説明

非水電解質二次電池

【課題】万一、電極リードが異常発熱を起こした場合に、封止構造の昇温を抑制する。
【解決手段】電極群と、非水電解質と、電極群および非水電解質を内部に収容する電池ケースとを備え、電極群が、正極集電体と、正極集電体の表面に付着した正極活物質層とを備える正極、一方の端部が正極集電体に接続された正極リード、負極集電体と、負極集電体の表面に付着した負極活物質層とを備える負極、一方の端部が負極集電体に接続された負極リード、および正極活物質層と負極活物質層との間に配されるセパレータを備え、電池ケースは、少なくとも一部が金属箔と樹脂膜とのラミネートシートで形成され、かつ開口部を有し、正極リードおよび負極リードの他方の端部がそれぞれ、開口部から電池ケースの外部に突出しており、開口部が、樹脂膜および/または熱可塑性樹脂の熱溶着による封止構造を有し、封止構造の近傍に、吸熱物質が配されている、非水電解質二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一部がラミネートシートで形成された電池ケースを備える非水電解質二次電池に関し、詳しくは、電池ケースの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非水電解質二次電池は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの駆動用電源や、太陽光発電、風力発電などの電力貯蔵用電池など、高出力用途に利用が広がっている。これらの用途では、高い容量や出入力特性が求められることから、例えば、大型の二次電池や、複数個の二次電池を直列に、または並列と直列とを組み合わせて接続することで構成される電池集合体などが用いられる。上記のような用途の二次電池としては、例えばラミネート型電池、角型電池などが用いられる。
【0003】
なかでも、ラミネート型電池は柔軟性を有することから形状の自由度が大きく、角型電池に比べて構成部材が少ない。したがって、電池集合体の製造コストおよび材料コストの低減に有効である。
【0004】
ラミネート型電池は、例えば開口部を有する袋状であり、ラミネートシートで形成された電池ケースを有する。ラミネートシートは、アルミニウム箔などの金属箔と、その両面に形成された樹脂膜とを含む。電池ケースの内部には、正極、負極およびこれらの間に配されるセパレータを備える電極群と、非水電解質とが収容される。電極群には、正極リードおよび負極リード(以下、電極リードともいう)の一方の端部がそれぞれ接続されている。電極リードの他方の端部はそれぞれ、開口部から電池ケースの外部に突出し、外部端子を構成している。開口部は、例えば樹脂膜および/または熱可塑性樹脂の熱溶着による封止構造によって、封止されている。
【0005】
高出力用途の非水電解質二次電池は、大電流でのパルス充放電を行うため、電極リードの抵抗が大きいほど、ジュール熱に由来する異常発熱が起こりやすい。万一、異常発熱が発生すると、ラミネートシートの樹脂膜が溶融して金属箔が露出し、電極リードとの接触による内部短絡が発生するおそれがある。特許文献1は、金属箔と電極リードとの接触を抑制する観点から、金属箔を含まない樹脂膜を内側に配し、アルミニウム箔を含むラミネートシートを外側に配した、二重構造を有する電池ケースを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−86803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、高出力用途の非水電解質二次電池は、電極リードの抵抗が大きいほど異常発熱が起こりやすい。また、過充電、内部短絡、外部短絡、大電流に起因する過度の抵抗加熱などの原因によっても、異常発熱が起こる可能性がある。
【0008】
異常発熱によって電極リードの温度が過度に上昇すると、ラミネートシートから金属箔が露出して、内部短絡が発生もしくは拡大するおそれがある。その結果、内部短絡が回路に設計値を超える電流が流れ、更なる異常発熱につながる。また、電極リードの温度が過度に上昇すると、樹脂膜や熱可塑性樹脂が軟化し、または溶融して、封止構造が有効に機能しなくなる。その結果、電池ケースの密封性が低下し、非水電解質の外部への漏出や、外部からの水分の混入などが起こり、電池の正常な充放電が困難となる。特許文献1が開示している電池ケースは、上記のような異常発熱や、これに由来する密封性の低下を抑制できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ラミネートシートで形成された電池ケースを有する非水電解質二次電池において、万一、電極リードが異常発熱を起こした場合に、封止構造の昇温を抑制することを目的とする。
【0010】
本発明の一局面は、電極群と、非水電解質と、電極群および非水電解質を内部に収容する電池ケースとを備え、電極群が、正極集電体と、正極集電体の表面に付着した正極活物質層とを備える正極、一方の端部が正極集電体に接続された正極リード、負極集電体と、負極集電体の表面に付着した負極活物質層とを備える負極、一方の端部が負極集電体に接続された負極リード、および正極活物質層と負極活物質層との間に配されるセパレータを備え、電池ケースは、少なくとも一部が金属箔と樹脂膜とのラミネートシートで形成され、かつ開口部を有し、正極リードおよび負極リードの他方の端部がそれぞれ、開口部から電池ケースの外部に突出しており、開口部が、樹脂膜および/または熱可塑性樹脂の熱溶着による封止構造を有し、封止構造の近傍に、封止構造の昇温を抑制する吸熱物質が配されている、非水電解質二次電池に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、万一、電極リードが異常発熱を起こしても、吸熱物質によって封止構造の昇温を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る吸熱物質を含む非水電解質二次電池を模式的に示す上面図である。
【図2】図1の非水電解質二次電池のII−II線における部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る電極群を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る非水電解質二次電池を、図面を参照しながら説明する。図1および図2に示す非水電解質二次電池は、電極群4と、非水電解質(図示せず)と、これらを内部に収容する電池ケース7とを備える。本発明に係る非水電解質二次電池は、少なくとも一部が金属箔1と樹脂膜2とのラミネートシート(第1ラミネートシート)3で形成されており、例えば、開口部7aを有する袋状である電池ケース7を具備する、いわゆるラミネート型電池である。金属箔1としては、例えば、アルミニウム箔が挙げられる。
【0014】
電極群4は、正極、負極およびこれらの間に配されるセパレータを備える。正極は、正極集電体と、正極活物質層とを備える。負極は、負極集電体と、負極活物質層とを備える。正極リード5の一方の端部は、正極集電体に接続されており、負極リード6の一方の端部は、負極集電体に接続されている。正極リード5および負極リード6(以下、電極リード5および6ともいう)は、電池ケース7の開口部7aから外部に突出し、電池の外部端子5aおよび6aを構成する。
【0015】
電池ケースの開口部は、例えば、樹脂膜の溶着による封止構造を有する。この場合、樹脂膜は電極リードを介して溶着されるため、樹脂膜と電極リードとの間に空隙が生じ、封止構造が有効に機能しない場合がある。そこで、封止構造は、図1および図2に示すように、電極リード5および6の近傍に熱可塑性樹脂8を有してもよい。この場合、開口部7aにおいて、樹脂膜2は、熱可塑性樹脂8、正極リード5および負極リード6を介して熱溶着される。したがって、封止構造は、樹脂膜2の溶着部および熱可塑性樹脂8の溶着部を含む。例えば、2枚のフィルム状の熱可塑性樹脂8で、電極リード5および6をそれぞれ挟むように溶着すればよい。このようにすることで、電極リード5および6の周囲が熱可塑性樹脂8で包囲され、封止構造をより有効に機能させることができる。
【0016】
封止構造を構成する熱可塑性樹脂としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、変性ポリプロピレン、ポリエチレンなどが挙げられる。熱可塑性樹脂は、万一、異常発熱が起こっても封止構造を有効に機能させる観点から、高いガラス転移温度および融点を有することが好ましい。具体的には、110〜160℃の融点を有することが好ましい。フィルム状の熱可塑性樹脂を用いる場合、10〜100μmの厚さであることが好ましい。
【0017】
電極リード5および6は抵抗体であるため、大きな電流が流れるほど、発熱量も大きくなる。電極リード5および6が異常に発熱すると、樹脂膜2および/または熱可塑性樹脂8が軟化し、または溶融して、封止構造が有効に機能しなくなる場合がある。そこで、本発明では、開口部7aの封止構造の近傍に吸熱物質10を配している。吸熱物質10は、少なくとも電極リード5および6と対向させることが好ましい。本発明によれば、万一、異常発熱が起こっても、電極リード5および6で発生した熱は、吸熱物質10に速やかに吸熱される。よって、封止構造の昇温が抑制され、封止構造の機能を持続させることができる。高出力用途の電池や、電池の短絡時などにおいて、電極リードに大電流が流れると、異常発熱が起こる可能性があるが、本発明はこれらの場合に有効である。
【0018】
吸熱物質は、封止構造の昇温を抑制する機能を有する。詳しくは、吸熱物質が電極リード5および6で発生した熱を吸熱することで、電極リードおよび封止構造の過度の昇温を抑制できる。例えば、吸熱物質は、熱可塑性樹脂よりも低い融点を有する。異常発熱によって吸熱物質が融点に達すると、融解熱の吸収によって、それ以上の封止構造の昇温が抑制される。吸熱物質は、例えば100〜140℃の融点を有することが好ましい。吸熱物質の融点が100℃以上であることで、異常時以外の吸熱作用の発生が防がれ、異常発熱の際に吸熱作用が有効に機能する。吸熱物質の融点が140℃以下であることで、封止構造の過度の昇温を高感度で抑制することができる。具体的には、100〜140℃の融点を有する有機塩もしくは無機塩、例えば、リン酸二水素リチウム(融点(m.p.)100℃)、酢酸アンモニウム(m.p.114℃)、蟻酸アンモニウム(m.p.119℃)、硫酸水素リチウム(m.p.120℃)などが挙げられる。上記の有機塩もしくは無機塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの物質は電池に悪影響を及ぼさないため、吸熱物質として好適である。なかでも、化学的安定性の観点から、リン酸二水素リチウムを用いることが特に好ましい。これらの吸熱物質は、例えば固体の状態で用いてもよく、吸熱物質を含む水溶液として用いてもよい。水溶液は、ゲル化剤等を用いてゲル状としてもよい。
【0019】
一方、比熱の大きい物質も吸熱物質として有効に機能する。例えば、25〜150℃における比熱が、0.7〜1J/g・Kである吸熱物質を用いることで、封止構造の昇温を効果的に抑制することができる。上記のような比熱を有する吸熱物質としては、具体的には、原子番号12〜51の金属元素の塩や酸化物、例えば、酸化アルミニウム(Al23)、硫酸アルミニウム(Al2(SO43)および酸化鉄(Fe34)よりなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。上記の金属元素の塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの物質は人体や電池に悪影響を及ぼさないため、吸熱物質として好適である。なかでも、化学的安定性の観点から、酸化アルミニウムや硫酸アルミニウムを用いることが特に好ましい。これらの吸熱物質は、例えば水和物の状態で用いてもよく、水溶性の塩は、水溶液の状態で用いてもよい。この場合、水溶液全体に占める吸熱物質の量は、1〜20重量%であることが好ましい。更に、水溶液にゲル化剤等を添加してゲル状としてもよい。
【0020】
吸熱物質として、水溶性高分子、例えばポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースなどを用いることもできる。水溶性高分子は、例えば水溶液ゲルの状態で用いればよい。上記の水溶性高分子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの物質も人体や電池に悪影響を及ぼさないため、吸熱物質として好適である。水溶液ゲル全体に占める水溶性高分子の量は、1〜20重量%であることが好ましい。
【0021】
融点が100〜140℃である吸熱物質、25〜150℃における比熱が0.7〜1J/g・Kである吸熱物質および水溶性高分子は、いずれか1種のみを単独で用いてもよく、任意の組み合わせで用いてもよい。
【0022】
吸熱物質を電池ケースに収容する方法は特に限定されない。本発明においては、例えば、図2に示すように、電池ケース7の封止構造の近傍に吸熱物質を収容する空間11を形成し、吸熱物質10を収容する。すなわち、電池ケース7が、電極群4および非水電解質を収容する第1領域と、吸熱物質を収容する第2領域(空間11)とを有する。電池ケース7を主面の法線方向から見たとき、電極リード5および6と対向するように空間11を形成することが好ましく、樹脂膜の溶着部を覆うように空間11を形成することが好ましい。封止構造が熱可塑性樹脂を含む場合、少なくとも電極リードと熱可塑性樹脂とが重なる領域を覆うように空間11を形成することが好ましい。図2において、電池ケース7は空間11を1つ有するが、複数の空間11を形成してもよい。
【0023】
このような電池ケース7は、例えば、電極群4および非水電解質を収容する空間を形成する袋状の第1ラミネートシート3の開口部7a近傍に、第2ラミネートシート12の3辺を溶着し、吸熱物質を収容するポケット状の空間11を形成することで得られる。生産性の観点から、吸熱物質を収容する空間11は、第1ラミネートシート3と同じ材質のシートで形成することが好ましいが、第1ラミネートシート3と異なる材質のシートで形成してもよい。
【0024】
電池ケースを主面の法線方向から見たとき、封止構造は、吸熱物質に完全に覆われている必要はなく、例えば、封止構造のうち、樹脂膜の溶着部が吸熱物質に覆われていることが好ましい。例えば、吸熱物質が占める領域は、封止構造の投影面積の50〜100%であることが好ましい。吸熱物質が占める領域を、封止構造の投影面積の50%以上とすることで、封止構造の昇温を抑制する機能が十分に発揮される。吸熱物質が占める領域を、封止構造の投影面積の100%以下とすることで、第2領域の過度な拡大が防がれ、充放電容量に寄与する電極群が電池全体において占める割合を十分に確保することができる。そのため、吸熱物質の機能と、充放電容量とを優れたバランスで両立することができる。封止構造が熱可塑性樹脂を含む場合、封止構造の昇温を効果的に抑制する観点から、封止構造のうち、少なくとも電極リードと、熱可塑性樹脂とが重なる領域が、吸熱物質に覆われていることが好ましい。
【0025】
電池ケースは、少なくとも一部が金属箔と樹脂膜とのラミネートシートで形成されている。例えば、1枚のラミネートシートを折り曲げて2辺を溶着し、または2枚のラミネートシートを重ねて3辺を溶着し、袋状とすることで、電池ケースが得られる。ラミネートシートの端部は、金属製、樹脂製などの枠体を用いて接合してもよい。
【0026】
ラミネートシートは、金属箔、例えばアルミニウム箔と、その両面に形成される樹脂膜とを有する。ラミネートシート全体の厚みは、例えば80〜200μmであることが好ましい。アルミニウム箔の厚みは、例えば10〜50μmであることが好ましい。アルミニウム箔は、5重量%以下の不純物を含んでいてもよい。
【0027】
樹脂膜の成分としては、融点110〜160℃の熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが挙げられる。樹脂膜の厚みは、例えば50〜100μmであることが好ましい。
【0028】
電池ケースは、金属箔を有さない樹脂膜のシートで形成された袋体を内側に有し、金属箔と樹脂膜とのラミネートシートで形成された袋体を外側に有する二重構造としてもよい。この場合、内側の袋体と外側の袋体との間に吸熱物質を配してもよく、内側の袋体の表面に、封止構造と対応するように吸熱物質を塗布してもよい。このような二重構造においては、ラミネートシートと電極リードとの間に、樹脂膜のシートが配される。そのため、万一、異常発熱が起こっても、外側のラミネートシートに含まれる樹脂膜の溶融が抑制され、金属箔の露出や、金属箔と電極リードとの短絡を抑制することが容易となる。
【0029】
電池ケースの内部には、電極群と、非水電解質とが収容される。電極群は、正極、負極およびセパレータを備える。電極群は、正極と負極との間にセパレータを配して積層した積層型であってもよく、図3に示すような、積層体をスパイラル状に捲回した捲回型であってもよい。
【0030】
電極群4の一形態について、図3を参照しながら説明する。図3に示す電極群4は、帯状の正極および負極を、これらの間にセパレータを介して捲回して構成される。電極群4は、例えば楕円形の横断面を有する。正極および負極は、長手方向に沿う一方の端部に、それぞれ集電体の露出部を有する。電極群4の一方の端面からは、正極集電体の露出部が突出しており、他方の端面からは、負極集電体の露出部が突出している。正極集電体の露出部には、正極リード5が接続されており、負極集電体の露出部には、負極リード6が接続されている。
【0031】
正極は、正極集電体と、正極集電体の表面に付着した正極活物質層とを備える。例えば、正極活物質、結着剤および分散媒を含む正極合剤スラリーを調製し、これを帯状の正極集電体の少なくとも片面に塗布し、乾燥し、圧延することにより、正極活物質層を形成する。このとき、正極集電体の長手方向に沿う一方の端部に、正極リードを接続するための露出部を残してもよい。正極合剤層は、必要に応じて更に導電材を含んでもよい。正極の厚さは、例えば80〜200μmである。
【0032】
正極活物質としては、リチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましい。リチウム含有遷移金属複合酸化物の代表的な例としては、遷移金属として、コバルトを含む複合酸化物(LiCoO2)、ニッケルを含む複合酸化物(LiNiO2)、マンガンを含む複合酸化物(LiMn24)などが挙げられる。これらの複合酸化物は、2種以上の遷移金属を含んでもよく、アルミニウムやマグネシウムなどの元素を更に含んでもよい。特に、電池の更なる高出力化および高容量化の観点から、リチウム含有遷移金属複合酸化物は、ニッケル、コバルトおよびアルミニウムを含むことが好ましい。正極活物質は、1種以上を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
導電材としては、例えば、人造黒鉛、カーボンブラックなどの導電性炭素材料を用いればよい。結着剤は、導電材および正極集電体と、正極活物質の粒子とを結合する機能を有する。具体的な結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ素系ゴム等のフッ素樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等の熱可塑性樹脂、スチレンブタジエンゴム、変性アクリロニトリルゴム、エチレン−アクリル酸共重合体等が挙げられる。結着剤は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。分散媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、シクロヘキサン、酢酸メチル、水などが挙げられる。導電材、結着剤および分散媒は、いずれも1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
正極リードは、一方の端部が正極集電体に接続されており、他方の端部が開口部から電池ケースの外部に突出している。外部に突出した正極リードの端部は、外部端子として機能する。
【0035】
正極集電体および正極リードとしては、例えば、アルミニウム箔、ステンレス鋼製の箔などが挙げられる。正極集電体の厚さは、10〜50μmが好ましい。正極リードの厚さは、100〜500μmが好ましい。
【0036】
負極は、負極集電体と、負極集電体の表面に付着した負極活物質層とを備える。例えば、負極活物質、結着剤および分散媒を含む負極合剤スラリーを調製し、これを帯状の負極集電体の少なくとも片面に塗布し、乾燥し、圧延することにより、負極活物質層を形成する。このとき、負極集電体の長手方向に沿う一方の端部に、負極リードを接続するための露出部を残してもよい。負極の厚さは、例えば80〜300μmである。
【0037】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な材料であればよく、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛、石油系コークス、石炭系コークス、フェノール樹脂の炭化物、ピッチ系炭素繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維等の炭素材料を用いることが好ましい。負極活物質は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、2種以上の負極活物質の複合材料を用いてもよい。
【0038】
負極用の結着剤および分散媒としては、例えば、正極用として例示したものと同様の材料を用いることができる。
【0039】
負極リードは、一方の端部が負極集電体に接続されており、他方の端部が開口部から電池ケースの外部に突出している。外部に突出した負極リードの端部は、外部端子として機能する。
【0040】
負極集電体および負極リードとしては、例えば、銅箔、ステンレス鋼製の箔などが挙げられる。負極集電体の厚さは、8〜50μmが好ましい。負極リードの厚さは、30〜500μmが好ましい。
【0041】
セパレータは、機械的強度およびリチウムイオン透過性を有し、かつ正負極の電圧および非水電解質に対する耐性を有することが好ましい。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのシート状の熱可塑性樹脂からなる微多孔質膜、ポリプロピレン製の不織布などが挙げられる。セパレータの厚さは、例えば10〜30μmである。
【0042】
非水電解質としては、非水溶媒およびこれに溶解する支持塩(溶質)を含む液状の電解質が好ましい。または、ポリメチルメタクリレートなどのゲル化剤を更に含むゲル状電解質を用いてもよい。非水溶媒には、例えば、鎖状カーボネート、環状カーボネート、ラクトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが用いられる。鎖状カーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどが挙げられる。環状カーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどが挙げられる。ラクトン系溶媒としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトンが挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチルなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、ジメトキシエタン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。非水溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
溶質としては、リチウムのフッ化物、リチウム含有イミド塩などを用いる。リチウムのフッ化物としては、LiPF6、LiBF4などが挙げられる。リチウム含有イミド塩としては、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22などが挙げられる。
【0044】
電池の信頼性、耐久性、充放電効率などを向上させるなどの目的で、非水電解質に添加剤を添加してもよい。具体的な添加剤としては、ビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート、フッ素置換したプロピレンカーボネートなどが挙げられる。
【0045】
図1および図2に示すラミネート型電池は、例えば、以下の方法で作製される。
正極および負極の間にセパレータを配して積層し、積層体を捲回して、図3に示すような電極群4を作製する。電極群4の横断面は、例えば楕円形とする。電極群4の一方の端面からは、正極集電体の露出部を突出させ、他方の端面からは、負極集電体の露出部を突出させる。正極集電体の露出部に正極リード5を溶接し、負極集電体の露出部に負極リード6を溶接する。電池ケース7の開口部7aと対応するように配された2枚のフィルム状の熱可塑性樹脂8を、正極リード5および負極リード6をそれぞれ挟むように溶着する。
【0046】
長方形の第1ラミネートシート3を2枚準備する。一方の第1ラミネートシート3の長手方向に沿う一辺には、その辺とほぼ同じ長さの長辺を有する帯状の第2ラミネートシート12の3辺を溶着し、ポケット状の空間11を形成する。その後、ポケット状の空間11に、所定量の吸熱物質10を収容し、第2ラミネートシート12の残りの一辺を溶着することにより、吸熱物質10を密封する。
【0047】
次に、2枚の第1ラミネートシート3の間に電極群4を配置し、正極リード5、負極リード6およびフィルム状の熱可塑性樹脂8を介して、第1ラミネートシート3の樹脂膜2を溶着する。これにより、電極リード5および6が、フィルム状の熱可塑性樹脂8を介して開口部7aに固定される。このとき、電極リード5および6の周囲は、熱可塑性樹脂8で包囲されている。その後、2枚の第1ラミネートシート3の短手方向に沿う端部7bを溶着して、内部に電極群4を収容した袋状のラミネートケース(電池ケース)7を作製する。最後に、ラミネートケース7の溶着されていない部分(注液口)7cから非水電解質を注入し、減圧雰囲気下で注液口7cを密閉することで、ラミネート型電池が得られる。ラミネート型電池の最大厚さは、例えば5〜20mmである。
【0048】
本発明は、電極リードが異常発熱を起こした場合に、封止構造の昇温を効果的に抑制できることから、電極リードに大電流が流れる電池、例えば設計容量が10Ah以上である大型の電池に特に有用である。このような大型の電池は、例えば車載用電源として好適である。また、本発明は、複数個のラミネート型電池で構成される電池集合体においても有効である。電池集合体は、例えば、上記のラミネート型電池を直列に、または並列と直列とを組み合わせて接続することで得られる。
【実施例】
【0049】
《実施例1》
(i)正極の作製
正極活物質であるコバルトおよびアルミニウムを含むニッケル酸リチウム(LiNi0.75Co0.15Al0.12)100重量部と、導電材であるアセチレンブラック7重量部と、結着剤であるポリフッ化ビニリデン5重量部と、分散媒である適量のN−メチル−2−ピロリドンとを混合し、正極合剤スラリーを調製した。
【0050】
得られた正極合剤スラリーを、正極集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、乾燥し、100μmの厚さに圧延して、正極活物質層を形成した。このとき、正極集電体の長手方向に沿う一方の端部に、幅1cmの正極集電体の露出部を残して、正極合剤スラリーを塗布した。その後、正極活物質層が付着した正極集電体を、露出部を含むように16cm×260cmの大きさに切り出した。
【0051】
(ii)負極の作製
負極活物質である黒鉛系炭素材料100重量部と、結着剤であるスチレンブタジエンゴム3重量部と、カルボキシメチルセルロース(CMC)1重量部と、分散媒である適量の水とを混合し、負極合剤スラリーを調製した。
【0052】
得られた負極合剤スラリーを、負極集電体である厚さ20μmの銅箔の両面に塗布し、乾燥し、120μmの厚さに圧延して、負極活物質層を形成した。このとき、負極集電体の長手方向に沿う一方の端部に、幅1cmの負極集電体の露出部を残して、負極合剤スラリーを塗布した。その後、負極活物質層が付着した負極集電体を、露出部を含むように17cm×282cmの大きさに切り出した。
【0053】
(iii)非水電解質の調製
エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)を体積割合1:1:1で含む混合溶媒に、1mol/lの濃度でLiPF6を溶解させて非水電解質を調製した。
【0054】
(iv)電極群の作製
正極と負極との間に、セパレータであるポリエチレン製の微多孔質膜(厚さ20μm)を配して、積層体を構成した。得られた積層体をスパイラル状に捲回した。その後、横断面が長径120mm、短径10mmの楕円状になるように電極群を押圧し、図3に示すような電極群を作製した。このとき、正極集電体の露出部と負極集電体の露出部とを、互いに反対側に配置し、電極群4の一方の端面から正極集電体の露出部を突出させ、他方の端面から負極集電体の露出部を突出させた。次に、正極集電体の露出部に、20mm×150mm、厚み200μmのアルミニウム製の正極リード5を溶着し、負極集電体の露出部に、20mm×150mm、厚み150μmのニッケル製の負極リード6を溶着した。
正極リードおよび負極リードの電池ケース開口部に対応する位置には、2枚の熱可塑性樹脂8(変性ポリプロピレン製フィルム、15mm×24mm、厚み70μm)を配し、2枚の熱可塑性樹脂8で、各リードを挟むように溶着した。
【0055】
(v)ラミネート型電池の作製
以下の方法で、図1および図2に示すラミネート型電池を作製した。第1ラミネートシート3(21cm×24cm)の長手方向に沿う一辺に、第2ラミネートシート12(6cm×25cm)の長手方向に沿う一辺を溶着した。次に、第2ラミネートシート12の短手方向に沿う一対の辺を第1ラミネートシート3に溶着し、ポケット状の空間11を形成した。第1ラミネートシート3および第2ラミネートシート12には、いずれも金属箔1であるアルミニウム箔と、その両面に配されたポリエチレン製の樹脂膜2とを含むラミネートフィルム(厚さ150μm)を用いた。ポケット状の空間11に、吸熱物質8である10gのリン酸二水素リチウム(融点:100℃)の粉末を収容し、第2ラミネートシート12の残りの一辺を溶着して空間11を密封した。
【0056】
次に、第1ラミネートシート(21cm×26cm)をもう一枚準備し、吸熱物質8を収容した空間11を有する第1ラミネートシート3と、他方の第1ラミネートシート3との間に、上記(iv)で作製した電極群4を配置した。その後、正極リード5および負極リード6ならびに熱可塑性樹脂8を介して、2枚の第1ラミネートシート3の開口部7a側の端部の樹脂膜2を溶着した。続いて、2枚の第1ラミネートシート3の短手方向に沿う一対の端部7bを溶着して、内部に電極群4を収容した袋状のラミネートケース(電池ケース)7を作製した。
【0057】
ラミネートケース7の溶着されていない部分(注液口)7cから非水電解質を注入した。その後、減圧雰囲気下で注液口7cを溶着して密閉した。このようにして、最大厚さ10mmのラミネート型電池を3セル作製した。
【0058】
《実施例2》
リン酸二水素リチウムの代わりに、吸熱物質として、10gの硫酸アルミニウム水和物(Al2(SO43・16H2O)を用いたこと以外、実施例1と同様にしてラミネート型電池を作製した。
【0059】
《実施例3》
吸熱物質として、平均分子量6000のポリエチレングリコールを10重量%含む水溶液ゲルを調製した。リン酸二水素リチウムの代わりに、10gの上記の水溶液ゲルを第2ラミネートシートの内面に塗布することで、空間11に吸熱物質を収容したこと以外、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0060】
《比較例1》
吸熱物質を用いなかったこと以外、実施例1と同様にして、ラミネート型電池を作製した。
【0061】
(1)電池容量
実施例1〜3および比較例1の各電池を、25℃、充電電流2A、充電終止電圧4.2Vの条件で定電流充電を行った後、充電終止電流0.05A、充電電流4.2Vの条件で定電圧充電を行った。30分の休止後、放電電流2A、放電終止電圧2.5Vの条件で定電流放電を行った。それぞれ3セルの電池について、5サイクル目の電池容量の平均を求めた。結果を表1に示す。
【0062】
(2)漏液試験
実施例1〜3および比較例1の各電池について、10mΩの外部抵抗に接続して正負極間を5秒間短絡させた。その後、室温に1日放置した後、60℃で1日保存し、漏液した電池の個数を求めた。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
吸熱物質を含む実施例1〜3の電池は、いずれも漏液が発生していなかった。本発明に係る吸熱物質によって、封止構造の昇温が抑制され、樹脂膜および/または熱可塑性樹脂の軟化または溶融が抑制されたため、封止構造が有効に機能したと考えられる。一方、吸熱物質を含まない比較例1の場合、全ての電池において、漏液が発生していた。以上より、本発明によれば、外部短絡などによって異常発熱が生じた場合においても、優れた信頼性を有するラミネート型電池が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る非水電解質二次電池は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車用電源などの大容量、高出力用途の電池として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0066】
1 金属箔
2 樹脂膜
3 第1ラミネートシート
4 電極群
5 正極リード
5a 外部端子
6 負極リード
6a 外部端子
7 電池ケース
7a 開口部
8 熱可塑性樹脂
10 吸熱物質
11 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極群と、非水電解質と、前記電極群および前記非水電解質を内部に収容する電池ケースとを備え、
前記電極群が、正極集電体と、前記正極集電体の表面に付着した正極活物質層とを備える正極、
一方の端部が前記正極集電体に接続された正極リード、
負極集電体と、前記負極集電体の表面に付着した負極活物質層とを備える負極、
一方の端部が前記負極集電体に接続された負極リード、および
前記正極活物質層と前記負極活物質層との間に配されるセパレータを備え、
前記電池ケースは、少なくとも一部が金属箔と樹脂膜とのラミネートシートで形成され、かつ開口部を有し、
前記正極リードおよび前記負極リードの他方の端部がそれぞれ、前記開口部から前記電池ケースの外部に突出しており、
前記開口部が、前記樹脂膜および/または熱可塑性樹脂の熱溶着による封止構造を有し、
前記封止構造の近傍に、前記封止構造の昇温を抑制する吸熱物質が配されている、非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記電池ケースが、前記封止構造の近傍に、前記吸熱物質を保持する袋状の空間を有する、請求項1記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記吸熱物質が、100〜140℃の融点を有する、請求項1または2記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記吸熱物質が、リン酸二水素リチウム、酢酸アンモニウム、蟻酸アンモニウムおよび硫酸水素リチウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項3記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記吸熱物質の25〜150℃における比熱が、0.7〜1J/g・Kである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記吸熱物質が、酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムおよび酸化鉄よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記吸熱物質が、ポリエチレングリコールおよびカルボキシメチルセルロースの少なくとも一方を含む水溶液ゲルである、請求項1または2記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
設計容量が10Ah以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−169166(P2012−169166A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−29673(P2011−29673)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「次世代自動車用高性能蓄電システム技術開発 要素技術開発 高耐久形高容量・高出力リチウム二次電池の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】