説明

非水電解液二次電池

【課題】短絡を防止可能な非水電解液二次電池を提供する。
【解決手段】非水電解液二次電池10は、捲回体1と蓋体6との間に絶縁部材4を備える。絶縁部材4は、低密度ポリエチレンまたはアイオノマー樹脂からなり、約100℃の融点を有する。非水電解液二次電池10の温度が捲回体1のセパレータが縮み始める100℃に達すると、絶縁部材4は、溶け、捲回体1の正極と負極との間に絶縁物を形成する。その結果、捲回体1の正極は、負極と接触しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非水電解液二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電池の温度が異常に上昇しても短絡を防止可能な非水系電解液電池が知られている(特許文献1)。
【0003】
この非水系電解液電池は、正極、負極よびセパレータを捲回または積層して作製された電極体を備える。そして、非水系電解液電池の電池缶の蓋側における電極体の端面から露出したセパレータが短絡防止代として用いられ、短絡防止代としてのセパレータは、絶縁板によって電極体の端面方向へ押し付けられている。また、絶縁板は、セパレータと熱融着する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−74443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の非水系電解液電池においては、絶縁板は、セパレータと同じ材料からなるので、セパレータが縮み始めると、絶縁板も縮み始める。即ち、セパレータが縮み始めた温度では、絶縁板は、セパレータと熱融着せず、縮む。その結果、電極が露出し、短絡するという問題がある。
【0006】
そこで、この発明は、かかる問題を解決するためになされたものであり、その目的は、短絡を防止可能な非水電解液二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の実施の形態によれば、非水電解液二次電池は、金属缶と、捲回体と、絶縁部材とを備える。電池缶は、金属からなる。捲回体は、電池缶に収納され、正極、負極およびセパレータを含む。絶縁部材は、捲回体と電池缶の蓋体との間に配置され、セパレータが縮み始める第1の温度に達すると溶ける。
【発明の効果】
【0008】
この発明の実施の形態による非水電解液二次電池においては、第1の温度に達すると、捲回体のセパレータが縮むが、絶縁部材が溶けてセパレータが縮む部分に達して、捲回体の蓋体側において、正極と負極との間に絶縁物が形成される。その結果、正極は、負極と接触しない。
【0009】
従って、短絡を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、この発明の実施の形態による非水電解質二次電池の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示す線II−II間における捲回体の断面図である。
【図3】図3は、130℃以上の高温時における捲回体の断面図である。
【図4】図4は、図1に示す非水電解液二次電池の製造方法を示す工程図である。
【図5】図5は、この発明の実施の形態による他の非水電解液二次電池の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0012】
図1は、この発明の実施の形態による非水電解液二次電池の斜視図である。なお、図1においては、正極缶5は、その内部が見えるように図示されている。
【0013】
図1を参照して、この発明の実施の形態による非水電解液二次電池10は、捲回体1と、正極タブ2と、負極タブ3と、絶縁部材4と、正極缶5と、蓋体6と、ベント7と、負極端子8と、注入口9とを備える。
【0014】
なお、非水電解液二次電池10は、例えば、リチウムイオン電池である。
【0015】
捲回体1は、正極と負極とをセパレータを介して捲回した構造からなる。また、捲回体1は、概略、平板形状を有し、正極缶5の底面と平行な平面において、運動場のトラックの形状からなる平面形状を有する。そして、捲回体1は、電解液を含み、正極缶5内に収納される。
【0016】
正極タブ2は、例えば、0.08mmの厚みを有するアルミニウム(Al)からなり、短冊形状を有する。正極タブ2は、一方端が捲回体1の正極に溶接される。また、正極タブ2は、他方端側が絶縁部材4の貫通孔41を介して捲回体1と蓋体6との間に配置される。この場合、正極タブ2は、捲回体1と蓋体6との間で湾曲されて正極缶5内に配置される。そして、正極タブ2は、他方端が蓋体6に溶接される。
【0017】
負極タブ3は、例えば、0.08mmの厚みを有するニッケル(Ni)−銅(Cu)クラッド鋼板からなり、短冊形状を有する。負極タブ3は、その一方端が捲回体1の負極に溶接される。また、負極タブ3は、他方端側が絶縁部材4の貫通孔42を介して捲回体1と負極端子8との間に配置される。この場合、負極タブ3は、捲回体1と負極端子8との間で湾曲されて正極缶5内に配置される。そして、負極タブ3は、他方端が負極端子8に溶接される。
【0018】
絶縁部材4は、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density Polyethylene)またはアイオノマー樹脂からなる。低密度ポリエチレンは、繰り返し単位のエチレンがランダムに分岐を持って結合した結晶性の熱可塑性樹脂に属する合成樹脂である。そして、低密度ポリエチレンは、空気中の酸素または過酸化物等のラジカル開始剤を触媒とし、エチレンを1000〜4000気圧、および100〜350℃の環境下で多段ガス圧縮機を用いて重合し、その後、残留モノマーを分離し、冷却することによって製造される。このように、低密度ポリエチレンは、高圧・高温条件下で重合されるため、エチレンが単純な鎖状に結合せず、多くの長鎖分岐や短鎖分岐を持つ。従って、この構造が密度を低める。そして、低密度ポリエチレンは、100〜115℃の融点を有し、実用温度は、最大で90℃程度である。
【0019】
アイオノマー樹脂は、エチレン−メタクリル酸共重合体またはエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウムや亜鉛等の金属イオンで分子間結合した特殊な構造を有する樹脂である。そして、アイオノマー樹脂は、射出成形用では、96℃の融点を有し、フィルム用では、88℃の融点を有する。
【0020】
このように、絶縁部材4は、約100℃の融点を有する。また、絶縁部材4は、貫通孔41,42を有する。そして、絶縁部材4は、捲回体1と蓋体6との間に配置される。
【0021】
正極缶5は、例えば、Alからなる。また、正極缶5は、概略、中空の平板形状を有し、底面に平行な平面において、運動場のトラックの形状からなる平面形状を有する。そして、正極缶5は、捲回体1、正極タブ2、負極タブ3および絶縁部材4を収納する。
【0022】
蓋体6は、例えば、Alからなり、運動場のトラックの形状からなる外形を有する。そして、蓋体6は、正極缶5の開口端に嵌合する。
【0023】
ベント7は、蓋体6に設けられる。そして、ベント7は、正極缶5内のガスを抜くために用いられる。負極端子8は、絶縁体(図示せず)を介して蓋体6に設けられ、負極タブ3の他方端に接続される。注入口9は、蓋体6に設けられる。そして、注入口9は、捲回体1に電解液を注入するための口である。
【0024】
図2は、図1に示す線II−II間における捲回体1の断面図である。図2を参照して、捲回体1は、正極11と、負極12と、セパレータ13とを含む。
【0025】
負極12は、正極11よりも広い幅を有し、セパレータ13は、負極12よりも広い幅を有する。正極11は、両端が負極12の両端よりも内側に位置するように配置される。負極12は、両端がセパレータ13の両端よりも内側に位置するように配置される。捲回体1の最外周には、セパレータ13が配置される。そして、正極11および負極12は、セパレータ13を介して捲回され、捲回体1が作製される。なお、捲回体1の底面には、テープ20が貼られている。
【0026】
正極11は、正極集電体と、正極活物質層とからなる。正極集電体は、例えば、Al箔からなり、帯形状を有する。
【0027】
正極活物質層は、例えば、正極活物質とバインダーとを混合して塗料化したスラリーを正極集電体の表面に塗布し、その塗布したスラリーを乾燥し、次いで、厚み方向にプレスすることによって形成される。スラリーの塗布は、例えば、ドクターブレード法およびスプレー法等によって行なわれる。また、スラリーは、必要に応じて、導電性材料を更に含んでいてもよい。
【0028】
正極活物質は、例えば、LiCoO、LiNiO、LiMn、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O、およびLiFePo等のいずれかからなる。
【0029】
バインダーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素系樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびエチレンプロピレンジエンマルチブロックポリマー等のゴム系樹脂、カルボキシメチルセルロース(CMC)等のセルロース系樹脂等からなる。
【0030】
導電性材料は、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(KB)、黒鉛、および非晶質炭素等の炭素材料からなる。これらの導電性材料は、単独または混合して用いられても良い。
【0031】
負極12は、負極集電体と、負極活物質層とからなる。負極集電体は、例えば、Cu箔からなり、帯形状を有する。
【0032】
負極活物質層は、例えば、負極活物質とバインダーとを混合して塗料化したスラリーを負極集電体の表面に塗布し、その塗布したスラリーを乾燥し、次いで、厚み方向にプレスすることによって形成される。スラリーの塗布は、上述したドクターブレード法およびスプレー法等によって行なわれる。また、スラリーは、必要に応じて、導電性材料を更に含んでいてもよい。
【0033】
負極活物質は、例えば、SnおよびSi等のLiと合金化可能な金属、金属リチウム、LiAl合金、非晶質炭素、人造黒鉛、天然黒鉛、フラーレン、およびナノチューブ等のリチウム(Li)を吸蔵放出可能な炭素系材料、LiTi12、およびLiTi等のLiを吸蔵放出可能なチタン酸リチウム等からなる。
【0034】
バインダーは、PTFE、PVDF、SBR、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等のいずれかからなる。これらのバインダーは、単独または混合して用いられても良い。
【0035】
導電性材料は、AB、KB、および非晶質炭素等の炭素材料からなる。これらの導電性材料は、単独または混合して用いられても良い。
【0036】
セパレータ13については、特に制限は無く、従来、公知のものがセパレータ13として適用される。例えば、厚みが5〜30μmで、開孔率が30〜70%の微多孔性ポリエチレンフィルムまたは微多孔性ポリプロピレンフィルム、およびポリエチレンポリプロピレン複合フィルム等がセパレータ13として好適に用いられる。そして、セパレータ13は、微多孔性ポリエチレンフィルムからなる場合、100℃(第1の温度)で縮み始め、125〜130℃(第2の温度)で第1の温度における収縮率よりも大きい収縮率で縮む。
【0037】
ここで、第1の温度は、セパレータ13の収縮率が2%以上5%未満に達するときの温度であり、第2の温度は、セパレータ13の収縮率が5%以上(=第1の温度におけるセパレータ13の収縮率よりも大きい収縮率)に達するときの温度である。
【0038】
また、収縮率は、次のように定義される。セパレータを、捲回体1の捲回方向×捲回軸方向に、10cm×10cmに切り出して市販の封筒に収め、例えば、T℃に設定した恒温槽内に1時間放置する。その後、セパレータを恒温槽から取り出し、捲回軸方向の寸法xを測定する。そして、その測定した寸法xと恒温槽での放置前の寸法とを用いて、収縮率は、次式によって定義される。
収縮率(%)=100×(10−x)/10・・・(1)
なお、温度Tは、セパレータ13を恒温槽内で1時間放置する実験を恒温槽の温度を変えながら繰り返し行ない、セパレータ13の収縮率が2%以上になるときの温度として検出した温度である。
【0039】
また、上述した第1の温度(100℃)および第2の温度(125〜130℃)は、セパレータ13が微多孔性ポリエチレンフィルムからなる場合の温度であり、セパレータ13が微多孔性ポリエチレンフィルム以外の材料からなる場合、第1の温度は、100℃と異なる温度からなり、第2の温度は、125〜130℃と異なる温度からなる。しかし、セパレータ13が微多孔性ポリエチレンフィルム以外の材料からなる場合も、上述した収縮率を用いて、上述した定義に従って第1の温度および第2の温度を決定できる。従って、セパレータ13は、いかなる材料からなっていても、第1の温度に達すると第1の収縮率(2%以上5%未満の収縮率)で縮み始め、第2の温度に達すると第2の収縮率(5%以上の収縮率)で縮む。
【0040】
電解液は、例えば、Li塩が有機溶媒に溶解されたものからなる。Li塩としては、有機溶媒中で解離してLiイオンを生成可能であり、電解液を構成要素とする電池の電圧範囲で分解等の副反応を起こさないものが用いられる。
【0041】
そして、Li塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、およびLiClCO等の無機化合物、LiN(SOCF、LiN(SO、LiN(SOCF)(SO)、LiC(SOCF、LiC(SO、LiPF6−n(C(nは1〜6の整数)、LiSOCF、LiSO、およびLiSO等の有機化合物等からなる。
【0042】
有機溶媒は、Li塩を溶解でき、電池の電圧範囲で分解等の副反応を起こさないものであれば制限されない。有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、およびビニレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、およびエチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート、γ−ブチロラクトン等の環状エステル、ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、およびテトラグライム等の鎖状エーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、および2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル、アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、およびエトキシプロピオニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独又は混合して用いることができる。
【0043】
これらのうち、有機溶媒は、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒が好ましい。この混合溶媒を用いれば、高い導電率が得られ、良好な電池特性を実現できる。
【0044】
電解液には、安全性、サイクル性、高温貯蔵性等の特性を向上する目的で、適宜、ビニレンカーボネート類、1,3−プロパンサルトン、ジフェニルジスルフィド、シクロヘキサン、ビフェニル、フルオロベンゼン、およびt−ブチルベンゼン等の添加剤が含まれていてもよい。
【0045】
また、電解液は、有機溶媒に代えて、エチル−メチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、へプチル−トリメチルアンモニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、ピリジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド、およびグアジニウムトリフルオロメチルスルホニウムイミド等の常温溶融塩を含んでいてもよい。
【0046】
更に、電解液は、下記のホストポリマーによりゲル化されていてもよい。ホストポリマーとしては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体、主鎖または側鎖にエチレンオキシド鎖を含む架橋ポリマー、光及び熱により架橋可能であり側鎖にオキセタン化合物や脂環式エポキシ化合物を有する(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。
【0047】
図3は、130℃以上の高温時における捲回体1の断面図である。上述したように絶縁部材4は、約100℃の融点を有し、セパレータ13は、約100℃に達すると第1の収縮率(=2%以上5%未満の収縮率)で縮み始め、125〜130℃に達すると第2の収縮率(5%以上の収縮率)で縮む。
【0048】
従って、非水電解液二次電池10の温度が130℃以上に上昇すると、セパレータ13は、蓋体6側が縮むが、絶縁部材4が溶けてセパレータ13が縮む部分に達して、正極11と負極12との間に絶縁物21〜23を作る。即ち、絶縁部材4は、捲回体1の外周部だけでなく、全領域において、正極11と負極12との間に絶縁物21〜23を作る。その結果、正極11は、負極12と接触しない。従って、短絡を防止できる。
【0049】
なお、捲回体1の底面には、テープ20が貼られているので、セパレータ13は、捲回体1の底面側では、縮まず、捲回体1の底面側では、正極11および負極12は、露出しない。従って、捲回体1の底面側では、正極11および負極12が露出することに起因する短絡の問題は発生しない。
【0050】
絶縁部材4は、アイオノマー樹脂からなる場合、88〜96℃の融点を有する。従って、絶縁部材4は、アイオノマー樹脂からなる場合、セパレータ13が縮み始める100℃に非水電解液二次電池10の温度が昇温されると、溶け、絶縁物21〜23を正極11と負極12との間に形成する。その結果、セパレータ13が縮み始める100℃においても、短絡を防止できる。
【0051】
また、絶縁部材4は、低密度ポリエチレンからなる場合、100〜115℃の融点を有する。従って、非水電解液二次電池10の温度が加熱試験の温度(=130℃)に昇温されると、絶縁部材4は、アイオノマー樹脂および低密度ポリエチレンのいずれから構成されていても、溶け、絶縁物21〜23を正極11と負極12との間に形成する。その結果、非水電解液二次電池10の加熱試験時の温度においても、短絡を防止できる。
【0052】
従って、この発明の実施の形態による非水電解液二次電池10は、セパレータ13が縮み始める第1の温度(=100℃)に達すると溶ける絶縁部材4を備えていてもよく、第1の温度(=100℃)よりも高い第2の温度(=130℃)に達すると溶ける絶縁部材4を備えていてもよい。
【0053】
図4は、図1に示す非水電解液二次電池10の製造方法を示す工程図である。図4を参照して、非水電解液二次電池10の製造が開始されると、正極11、負極12およびセパレータ13を作製する(ステップS1)。
【0054】
そして、テープ状のアルミニウム箔の一方端を溶接機を用いて正極11の正極集電体に溶接し、一方端から所定の長さL1の位置でテープ状のアルミニウム箔をカッターで切断する(ステップS2)。これによって、正極タブ2が正極11に接続される。
【0055】
その後、テープ状のNi−Cuクラッド鋼板の一方端を溶接機を用いて負極12の負極集電体に溶接し、一方端から所定の長さL1の位置でテープ状のNi−Cuクラッド鋼板をカッターで切断する(ステップS3)。これによって、負極タブ3が負極12に接続される。
【0056】
引き続いて、正極タブ2付き正極11、セパレータ13、および負極タブ3付き負極12を積層し、正極11および負極12をセパレータ13を介して捲回機によって捲回し、捲回体1の底面にテープ20を貼る(ステップS4)。これによって、捲回体1が作製される。
【0057】
そして、ステップS4において作製された捲回体1を正極缶5に収納する(ステップS5)。
【0058】
その後、正極タブ2および負極タブ3がそれぞれ貫通孔41,42を通るように、絶縁部材4を正極缶5内の捲回体1の上に設置する(ステップS6)。
【0059】
そうすると、正極缶5に収納された捲回体1の正極11および負極12にそれぞれ接続された正極タブ2および負極タブ3の他方端を切り揃え、正極タブ2の他方端を蓋体6に溶接し、負極タブ3の他方端を負極端子8に溶接する(ステップS7)。この場合、負極タブ3の銅(Cu)からなる面が負極端子8に溶接される。これは、負極タブ3は、レーザ溶接によって負極端子8に溶接され、レーザ溶接においては、レーザを銅(Cu)からなる面に照射することはできず、ニッケル(Ni)からなる面にレーザを照射する必要があるからである。
【0060】
その後、蓋体6を正極缶5の開口部に嵌合する(ステップS8)。これによって、正極タブ2のうち、捲回体1と蓋体6との間の部分が湾曲され、負極タブ3のうち、捲回体1と蓋体6との間の部分が正極缶5の内壁に接触しないように曲げられる。
【0061】
そして、電解液を注入口9から捲回体1に注入する(ステップS9)。これによって、非水電解液二次電池10が完成する。
【0062】
図5は、この発明の実施の形態による他の非水電解液二次電池の概略図である。この発明の実施の形態による非水電解液二次電池は、図5に示す非水電解液二次電池10Aであってもよい。
【0063】
図5を参照して、非水電解液二次電池10Aは、図1に示す非水電解液二次電池10に絶縁板30を追加したものであり、その他は、非水電解液二次電池10と同じである。
【0064】
絶縁板30は、絶縁部材4の融点よりも高い融点を有し、130℃の加熱試験において溶けない。また、絶縁板30は、貫通孔301,302を有する。そして、絶縁板30は、絶縁部材4と蓋体6との間に配置される。
【0065】
なお、非水電解液二次電池10Aにおいては、正極タブ2は、絶縁部材4の貫通孔41および絶縁板30の貫通孔301を介して蓋体6に接続され、負極タブ3は、絶縁部材4の貫通孔42および絶縁板30の貫通孔302を介して負極端子8に接続される。
【0066】
非水電解液二次電池10Aの温度が130℃に昇温されると、捲回体1のセパレータ13は、蓋体6側が縮み、絶縁部材4が溶けて、絶縁物21〜23が正極11および負極12間に形成される。
【0067】
そして、絶縁板30は、絶縁部材4が溶けても溶けないので、負極タブ3と正極缶5との接触を抑制する。
【0068】
従って、非水電解液二次電池10Aにおいては、更に、短絡を防止できる。
【0069】
非水電解液二次電池10Aは、図4に示す工程図において、正極タブ2および負極タブ3がそれぞれ貫通孔301,302を通るように絶縁板30を絶縁部材4と蓋体6との間に配置するステップをステップS6とステップS7との間に追加した工程図に従って製造される。
【0070】
非水電解液二次電池10Aのその他の部分についての説明は、上述した非水電解液二次電池10の説明と同じである。
【0071】
なお、この発明の実施の形態においては、ラミネート型の非水電解液二次電池においても、絶縁部材4を設けるようにしてもよい。そして、このラミネート型の非水電解液二次電池は、正極および負極がセパレータを介して捲回された捲回体を備えていてもよく、正極および負極がセパレータを介して積層された積層体を備えていてもよい。
【0072】
また、この発明の実施の形態においては、正極缶5および蓋体6は、「電池缶」を構成する。
【0073】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0074】
この発明は、非水電解液二次電池に適用される。
【符号の説明】
【0075】
1 捲回体、2 正極タブ、3 負極タブ、4 絶縁部材、5 正極缶、6 蓋体、7 ベント、8 負極端子、9 注入口、10,10A 非水電解質二次電池、11 正極、12 負極、13 セパレータ、20 テープ、21〜23 絶縁物、30 絶縁板、41,42,301,302 貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる電池缶と、
前記電池缶に収納され、正極、負極およびセパレータを含む捲回体と、
前記捲回体と前記電池缶の蓋体との間に配置され、前記セパレータが縮み始める第1の温度に達すると溶ける絶縁部材とを備える非水電解液二次電池。
【請求項2】
前記絶縁部材は、前記第1の温度よりも高い第2の温度に達すると溶ける、請求項1に記載の非水電解液二次電池。
【請求項3】
前記第2の温度は、前記セパレータの収縮率が前記第1の温度における前記セパレータの第1の収縮率よりも大きい第2の収縮率に達する温度である、請求項2に記載の非水電解液二次電池。
【請求項4】
前記絶縁部材の融点よりも高い融点を有するとともに、前記絶縁部材と前記蓋体との間に配置され、前記負極に接続された負極タブを通す貫通穴を有する絶縁板を更に備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の非水電解液二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−151032(P2012−151032A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9848(P2011−9848)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】