エステル類、テトラヒドロフラン、アルキルテトラヒドロフランなどの環状エーテル類、及び1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどの鎖状エーテル類等が挙げられるが、これに限定されない。
【0080】
上記正極板、負極板、セパレータ、非水電解液を用いて製造される電池の構造としては、従来公知の構造を適宜選択して用いることができる。例えば、正極板及び負極板を、ポリエチレン製多孔質フィルムのようなセパレータを介して渦巻状に巻き回して、電池容器内に収納する構造が挙げられる。また別の態様としては、所定の形状に切り出した正極板及び負極板を、セパレータを介して積層して固定し、これを電池容器内に収納する構造を採用してもよい。いずれの構造においても、正極板及び負極板を電池容器内に収納後、正極板に取り付けられたリード線を外装容器に設けられた正極端子に接続し、一方、負極板に取り付けられたリード線を外装容器内に設けられた負極端子に接続し、さらに電池容器内に非水電解液を充填した後、密閉することによって非水電解液二次電池が製造される。
【0081】
[電池パック]
本発明の電極板を正極板および/または負極板として用いる非水電解液二次電池は、所謂、電池パックに用いられる非水電解液二次電池として使用することができる。即ち、本発明の電池パックは、本発明の電極板を正極板および/または負極板として用い、且つ、正極端子および負極端子を備える非水電解液二次電池と過放電保護機能を有する保護回路とが収納ケースに収納されて構成される。本発明の電池パックは、例えば、過充電、過放電、過電流、電池周辺回路の短絡、正負電極間の短絡などから電池を保護するための保護機能を非水電解液二次電池自体に装備するとともに、過充電や過放電を防止するための保護回路を該非水電解液二次電池と共に収納ケースに収容して一体化されてなる電池パックであってよい。本発明の電池パックは、ノートパソコン、カメラ、携帯電話等の携帯機器など、装置の規模に対して消費電力が大きい装置の電池電源装置として好適に使用することができる。
【0082】
図3に、本発明の電極板が用いられて構成される非水電解液二次電池であるリチウムイオン二次電池31を用いた本発明の電池パック30の概略分解図を示す。電池パック30は、リチウムイオン二次電池31が樹脂容器36a、樹脂容器36b、および端部ケース37に収納されて構成される。このとき、リチウムイオン二次電池31の一端面であって、正極端子32および負極端子33を備える面と、端部ケース37との間には、過充電や過放電を防止するための保護回路基板34が、設けられる。保護回路基板34は、外部接続コネクタ35を備えており、外部接続コネクタ35は、樹脂容器36aに設けられた外部接続用窓38aおよび、端部ケース37に設けられた外部接続用窓38bに挿入され、外部端子と接続される。また、保護回路基板に34には、図示しない、充放電を制御するための充放電安全回路、外部接続端子とリチウムイオン二次電池31とを導通させるための配線回路などが搭載されている。尚、電池パック30は、本発明の電極板が用いられたリチウムイオン二次電池31を用いること以外は、従来公知の電池パックの構成を適宜採用することができる。図示省略するが、電池パック30は、リチウムイオン二次電池31と端部ケース37との間に、正極端子32と接続する正極リード板、負極端子33と接続する負極リード板、絶縁体などを、適宜備えてよい。
【0083】
尚、本発明の電極板を用いた本発明の非水電解液二次電池は、電池パックへの使用態様以外に、上記保護回路に、さらに、過大電流の遮断、電池温度モニター等の機能を備え、且つ、該保護回路を二次電池自体に一体化させて取り付けられる態様に用いられてもよい。かかる態様では、電池パックを構成することなく、保護機能および保護回路を備える二次電池として使用することができ、汎用性が高い。尚、上述するいくつかの態様は、例示に過ぎず、本発明の電極板、あるいは本発明の非水電解液二次電池の使用を何ら限定するものではない。
【0084】
本発明について実施例を用いて更に説明する。
【実施例】
【0085】
実施例1.
<電極板の調製>
(電極活物質層形成液)
電極活物質層を形成するための電極活物質層形成液を調製した。金属化合物の前駆体をなす金属元素含有化合物として、Li(CHCOO)・2H0を10g及びMn(NO・6HOを56g準備し、これらを溶媒としての水50gに添加混合して金属化合物前駆体含有溶液を調製し、この金属化合物前駆体含有溶液に、粘度調整剤としてメチルセルロース樹脂(信越化学工業社製、60SH4000)を3g、正極用の活物質粒子としてマンガン酸リチウム(LiMn)の粒子(平均粒子径6μm)を40g、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、HS−100)を5gおよび気相成長炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)(昭和電工社製)を0.5g加え、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)で7000rpmの回転数で15分混練することによって電極活物質層形成液としての分散液を得た。
【0086】
集電体として厚さ15μmのアルミ板を準備し、この集電体の一方面側に、電極活物質層形成液を、アプリケーターで塗布して塗布膜を形成した。電極活物質層形成液の塗布量は、最終的に得られる電極活物質層の単位面積あたりの電極活物質層の重さが表1に示す量となるような量を、選択された。具体的に、電極活物質層形成液の塗布量は、形成される電極活物質層の重さが63g/mとなるような量とした。
【0087】
塗布膜を形成した集電体を用いて、電極活物質層形成工程を実施した。電極活物質層形成工程は、次のように実施された。塗布膜を形成した集電体を、150℃に加熱したホットプレートで乾燥して乾燥膜となし、次いで、乾燥膜に対してその膜密度が2.0g/cm3となるようにロールプレス機(株式会社サンクメタル社製)でプレス加工を施した。さらに塗布膜をプレスされた集電体を、電気炉(マッフル炉)(デンケン社製、P90)を用いて、空気雰囲気下で、室温(25℃)から390℃まで徐々に加熱し、その加熱後、直ちに取り出した。これにより、集電体上に形成された塗布膜を電極活物質層となし、電極板を得た。
【0088】
得られた電極板を所定の大きさ(15mmφ)に裁断し、これを実施例1の電極板とした。尚、電極板の電極活物質層の厚みを算出したところ、34μmであった。電極活物質層の厚みは、電極活物質層における任意に10箇所選択して各箇所での厚みを、マイクロメーターを用いて測定し、これらの厚み値の平均値を算出して、この算出値を電極活物質層の厚みとした(表1)。
【0089】
得られた電極板の電極活物質層には、予め電極活物質層形成液に添加された活物質であるLiMnの粒子同士を固着するように、金属化合物(LiMn)が生成して析出して全体として層をなしている。この様子について、走査型電子顕微鏡を用いた50,000倍の倍率で、集電体面に対し垂直方向に切断した断面を電極活物質層の構造を観察したところ、集電体表面上に、電極活物質層として、粒子状のLiMn(活物質粒子)が相互に金属化合物(LiMn)で固着された構造を有する層が形成されていることが確認された(図6)。なお、図6および次に説明するサイクリックボルタンメトリー試験の記載では、便宜上、金属化合物前駆体含有溶液に含まれる前駆体の化合物から生成された金属化合物を、金属化合物Mと示す。
【0090】
サイクリックボルタンメトリー試験(CV試験):
実施例1の電極板における電極活物質層を構成する上記金属化合物Mが、リチウムイオン挿入脱離反応を示すものであるか否かを確認するために、CV試験を行った。まず正極用の活物質粒子であるマンガン酸リチウム粒子を用いない点以外は、実施例1に用いた上記電極活物質層形成液と同様にして参照用層形成液を調整し、参照用層形成液を用いて、実施例1と同様に集電体上に参照用層形成液を塗布して塗膜を形成するとともに、塗膜を形成した集電体に対して電極活物質層形成工程と同じ工程を施して、参照用層形成液から形成される参照用層を集電体上に積層した積層体を調製し、これを参照用試験体1とした。参照用試験体1には、集電体の上に金属化合物(LiMn)が析出して全体として参照用層をなしており、この層を構成する金属化合物は、実施例1の電極板における金属化合物Mに対応する。この層の状態は、実施例1の電極板と同じく走査型電子顕微鏡による垂直方向断面の観察により確認される。次に、参照用試験体1を用いてCV試験を行った。CV試験の装置としては、Bio Logic社製のVMP3を用いた。また、CV試験の条件につき、開始電位と折り返し電位、ならびに掃引条件については、具体的には、まず電極電位を3.0V(開始電位)から4.3V(折り返し電位)まで掃引したのち、再び3.0Vまで戻す作業を1セット(1サイクル)とし、これを3セット(3サイクル)繰り返すこととした。また、CV試験において走査速度は1mV/秒とした。CV試験の2回目のサイクル結果を示すサイクリックボルタモグラムにおいて、3.9V付近にLiMnのLi脱離反応に相当する酸化ピークが、4.1V付近にLi挿入反応に相当する還元ピークが確認された。こうして参照用試験体1の参照用層を構成する金属化合物は、リチウムオン挿入脱離反応を示すものであることが確認される。そして、参照用層を構成する金属化合物は、実施例1の電極板の電極活物質層中に含有される金属化合物Mに対応するものであることから、実施例1の電極板の電極活物質層中に含有される金属化合物Mがリチウムオン挿入脱離反応を示すものであることが確認される。
【0091】
<電極板の吸水性>
電極板の吸水性は、吸水試験後の電極板の含水率(%)にて定められた。
【0092】
(吸水試験)
電極板を、温度が150℃で、気圧が1Torr(およそ133Pa)の空気中で1時間乾燥させる(乾燥処理)。乾燥処理の後、更に恒温恒湿槽(エスペック社製、SH−221)を用いて、相対湿度が60%RH、温度が25℃で、気圧が760Torrの空気雰囲気を調整し、この雰囲気中に電極板を晒した状態で10分間保持する(吸湿処理)。吸湿処理後、次のように電極板に含まれる水分量が測定されることで、電極板の含水率(%)が測定される。
【0093】
(含水率)
吸湿処理後の電極板に含まれる水分量が、カールフィッシャー法により測定される。この水分量(g)の値に基づき、電極活物質層単位重量(1g)あたりに電極板に含まれる水分量の重量%を算出し、その算出値を含水率(%)とする。なお、カールフィッシャー法による測定には、電量法が用いられ、また、カールフィッシャー法による測定には、カールフィッシャー水分測定装置(株式会社三菱化学アナリテック製、CA−200)を用いた。実施例1の電極板についての含水率の算出結果は、表2に示すとおりである。
【0094】
<三極式コインセルの作製>
非水電解液は、次のように調製された。エチレンカーボネート(EC)/ジメチルカーボネート(DMC)混合溶媒(体積比=1:1)に、溶質として六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を加えて、当該溶質であるLiPFの濃度が、1mol/Lとなるように濃度調整して、非水電解液を得た。
【0095】
正極板として上述のとおり作製した実施例1の電極板を作用極として用い、対極板として金属リチウム板(直径15mmの円板)、参照極として金属リチウム板(3mm角)、電解液として上記にて作製した非水電解液を用い、セパレータとして多孔質性ポリエチレンシートを用いて三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル1とした。そして実施例試験セル1を下記充放電試験に供した。
【0096】
(充放電試験)
実施例試験セル1において、作用極の放電試験を実施するために、まず実施例試験セル1を下記充電試験(充電試験および放電試験)のとおり満充電させた。
【0097】
充電試験:
実施例試験セル1を、25℃の環境下で、電圧が4.3V(満充電電圧)に達するまで定電流(945μA)で定電流充電し、当該電圧が4.3Vに達した後は、電圧が4.3Vを上回らないように、当該電流(放電レート:1C)が5%以下となるまで減らしていき、定電圧で充電を行ない、満充電させた後、10分間休止させた。尚、ここで、上記「1C」とは、上記三極式コインセルを用いて定電流放電して、1時間で放電終了となる電流値(放電終止電圧に達する電流値)のことを示す。また上記定電流は、実施例試験セル1における作用極において、1時間で放電可能な容量(マンガン酸リチウムであれば、90mAh/g)を、この充放電試験において1時間で放電完了させるよう設定された電流値である。
【0098】
放電試験:
その後、満充電された実施例試験セル1を、25℃の環境下で、表2に示すように、電圧が4.3V(満充電電圧)から3.0V(放電終止電圧)になるまで、定電流(945μA)(放電レート:1C)で定電流放電し、縦軸にセル電圧(V)、横軸に放電時間(h)をとり、放電曲線を作成し、正極用の電極板の放電容量(mAh)を求め、これを活物質粒子の重量(表1)で除し、当該電極板の単位重量当たりの放電容量(mAh/g)に換算した。
【0099】
続いて、上述のとおり実施した定電流(945μA)(放電レート:1C、放電終了時間:1時間)での定電流放電試験を基準として、50倍の定電流(mA)(放電レート:50C、放電終了時間:1.2分)、100倍の定電流(mA)(放電レート:100C、放電終了時間:0.6分)、においても、同様にして各々定電流放電試験を行ない、各放電レートにおける作用極の放電容量(mAh)を求め、これより単位重量当たりの放電容量(mAh/g)を換算した。
【0100】
<放電容量維持率(%)の算出>
作用極の出力特性(放電レート特性)を評価するため、上述のとおり得られた各放電レートにおける単位重量当たりの各放電容量(mAh/g)を用い、放電容量維持率(%)を求めた。
【0101】
(放電容量維持率)
電極板の放電容量維持率(%)は以下のように算出される。より具体的には、活物質の有する放電容量(mAh/g)の理論値を1時間で放電終了となるよう放電レート1Cを設定し、設定された1Cの放電レートにおいて実際に測定された放電容量(mAh/g)を放電容量維持率100%とする。そしてさらに放電レートを高くしていった場合の放電容量(mAh/g)を測定し、下記数1に示す式により放電容量維持率(%)を求めることができる。各放電レートの放電容量維持率(%)の結果を、単位重量当たりの放電容量(mAh/g)とあわせて、表2に示す。なお、表2中、活物質粒子の重量は、直径15mmの円盤状の電極板における電極活物質層に含有される活物質粒子の重量(mg/1.77cm)を示す。
【0102】
【数1】

【0103】
実施例2.
<電極板の調製>
(電極活物質層形成液)
電極活物質層を形成するための電極活物質層形成液を調製した。金属化合物の前駆体をなす金属元素含有化合物として、チタンジイソプロポキシビス(トリエタノールアミネート)[(i−CO)Ti(C14N)]を30g準備し、これらを溶媒としての水50gに添加混合して金属化合物前駆体含有溶液を調製し、この金属化合物前駆体含有溶液に、粘度調整剤としてカルボキシメチルセルロース樹脂(ダイセル化学工業社製)を2g、正極用の活物質粒子としてマンガン酸リチウム(LiMn)の粒子(平均粒子径6μm)を40g、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、HS−100)を5gおよび気相成長炭素繊維(昭和電工社製)を0.5g加え、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)で7000rpmの回転数で15分混練することによって電極活物質層形成液としての分散液を得た。
【0104】
電極活物質層形成液の塗布量を表1に示す量としたほかは実施例1と同様にして、集電体の一方面側に、電極活物質層形成液を塗布して塗布膜を形成した。
【0105】
塗布膜を形成した集電体を用いて、電極活物質層形成工程を実施した。電極活物質層形成工程は、次のように実施された。塗布膜を形成した集電体を、150℃に加熱したホットプレートで乾燥して乾燥膜となし、次いで、乾燥膜に対してその膜密度が2.0g/cm3となるようにプレス加工を施し、さらに電気炉(マッフル炉)(デンケン社製、P90)を用いて、空気雰囲気下で、室温から370℃まで30分かけて徐々に加熱して、その加熱後、直ちに取り出し、集電体上に形成された塗布膜を電極活物質層となし、電極板を得た。電極板は、取出した後、わずかの時間で室温まで自然放冷される。なお、プレス加工は、実施例1と同様に実施された。得られた電極板を実施例1と同様に裁断し、実施例2の電極板を得た。尚、電極板の電極活物質層の厚みを算出した。電極活物質層の厚みは、実施例1と同様にして算出された。結果を表1に示す。
【0106】
得られた電極板の電極活物質層には、予め電極活物質層形成液に添加された活物質であるLiMnの粒子同士を固着するように、金属化合物の前駆体をなす金属元素含有化合物から金属化合物(TiO)が生成して析出して全体として層をなしている。この様子について、実施例1と同様に、集電体表面上に、電極活物質層として、粒子状のLiMnが相互に金属化合物(TiO)で固着された構造を有する層が形成されていることが確認された。
【0107】
実施例2の電極板を用いて実施例1と同様に吸水試験を実施し、吸水試験後の電極板の含水率を測定した。結果を表2に示す。
【0108】
実施例2の電極板を用いて、実施例1と同様の方法で三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル2とし、さらに実施例試験セル2を用いて実施例1と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0109】
実施例3.
<電極板の調製>
(電極活物質層形成液)
電極活物質層を形成するための電極活物質層形成液を調製した。金属化合物の前駆体をなす金属元素含有化合物として、Li(CHCOO)・2H0を10g及びCo(NO・6HOを29g準備し、これらを溶媒としての水35gに添加混合して金属化合物前駆体含有溶液を調製し、この金属化合物前駆体含有溶液に、粘度調整剤としてヒドロキシエチルセルロース樹脂を1g、正極用の活物質粒子としてコバルト酸リチウム(LiCoO)の粒子(平均粒子径5μm)を40g、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、HS−100)を5gおよび気相成長炭素繊維(昭和電工社製)を0.5g加え、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)で7000rpmの回転数で15分混練することによって電極活物質層形成液としての分散液を得た。
【0110】
電極活物質層形成液の塗布量を表1に示す量としたほかは実施例1と同様にして、集電体の一方面側に、電極活物質層形成液を塗布して塗布膜を形成した。
【0111】
塗布膜を形成した集電体を用いて、電極活物質層形成工程を実施した。電極活物質層形成工程は、次のように実施された。塗布膜を形成した集電体を、150℃に加熱したホットプレートで乾燥して乾燥膜となし、次いで、乾燥膜に対してその膜密度が2.0g/cm3となるようにプレス加工を施し、さらに電気炉(マッフル炉)(デンケン社製、P90)を用いて、空気雰囲気下で、室温から390℃まで40分かけて徐々に加熱して、その加熱後、直ちに取り出し、室温まで自然放冷し、集電体上に形成された塗布膜を電極活物質層となし、電極板を得た。なお、プレス加工は、実施例1と同様に実施された。得られた電極板を実施例1と同様に裁断し、実施例3の電極板を得た。尚、電極板の電極活物質層の厚みを算出した。電極活物質層の厚みは、実施例1と同様にして算出された。結果を表1に示す。
【0112】
得られた電極板の電極活物質層には、予め電極活物質層形成液に添加された活物質であるLiCoOの粒子同士を固着するように、金属化合物(LiCoO)が生成して析出して全体として層をなしている。この様子について、実施例1と同様に、集電体表面上に、電極活物質層として、粒子状のLiCoOが相互に金属化合物(LiCoO)で固着された構造を有する層が形成されていることが確認された。
【0113】
実施例3の電極板を用いて実施例1と同様に吸水試験を実施し、吸水試験後の電極板の含水率を測定した。結果を表2に示す。
【0114】
実施例3の電極板を用いて、実施例1と同様の方法で三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル3とし、さらに実施例試験セル3を用いて実施例1と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0115】
実施例4.
<電極板の調製>
(電極活物質層形成液)
電極活物質層を形成するための電極活物質層形成液を調製した。金属化合物の前駆体をなす金属元素含有化合物として、Li(CHCOO)・2H0を10g及びMn(NO・6HOを56g準備し、これらを溶媒としての水35gに添加混合して金属化合物前駆体含有溶液を調製し、この金属化合物前駆体含有溶液に、粘度調整剤としてヒドロキシエチルセルロース樹脂を1g、正極用の活物質粒子としてコバルト酸リチウム(LiCoO)の粒子(平均粒子径5μm)を40g、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、HS−100)を5gおよび気相成長炭素繊維(昭和電工社製)を0.5g加え、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)で7000rpmの回転数で15分混練することによって電極活物質層形成液としての分散液を得た。
【0116】
電極活物質層形成液の塗布量を表1に示す量としたほかは実施例1と同様にして、集電体の一方面側に、電極活物質層形成液を塗布して塗布膜を形成した。
【0117】
塗布膜を形成した集電体を用いて、実施例1と同様にして電極活物質層形成工程を実施して、電極板を得た。得られた電極板を実施例1と同様に裁断し、実施例4の電極板を得た。尚、電極板の電極活物質層の厚みを算出した。電極活物質層の厚みは、実施例1と同様にして算出された。結果を表1に示す。
【0118】
得られた電極板の電極活物質層には、予め電極活物質層形成液に添加された活物質であるLiCoOの粒子同士を固着するように、金属化合物(LiMn)が生成して析出して全体として層をなしている。この様子について、実施例1と同様に、集電体表面上に、電極活物質層として、粒子状のLiCoOが相互に金属化合物(LiMn)で固着された構造を有する層が形成されていることが確認された。
【0119】
実施例4の電極板を用いて実施例1と同様に吸水試験を実施し、吸水試験後の電極板の含水率を測定した。結果を表2に示す。
【0120】
実施例4の電極板を用いて、実施例1と同様の方法で三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル4とし、さらに実施例試験セル4を用いて実施例1と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0121】
実施例5.
<電極板の調製>
(電極活物質層形成液)
電極活物質層を形成するための電極活物質層形成液を調製した。金属化合物の前駆体をなす金属元素含有化合物として、Li(CHCOO)・2H0を10g及び[(i−CO)Ti(C14N)]を71g準備し、これらを溶媒としてのメタノール10gに添加混合して金属化合物前駆体含有溶液を調製し、この金属化合物前駆体含有溶液に、粘度調整剤としてアクリル樹脂(共栄社化学株式会社製、オリコックスKC210)を5g、負極用の活物質粒子としてチタン酸リチウム(LiTi12)の粒子(平均粒子径0.3μm)を40g、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、HS−100)を5gおよび気相成長炭素繊維(昭和電工社製)を0.5g加え、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)で7000rpmの回転数で15分混練することによって電極活物質層形成液としての分散液を得た。
【0122】
集電体(負極用の集電体)として厚さ10μmの銅板を準備し、電極活物質層形成液の塗布量を表1に示す量としたほかは実施例1と同様にして、集電体の一方面側に、電極活物質層形成液を塗布して塗布膜を形成した。
【0123】
塗布膜を形成した集電体を用いて、電極活物質層形成工程を実施した。電極活物質層形成工程は、次のように実施された。塗布膜を形成した集電体を、150℃に加熱したホットプレートで乾燥して乾燥膜となし、次いで、乾燥膜に対してその膜密度が2.0g/cm3となるようにプレス加工を施し、さらに電気炉(マッフル炉)(デンケン社製、P90)を用いて、空気雰囲気下で、室温から440℃まで30分かけて徐々に加熱して、その加熱後、直ちに取り出し、室温まで自然放冷し、集電体上に形成された塗布膜を電極活物質層となし、電極板を得た。なお、プレス加工は、実施例1と同様に実施された。得られた電極板を実施例1と同様に裁断し、実施例5の電極板を得た。尚、電極板の電極活物質層の厚みを算出した。電極活物質層の厚みは、実施例1と同様にして算出された。結果を表1に示す。
【0124】
得られた電極板の電極活物質層には、予め電極活物質層形成液に添加された活物質であるLiTi12の粒子同士を固着するように、金属化合物(LiTi12)が生成して析出して全体として層をなしている。この様子について、実施例1と同様にして、集電体表面上に、電極活物質層として、粒子状のLiTi12が相互に金属化合物(LiTi12)で固着された構造を有する層が形成されていることが確認された。
【0125】
実施例5の電極板を用いて実施例1と同様に吸水試験を実施し、吸水試験後の電極板の含水率を測定した。結果を表2に示す。
【0126】
実施例5の電極板を用いて、実施例1と同様の方法で三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル5とし、さらに実施例試験セル5を用いて実施例1と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0127】
実施例6.
<電極板の調製>
(電極活物質層形成液)
電極活物質層を形成するための電極活物質層形成液を調製した。金属化合物の前駆体をなす金属元素含有化合物として、Li(CHCOO)・2H0を10g及びFe(NO・9HOを40g準備し、準備し、リン元素の供給源としてリン酸(HPO)を12g準備し、これらを溶媒としての水50gに添加混合して金属化合物前駆体含有溶液を調製し、この金属化合物前駆体含有溶液に、粘度調整剤としてメチルセルロース樹脂を2g、正極用の活物質粒子としてリン酸鉄リチウム(LiFePO)の粒子(平均粒子径0.1μm)を40g、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、HS−100)を5gおよび気相成長炭素繊維(昭和電工社製)を0.5g加え、エクセルオートホモジナイザー(株式会社日本精機製作所製)で7000rpmの回転数で15分混練することによって電極活物質層形成液としての分散液を得た。
【0128】
電極活物質層形成液の塗布量を表1に示す量としたほかは実施例1と同様にして、集電体の一方面側に、電極活物質層形成液を塗布して塗布膜を形成した。
【0129】
塗布膜を形成した集電体を用いて、電極活物質層形成工程を実施した。電極活物質層形成工程は、次のように実施された。塗布膜を形成した集電体を、150℃に加熱したホットプレートで乾燥して乾燥膜となし、次いで、乾燥膜に対してその膜密度が2.0g/cm3となるようにプレス加工を施し、さらに電気炉(マッフル炉)(デンケン社製、P90)を用いて、窒素雰囲気下で、室温から430℃まで30分かけて徐々に加熱して、その加熱後、直ちに取り出し、室温まで自然放冷し、集電体上に形成された塗布膜を電極活物質層となし、電極板を得た。なお、プレス加工は、実施例1と同様に実施された。得られた電極板を実施例1と同様に裁断し、実施例6の電極板を得た。尚、電極板の電極活物質層の厚みを算出した。電極活物質層の厚みは、実施例1と同様にして算出された。結果を表1に示す。
【0130】
得られた電極板の電極活物質層には、予め電極活物質層形成液に添加された活物質であるLiFePOの粒子同士を固着するように、金属化合物(LiFePO)が生成して析出して全体として層をなしている。この様子について、実施例1と同様に、集電体表面上に、電極活物質層として、粒子状のLiFePOが相互に金属化合物(LiFePO)で固着された構造を有する層が形成されていることが確認された。
【0131】
実施例6の電極板を用いて実施例1と同様に吸水試験を実施し、吸水試験後の電極板の含水率を測定した。結果を表2に示す。
【0132】
実施例6の電極板を用いて、実施例1と同様の方法で三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル6とし、さらに実施例試験セル6を用いて実施例1と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0133】
実施例7.
<電極板の調製>
(電極活物質層形成液)
電極活物質層を形成するための電極活物質層形成液を調製した。正極用の活物質粒子として平均粒径6μmのLiMn粉末を80重量部(40g)、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、デンカブラック)を10重量部(5g)、及び樹脂製の結着剤としてメチルセルロース樹脂(信越化学社製、60SH4000)を2重量部(1g)準備し、これらを溶媒としての水36gに添加して、固形分を溶媒中に分散させ、スラリー状の電極活物質層形成液(固形分濃度が55重量%)を得た。
【0134】
正極用の集電体である厚さ15μmのアルミ板を準備し、この集電体の一面側に、電極活物質層形成液を塗布して塗布膜を形成した。電極活物質層形成液の塗布量、乾燥後の正極活物質層用塗工組成物の塗布量が60g/mとなるように調整された。さらに、塗布膜を形成した集電体をオーブン内に置き、120℃の空気雰囲気下で塗布膜の乾燥を行なって乾燥膜を得た。さらに、乾燥膜の密度が、2.0g/cm(正極活物質層の厚さ:31μmとなるように、ロールプレス機(株式会社サンクメタル社製:メカ式1ton)を用いて、加圧力:0.1ton/cm、プレス速度10mm/秒の条件で、乾燥膜をプレスした。このプレスされた乾燥膜が正極活物質層をなし、電極板が調製された。そして、この電極板を直径15mmの円盤状に裁断し、さらに140℃で5分間、真空乾燥させた。こうして得られた電極板を、実施例7の電極板とした。実施例7の電極板における電極活物質層の厚みは表1に示すような値であった。
【0135】
この電極板を用いて実施例1と同様に吸水試験を実施し、吸水試験後の電極板の含水率を測定した。結果を表2に示す。
【0136】
実施例7の電極板を用いて、実施例1と同様の方法で三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル7とし、さらに実施例試験セル7を用いて実施例1と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0137】
実施例8.
実施例5と同様にして非水電解液二次電池用電極板を調製し、所定の大きさ(直径15mmの円板)に裁断し、円板状の電極板を得、これを実施例8の電極板とした。実施例8の電極板における電極活物質層の厚みは表1に示すような値であった。
【0138】
次に、以下のとおり調製した樹脂混合液の満たされた浸漬槽に実施例8の電極板を浸漬させ、実施例8の電極板の電極活物質層の空隙に上記樹脂混合液を充分に浸透させた。すなわち、浸漬槽に実施例8の電極板を浸漬させた状態で、25℃の条件で、10分間放置した後、実施例8の電極板を上記浸漬層から取りだし、140℃に加温したオーブン内に設置して5分間乾燥させて、樹脂混合液の溶媒を除去した。これによって、電極活物質層中に、樹脂製結着剤が残留する電極板を作成し、これを実施例8の樹脂含浸電極板とした。尚、上記樹脂混合液は、樹脂材料として、樹脂製結着剤をなすメチルセルロース樹脂(信越化学社製、60SH4000)の水溶液(メチルセルロース樹脂を3重量%含有するもの)で調製された。
【0139】
この樹脂含浸電極板を用いて実施例5と同様に吸水試験を実施し、吸水試験後の電極板の含水率を測定した。結果を表2に示す。
【0140】
樹脂含浸電極板を用いて、実施例5と同様にして、三極式コインセルを組み立て、これを実施例試験セル8とし、さらに実施例試験セル8を用いて実施例5と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0141】
比較例1.
樹脂製の結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(クレハ社製、KF#1100)を8重量部(4g)用い、溶媒としてのN−メチルピロリドン(NMP)(三菱化学社製)36gを用いたほかは、実施例7と同様にして、比較例1の電極板を調製した。そして、これを用いて吸水試験を行い吸水試験後の電極板の含水率を算出した。さらに、この電極板を用いて、実施例1と同様の方法で三極式コインセルを組み立て、これを用いて実施例1と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0142】
比較例2.
正極用の活物質粒子として平均粒径5μmのLiCoO粉末を80重量部(40g)用い、電極活物質層形成液の塗布量を乾燥時の電極活物質の重さが表1に示すような値となるような量としたほかは、比較例1と同様にして比較例2の電極板を調製した。そして、これを用いて吸水試験を行い吸水試験後の電極板の含水率を算出した。さらに、この電極板を用いて、実施例1と同様の方法で三極式コインセルを組み立て、これを用いて実施例1と同様に1C,50C,100Cの各放電レートにおける放電容量維持率(%)を計測した。ただし、電圧が満充電電圧に達するまで1Cの定電流で定電流充電する条件で充電試験を行い、充電試験に採用した1Cの定電流にて電圧が満充電電圧から放電終止電圧まで放電する条件で放電試験を行うにあたり、1C定電流の値、満充電電圧、放電終止電圧は、表2に示す値とした。結果を表2に示す。
【0143】
【表1】

【0144】
【表2】

【0145】
上記実施例および比較例より、吸水試験後の電極板の含水率が0.15%以上1.0%以下範囲にあるような電極板によれば、出入力特性に優れた電池を提供可能であって非水電解液二次電池用電極板として好ましい電極板が提供される、ということが確認された。
また、実施例1は、実施例7よりも放電容量維持率により優れたものとなっている。これにより、含水率が0.15%以上1.0%以下範囲にあって、電極活物質層が、金属化合物で活物質粒子同士を固着させた構成を有する場合に、特に、優れた非水電解液二次電池用電極板として好ましい電極板が提供される、ということが確認された。
【符号の説明】
【0146】
1、55 集電体
2、54 電極活物質層
10 非水電解液二次電池用電極板
30 電池パック
31 リチウムイオン二次電池
32 正極端子
33 負極端子
34 保護回路基板
35 外部接続コネクタ
36a、36b 樹脂容器
37 端部ケース
38a、38b 外部接続用窓
50 非水電解液二次電池用電極板
70 セパレータ
81、82 外装
90 非水電解液
100 非水電解液二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、前記集電体の少なくとも一部に形成され、活物質を含む電極活物質層とを備える非水電解液二次電池用電極板であって、
温度150℃かつ気圧1Torrの空気中で1時間保持され、次いで、温度25℃、相対湿度60%RHかつ気圧760Torrの空気中で10分間保持された非水電解液二次電池用電極板のカールフィッシャー法で測定された水分量を該非水電解液二次電池用電極板の電極活物質層の重量で除算して算出された含水率が、0.15%以上1.0%以下であることを特徴とする非水電解液二次電池用電極板。

【請求項2】
正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であって、
前記正極板または前記負極板の少なくともいずれか一方が、請求項1に記載の非水電解液二次電池用電極板である、ことを特徴とする非水電解液二次電池。

【請求項3】
収納ケースと、正極端子および負極端子を備える非水電解液二次電池と、過充電および過放電保護機能を有する保護回路とを少なくとも備え、前記収納ケースに前記非水電解液二次電池および前記保護回路が収納されて構成される電池パックにおいて、
前記非水電解液二次電池が、正極板と、負極板と、前記正極板と前記負極板との間に設けられるセパレータと、非水溶媒を含む電解液とを少なくとも備えた非水電解液二次電池であり、
前記正極板が、請求項1に記載の非水電解液二次電池用電極板であることを特徴とする電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−84413(P2012−84413A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230073(P2010−230073)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】