説明

非水電解質二次電池

【課題】微小短絡を高度に防止し得る信頼性の高い非水電解質二次電池ならびに該電池に用いられる電極を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る電極製造方法は、バインダ32と溶媒33とを含むバインダ溶液を電極集電体12に塗布してバインダ溶液層30を形成する工程を包含する。また、電極活物質36と溶媒37とを含むペースト状組成物をバインダ溶液層30上に塗布して組成物層34を形成する工程を包含する。ここで、組成物層34は、該組成物層34の下層側に形成されたバインダ溶液層30の一部31が該組成物層34の端部から外方にはみ出すようにして形成される。さらに、バインダ溶液層30と組成物層34とを共に乾燥して電極活物質層を形成するとともに、バインダ溶液層30のうち組成物層34の端部から外方にはみ出した部分31を乾燥してはみ出し絶縁層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池ならびに該電池に用いられる電極の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池、ニッケル水素電池その他の二次電池(蓄電池)は、車両搭載用電源、或いはパソコンおよび携帯端末の電源として重要性が高まっている。特に、軽量で高エネルギー密度が得られるリチウム二次電池は、車両搭載用高出力電源として好ましく用いられている。リチウム二次電池の代表的な構成として、リチウムイオンを吸蔵および放出可能な電極活物質を備える正負の電極と、それらの間に配置されたセパレータと、非水電解質と、を備えた構成が挙げられる。例えば、長尺シート状の集電体の表面に電極活物質を主成分とする層(電極活物質層)が保持された正負の電極シートを、両電極シートの間にセパレータを挟んで重ね合わせ、これらを長尺方向に捲回してなる電極体(捲回電極体)を非水電解質とともに容器に収容した構成のリチウム二次電池が知られている。
【0003】
かかる構成のリチウム二次電池において、上記電極は、典型的には、電極活物質とバインダ(結着材)等とを適当な溶媒(例えば水)に分散させて混練したペースト状の組成物(ペースト状組成物にはスラリー状組成物及びインク状組成物が包含される。)を調製し、これを集電体上に塗布して乾燥することにより形成されている。また、集電体と電極活物質層との密着性を高めるために、まず、集電体上にバインダを含むプレコート層を形成し、そのプレコート層上に電極活物質を含むスラリーを塗布して乾燥させる技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−238720号公報
【特許文献2】特開2007−103356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図17に示すように、上述のような捲回電極体180のなかには、正極集電体112の長手方向に沿った一方の縁を帯状に残して上記正極活物質層114が設けられた正極シート110を用い、その帯状部分(すなわち正極集電体112の一部が露出している正極集電体露出部)116が負極シート120からはみ出すように両電極シートを重ね合わせて捲回した形態のものがある(例えば特許文献2)。かかる構成の捲回電極体180において、負極活物質層124の幅を正極活物質層114の幅よりも広くして、正極活物質層114よりも正極集電体露出部116側に広がった範囲に負極活物質層124を配置することは、充電時に正極活物質層114から負極120側へと移動してきたLiイオンを負極活物質に円滑に吸蔵させるための有効な技術となり得る。
【0006】
しかしながら、正極活物質層114よりも正極集電体露出部116側に広がった範囲に負極活物質層124を配置すると、正極集電体露出部116の一部がセパレータ140を介して負極活物質層124と対向した構造となる。そのため、正極集電体露出部116と負極活物質層124との隙間Sに金属質の異物が溜まると、正極シート110と負極シート120との間に微小な短絡箇所が形成されることがあり得る。例えば、上記異物がセパレータ140を突き破ると、負極活物質層124と正極集電体112間に導電パスを形成することがあり得る。また、上記異物がセパレータ140を直接突き破らない場合でも、上記異物に含まれる金属が電池の充放電にともなって電気化学的に溶出し、負極120の表面またはその近傍で析出すると、その析出物がセパレータ140の細孔を埋めて負極活物質層124と正極集電体112間に導電パスを形成することがあり得る。かかる微小短絡の形成は、その短絡箇所で局所的にジュール熱が発生することによりセパレータ(典型的には熱可塑性樹脂製)を損傷し、さらに大きな内部短絡(自己放電)を引き起こす要因となり得る。また、上記微小短絡は経時的な電圧低下を招き、例えばハイブリッド自動車用の電源として用いられた場合に燃費を低下させる要因となり得る。
この点に関し、特許文献2には、正極集電体と負極合剤とが接触しないように、負極合剤の表面と対向する正極集電体の露出部に、無機添加剤(例えばアルミナ材)と結着剤からなる絶縁体の塗料を塗布し乾燥した絶縁体層を形成することが記載されている。しかし、特許文献2に開示された技術では、正極集電体上に正極合剤と絶縁体層とを別体に設けているため、製造プロセスが煩雑化するとともに、正極板の正極合剤と正極集電体露出部の境目を検出して絶縁体塗料を塗布する必要があるため、正極合剤と絶縁体層との位置合わせが難しく、絶縁体層を高精度に形成できないという課題があった。本発明は、上記課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、電極集電体の表面に電極活物質及びバインダを含む電極活物質層と該電極活物質層の端部からはみ出したはみ出し絶縁層とが形成された非水電解質二次電池用電極を製造する方法が提供される。上記方法は、バインダと溶媒とを含むバインダ溶液を電極集電体に塗布してバインダ溶液層を形成することを包含する。上記方法は、また、電極活物質と溶媒とを含むペースト状組成物を上記バインダ溶液層上に塗布して組成物層を形成することを包含する。ここで、上記組成物層は、該組成物層の下層側に形成された上記バインダ溶液層の一部が該組成物層の端部から外方にはみ出すようにして形成される。さらに、上記バインダ溶液層と上記組成物層とを共に乾燥して上記電極活物質層を形成するとともに、上記バインダ溶液層のうち上記組成物層の端部から外方にはみ出した部分を乾燥して上記はみ出し絶縁層を形成することを包含する。
【0008】
かかる製造方法では、下層側のバインダ溶液層が上層側の組成物層の端部から外方にはみ出すようにして形成し、その後、バインダ溶液層と組成物層とを同時に乾燥する。その際、バインダ溶液層と組成物層とが重なりあった部分では、乾燥時の対流によりバインダ溶液層と組成物層とが混じり合い、バインダと電極活物質とが均一に分散した電極活物質層が形成される。一方、バインダ溶液層のうち組成物層の端部から外方にはみ出した部分では、上層側に組成物層が積層されていないため、バインダ溶液層のみが単独で乾燥される。その結果、バインダのみからなるはみ出し絶縁層が形成される。
かかる電極製造方法によると、電極活物質層と該電極活物質層の端部からはみ出したはみ出し絶縁層とを一括して(同一工程で)形成することができるため、製造プロセスの簡略化が可能になる。しかも、従来のような電極活物質層と絶縁層との高精度な位置合わせが不要となり、電極活物質層に対して絶縁層が位置的に精度よく形成された電極を製造することができる。したがって、このような電極を用いれば、微小短絡の発生がより適切に防止された(ひいては自己放電防止性に優れた)非水電解質二次電池を構築することができる。好ましくは、上記はみ出し絶縁層の厚みが3nm以上となるようにバインダ溶液層を形成するとよい。これにより、より高性能な非水電解質二次電池を構築することができる。
【0009】
ここに開示される電極製造方法の好ましい一態様では、上記ペースト状組成物に比べて上記バインダ溶液の表面張力を高くし、かつ上記バインダ溶液と上記ペースト状組成物との表面張力差が5mN/m以下となるように調整する。上述のように、下層側のバインダ溶液層が上層側の組成物層よりも外方にはみ出すように形成する構成は、電極活物質層とはみ出し絶縁層とを一括形成して製造プロセスを簡略化するのに有利である。その一方、かかる構成では、表面張力の影響により組成物層の端部が局所的に盛り上がり、このため乾燥後に得られた電極活物質層の端部が中央部に比べて厚くなる端高現象が生じる場合がある。ここに開示される電極製造方法によると、上記のようにバインダ溶液とペースト状組成物との表面張力の関係が適切に規定されているので、バインダ溶液層が組成物層の端部から外方にはみ出すように形成しても、上記端高現象を適切に防止することができる。上記バインダ溶液と上記ペースト状組成物との表面張力差を3mN/m以下とすることにより、特に良好な結果が実現され得る。
【0010】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、市販されるE型粘度計を用い、液温を25℃に調整してからロータを2rpmで回転させて測定したときの上記ペースト状組成物の粘度が3000mPa・sec以上である。このことによって、上記端高現象をより効果的に防ぐことができるので、より高品質な電極が好適に製造され得る。また、ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記バインダ溶液層の厚みが1.7μm以下である。このことによって、上述したペースト状組成物の粘度にかかわらず、上記端高現象が抑えられた高品質な電極を製造することができる。
【0011】
本発明は、ここに開示されるいずれかの製造方法により製造された正極を備えた非水電解質二次電池を提供する。即ち、正極集電体の表面に正極活物質及びバインダを含む正極活物質層を有する正極と、負極集電体の表面に負極活物質層を有する負極とを、セパレータを介して重ね合わせた電極体を備えた非水電解質二次電池であって、上記正極は、上記正極活物質層が上記正極集電体の表面に形成されていない正極集電体露出部を有している。上記正極集電体露出部は、上記セパレータを介して上記負極と対向している部分を有している。そして、上記正極集電体露出部のうち、少なくとも上記セパレータを介して上記負極と対向している部分には、上記正極活物質層の端部からはみ出したはみ出し絶縁層が形成されている。ここで、上記はみ出し絶縁層は、上記正極集電体において上記正極活物質層が形成される部位および該部位に隣接する上記正極集電体露出部に、上記バインダと溶媒とを含むバインダ溶液を塗布し乾燥して形成されたことを特徴とする。また、上記正極活物質層は、上記正極集電体において上記正極活物質層が形成される部位に塗布されたバインダ溶液の上に、上記正極活物質と溶媒とを含むペースト状組成物を塗布し乾燥して形成されたものである。
【0012】
図3に模式的に示すように、本発明に係る非水電解質二次電池では、上述した微小短絡の問題への対策として、正極集電体露出部16の表面に、正極活物質層14の端部からはみ出したはみ出し絶縁層48を形成している。はみ出し絶縁層48は、正極集電体露出部16のうち、セパレータ40A、40Bを介して負極活物質層24と対向している部分を少なくとも覆うように設けられている。このように、正極集電体露出部16の負極活物質層24と対向している部分がはみ出し絶縁層48で覆われた構成とすることにより、隙間Sに金属質の異物が溜まった場合にも、該異物や該異物に起因する金属質の析出物と正極集電体12との直接接触をはみ出し絶縁層48により阻むことで、微小短絡の発生を防止することができる。したがって、本発明に係る非水電解質二次電池は、内部短絡防止性(ひいては容量維持性)に優れたものとなり得る。さらに、本発明によると、はみ出し絶縁層48は、上述のように、正極集電体12において正極活物質層14が形成される部位および該部位に隣接する正極集電体露出部16に、バインダと溶媒とを含むバインダ溶液を塗布し乾燥して形成されたものである。かかる構成によると、正極活物質層14とはみ出し絶縁層48とを高精度かつ一括して形成することが可能となり、製造プロセスの大幅な増加を招くことなく、効果的に微小短絡の発生を防止することができる。
【0013】
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記はみ出し絶縁層の厚みが3nm以上である。かかる厚みのはみ出し絶縁層によると、電気絶縁性が顕著に高まり、微小短絡をより高度に防止することができる。はみ出し絶縁層の厚みは通常は3nm以上であり、好ましくは5nm以上であり、特に好ましくは10nm以上である。
【0014】
ここに開示される非水電解質二次電池の好ましい一態様では、上記正極集電体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、上記負極は、負極活物質として炭素材料を含有する。この場合、アルミニウム/負極炭素材料間で発生する微小短絡を防止することができるので、利用価値が特に高い。
【0015】
ここに開示される非水電解質二次電池は、上述のように微小短絡防止性に優れ、且つ良好な電池特性を示し得ることから、車両に搭載される非水電解質二次電池(例えばリチウム二次電池)として好適である。例えば、上記非水電解質二次電池の複数個を直列に接続した組電池の形態で、自動車等の車両のモータ(電動機)用の電源として好適に利用され得る。したがって本発明によると、ここに開示されるいずれかの非水電解質二次電池(ここに開示されるいずれかの方法により製造された電極を用いて構築された非水電解質二次電池であり得る)を備えた車両が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の構造の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の一実施形態に用いられる捲回電極体を示す模式図である。
【図3】本発明の一実施形態に用いられる捲回電極体の断面の一部を示す模式図である。
【図4】本発明の一実施形態に用いられる電極の製造フローを示す図である。
【図5】本発明の一実施形態に用いられる電極の製造工程を示す断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に用いられる電極の製造工程を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態に用いられる電極の製造工程を示す断面図である。
【図8】本発明の一実施形態に用いられる電極の製造工程を示す断面図である。
【図9】本発明の一実施形態に用いられる電極の製造工程を示す断面図である。
【図10】電極の端高高さを応答曲面法により解析した結果を示す図である。
【図11】接触抵抗の測定方法を説明するための図である。
【図12】はみ出し絶縁層の膜厚と接触抵抗との関係を示すグラフである。
【図13】電極活物質層の表面形状(膜厚プロファイル)の一例を示す図である。
【図14】表面張力差と端高高さとの関係を示すグラフである。
【図15】粘度と端高高さとの関係を示すグラフである。
【図16】非水電解質二次電池を搭載した車両の側面図である。
【図17】従来の捲回電極体の断面の一部を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明による実施の形態を説明する。以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。なお、各図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。また、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、正極および負極を備えた電極体の構成および製法、セパレータや電解質の構成および製法、電池の構築に係る一般的技術等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0019】
特に限定することを意図したものではないが、以下では捲回された電極体(捲回電極体)と非水電解液とを扁平な直方体状の電池ケースに収容した形態のリチウム二次電池を例として本発明を詳細に説明する。本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池の概略構成を図1〜3に示す。図1に示すように、リチウム二次電池100は、長尺状の正極シート10と長尺状の負極シート20とが長尺状のセパレータ40A、40Bを介して扁平に捲回された形態の電極体(捲回電極体)80が、図示しない非水電解液とともに、該捲回電極体80を収容し得る形状(扁平な箱型)の電池ケース50に収容された構成を有する。
【0020】
≪電池ケース≫
電池ケース50は、上端が開放された扁平な直方体状のケース本体52と、その開口部を塞ぐ蓋体54とを備える。電池ケース50を構成する材質としては、アルミニウム、スチール等の金属材料が好ましく用いられる(本実施形態ではアルミニウム)。あるいは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド樹脂等の樹脂材料を成形してなる電池ケース50であってもよい。電池ケース50の上面(すなわち蓋体54)には、捲回電極体80の正極10と電気的に接続する正極端子70と、該電極体80の負極20と電気的に接続する負極端子72とが設けられている。
【0021】
電池ケース50の内部には、扁平形状の捲回電極体80が図示しない非水電解液とともに収容される。本実施形態に係る捲回電極体80の構成は、後述する正極シート10の構成を除いては通常のリチウム二次電池の捲回電極体と同様であり、図2に示すように、捲回電極体80を組み立てる前段階において長尺状(帯状)のシート構造(シート状電極体)を有している。
【0022】
≪正極シート≫
正極シート10は、図2及び図3に示すように、長尺状の金属箔からなる正極集電体12の表面に、正極活物質とバインダとを含む正極活物質層14が保持された構造を有している。ただし、正極シート10は、正極活物質層14が正極集電体12の表面に形成されていない正極集電体露出部16を有する。この実施形態では、正極活物質層14は、正極シート10の長手方向に沿った少なくとも一方の縁には付着されず、正極集電体12を一定の幅(帯状)にて露出させた正極集電体露出部16が形成されている。この実施形態では、正極集電体12の長手方向に沿う一方の縁(図2では左側の側縁部分)には、正極集電体露出部16が両面のほぼ同じ位置に設けられている。この正極集電体露出部16は、後述のように、上記正極シート10を外部接続用の正極端子70に電気的に接続する部位(集電部)として利用され得る。なお、図3は捲回電極体80を径方向(正負極シートおよびセパレータの積層方向)に切断した断面の一部を拡大して示す模式的断面図である。
【0023】
上記正極集電体露出部16は、正極集電体の両面の重複する位置(好ましくは、両面のほぼ同じ位置)に設けられていることが好ましい。リチウム二次電池のエネルギー密度等の観点から、正極集電体の長手方向に沿った一方の縁には両面のほぼ同じ位置に正極集電体露出部が設けられ、該集電体の長手方向に沿った他方の縁には両面ともほぼ端まで正極活物質層が形成された形態(すなわち、長手方向に沿った一方の縁にのみ活物質層非形成部が設けられた形態)の正極シートを好ましく採用し得る。この実施形態では、正極集電体12の長手方向に沿った他方の縁では、両面とも集電体12の端まで正極活物質層14が形成されている。
【0024】
上記正極集電体露出部16は、この正極シートを用いてなる捲回電極体において、少なくともその捲回の二周以上に亘る長さに連続して形成されていることが好ましい。好ましい一態様では、正極シートの全長に亘って正極集電体露出部が形成されている。正極集電体露出部の幅は、電極体の形状や集電部の接続構造等に応じて適宜設定し得る。通常は、5mm〜50mm(例えば10mm〜30mm)程度の幅とすることが適当である。
【0025】
≪正極集電体≫
正極集電体としては、導電性の良好な金属からなるシート状部材を好ましく用いることができる。特に、アルミニウム(Al)またはアルミニウムを主成分とする合金(アルミニウム合金)製の正極集電体の使用が好ましい。正極集電体のサイズは特に限定されず、目的とするリチウム二次電池の形状等に応じて適宜選択し得る。例えば、厚さ5μm〜30μm程度の金属箔を正極集電体として好ましく使用することができる。正極集電体の幅は例えば2cm〜15cm程度とすることができ、長さは例えば5cm〜1000cm程度とすることができる。
【0026】
≪正極活物質≫
正極活物質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。ここに開示される技術の好ましい適用対象として、リチウムニッケル酸化物(例えばLiNiO)、リチウムコバルト酸化物(例えばLiCoO)、リチウムマンガン酸化物(例えばLiMn)等の、リチウムと遷移金属元素とを構成金属元素として含む酸化物(リチウム遷移金属酸化物)を主成分とする正極活物質が挙げられる。中でも、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(例えばLiNi1/3Co1/3Mn1/3)を主成分とする正極活物質(典型的には、実質的にリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物からなる正極活物質)への適用が好ましい。このようなリチウム遷移金属酸化物(典型的には粒子状)としては、例えば、従来公知の方法で調製されるリチウム遷移金属酸化物粉末をそのまま使用することができる。例えば、平均粒径が凡そ1μm〜25μmの範囲にある二次粒子によって実質的に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末を正極活物質として好ましく用いることができる。
【0027】
≪バインダ≫
正極活物質層14は、正極活物質のほか、一般的なリチウム二次電池において正極活物質層の構成成分として使用され得る一種または二種以上の材料を必要に応じて含有することができる。そのような材料の例として、正極活物質のバインダ(結着材)として機能し得る各種のポリマー材料が挙げられる。バインダとしては、一般的なリチウム二次電池の電極に使用されるバインダであって絶縁性を有するものを使用することができる。例えば、後述するバインダ溶液に水性溶媒を用いる場合、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース系ポリマー(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)など)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂(例えば、酢酸ビニル共重合体やスチレンブタジエンゴム(SBR)など)、アクリル酸変性SBR樹脂(SBR系ラテックス)などのゴム類;などの水溶性又は水分散性ポリマーを好ましく採用することができる。また、非水溶媒を用いたバインダ溶液においては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)などのポリマーを好ましく採用することができる。
【0028】
その他、正極活物質層の成分として使用され得る材料としては、導電材が挙げられる。該導電材としては、カーボン粉末やカーボンファイバー等のカーボン材料が好ましく用いられる。あるいは、ニッケル粉末等の導電性金属粉末等を用いてもよい。
【0029】
≪正極シートと負極シートとの位置関係≫
ここに開示される技術における正極シート10は、図2及び図3に示されるように、負極シート20の長手方向に沿う一方の端部から正極集電体露出部16がはみ出すようにして該負極シート20と重ね合わされている。さらに、この実施形態では、負極活物質層24の幅b1が正極活物質層14の幅a1よりも少し広い。そして、正極活物質層14よりも正極集電体露出部16側に広がった範囲に負極活物質層24が配置されるように(すなわち、正極活物質層14の正極集電体露出部16側の端部から負極活物質層24がはみ出すように)して、正極シート10と負極シート20とが重ね合わされている。このように正極活物質層14よりも正極集電体露出部16側に広がった範囲に負極活物質層24が配置された構成は、充電時に正極活物質層14から負極シート20側へと移動してきたLiイオンを負極活物質に円滑に吸蔵させるのに有利である。その一方、かかる構成では負極活物質層24の一部が正極活物質層14からはみ出して配置されるので、正極集電体露出部16がセパレータ40A,40Bを介して負極シート20(負極活物質層24)と対向した構造となる。そのため、正極集電体露出部16と負極シート20との隙間Sに金属質の異物が溜まると、正極シート10と負極シート20との間に微小な短絡箇所が形成される場合があり得る。
【0030】
≪はみ出し絶縁層≫
本実施形態に係る非水電解質二次電池では、上述した微小短絡の問題への対策として、正極集電体露出部16の表面に、正極活物質層14の端部からはみ出したはみ出し絶縁層48を形成している。はみ出し絶縁層48は、正極集電体露出部16のうち、少なくともセパレータ40A、40Bを介して負極活物質層24と対向している部分を少なくとも覆うように設けられている。はみ出し絶縁層48の幅は、正極集電体露出部16のうち負極活物質層24と対向している部分の幅よりも大きければよく、通常は1mm〜10mm(例えば1mm〜5mm)程度の幅にすることが適当である。このように、正極集電体露出部16のうち負極活物質層24と対向している部分がはみ出し絶縁層48で覆われた構成とすることにより、隙間Sに金属質の異物が溜まった場合にも、該異物や該異物に起因する金属質の析出物と正極集電体12との直接接触をはみ出し絶縁層48により阻むことで、正極集電体12と負極シート20との間で微小短絡が発生する事象を高度に防止することができる。
さらに、本実施形態では、後述のように、はみ出し絶縁層48は、正極集電体12において正極活物質層14が形成される部位および該部位に隣接する正極集電体露出部16に、バインダと溶媒とを含むバインダ溶液を塗布し乾燥して形成されたものである。また、正極活物質層14は、正極集電体12において正極活物質層14が形成される部位に塗布されたバインダ溶液の上に、正極活物質と溶媒とを含むペースト状組成物を塗布し乾燥して形成されたものである。かかる構成によると、正極集電体上に正極活物質層14とはみ出し絶縁層48とを高精度かつ一括して形成することが可能となり、製造プロセスの大幅な増加を招くことなく、効果的に微小短絡の発生を防止することができる。
【0031】
≪はみ出し絶縁層の厚み≫
はみ出し絶縁層48の厚みは、概ね3nm以上であることが好ましい。このようにはみ出し絶縁層48の厚みを3nm以上とすることにより、はみ出し絶縁層48の絶縁性が顕著に高まるので、微小短絡をより高度に防止することができる。その一方、厚すぎるはみ出し絶縁層48は、後述する製造工程において電極の端高現象が発生しやすくなることに加えて、はみ出し絶縁層の厚み増大に伴う内部短絡抑制効果も鈍化するためメリットがあまりない。はみ出し絶縁層48の厚みとしては、概ね3nm〜200nmの範囲が適当であり、好ましくは5nm〜130nmであり、特に好ましくは60nm〜120nmである。
【0032】
続いて、正極集電体12の表面に、正極活物質層14とはみ出し絶縁層48とを形成する方法につき説明する。ここで開示される技術では、上述のように、正極集電体12の表面に正極活物質層14とはみ出し絶縁層48とを高精度かつ一括して形成することができる。よって、この形成方法は、電極集電体12の表面に電極活物質及びバインダを含む電極活物質層14と該電極活物質層14の端部からはみ出したはみ出し絶縁層48とを有する電極を製造する方法としても把握され得る。なお、この電極製造方法は、正極だけでなく負極に適用することもできる。ここで開示される非水電解質二次電池用電極を製造する方法の好適な実施形態の一つとして、リチウム二次電池用の正極を製造する方法を例にして詳細に説明するが、本発明の適用対象をかかる種類の非水電解質二次電池及び正極に限定することを意図したものではない。この電極製造方法は、図4に示すように、バインダ溶液層形成工程(ステップS10)と、組成物層形成工程(ステップS20)と、乾燥工程(ステップS30)とを包含する。
【0033】
バインダ溶液層形成工程(ステップS10)は、バインダと溶媒とを含むバインダ溶液を正極集電体に塗布してバインダ溶液層を形成する工程である。この実施形態では、図5に示すように、まず、長尺シート状の正極集電体12を用意する。一方、バインダ32および溶媒33を含むバインダ溶液を用意する。そして、図6に示すように、正極集電体12の表面にバインダ溶液を該集電体12の長手方向に沿った一方の縁を帯状に残して塗布し、バインダ溶液層30を形成する。なお、図5及び図6は、長尺シート状の正極集電体12の長手方向と交差する幅方向に沿う断面の一部を拡大して示す工程模式断面図である。
【0034】
ここで開示されるバインダ溶液層30に含まれるバインダ32は、上述したように、正極活物質層14の形成に用いられるバインダであり、なおかつはみ出し絶縁層48の形成にも用いられるものである。例えば、正極活物質層14においてバインダとして機能し、かつはみ出し絶縁層48において絶縁性を有するポリマーであり得る。バインダ溶液層30は、典型的には、上記バインダ32を適当な溶媒33に添加混合して調製されたバインダ溶液を正極集電体12の表面に塗布することにより形成され得る。
【0035】
上記バインダ溶液を構成する溶媒は、使用するバインダ(ポリマー)材料との組み合わせを考慮して適宜選択することができる。環境負荷の軽減、材料費の低減、設備の簡略化、廃棄物の減量、取扱性の向上等の種々の観点から、水系の溶媒の使用が好ましい。水系溶媒としては、水または水を主体とする混合溶媒が好ましく用いられる。かかる混合溶媒を構成する水以外の溶媒成分としては、水と均一に混合し得る有機溶媒(低級アルコール、低級ケトン等)の一種または二種以上を適宜選択して用いることができる。例えば、該水系溶媒の80質量%以上(より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい。特に好ましい例として、実質的に水からなる水系溶媒が挙げられる。バインダ溶液を構成する溶媒は水系溶媒に限定されず、溶剤系溶媒(バインダの分散媒が主として有機溶媒)であってもよい。非水系溶媒としては、例えばN−メチルピロリドン(NMP)等を用いることができる。
【0036】
バインダ溶液におけるバインダ濃度は、凡そ5質量%〜30質量%にすることが適当であり、例えば6質量%〜15質量%(例えば10質量%)とすることが好ましい。該バインダ濃度が上記範囲よりも小さすぎると、ペースト状組成物がバインダ溶液層30上で弾かれてしまい、均一な厚みに塗工できない場合がある。一方、バインダ濃度が上記範囲よりも大きすぎると、バインダ溶液の取扱性(例えば、該バインダ溶液を正極集電体(特に箔状集電体)に塗布する際の塗工性等)が低下しやすくなることがある。
【0037】
バインダ32と溶媒とを混練(添加混合)する操作は、例えば、適当な混練装置(プラネタリーミキサー、ホモディスパー、クレアミックス、フィルミックス等)を用いて行うことができる。特にプラネタリーミキサー(好ましくは2軸プラネタリーミキサー)を用いて混練することが好ましい。プラネタリーミキサーを用いることにより、バインダ32が均一分散したバインダ溶液を調製することができる。
【0038】
かかるバインダ溶液を正極集電体12の表面に塗布する操作は、従来公知の適当な塗布装置(ロッドコータ、スリットコータ、ダイコータ、コンマコータ、グラビアコータ等)を使用して好適に行うことができる。ここに開示される技術において正極集電体12上にバインダ溶液を塗布する方法として、ロッドコータにより正極集電体12上にバインダ溶液を塗布する方法が挙げられる。これにより、均一な厚さのバインダ溶液層30を形成することができる。
【0039】
このようにしてバインダ溶液層30を形成したら、次いで、組成物層形成工程(ステップS20)を実行する。かかる組成物層形成工程は、図7に示すように、正極活物質36と溶媒37とを含むペースト状組成物をバインダ溶液層30上に塗布して組成物層34を形成(積層)する工程である。その際、上層側の組成物層34を下層側のバインダ溶液層30よりも幅狭く塗布する。これにより、組成物層34は、該組成物層34の下層側に形成されたバインダ溶液層30の一部が該組成物層34の端部から外方にはみ出すようにして形成される。この実施形態では、バインダ溶液層30が組成物層34の端部から帯状にはみ出している。
【0040】
上記ペースト状組成物に用いられる溶媒37としては、バインダ溶液に用いられる溶媒33とは同一であってもよく異なってもよい。例えば、ペースト状組成物の溶媒37として、バインダ溶液の溶媒33とは同一の溶媒を好ましく採用し得る。このようにペースト状組成物とバインダ溶液とで同一の溶媒を用いることにより、その後の乾燥工程においてバインダ溶液層30と組成物層34とが良好に混じりやすくなる。そのため、正極活物質36とバインダ32とが均一に分散した正極活物質層14が得られる。
【0041】
ここで開示される好ましい技術では、ペースト状組成物に比べてバインダ溶液の表面張力を高くし、かつペースト状組成物とバインダ溶液との表面張力差が5mN/m以下となるように調整する。即ち、本実施形態の製造方法では、バインダ溶液層30が充分に乾燥する前に、ペースト状組成物が重ねて供給されて組成物層34が形成される。すなわち、いわゆる「wet on wet」と称される状態になる。この際、ペースト状組成物が重ねて供給されたときに、バインダ溶液層30と組成物層34とがある程度安定して2層の状態を維持することが望ましい。このような観点では、バインダ溶液層30に重ねて供給されるペースト状組成物の表面張力に比べて、バインダ溶液層30の表面張力が高いことが好ましい。
【0042】
また、本実施形態の製造方法では、バインダ溶液層30を組成物層34よりも幅広に形成する。かかる構成は、正極活物質層とはみ出し絶縁層とを一括形成して製造プロセスを簡略化するのに有利である一方で、表面張力の影響により組成物層34の端部が局所的に盛り上がり、このため乾燥後に得られた正極活物質層の端部が中央部に比べて厚くなる端高現象が生じやすくなる。これに対し、ペースト状組成物に比べてバインダ溶液の表面張力を高くし、かつペースト状組成物とバインダ溶液との表面張力差が5mN/m以下となるように調整することにより、上記のようにバインダ溶液層30を組成物層34よりも幅広に形成する構成であっても上記端高現象を適切に防止することができる。このような表面張力差は、バインダ溶液層30と組成物層34との2層状態を安定して維持する上でも有利である。バインダ溶液とペースト状組成物との表面張力差を3mN/m以下(好ましくは2mN/m以下)とし、かつ、下層(バインダ溶液層)の方の表面張力を高くすることにより、特に良好な結果が実現され得る。
【0043】
また、ここに開示される技術では、バインダ溶液層30に重ねて供給されるペースト状組成物の粘度(2rpm、25℃、E型粘度計)が3000mPa・sec以上であることが望ましい。ペースト状組成物の粘度を3000mPa・sec以上にすることによって、組成物層34の端部が盛り上がりにくくなるので、上記端高現象をより効果的に防ぐことができる。かかる粘度範囲は、該組成物を塗布するときの塗布性に優れる点でも有利である。ここで開示されるペースト状組成物の好適例として、該組成物とバインダ溶液との表面張力差が5mN/m以下であり、かつ粘度が5000mPa・sec〜10000mPa・secの範囲であるもの、該組成物とバインダ溶液との表面張力差が4mN/m以下であり、かつ粘度が5000mPa・sec〜10000mPa・secの範囲であるもの、該組成物とバインダ溶液との表面張力差が3mN/m以下であり、かつ粘度が5000mPa・sec〜10000mPa・secの範囲であるもの、等が挙げられる。このような所定範囲内の粘度及び表面張力を両立して有することにより、上記端高現象を有効に抑えて、より高品質な電極が好適に製造され得る。なお、バインダ溶液及びペースト状組成物の表面張力は、例えば、Wilhelmy法(プレート法)を用いて測定した値を好ましく採用することができる。
【0044】
さらに、ここに開示される技術では、バインダ溶液層30の厚みが1.7μm以下であることが好ましい。このことによって、上述したペースト状組成物の粘度に関係なく、上記端高現象が有効に抑えられた高品質な電極を製造することができる。図10は、バインダ溶液層の厚みとペースト状組成物の粘度とをパラメータとした場合の端高高さ(電極活物質層の端部と中央部との最大厚み差)を、応答曲面解析法により表記したものである。ここでは、横軸をバインダ溶液層の厚み(μm)、縦軸をペースト状組成物の粘度(mPa・sec)としている。図10より、バインダ溶液層の厚みを1.7μm以下とした場合には、ペースト状組成物の粘度にかかわらず、0.5μm以下の端高高さを実現でき、端高現象が有効に抑えられることが分かる。
【0045】
バインダ溶液層30の上からペースト状組成物を塗布する操作は、バインダ溶液を正極集電体12の表面に塗布してバインダ溶液層30を形成する操作と同様にして行うことができ、従来公知の適当な塗布装置(ロッドコータ、スリットコータ、ダイコータ、コンマコータ、グラビアコータ等)を使用して好適に行うことができる。ペースト状組成物の塗布量は特に限定されず、電極および電池の形状や用途に応じて適宜異なり得る。
【0046】
このようにして組成物層34を形成したら、次いで、乾燥工程(ステップS30)を実行する。かかる乾燥工程は、図8及び図9に示すように、バインダ溶液層30と組成物層34とを同時に乾燥する(このとき、必要に応じて適当な乾燥促進手段(ヒータ等)を用いてもよい。)工程である。その際、バインダ溶液層30と組成物層34とが重なりあった部分では、乾燥時の対流によりバインダ溶液層30と組成物層34とが混じり合う。これにより、正極集電体12の近くにバインダ32が適度に存在し、かつ、バインダ32の一部が広く拡散した(正極活物質36とバインダ32とが均一に分散した)正極活物質層14を得ることができる。一方、バインダ溶液層30のうち組成物層34の端部から外方にはみ出した部分31では、上層側に組成物層34が積層されていないため、組成物層34と混じり合うことなくバインダ溶液層30のみが単独で乾燥される。その結果、バインダ32のみからなるはみ出し絶縁層48が形成され得る。
【0047】
上記乾燥温度としては特に限定されないが、溶媒が水の場合、凡そ室温〜180℃程度が適当であり、例えば120℃〜160℃(例えば150℃)にすることが好ましい。本実施形態では、乾燥温度を設定するにあたって対流によるバインダ32の偏析(マイグレーション)を考慮しなくてもよいため、上記のように乾燥温度を高めに設定することができる。乾燥後、必要に応じて正極活物質層14をプレスしてもよい。プレス方法としては、従来公知のロールプレス法、平板プレス法等を採用することができる。このようにして、正極集電体12の表面に正極活物質36及びバインダ32を含む正極活物質層14と、該正極活物質層14の端部からはみ出したはみ出し絶縁層48と、を有する正極10を製造することができる。
【0048】
本実施形態に係る製造方法によると、正極活物質層14とはみ出し絶縁層48とを一括して形成することができるため、製造工程の簡略化が可能になり、コスト面で有利である。さらに、従来のように正極活物質層14と絶縁層48との高精度な位置合わせが不要になり、正極活物質層14に対して絶縁層48を位置精度よく形成することができる。したがって、このような正極10を用いれば、微小短絡の発生がより適切に防止された(ひいては自己放電防止性に優れた)リチウム二次電池を構築することができる。
【0049】
なお、上述した実施形態では、正極活物質層14の形成に用いられるバインダの全部をバインダ溶液に含有させる場合を例示したがこれに限定されない。例えば、正極活物質層14の形成に用いられるバインダの一部をペースト状組成物に含有させてもよい。ペースト状組成物にもバインダを含有させることにより、正極活物質層14中のバインダ量と、はみ出し絶縁層48中のバインダ量とを使用目的に応じて的確に調節することができる。例えば、はみ出し絶縁層48中のバインダ量を一定に保ちつつ、正極活物質層14の形成に用いられるバインダ量を容易に増やすことができる。このことは、正極活物質の滑落等がより高度に防止された耐久性の高い電極を形成する上で有利である。
【0050】
≪負極シート≫
次に、図1〜図3を参照して、ここで開示されるリチウム二次電池の負極シート20について説明する。負極シート20も正極シート10と同様に、長尺状の金属箔からなる箔状の負極集電体22の表面に、負極活物質とバインダとを含む負極活物質層24が保持された構造を有している。その負極活物質層24は、負極集電体22の長手方向に沿った少なくとも一方の縁を帯状に残して、典型的には負極集電体22の両サイドの表面(両面)に形成されている。この実施形態では、負極シート20の幅方向片側の縁部(図2では右側の側縁部分)には付着されず、負極集電体22を一定の幅にて露出させた負極集電体露出部26が形成されている。上記負極集電体露出部26は、上記負極シート20を外部接続用の負極端子72に電気的に接続する部位(集電部)として利用され得る。
【0051】
≪負極活物質≫
負極活物質としては、従来からリチウム二次電池に用いられる物質の一種または二種以上を特に限定することなく使用することができる。好適例として、少なくとも一部にグラファイト構造(層状構造)を含む粒子状の炭素材料(カーボン粒子)が挙げられる。より具体的には、いわゆる黒鉛質のもの(グラファイト)、難黒鉛化炭素質のもの(ハードカーボン)、易黒鉛化炭素質のもの(ソフトカーボン)、これらを組み合わせた構造を有するもの等の、各種の炭素材料を用いることができる。例えば、天然黒鉛のような黒鉛粒子を使用することができる。負極活物質層24には、正極活物質層14に使われるのと同様のバインダや導電材を使用することができる。
【0052】
≪セパレータ≫
正負極シート10、20間に配置されるセパレータ40A、40Bとしては、捲回電極体を備える一般的なリチウム二次電池のセパレータと同様の各種多孔質シートを用いることができる。好適例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂から成る多孔質樹脂シート(フィルム、不織布等)が挙げられる。かかる多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複数構造(例えば、PP層の両面にPE層が積層された三層構造)であってもよい。
【0053】
この例では、図2に示すように、負極活物質層24の幅b1は、正極活物質層14の幅a1よりも少し広い。そのため、正極シート10と負極シート20とを重ね合わせたときに負極活物質層24の端の位置が正極活物質層14の端から少しはみ出している。この負極活物質層24が正極活物質層14からはみ出す幅は、例えば1mm〜5mm程度とすることができ、本実施形態では凡そ1mmである。さらにセパレータ40A、40Bの幅c1、c2は、負極活物質層24の幅b1よりも少し広い(c1、c2>b1>a1)。
【0054】
≪捲回電極体80≫
正負極シート10,20を二枚のセパレータ40A,40Bと重ね合わせる際には、図2及び図3に示すように、両活物質層14,24を重ね合わせるとともに正極シートの集電体露出部16と負極シートの集電体露出部26とが長手方向に沿う一方の端部と他方の端部に別々に配置されるように、正負極シート10,20をややずらして重ね合わせる。その際、正極シート10は、正極活物質14の端部から帯状にはみ出したはみ出し絶縁層48がセパレータ40A,40Bを介して負極活物質層24と対向するように負極シート20と重ね合わせるとよい。
【0055】
この状態で正負極シート10,20および二枚のセパレータ40A,40Bを捲回し、次いで得られた捲回体を側面方向から押しつぶして拉げさせることにより、扁平形状の捲回電極体80が得られる。かかる捲回電極体80は、該捲回電極体80の捲回方向に対する横方向において、正極シート10および負極シート20の集電体露出部16,26がそれぞれ捲回コア部分(すなわち正極シート10の正極活物質層形成部分と負極シート20の負極活物質層形成部分と二枚のセパレー40A,40Bとが密に捲回された部分)から外方にはみ出ている。かかる正極側はみ出し部分(すなわち正極集電体露出部)16および負極側はみ出し部分(すなわち負極集電体露出部)26には、正極集電板74および負極集電板76がそれぞれ付設されており、上述の正極端子70および負極端子72とそれぞれ電気的に接続される。
【0056】
そして、端子70,72が接続された電極体80をケース本体52に収容し、その内部に適当な非水電解質を配置(注液)する。かかる非水電解質は、典型的には、適当な非水溶媒に支持塩を含有させた組成を有する。上記非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)等を用いることができる。また、上記支持塩としては、例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO等のリチウム塩を好ましく用いることができる。その後、上記開口部を蓋体54との溶接等により封止し、本実施形態に係るリチウム二次電池100の組み立てが完成する。ケース50の封止プロセスや電解質の配置(注液)プロセスは、従来のリチウム二次電池の製造で行われている手法と同様でよく、本発明を特徴付けるものではない。このようにして本実施形態に係るリチウム二次電池100の構築が完成する。
【0057】
<試験例1>
本例では、はみ出し絶縁層の厚みと電気抵抗との関係を確認するため、以下の実験を行った。即ち、バインダとしてのSBRと水とを混合してバインダ濃度が約9質量%となるバインダ溶液を調製した。このバインダ溶液を負極集電体22としての銅箔の片面に塗布し、乾燥させることにより銅箔22の片面にはみ出し絶縁層48が設けられた試験片90を作製した。本例では、はみ出し絶縁層の厚み(膜厚)の異なる試験片を計4種類作製した。各サンプルの膜厚は表1に示すとおりである。そして、図11に示す装置を用いてはみ出し絶縁層の接触抵抗を測定した。具体的には、試験片90のはみ出し絶縁層48上にもう一枚の銅箔22を重ね合わせ、一対の電圧測定端子96で挟みこみ、電圧測定端子の上下から1MPa/cmの荷重を加えつつ、電流印加装置94から電流を流したときの電圧変化から抵抗値を測定した。得られた測定抵抗値Rと、電圧測定端子と試験片との接触面積とから、電気抵抗値(測定抵抗値×接触面積)を算出した。結果を表1及び図12に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1及び図12から明らかなように、はみ出し絶縁層の膜厚が3nmを超えると、接触抵抗の値が顕著に増加した。この結果から、はみ出し絶縁層の膜厚は、概ね3nmを超えることが適当であり、好ましくは4nm以上であり、より好ましくは5nm以上であり、特に好ましくは10nm以上である。
【0060】
<試験例2>
本例では、バインダ溶液層を組成物層よりも幅広に形成した場合に、バインダ溶液層と組成物層との表面張力差が電極の表面平滑性(端高高さ)に及ぼす影響を確認するため、以下の実験を行った。
【0061】
<例1>
SBRと水とを混合してバインダ濃度が約48質量%となるバインダ溶液を調製した。該バインダ溶液の表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、約47.2mN/mであった。このバインダ溶液を長尺シート状の銅箔(負極集電体)の片面にロッドコータを用いて塗布することによりバインダ溶液層30を形成した。
また、平均粒径10μmの天然黒鉛粉末(負極活物質)と、カルボキシメチルセルロース(CMC、増粘剤)とを、これらの材料の質量比が98.3:0.7となり且つ固形分率が約54質量%となるように水(溶媒)に混合してペースト状組成物を調製した。該ペースト状組成物の表面張力を市販の表面張力計(プレート法)により測定したところ、約50.5mN/mであった。このペースト状組成物を、上記形成したバインダ溶液層30が乾く前に該バインダ溶液層30上に塗布して組成物層34を形成した。その際、組成物層34をバインダ溶液層30よりも幅狭く塗布して該バインダ溶液層30の両端部が組成物層34からそれぞれ3mmずつ帯状にはみ出るように調節した。この塗布物を乾燥させることによって、負極集電体22の片面に負極活物質層24およびはみ出し絶縁層(SBRからなる層)48が設けられた負極シート20を得た。なお、乾燥条件については、乾燥温度を150℃と室温(自然乾燥)との2つの条件で行った。
【0062】
<例2>
バインダ溶液のバインダ濃度を約13質量%とし、表面張力を51.9mN/mとしたこと以外は例1と同様にして負極シートを作製した。
【0063】
<例3>
バインダ溶液のバインダ濃度を約11質量%とし、表面張力を52.6mN/mとしたこと以外は例1と同様にして負極シートを作製した。
【0064】
<例4>
バインダ溶液のバインダ濃度を約9質量%とし、表面張力を53.3mN/mとしたこと以外は例1と同様にして負極シートを作製した。
【0065】
<例5>
バインダ溶液のバインダ濃度を約7質量%とし、表面張力を54.3mN/mとしたこと以外は例1と同様にして負極シートを作製した。
【0066】
<例6>
バインダ溶液のバインダ濃度を約5質量%とし、表面張力を55.7mN/mとしたこと以外は例1と同様にして負極シートを作製した。
【0067】
このようにして得られた例1〜6に係る負極活物質層の表面形状(膜厚プロファイル)をレーザーテック社製のレーザ変位計により測定した。例3の乾燥温度150℃における膜厚プロファイル結果を図13に示す。かかる膜厚プロファイルにおける負極活物質層の両端部と中央部との最大厚み差(電極の端高高さ)Hを測定した。結果を表2及び図14に示す。
【0068】
【表2】

【0069】
表2及び図14から明らかなように、下層側のバインダ溶液層に比べて上層側の組成物層の表面張力を高くした例1に係る負極シートでは、電極端高高さが60μmを超えていた。これに対し、下層側のバインダ溶液層に比べて上層側の組成物層の表面張力を低くした例2〜6に係る負極シートでは、例1に比べて、電極の端高現象が抑制されていた。また、例2〜6の比較から、上下層の表面張力差が小さくなるに従い電極端高高さが低下傾向になった。ここで供試した負極シートの場合、上下層の表面張力差を1.4mN/mとすることによって、10μm以下という極めて小さい値を実現できた(例2)。この結果から、バインダ溶液層を組成物層よりも幅広に形成することに伴う端高現象を抑制する観点からは、バインダ溶液層に比べて組成物層の表面張力を低くし、かつ上下層の表面張力差を5mN/m以下にすることが適当であり、好ましくは3mN/m以下であり、特に好ましくは2mN/m以下である。
【0070】
<試験例3>
本例では、ペースト状組成物の粘度が電極の表面平滑性(電極の端高高さ)に及ぼす影響を確認するため、以下の実験を行った。
【0071】
<例7>
SBRと水とを混合してバインダ濃度が約9質量%となるバインダ溶液を調製し、これを長尺シート状の銅箔(負極集電体)の片面にロッドコータを用いて塗布することによりバインダ溶液層30を形成した。
また、平均粒径10μmの天然黒鉛粉末(負極活物質)と、カルボキシメチルセルロース(CMC、増粘剤)とを、これらの材料の質量比が98.3:0.7となり且つ固形分濃度が約54質量%となるように水(溶媒)に混合してペースト状組成物を調製した。該ペースト状組成物の粘度を、E型粘度計を用い、液温を25℃に調整してからロータを1rpmで回転させて測定したところ、6150mPa・secであった。このペースト状組成物を、上記形成したバインダ溶液層30が乾く前に該バインダ溶液層30上に塗布して組成物層34を形成した。その際、組成物層34をバインダ溶液層30よりも幅狭く塗布して該バインダ溶液層30の両端部が組成物層34からそれぞれ3mmずつ帯状にはみ出るように調節した。この塗布物を乾燥させることによって、負極集電体22の片面に負極活物質層24およびはみ出し絶縁層(SBRからなる層)48が設けられた負極シート20を得た。
【0072】
<例8>
ペースト状組成物の固形分濃度を約53.5質量%とし、粘度を4250mPa・secとしたこと以外は例7と同様にして負極シートを作製した。
【0073】
<例9>
ペースト状組成物の固形分濃度を約53.0質量%とし、粘度を1938mPa・secとしたこと以外は例7と同様にして負極シートを作製した。
【0074】
<例10>
ペースト状組成物の固形分濃度を約52.5質量%とし、粘度を1250mPa・secとしたこと以外は例7と同様にして負極シートを作製した。
【0075】
このようにして得られた例7〜10に係る負極活物質層の表面形状(膜厚プロファイル)をレーザーテック社製のレーザ変位計により測定した。そして、負極活物質層の端部と中央部との最大厚み差(電極端高高さ)を測定した。結果を表3及び図15に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3及び図15から明らかなように、ペースト状組成物が高粘度になるに従い電極端高高さが低下傾向になった。ここで供試した負極シートの場合、ペースト状組成物の粘度を4000mPa・sec以上とすることによって、端高現象が生じない平坦な電極を形成することができた(例7、例8)。バインダ溶液層を組成物層よりも幅広に形成することに伴う端高現象を抑制するためには、ペースト状組成物の粘度を3000mPa・sec以上(好ましくは4000mPa・sec以上)とすることが望ましい。
【0078】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0079】
本発明に係る非水電解質二次電池は、上記のとおり、微小短絡を高度に防止し得ることから信頼性が高く、且つ電池性能に優れたものとなり得る。例えば、5C以上、さらには10C以上のハイレート放電に対しても、内部抵抗を抑えつつ短絡防止性を高めることができる。かかる特長を活かして、本発明に係る非水電解質二次電池は、特に自動車等の車両に搭載されるモーター(電動機)用電源の構成要素として好適に利用され得る。したがって、本発明は、図16に模式的に示すように、ここに開示されるいずれかの非水電解質二次電池100(当該非水電解質二次電池100を複数個直列に接続して形成される組電池の形態であり得る。)を電源として備える車両(典型的には自動車、特にハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車のような電動機を備える自動車)1を提供する。
【符号の説明】
【0080】
10 正極シート
12 正極集電体
14 正極活物質層
16 正極集電体露出部
20 負極シート
22 負極集電体
24 負極活物質層
26 負極集電体露出部
30 バインダ溶液層
32 バインダ
33 溶媒
34 組成物層
36 正極活物質
37 溶媒
40A,40B セパレータ
48 はみ出し絶縁層
50 電池ケース
52 ケース本体
54 蓋体
70 正極端子
72 負極端子
74 正極集電板
76 負極集電板
80 捲回電極体
90 試験片
94 電流印加装置
96 電圧測定端子
100 非水電解質二次電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極集電体の表面に電極活物質及びバインダを含む電極活物質層と該電極活物質層の端部からはみ出したはみ出し絶縁層とが形成された非水電解質二次電池用電極を製造する方法であって:
バインダと溶媒とを含むバインダ溶液を電極集電体に塗布してバインダ溶液層を形成する工程;
電極活物質と溶媒とを含むペースト状組成物を前記バインダ溶液層上に塗布して組成物層を形成する工程、ここで、前記組成物層は、該組成物層の下層側に形成された前記バインダ溶液層の一部が該組成物層の端部から外方にはみ出すようにして形成される;および、
前記バインダ溶液層と前記組成物層とを共に乾燥して前記電極活物質層を形成するとともに、前記バインダ溶液層のうち前記組成物層の端部から外方にはみ出した部分を乾燥して前記はみ出し絶縁層を形成する工程;
を包含する、電極の製造方法。
【請求項2】
前記ペースト状組成物に比べて前記バインダ溶液の表面張力を高くし、かつ
前記ペースト状組成物と前記バインダ溶液との表面張力差が5mN/m以下となるように調整する、請求項1に記載の電極製造方法。
【請求項3】
前記ペースト状組成物の粘度が3000mPa・sec以上である、請求項2に記載の電極製造方法。
【請求項4】
前記バインダ溶液層の厚みが1.7μm以下である、請求項2または3に記載の電極製造方法。
【請求項5】
非水電解質二次電池の製造方法であって、
電極として、請求項1〜4の何れか一つに記載の製造方法により製造された電極を使用することを特徴とする、非水電解質二次電池の製造方法。
【請求項6】
正極集電体の表面に正極活物質及びバインダを含む正極活物質層を有する正極と、負極集電体の表面に負極活物質層を有する負極とを、セパレータを介して重ね合わせた電極体を備えた非水電解質二次電池であって、
前記正極は、前記正極活物質層が前記正極集電体の表面に形成されていない正極集電体露出部を有しており、
前記正極集電体露出部は、前記セパレータを介して前記負極と対向している部分を有しており、
前記正極集電体露出部のうち、少なくとも前記セパレータを介して前記負極と対向している部分には、前記正極活物質層の端部からはみ出したはみ出し絶縁層が形成されており、
ここで、前記はみ出し絶縁層は、前記正極集電体において前記正極活物質層が形成される部位および該部位に隣接する前記正極集電体露出部に、前記バインダと溶媒とを含むバインダ溶液を塗布し乾燥して形成されたものであることを特徴とする、非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記正極活物質層は、前記正極集電体において前記正極活物質層が形成される部位に塗布されたバインダ溶液の上に、前記正極活物質と溶媒とを含むペースト状組成物を塗布し乾燥して形成されたものである、請求項6に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記はみ出し絶縁層の厚みが3nm以上である、請求項6または7に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記正極集電体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、
前記負極は、負極活物質として炭素材料を含有する、請求項6〜8の何れか一つに記載の非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−45659(P2013−45659A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183164(P2011−183164)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】