説明

非生物的ストレスに関する植物防御を向上させる有効成分およびその有効成分を検出するための方法

本発明は、植物内在性遺伝子タンパク質の発現を増加させることによって、該植物に影響を与える非生物ストレス、例えば、温度(例えば、寒冷、霜または熱)、水(例えば、乾燥、干ばつまたは無酸素化)または化学的負荷(例えば、鉱物塩の不足または過剰、重金属、ガス状の有毒物質)に関して植物の耐性を向上させる化合物を検出する方法に関する。本発明はまた、非生物的ストレス因子に関する植物耐性を向上させるための前記化合物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物内在性遺伝子タンパク質の発現の増加によって、植物に作用する非生物的ストレス因子(例えば、温度(例えば、寒冷、霜または熱)、水(例えば、乾燥、干ばつまたは無酸素化)、または化学的負荷(例えば、鉱物塩の不足または過剰、重金属、ガス状の有毒物質))に対する植物の耐性を向上させる化合物を見出す方法および非生物性ストレス因子に対する植物におけるストレス防御を向上させるためのこれらの化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、例えば寒冷、熱、干ばつ、外傷、病原体の攻撃(ウイルス、細菌、真菌、昆虫)などのような自然界のストレス状態だけでなく、除草剤に対しても特異的なまたは非特異的な防御機構を用いて応答することが知られている[Pflanzenbiochemie,pp.393−462,Spektrum Akademischer Verlag,Heidelberg,Berlin,Oxford,Hans W.Heldt,1996.;Biochemistry and Molecular Biology of Plants,pp.1102−1203,American Society of Plant Physiologists,Rockville,Maryland,eds.Buchanan,Gruissem,Jones,2000]。
【0003】
植物において、非生物的ストレス(例えば、寒冷、熱、干ばつ、塩害)に対する防御反応に関与する多数のタンパク質およびそれらをコードする遺伝子が知られている。それらのうちのいくつかは、シグナル伝達鎖(例えば、転写調節因子、キナーゼ、ホスファターゼ)に属し、または、それらは植物細胞の生理学的反応(例えば、イオン輸送、活性酸素種の解毒)をもたらす。非生物的ストレス反応のシグナル鎖遺伝子としては、とりわけ、DREB類およびCBF類の転写調節因子が挙げられる(Jaglo−Ottosen et al.,1998,Science 280:104−106)。ATPK型およびMP2C型のホスファターゼは、塩害ストレス反応に関与する。さらに、塩害ストレスは、プロリンまたはスクロースのようなオスモライト(osmolyte)の生合成をしばしば活性化する。スクロースシンターゼおよびプロリントランスポーター(Hasegawa et al.,2000,Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 51:463−499)は、そこに関するものの一例である。ある場合において、寒冷および干ばつに対する植物のストレス防御は、同じ分子機構を利用する。重要なクラスとしてデハイドリン(dehydrin)(Ingram and Bartels,1996,Annu Rev Plant Physiol Plant Mol Biol 47:277−403,Close,1997,Physiol Plant 100:291−296)を含む後期胚発生に蓄積するタンパク質(late embryogenesis abundant protein)(LEAタンパク質)として公知であるものの蓄積が知られている。ストレスを加えた植物中に小気胞、タンパク質および膜構造を安定化するシャペロンが存在する(Bray,1993,Plant Physiol 103:1035−1040)。さらに、酸化的ストレスの結果として発生する活性酸素種(ROSs)を解毒するアルデヒドデヒドロゲナーゼが、しばしば誘導される(Kirch et al.,2005,Plant Mol Biol 57:315−332)。熱ショック因子(HSFs)および熱ショックタンパク質(HSPs)は、熱ストレス条件下で活性化され、同様に、寒冷ストレスおよび干ばつストレスの場合、シャペロンはデハイドリンに対して同じ役割を果たす(Yu et al.,2005,Mol Cells 19:328−333)。
【0004】
記載される分子機構の多くは、誘導される遺伝子発現によって活性化される。これは、トランスクリプトーム解析(例えば、DNAマイクロアレイまたは類似の技術を用いる遺伝子発現プロファイル(GEP))による、植物の特定のストレス反応を特徴づける興味深い可能性をもたらす(Rensink et al.,2005,Genome 48:598−605,Cheong et al.,2002,Plant Physiology 129:661−677)。このようにして、特定のストレス反応遺伝子発現パターンが読み取られ、そして互い比較することができる。
【0005】
さらに、化学物質が非生物的ストレスに対する植物の耐性を向上させ得ることが公知である。このような物質は、種子粉衣、葉面散布または土壌処理のいずれかによって施用される。従って、全身獲得耐性(SAR)のエリシターまたはアブシジン酸誘導体を用いる処理によって農作物植物の非生物的ストレス耐性を向上させることが記載されている(Schading and Wei,WO−200028055,Abrams and Gusta,US−5201931,Churchill et al.,1998,Plant Growth Regul 25:35−45)。
【0006】
殺菌剤、特にストロビルリン系を施用する場合、類似の効果がまた観察され、そして収穫量の増加をしばしば伴う(Draber et al.,DE−3534948,Bartlett et al.,2002,Pest Manag Sci 60:309)。
【0007】
さらに、農作物植物のストレス耐性に対する成長調節因子の効果を記載している(Morrison and Andrews,1992,J Plant Growth Regul 11:113−117,RD−259027)。浸透ストレスの場合、例えば、グリシンベタインまたはそれらの生化学的前駆体(例えば、コリン誘導体)のようなオスモライトの適用の結果として、保護効果が観察されている(Chen et al.,2000,Plant Cell Environ 23:609−618,Bergmann et al.,DE−4103253)。植物の非生物的ストレス耐性を向上させるための、例えば、ナフトールおよびキサンチンのような抗酸化剤の効果がまたすでに記載されている(Bergmann et al.,DD−277832,Bergmann et al.,DD−277835)。しかし、物質の抗ストレス効果の分子原因(molecular causes)は大部分が不明である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、このように植物が、広範囲の有害な生物および/または自然界の非生物的ストレスに対して有効な防御をもたらし得る利用可能な複数の内因性の反応機構を有するは公知である。しかし、標的化された様式において、有効成分の適用によってどのような防御反応が引き起こされるか、または調節されるについての、予測は今日でも不明である。
【0009】
従って、非生物的ストレス(例えば、熱、寒冷、干ばつ、塩害ならびに酸および塩基負荷)に対する植物内在性防御機構の分子活性因子を標的として見出すための方法が必要であり、それによって新規な有効成分を見出すことができ、既知であるが異なる作用をする有効成分の新規な特性が同定でき、また公知の分子または主要な構造を、非生物的ストレス因子に対する植物内在性防御機構の誘導源として使用するために最適化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本明細書中以下に使用される用語の定義
本明細書中で使用される場合、用語「BLAST解析」(Blast=asic ocal lignment earch ool)とは、可能性のある相同配列の分類および検出に適切なコンピュータプログラムの使用をいい(Altschul et al.,J.Mol.Biol.1990,215:403〜410)、この合致は、スコアリング関数の形式での所望の一致の指定を用いて、照会配列と一つまたはそれ以上のデータベースの全配列との間でなされる(R.Rauhut,Bioinformatik,pp.38−107,Verlag Wiley−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2001)。
【0011】
本明細書中で使用される場合、用語「cDNA」(相補的DNA)とは、RNAに相補的であり、そして酵素的逆転写によってインビトロで合成される一本鎖DNAをいう。このcDNAは、鋳型として作用する全長RNAまたはRNAの部分配列のみの構成要素のいずれかに対応し得る。
【0012】
本明細書中で使用される場合、用語「クラスター解析」とは、類似の機能を有するタンパク質をコードする遺伝子群または類似の発現パターンを有する遺伝子が決定的な様式で示される、この目的のために開発されたコンピュータプログラムによって得られた個々のデータの概要を意味する。これは、樹状図の形式で示され得る複合データパターンの階層的な最小限化をもたらす。無関係なデータの単なる集積を著しく上回るクラスター解析により、得られたデータセットの分類的な評価が可能となる。
【0013】
本明細書において同義語として使用される、用語「DNAチップ」および「DNAマイクロアレイ」とは、マトリクスが例えば、ガラスまたはナイロンからなり、そしてマトリクスが支持体に付着したDNAフラグメントを有する支持体を意味し、DNAの結合は、例えば(a)写真平版印刷工程(アレイの支持体の上でDANが直接的に合成される)、(b)マイクロスポット法(外部で合成したオリゴヌクレオチドまたはPCR生成物を支持体に適用し、そして共有結合させる)、または(c)マイクロスプレー法(外部で合成したオリゴヌクレオチドまたはPCR生成物をインク−ジェットプリンターを用いて接触することなく支持体に噴霧する)によって達成し得る(R.Rauhut,Bioinformatik,pp.197−199,Verlag Wiley−VCH Verlag GmbH,Weinheim,2001)。生物体のゲノム配列を表すDNAチップは「ゲノムDNAチップ」という。これらの「DNAチップ」を用いて得られたデータの評価を「DNAチップ解析」という。
【0014】
本明細書中で使用される場合、用語「DNAチップハイブリダイゼーション」とは、2本の一本鎖相補的核酸分子のペアリングを意味し、塩基対分子の一方のパートナーは、好ましくは共有結合を形成してDNA(デオキシリボ核酸)としてDNAチップ上に配置され、他方はRNA(リボ核酸)または対応するcDNA(相補的DNA)の形態で溶液中に存在している。DNAチップ上に結合しているおよび結合していない核酸のハイブリダイゼーションは、緩衝水溶液中で行われ、場合によって、例えば、ジメチルスルホキシドの存在下、30〜60℃、好ましくは40〜50℃、特に好ましくは45℃の温度で、10〜20時間、好ましくは14〜18時間、特に好ましくは16時間の定速運動(constant movement)のような追加的な変性条件下で行われる。ハイブリダイゼーションの条件は、一定の様式で、例えばハイブリダイゼーションオーブンにおいて確立することができる。このようなハイブリダイゼーションオーブンにおいて、60rpm(毎分の回転数、1分間当たりの回転数)の標準的な運動をもたらす。
【0015】
本明細書中で、用語「EST配列」(xpressed equence ag)と称される核酸配列とは、200〜500塩基または塩基対の短い配列を意味する。
【0016】
本明細書中で同意語として使用される用語「発現パターン」、「誘導パターン」および「発現プロファイル」とは、植物mRNAの長期にわたって分化した発現および/または組織特異的な発現を表し、そのパターンは、DNAチップ技術を用いて、植物から得られるRNAまたはその対応するcDNAのハイブリダイゼーションシグナルの発生強度によって直接的に得られる。測定された「誘発値」とは、未処理/ストレスを加えた対照植物を用いるハイブリダイゼーションにより、同義チップを使用することによって得られる対応するシグナルを用いて、直接数値処理することにより得られる。
【0017】
本明細書中で、用語、実行した「遺伝子発現プロファイル」によって得られた「発現状態」とは、DNAチップを用いて測定された細胞遺伝子の記録された転写活性の全てを表す。
【0018】
本明細書中で使用される場合、用語「総RNA」とは、適用した分裂方法(disruption method)の結果として可能な、例えば細胞質rRNA(リボソームRNA)、細胞質tRNA(転移RNA)、細胞質mRNA(メッセンジャーRNA)、およびそれらのそれぞれの核前駆体であるctRNA(葉緑体(chloroplastidial)RNA)およびmtRNA(ミトコンドリアRNA)のような植物細胞中に存在し得る異なる植物内因性RNA群の表現を表すだけでなく、例えば、ウイルスまたは寄生虫細菌および真菌のような外因性生物から得ることができるRNA分子も含む。
【0019】
本明細書中の用語「有用な植物」とは、食材、飼料を得るためのまたは工業的な目的のための植物として利用される農作物植物を意味する。
【0020】
本明細書中で使用される場合、用語「薬害軽減剤」とは、非内在性植物起源であり、そして例えば雑草、細菌、ウイルスおよび真菌のような有害な生物体に対する農薬活性を実質的に低下させることなく、有用な植物に対する農薬の植物毒性を相殺するか、または減少させる化合物をいう。
【0021】
薬害軽減剤はまた、それ自体が公知であるそれらの機能に加えて、好ましくは、本明細書中以下に定義される群から選択される非生物的ストレス因子に対する耐性の向上に役立ち、非生物的ストレス因子に依存して異なる薬害軽減剤を選択することが可能であり、そして単一の薬害軽減剤のみを使用すること、または同じ種類の薬害軽減剤または異なる種類の薬害軽減剤を複数使用することも可能である:
【0022】
a)式(I)〜(III)
【化1】

の化合物、
ここで、記号および指数は以下を意味する:
n’は、0〜5、好ましくは、0〜3の自然数であり;
Tは、非置換であるか、または1個もしくは2個の(C1−C4)アルキルラジカルまたは[(C1−C3)アルコキシ]カルボニルで置換されている(C1またはC2)アルカンジイル鎖であり;
【0023】
Wは、NまたはO型の1〜3個のヘテロ環原子を有する部分不飽和または芳香族の5員の複素環の群から選択される非置換または置換の二価複素環ラジカル(ここで、環は少なくとも1個の窒素原子および多くても1個の酸素原子を含む)、好ましくはグループ(W1)〜(W4):
【化2】

から選択されるラジカルであり、
m’は、0または1であり;
17、R19は、同じかまたは異なり、そしてハロゲン、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、ニトロまたは(C1−C4)ハロアルキルであり;
18、R20 は、同じかまたは異なり、そしてOR24、SR24またはNR2425または少なくとも1個の窒素原子および3個までのヘテロ原子(好ましくは、OおよびSからなる群から選択される)を有する飽和もしくは不飽和の3〜7員の複素環であり、複素環は、窒素原子を介してカルボニル基(II)または(III)と結合し、そして非置換であるか、または(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシまたは場合によって置換されているフェニル、好ましくは、式OR24、NHR25またはN(CH32、特に、式OR24のラジカルからなる群から選択されるラジカルによって置換されており;
24は、水素または好ましくは全部で1〜18個の炭素原子を有する非置換もしくは置換の脂肪族炭化水素ラジカルであり;
25は、ハロゲン、(C1−C6)アルキル、(C1−C6)アルコキシまたは置換もしくは非置換のフェニルであり;
Xは、H、(C1−C8)アルキル、C1−C8(ハロアルキル)、(C1−C4)アルコキシ(C1−C8)アルキル、シアノまたはCOOR26(ここでR26は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)ハロアルキル、(C1−C4)アルコキシ−(C1−C4)アルキル、(C1−C6)ヒドロキシアルキル、(C3−C12)シクロアルキルまたはトリ(C1−C4)アルキルシリルであり;
27、R28、R29は同じかまたは異なり、そして水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)ハロアルキル、(C3−C12)シクロアルキルまたは置換もしくは非置換のフェニルであり;
21は、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C2−C4)アルケニル、(C2−C4)ハロアルケニル、(C3−C7)シクロアルキル、好ましくはジクロロメチルであり;
22、R23は同じかまたは異なり、そして水素、(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニル、(C2−C4)アルキニル、(C1−C4)ハロアルキル、(C2−C4)ハロアルケニル、(C1−C4)アルキルカルバモイル−(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルカルバモイル(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ−(C1−C4)アルキル、ジオキソラニル(C1−C4)アルキル、チアゾリル、フリル、フリルアルキル、チエニル、ピペリジル、置換または非置換のフェニルであるか、またはR22およびR23が一緒になって、置換または非置換の複素環、好ましくは、オキサゾリジン環、チアゾリジン環、ピペリジン環、モルホリン環、ヘキサヒドロピリミジン環またはベンゾオキサジン
環を形成する;
【0024】
b)以下からなる群からの1つまたはそれ以上の化合物:
1,8−ナフタル酸無水物、
メチルジフェニルメトキシアセテート、
1−(2−クロロベンジル)−3−(1−メチル−1−フェニルエチル)ウレア(クミルロン)、
O,O−ジエチルS−2−エチルチオエチルホスホロジチオエート(ジスルホトン)、
4−クロロフェニルメチルカルバメート(メフェネート(mephenate))、
O,O−ジエチルO−フェニルホスホロチオエート(ジエトレート(dietholate))、
4−カルボキシ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−4−酢酸(CL−304415、CAS−Reg.No:31541−57−8)、
シアノメトキシイミノ(フェニル)アセトニトリル(シオメトリニル)、
1,3−ジオキソラン−2−イルメトキシイミノ(フェニル)アセトニトリル(オキサベトリニル)、
4’−クロロ−2,2,2−トリフルオロアセトフェノンO−1,3−ジオキソラン−2−イルメチルオキシム(フルクソフェニム)、
4,6−ジクロロ−2−フェニルピリミジン(フェンクロリム)、
ベンジル2−クロロ−4−トリフルオロメチル−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート(フルラゾール(flurazole))、
2−ジクロロメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン(MG−191)、
N−(4−メチルフェニル)−N’−(1−メチル−1−フェニルエチル)ウレア(ダイムロン)、
(2,4−ジクロロフェノキシ)酢酸(2,4−D)、
(4−クロロフェノキシ)酢酸、
(R,S)−2−(4−クロロ−o−トリルオキシ)プロピオン酸(メコプロップ)、
4−(2,4−ジクロロフェノキシ)酪酸(2,4−DB)、
(4−クロロ−o−トリルオキシ)酢酸(MCPA)、
4−(4−クロロ−o−トリルオキシ)酪酸、
4−(4−クロロフェノキシ)酪酸、
3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸(ジカンバ)、
1−(エトキシカルボニル)エチル3,6−ジクロロ−2−メトキシベンゾエート(ラクチジクロル(lactidichlor))
ならびにそれらの塩およびエステル、好ましくは(C1−C8);
【0025】
c)式(IV):
【化3】

のN−アシルスルホンアミドおよびそれらの塩、
ここで、
30は、水素、炭化水素ラジカル、オキシハイドロカーボンラジカル、チオハイドロカーボンラジカルまたは好ましくは炭素原子を介して結合しているヘテロシクリルラジカルであり、上記の最後の4種のラジカルは各々非置換であるか、または1個もしくはそれ以上のハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、ホルミル、カルボキサミド、スルホンアミドおよび式−Za−Raのラジカルからなる群から選択される同じかまたは異なるラジカルによって置換され、ここで、各炭化水素部分は、好ましくは1〜20個の炭素原子を有し、そして置換基を含む炭素含有ラジカルR30は、好ましくは1〜30個の炭素原子を有し;
31は、水素または(C1−C4)アルキル、好ましくは水素であるか、または
30およびR31が式−CO−N−の基と一緒になって3〜8員の飽和環もしくは不飽和環のラジカルとなり;
32ラジカルは、同じかまたは異なり、そしてハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、ホルミル、CONH2、SO2NH2または式−Zb−Rbのラジカルであり;
33は、水素または(C1−C4)アルキル、好ましくはHであり;
34ラジカルは、同じかまたは異なり、そしてハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、CHO、CONH2、SO2NH2または式−Zc−Rcのラジカルであり;
aは、炭化水素ラジカルまたはヘテロシクリルラジカルであり、上記の最後の2種のラジカルは各々、非置換であるか、または1個もしくはそれ以上のハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、モノ−およびジ[(C1−C4)アルキル]アミノまたはアルキルラジカル(ここで、複数個の、好ましくは2または3個の隣接していないCH2基は、各場合において、1個の酸素原子で置き換えられている)からなる群から選択される同じかまたは異なるラジカルによって置換されており;
b、Rcは、同じかまたは異なる炭化水素ラジカルまたはヘテロシクリルラジカルであり、上記の最後の2種のラジカルは各々、非置換であるか、または1個もしくはそれ以上のハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、ホスホリル、ハロ(C1−C4)アルコキシ、モノ−およびジ[(C1−C4)アルキル]アミノまたはアルキルラジカル(ここで、複数個の、好ましくは2または3個の隣接していないCH2基は、各場合において、1個の酸素原子で置き換えられている)からなる群から選択される同じかまたは異なるラジカルによって置換されており;
aは、式−O−、−S−、−CO−、−CS−、−CO−O−、−CO−S−、−O−CO−、−S−CO−、−SO−、−SO2−、−NR*−、−CO−NR*−、−NR*−CO−、−SO2−NR*−または−NR*−SO2−の二価基(divalent group)であり、それぞれの二価基の右側に示される結合は、ラジカルRaと結合し、そして上記の最後の5種のラジカルにおけるR*ラジカルは、互いに独立して、各場合において、H、(C1−C4)アルキルまたはハロ(C1−C4)アルキルであり;
b、Zc は、互いに独立して、直接結合または式−O−、−S−、−CO−、−CS−、−CO−O−、−CO−S−、−O−CO、−S−CO−、−SO−、−SO2−、−NR*−、−SO2−NR*−、−NR*−SO2−、−CO−NR*−または−NR*−CO−の二価基であり、それぞれの二価基の右側に示される結合は、ラジカルRbまたはRcと結合し、そして上記の最後の5種のラジカルにおけるR*ラジカルは、互いに独立して、各場合において、H、(C1−C4)アルキルまたはハロ(C1−C4)アルキルであり;
nは、0〜4、好ましくは、0、1または2、特に、0または1の整数であり、そして
mは、0〜5、好ましくは、0、1、2または3、特に、0、1または2の整数である;
【0026】
d)一般式(V):
【化4】

のアシルスルファモイルベンズアミド、適切な場合その塩形態、
ここで、
3は、CHまたはNであり;
35は、水素、ヘテロシクリルラジカルまたは炭化水素ラジカルであり、上記の最後の2種のラジカルは、場合によって、1個もしくはそれ以上のハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、CHO、CONH2、SO2NH2およびZa−Raからなる群から選択される同じかまたは異なるラジカルによって置換されており;
36は、水素、ヒドロキシル、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニル、(C1−C6)アルコキシ、(C2−C6)アルケニルオキシであり、上記の最後の5種のラジカルは、場合によって1個もしくはそれ以上のハロゲン、ヒドロキシル、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシおよび(C1−C4)アルキルチオからなる群から選択される同じかまたは異なるラジカルによって置換されるか、または
35およびR36がそれらが結合する窒素原子と一緒になって、3〜8員の飽和または不飽和の環となり;
37は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、CHO、CONH2、SO2NH2またはZb−Rbであり;
38は、水素、(C1−C4)アルキル、(C2−C4)アルケニルまたは(C2−C4)アルキニルであり;
39は、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、ホスホリル、CHO、CONH2、SO2NH2またはZc−Rcであり;
aは、炭素鎖が1個または2個以上の酸素原子によって中断されている(C2−C20)アルキルラジカルであるか、またはヘテロシクリルラジカルもしくは炭化水素ラジカルであり、上記の2種のラジカルは、場合によって、1個もしくはそれ以上のハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、モノ−およびジ[(C1−C4)アルキル]アミノからなる群から選択される同じかまたは異なるラジカルによって置換されており;
b、Rcは、炭素鎖が1個または2個以上の酸素原子によって中断されている(C2−C20)アルキルラジカルであるか、またはヘテロシクリルラジカルもしくは炭化水素ラジカルであり、上記の2種のラジカルは、場合によって、1個もしくはそれ以上のハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、ヒドロキシル、ホスホリル、(C1−C4)ハロアルコキシ、モノ−およびジ[(C1−C4)アルキル]アミノからなる群から選択される同じかまたは異なるラジカルによって置換されており;
aは、O、S、CO、CS、C(O)O、C(O)S、SO、SO2、NRd、C(O)NRdまたはSO2NRdからなる群から選択される二価単位であり;
b、Zcは、同じかまたは異なり、そして直接結合またはO、S、CO、CS、C(O)O、C(O)S、SO、SO2、NRd、SO2NRdまたはC(O)NRdからなる群から選択される二価単位であり;
dは、水素、(C1−C4)アルキルまたは(C1−C4)ハロアルキルであり;
nは、0〜4の整数であり、そして
mは、XがCHである場合には、0〜5の整数であり、そしてXがNである場合には、0〜4の整数である;
【0027】
e)例えば、本明細書中以下の式(VI):
【化5】

のアシルスルファモイルベンズアミド型の化合物(これらのいくつかはWO 99/16744から公知である)、
例えば、以下のもの、
ここで、
21=シクロプロピルおよびR22=H(S3−1=4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド)、
21=シクロプロピルおよびR22=5−Cl(S3−2)、
21=エチルおよびR22=H(S3−3)、
21=イソプロピルおよびR22=5−Cl(S3−4)および
21=イソプロピルおよびR22=H(S3−5);
【0028】
f)式(VII):
【化6】

のN−アシルスルファモイルフェニルウレア型の化合物
(これらのいくつかはEP−A−365484から公知である)
ここで、
Aは、以下:
【化7】

からなる群から選択されるラジカルであり、
αおよびRβは、互いに独立して、水素、C1−C8−アルキル、C3−C8−シクロアルキル、C3−C6−アルケニル、C3−C6−アルキニル、
【化8】

またはC1−C4アルコキシまたは
【化9】

によって置換されているC1−C4アルコキシであり、
αおよびRβが一緒になって、C4−C6−アルキレン架橋または酸素、硫黄、SO、SO2、NHまたは−N(C1−C4−アルキル)−によって中断されているC4−C6−アルキレン架橋となり、
γは、水素またはC1−C4−アルキルであり、
aおよびRbは、互いに独立して、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、トリフルオロメチル、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、C1−C4−アルキルチオ、C1−C4−アルキルスルフィニル、C1−C4−アルキルスルホニル、−COORj、−CONRkm、−CORn、−SO2NRkmまたは−OSO2−C1−C4−アルキルであるか、またはRaおよびRbが一緒になって、ハロゲンもしくはC1−C4−アルキルによって置換され得るC3−C4−アルキレン架橋またはハロゲもしくはC1−C4−アルキルによって置換され得るC3−C4−アルケニレン架橋、またはハロゲンもしくはC1−C4−アルキルによって置換され得るC4−アルカジエニレン架橋となり、そして
gおよびRhは、互いに独立して、水素、ハロゲン、C1−C4−アルキル、トリフルオロメチル、メトキシ、メチルチオまたは−COORjであり、ここで
cは、水素、ハロゲン、C1−C4−アルキルまたはメトキシであり、
dは、水素、ハロゲン、ニトロ、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、C1−C4−アルキルチオ、C1−C4−アルキルスルフィニル、C1−C4−アルキルスルホニル、−COORjまたは−CONRkmであり、
eは、水素、ハロゲン、C1−C4−アルキル、−COORj、トリフルオロメチルまたはメトキシであるか、またはRdおよびReが一緒になってC3−C4−アルキレン架橋を形成し、
fは、水素、ハロゲンまたはC1−C4−アルキルであり、
XおよびRYは、互いに独立して、水素、ハロゲン、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、C1−C4−アルキルチオ、−COORj、トリフルオロメチル、ニトロまたはシアノであり、
j、RkおよびRmは、互いに独立して、水素またはC1−C4−アルキルであり、
kおよびRmが一緒になって、C4−C6−アルキレン架橋または酸素、NHまたは−N(C1−C4−アルキル)−によって中断されているC4−C6−アルキレン架橋となり、そして
nは、C1−C4−アルキル、フェニルまたはハロゲン、C1−C4−アルキル、メトキシ、ニトロもしくはトリフルオロメチルによって置換されているフェニルであり、
好ましくは、
1−[4−(N−2−メトキシベンゾイルスルファモイル)フェニル]−3−メチルウレア、
1−[4−(N−2−メトキシベンゾイルスルファモイル)フェニル]−3,3−ジメチルウレア、
1−[4−(N−4,5−ジメチルベンゾイルスルファモイル)フェニル]−3−メチルウレア、
1−[4−(N−ナフトイルスルファモイル)フェニル]−3,3−ジメチルウレア、
【0029】
g)EP−A−1019368に開示される式(VIII):
【化10】

のアシルスルファモイルベンズアミド型の化合物、適切な場合、その塩形態、
ここで、
1は、メチル、メトキシまたはトリフルオロメトキシであり;
2は、水素、塩素またはメチルであり;
3は、水素、エチルまたはプロパルギルであり;
4は、エチル、シクロプロピル、イソプロピルまたはプロパルギルであるか、または
3およびR4が一緒になって基(CH24を形成する
(農業において従来から使用される立体異性体および塩を含む)。
【0030】
式(I)の化合物は、例えば、EP−A−0 333 131(ZA−89/1960)、EP−A−0 269 806(US−A−4,891,057)、EP−A−0 346 620(AU−A−89/34951)、EP−A−0 174 562、EP−A−0 346 620(WO−A−91/08 202)、WO−A−91/07 874またはWO−A 95/07 897(ZA 94/7120)およびそれらに引用される文献において開示されるか、またはそれらに記載される方法によって、またはそれらに記載される方法と同様にして製造され得る。式(II)の化合物は、例えば、EP−A−0 086 750、EP−A−0 94349(US−A−4,902,340)、EP−A−0 191736(US−A−4,881,966)およびEP−A−0 492 366およびそれらに引用される文献において開示されるか、またはそれらに記載される方法によって、またはそれらに記載される方法と同様にして製造され得る。さらに、いくつかの化合物は、EP−A−0 582 198およびWO 2002/34048に記載される。式(III)の化合物は、多くの特許出願、例えば、US−A−4,021,224およびUS−A−4,021,229から公知である。
【0031】
さらに、グループ(b)の化合物は、CN−A− 87/102 789、EP−A−365484から、および「The Pesticide Manual」,The British Crop Protection Council and the Royal Society of Chemistry,第11編,Farnham 1997から公知である。
【0032】
グループ(c)の化合物は、WO−A−97/45016に記載され、グループ(d)のものはWO−A−99/16744、グループB(e)のものEP−A−365484は、およびグループ(g)のものはEP−A−1019368に記載される。
【0033】
引用される刊行物は、製造方法および出発物質および詳細な好ましい化合物の広範囲に及ぶ情報を含む。これらの刊行物は、本明細書とともに明示的に参照される;これらは本明細書に参照により組み入れられる。
【0034】
薬害軽減剤として公知である式(I)および/または(II)の好ましい化合物は、記号および指数が以下の意味を有する化合物である:
24は、水素、(C1−C18)アルキル、(C3−C12)シクロアルキル、(C2−C8)アルケニルおよび(C2−C18)アルキニルであり、ここで炭素含有基は、1個もしくはそれ以上の好ましくは3個までラジカルR50で置換することができ;
50は、同じかまたは異なり、そしてハロゲン、ヒドロキシル、(C1−C8)アルコキシ、(C1−C8)アルキルチオ、(C2−C8)アルケニルチオ、(C2−C8)アルキニルチオ、(C2−C8)アルケニルオキシ、(C2−C8)アルキニルオキシ、(C3−C7)シクロアルキル、(C3−C7)シクロアルコキシ、シアノ、モノ−およびジ((C1−C4)アルキル)アミノ、カルボキシル、(C1−C8)アルコキシカルボニル、(C2−C8)アルケニルオキシカルボニル、(C1−C8)アルキルチオカルボニル、(C2−C8)アルキニルオキシカルボニル、(C1−C8)アルキルカルボニル、(C2−C8)アルケニルカルボニル、(C2−C8)アルキニルカルボニル、1−(ヒドロキシイミノ)(C1−C6)アルキル、1−[(C1−C4)アルキルイミノ]−(C1−C4)アルキル、1−[(C1−C4)アルコキシイミノ](C1−C6)アルキル、(C1−C8)アルキルカルボニルアミノ、(C2−C8)アルケニルカルボニルアミノ、(C2−C8)アルキニルカルボニルアミノ、アミノカルボニル、(C1−C8)アルキルアミノカルボニル、ジ(C1−C6)アルキルアミノカルボニル、(C2−C6)アルケニルアミノカルボニル、(C2−C6)アルキニルアミノカルボニル、(C1−C8)アルコキシカルボニルアミノ、(C1−C8)アルキルアミノカルボニルアミノ、非置換であるか、またはR51によって置換されている(C1−C6)アルキルカルボニルオキシであるか、または(C2−C6)アルケニルカルボニルオキシ、(C2−C6)アルキニルカルボニルオキシ、(C1−C8)アルキルスルホニル、フェニル、フェニル(C1−C6)アルコキシ、フェニル(C1−C6)アルコキシカルボニル、フェノキシ、フェノキシ(C1−C6)アルコキシ、フェノキシ(C1−C6)アルコキシカルボニル、フェニルカルボニルオキシ、フェニルカルボニルアミノ、フェニル(C1−C6)アルキルカルボニルアミノであり、上記の最後の9種のラジカルは、非置換であるか、またはフェノール環において、ラジカルR52;SiR’3、−O−SiR’3、R’3Si(C1−C8)アルコキシ、−CO−O−NR’2、−O−N=CR’2、−N=CR’2、−O−NR’2、−NR’2、CH(OR’)2、−O−(CH2m−CH(OR’)2、−CR’’’(OR’)2、−O−(CH2mCR’’’(OR’’)2 またはR‘‘O−CHR’’’CHCOR’’−(C1−C6)アルコキシによって一置換または多置換、好ましくは三置換まで置換されており、
51は、同じかまたは異なり、そしてハロゲン、ニトロ、(C1−C4)アルコキシおよび非置換であるか、または1個もしくはそれ以上、好ましくは3個までラジカルR52で置換されているフェニルであり;
52は、同じかまたは異なり、そしてハロゲン、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)ハロアルキル、(C1−C4)ハロアルコキシまたはニトロであり;
R‘は、同じかまたは異なり、そして水素、(C1−C4)アルキル、非置換のフェニルまたは1個もしくはそれ以上、好ましくは3個までラジカルR52で置換されているフェニルであるか、または2つのラジカルR’が一緒になって、(C2−C6)アルカンジイル鎖を形成し;
R‘‘は、同じかまたは異なり、そして(C1−C4)アルキルであるか、または2つのラジカルR‘‘が一緒になって、(C2−C6)アルカンジイル鎖を形成し;
R‘‘‘は、水素または(C1−C4)アルキルであり;
mは、0、1、2、3、4、5または6である。
【0035】
薬害軽減剤として公知である式(I)および/または(II)の特に好ましい化合物は、記号および指数が以下の意味を有する化合物である:
24は、水素、(C1−C8)アルキルまたは(C3−C7)シクロアルキルであり、上記の炭素含有ラジカルは、非置換であるか、またはハロゲンによって一置換もしくは多置換されるか、またはラジカルR50によって一置換もしくは多置換、好ましくは、一置換されており、
50は、同じかまたは異なり、そしてヒドロキシル、(C1−C4)アルコキシ、カルボキシル、(C1−C4)アルコキシカルボニル、(C2−C6)アルケニルオキシカルボニル、(C2−C6)アルキニルオキシカルボニル、1(ヒドロキシイミノ)(C1−C4)アルキル、1−[(C1−C4)アルキルイミノ](C1−C4)アルキルおよび1−[(C1−C4)アルコキシイミノ](C1−C4)アルキル;−SiR’3、−O−N=CR’2、−N=CR’2、−NR’2および−O−NR’2(ここで、R’は、同じかまたは異なり、そして水素、(C1−C4)アルキルであるか、または2つ一組になって(C4−C5)アルカンジイル鎖である)であり、
27、R28、R29は、同じかまたは異なり、そして水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C6)ハロアルキル、(C3−C7)シクロアルキルまたは非置換であるか、または1個もしくはそれ以上、ハロゲン、シアノ、ニトロ、アミノ、モノ−およびジ[(C1−C4)アルキル]アミノ、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)ハロアルコキシ、(C1−C4)アルキルチオおよび(C1−C4)アルキルスルホニルからなる群から選択されるラジカルによって置換されているフェニルであり;
xは、水素またはCOOR26であり、ここで、R26は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)ハロアルキル、(C1−C4−アルコキシ)(C1−C4)アルキル、(C1−C6)ヒドロキシアルキル、(C3−C7)シクロアルキルまたはトリ(C1−C4)アルキルシリルであり、
17、R19は、同じかまたは異なり、そしてハロゲン、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、(C1またはC2)ハロアルキル、好ましくは、水素、ハロゲンまたは(C1またはC2)ハロアルキルである。
【0036】
薬害軽減剤として公知である非常に特に好ましい化合物は、式(I)において記号および指数が以下の意味を有する化合物である:
17は、ハロゲン、ニトロまたは(C1−C4)ハロアルキルであり;
n’は、0、1、2または3であり;
18は、式OR24のラジカルであり、
24は、水素、(C1−C8)アルキルまたは(C3−C7)シクロアルキルであり、上記炭素含有ラジカルは、非置換であるか、または同じかまたは異なるハロゲンラジカルによって一置換または多置換、好ましくは三置換までされるか、またはヒドロキシル、(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)アルコキシカルボニル、(C2−C6)アルケニルオキシカルボニル、(C2−C6)アルキニルオキシカルボニル、1(ヒドロキシイミノ)(C1−C4)アルキル、1−[(C1−C4)アルキルイミノ](C1−C4)アルキル、1−[(C1−C4)アルコキシイミノ](C1−C4)アルキルおよび式−SiR’3、−O−N=R’2、−N=CR’2、−NR’2および−O−NR’2(ここで、上記の式中のラジカルR’は、同じかまたは異なり、そして水素、(C1−C4)アルキルであるか、または2つ一組になって(C4またはC5)アルカンジイルである)のラジカルからなる群から選択される同じかまたは異なるラジカルによって二置換まで、好ましくは一置換されており;
27、R28、R29 は、同じかまたは異なり、そして水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C6)ハロアルキル、(C3−C7)シクロアルキルまたは非置換であるか、または1個もしくはそれ以上、ハロゲン、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、ニトロ、(C1−C4)ハロアルキルおよび(C1−C4)ハロアルコキシからなる群から選択されるラジカルによって置換されているフェニルであり、そして
xは、水素またはCOOR26であり、ここで、R26は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)ハロアルキル、(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキル、(C1−C6)ヒドロキシアルキル、(C3−C7)シクロアルキルまたはトリ(C1−C4)アルキルシリルである。
【0037】
薬害軽減剤として公知である式(II)の非常に特に好ましい化合物はまた、記号および指数が以下の意味を有する化合物である:
19は、ハロゲンまたは(C1−C4)ハロアルキルであり;
n’は、0、1、2または3であり、(R19n’は、好ましくは5−Clであり;
20は、式OR24のラジカルであり;
Tは、CH2またはCH(COO−(C1−C3−アルキル))であり、そして
24は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C8)ハロアルキルまたは(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキル、好ましくは、水素または(C1−C8)アルキルである。
【0038】
本明細書において、薬害軽減剤として公知である式(I)の特に好ましい化合物は、記号および指数が以下の意味を有する化合物である:
Wは、(W1)であり;
17は、ハロゲンまたは(C1−C2)ハロアルキルであり;
n’は、0、1、2または3であり、(R17n’は、好ましくは、2,4−Cl2であり;
18は、式OR24のラジカルであり;
24は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C1−C4)ヒドロキシアルキル、(C3−C7)シクロアルキル、(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキルまたはトリ(C1−C2)アルキルシリル、好ましくは、(C1−C4)アルキルであり;
27は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C4)ハロアルキルまたは(C3−C7)シクロアルキル、好ましくは、水素または(C1−C4)アルキルであり、そして
xは、COOR26であり、ここでR26は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C1−C4)ヒドロキシアルキル、(C3−C7)シクロアルキル、(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキル またはトリ(C1−C2)アルキルシリル、好ましくは、水素または(C1−C4)アルキルである。
【0039】
薬害軽減剤として公知である式(I)の他の特に好ましい化合物は、記号および指数が以下の意味を有する化合物である:
Wは、(W2)であり;
17は、ハロゲンまたは(C1−C2)ハロアルキルであり;
n’は、0、1、2または3であり、(R17n’は、好ましくは2,4−Cl2であり;
18は、式OR24のラジカルであり;
24は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C1−C4)ヒドロキシアルキル、(C3−C7)シクロアルキル、(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキルまたはトリ(C1−C2)アルキルシリル、好ましくは(C1−C4)アルキルであり、そして
27は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C3−C7)シクロアルキルまたは非置換もしくは置換フェニル、好ましくは、水素、(C1−C4)アルキルまたは非置換であるか、または1個もしくはそれ以上、ハロゲン、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、ニトロ、シアノまたは(C1−C4)アルコキシからなる群から選択されるラジカルで置換されているフェニルである。
【0040】
薬害軽減剤として公知である式(I)の他の特に好ましい化合物は、記号および指数が以下の意味を有する化合物である:
Wは、(W3)であり;
17は、ハロゲンまたは(C1−C2)ハロアルキルであり;
n’は、0、1、2または3であり、(R17n‘は、好ましくは2,4−Cl2であり;
18は、式OR24のラジカルであり;
24は、水素、(C1−C8)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C1−C4)ヒドロキシアルキル、(C3−C7)シクロアルキル、(C1−C4)アルコキシ(C1−C4)アルキルまたはトリ(C1−C2)アルキルシリル、好ましくは、(C1−C4)アルキルであり、そして
28は、(C1−C8)アルキルまたは(C1−C4)ハロアルキル、好ましくは、C1−ハロアルキルである。
【0041】
薬害軽減剤として公知である式(I)の他の特に好ましい化合物は、記号および指数が以下の意味を有する化合物である:
Wは、(W4)であり;
17は、ハロゲン、ニトロ、(C1−C4)アルキル、(C1−C2)ハロアルキル、好ましくは、CF3または(C1−C4)アルコキシであり;
n’は、0、1、2または3であり;
m’は、0または1であり、
18は、式OR24のラジカルであり;
24は、水素、(C1−C4)アルキル、カルボキシ(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシカルボニル(C1−C4)アルキル、好ましくは、(C1−C4)アルコキシ−CO−CH2−、(C1−C4)アルコキシ−CO−C(CH3)H−、HO−CO−CH2−またはHO−CO−C(CH3)H−であり、そして
29は、水素、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C3−C7)シクロアルキルまたは非置換であるか、または1個もしくはそれ以上、ハロゲン、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、ニトロ、シアノおよび(C1−C4)アルコキシからなる群から選択されるラジカルで置換されているフェニルである。
【0042】
薬害軽減剤として公知である以下の化合物群は、非生物的ストレス因子に対する植物の耐性を向上させるための有効成分として、特に適切である:
a)ジクロロフェニルピラゾリン−3−カルボン酸型の化合物(すなわち、W=(W1)および(R17n‘=2,4−Cl2の式(I)化合物)、好ましくは、エチル1−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(エトキシカルボニル)−5−メチル−2−ピラゾリン−3−カルボキシレート(I−1、メフェンピル−ジエチル)、メフェンピル−ジメチルおよびメフェンピル(I−0)のような化合物、およびWO−A 91/07874に記載される関連化合物;
【0043】
b)ジクロロフェニルピラゾールカルボン酸誘導体(すなわち、W=(W2)および(R17n‘=2,4−Cl2の式(I)の化合物)、好ましくは、エチル1−(2,4−ジクロロフェニル)−5−メチルピラゾール−3−カルボキシレート(I−2)、エチル1−(2,4−ジクロロフェニル)−5−イソプロピルピラゾール−3−カルボキシレート(I−3)、エチル1−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(1,1−ジメチルエチル)ピラゾール−3−カルボキシレート(I−4)、エチル1(2,4−ジクロロフェニル)−5−フェニルピラゾール−3−カルボキシレート(I−5)のような化合物およびEP−A−0 333 131およびEP−A−0 269 806に記載される関連化合物;
【0044】
c)トリアゾールカルボン酸型の化合物(すなわち、W=(W3)および(R17n‘
=2,4−Cl2の式(I)の化合物)、好ましくは、フェンクロラゾール−エチル、すなわち、エチル1−(2,4−ジクロロフェニル)−5−トリクロロメチル−(1H)−1,2,4−トリアゾール−3−カルボキシレート(I−6)のような化合物および関連化合物(EP−A−0 174 562およびEP−A−0 346 620を参照のこと);
【0045】
d)5−ベンジル−もしくは5−フェニル−2−イソキサゾリン−3−カルボン酸型の化合物または5,5−ジフェニル−2−イソキサゾリン−3−カルボン酸型の化合物、例えば、イソキサジフェン(I−12)、(ここで、W=(W4))、好ましくは、エチル5−(2,4−ジクロロベンジル)−2−イソキサゾリン−3−カルボキシレート(I−7)またはエチル5−フェニル−2−イソキサゾリン−3−カルボキシレート(I−8)のような化合物、およびWO−A−91/08202に記載される関連化合物、またはWO−A−95/07897に記載されるような5,5−ジフェニル−2−イソキサゾリンカルボキシレート型の化合物(I−9、イソキサジフェン−エチル)もしくはn−プロピル5,5−ジフェニル−2−イソキサゾリンカルボキシレート型の化合物(I−10)もしくはエチル5−(4−フルオロフェニル)−5−フェニル−2−イソキサゾリン−3−カルボキシレート型の化合物(I−11);
【0046】
e)8−キノリンオキシ酢酸型の化合物、例えば、式(II)の化合物(ここで(R19n‘=5−Cl、R20=OR24およびT=CH2)、好ましくは、以下の化合物:
例えば、WO−A−2002/34048に記載される
1−メチルヘキシル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−1、クロキントセット−メキシル)、
1,3−ジメチルブタ−1−イル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−2)、
4−アリルオキシブチル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−3)、
1−アリルオキシプロパ−2−イル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−4)、
エチル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−5)、
メチル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−6)、
アリル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−7)、
2−(2−プロピリデンイミノオキシ)−1−エチル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−8)、
2−オキソプロパ−1−イル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)アセテート(II−9)、
(5−クロロ−8−キノリンオキシ)酢酸(II−10)およびその塩
ならびにEP−A−0 860 750、EP−A−0 094 349およびEP−A−0 191 736またはEP−A−0 492 366に記載される関連化合物;
【0047】
f)(5−クロロ−8−キノリンオキシ)マロン酸型の化合物、すなわち、式(II)の化合物(ここで、(R19n‘=5−Cl、R20=OR24、T=−CH(COO−アルキル))、好ましくは、化合物ジエチル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)マロネート(II−11)、ジアリル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)マロネート、メチルエチル(5−クロロ−8−キノリンオキシ)マロネートおよびEP−A−0 582 198に記載される関連化合物;
【0048】
g)ジクロロアセトアミド型の化合物、すなわち、式(III)の化合物、好ましくは:
N,N−ジアリル−2,2−ジクロロアセトアミド(US−A 4,137,070からのジクロロミド(III−1))、
4−ジクロロアセチル−3,4−ジヒドロ−3−メチル−2H−1,4−ベンゾオキサジン(EP 0 149 974からのIV−2、ベノキサコール(Benoxacor))、
N1,N2−ジアリル−N2−ジクロロアセチルグリシンアミド(HU 2143821からのDKA−24(III−3))、
4−ジクロロアセチル−1−オキサ−4−アザ−スピロ[4,5]デカン(AD−67)、
2,2−ジクロロ−N−(1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)−N−(2−プロペニル)アセトアミド(PPG−1292)、
3−ジクロロアセチル−2,2,5−トリメチルオキサゾリジン(R−29148、III−4)、
3−ジクロロアセチル−2,2−ジメチル−5−フェニルオキサゾリジン、
3−ジクロロアセチル−2,2−ジメチル−5−(2−チエニル)オキサゾリジン、
3−ジクロロアセチル−5−(2−フラニル)−2,2−ジメチルオキサゾリジン(フリラゾール(III−5)、MON 13900)、
1−ジクロロアセチルヘキサヒドロ−3,3,8a−トリメチルピロロ[1,2−a]ピリミジン−6(2H)−オン(ジシクロノン、BAS 145138);
【0049】
h)グループ(b)からの化合物、好ましくは、
1,8−ナフタル酸無水物(b−1)、
メチルジフェニルメトキシアセテート(b−2)、
シアノメトキシイミノ(フェニル)アセトニトリル(シオメトリニル)(b−3)、
1−(2−クロロベンジル)−3−(1−メチル−1−フェニルエチル)ウレア(クミルロン)(b−4)、
O,O−ジエチルS−2−エチルチオエチルホスホロジオエート(ジスルホトン)(b−5)、
4−クロロフェニルメチルカルバメート(メフェネート)(b−6)、
O,O−ジエチルO−フェニルホスホロチオエート(ジエトラート)(b−7)、
4−カルボキシ−3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−4−酢酸(CL−304415、CASReg.No:31541−57−8)(b−8)、
1,3−ジオキソラン−2−イルメトキシイミノ(フェニル)アセトニトリル(オキサベトリニル)(b−9)、
4’−クロロ−2,2,2−トリフルオロアセトフェノン O−1,3−ジオキソラン−2−イルメチルオキシム(フルクロフェニム)(b−10)、
4,6−ジクロロ−2−フェニルピリミジン(フェンクロリム)(b−11)、
ベンジル2−クロロ−4−トリフルオロメチル−1,3−チアゾール−5−カルボキシレート(フルラゾール)(b−12)、
2−ジクロロメチル−2−メチル−1,3−ジオキソラン(MG−191)(b−13)、
N−(4−メチルフェニル)−N’−(1−メチル−1−フェニルエチル)ウレア(ダイムロン)(b−14)、
(2,4−ジクロロフェノキシ)酢酸(2,4−D)、
(4−クロロフェノキシ)酢酸、
(R,S)−2−(4−クロロ−o−トリルオキシ)プロピオン酸(メコプロップ)、
4−(2,4−ジクロロフェノキシ)酪酸(2,4−DB)、
(4−クロロ−o−トリルオキシ)酢酸(MCPA)、
4−(4−クロロ−o−トリルオキシ)酪酸、
4−(4−クロロフェノキシ)酪酸、
3,6−ジクロロ−2−メトキシ安息香酸(ジカンバ)、
1−(エトキシカルボニル)エチル3,6−ジクロロ−2−メトキシベンゾエート(ラクチジクロル(lactidichlon))
ならびにそれらの塩およびエステル、好ましくは、(C1−C8)。
【0050】
薬害軽減剤として公知である以下の式(IV)の化合物またはそれらの塩がさらに好ましい。
30は、水素、(C1−C6)アルキル、(C3−C6)シクロアルキル、フラニルまたはチエニルであり、上記の最後の4種のラジカルは、非置換であるか、または1個もしくはそれ以上のハロゲン、(C1−C4)アルコキシ、ハロ(C1−C6)アルコキシおよび(C1−C4)アルキルチオからなる群から選択される置換基で置換されており、そして環式ラジカルの場合もまた、(C1−C4)アルキルおよび(C1−C4)ハロアルキルによって置換されており、
31は、水素であり、
32は、ハロゲン、ハロ(C1−C4)アルキル、ハロ(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)アルキルスルホニル、(C1−C4)アルコキシカルボニルまたは(C1−C4)アルキルカルボニル、好ましくは、ハロゲン、(C1−C4)ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、(C1−C4)アルコキシ、ハロ(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)アルコキシカルボニルまたは(C1−C4)アルキルスルホニルであり、
33は水素であり、
34は、ハロゲン、(C1−C4)アルキル、ハロ(C1−C4)アルキル、ハロ(C1−C4)アルコキシ、(C3−C6)シクロアルキル、フェニル、(C1−C4)アルコキシ、シアノ、(C1−C4)アルキルチオ、(C1−C4)アルキルスルフィニル、(C1−C4)アルキルスルホニル、(C1−C4)アルコキシカルボニルまたは(C1−C4)アルキルカルボニル、好ましくは、ハロゲン、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ハロ(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)アルコキシまたは(C1−C4)アルキルチオであり、
nは、0、1または2であり、そして
mは、1または2である。
【0051】
薬害軽減剤として公知である以下の式(IV)の化合物が特に好ましい:
30=H3C−O−CH2−、R31=R33=H、R34=2−OMe(IV−1)、
30=H3C−O−CH2−、R31=R33=H、R34=2−OMe−5−Cl(IV− 2)、
30=シクロプロピル、R31=R33=H、R34=2−OMe(IV−3)、
30=シクロプロピル、R31=R33=H、R34=2−OMe−5−Cl(IV−4)、
30=シクロプロピル、R31=R33=H、R34=2−Me(IV−5)、
30=tert−ブチル、R31=R33=H、R34=2−OMe(IV−6)。
【0052】
薬害軽減剤として公知である以下の式(V)の化合物がさらに好ましい:
3は、CHであり;
35は、水素、(C1−C6)アルキル、(C3−C6)シクロアルキル、(C2−C6)アルケニル、(C5−C6)シクロアルケニル、フェニルまたは窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される3個までのヘテロ原子を有する3〜6員のヘテロシクリルであり、上記の最後の6種のラジカルは、場合によって、1個もしくはそれ以上のハロゲン、(C1−C6)アルコキシ、(C1−C6)ハロアルコキシ、(C1−C2)アルキルスルフィニル、(C1−C2)アルキルスルホニル、(C3−C6)シクロアルキル、(C1−C4)アルコキシカルボニル、(C1−C4)アルキルカルボニルおよびフェニルからなる群から選択される同じかまたは異なる置換基で置換されており、そして環式ラジカルの場合もまた(C1−C4)アルキルおよび(C1−C4)ハロアルキルによって置換されており;
36は、水素、(C1−C6)アルキル、(C2−C6)アルケニル、(C2−C6)アルキニルであり、上記の最後の3種のラジカルは、場合によって、1個もしくはそれ以上のハロゲン、ヒドロキシル、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシおよび(C1−C4)アルキルチオからなる群から選択される同じかまたは異なる置換基で置換されており;
37は、ハロゲン、(C1−C4)ハロアルキル、(C1−C4)ハロアルコキシ、ニトロ、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)アルコキシ、(C1−C4)アルキルスルホニル、(C1−C4)アルコキシカルボニルまたは(C1−C4)アルキルカルボニルであり;
38は、水素であり;
39は、ハロゲン、ニトロ、(C1−C4)アルキル、(C1−C4)ハロアルキル、(C1−C4)ハロアルコキシ、(C3−C6)シクロアルキル、フェニル、(C1−C4)アルコキシ、シアノ、(C1−C4)アルキルチオ、(C1−C4)アルキルスルフィニル、(C1−C4)アルキルスルホニル、(C1−C4)アルコキシカルボニルまたは(C1−C4)アルキルカルボニルであり;
nは、0、1または2であり、そして
mは、1または2である。
【0053】
薬害軽減剤として公知である式(VI)の好ましい化合物は、(S3−1)、(S3−2)、(S3−3)、(S3−4)および(S3−5)である。
【0054】
式(VII)の他の好ましい化合物は、以下である:
1−[4−(N−2−メトキシベンゾイルスルファモイル)フェニル]−3−メチルウレア(VII−1)、
1−[4−(N−2−メトキシベンゾイルスルファモイル)フェニル]−3,3−ジメチルウレア(VII−2)、
1−[4−(N−4,5−ジメチルベンゾイルスルファモイル)フェニル]−3−メチルウレア(VII−3)および
1−[4−(N−ナフトイルスルファモイル)フェニル]−3,3−ジメチルウレア(VII−4)。
【0055】
同様に好ましい化合物は、式VIII−1〜VIII−4:
【化11】

のものであり、同様に、化合物VIII−3(4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド)は、非生物的ストレス因子に対する植物の耐性を向上させる薬剤として使用するのに非常に特に好ましい。
【0056】
非生物的ストレス因子に対する植物の耐性を向上させる薬剤として使用するのに特に好ましい化合物は、式I−1(メフェンピル−ジエチル)、I−9(イソキサジフェン−エチル)、II−1(クロキントセット−メキシル)、b−11(フェンクロリム)、b−14(ダイムロン)およびVIII−3(4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミドの化合物からなる薬害軽減剤として公知の化合物の群から選択されるものであり、化合物I−1およびVIII−3が非常に特に好ましい。
【0057】
特定の状況下で、薬害軽減剤としてすでに公知である上記で特定/記載された化合物は、遺伝子組み換えされた植物にすでに利用されている。
【0058】
遺伝子組み換え植物(トランスジェニック植物ともいう)は、一般に、特別に有利な特性、例えば、特定の農薬、特に特定の除草剤に対する耐性、植物病害または植物病害の原因因子(例えば、特定の昆虫または真菌、細菌もしくはウイルスのような微生物)に対する耐性によって識別される。他の特別な特性は、例えば、収穫物質の量、質、貯蔵安定性、組成および特定成分に関する。従って、澱粉含有量が増加されるか、または澱粉質が改変されたトランスジェニック植物、または収穫物質が異なる脂肪酸組成を有するものが公知である。
【0059】
有用な植物および観賞用植物の経済的に重要なトランスジェニック農作物に、例えば、小麦、オオムギ、ライムギ、エンバク、サトウモロコシならびにキビ、コメおよびトウモロコシのような穀類、または甜菜、綿、大豆、菜種、ジャガイモ、トマト、エンドウ豆および他の野菜の農作物に、特に好ましくは、トウモロコシ、小麦、オオムギ、ライムギ、エンバク、コメ、菜種、甜菜および大豆の農作物に、非常に特に好ましくは、トウモロコシ、小麦、コメ、菜種、甜菜および大豆の農作物に、薬害軽減剤として公知である特定/記載された化合物またはそれらの化合物の塩を使用することが好ましい。
【0060】
さらに、トランスジェニック植物をまた、DNAマイクロアレイを用いて同定された物質(例えば、非生物的ストレス因子に対する耐性を組み換え方法の結果としてすでに向上し、内生的にエンコードした耐性および外来的に付与された耐性向上効果の相乗効果が観察された、薬害軽減剤としてすでに公知である分子)で処理し得る。
【0061】
現存する植物と比較して改変された特性を有する新規な植物を生成する従来法は、例えば、従来の育種方法および突然変異の発生である。別の方法として、改変された特性を有する新規な植物を、組み換え方法を用いて生成することができる(例えば、EP−A−0221044、EP−A−0131624を参照のこと)。以下に複数の場合が記載されている:例えば、
−植物中で合成される澱粉を改変するための、農作物植物の組み換え改変(例えば、WO 92/11367、WO 92/14827、WO 91/19806)、
−グルホシネート型(例えば、EP−A−0242236、EP−A−242246を参照のこと)またはグリホザート型(WO 92/00377)またはスルホニル尿素型(EP−A−0257993、US−A−5013659)の特定の除草剤に耐性であるトランスジェニック農作物植物、
−植物に特定の害毒に対する耐性を与えるバシラス・チュリンジエンシス(Bacillus thuringiensis)毒素(Bt毒素)を生成する能力を有するトランスジェニック農作物植物(例えば、綿)(EP−A−0142 924、EP−A−0193259)、
−改変された脂肪酸組成を有するトランスジェニック農作物植物(WO 91/13972)。
【0062】
それにより改変された特性を有する新規なトランスジェニック植物が生成され得る多数の分子生物学的技術が、おおむね公知である;例えば、Sambrook et al.,1989,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,第2編,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;またはWinnacker「Gene und Klone」,VCH Weinheim 第2編,1996またはChristou,「Trends in Plant Science」1(1996)423−431を参照のこと)。
【0063】
このような組み換え操作を行うために、DNA配列の組み換えにより突然変異誘発または配列改変を可能にするプラスミド中に核酸分子を導入し得る。上記の標準的な方法を用いて、例えば塩基置換するか、部分配列を除去するか、または天然もしくは合成配列を付加することが可能である。DNA断片を相互に繋ぐために、これらの断片にアダプターまたはリンカーを結合し得る。
【0064】
低下した遺伝子産物活性を有する植物細胞の生成は、例えば、少なくとも1つの適切なアンチセンスRNA、共抑制効果(cosuppression effect)を達成するためのセンスRNAを発現させることにより、または上記の遺伝子産物の転写物を特異的に切断する少なくとも1つの適切に構築されたリボザイムを発現させることにより達成し得る。
【0065】
この目的のために、存在する任意のフランキング配列を含む遺伝子産物の全体コード配列を含むDNA分子、またはコード配列の一部のみを含むDNA分子(これらの部分は細胞中でアンチセンス効果を引き起こすのに充分に長いことが必要である)を初めに使用することが可能である。遺伝子産物のコード配列と高度の相同性を有するが完全に同一ではないDNA配列を使用することも可能である。
【0066】
植物中で核酸分子を発現させる場合、合成されたタンパク質を植物細胞の任意の区画中に局在化させることができる。しかし、特定の区画中の局在化を達成するために、例えば、特定の区画中の局在化を保証するDNA配列とコード領域とを結合させることが可能である。このような配列は当業者に公知である(例えば、Braun et al.,EMBO J.11(1992),3219−3227;Wolter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85(1988),846−850;Sonnewald et al.,Plant J.1(1991),95−106を参照のこと)。
【0067】
公知の技術を用いてトランスジェニック植物細胞を再生させ、無傷植物を得ることができる。トランスジェニック植物は、原則として任意の植物種の植物、すなわち単子葉植物および双子葉植物の両方の形態をとることができる。
【0068】
従って、同種(=自然)遺伝子もしくは遺伝子配列の過剰発現、抑制または阻害によるか、または異種(=外来)遺伝子もしくは遺伝子配列の発現により改変された特性を有するトランスジェニック植物が得られる。
【0069】
好ましくは、DNAマイクロアレイを用いて同定した分子または薬害軽減剤として公知の分子が、スルホニル尿素、グルホシネート−アンモニウムまたはグリホザート−イソプロピルアンモニウムおよび類似の有効成分の群からの除草剤に耐性であり、そして/または組み換え改変により、非生物的ストレス因子に対する内在性耐性を有するトランスジェニック農作物に利用され得る。
【0070】
本発明に従う有効成分をトラスジェニック農作物に施用する場合、他の農作物において観察され得る有害植物に対する効果に加えて、問題となるトランスジェニック農作物への施用に特異的な効果;例えば、変更または特異的に拡大された防除され得る雑草スペクトル、施用に使用され得る変更された施用量、トランスジェニック農作物が耐性である除草剤との良好な結合能力およびトランスジェニック農作物植物の成長および収率に対する影響がしばしば観察される。
【0071】
従って、本発明はまた、トランスジェニック農作物植物の非生物的ストレス因子に対する耐性を向上させるため、好ましくは収穫量を増加させる目的でのDNAマイクロアレイを用いて同定した化合物、または薬害軽減剤としてすでに公知である化合物に使用に関する。
【0072】
本発明は、植物の非生物的ストレスに対する耐性を向上させる化合物を見出す方法に関し、例えば、シトクロムオキシダーゼP450のようなシトクロムオキシダーゼ、糖転移酵素、ウリカーゼII(E.C.17.3.3)のようなウリカーゼ、ペプチダーゼ、種々の膜タンパク質、アミドヒドロラーゼおよび種々の一般的なストレスタンパク質の群からのタンパク質をコードする遺伝子のような個々のまたはそれ以上の植物内在性遺伝子の転写または発現の増加が、誘発の証拠としてみなされる。
【0073】
本発明は、特に、植物内在性ストレス耐性酵素をコードする遺伝子の転写を誘導する化合物を見出す方法に関し、本方法は、以下:
a)1種またはそれ以上の非生物的ストレス因子に試験植物を暴露させ、
b)粉衣された種子材料の形態にするか、特定の発育段階で噴霧するか、または根から摂取させることによって、さらに試験化合物と接触させること以外は、a)の試験植物と同一の条件下に対照植物を置き、
c)試験植物および対照植物からRNAを抽出し、
d)該RNAを直接的に放射性標識もしくはコールドラベル(cold label)で標識するか、または該RNAを対応するcDNA中に酵素的に転写されると時に放射性標識もしくはコールドラベルで標識するか、または得られた未標識のcDNAを対応する放射性標識されたもしくはコールドラベルされたcRNA中に酵素的に転写し、
e)植物DNA配列を含むDNAマイクロアレイを、工程d)で得られた物質とハイブリダイズさせ、
f)a)およびb)で試験した植物と比較することにより異なるストレスタンパク質を発現する遺伝子の発現プロファイルを作成し、
g)f)で測定した発現の差違を定量的に測定し、そして
h)最終的に分類するためにg)で割り当てられた発現プロファイルのクラスター解析を行うこと、を包含する。
【0074】
上記の工程d)の場合、得られたcDNAのcRNAへの酵素的転写は、それによりハイブリダイゼーションサンプルのさらなる増幅が達成され得るので、好ましい製造工程として考慮されるべきである。同様に、コールドヌクレオチド(cold nucleotide)による標識が好ましく、ビオチン化されたUTPおよび/またはCTPによる標識が特に好ましく、フルオロフォアとしてのストレプトアビジン−フィコエリトリンのビオチン化cRNAへの結合によるハイブリダイゼーション反応後に、検出が行われる。測定された発現の差違の定量化のための基礎として役割を果たす特異的なフィコエリトリン蛍光の検出は、ハイブリダイゼーション工程後にレーザースキャナーを用いて行われる。
【0075】
本発明は、好ましくは、上記の手順a)〜h)が維持された工程に関し、熱ストレスの場合の向上が意図される場合に、シトクロムオキシダーゼP450のようなシトクロムオキシダーゼ、糖転移酵素、ウリカーゼII(E.C.17.3.3)のようなウリカーゼ、ペプチダーゼ、種々の膜タンパク質、アミドヒドロラーゼを発現に関する遺伝子が熱ストレスを加えた植物または熱ストレスを加えていない植物の場合について比較され、好ましくは、「N−カルバミル−L−アミノ酸アミドヒドロラーゼ」(Zm.11840.1.A1_at)、「セリンカルボキシペプチダーゼ」(Zm.18994.2.A1_a_at)、ウリカーゼ II(E.C.1.7.3.3)および糖転移酵素(Zm.12587.1.S1_s_at)を発現に関する遺伝子が比較され、非常に特に好ましくは、「N−カルバミル−L−アミノ酸アミドヒドロラーゼ」(Zm.11840.1.A1_at)および「セリンカルボキシペプチダーゼ」(Zm.18994.2.A1_a_at)(アフィメトリックス社(Affymetrix Inc.,3380 Central Expressway,Santa Clara,CA,USA)から提供されたトウモロコシゲノム配列に対するサイン)を発現に関する遺伝子が比較され、そして処理をした際の熱ストレスを加えた対照植物と比較した遺伝子発現は、例えば、1.5倍またはそれ以上、好ましくは1.5〜30倍、好ましくは1.5〜20倍、特に好ましくは1.5〜10倍、非常に特に好ましくは1.5〜5倍増加し、ここで個々の遺伝子の改変された発現プロファイルの増加は、互いに独立して、上記の種々の範囲内であり得る。
【0076】
本発明はまた、好ましくは、上記の手順a)〜h)が維持される工程に関し、干ばつストレスの場合の向上が意図される場合に、例えば、デハイドリンのような後期胚形成に蓄積するタンパク質、一般的なストレスタンパク質(Zm.818.1.A1_at)、非共生ヘモグロビン(non−symbiotic hemoglobin)(Zm.485.1.A1_at)、「Zm.818.2.A1_a_at」としてアドレスされるタンパク質(アフィメトリックス社(Affymetrix Inc.,3380 Central Expressway,Santa Clara,CA,USA)から提供されるトウモロコシゲノム配列)および「Zm.18682.1.A1_s_at」としてアドレスされるタンパク質(アフィメトリックス社(Affymetrix Inc.,3380 Central Expressway, Santa Clara,CA,USA)から提供されるトウモロコシゲノム配列)を発現に関する遺伝子が、干ばつストレスを加えた植物または干ばつストレスを加えていない植物の場合について比較され、好ましくは、一般的なストレスタンパク質(Zm.818.1.A1_at)、非共生ヘモグロビン(Zm.485.1.A1_at)、「Zm.818.2.A1_a_at」としてアドレスされるタンパク質(アフィメトリックス社(Affymetrix Inc.,3380 Central Expressway,Santa Clara,CA,USA)から提供されるトウモロコシゲノム配列に対するサイン)および「Zm.18682.1.A1_s_at」としてアドレスされるタンパク質(アフィメトリックス社(Affymetrix Inc.,3380 Central Expressway,Santa Clara,CA,USA)から提供されるトウモロコシゲノム配列)を発現に関する遺伝子が比較され、そして処理の際、干ばつストレスを加えた対照植物と比較して遺伝子発現は、例えば、1.5倍またはそれ以上、好ましくは1.5〜30倍、好ましくは1.5〜20倍、特に好ましくは1.5〜10倍、非常に特に好ましくは1.5〜8倍増加し、ここで個々の遺伝子の改変された発現プロファイルの増加は、互いに独立して、上記の種々の範囲内であり得る。
【0077】
さらに、本発明は、植物からの遺伝情報、好ましくは有用な植物からの遺伝情報、特に好ましくは、例えば、トウモロコシ、小麦、オオムギ、ライムギ、エンバク、コメおよび大豆のような穀類、好ましくは、トウモロコシ、小麦、オオムギ、ライムギ、コメおよび大豆、特に好ましくは、オオムギ、トウモロコシ、小麦、コメおよび大豆、非常に特に好ましくは、トウモロコシ、小麦および大豆のような有用植物からの遺伝情報に基づいて、改変された遺伝子発現パターンを見出すために使用される、特定のDNAマイクロアレイの使用に関する。ここで、試験化合物で処理した植物における、異なるストレスタンパク質の遺伝子の遺伝子パターンの相対的な変化が、その他は同一のストレス条件下におかれた未処理の対照植物と比較される。
【0078】
さらに、本発明は、農作物植物の非生物的ストレス耐性に対して好ましい効果を有する物質を見出すための、特異的なレポーター遺伝子(例えば、GUS、GFP、ルシフェラーゼなど)と関連して記載される指標遺伝子(indicator gene)のプロモーターの使用に関する。ここで、上記プロモーター/レポーター遺伝子構築物を含むトランスジェニック試験植物が生成される。上記の機構により植物の非生物的ストレス耐性を向上させる有効成分が、レポーター遺伝子の発現を誘導し、そして比色アッセイ、蛍光(fluorimetric)アッセイまたは他の適切なアッセイを用いて同定され得る。
【0079】
さらに、本発明は、トランスジェニック農作物植物の非生物的ストレス耐性を向上させるための、記載されら指標遺伝子の使用に関する。ここで、遺伝子は、遺伝子は、所望の強度および特異性を有する適切なプロモーターと融合し、そして構築物は、単子葉農作物植物または双子葉農作物植物に転換される。得られたトランスジェニック植物は、例えば、寒冷、熱、干ばつなどの非生物的ストレスに対する向上した耐性によって識別される。
【0080】
さらに、本発明は、有用な植物のストレス耐性を向上させるための有効成分としての、遺伝子の発現プロファイルを考慮に入れたDNAマイクロアレイによって同定された化合物および/または薬害軽減剤としてすでに公知の化合物、および例えば、この植物が作用する非生物的ストレス因子(例えば、温度(寒冷、霜または熱)、水(乾燥または干ばつ)または化学的負荷(鉱物塩の不足または過剰、重金属、ガス状の有毒物質))のような非生物的ストレス条件において、例えば、熱ストレスの場合、シトクロムオキシダーゼP450のようなシトクロムオキシダーゼ、糖転移酵素、ウリカーゼII(E.C.17.3.3)のようなウリカーゼ、ペプチダーゼ、種々の膜タンパク質、アミドヒドロラーゼおよび/または種々のストレスタンパク質に対するような植物内在性防御機構の単一遺伝子または複数の遺伝子に対するそれらの誘起効果に関して、好ましい効果すなわち、発現増加効果を有し、そして/または例えば、干ばつストレスの場合、一般的なストレスタンパク質、非共生ヘモグロビン(Zm.485.1.A1_at)、「Zm.818.2.A1_a_at」としてアドレスされるタンパク質(アフィメトリックス社(Affymetrix Inc.,3380 Central Expressway,Santa Clara,CA,USA)から提供されるトウモロコシゲノム配列)および「Zm.18682.1.A1_s_at」としてアドレスされるタンパク質(アフィメトリックス社(Affymetrix Inc.,3380 Central Expressway,Santa Clara,CA,USA)から提供されるトウモロコシゲノム配列に従うサイン)の単一遺伝子または複数の遺伝子に対するそれらの誘起効果に関して、好ましい効果、すなわち、発現増加効果を有する化合物の使用に関する。
【0081】
本発明はまた、トウモロコシ、小麦、オオムギ、ライムギ、エンバク、コメおよび大豆のような穀類、好ましくはトウモロコシ、小麦、オオムギ、ライムギ、コメおよび大豆、特に好ましくは、トウモロコシ、小麦、コメおよび大豆、非常に特に好ましくは、トウモロコシ、小麦および大豆のような種々の農作物植物の非生物的ストレス因子に対する耐性を向上させるための、DNAマイクロアレイによって同定された物質および薬害軽減剤としてすでに公知である分子の使用に関する。
【0082】
さらに、本発明はまた、収穫量を増加させるため、植生期間を延長させるため、早期の播種期日を可能にするため、品質を向上させるため、または他のより少ない必要不可欠な近交系(vital inbred line)を用いて品種改良に使用するための、植物において、直接または間接的に、例えば、シグナル伝達鎖を介して、例えば、温度(例えば、寒冷、霜または熱)、水(例えば、乾燥または干ばつまたは無酸素化)または化学的負荷(例えば、鉱塩の不足または過剰、重鉱物、ガス状の有毒物質)のような非生物的ストレス因子に対する耐性の向上を導く、遺伝子の発現プロファイルを考慮に入れたDNAマイクロアレイによって同定された化合物および/または薬害軽減剤としてすでに公知の化合物の使用に関する。
【0083】
さらに、本発明は、有用な農作物植物の収率を増加させる方法、植生期間を延長させる方法、早期の播種期日を可能にする方法、品質を向上させる方法、または他のより少ない必要不可欠な近交系を用いて品種改良に使用する方法に関し、本方法は、有用な植物を、種子粉衣によって、葉面散布によって、または細胞施用(cell application)によって、1種またはそれ以上のDNAマイクロアレイによって同定された化合物および/または薬害軽減剤としてすでに公知である化合物で処理することを包含する。
【0084】
薬害軽減剤として公知であるものとしての使用が、農作物保護においてすでに公知である化合物が本明細書中で好ましい、例えば、式I−1(メフェンピル−ジエチル)、I−9(イソキサジフェン−エチル)、II−1(クロキントセット−メキシル)、b−11(フェンクロリム)、b−14(ダイムロン)、VIII−3(4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド)、非常に特に好ましくは、I−1およびVIII−3(4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド)の化合物からなる薬害軽減剤として公知の化合物群。
【0085】
単独または組み合わせでの上記の化合物の施用によって、例えば、高収率で現れる有用な植物を、非生物的ストレス因子の影響に対して効果的に保護し得る。
【0086】
さらに、本発明はまた、遺伝子の発現プロファイルを考慮にいれたDNAマイクロアレイによって同定された化合物および/または薬害軽減剤としてすでに公知である化合物の単独施用または組み合わせ施用によって、非生物的ストレス因子に対する有用な農作物植物の耐性を向上させる方法に関する。
【0087】
以下の実施例は、本発明を詳細に記載する。
【0088】
実施例1
遺伝子の発現プロファイリング(GEP)による、特定の干ばつストレス条件に暴露された植物に対する薬害軽減剤の活性試験:
非生物的ストレス因子=干ばつストレス
トウモロコシ種子cv.Lorenzoを、化合物4−シクロプロピルアミノ−カルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(=VIII−3)で粉衣した。この目的を達成するために、種子(10g)を穏やかに撹拌しながら塩化メチレン(2ml)中に溶解した有効成分(20mg)と共に、溶媒がエバポレートするまで(約30分間)インキュベートした。対照群の種子は、溶媒でのみ粉衣した。その後、処理した種子をたい肥を含むポット(直径:10cm、各場合において、1ポットあたり10粒の種子)に置き、そしてトウモロコシ苗を、制御された環境チャンバー中、定められた照明、湿気、および温度条件[白色光、長日(16時間明、8時間暗)、70% 大気湿度、24℃]の下で10日間育てた。各場合において、対照群および干ばつストレス実験について、2×10ポットを使用した。植物を育てている間、下方から2日毎に20分間、トレイ中の水レベルを上昇させることによって、植物に給水した。10日後、種子が発芽し、トウモロコシ植物を干ばつストレスに暴露した。この目的を達成するために、対照群1の植物(有効成分で粉衣されていない)および試験群の植物(有効成分で粉衣されている)を、上記のように7日毎にのみ給水した。対照群2の植物(有効成分で粉衣されていない)および試験群2の植物(有効成分で粉衣されている)の場合、通常の給水レジメンを繰り返した(reclaim)。干ばつストレス条件の3週間後、実験を以下のように評価した。気生植物部分を切り取り、そして50℃で一晩乾燥させた。次の日に、1ポットあたりの葉状生物量を[g](乾物)で測定した。
【0089】
いずれの場合にも(in each cae)、植物群の10ポットにわたるデータを平均した。表1に示される数値は、対照群2(有効成分で粉衣されていない、通常の給水レジメン)で得られたデータと比較した相対値[%]である。
【0090】
【表1】

【0091】
ストレスのない条件では、平均乾物は、未粉衣種子からの植物および粉衣種子からの植物で同じである(対照群2、試験群2)。
【0092】
平均して、化合物VIII−3(=4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド)で粉衣された群からの植物は、対照群からの植物よりもコンパクトな習性を示したが、しかし、乾物には効果がなかった。しかし、干ばつ条件下、有効成分粉衣植物の平均葉状生物量(乾物)は、未粉衣の対照群よりも著しく増加した(対照群1、試験群1)。
【0093】
実施例2
非生物的ストレス=熱ストレス
トウモロコシ種子のcv.Lorenzoを、実施例1のように化合物4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(=VIII−3)で粉衣するか、または有効成分を含まない溶媒でのみ処理した。実施例1に記載されるのと同様にして、定義された条件下、制御された環境チャンバー中で苗を10日間育てた。トウモロコシ植物を含む2×10ポットを熱ストレス実験に使用した。対照群は未粉衣植物(溶媒)からなり、試験群は、有効成分で粉衣されていた植物からなっていた。熱ストレス条件を適用するために、両方の植物群を、45℃、白色光、長日(16時間明、8時間暗)および70% 大気湿度の制御された環境キャビネット中で2日間置いた。高温の結果としての乾燥を避けるために、植物を下方から1日に1回、トレイの水レベルを上昇させることによって、給水した。熱ストレス後、特に対照群において、多くの植物の芽が衰弱し、そしてその葉は地面に広がっているのが観察された。
【0094】
実験は、以下の基準を考慮して、定量的に評価した。熱処理後、衰弱した植物を数え、そしてポットあたりの結果として評価した:
【化12】

【0095】
その後、標準条件下、全ての植物を2週間育てた。次いで、個々の植物の成長丈を測定し、そしてポットあたりの植物の生存率を測定した:
【化13】

【0096】
実験評価の結果を表2に集めた。未粉衣対照植物は、熱ストレスによって激しく損傷を受けた。特に、多くの植物において、茎葉部の衰弱および乏しい生存率が目立った。有効成分で粉衣された試験植物は、特に、かなり良好な「立った状態(standing)」によって区別された。これらの植物でさえ、最終スコアにより激しい熱ストレスによって引き起こされる損傷が明らかとなるが、それらの生存率は、対照群よりも著しく高かった。
【0097】
【表2】

【0098】
実施例3
非生物的ストレス因子=寒冷ストレス(温室)
トウモロコシ種子のcv.Lorenzoを、1ポットあたり10粒の種子の割合でたい肥を含む10cmポットに種まきした。全ての実験群は、各場合において、4ポットからなる。試験群1および2の蒔いた種子に、それぞれ、50および100[g a.i./ha]の化合物4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(=VIII−3)を発生前に噴霧した。対照群の種子は未処理のままであった。植物を制御された環境チャンバー中で、制御された条件下[白色光、(長日:16時間明、8時間暗)、日中温度22℃、夜間温度14℃、60% 大気湿度]で育てた。発芽後、植物が約1cmの長さに達すると、各群の2ポットを異なる制御された環境チャンバー中、−2℃の寒冷ストレス条件下で6時間インキュベートした。その後、これらの植物を最初の制御された環境チャンバー中の別の場所に戻した。標準条件下でさらに24時間後、実験を評価した。寒冷ストレスが未処理の対照群の苗の葉頂にクロロシス(chloroses)を引き起こしたことが観察された。有効成分で処理した植物において、これらの兆候は、存在しないか、または非常に少ないと判断された。寒冷ストレスを加えられずに、専ら標準条件下に維持された試験群および対照群からの植物は、少しの損傷兆候も示さなかった。実験を定量的に評価するために、葉頂にクロロシスを有する植物を数えた。試験群および寒冷ストレス処理あたりの植物の全量は20であり、各場合において、2ポットに配置した。実験評価の結果を表3に集める。
【0099】
【表3】

【0100】
有効成分VIII−3(=4シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド)での処理は、寒冷ストレスの結果である損傷兆候を著しく減少させることができ、またより高い投与量により、これらの兆候の発生を完全に防ぐことをこの結果が示す。
【0101】
実施例4
非生物的ストレス因子=寒冷ストレス(野外)
トウモロコシ種子(デントコーン)を1gの種子あたり0.003mgおよび0.03mgの化合物4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(=VIII−3)で粉衣し、そして試験区画中(各試験区画は34m2の大きさである)で育てた。1つの対照植物は、未処理の種子を含む。種子が発芽した約8日後、苗が1葉期の状態となり、そして以下の温度条件に5日間暴露させた:
最大 : 最低
1日目:16.1℃ 7.2℃
2日目:17.8℃ 2.7℃
3日目:16.7℃ 0.6℃
4日目:16.7℃ 1.1℃
5日目:22.8℃ 12.2℃
【0102】
この寒冷期間後、試験区画をスコア付けした。この目的のために、全ての植物を個々に評価し、そして全葉面積に基づいて少なくとも20%の寒冷兆候(焼け(burn)および/またはクロロシス)を有する植物を、損傷を受けたとみなした。
【0103】
結果を表4に集める。有効成分で粉衣されていない対照区画において、全ての植物(100%)が上記の寒冷兆候を示した。有効成分で粉衣された試験区画において、寒冷損傷は著しく減少した。
【0104】
ここで、約12%の植物のみが損傷兆候を示した。表に示される通り、最大の霜保護効果が、粉衣のために使用された有効成分の量の範囲で得られた。
【0105】
【表4】

【0106】
実施例5
遺伝子の発現プロファイリング(GEP)によって測定される、非生物的ストレス条件下、試験物質によって誘導される遺伝子の特徴付け:
トウモロコシ種子のcv.Lorenzoを、実施例1に記載されるように、化合物VIII−3(=4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド)または溶媒で粉衣した。植物を制御された環境チャンバー中で10日間育てた(条件:実施例1を参照のこと)。その後、植物を以下のストレス条件下に暴露させた:
(1)熱ストレス:45℃で6時間
(2)干ばつストレス:24℃で7日間給水なし
【0107】
実施例1に記載の標準条件下(温度、給水)、特定の実験群の対照植物を維持した。ストレス処理後、ストレスを加えた植物および未処理対照植物の葉を収穫し、液体窒素中でショック冷凍(shock−frozen)し、処理するまで−80℃で保存した。全ての実験を反復して行った(各場合において、2ポット)。
【0108】
DNAチップハイブリダイゼーションのための標識RNAプローブを、Affymetrix(Affymetrix Inc.,3380 Central Expressway,Santa Clara,CA,USA)からのプロトコル(発現解析、技術マニュアル)中に記載されるように調製した。初めに、各場合において、全RNAを収穫した葉(500mg)から単離した。各場合において、全RNA(10μg)をcDNAの第一鎖および第二鎖合成に使用した。このcDNAを、T7ポリメラーゼを用いて増幅し、そして同時にビオチン−UTPを用いて標識した。各場合において、このビオチン化cDNA(20μg)をAffymetrixからのトウモロコシゲノム配列のハイブリダイゼーションに利用した。このDNAマイクロアレイは、全体で13339遺伝子を表すDNA配列を含む。その後、DNAマイクロアレイをAffymetrix Fluidics Station中で洗浄し、ストレプトアビジン/フィコエリトリン(Molecular Probes、P/N S−866)で染色し、そして適当なAgilentレーザースキャナー(Agilent Gene Array Scanner)でスキャンした。得られた蛍光データをAffymetrix’s Microarray Suite 5ソフトウエアで解析した。品質保証を行った後、全てのDNAチップ解析をデータベースに保存した。相対的な発現値(誘発係数、抑制係数)を決定するために、それぞれのストレス実験からの遺伝子の絶対発現値を、Affymetrixソフトウエアによる所定のスコアリング関数に基づいて、それぞれの対照実験(すなわち、非生物的ストレスを加えず、溶媒処理のみ)の値と比較した。中央値を計算することによって、得られた1遺伝子あたり4つの発現値を平均した。これらの中央値を誘発係数として結果の表に示す。Genedata(Genedata,Maulbeerstr.46,CH−4016 Basel,Switzerland)製の「genedata expressionist」ソフトウエアを使用して、種々の実験からの発現プロファイルの類似性比較およびクラスター解析を行った。
【0109】
発現プロファイルの解析は、非生物的ストレスに関連してのみ試験物質によって誘導されるが、試験物質またはストレス単独では誘導されない、遺伝子について特に検索した。このような遺伝子は、公知の薬害軽減の効果を上回る物質のさらなる抗ストレス効果についての指標として考慮され得る。解析の結果は以下の表に示す。記載される指標遺伝子の誘発パターンにより、農作物植物の非生物的ストレス耐性を向上させるための有効成分の標的化された発見が可能となる。
【0110】
a)熱ストレス条件下、すなわち、発芽の7日後、試験されたトウモロコシ植物(種子1gあたり2mgの4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(a.i.)で粉衣した)を、6時間45℃の温度に暴露させた。
【0111】
誘導された遺伝子群の総覧は、表5に示される以下のパターンを明らかにした:
【表5】

【0112】
それぞれのサンプルセット番号は以下に対応する:
Zm.11840.1.A1_at:推定のN−カルバミル−L−アミノ酸アミドヒドロラーゼ
Zm.4274.1.S1_at:シトクロムP450
Zm.3040.1.S1_at:ウリカーゼ II(E.C.1.7.3.3);根粒特異的ウリカーゼ(nodule specific uricase)
Zm12587.1.S1.s_at:糖転移酵素
Zm18994.2.A1_a_at:推定のセリン転移酵素
Zm.13498.1.S1_at:膜タンパク質
条件A:熱ストレス(6時間、45℃)
条件B:4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(VIII−3)で種子粉衣/熱ストレスなし
条件C:4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(VIII−3)で種子粉衣+熱ストレス(6時間、45℃)。
【0113】
解析された遺伝子活性のわずかな基本的な誘発を無視すると、全ての場合において、遺伝子発現の明白な増加が観察され、そして本明細書に記載される遺伝子の場合において、1.5〜2.35の範囲である(条件C下での発現/条件A下での発現)。試験化合物VIII−3をそのまま、すなわち、熱ストレスを加えずに試験した場合、測定された発現レベルは熱ストレスによって誘導される範囲内であったか、熱ストレスによって誘導された範囲を下回ったか、やや上回った。
【0114】
表5から導かれ、得られた発現値によって直接示される誘発パターンは、化合物4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(=VIII−3)の作用によって特有の誘発を示し、推定のN−カルバミル−L−アミノ酸アミドヒドロラーゼ[Zm.11840.1.A1_at]および推定のセリンカルボキシペプチダーゼ[Zm18994.2.A1−at]に対する効果が最も顕著であった。
【0115】
b)乾燥ストレス条件下、すなわち、試験されたトウモロコシ植物(種子1 gあたり2mgの4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(a.i.)で粉衣した)を、発芽の7日後、7時間24℃の温度に暴露させた。
【0116】
誘導された遺伝子群の総覧は、表6に示される以下のパターンを明らかにした:
【表6】

【0117】
それぞれのサンプルセット番号は以下に対応する:
Zm.818.1.A1_at 一般的なストレスタンパク質
Zm.3633.4.A1_at 外傷誘発タンパク質(wound induced protein)(フラグメント)
Zm.18273.1.S1_at 調節タンパク質様
Zm.13229.1.S1_at NBS−LRR型耐病性タンパク質O2(フラグメント)
Zm.12035.1.A1_at AT3G10120に類似
Zm.485.1.A1_at 非共生ヘモグロビン(HBT)(ZEAMP GLB1)
Zm.818.2.A1_at 発現タンパク質
Zm.10097.1.A1_at 発現タンパク質
Zm.18682.1.A1_at 未知のタンパク質
条件A:干ばつストレス(7日、24℃)
条件B:4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(VIII−3)で種子粉衣/干ばつストレスなし
条件C:4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミド(VIII−3)で種子粉衣+干ばつストレス(7日、24℃)。
【0118】
解析された遺伝子活性のわずかな基本的な誘発を無視すると、全ての場合において、遺伝子発現の明白な増加が観察され、そして本明細書に記載される遺伝子の場合において、1.75〜8.0の範囲であった(条件C下での発現/条件A下での発現)。試験化合物VIII−3をそのまま、すなわち、熱ストレスを加えずに試験した場合、測定された発現レベルは乾燥ストレスによって誘導される範囲内であったか、ある場合には、未処理植物の発現でさえも下回った(1.0未満の値)。
【0119】
表6から導かれ、得られた発現値によって直接示される誘発パターンは、化合物4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミドの存在(preence)下、特有の誘発を示し、一般的なストレスタンパク質[Zm.818.1.A1_at]および非共生ヘモグロビン(HBT)(ZEAMP GLB1)[Zm.485.1.A1_at]に対する効果が最も顕著であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物の非生物的ストレス因子に対する耐性を向上させる化合物を見出す方法であって、個々の植物内在性遺伝子または複数の植物内在性遺伝子の転写または発現の増加を誘導の証拠とみなす方法。
【請求項2】
植物内在性遺伝子が、シトクロムオキシダーゼ、糖転移酵素、ウリカーゼ、ペプチダーゼ、種々の膜タンパク質、アミドヒドロラーゼ、後期胚発生に蓄積するタンパク質および種々の一般的ストレスタンパク質の群からのタンパク質をコードする遺伝子の群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)1種またはそれ以上の非生物的ストレス因子に試験植物を暴露させ、
b)粉衣された種子材料の形態にするか、特定の発育段階で噴霧するか、または根から摂取させることによってさらに試験化合物と接触させること以外は、a)の試験植物と同一の条件下に対照植物を置き、
c)試験植物および対照植物からRNAを抽出し、
d)該RNAを直接的に放射性標識もしくはコールドラベルで標識するか、または該RNAを対応するcDNA中に酵素的に転写されると同時に放射性標識もしくはコールドラベルで標識するか、または得られた未標識のcDNAを対応する放射性標識されたもしくはコールドラベルされたcRNA中に酵素的に転写し、
e)植物DNA配列を含むDNAマイクロアレイを、工程d)で得られた物質とハイブリダイズさせ、
f)a)およびb)で試験した植物と比較することにより異なるストレスタンパク質を発現する遺伝子の発現プロファイルを作成し、
g)f)で測定した発現の差違を定量的に測定し、そして
h)最終的に分類するためにg)で割り当てられた発現プロファイルのクラスター解析を行うこと、
を包含する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
熱ストレス条件下での耐性の向上が意図される場合、熱ストレスを加えた植物および熱ストレスを加えていない植物について、シトクロムオキシダーゼP450のようなシトクロムオキシダーゼ、糖転移酵素、ウリカーゼ、ペプチダーゼ、種々の膜タンパク質、アミドヒドロラーゼの遺伝子発現を比較する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
熱ストレスを加えた植物および熱ストレスを加えていない植物について、N−カルバミル−L−アミノ酸アミドヒドロラーゼ、セリンカルボキシペプチダーゼ、ウリカーゼII(E.C.1.7.3.3)および糖転移酵素の遺伝子発現を比較する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
1種またはそれ以上の上記遺伝子の発現プロファイルが、1.5〜30倍、好ましくは1.5〜20倍、特に好ましくは1.5〜10倍、非常に特に好ましくは1.5〜5倍増加する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
干ばつストレス条件下での耐性の向上が意図される場合、干ばつストレスを加えた植物および干ばつストレスを加えていない植物の、後期胚発生に蓄積するタンパク質、一般的なストレスタンパク質、非共生ヘモグロビン(Zm.485.1.A1_at)、「Zm.818.2.A1_a_at」としてアドレスされたタンパク質(アフィメトリックス社が提供するトウモロコシゲノム配列に従うサイン)および「Zm.18682.1.A1_s_at」としてアドレスされたタンパク質(アフィメトリックス社が提供するトウモロコシゲノム配列に従うサイン)の発現を比較する、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
干ばつストレスを加えた植物および干ばつストレスを加えていない植物の、一般的なストレスタンパク質(Zm.818.1.A1_at)、非共生ヘモグロビン(Zm.485.1.A1_at)、「Zm.818.2.A1_a_at」としてアドレスされたタンパク質(アフィメトリックス社が提供するトウモロコシゲノム配列に従うサイン)および「Zm.18682.1.A1_s_at」としてアドレスされたタンパク質(アフィメトリックス社が提供するトウモロコシゲノム配列に従うサイン)の遺伝子発現を比較する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
1種またはそれ以上の上記の遺伝子の発現プロファイルが、1.5〜30倍、好ましくは1.5〜20倍、特に好ましくは1.5〜10倍、非常に特に1.5〜8倍増加する、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
非生物的ストレス因子に対する耐性を向上させるため、収穫量を増加させるため、植生期間を延長させるため、早期の播種期日を可能にするため、品質を向上させるため、または他のより少ない必要不可欠な近交系を用いて品種改良に使用するための、1種またはそれ以上の請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を用いて同定される化合物および/または薬害軽減剤として既知である化合物の使用。
【請求項11】
メフェンピル−ジエチル、イソキサジフェン−エチル、クロキントセット−メキシル、フェンクロリム、ダイムロンおよび4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミドからなる群から選択される、農作物保護において薬害軽減剤としての使用が既知である、請求項10に記載の化合物の使用。
【請求項12】
メフェンピル−ジエチルおよび4−シクロプロピルアミノカルボニル−N−(2−メトキシベンゾイル)ベンゼンスルホンアミドからなる群から選択される、農作物保護において薬害軽減剤としての使用が既知である、請求項11に記載の化合物の使用。
【請求項13】
農作物植物のトウモロコシ、小麦、オオムギ、ライムギ、エンバク、コメ、大豆、ヒマワリ、菜種および甜菜において、非生物的ストレス因子に対する耐性を向上させるための、請求項10〜12にいずれか1項に記載の化合物の使用。
【請求項14】
1種またはそれ以上の請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって同定された化合物および/または農作物保護において薬害軽減剤として既知の化合物を用いて、種子粉衣、葉面散布または土壌施用によって有用な植物を処理することを包含する有用な農作物植物の収穫量を増加させる方法。
【請求項15】
1種またはそれ以上の請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって同定された化合物および/または農作物保護において薬害軽減剤として既知の化合物を用いて、種子粉衣、葉面散布または土壌施用によって有用な植物を処理することを包含する有用な農作物植物において植生期間を延長させる方法。
【請求項16】
1種またはそれ以上の請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって同定された化合物および/または農作物保護において薬害軽減剤として既知の化合物を用いて、種子粉衣、葉面散布または土壌施用によって有用な植物を処理することを包含する有用な農作物植物において早期の播種期日を可能にする方法。
【請求項17】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法によって同定された1種またはそれ以上の化合物および/または農作物保護において薬害軽減剤として既知の化合物を用いて、種子粉衣、葉面散布または土壌施用によって有用な植物を処理することを包含する有用な農作物植物において品質を向上させる方法。

【公表番号】特表2009−517415(P2009−517415A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542623(P2008−542623)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010796
【国際公開番号】WO2007/062737
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】