説明

非球面レンズの偏心測定装置及び偏心測定方法。

【課題】容易且つ高精度に非球面レンズの非球面偏心量及び方向を測定することができる偏心測定装置及び偏心測定方法の提供。
【解決手段】被検レンズを回転させ、近軸曲率中心に集光された光束の被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡から近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定し、被検面上に集光光束が常に照射されるように照明光学系と被検レンズとの間隔を移動させて、その移動量及び被検レンズの回転角の検出結果に基づいて被検面の面振れ量を検出し、面振れ量の検出結果と被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる非検レンズの回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から回転軸に対する被検面の面頂位置を算出し、該面頂位置と、前記近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非球面レンズの非球面軸の傾きを測定する為の非球面レンズの偏心測定装置及び偏心測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非球面レンズが持つ非球面偏心量を測定することは、例えば、製品検査において、製品の良否を判定する際に必要になり、更に、試作された非球面レンズの型押し向きを調整する際にも必要になるものである。ここでは、両面に非球面をもったレンズの非球面偏心量について、図9(a)を用いて説明する。図9(a)において、実線で示す被検レンズとしての非球面レンズ100の非球面101a,101bは、仮想線で示す近軸球面102a,102bを基準として設計された面である。近軸球面102a,102bの曲率中心oa,obを結ぶ線Axが非球面レンズ100の光軸となる。また、非球面101aの頂点(面頂)tbと近軸球面102aの曲率中心obとを結ぶ非球面軸Axa、及び非球面101bの頂点(面頂)tbと近軸球面102bの曲率中心oaとを結ぶ非球面軸Axbの2つの非球面軸が存在する。非球面レンズが設計どおりに製作されていれば、光軸Ax、非球面軸Axa及び非球面軸Axbの3つの軸は完全に一致するが、実際にはそのようなレンズを製作することは困難である。
【0003】
光軸Ax、非球面軸Axa及び非球面軸Axbの3つの軸がずれた状態では、非球面101a,101bは理想状態から傾いており、光軸Axと非球面軸Axa及び非球面軸Axbは、それぞれ光軸に対し、角度εa及びεbを成して交差している。この時の角度εa(チルト)が非球面101aの非球面偏心量であり、角度εb(チルト)が非球面101bの非球面偏心量である。そして、図9(b),(c)に示すように光軸を基準として、原点から非球面面頂(非球面の頂点)への方向が非球面偏心の方向である(即ち、非球面101aの非球面偏心の方向はθεa、非球面101bの非球面偏心の方向はθεbとなる)。ここで、角度εa及びεbは、非球面偏心量をチルトとして定義した場合であるが、該非球面偏心量をシフトとして定義することも可能である。この場合には、非球面面頂taから光軸Axに垂線を下ろした時の該垂線の長さδa及び、非球面面頂tbから光軸Axに垂線を下ろした時の該垂線の長さδbが、それぞれシフトで定義した非球面偏心量となる。このような非球面レンズを製作した場合、出来上がったレンズの評価をする為に、まず、非球面偏心量と方向とを測定し、その後、製品の評価及び、型修正などを行なう必要がある。
【0004】
図10に従来の非球面レンズの偏心を測定する為の偏心測定装置の概略構成を示す。
図10に示すように、従来の偏心測定装置200としては、被検レンズ100を保持するレンズ受け部300と、該レンズ受け部300を回転自在に軸支する回転レンズ支持部材400と、図示しない光源と、照射光学系及び撮像素子などの光学部品とを有する。また、被検レンズ100の近軸曲率中心の偏心量と方向を検出する近軸偏心測定部500、及び図示しないレーザ光源干渉光学系を有し、更に、近軸偏心測定部500の光軸から外れた位置に、該近軸偏心測定部500とは別体に配置され、被検レンズ100の被検面の形状を干渉縞の変化の様子から検出する被検面形状測定部600を有する。そして、非球面レンズの偏心測定時には、被検レンズ100を回転させて、被検面形状測定部600で測定して得たデータと、被検レンズ100の被検面の設計式とを対比させ、両者の差が最も小さくなる相対的なシフト量及びチルト量を求め、該シフト量及びチルト量から回転軸900に対する被検レンズ100の面頂の位置を測定し、該面頂の位置と近軸偏心測定部500で測定された被検レンズの近軸曲率中心の偏心量及び方向とから、被検レンズ100の光軸に対する被球面軸の傾き量及び方向を算出する非球面レンズの偏心測定装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開2003−156405号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、かかる従来の非球面レンズの偏心測定装置では、近軸偏心測定部及び被検面形状測定部の各光学的アライメントの調整や、測定基準点の調整などをそれぞれ個別に行う必要があり、測定工数が増加するとともに、測定精度向上に限界があった。
【0007】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決し、容易、且つ高精度に非球面レンズの非球面偏心量及びその方向を測定することができる偏心測定装置及び偏心測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に、本発明の非球面レンズの偏心測定装置にあっては、非球面レンズの偏心測定装置であって、被検レンズを保持するレンズ保持部材と、前記保持部材を回転させる回転手段と、照明光源と、前記照明光源からの光を被検レンズの被検面に照射する照明光学系と、被検レンズの被検面からの反射光を結像させる結像光学系と、前記結像光学系により結像された像を検出する像検出手段と、前記レンズ保持部材に対する前記照明光学系の光軸方向における相対的な位置を移動可能とする光軸方向移動手段と、被検レンズの被検面の近軸曲率中心に集光された光束を前記像検出手段により検出し、検出された前記光束の前記回転手段の回転軸回りでの振れ回りの軌跡から該回転軸に対する前記近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を算出する偏心状態算出部と、前記照明光学系からの光束が被検レンズの被検面上に集光するように、前記光軸方向移動手段によって前記照明光学系と前記レンズ保持部材との間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び前記レンズ保持部材の相対的な移動量及び前記回転手段の回転角を検出し、検出結果に基づいて被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する面振れ量検出部と、前記面振れ量検出部により検出された被検面の面振れ量と、前記偏心状態算出部により算出された近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを算出する非球面偏心量算出手段とを具備したことを特徴とする。
【0009】
また、上記目的を達成する為に、本発明の非球面レンズの偏心測定方法にあっては、照明光学系からの照明光を被検レンズの被検面上に照射し、該被検面からの反射光を検出して、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを測定する非球面レンズの偏心測定方法であって、前記照明光学系からの光束を、被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束が被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する面振れ量検出工程と、前記面振れ量検出工程により検出された被検面の面振れ量と該被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する被検面の面頂位置と、前記偏心状態測定工程により測定された前記近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを算出する非球面偏心量算出工程とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の偏心測定装置及び偏心測定方法によれば、容易且つ高精度に非球面レンズの非球面偏心量及びその方向を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を参照して、この発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
<偏心測定装置>
図1及び図2は、本実施の形態に係る偏心測定装置1の概略構成説明図である。また、図7及び図8は本実施の形態に係る偏心測定装置1の変形例を示す概略構成説明図である。尚、同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施の形態に係る偏心測定装置1は、被検レンズ10を保持するレンズ保持部材20と、前記レンズ保持部材20のレンズ保持面21とは反対側の面が連結され、該レンズ保持部材20を回転させる回転手段30と、レンズ保持部材20上に載置されたレンズ10の被検面10bから所定の間隔をもって配置されるオートコリメーション方式測定部50と、偏心測定装置における各部の制御及び所定の演算を行う制御・演算装置70とを備え、更に適宜選択されるその他の構成を備えている。
【0013】
レンズ保持部材20は、図1の断面で示すように、円筒形状であり、図中上端側の内周縁が被検レンズ10に接触して該被検レンズ10の位置決めがされる。またレンズ保持部材20の下端側にはフランジ部が形成されている。そして、レンズ保持部材20の下端側フランジ部によって、レンズ保持部材20と回転手段30とが同軸的に連結される。回転手段30は、駆動源としての図示しないモータを備えている。更に、回転手段30の図示しないモータの駆動軸には、ロータリーエンコーダ40が接続されており、該ロータリーエンコーダ40により、回転手段30の回転角を検出することが可能となる。
【0014】
オートコリメーション方式測定部50は、照明光源51と、照明光源51からの光を集光性の光束として被検レンズ10の被検面に照射する照明光学系52a,52bと、被検レンズ10の被検面からの反射光を結像させる結像光学系53a,53bと、結像光学系53a,53bにより結像された像を検出する像検出手段54と、少なくとも照明光学系52a,52bとレンズ保持部材20との間隔を光軸方向に相対的に変更可能として、照明光学系52a,52bで集光された光束の光軸L方向での被検レンズ10への照射位置を変更可能する光軸方向移動手段55と、照明光学系52a,52b、及びレンズ保持部材20を光軸L方向と直交する方向に相対的に移動可能として、該照明光学系52a,52bで集光された光束の光軸Lと直交する方向での被検レンズ10の被検面上への照射位置を変更可能する水平方向移動手段56と、照明光学系52a,52bの光路中に設けられ照明光源51から発する光を被検レンズ10に向けて透過するとともに、被検レンズの被検面からの反射光を像検出手段54に向けて反射するハーフミラー57とを備えている。
【0015】
オートコリメーション方式測定部50は、筐体50A内に収納され、該筐体50A全体が支柱57に取り付けられていることが好ましい。また、本実施の形態に示すオートコリメーション方式測定部50は、照明光学系の一部を構成する正レンズ52bと結像光学系の一部を構成する正レンズ53bを共用するものである。
【0016】
照明光源51としては、特に制限はないが、例えば、レーザダイオードや半導体レーザなどが好適に挙げられる。
【0017】
照明光学系としては、照明光源51からの光を被検面上又は、被検レンズ10の被検面の近軸曲率中心に集光できる構成であれば、特に制限はなく、図1に示す、所定の間隔をもって対向配置された2つの正レンズ52a,52bを備えた構成の他に、複数のレンズ群を備えたものでもよい。結像光学系としては、ハーフミラー57を介して90°配置された2つの正レンズ53a,53bを備えた構成の他に、複数のレンズ群を備えたものでもよい。また、結像光学系を構成するレンズ53aの結像位置に配置された像検出手段54としては、CCDなどの通常の撮像素子を用いることができる。
【0018】
光軸方向移動手段55(55A,55B)としては、照明光学系52a,52bで集光された光束の光軸L方向での被検レンズ10への照射位置を変更可能な構成であれば、特に制限はないが、例えば、図1に示すように、光軸方向移動手段55Aが、照明光学系52a,52b中の被検レンズ10側の正レンズ52bの位置を光軸L方向に移動可能とすることにより、該光束の光軸L方向での被検レンズ10への照射位置を変更可能とする構成が好適に挙げられる。
【0019】
また、光軸方向移動手段55の変形例としては、図7に示すように、照明光学系を構成する各レンズ52a,52bは固定として、光軸方向移動手段55Bによって、オートコリメーション方式測定部50の筐体50Aが支柱57に対して、光軸Lの方向と平行に移動可能とする構成が好適に挙げられる。ここで、正レンズ52b又は筐体50Aの移動機構としては、公知のスライドガイド等を用いることができる。また、光軸方向移動手段55としては、モータ等を利用して、その移動制御を遠隔操作で行うようにすることができる。更に、筐体50Aに対して、レンズ保持手段20側を移動させるように構成してもよい。
【0020】
この場合、照明光学系を構成する各レンズ52a,52bの間隔変動に伴う測定誤差の影響を防止することができ、測定精度を向上させることが可能となる。
【0021】
水平方向移動手段56としては、照明光学系52a,52bで集光された光束の光軸Lと直交する方向での被検レンズ10の被検面上への照射位置を変更可能な構成であれば、特に制限はないが、例えば、図1に示すように、筐体50Aが支柱57に対して、光軸Lと直交する方向に移動可能とする構成が好適に挙げられる。また、水平方向移動手段56としては、モータ等を利用して、その移動制御を遠隔操作で行うようにすることができる。更に、筐体50Aに対して、レンズ保持手段20側を移動させるように構成してもよい。光軸方向移動手段55及び水平方向移動手段56により、照明光学系52a,52bからの光束は、被検レンズ10の所定の位置に集光するように、被検レンズ10の被検面上における所定の位置に照射される。ここで、被検レンズ10の被検面の回転軸Mに対する近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を算出する場合には、照明光学系52a,52bからの光束は、被検面の近軸曲率中心に集光するように被検レンズ10の被検面上における所定の位置に照射される。また、被検レンズ10の被検面の回転軸M方向での面振れ量を検出する場合には、照明光学系52a,52bからの光束は、被検面上の所定の位置に集光するように照射される。
【0022】
像検出手段54は、被検レンズ10の被検面上に照射された光束の該被検面からの反射光をスポット像として検出する。
【0023】
制御・演算装置70としては、図示しない偏心状態算出部、面振れ量検出部及び非球面偏心量算出手段を備えている。
【0024】
偏心状態算出部は、照明光からの光束が被検面の近軸曲率中心1ob(1oa)に集光するように照明光学系52a,52bが配置された状態において、像検出手段54により検出されたスポット像の回転手段30の回転軸M回りでの振れ回りの軌跡から、回転手段30の回転軸Mに対する近軸曲率中心1ob(1oa)の偏心量及び偏心方向を算出する。
【0025】
面振れ量検出部は、被検レンズ10の被検面上に、照明光学系52a,52bからの光束が、常に照射されるように、光軸方向移動手段55A又は55Bによって、照明光学系とレンズ保持部材20との間隔を適宜変更させて、照明光学系及びレンズ保持部材20の相対的な移動量及び回転手段30の回転角を検出し、該検出結果に基づいて被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する。尚、回転手段30の回転角は、ロータリーエンコーダ40により検知され該検知信号は出力信号を制御・演算装置70に入力される。
【0026】
非球面偏心量算出手段は、面振れ量検出部により検出された被検面の面振れ量と、該被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる回転手段30の回転軸Mに対する相対的なシフト量及びチルト量を求めるとともに、該シフト量及びチルト量から回転軸Mに対する被検面の面頂位置を算出し、更に、算出された該面頂位置と、前記偏心状態算出部により算出された前記近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズ10の光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを算出する。
【0027】
本実施の形態に係る偏心測定装置1のその他の構成としては、モニタ80が好適に挙げられる。モニタ80は、例えば、像検出手段54により検出されたスポット像が表示可能とされており、スポット像の回転手段30の回転軸M回りでの振れ回りを表示して、後述する被検レンズの心出し調整工程や、被検レンズ10の被検面の近軸曲率中心1obにスポット像を移動させる場合などに利用される。
【0028】
尚、以上の説明では、被検レンズ10は、レンズ両面が凸状の非球面形状から成る被検レンズについて説明したが、レンズの一方側面が球面で、他方側面が非球面のレンズに対しても適応可能であり、更に、レンズの両面又は片面が凹状の非球面または球面の被検レンズであっても同様に適応可能である。
【0029】
<偏心測定方法>
次に、本発明の実施の形態に係る偏心測定方法について説明する。尚、以下に説明する非球面レンズの偏心測定方法は、レンズ両面が凸状の非球面形状から成る被検レンズについて説明するが、上述のとおり、他の形状の非球面レンズについても同様の測定方法を適応することが可能である。
本発明の実施の形態に係る非球面レンズの偏心測定方法は、近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、面振れ量検出工程と、非球面偏心量算出工程とを備え、更に必要に応じて、略心出し調整工程、心出し調整工程等のその他の工程を備える。
【0030】
<<略心出し調整工程>>
略心出し調整工程は、図1に示す偏心測定装置1において、被検レンズ10をレンズ保持部材20に支持させた後、該被検レンズ10を回転手段30によって回転させながら調心を行う工程である。被検レンズ10をレンズ保持部材20上に載せただけでは、回転手段30の回転軸Mに対して傾いていたり、ずれたりするので、オートコリメーション方式測定部50の観察範囲内に、前記照明光学系で集光された光束が存在しないことが多い。そこで、略心出し調整工程により、被検レンズの被検面における近軸曲率中心に照明光学系で集光された光束を位置させて概略心出しを行う。まず、略心出し調整工程は、被検レンズ10をレンズ保持部材20上で回転させながら、オートコリメーション方式測定部50の測定光軸、即ち、照明光学系52a,52bの光軸Lと、回転手段30の回転軸Mとが略一致するように、該照明光学系を水平方向移動手段56により移動させる。その後、光軸方向移動手段55A,55Bにより、照明光学系で集光された光束を、予め設計値より求まっている被検レンズの被検面における近軸曲率中心の位置(図1では1obの位置)である観察範囲内に集光するように照明光学系を移動させる。この工程により略心出し調整が完了する。
【0031】
<<心出し調整工程>>
心出し調整工程は、略心出し調整工程の次に、被検レンズ10をレンズ保持部材20上で回転させながら、被検面10bにおける近軸曲率中心1obの回転手段10における回転軸Mに対する偏心量を検出し、この偏心量が概略0となるように被検レンズ10の位置調整(偏心調整)を行う工程である。ここでの偏心調整では厳密に近軸曲率中心1obを回転軸Mに一致させる必要はないが、別途、被検面10aの近軸曲率中心の偏心量を測定するときに近軸領域で計算を行うので、被検面10aの反対面である被検面10bの偏心量が小さい方が検出精度が高くなる。レンズ保持部材を回転する回転手段10には、ロータリーエンコーダ40が接続されており、ロータリーエンコーダ40が測定した回転角度値により、被検レンズ10の回転方向の基準を設定し、近軸曲率中心の偏心方向を測定する。
【0032】
<<近軸曲率中心の偏心状態測定工程>>
近軸曲率中心の偏心状態測定工程は、被検レンズ10を回転させながら、被検レンズの被検面の近軸曲率中心に集光された光束を検出し、検出された該光束の回転軸M回りでの振れ回りの軌跡及び被検レンズ10の回転角から被検レンズ10の被検面における回転軸Mに対する近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する工程である。近軸曲率中心の偏心状態測定工程としては、照明光学系と直接対面する被検レンズの第1被検面の非球面軸付近の面の接線に対して垂直に照明光学系からの照明光を照射して近軸曲率中心の偏心状態を測定する工程、及び照明光学系からの照明光を第1被検面を透過させた状態で、第2被検面の非球面軸付近の面の接線に対して垂直に照射して近軸曲率中心の偏心状態を測定する工程を含むものである。
【0033】
<<面振れ量検出工程>>
被検面の面振れ量検出工程は、被検レンズ10を回転させながら、被検レンズの被検面上に所定の光束が常に照射されるように、照明光学系52a,52bと被検レンズ10との間隔を適宜変更させて、照明光学系52a,52b及び被検レンズ10の相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する工程である。被検面の面振れ量検出工程としては、照明光学系からの光束を該照明光学系と直接対面する被検レンズの第1被検面上に照射して第1被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する工程、及び照明光学系からの光束を第1被検面を透過させた状態で、第2被検面上に照射して第2被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する工程を含むものである。
【0034】
<<非球面偏心量算出工程>>
非球面偏心量算出工程は、前記被検面の面振れ量検出工程により検出された被検面の面振れ量と該被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記非検レンズ10の回転軸Mに対する相対的なシフト量及びチルト量を求めるとともに、該シフト量及びチルト量から回転軸Mに対する被検面の面頂位置を算出し、次いで、算出された被検面の面頂位置と、前記被検面の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向から、被検レンズ10の光軸に対する被検面の非球面軸の傾き量と方向とを算出する工程である。
【0035】
[第1の実施の形態に係る偏心測定方法]
以下、本発明の第1の実施の形態に係る偏心測定方法を図1〜図4を用いて説明する。
第1の実施の形態に係る偏心測定方法は、前述した略心出し調整工程及び心出し調整工程を行った後に、以下に説明するそれぞれの工程を備える。
【0036】
即ち、本発明の第1の実施の形態に係る偏心測定方法は、照明光学系からの光束を、第1被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第1被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第1被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第1被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第1の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、前記照明光学系からの光束を、第2被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第1被検面を透過させて第2被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第2被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第2被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束が第1被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて第1被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する第1の面振れ量検出工程と、被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束を第1被検面を透過させて第2被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて第2被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する第2の面振れ量検出工程と、前記第1の面振れ量検出工程により検出された前記第1被検面の面振れ量と該第1被検面の設計データとを対比させて、両者の差が最も小さくなる被検レンズの回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する第1被検面の面頂位置と、前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された前記第1及び前記第2の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する第1の非球面軸の傾き量と方向とを算出する第1の非球面偏心量算出工程と、前記第2の面振れ量検出工程により検出された前記第2被検面の面振れ量と該第2被検面の設計データとを対比させて、両者の差が最も小さくなる前記非検レンズの回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する第2被検面の面頂位置と、前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する第2の非球面軸の傾き量と方向とを算出する第2の非球面偏心量算出工程とを具備する。
【0037】
第1の実施の形態に係る偏心測定方法における近軸曲率中心の偏心状態測定工程は、被検面10bの近軸曲率中心の偏心状態を測定する第1の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、被検面10aの偏心状態を測定する第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程とを有する。
【0038】
<<被検面10bの近軸曲率中心の偏心状態測定工程>>
被検面10bの近軸曲率中心の偏心状態測定工程は、被検レンズ10を回転させながら、被検レンズの第1被検面である被検面10bの近軸曲率中心1obに集光された集光光束を検出し、検出された該光束の回転軸M回りでの振れ回りの軌跡及び被検レンズ10の回転角から被検レンズ10の被検面10bにおける回転軸Mに対する近軸曲率中心1obの偏心量及び偏心方向を測定する工程である。
【0039】
本工程は、図3に示すように、まず、照明光源51から照明光学系52a,52bによって集光された光束を被検面10bの非球面軸付近の接線に垂直な方向から入射させる。光束は、近軸曲率中心1obに集光するように照明光学系52a,52bが調整される。そして、被検面10bに入射した光束は、該被検面10b上で反射して同じ光路を戻り、結像光学系53a,53bにより像検出手段54上に光束によるスポット像を結像する。ここで、被検面10bが、回転軸Mに対して偏心(シフト及びチルト)の無い理想的な状態である場合には、回転手段10を回転させて被検レンズを回転させても、像検出手段54上のスポット像は振れ回ることはない。一方、被検面10bが、回転軸Mに対して偏心している状態では、被検レンズ10を回転させると、像検出手段54上のスポット像は、被検面10bの近軸曲率中心1obの偏心状態に応じて振れ回る。そして、像検出手段54が検出するスポット像の振れ回りの軌跡の出力信号と、ロータリーエンコーダ40が検出する被検レンズの回転角に関する出力信号とが制御・演算装置70に入力される。そして、スポット像の振れ回り半径及びスポット像の回転軸からの方向から、被検面10bにおける近軸曲率中心1obの回転軸Mに対する偏心量(シフト量)及び偏心方向(シフト方向)を算出する。
【0040】
<<被検面10aの近軸曲率中心の偏心状態測定工程>>
本工程は、図4に示すように、まず、照明光源51から照明光学系52a,52bによって集光された照明光を被検面10bを透過させた後に、被検面10a上の非球面軸付近の接線に垂直な方向から入射させる。また、照明光学系からの光束は、近軸曲率中心1oaに集光するように照明光学系52a,52bが調整される。被検面10aに入射した光束は、該被検面10aで反射して同じ光路を戻り、結像光学系53a,53bにより像検出手段54上にスポット像を結像する。被検面10aが、透過回転軸Mに対して偏心している状態では、被検レンズ10を回転させると、像検出手段54上のスポット像は、被検面10aの近軸曲率中心1oaの偏心状態に応じて振れ回る。そして、像検出手段54が検出するスポット像の振れ回りの軌跡の出力信号と、ロータリーエンコーダ40が検出する被検レンズの回転角に関する出力信号とが制御・演算装置70に入力される。そして、スポット像の振れ回り半径及びスポット像の回転軸からの方向から、被検面10aにおける近軸曲率中心1oaの回転軸Mに対する偏心量(シフト量)及び偏心方向(シフト方向)を算出する。
【0041】
第1の実施の形態に係る偏心測定方法における面振れ量検出工程は、被検面10bの面振れ量を測定する第1の面振れ量検出工程と、測定光束を被検面10bを透過させた状態で被検面10a上に照射させて被検面10aの面振れ量を測定する第2の面振れ量検出工程とを有する。
【0042】
<<被検面10bの面振れ量検出工程>>
被検面10bの面振れ量検出工程は、被検レンズ10を回転させながら、被検レンズの第1被検面である被検レンズ10の被検面10b上に所定の光束が常に照射されるように、照明光学系52a,52bと被検レンズ10との間隔を適宜変更させて、照明光学系52a,52b及び被検レンズ10の相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて被検面10bの回転軸方向での面振れ量を検出する工程である。
【0043】
本工程は、まず、図1に示す照明光学系52a,52bを水平方向移動手段56によって、図3に示す被検面10b上の面振れ量の測定を行う所定の測定位置(図3では、回転軸から半径方向にRb離れた位置)に移動させる。次いで、被検レンズ10を回転させながら、当該測定位置の被検面10b上に、常に、照明光源51の光束が集光するように、光軸方向移動手段55A又は55Bによって、照明光学系52a,52bの被検面10bに対する間隔が調整される。そして、光軸方向移動手段55A又は55Bの移動量をリニアスケール等の公知の直線方向移動量測定手段により測定し、該直線方向移動量測定手段からの出力信号と、ロータリーエンコーダ40が検出する被検レンズの回転角に関する出力信号とが制御・演算装置70に入力される。測定位置(図3では、回転軸から半径方向にRb離れた位置)を被検レンズ10の半径方向に適宜移動させて、制御・演算装置70に入力される光軸方向移動手段55A又は55Bの移動量及び回転角の出力信号から、被検面10bの輪帯状の三次元形状データを算出する。該三次元形状データが被検面10bの面振れ量データとなる。
【0044】
<<被検面10aの面振れ量検出工程>>
本工程は、まず、照明光学系52a,52bを光軸方向移動手段55A又は55B、及び水平方向移動手段56によって所定の場所に移動させて、照明光源51の光束を被検レンズ10の被検面10bを透過させて、被検面10a上の面振れ量の測定を行う所定の測定位置(図4では、回転軸から半径方向にRa離れた位置)に照射させる。次いで、被検レンズ10を回転させながら、当該測定位置の被検面10a上に、常に、照明光源51の光束が集光するように、光軸方向移動手段55A又は55Bによって、照明光学系52a,52bの被検面10aに対する間隔が調整される。そして、光軸方向移動手段55A又は55Bの移動量をリニアスケール等の公知の直線方向移動量測定手段により測定し、該直線方向移動量測定手段からの出力信号と、ロータリーエンコーダ40が検出する被検レンズの回転角に関する出力信号とが制御・演算装置70に入力される。測定位置(図4では、回転軸から半径方向にRa離れた位置)を被検レンズ10の半径方向に適宜移動させて、制御・演算装置70に入力される光軸方向移動手段55A又は55Bの移動量及び回転角の出力信号から、被検面10aの輪帯状の三次元形状データを算出する算出する。該三次元形状データが被検面10aの面振れ量データとなる。尚、被検面10bを透過させて被検面10aの振れ量を測定する場合には、被検レンズ10の屈折率を考慮し、面振れ量を算出することが好ましい。屈折率の影響については、公知の方法により補正することが可能である。
【0045】
第1の実施の形態に係る偏心測定方法における非球面偏心量算出工程は、被検面10bの非球面偏心量を測定する第1の非球面偏心量算出工程と、被検面10aの非球面偏心量を測定する第2の非球面偏心量算出工程とを有する。
【0046】
<<被検面10bの非球面偏心量算出工程>>
被検面10bの非球面偏心量算出工程は、被検面10bの面振れ量検出工程により検出された被検面10bの面振れ量と被検面10bの設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記非検レンズ10の回転軸Mに対する相対的なシフト量及びチルト量を求めるとともに、該シフト量及びチルト量から回転軸Mに対する被検面10bの面頂位置を算出し、次いで、算出された被検面10bの面頂位置と、被検面10aの近軸曲率中心1oaの偏心状態測定工程及び被検面10bの近軸曲率中心1obの偏心状態測定工程により測定された被検面10aの近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向、並びに被検面10bの近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズ10の光軸に対する被検面10bの非球面軸の傾き量と方向とを算出する工程である。
【0047】
以下、非球面軸の傾き量と方向とを算出する工程を説明する。
まず、被検面10bの近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された、近軸曲率中心1obの回転軸Mに対する偏心量(シフト量)及び偏心方向(シフト方向)と、被検面10aの近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された、近軸曲率中心1oaの回転軸Mに対する偏心量(シフト量)及び偏心方向(シフト方向)とから、光軸1oa―1obの回転軸Mに対する傾きを求める。以下、回転軸M方向をZ軸方向とする直交座標系、X、Y及びZ軸を用いて説明する。
【0048】
図5(a)は、近軸曲率中心1oa及び1obと、非球面面頂1tbとの位置をXYZ座標で表し、図5(b)及び(c)はそれぞれ、XZ平面及びYZで表した図である。
【0049】
近軸曲率中心1oaの回転軸Mに対する偏心量(シフト量)及び偏心方向(シフト方向)をそれぞれδa1及びθa1とし、近軸曲率中心1obの回転軸Mに対する偏心量(シフト量)及び偏心方向(シフト方向)をそれぞれδb1及びθb1とすると、近軸曲率中心1oaの位置は、図5(b)及び(c)に示すように、次式で表される。
【0050】
【数1】

【0051】
また、近軸曲率中心1obの位置は、図5(b)及び(c)に示すように、次式で表される。
【0052】
【数2】

【0053】
次に、被検レンズ両面の近軸曲率中心偏心量を考慮して、Z軸上での1oaから1obまでの高さZoを算出する。この高さZoは次式で表される。
【0054】
【数3】

【0055】
以上から、XZ平面におけるZ軸に対する光軸1oa―1obの傾きは次式で表される。
【0056】
【数4】

また、YZ平面におけるZ軸に対する光軸1oa―1obの傾きは次式で表される。
【0057】
【数5】

【0058】
<<<非球面1bの非球面軸の位置及び傾き>>>
次に、被検面10bの面振れ量検出工程により検出された被検面10bの面振れ量と被検面10bの設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記非検レンズ10の回転軸Mに対する相対的なシフト量及びチルト量を求める。このシフト量及びチルト量が、Z軸(回転軸)に対する非球面1bの非球面軸の位置及び傾きとなる。以下、具体的に説明する。
【0059】
まず、前記(3)式及び(4)式により得られた被検面10bにおける近軸曲率中心1obの位置のX成分及びY成分を、前記面振れ量検出工程により検出された被検面10bの面振れ量データに対して、X方向及びY方向にそれぞれシフトされる。次に、前記面振れ量検出工程により検出された被検面10bの面振れ量データと、設計データとの差が最も小さくなるように、被検面10bの面振れ量データをZ軸方向にシフトさせる。更に、被検面10bの近軸曲率中心1obを中心として、被検面10bの設計データとの差が最も小さくなるように、被検面10bの面振れ量データをチルトさせる。被検面10bの面振れ量データと、設計データとの差が最も小さくなる。図5は、このようにして求められた被検面10bの面振れ量データのチルト量を、XZ平面でのZ軸に対するチルトεbx1とし、YZ平面でのZ軸に対するチルトをεby1として表したものである。
【0060】
このようにして求められた、チルト量が被検面10bの非球面軸1AxbのZ軸に対する傾きとなる。
【0061】
次に、近軸曲率中心1ob(1obx,1oby)の位置と、非球面軸1AxbのZ軸に対する傾き(εbx1,εby1)に基づいて、Z軸に対する被検面10bの面頂1tbの位置を算出する。図5(b)及び図5(c)に示すように、被検面10bの面頂1tb(1tbx,1tby)の位置は次式で表される。
【0062】
【数6】

【0063】
次に、上記(8)式及び(9)式で求められた被検面10bの面頂1tb(1tbx,1tby)の位置と、近軸曲率中心の偏心状態測定工程で算出された近軸曲率中心1obの回転軸Mに対するシフト量δb1及びシフト方向θb1及び近軸曲率中心1oaの回転軸Mに対するシフト量δa1及びシフト方向θa1とに基づいて、図5(a)に示す近軸曲率中心1oaと面頂位置1tbとの間のZ軸上投影長さ1Zbを算出する。ここで、1Zbは次式で表される。
【0064】
【数7】

【0065】
以上から、XZ平面におけるZ軸に対する光軸1oa―1obの傾きは次式で表される。
【0066】
【数8】

また、XZ平面におけるZ軸に対する非球面軸1Axbの傾きは次式で表される。
【0067】
【数9】

【0068】
次に、XZ平面でのZ軸に対する非球面軸rbxと光軸1oa―1obの傾きとから非球面軸偏心のX成分εbxを算出する。図5(b)に示すようにX成分εbxは次式で表される。
【0069】
【数10】

【0070】
次に、図5(b)に示す、面頂位置1tbのX成分1tbxから光軸1oa―1obのX成分1oax―1obxに垂線を下ろした時の線分の距離Lbxを求める。Lbxを求めるには、まず、非球面軸1AxbをXZ平面に投影した投影長さ1rbxを求める。1rbxは次式で表される。
【0071】
【数11】

【0072】
(14)式を用いることによりLbxは次式で表される。
【0073】
【数12】

【0074】
同様に、YZ平面におけるZ軸に対する光軸1oa―1obの傾きは次式で表される。
【0075】
【数13】

また、YZ平面におけるZ軸に対する非球面軸1Axbの傾きは次式で表される。
【0076】
【数14】

【0077】
次に、YZ平面でのZ軸に対する非球面軸rbyと光軸1oa―1obの傾きとから非球面軸偏心のY成分εbyを算出する。図5(c)に示すようにY成分εbyは次式で表される。
【0078】
【数15】

【0079】
次に、図5(c)に示す、面頂位置1tbのY成分1tbyから光軸1oa―1obのY成分1oay―1obyに垂線を下ろした時の線分の距離Lbyを求める。Lbyを求めるには、まず、非球面軸1AybをYZ平面に投影した投影長さ1rbyを求める。1rbyは次式で表される。
【0080】
【数16】

【0081】
(19)式を用いることによりLbyは次式で表される。
【0082】
【数17】

【0083】
次に、光軸1oa―1obから非球面面頂までの距離を前記(15)式及び(20)式で算出されたLbx及びLbyにより求め、光軸1oa―1obに対する非球面軸1Axbの傾き、即ち、非球面偏心量εbを求める。非球面偏心量εbは次式で表される。
【0084】
【数18】

【0085】
(21)式により非球面偏心量をチルトとして求めることができる。更に、非球面偏心量を次式によりシフトδbとして求めることができる。
【0086】
【数19】

【0087】
次に、光軸1oa―1obに対する非球面軸1Axbの偏心方向θbを算出する。θbは、光軸1oa―1obに対して、非球面面頂1tbがX方向にLbx及びY方向にLbyだけ離れていることから次式により表される。
【0088】
【数20】

【0089】
以上の工程により、光軸1oa―1obに対する非球面軸1Axbの傾きεb(非球面偏心量)及び光軸1oa―1obに対する非球面軸1Axbの偏心方向θbを正確に求めることができる。
【0090】
<<<非球面1aの非球面軸の位置及び傾き>>>
次に、被検面10aの面振れ量検出工程により検出された被検面10aの面振れ量と被検面10aの設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記非検レンズ10の回転軸Mに対する相対的なシフト量及びチルト量を求める。このシフト量及びチルト量が、Z軸(回転軸)に対する非球面1aの非球面軸の位置及び傾きとなる。以下、具体的に説明する。
【0091】
まず、前記(1)式及び(2)式により得られた被検面10aにおける近軸曲率中心1oaの位置のX成分及びY成分を、前記面振れ量検出工程により検出された被検面10aの面振れ量データに対して、X方向及びY方向にそれぞれシフトされる。次に、前記面振れ量検出工程により検出された被検面10aの面振れ量データと、設計データとの差が最も小さくなるように、被検面10aの面振れ量データをZ軸方向にシフトさせる。更に、被検面10aの近軸曲率中心1oaを中心として、被検面10aの設計データとの差が最も小さくなるように、被検面10aの面振れ量データをチルトさせる。被検面10aの面振れ量データと、設計データとの差が最も小さくなる。図6は、このようにして求められた被検面10aの面振れ量データのチルト量を、XZ平面でのZ軸に対するチルトεax1とし、YZ平面でのZ軸に対するチルトをεay1として表したものである。
【0092】
このようにして求められた、チルト量が被検面10aの非球面軸1AxaのZ軸に対する傾きとなる。
【0093】
次に、近軸曲率中心1oa(1oax,1oay)の位置と、非球面軸1AxaのZ軸に対する傾き(εax1,εay1)に基づいて、Z軸に対する被検面10aの面頂1taの位置を算出する。図6(b)及び図6(c)に示すように、被検面10aの面頂1ta(1tax,1tay)の位置は次式で表される。
【0094】
【数21】

【0095】
次に、上記(24)式及び(25)式で求められた被検面10aの面頂1ta(1tax,1tay)の位置と、近軸曲率中心の偏心状態測定工程で算出された近軸曲率中心1obの回転軸Mに対するシフト量δb1及びシフト方向θb1及び近軸曲率中心1oaの回転軸Mに対するシフト量δa1及びシフト方向θa1とに基づいて、図6(a)に示す近軸曲率中心1oaと面頂位置1taとの間のZ軸上投影長さ1Zaを算出する。ここで、1Zaは次式で表される。
【0096】
【数22】

【0097】
以上から、XZ平面におけるZ軸に対する非球面軸1Axaの傾きは次式で表される。
【0098】
【数23】

【0099】
次に、XZ平面でのZ軸に対する非球面軸raxと光軸1oa―1obの傾きとから非球面軸偏心のX成分εaxを算出する。図6(b)に示すようにX成分εaxは次式で表される。
【0100】
【数24】

【0101】
次に、図6(b)に示す、面頂位置1taのX成分1taxから光軸1oa―1obのX成分1oax―1obxに垂線を下ろした時の線分の距離Laxを求める。Laxを求めるには、まず、非球面軸1AxaをYZ平面に投影した投影長さ1rayを求める。1rayは次式で表される。
【0102】
【数25】

【0103】
(29)式を用いることによりLaxは次式で表される。
【0104】
【数26】

【0105】
また、YZ平面におけるZ軸に対する非球面軸1Axaの傾きは次式で表される。
【0106】
【数27】

【0107】
次に、YZ平面でのZ軸に対する非球面軸rayと光軸1oa―1obの傾きとから非球面軸偏心のY成分εayを算出する。図6(c)に示すようにY成分εayは次式で表される。
【0108】
【数28】

【0109】
次に、図6(c)に示す、面頂位置1taのY成分1tayから光軸1oa―1obのY成分1oay―1obyに垂線を下ろした時の線分の距離Layを求める。Layを求めるには、まず、非球面軸1AyaをYZ平面に投影した投影長さ1rayを求める。1rayは次式で表される。
【0110】
【数29】

【0111】
(33)式を用いることによりLayは次式で表される。
【0112】
【数30】

【0113】
次に、光軸1oa―1obから非球面面頂までの距離を前記(15)式及び(20)式で算出されたLax及びLayにより求め、光軸1oa―1obに対する非球面軸1Axaの傾き、即ち、非球面偏心量εaを求める。非球面偏心量εaは次式で表される。
【0114】
【数31】

【0115】
(35)式により非球面偏心量をチルトとして求めることができる。更に、非球面偏心量を次式によりシフトδaとして求めることができる。
【0116】
【数32】

【0117】
次に、光軸1oa―1obに対する非球面軸1Axaの偏心方向θaを算出する。θaは、光軸1oa―1obに対して、非球面面頂1taがX方向にLax及びY方向にLayだけ離れていることから次式により表される。
【0118】
【数33】

【0119】
以上の工程により、光軸1oa―1obに対する非球面軸1Axaの傾きεa(非球面偏心量)及び光軸1oa―1obに対する非球面軸1Axaの偏心方向θaを正確に求めることができる。
【0120】
上記第1の実施の形態に係る偏心測定方法によれば、被検面の面の振れ量測定を行う際に、オートコリメーション測定部50の照明光学系を構成するレンズ53bを移動させている為に、駆動部を小型化でき、被検レンズを高速回転させても、集光光束の位置を被検面上に高精度に追随させることが可能となる。その結果、測定時間を短縮することができる。
【0121】
[第2の実施の形態に係る偏心測定方法]
以下、本発明の第2の実施の形態に係る偏心測定方法を説明する。
【0122】
本発明の第2の実施の形態に係る偏心測定方法は、前記照明光学系からの光束を、第1被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第1被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第1被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第1被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第1の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、前記照明光学系からの光束を、第2被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第1被検面を透過させて第2被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第2被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第2被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束が第1被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて第1被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する第1の面振れ量検出工程と、前記第1の近軸曲率中心の偏心状態測定工程、前記第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程、及び前記第1の面振れ量検出工程の後に、被検レンズを反転させる工程と、
前記照明光学系からの光束を、前記被検レンズを反転させる工程により反転された被検レンズの第2被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第2被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第2被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第2被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第3の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、前記照明光学系からの光束を、第1被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第2被検面を透過させて第1被検面上に照射するとともに、被検レンズを回転させて、該第1被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第1被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第4の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束が第2被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて第2被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する第2の面振れ量検出工程と、前記第1の面振れ量検出工程により検出された前記第1被検面の面振れ量と該第1被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する第1被検面の面頂位置と、前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する第1の非球面軸の傾き量と方向とを算出する第1の非球面偏心量算出工程と、前記第2の面振れ量検出工程により検出された前記第2被検面の面振れ量と該第2被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する第2被検面の面頂位置と、前記第3及び第4の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する第2の非球面軸の傾き量と方向とを算出する第2の非球面偏心量算出工程とを具備する。
【0123】
即ち、第2の実施の形態に係る偏心測定方法は、被検レンズの被検面10bを照明光学系に対向させた状態で、前述した略心出し調整工程及び心出し調整工程を行った後に、被検面10bの近軸曲率中心1obの偏心状態を測定する第1の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、照明光学系からの照明光を被検面10bを透過させて被検面10a上に照射させて被検面10aの近軸曲率中心1oaの偏心状態を測定する第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、被検面10bの面振れ量を検出する第1の面振れ量検出工程と、被検レンズを反転させる工程と、被検レンズの被検面10a側を照明光学系に対向させた状態で、同様に、略心出し調整工程及び心出し調整工程を行った後に、被検面10aの近軸曲率中心の偏心状態を測定する第3の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、照明光学系からの照明光を被検面10aを透過させて被検面10b上に照射させて被検面10bの近軸曲率中心の偏心状態を測定する第4の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、被検面10aの面振れ量検出する第2の面振れ量検出工程とを備えるものである。
【0124】
ここで、図5又は図6に示す、光軸1oa―1obに対する非球面軸の傾き(非球面偏心量)及び光軸1oa―1obに対する非球面軸の偏心方向を求める工程については、第1の実施の形態に係る偏心測定方法と同様であるので説明を省略する。
第2の実施の形態に係る偏心測定方法によれば、面振れ量検出工程において、測定光束を被検面を透過させた状態での測定を行わない為、測定光速が透過する面の形状誤差などの影響を受けることがなく、高精度で被検面の面振れ量を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0125】
【図1】図1は、本発明の偏心測定装置の概略構成説明図である。
【図2】図2は、本発明の偏心測定装置の概略構成説明図である。
【図3】図3は、第1被検面の測定状態を示す図である。
【図4】図4は、第2被検面の測定状態を示す図である。
【図5】図5(a)、(b)及び(c)は、第1被検面の非球面偏心値を求める際の考え方を示す図である。
【図6】図6(a)、(b)及び(c)は、第2被検面の非球面偏心値を求める際の考え方を示す図である。
【図7】図7は、本発明の変形例に係る偏心測定装置の概略構成説明図である。
【図8】図8は、本発明の変形例に係る偏心測定装置の概略構成説明図である。
【図9】図9は、非球面レンズの非球面軸と光軸のずれを示す図である。
【図10】図10は、従来の非球面レンズの偏心測定装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0126】
10 …被検レンズ
20 …レンズ保持部材
30 …回転手段
51 …照明光源
52a,52b …照明光学系
53a,53b …結像光学系
54 …像検出手段
55 …光軸方向移動手段
56 …水平方向移動手段
70 …制御・演算装置(偏心状態検出部、面振れ量検出部、非球面偏心量算出手段)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
非球面レンズの偏心測定装置であって、
被検レンズを保持するレンズ保持部材と、
前記保持部材を回転させる回転手段と、
照明光源と、
前記照明光源からの光を被検レンズの被検面に照射する照明光学系と、
被検レンズの被検面からの反射光を結像させる結像光学系と、
前記結像光学系により結像された像を検出する像検出手段と、
前記レンズ保持部材に対する前記照明光学系の光軸方向における相対的な位置を移動可能とする光軸方向移動手段と、
被検レンズの被検面の近軸曲率中心に集光された前記照明光学系からの光束を前記像検出手段により検出し、検出された前記光束の前記回転手段の回転軸回りでの振れ回りの軌跡から該回転軸に対する前記近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を算出する偏心状態算出部と、
前記照明光学系からの光束が被検レンズの被検面上に集光するように、前記光軸方向移動手段によって前記照明光学系と前記レンズ保持部材との間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び前記レンズ保持部材の相対的な移動量及び前記回転手段の回転角を検出し、検出結果に基づいて被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する面振れ量検出部と、
前記面振れ量検出部により検出された被検面の面振れ量と、前記偏心状態算出部により算出された近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを算出する非球面偏心量算出手段とを具備したことを特徴とする非球面レンズの偏心測定装置。
【請求項2】
照明光学系からの照明光を被検レンズの被検面上に照射し、該被検面からの反射光を検出して、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを測定する非球面レンズの偏心測定方法であって、
前記照明光学系からの光束を、被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、
被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束が被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する面振れ量検出工程と、
前記面振れ量検出工程により検出された被検面の面振れ量と該被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する被検面の面頂位置と、前記偏心状態測定工程により測定された前記近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを算出する非球面偏心量算出工程とを具備したことを特徴とする非球面レンズの偏心測定方法。
【請求項3】
照明光学系からの照明光を被検レンズの被検面上に照射し、該被検面からの反射光を検出して、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを測定する非球面レンズの偏心測定方法であって、
照明光学系からの光束を、第1被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第1被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第1被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第1被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第1の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、
前記照明光学系からの光束を、第2被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第1被検面を透過させて第2被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第2被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第2被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、
被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束が第1被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて第1被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する第1の面振れ量検出工程と、
被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束を第1被検面を透過させて第2被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて第2被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する第2の面振れ量検出工程と、
前記第1の面振れ量検出工程により検出された前記第1被検面の面振れ量と該第1被検面の設計データとを対比させて、両者の差が最も小さくなる非検レンズの回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する第1被検面の面頂位置と、前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された前記第1及び前記第2の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する第1の非球面軸の傾き量と方向とを算出する第1の非球面偏心量算出工程と、
前記第2の面振れ量検出工程により検出された前記第2被検面の面振れ量と該第2被検面の設計データとを対比させて、両者の差が最も小さくなる前記非検レンズの回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する第2被検面の面頂位置と、前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する第2の非球面軸の傾き量と方向とを算出する第2の非球面偏心量算出工程とを具備したことを特徴とする非球面レンズの偏心測定方法。
【請求項4】
照明光学系からの照明光を被検レンズの被検面上に照射し、該被検面からの反射光を検出して、被検レンズの光軸に対する非球面軸の傾き量と方向とを測定する非球面レンズの偏心測定方法であって、
前記照明光学系からの光束を、第1被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第1被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第1被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第1被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第1の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、
前記照明光学系からの光束を、第2被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第1被検面を透過させて第2被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第2被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第2被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、
被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束が第1被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて第1被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する第1の面振れ量検出工程と、
前記第1の近軸曲率中心の偏心状態測定工程、前記第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程、及び前記第1の面振れ量検出工程の後に、被検レンズを反転させる工程と、
前記照明光学系からの光束を、前記被検レンズを反転させる工程により反転された被検レンズの第2被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第2被検面上に照射すると共に、被検レンズを回転させて、該第2被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第2被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第3の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、
前記照明光学系からの光束を、第1被検面の近軸曲率中心に集光するように、被検レンズの第2被検面を透過させて第1被検面上に照射するとともに、被検レンズを回転させて、該第1被検面からの反射光により形成されるスポット像の回転軸回りでの振れ回りの軌跡を検出し、検出されたスポット像の軌跡から回転軸に対する第1被検面の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向を測定する第4の近軸曲率中心の偏心状態測定工程と、
被検レンズを回転させながら、前記照明光学系からの光束が第2被検面上に集光するように、前記照明光学系と被検レンズとの間隔を随時変更させると共に、前記照明光学系及び被検レンズの相対的な移動量及び被検レンズの回転角を検出し、該検出結果に基づいて第2被検面の回転軸方向での面振れ量を検出する第2の面振れ量検出工程と、
前記第1の面振れ量検出工程により検出された前記第1被検面の面振れ量と該第1被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する第1被検面の面頂位置と、前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する第1の非球面軸の傾き量と方向とを算出する第1の非球面偏心量算出工程と、
前記第2の面振れ量検出工程により検出された前記第2被検面の面振れ量と該第2被検面の設計データとを対比させ、両者の差が最も小さくなる前記回転軸に対する相対的なシフト量及びチルト量を求めると共に、該シフト量及びチルト量から算出される前記回転軸に対する第2被検面の面頂位置と、前記第3及び第4の近軸曲率中心の偏心状態測定工程により測定された前記第1及び第2の近軸曲率中心の偏心量及び偏心方向とから、被検レンズの光軸に対する第2の非球面軸の傾き量と方向とを算出する第2の非球面偏心量算出工程とを具備したことを特徴とする非球面レンズの偏心測定方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−267085(P2006−267085A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10416(P2006−10416)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】