説明

非破壊測定用治具、及びそれを用いたコンクリート被り厚測定装置、SC杭におけるコンクリート被り厚測定方法

【課題】内径が小さく長尺な既製中空管の奥部でも、簡便かつ精度良く内壁側からの非破壊測定を行える非破壊測定用治具、該治具を用いたコンクリート被り厚測定装置、該測定装置によるSC杭におけるコンクリート被り厚測定方法を提供する。
【解決手段】SC杭100の中空部104内には、被り厚Xを測定すべくコンクリート被り厚測定装置IIが設置されている。コンクリート被り厚測定装置IIは、非破壊測定用治具と鉄筋探査機からなる。中空部104の断面中心付近には、回転ロッド200が配され、この回転ロッド200の先端部(SC杭の奥部)には測定部が接続され、その近傍にセンターライザー部が接続され、SC杭100の端面開口部には操作部が接続され、これらで前記非破壊測定用治具を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばSC杭等の中空杭の内壁側から内壁面や杭本体内を非破壊測定する際に安定かつ効率的に測定が行えるよう中空杭の中空部に設置して非破壊測定装置の検出器を支持・操作する非破壊測定用治具、該非破壊測定用治具の検出器取付部に鉄筋探査機のプローブを設置したコンクリート被り厚測定装置、該コンクリート被り厚測定装置を用いたSC杭におけるコンクリート被り厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からコンクリート構造物、コンクリート製品における劣化状況、配筋状況、施工状況等を把握するため、超音波、電磁波、弾性波、磁気、電磁誘導などによる非破壊測定技術が広く知られている。
【0003】
例えば、コンクリート構造物における鉄筋のかぶり厚さや配筋位置を電磁誘導法により測定する技術が特許文献1、特許文献2に開示されている。特許文献1の技術は電磁波による電磁探査法と電磁誘導による磁気探査法を組み合わせて鉄筋のかぶり厚さを測定するものであり、特許文献2の技術は電磁誘導法を用いたコイル式センサにより鉄筋の有無を調べるものである。
【0004】
そのような中で、コンクリート構造物の巨大化、高層化に伴い杭基礎施工に用いられる杭も高強度、高耐久のものが求められるようになり、補強鉄筋やPC鋼材等を配した鉄筋コンクリート製のものが開発されてきている。
【0005】
それに伴い、品質管理上、上記補強鉄筋やPC鋼材等が設計どおりに配筋されているか、製造過程で位置ズレを起こしていないかなどを確認する必要が生じてきており、上記のような非破壊測定も検討されつつある。
【0006】
一方、杭穴やコンクリート管等の長尺の中空部内で非破壊測定や切断作業等の各種作業を効率よく行うための治具(補助具)も種々知られている。例えば、特許文献3には、場所打ち杭での杭穴径を変位計により測定する際の装置(治具)が開示されている。また、特許文献4、特許文献5には、コンクリート管を内面から切断する際に用いる治具が開示されている。更に、特許文献6には、管渠内をセンサにより調査する際のロボット(治具)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−315004号公報
【特許文献2】特開2007−178365号公報
【特許文献3】特開平04−86515号公報
【特許文献4】特開平06−210625号公報
【特許文献5】特開2000−280232号公報
【特許文献6】特開平09−254781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り、杭基礎施工に用いられる杭においても非破壊測定の必要が生じているが、杭の種類や杭の大きさによっては効率よく効果的に測定できず苦慮している。
【0009】
例えば、杭体内に補強鉄筋を配した中空状の既製コンクリート杭におけるコンクリート被り厚を測定する場合、一般的なコンクリート杭であれば外壁表面に鉄筋探査機のプローブを設置することにより簡単に測定できるが、SC杭のように外殻鋼板を有するものは外側からは測定し難いため内壁に前記プローブを設置して測定することになる。
【0010】
この場合、杭の内径が大きければ人が中空部に入って種々の箇所で測定できるが、杭の内径が小さい場合は人が入れないので杭端部の手の届く範囲で測定するかサンプルの杭を切断して断面でのコンクリート被り厚を測定している。
【0011】
上記の通り、杭穴やコンクリート管等の長尺の中空部内で非破壊測定や切断作業等の各種作業を効率よく行うための治具(補助具)も種々知られているが、長尺の中空杭の内壁側から非破壊測定を行う場合、杭端部から1m以上の奥深い箇所での非破壊測定をも可能とする簡便な非破壊測定用治具は未だ無い。
【0012】
本発明は、上記のような実情を改善すべくなされたものであって、その目的とするところは、(1)杭端部から1m以上の奥深い箇所での非破壊測定をも可能とする簡便な非破壊測定用治具の提供、(2)該非破壊測定用治具に鉄筋探査機のプローブ(検出器)を取付けてなるコンクリート被り厚測定装置の提供、(3)該コンクリート被り厚測定装置を用いたSC杭におけるコンクリート被り厚測定方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、杭施工で用いられるロッドと同様の回転ロッドに非破壊測定用の検出器を備えた測定装置を取り付け、所定の深さで前記回転ロッドの回転を利用して前記測定装置を円周方向に回転させれば、人の手の届かない任意の場所でも測定が可能となることを見出し、本発明を完成させた。その内容は請求項1〜7に記載されるものである。
【0014】
本願の請求項1に係る発明は、「中空杭の中空部に設置される非破壊測定用治具であって、中空杭の内壁に近接して設置される非破壊測定用の検出器を固定するための測定部と、前記検出器を前記内壁の円周方向に移動させるための操作部と、前記検出器の回転駆動軸となり前記測定部と前記操作部を中空杭の内壁面で半径方向に支持するために中空杭の断面中心付近に杭軸方向に配される回転ロッドと、前記回転ロッドを測定箇所の近傍で前記断面中心付近に固定するためのセンターライザー部からなることを特徴とする非破壊測定用治具」である。
【0015】
本発明では中空杭を対象にしているが、中空杭と類似のヒューム管等のコンクリート管、推進管、その他の長尺な種々の管にも利用できる。
【0016】
本発明の非破壊測定用治具は、中空杭の内壁に近接して設置される非破壊測定用の検出器を固定するための測定部と前記検出器を前記内壁の円周方向に移動させるための操作部とが、これらを中空杭の内壁面で半径方向に支持するために中空杭の断面中心付近に杭軸方向に配される回転ロッドに接続され、回転ロッドはセンターライザー部により測定箇所の近傍で中空杭の断面中心付近に固定される。
【0017】
操作部は端面に設けられ、操作員によって測定部(検出器)が操作される。回転ロッドは、例えば、1本が40mmφ、長さ1000mm程度の白アルマイト製の棒でロッドカップリングにより複数本を接続することにより任意の深さで測定できる。
【0018】
回転ロッドは測定箇所(測定部)の近傍でセンターライザー部により中空杭の断面中心付近に固定される。これによって、測定部(検出器)を安定して周方向に移動させることができるので、安定した精度の良い測定が可能となる。
【0019】
以上のように、本発明の非破壊測定用治具は、回転ロッドを主軸とし、これに測定部と操作部と測定部を安定させるセンターライザー部を接続した簡易な構造のものなので、中空杭内に容易に設置でき、内壁側からの非破壊測定が簡便に行える。
【0020】
なお、検出器は中空杭等の各種管の内壁面や内部を非破壊測定するものであれば特に限定されず、超音波検査や放射線検査などのあらゆる検査器が使用可能である。
【0021】
本願の請求項2に係る発明は、「上記測定部は、上記回転ロッドに対し直角に連結され中空杭の半径方向に伸びるスプリング付き測定部支持脚を1脚有し、前記測定部支持脚の先端部には検出器を取り付けるための取付部を備えるとともに検出器を内壁の円周方向に円滑に移動させるための車輪とを備え、前記回転ロッドに対し反対方向には、バランサー支持脚に支持固定されたバランサーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非破壊測定用治具」である。
【0022】
測定部は測定予定の所定の深さに設置される。測定部は回転ロッドに対し直角に連結され中空杭の半径方向に伸びるスプリング付き測定部支持脚を1脚有しており、その先端部には検出器を取り付けるための取付部と検出器を内壁の円周方向に円滑に移動させるための車輪とを備えている。
【0023】
このような構造にすることによって、中空杭の内壁面に多少の凹凸があっても検出器の位置を安定させると共に周方向への移動を円滑にし、安定した測定ができる。また、回転ロッドに対し検出器と反対方向には、バランサー支持脚に支持固定されたバランサーが設けられているが、これによって、周方向のどのような位置でも検出器を中空杭の内壁面に対し一定の位置に保持できる。
【0024】
本願の請求項3に係る発明は、「上記センターライザー部は、上記回転ロッドにベアリングを介して接続されるセントライザーと、前記セントライザーに取り付けられ先端に車輪を有し中空杭の異なる2〜4の断面半径方向の内壁に突っ張ることによって上記回転ロッドを上記断面中心付近に固定するための2〜4脚のセンターライザー部支持脚を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の非破壊測定用治具」である。
【0025】
センターライザー部は上記測定部により安定した測定ができるよう回転ロッドを上記断面中心付近に固定するためのものであり、測定箇所(測定部)の近傍に設置される。先端に車輪のある2〜4脚のセンターライザー部支持脚を有し、これを中空杭の異なる2〜4の断面半径方向の内壁に突っ張ることによって回転ロッドを断面中心付近に固定する。
【0026】
センターライザー部はベアリングを介して回転ロッドに接続される。このような構造にすることにより、回転ロッドが回転してもセンターライザー部は同調して動くことなく回転ロッドを断面中心付近に固定し続けることができる。
【0027】
本願の請求項4に係る発明は、「上記操作部は、ギアを介して上記回転ロッドを回転駆動させるための回転ハンドルと、前記回転ロッドの回転角度及び/又は検出器の回転角を表示することが可能な回転角度板と、上記回転ロッドに対し直角に連結され前記ギア、回転ハンドル、回転角度板を支持し、中空杭端部の開口部で中空杭の異なる2〜4の断面半径方向に設置固定される2〜4脚の操作部支持脚を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非破壊測定用治具」である。
【0028】
操作部は中空杭の端面に設置され、中空杭端部の開口部で中空杭の異なる2〜4の断面半径方向に2〜4脚の操作部支持脚を固定用クランプで中空杭に固定して設置される。そして操作ハンドル(回転ハンドル)や操作パネル(回転角度板等)が前記開口部の前面に設けられる。
【0029】
このような構造にすることによって、中空杭の開口部入り口で操作員が操作することにより、測定部に設けられた検出器を杭周方向の任意の測定位置に容易に移動して測定することができる。
【0030】
本願の請求項5に係る発明は、「コンクリート製の杭本体内に主鉄筋、PC鋼棒、PC鋼線のいずれか一種以上を配する既製中空杭等の既製中空管用のコンクリート被り厚測定装置であって、上記請求項1〜4のいずれか一項の非破壊測定用治具を用いたコンクリート被り厚測定装置であり、上記測定部には検出器として鉄筋探査機のプローブが設置されていることを特徴とするコンクリート被り厚測定装置」である。
【0031】
上記非破壊測定用治具の測定部の検出器取付部に、検出器として鉄筋探査機のプローブを設置することによりコンクリート被り厚測定装置が完成する。鉄筋を配したコンクリート製の既製中空杭等の既製中空管では、配筋状況やコンクリートの被り厚が品質上重要であるが、上記測定装置を用いれば、人の手の届きにくい奥深い箇所でも内壁側からの測定が容易に行える。
【0032】
本願の請求項6に係る発明は、「上記既製中空杭がSC杭であることを特徴とする請求項5に記載のコンクリート被り厚測定装置」である。
【0033】
SC杭は外殻鋼管を有しているため、外側からではコンクリートの被り厚は測り難い。また、内径の大きな杭では中空内に人が入って内壁側から被り厚を測定できるが、内径が人が入れるほど大きくなくて長尺の杭となると図れない。
【0034】
本発明の測定装置を用いれば簡便に測定できるので、このようなSC杭のコンクリート被り厚を測定するのに好適である。
【0035】
本願の請求項7に係る発明は、「請求項5に記載のコンクリート被り厚測定装置を用いて主筋を配したSC杭での主筋のコンクリート被り厚を測定するSC杭におけるコンクリート被り厚測定方法であって、予め取付部に電磁誘導式鉄筋探査機のプローブを取り付けた上記測定部とセンターライザー部支持脚の長さを支持できるように調整した上記センターライザー部とをSC杭中空部の所定位置に設置できるように位置決めして回転ロッドに取り付け、前記測定部から離れた回転ロッドの端部に上記操作部を取り付け、この回転ロッドを前記測定部側からSC杭中空部内に挿入し、前記操作部をSC杭端部の開口部に固定し、前記操作部の回転ハンドルにより前記回転ロッドを回転させて前記プローブを円周方向に走査し、前記円周方向の測定位置での前記プローブからSC杭体内の主筋表面までの距離を計測し、この測定位置でのコンクリート被り厚を求めることを特徴とするSC杭におけるコンクリート被り厚測定方法」である。
【0036】
本発明では、コンクリート被り厚の非破壊測定装置として電磁誘導式鉄筋探査機を用いる。コンクリート被り厚の非破壊測定方法としては、電磁誘導法、地中レーダー法、超音波法など様々な方法があるが、本発明の非破壊測定用治具を用いた測定では、電磁誘導法が好ましいことが判明した。
【0037】
電磁誘導式の鉄筋探査機としては、例えば、プロフォメーター5(ジオファイブ社)がある。ユニバーサルプローブを検出器の取付け箇所にセットし、プローブケーブルで表示装置に繋ぎ測定する。
【0038】
また、本発明では、測定時に測定治具を組立てて測定する。回転ロッドを必要な長さだけ用意し、測定箇所の深さに対応する回転ロッドの位置に上記鉄筋探査機のプローブを設置した測定部を取付け、回転ロッドのその近傍の位置にセンターライザー部を取付けSC杭の中空部内に所定の深さまで挿入する。
【0039】
その後開口部端面に操作部を取付ければ非破壊測定装置が簡単にセットされる。そして、操作部の回転ハンドルにより上記プローブを所定の深さで杭周方向に回転させて測定すれば、その深さでのコンクリートの被り厚状況がわかる。同様のことを適宜深さを変えて行えば、そのSC杭のコンクリート被り厚の全体の状況がわかる。
【0040】
以上のように、本発明の測定方法を用いれば、従来、非破壊測定し難かったSC杭でのコンクリート被り厚状況が精読良く簡便に測定できる。
【発明の効果】
【0041】
本発明の非破壊測定用治具を用いれば、人が中に入れなかったり、人の手が奥まで届かなかったりする内径が小さく長尺な既製中空管の奥部でも、簡便かつ精度良く内壁側からの非破壊測定を行える。
【0042】
また、本発明のコンクリート被り厚測定装置を用いれば、破壊することなく奥部の測定が難しかったSC杭でも非破壊でコンクリートの被り厚を測定できる。
【0043】
また、本発明のSC杭におけるコンクリート被り厚測定方法を用いれば、コンクリート被り厚の全体が把握し難かったSC杭でも、簡便かつ精度良く把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の非破壊測定用治具Iの概要図であり、(a)は寝かせた状態の正面図、(b)は操作部を左側面から示す図である。
【図2】測定部Cの詳細図である。
【図3】センターライザー部Bの詳細図であり、(a)は主たる部分の正面図、(b)は主たる部分の側面図である。
【図4】操作部Aの詳細図であり、(a)は主たる部分の正面図、(b)は主たる部分の左側面図である。
【図5】本発明の非破壊測定用治具を用いたコンクリート被り厚測定装置をSC杭内に設置した状況を示す概略図であり、(a)は主たる部分の正面図、(b)は主たる部分の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、図面等により、本発明の具体的な実施の形態について説明する。なお、ここに記載するものは一例であり、本発明がこれに限定されるものではない。
【0046】
A.非破壊測定用治具
図1は、本発明の非破壊測定用治具Iの概要図である。(a)は正面図、(b)は操作部を左側面から示す図である。
【0047】
図1(a)に示すように、本発明の非破壊測定用治具は、回転ロッド1に操作部Aとセンターライザー部Bと測定部Cを取付けてなるものである。
【0048】
操作部はロッドカップリング2−1により回転ロッド1に取付けられている。測定部Cには、非破壊測定用の検出器を設置するための検出器取付部3が設けられている。また、破線の右部に示すように、回転ロッド1をロッドカップリング2−2により2本接続することによりセンターライザー部と測定部の位置をより先端のセンターライザー部B’と測定部C’の位置に変えることができる。
【0049】
図1(b)に示すように、操作部Aには3方向に張出した操作部支持脚4が備わり、これを既製中空管の端部開口部に固定することにより操作部Aが該端部開口部に固定される。また、操作部Aには、回転ロッド1を回転させることにより測定部Cの検出器取付部3に取付けられる検出器を周方向に回転移動させるための操作盤5が備わっている。
【0050】
図2は、測定部Cの詳細図である。
【0051】
中央付近に回転ロッド1に接続するための測定部固定フレーム10が設けられ、これに直角に測定部支持脚20が備わっている。そして、その先端には、非破壊測定用の検出器を取付けるための検出器取付部30が設けられている。
【0052】
測定部支持脚20は測定部アーム伸縮脚21と測定部アーム延長脚22とからなる。測定部アーム延長脚22は測定部支持脚20の長さを調節するためのものであり、既製中空管の内径の寸法により必要に応じて用いられるものである。
【0053】
測定部アーム伸縮脚21にはスプリング23が内蔵されており、これによって測定部アーム伸縮脚21が伸縮できるようになっている。これは、前記既製中空管の内壁面に凹凸があったり中空管が真円状のものでなかったりしても、スプリング23にバラツキを吸収させることにより内壁周面に沿って検出器が円滑に移動でき、できるだけ内壁面と検出器とが一定の距離もしくは接して測定できるようにするためである。
【0054】
検出器取付部30は、ベース板31上に測定部支持脚20に接続するための継手ブロック32が設けられ、ベース板31の反対側にはスペーサプレート34を介して検出器を収納するための保護ケース35がある。また、既製中空管の内壁面に接して検出器を内壁周面に沿って円滑に移動させるための車輪33が設けられている。
【0055】
車輪33は前記スプリング23により常に内壁面に接している。検出器は前後の車輪33により内壁面から数ミリ程度浮かせる構造とし、内壁面に若干の凹凸等があっても安定した測定ができるようになっている。
【0056】
測定部固定フレーム10をはさんで測定部支持脚20の反対側にはパランサー支持脚40が設けられ、先端付近にはバラーサー41が取付けられている。バランサー41があることにより検出器取付部30のウェイトとのバランスがとれ、内壁周面のどの位置でも内壁面に対して検出器の位置が一定に保たれるので安定した測定ができる。
【0057】
図3は、センターライザー部Bの詳細図であり、(a)は正面図での主たる部分を、(b)は側面図での主たる部分を示すものである。
【0058】
所定の深さ位置で検出器を円滑に内壁周方向移動させて安定した測定を行うには、測定部の回転ロッドが既製中空管の断面中心付近に配されている必要があるが、センターライザー部を測定部の近傍に設置し、センターライザー部での回転ロッドを断面中心付近に固定させることにより測定部の回転ロッドも断面中心付近に配されるので安定した測定が可能となる。
【0059】
図3(a)に示すように、センターライザー部Bの中央には回転ロッドに接続するためのセンターライザー部固定フレーム50が設けられており、固定リング51で固定されるようになっている。
【0060】
センターライザー固定フレーム50に対し直角にセンターライザー支持脚70を支持するためのセントライザー60が設けられ、その先にセンターライザー支持脚70が取付けられ、先端には車輪80がある。 センターライザー部固定フレーム50とセントライザー60とはベアリング固定ナット62により取付けられているベアリング61を介して接続されている。
【0061】
このような構造にすることで回転ロッドが回転してもセントライザーは回転せずセンターライザー部Bは動かない。
【0062】
センターライザー脚70は、センターライザー伸縮脚71とセントライザー脚72とからなる。これらの脚は既製中空管の半径方向進退しセンターライザー部支持脚70の長さが調節できるようになっている。先端には車輪80が設けられているが、これはセンターライザー部Bを既製中空管内に設置するとともに様々な内径の既製中空管に対応できるようにするためである。
【0063】
なお、図3(a)にはセンターライザー部支持脚70が1脚しか示されていないが、本実施形態では、図3(b)に示すように120度ずつの3方向に3脚設けられる。これら3脚を既製中空管内の内壁に突っ張り固定することにより、センターライザー部固定フレーム内に挿通される回転ロッドを既製中空管の断面中心付近で支持固定する。
【0064】
図4は、操作部Aの詳細図であり、(a)は正面図での主たる部分を、(b)は左側面図での主たる部分を示すものである。
【0065】
図4(a)に示すように、操作部Aは、回転ロッドを回転させて測定部Cにおける検出器を既製中空管の周方向に移動させて測定位置を変えるために既製中空管の端面開口部に設けられる。
【0066】
操作部Aには操作盤90が設けられており、操作部支持脚91に取付けられている。
【0067】
操作部支持脚91は、図4(b)に示すように、3方向に3脚設けられ固定用クランプ92により既製中空管の端面開口部に取付けられる。操作部支持脚91は、ベアリング93を介して回転ロッド94に接続される。
【0068】
このような構造にすることによって、回転ロッド94が回転しても操作部支持脚91には回転力が伝わらないので操作部Aは保持される。
【0069】
操作部Aには回転ロッド94を回転させるための回転ハンドル95が設けられ、操作員が回転バンドル95を回転させることにより入力歯車96−1、中間歯車96−2、出力歯車96−3等のギアを介して回転ロッド94が回転するようになっている。また、回転ロッド94の回転角度、回転量や検出器の回転角、回転位置等を表示する回転角度板97が設けられ、円分度器98と指示針99により表示されるようになっている。
【0070】
図5は、本発明の非破壊測定用治具を用いたコンクリート被り厚測定装置をSC杭内に設置した状況を示す概略図であり、(a)は正面図での主たる部分を、(b)は右側面図での主たる部分を示すものである。
【0071】
図5(a)に示すように、中空状のSC杭100は、コンクリート101の中に主筋102を配し、外殻鉄板103を有している。そして、中空部104内には、被り厚Xを測定すべく本発明のコンクリート被り厚測定装置IIが設置されている。
【0072】
SC杭100の寸法は、例えば、外径700〜1000mm、内径400〜740mm、肉厚130〜150mmである。
【0073】
コンクリート被り厚測定装置IIは、本発明の非破壊測定用治具と鉄筋探査機からなる。
【0074】
中空部104の断面中心付近には、ロッドカップリング201により接続された長さ1000mmの2本の回転ロッド200が配され、この回転ロッド200の先端部(SC杭の奥部約2000mm)には測定部Cが接続され、その近傍にセンターライザー部Bが接続され、SC杭100の端面開口部には操作部Aが接続され、これらで非破壊測定用治具を構成している。
【0075】
測定部Cは測定部支持脚300で支えられ、その先端には検出器としての鉄筋探査機のプローブ301が取付けられている。鉄筋探査機のプローブ301はプローブケーブル304により外部の鉄筋探査機表示装置305に繋がっている。
【0076】
反対側にはバランサー支持脚302が立脚し、その先端にバランサー303が取付けられている。
【0077】
回転ロッド200は測定部Cで常に断面中心付近に位置するよう、センターライザー部支持脚400でSC杭の内壁105に支持・固定されている。 図5(b)に示すように、ここでは2本のセンターライザー部支持脚400で支持・固定されている。
【0078】
操作部AはSC杭100の端面開口部で操作部支持脚500を固定用クランプ501でSC杭100に固定することにより固定される。ここでは、図5(b)に示すように、操作部支持脚は3脚で3方向に固定してある。
【0079】
操作部Aの前面には回転ハンドル502が備わり、これで回転ロッド200を回転することにより測定部Cの鉄筋探査機のプローブ301はSC杭の内壁105に沿って周方向に回転する。
【0080】
この際、センターライザー部Bは、ベアリングの作用により回転せず回転ロッド200を所定の位置に固定し続ける。鉄筋探査機のプローブ301を任意の位置に回転させ、各位置での被り厚Xを測定することにより、その深さでの主筋102の配筋状況がわかる。
【0081】
測定部Cの回転ロッド200への取り付け位置を変えて同様に測定すれば、周方向と杭軸方向のデータが得られるのでSC杭100における主筋102の全体の配筋状況を把握することができる。
【0082】
なお、測定位置は、杭軸方向に対しては回転ロッド200にスケールを設けておけば、容易に把握できる。また、杭周方向の位置に対しては、操作部Aの前面の操作盤504に回転ロッド200の回転角度を示す回転角度板503を設けておけば、容易に把握できる。したがって、測定データがどの測定位置でのデータかがわかる。
【0083】
次に、図5に示すようにコンクリート被り厚測定装置を設置して測定する、本発明のSC杭におけるコンクリート被り厚の測定方法の手順の概要を示す。
【0084】
〔SC杭におけるコンクリート被り厚の測定方法〕
(1) 事前確認
a.SC杭の内部を目視し、測定の障害となるような凹凸が無いことを確認する。
b.SC杭の内径、外径、測定位置(測定深さ)を確認する。
【0085】
(2) コンクリート被り厚測定装置の設置
a.長さ1mの回転ロッド2本をロッドカップリングにより接続する。
b.鉄筋探査機のプローブを測定部に保護アングルで固定する。
c.測定部支持脚の長さをSC杭の内径に合わせて調整し、測定部を回転ロッドの測定深さに取付ける。
d.鉄筋探査機(ジオファイブ社製;電磁誘導式)のプローブと表示装置(測定器)とを繋ぐプローブケーブルを回転ロッドに固定する。
【0086】
e.センターライザー支持脚の長さをSC杭の内径に合わせて調整し、センターライザー部を測定深さの1/2の深さに取付ける。
f.操作部を回転ロッドに取付ける。
g.測定部、センターライザー部、操作部が取付けられた回転ロッドをSC杭中空部の所定の深さまで挿入する。
h.操作部支持脚を固定用クランプでSC杭の端面開口部に固定し、回転ハンドル、指示針、円分度器等を操作盤に取付けて操作部の設置を完成させる。
【0087】
(3) 試運転
a.回転角度板の円分度器を目視しながら回転ハンドルにより測定部を周方向に1回転させ、その後、逆方向に1回転させて、回転ロッドの軸がブレルことなく滑らかに回転できることを確認する。
【0088】
(4) 鉄筋探査機の動作確認
a.測定部をSC杭の真下の位置が測定位置となるような位置に固定する。
b.表示装置(測定器)の電源をONにして、測定部を45度程ゆっくり度回転させ、この間に表示装置(測定器)のブザー音が何回か鳴るか否かを確認する。ブザー音が鳴ればSC杭の鉄筋を感知しており、鉄筋探査機は正常に作動していることになる。
【0089】
(5) 測定
a.測定部をSC杭の真下の位置が測定位置となるような位置に固定する。
b.ゆっくりと測定部(鉄筋探査機のプローブ)を右方向に回転させ、ブザー音が鳴ったら回転を止め表示装置(測定器)の測定ボタンを押し、表示装置に表示させる測定値、回転角度板の角度、測定深さ等をデータシートに記入する。
c.続けて右方向に回転させて同様の操作を行い、1回転するまで測定する。なお、必要に応じて、右方向回転での測定が終わったら、左方向回転でも同様に測定する。
d.必要に応じて、測定部の回転ロッドへの取付位置を変えることにより、異なる測定深さでも上記と同様の測定をする。
【0090】
(6) 測定結果の確認
a.測定結果を調べ、測定値が測定器の標準的測定誤差を超える場合、再度、右方向回転と左方向回転で測定する。
b.各測定位置で上記両回転方向での測定誤差の少ない方の測定値を採用するか、両回転方向の測定値の平均値を測定値とする。
【0091】
以上の通り、本発明の非破壊測定用治具、これに従来の鉄筋探査機を取付けてなるコンクリート被り厚測定装置を用いれば、従来、コンクリート被り厚が測定し難かったSC杭でも簡便に測定することができる。
【0092】
また、上記鉄筋探査機に変えて従来から用いられている他の非破壊検査装置のプローブを測定部に取付ければ、既製中空管で様々な非破壊測定できる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明に係る非破壊測定用治具は、内径が小さく長尺な既製中空管において内壁側から奥部の非破壊測定を行う際に有用である。また、本発明に係るコンクリート被り厚測定装置、SC杭におけるコンクリート被り厚の測定方法は、配筋されたSC杭におけるコンクリート被り厚の全体像を把握するのに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0094】
I…非破壊測定用治具、A…操作部、B…センターライザー部、C…測定部、
B’…センターライザー部、C’…測定部、
1…回転ロッド、2−1…ロッドカップリング、2−2…ロッドカップリング、3…検出器取付部、4…操作部支持脚、5…操作盤、
10…測定部固定フレーム、
20…測定部支持脚、21…測定部アーム伸縮脚、 22…測定部アーム延長脚、23…スプリング、
30…検出器取付部、31…ベース板、32…継手ブロック、33…車輪、34…スペーサプレート、35…保護アングル(保護ケース)、
40…バランサー支持脚、41…バランサー、
50…センターライザー部固定フレーム、51…固定リング、
60…セントライザー、61…ベアリング、62…ベアリング固定ナット、
70…センターライザー部支持脚、71…センターライザー伸縮脚、72…セントライザー脚、73…固定ナット、
80…車輪
90…操作盤、91…操作部支持脚、92…固定用クランプ、93…ベアリング、94…回転ロッド、95…回転ハンドル、96−1…入力歯車(ギア)、96−2(A)…中間歯車(ギア)、96−2(B)…中間歯車(ギア)、97…回転角度板、98(A)…円分度器、98(B)…円分度器、99…指示針、
II…コンクリート被り厚測定装置、100…SC杭、101…コンクリート、102…主筋、103…外殻鉄板、104…中空部、105…SC杭の内壁、106…SC杭の外周面、
X…被り厚、
200…回転ロッド、201…ロッドカップリング、
300…測定部支持脚、301…鉄筋探査機のプローブ、302…バランサー支持脚、303…バランサー、304…プローブケーブル、305…鉄筋探査機の表示装置、
400…センターライザー部支持脚、
500…操作部支持脚、501…固定用クランプ、502…回転ハンドル、503…回転角度板、504…操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空杭の中空部に設置される非破壊測定用治具であって、中空杭の内壁に近接して設置される非破壊測定用の検出器を固定するための測定部と、前記検出器を前記内壁の円周方向に移動させるための操作部と、前記検出器の回転駆動軸となり前記測定部と前記操作部を中空杭の内壁面で半径方向に支持するために中空杭の断面中心付近に杭軸方向に配される回転ロッドと、前記回転ロッドを測定箇所の近傍で前記断面中心付近に固定するためのセンターライザー部からなることを特徴とする非破壊測定用治具。
【請求項2】
上記測定部は、上記回転ロッドに対し直角に連結され中空杭の半径方向に伸びるスプリング付き測定部支持脚を1脚有し、前記測定部支持脚の先端部には検出器を取り付けるための取付部を備えるとともに検出器を内壁の円周方向に円滑に移動させるための車輪とを備え、前記回転ロッドに対し反対方向には、バランサー支持脚に支持固定されたバランサーが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非破壊測定用治具。
【請求項3】
上記センターライザー部は、上記回転ロッドにベアリングを介して接続されるセントライザーと、前記セントライザーに取り付けられ先端に車輪を有し中空杭の異なる2〜4の断面半径方向の内壁に突っ張ることによって上記回転ロッドを上記断面中心付近に固定するための2〜4脚のセンターライザー部支持脚を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の非破壊測定用治具。
【請求項4】
上記操作部は、ギアを介して上記回転ロッドを回転駆動させるための回転ハンドルと、前記回転ロッドの回転角度及び/又は検出器の回転角を表示することが可能な回転角度板と、上記回転ロッドに対し直角に連結され前記ギア、回転ハンドル、回転角度板を支持し、中空杭端部の開口部で中空杭の異なる2〜4の断面半径方向に設置固定される2〜4脚の操作部支持脚を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の非破壊測定用治具。
【請求項5】
コンクリート製の杭本体内に主鉄筋、PC鋼棒、PC鋼線のいずれか一種以上を配する既製中空杭等の既製中空管用のコンクリート被り厚測定装置であって、上記請求項1〜4のいずれか一項の非破壊測定用治具を用いたコンクリート被り厚測定装置であり、上記測定部には検出器として鉄筋探査機のプローブが設置されていることを特徴とするコンクリート被り厚測定装置。
【請求項6】
上記既製中空杭がSC杭であることを特徴とする請求項5に記載のコンクリート被り厚測定装置。
【請求項7】
請求項5に記載のコンクリート被り厚測定装置を用いて主筋を配したSC杭での主筋のコンクリート被り厚を測定するSC杭におけるコンクリート被り厚測定方法であって、予め取付部に電磁誘導式鉄筋探査機のプローブを取り付けた上記測定部とセンターライザー部支持脚の長さを支持できるように調整した上記センターライザー部とをSC杭中空部の所定位置に設置できるように位置決めして回転ロッドに取り付け、前記測定部から離れた回転ロッドの端部に上記操作部を取り付け、この回転ロッドを前記測定部側からSC杭中空部内に挿入し、前記操作部をSC杭端部の開口部に固定し、前記操作部の回転ハンドルにより前記回転ロッドを回転させて前記プローブを円周方向に走査し、前記円周方向の測定位置での前記プローブからSC杭体内の主筋表面までの距離を計測し、この測定位置でのコンクリート被り厚を求めることを特徴とするSC杭におけるコンクリート被り厚測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−149858(P2011−149858A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12073(P2010−12073)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(597058664)株式会社トーヨーアサノ (24)
【Fターム(参考)】