説明

非破壊密度計測装置

【課題】放射能廃棄物処理施設に設けられる場合であっても、非破壊で土砂層の密度を正確に計測できる非破壊密度計測装置を提供する。
【解決手段】土砂層(遮蔽壁5)に音波を発信する音波発信器10と、土砂層内を伝播した音波を受信する音波受信器20と、密度を算出する密度算出装置30とを有し、音波発信器10は、振動板12を備えた振動発信駆動部11と、振動板12に固定され土砂層の表面形状に追従して変形可能な振動伝達体15とを備えてなり、音波受信器20は、土砂層の表面に接触する接触板21と、この接触板21に接続され音波の振動を検知する受信部22とを備えてなり、密度算出装置30は、音波の伝播時間を計測して算出する伝播時間算出手段31と、伝播時間に基づいて音波の伝播速度を算出する伝播速度算出手段32と、算出された伝播速度に基づいて土砂層の密度を算出する密度算出手段33とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂層の非破壊密度計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物の処理施設として、坑道内にベントナイトで遮蔽壁となる土砂層を構築し、廃棄体を囲むものがある。ベントナイトによる遮蔽壁は、10cm程度の厚さの複数の層状部を積層して構築される。各層状部は、放射線を遮蔽するのに必要な密度が得られるまで締め固められる。密度を確認するためには、遮蔽壁に穴をあけ、サンプルを採取して密度を実測する。しかし、この方法では、穴の部分が欠陥部分となり放射線の漏洩の虞がある。この穴は後から埋め直しても周りの遮蔽壁と完全に一体化することができず、必要な遮蔽性能を得られない場合もある。また、この方法では、密度を確認できるのは部分的であって、転圧箇所の全面について検査することができない。
【0003】
そのため、遮蔽壁の密度を非破壊で計測することが求められる。従来より被測定物の密度を非破壊で計測する装置としては、ラジオアイソトープを用いたRI方式の計測器があった(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されたRI計では、被転圧面の表面から非破壊で密度と水分量を計測することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−48809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、放射能廃棄物処理施設の遮蔽壁の密度計測は、放射性廃棄物の真横で施工を行わなければならないため、特許文献1のようなガンマ線を検出するRI方式の計測器では、廃棄体の強い放射線の影響を受けて、密度が正確に計測できないといった問題が発生してしまう。
【0006】
そこで、本発明は前記の問題を解決すべく案出されたものであって、放射能廃棄物処理施設に設けられる場合であっても、非破壊で土砂層の密度を正確に計測できる非破壊密度計測装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明は、土砂層の音波の伝播時間を計測し、前記伝播時間に基づいて前記土砂層の密度を算出する非破壊密度計測装置であって、前記土砂層に音波を発信する音波発信器と、前記土砂層内を伝播した音波を受信する音波受信器と、密度を算出する密度算出装置とを有しており、前記音波発信器は、振動板を備えた振動発信駆動部と、前記振動板に固定されるとともに前記土砂層の表面形状に追従して変形可能な振動伝達体とを備えてなり、前記音波受信器は、前記土砂層の表面に接触する接触板と、この接触板に接続され音波の振動を検知する受信部とを備えてなり、前記密度算出装置は、前記音波発信器から前記音波受信器までの音波の伝播時間を計測して算出する伝播時間算出手段と、前記音波発信器から前記音波受信器までの距離と算出された前記伝播時間とから音波の伝播速度を算出する伝播速度算出手段と、算出された前記伝播速度と前記土砂層の弾性率とから前記土砂層の密度を算出する密度算出手段とを備えてなることを特徴とする非破壊密度計測装置である。
【0008】
このような構成によれば、放射線の影響を受けることなく、土砂層を非破壊でその密度を正確に計測することができる。この非破壊密度計測装置は、放射能廃棄物処理施設に設けられる遮蔽壁に限定されることなく、放射線の照射を受けない一般の土砂層であっても適用可能であるのは勿論である。
【0009】
本発明は、前記振動伝達体が、袋状弾性体の内部に非圧縮性液体を充填してなることが好ましい。このような構成によれば、振動伝達体を遮蔽壁の表面に沿って密着させることができるので、遮蔽壁への音波の伝達効率を向上できる。
【0010】
また、前記音波発信器および前記音波受信器の少なくともいずれか一方が複数設けられてもよい。このような構成によれば、一回の計測で複数個所の音波計測が可能となるので、計測時間の短縮を図れるとともに、発信器間または音波受信器間の相対的な伝播時間差を利用した解析も可能となり、より一層正確な密度計測ができる。
【0011】
さらに、前記音波発信器および前記音波受信器が一体化された音波送受信器ユニットを複数備えてもよい。このような構成によれば、一の音波送受信器ユニットと他の音波送受信器ユニット間で、それぞれ音波の発信と受信を行うことができるので、同一エリア(例えば第一の音波送受信器ユニットと第二の音波送受信器ユニット間)を双方向から密度を計測した結果が得られるので、密度データの信頼性向上を図れる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射線の影響を受けることなく、遮蔽壁を非破壊でその密度を正確に計測することができるといった優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る非破壊密度計測装置を示した機能ブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る非破壊密度計測装置の音波発信器を示した概略断面図であって、(a)は遮蔽壁へ接触していない状態を示した図、(b)は遮蔽壁へ接触した状態を示した図である。
【図3】本発明の実施形態に係る非破壊密度計測装置を適用した放射性廃棄物の処理施設を示した斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係る非破壊密度計測装置における音波の伝播状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る非破壊密度計測装置を実施するための一形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図3に示すように、本実施形態に係る非破壊密度計測装置1は、放射性廃棄物処理施設の処分坑道2内に構築される遮蔽壁5,5(特許請求の範囲の「土砂層」に該当する)の密度計測に適用されるものである。遮蔽壁5,5は、複数配列された廃棄体3,3,…の坑道幅方向両側に構築されている。遮蔽壁5は、ベントナイトにて構成されており、処分坑道2の長手方向に沿って延在する。遮蔽壁5は、10cm程度の厚さで層状部を所定高さまで積層して構築される。各層状部は、それぞれ敷き均すごとに締め固められる。非破壊密度計測装置1は、遮蔽壁5を転圧する転圧ローラ50に設けられており、転圧後の遮蔽壁5の密度を計測する。
【0016】
非破壊密度計測装置1は、図1に示すように、遮蔽壁5に音波を発信する音波発信器10と、遮蔽壁5内で伝播された音波を受信する音波受信器20と、密度を算出する密度算出装置30とを有している。
【0017】
音波発信器10は、30Hz〜20kHz程度の可聴周波、可聴周波より低い周波数の低周波、可聴周波より高い周波数の超音波のいずれかを発信するものである。図2に示すように、音波発信器10は、振動発信駆動部11と振動伝達体15と外周筒部材16とを備えてなる。
【0018】
振動発信駆動部11は、スピーカ型の電磁石、セラミック振動子や超磁歪素子などを用いた公知の振動装置により構成されている。振動発信駆動部11は、円柱形状を呈しており、その下端面(軸方向下端面)に振動板12が設けられている。振動発信駆動部11は、密度算出装置30と電気的に接続されている。振動発信駆動部11は、密度算出装置30からの駆動指令信号を受信する指令信号受信手段と、音波を発信したことを伝達する発信信号を密度算出装置30に送信する発信信号送信手段とを備えている。発信信号は、振動発信駆動部11の駆動と同時に送信され、音波の最初の波が発信されたことが伝達される。
【0019】
振動伝達体15は、振動板12の振動を効率よく遮蔽壁5に伝達するためのものである。振動伝達体15は、振動板12に固定されて、振動板12と一体構造となっている。振動伝達体15は、袋状弾性体の内部に非圧縮性液体を充填して構成されている。袋状弾性体は、例えばゴムにて構成されている。袋状弾性体の厚さは、遮蔽壁5に密着して振動を加えられた状態において破損しない範囲で薄いのが好ましい。振動伝達体15は、変形した場合でも、局部的に応力が集中せずに、全体の内部圧が均一な状態である。非圧縮性液体は、例えば油にて構成されている。振動伝達体15の下端面(音波発信方向の前方側の面)は、遮蔽壁5の表面に追従して変形して密着する。
【0020】
振動伝達体15の周囲には、円筒状の外周筒部材16が設けられている。外周筒部材16は、振動発信駆動部11に対して軸方向(音波発信方向)に沿って相対移動可能に取り付けられている。外周筒部材16の下端(音波発信方向の前方側)には、鍔部17が形成されており、この鍔部17が遮蔽壁5の表面に当接する。外周筒部材16は、振動発信駆動部11の端部の外周を覆うように配置されている。外周筒部材16は、音波発信方向に長い長孔(図示せず)を備えており、ガイドピン(図示せず)を介して、振動発信駆動部11に取り付けられている。振動発信駆動部11を下向きにすると、長孔の上端にガイドピンが当接して、外周筒部材16がぶら下がった状態となる(図2の(a)参照)。音波発信器10を下降させて遮蔽壁5の表面に近づけると、外周筒部材16の下端の鍔部17が遮蔽壁5の表面に当接し、その後、振動発信駆動部11のみが外周筒部材16に対して相対移動しながら遮蔽壁5の表面に近づく。そして、振動発信駆動部11の下端面と外周筒部材16の内周面と遮蔽壁5の表面とで囲まれる空間の体積が、振動伝達体15の容積と等しくなったところで、音波発信器10の下降移動を停止する。このとき、振動発信駆動部11の下端面と外周筒部材16の内周面と遮蔽壁5の表面とで囲まれる空間(以下「内部空間」と言う)は、振動伝達体15が充填した状態となり、振動発信駆動部11の下端面の面積と同等の面積で、振動伝達体15が遮蔽壁5の表面に密着する(図2の(b)参照)。なお、音波発信機10の下降移動は、例えば後記する支持アーム51を傾動させる伸縮シリンダ(図示せず)の油圧を作業員がモニタリングしておき、油圧が所定値を超えたときに停止させるとよい。これは、振動伝達体15が内部空間に充填された状態になると、振動発信駆動部11はそれ以上下降しなくなり、伸縮シリンダの油圧が上昇するためである。
【0021】
図1に示すように、音波受信器20は、接触板21と、受信部22とを備えてなる。接触板21は、遮蔽壁5の表面に面接触する円盤状のプレートである。接触板21は、遮蔽壁5との接触面積を一定以上確保することによって、受信性能を高めている。受信部22は、例えば加速度計やマイクなどの公知の機器にて構成されている。加速度計では、音波によって接触板21が振動してその振動の加速度を検知する。マイクでは、音波による接触板21の振動を検知する。受信部22は、密度算出装置30と電気的に接続されており、密度算出装置30へ振動(音波)の検知信号を送信する検知信号送信手段を備えている。検知信号送信手段は、加速度計やマイクが音波を受信したことを電圧変化等によって検知し、その検知信号を電気信号として密度算出装置30へ送信する。検知信号は、受信部22での音波の受信と同時に送信され、音波の最初の波が受信されたことが伝達される。
【0022】
本実施形態では、音波発信器10と音波受信器20は、収容ケース7内に一つずつ収容されて一体化されており、音波送受信器ユニットUを構成している。図3に示すように、音波送受信器ユニットUは、転圧ローラ50の前後に設けられた支持アーム51の先端に固定されている。支持アーム51は、ブーム52を介して転圧ローラ50に傾動可能に設けられている。支持アーム51およびブーム52は、図示しない伸縮シリンダを介して傾動させられる。支持アーム51の先端には、車幅方向に延在する水平枠53が設けられている。図4に示すように、水平枠53の下面には、複数(本実施形態では5つ)の音波送受信器ユニットUa,Ub,Uc,Ud,Ueが直列されている。なお、音波送受信器ユニットUa,Ub,…を区別しない場合は符号に付したアルファベットを省略する。
【0023】
音波の送受信を行うに際しては、第一の音波送受信器ユニットUaの音波発信器10から音波(図4中、実線にて示す)を発信し、その他(第二〜第五)の音波送受信器ユニットUb,Uc,Ud,Ueの音波受信器20,20,…でそれぞれ受信する。その後、第二の音波送受信器ユニットUbの音波発信器10から音波(図4中、破線にて示す)を発信し、その他(第一および第三〜第五)の音波送受信器ユニットUa,Uc,Ud,Ueの音波受信器20,20,…でそれぞれ受信する。さらにその後、第三、第四、第五の音波送受信器ユニットUの音波発信器10から順次音波(図示せず)を発信し、その他の音波送受信器ユニットUの音波受信器20,20,…でそれぞれ受信する。つまり、時間差を持って、各音波送受信器ユニットUの音波発信器10から音波を順次発信し、音波を発信した音波送受信器ユニットUを除く他の音波送受信器ユニットUの音波受信器20,20,…でそれぞれ受信する。
【0024】
密度算出装置30は、伝播時間算出手段31と伝播速度算出手段32と密度算出手段33と表示手段34とデータ記憶部35とを備えてなり、これらが協同することで、各種演算を行う。
【0025】
データ記憶部35は、距離データファイル35aと弾性率データファイル35bと補正データファイル35cと一時記憶ファイル(図示せず)とを備えてなる。距離データファイル35aには、一の音波送受信器ユニットUの音波発信器10と、他の音波送受信器ユニットUの音波受信器20との距離が予め記憶されている。弾性率データファイル35bには、遮蔽壁5に用いられるベントナイトの弾性率が予め記憶されている。補正データファイル35cには、音波が振動伝達体15内を伝播する時間(以下「振動伝達体内伝播時間」という)が予め記憶されている。この振動伝達体内伝播時間は、伝播時間を算出する際の補正データとして利用する。振動伝達体内伝播時間は、音波発信器10を遮蔽壁5の表面へ設置したときの振動板12と遮蔽壁5の表面との距離(振動伝達体15の厚さ)と、振動伝達体15の密度に基づいて予め算出しておくか、或いは予め実測しておく。一時記憶ファイルには、算出された伝播時間、伝播速度や密度などの各種データを一時的に書き込んで、適宜読み出すためのファイルである。
【0026】
伝播時間算出手段31は、音波発信器10から音波受信器(音波を発信した音波送受信器ユニットUを除く他の音波送受信器ユニットUの音波受信器)20までの音波の伝播時間を計測して算出する手段であって、信号受信部と時間計算部とデータ書込部とを有している。信号受信部は、音波発信器10からの音波の発信信号と、音波受信器20からの音波(振動)の検知信号を受信する。時間計算部は、補正データファイル35cから、音波の振動伝達体内伝播時間を読み出すとともに、検知信号を受けた時間から発信信号を受けた時間を減算して、さらに、振動伝達体伝播時間を減算して補正することで、遮蔽壁5内における音波の伝播時間を算出する。なお、以下において「伝播時間」は、遮蔽壁5内における音波の伝播時間を示す。音波の発信ごとに、検知信号は複数の音波受信器20から送信されるので、伝播時間算出手段31では、音波発信器10ごとに各音波受信器20への伝播時間が算出される。データ書込部は、算出された各区間(音波を発信した音波発信器10から音波を受信した音波受信器20)の伝播時間を一時記憶ファイルに書き込む。
【0027】
伝播速度算出手段32は、音波発信器10から音波受信器(音波を発信した音波送受信器ユニットUを除く他の音波送受信器ユニットUの音波受信器)20までの音波の伝播速度を算出する手段であって、データ読出部と速度計算部とデータ書込部とを有している。データ読出部は、一時記憶ファイルから音波の伝播時間を読み出す。速度計算部は、伝播時間算出手段31で算出された伝播時間に対応する音波発信器10と音波受信器20の距離を、距離データファイル35aから読み出して、この距離を伝播時間で除算することで、音波の伝播速度を算出する。伝播速度算出手段32では、音波発信器10ごとに各音波受信器20への伝播速度が算出される。そして、伝播速度算出手段32で、複数算出された伝播速度の平均値(以下「平均伝播速度」という)を算出する。データ書込部は、算出された算出された平均伝播速度を一時記憶ファイルに書き込む。
【0028】
密度算出手段33は、算出された伝播速度と遮蔽壁5の弾性率とから遮蔽壁5の密度を算出する手段であって、データ読出部と密度計算部とデータ書込部とを有している。データ読出部は、一時記憶ファイルから音波の伝播速度を読み出す。密度計算部は、伝播速度算出手段32で算出された平均伝播速度と、弾性率データファイル35bから読み出した遮蔽壁5に用いられるベントナイトの弾性率とに基づいて遮蔽壁5の密度を算出する。これは、物質中の音速(音波の伝播速度)が、その物質の密度に関連する点に着目してこの法則を利用したものであって、具体的には、求められた伝播速度cと弾性率Mを下記の(式1)に代入して遮蔽壁5の密度ρを算出する。
【0029】
c=(M/ρ)0.5・・・(式1)
言い換えれば、密度ρは下記の(式2)によって算出される。
ρ=M/c・・・(式2)
データ書込部は、算出された遮蔽壁5の密度を一時記憶ファイルに書き込む。
【0030】
表示手段34は、ディスプレイなどの表示装置にて構成されており、密度算出手段33で算出された密度を、一時記憶ファイルから読み出して、マップとして遮蔽壁5の表面の測定位置ごとに表示する。表示手段34では、密度を数値として表示する。なお、表示手段34に表示されるのは、密度の数値に限定されるものではなく、例えば密度が予め設定した必要値(必要な遮蔽性を確保できる密度の値)を越えたか越えてないかを表示するようにしてもよいし、或いは、必要値に対する現在密度の数値をパーセント表示するようにしてもよい。
【0031】
次に、前記構成の非破壊密度計測装置1を備えた転圧ローラ50によって、遮蔽壁5を転圧して構築する工程を説明しながら作用効果を説明する。
【0032】
図3に示すように、処分坑道2内に底部遮蔽層4を形成した後、廃棄体3,3,…を配列し、その坑道幅方向両側に遮蔽壁5,5を構築する。遮蔽壁5は、10cm程度の厚さでベントナイトを層状に積層して構築する。遮蔽壁5の転圧は、遠隔操作にて転圧ローラ50を走行させることで層毎に締め固める。遮蔽壁5の密度の計測は、遮蔽壁5の表面に所定の厚さに敷き均した後、ある程度の転圧が終了したならば、転圧ローラ50を停止させて、非破壊密度計測装置1によって行う。
【0033】
密度を計測するに際しては、まず、遠隔操作によって、支持アーム51およびブーム52を適宜作動させて、音波送受信器ユニットUを下降させて遮蔽壁5の表面に当接させる。このとき、振動発信駆動部11が外周筒部材16に対して相対移動(下降)して、振動発信駆動部11の下端面と外周筒部材16の内周面と遮蔽壁5の表面とで囲まれる空間に、振動伝達体15が充填された状態となる。これによって、振動伝達体15は、遮蔽壁5の表面に均一な内部圧で密着することとなり、一定の密度になるので、次工程で、振動板12の振動を効率よく遮蔽壁5に伝達することができる。一方、音波発信器10の下降移動の停止と同時に、音波受信器20の接触板21も遮蔽壁5の表面に密着する。
【0034】
その後、各音波送受信器ユニットUの音波発信器10と音波受信器20を用いて、音波の送受信を行う。本実施形態では、前述したように、時間差を持って、各音波送受信器ユニットUの音波発信器10から音波を順次発信し、音波を発信した音波送受信器ユニットUを除く他の音波送受信器ユニットUの音波受信器20,20,…でそれぞれ受信する。
【0035】
このとき、密度算出装置30では、伝播時間算出手段31で各区間(音波を発信した音波発信器10とその音波を受信した音波受信器20)の音波の伝播時間をそれぞれ算出し、これら伝播時間に基づいて伝播速度算出手段32で各区間の音波の伝播速度をそれぞれ算出して、これらの平均伝播速度を算出する。さらに算出された平均伝播速度に基づいて密度算出手段33で遮蔽壁5の密度を算出する。
【0036】
本実施形態によれば、一の音波発信器10から発信した音波を複数の音波受信器20を用いて受信しているので、一度の音波発信によって、複数個所の計測が可能となる。これによって、伝播速度算出手段32では平均伝播速度を算出して、密度算出手段33では、その平均伝播速度を用いて密度を算出できる。すなわち複数の計測データから密度を算出できるので、計測精度を向上させることができる。
【0037】
さらに、複数の音波送受信器ユニットU間で、それぞれ音波の発信と受信を行うことができるので、同一エリア(例えば第一の音波送受信器ユニットと第二の音波送受信器ユニット間)を双方向から音波の送受信を行って密度を計測した結果が得られる。これによって、さらに正確な平均伝播速度を算出できるので、計測精度をより一層向上させることができ、密度データの信頼性向上を図れる。また、音波発信器10および音波受信器20の遮蔽壁5への一度の接触で多数箇所の計測が可能となるので、音波発信器10および音波受信器20の遮蔽壁5への接触回数を低減することができ、遮蔽壁5の表面への影響を抑えることができる。さらには、計測時間の短縮を達成できる。
【0038】
そして、算出された遮蔽壁5の密度は、表示手段34に表示されるので、これを見た作業員が、引き続き転圧を行うかどうかを判断する。具体的には、密度が予め設定した必要値(必要な遮蔽性を確保できる密度の値)を越えていない場合は、その位置の転圧を行い、前記と同様の工程で、再度密度の計測を行う。密度が予め設定した必要値(必要な遮蔽性を確保できる密度の値)を越えていた場合は、その位置の転圧を終了する。
【0039】
本実施形態に係る非破壊密度計測装置1によれば、遠隔操作によって、遮蔽壁5の密度を計測できるので、作業員が放射線の影響を受けることがない。遠隔操作は、支持アーム51とブーム52の移動や、音波発信器10、音波受信器20および密度算出装置30のオン・オフといった簡単な操作で済む。また、音波の送受信によって、音波の伝播速度を算出しているので、RI方式の計測器のように放射線の影響を受けることはない。
【0040】
また、遮蔽壁5を非破壊でその密度を計測することができるので、従来のように転圧された遮蔽壁5のサンプリングを必要としない。したがって、遮蔽性能を低下させることがなく、また、遮蔽壁5の補修を行わなくて済む上に、遮蔽壁5の転圧箇所の全面について検査することも可能である。
【0041】
さらに、本実施形態では、音波受信器20は、周波数等の細かいデータは検知する必要がなく、基本的に音波の受信を検知できれば良いので、比較的安価な装置を用いることが可能である。
【0042】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施の形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、一の音波発信器10から発信した音波を複数の音波受信器20を用いて受信したときに、伝播速度算出手段32では振動伝達体内伝播時間を考慮してそれぞれの音波伝播時間を算出しているが、これに限定されるものではなく、音波発信器10、または音波受信器20間の相対的な伝播時間差を利用した解析も可能である。
【0043】
具体的には、伝播時間算出手段31の計算部において、例えば第一の音波送受信器ユニットUaの音波発信器10から発信した音波を、第二の音波送受信器ユニットUbの音波受信器20が受信した時刻と、第三の音波送受信器ユニットUcの音波受信器20が受信した時刻との時間差を算出する。そして、伝播速度算出手段32の計算部において、第二の音波送受信器ユニットUbの音波受信器20と、第三の音波送受信器ユニットUcの音波受信器20との間の距離を前記時間差で除算することで、音波の伝播速度を算出する。前記時間差は、第二の音波送受信器ユニットUbの音波受信器20と、第三の音波送受信器ユニットUcの音波受信器20間の受信時間差のみではなく、各音波送受信器ユニットUの音波受信器20間の受信時間差をそれぞれ算出して各区間における音波の伝播速度をそれぞれ算出する。このような構成にすれば、振動伝達体内伝播時間を考慮する必要がないので、計測精度の向上が図れる。さらに、補正データファイル35cが不要となる。
【0044】
また、前記実施形態では、音波発信器10と音波受信器20の両方が複数個ずつ設けられているが、これに限定されるものではなく、音波発信器10のみを複数個設けてもよいし、音波受信器20のみを複数個設けてもよい。なお、音波発信器10と音波受信器20をそれぞれ単数としてもよいが、計測精度を考慮すると、少なくとも一方が複数であるのが好ましい。
【0045】
前記実施形態では、非破壊密度計測装置1を用いて密度を算出する対象を放射性廃棄物処理施設の処分坑道2内に構築される遮蔽壁5として説明したが、これに限定されるものではない。非破壊密度計測装置1は、放射線の照射を受けない一般の土砂層であっても適用可能であるのは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1 非破壊密度計測装置
5 遮蔽壁(土砂層)
10 音波発信器
11 振動発信駆動部
12 振動板
15 振動伝達体
20 音波受信器
21 接触板
22 受信部
30 密度算出装置
31 伝播時間算出手段
32 伝播速度算出手段
33 密度算出手段
U 音波送受信器ユニット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂層の表面から音波の伝播時間を計測し、前記伝播時間に基づいて前記土砂層の密度を算出する非破壊密度計測装置であって、
前記土砂層に音波を発信する音波発信器と、前記土砂層内を伝播した音波を受信する音波受信器と、密度を算出する密度算出装置とを有しており、
前記音波発信器は、振動板を備えた振動発信駆動部と、前記振動板に固定されるとともに前記土砂層の表面形状に追従して変形可能な振動伝達体とを備えてなり、
前記音波受信器は、前記土砂層の表面に接触する接触板と、この接触板に接続され音波の振動を検知する受信部とを備えてなり、
前記密度算出装置は、前記音波発信器から前記音波受信器までの音波の伝播時間を計測して算出する伝播時間算出手段と、前記音波発信器から前記音波受信器までの距離と算出された前記伝播時間とから音波の伝播速度を算出する伝播速度算出手段と、算出された前記伝播速度と前記土砂層の弾性率とから前記土砂層の密度を算出する密度算出手段とを備えてなる
ことを特徴とする非破壊密度計測装置。
【請求項2】
前記振動伝達体は、袋状弾性体の内部に非圧縮性液体を充填してなる
ことを特徴とする請求項1に記載の非破壊密度計測装置。
【請求項3】
前記音波発信器および前記音波受信器の少なくともいずれか一方が複数設けられている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非破壊密度計測装置。
【請求項4】
前記音波発信器および前記音波受信器が一体化された音波送受信器ユニットを複数備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の非破壊密度計測装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−7982(P2012−7982A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143518(P2010−143518)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】