説明

非誘導体化非代謝化ビタミンDの質量分析法による決定

本発明は、非代謝化ビタミンDの検出に関する。特定の態様では、本発明は、非誘導体化非代謝化ビタミンDを質量分析法により検出するための方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非代謝化ビタミンDの定量的測定に関する。特定の態様では、本発明は、非代謝化ビタミンDのタンデム質量分析法により定量的に測定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビタミンDは、カルシウム(Ca2+)ホメオスタシスの正の調節において重要な生理学的役割を備える必須栄養素である。ビタミンDは、太陽光を浴びることによって皮内で新しく(de novo)生成でき、又は飲食物から吸収することができる。ビタミンDには2つの形態:ビタミンD(エルゴカルシフェロール)及びビタミンD(コレカルシフェロール)がある。ビタミンDは、動物によって新しく合成される形態である。ビタミンDは、さらに米合衆国内で製造される乳製品及び特定の食品に添加される一般的補助食品である。食事性及び内因性で合成されるビタミンDはどちらも、生物活性代謝産物を生成するためには代謝活性化を受けなければならない。ヒトにおいては、ビタミンD活性化の初期工程は、主として肝臓内で発生し、中間代謝産物である25−ヒドロキシコレカルシフェロール(カルシフェジオール;25OHD)を形成するためのヒドロキシル化を含んでいる。カルシフェジオールは、循環中のビタミンDの主要な形態である。循環中25OHDは、次に腎臓によって変換されて1,25−ジヒドロキシビタミンD(カルシトリオール;1,25(OH))を形成するが、これは一般にはビタミンDの最高生物活性を備える代謝産物であると考えられている。
【0003】
ビタミンDは、真菌及び植物起源に由来する。多数の店頭販売栄養補助食品は、コレカルシフェロール(ビタミンD)ではなくエルゴカルシフェロール(ビタミンD)を含有している。Drisdolは、米合衆国内で入手できるビタミンDの唯一の高力価処方薬であり、エルゴカルシフェロールを用いて製造される。ビタミンDは、ヒトにおいてはビタミンDと類似の代謝活性化経路を経て、代謝産物である25OHD及び1,25(OH)を形成する。ビタミンD及びビタミンDは、長年に渡りヒトにおいて生物学的に等価であると考えられてきた。しかし近年の報告は、これら2種の形態のビタミンDの生物活性及びバイオアベイラビリティには差がある可能性を示唆している(Armas et. al., (2004) J. Clin. Endocrinol. Metab. 89: 5387-5391)。
【0004】
不活性ビタミンD前駆体であるビタミンDの測定が臨床状況で行われることは希である。むしろ、25−ヒドロキシビタミンD、25−ヒドロキシビタミンD、及び全25−ヒドロキシビタミンD(「25OHD」)の血清中濃度が、ビタミンDの栄養状態及び特定のビタミンDアナログの有効性の有用な指標である。25OHDの測定は、カルシウムの代謝障害の診断及び管理において一般に使用される。この点において、低濃度の25OHDは、疾患、例えば低カルシウム血症、低リン血症、続発性甲状腺機能亢進症、アルカリホスファターゼ値上昇、成人における骨軟化症及び小児におけるくる病と関連するビタミンD欠乏症の徴候である。ビタミンD中毒が疑われる患者においては、25OHDの濃度上昇は、この障害を高カルシウム血症を誘発する他の障害から識別する。
【0005】
1,25(OH)Dの測定も臨床状況において使用される。特定の疾患状態は、1,25(OH)Dの循環中濃度によって反映される可能性があり、例えば腎疾患及び腎不全は結果として低濃度の1,25(OH)Dを生じさせることが多い。1,25(OH)Dの上昇した濃度は、過剰な副甲状腺ホルモンの徴候となることがあり、又は特定の疾患、例えばサルコイドーシス又は特定タイプのリンパ腫の徴候となることがある。
【0006】
ビタミンD代謝産物の検出は、ラジオイムノアッセイによって25OHD及び25OHDに対して共特異的な抗体を用いて実施されてきた。現行の免疫学に基づくアッセイでは25OHD及び25OHDを別個に分解(resolve)できないために、ビタミンDのあらゆる栄養欠乏症の起源を他の試験に頼らずに決定することはできない。特異的ビタミンD代謝産物を検出するために質量分析法を使用する方法を開示する報告書が公開されている。一部の報告書では、ビタミンD代謝産物が質量分析法を受ける前に誘導体化されるが、他の報告書では誘導化されない。例えば、2007年12月28日に出願されたHolmquist, et al.、米国特許出願第11/946765号明細書、Yeung B, et al., J Chromatogr. 1993, 645 (1): 115-23、Higashi T, et al., Steroids. 2000, 65 (5): 281-94、Higashi T, et al., Biol Pharm Bull. 2001, 24 (7): 738-43、Higashi T, et al., J Pharm Biomed Anal. 2002, 29 (5): 947-55、Higashi T, et al., Anal. Biochanal Chem, 2008, 391: 229-38及びAronov, et al., Anal Bioanal Chem, 2008, 391: 1917-30は、質量分析法の前に代謝産物を誘導体化することにより、様々なビタミンD代謝産物を検出する方法を開示している。非誘導体化ビタミンD代謝産物を検出するための方法は、Clarke, et al.により2005年4月6日に出願された米国特許出願第11/101,166号明細書及び2006年3月21日に出願された同第11/386,215号明細書、並びにSingh, et al.により2004年10月24日に出願された米国特許出願第10/977,121号明細書の中に報告されている。クックソン型試薬、特に4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)及び4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQ−TAD)を用いたビタミンDの誘導体化を開示している報告書も公表されている。Aberhart, J, et al., J. Org. Chem. 1976, 41 (12): 2098-2102及びKamao, M, et al., J Chromatogr. B 2007, 859: 192-200を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第11/946765号明細書
【特許文献2】米国特許出願第11/101,166号明細書
【特許文献3】米国特許出願第11/386,215号明細書
【特許文献4】米国特許出願第10/977,121号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Armas et. al., (2004) J. Clin. Endocrinol. Metab. 89: 5387-5391
【非特許文献2】Yeung B, et al., J Chromatogr. 1993, 645 (1): 115-23
【非特許文献3】Higashi T, et al., Steroids. 2000, 65 (5): 281-94
【非特許文献4】Higashi T, et al., Biol Pharm Bull. 2001, 24 (7): 738-43
【非特許文献5】Higashi T, et al., J Pharm Biomed Anal. 2002, 29 (5): 947-55
【非特許文献6】Higashi T, et al., Anal. Biochanal Chem, 2008, 391: 229-38
【非特許文献7】Aronov, et al., Anal Bioanal Chem, 2008, 391: 1917-30
【非特許文献8】Aberhart, J, et al., J. Org. Chem. 1976, 41 (12): 2098-2102
【非特許文献9】Kamao, M, et al., J Chromatogr. B 2007, 859: 192-200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、サンプル中のビタミンDの1つ又はそれ以上の(非代謝化)形態の量をタンデム質量分析法を含む質量分析法によって検出するための方法を提供する。1つの態様では、サンプル由来のビタミンDは、質量分析法による分析の前に誘導体化される。第2態様では、サンプル由来のビタミンDは、質量分析法による分析の前に誘導体化されない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1態様の一部の実施形態では、本方法は:(i)サンプル中のクックソン型誘導体化ビタミンDを質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上の前駆体イオンを生成するために適合する条件下でイオン化源に曝露させる工程、(ii)少なくとも1つの該前駆体イオンを、質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のフラグメントイオンを生成するためにフラグメント化する工程、(iii)該前駆体及びフラグメントイオンの1つ又はそれ以上の量を質量分析法によって決定する工程、及び(iv)工程(iii)において決定されたイオンの量を該サンプル中のビタミンDの量と関連付ける工程を含んでいる。これらの方法では、サンプルは、工程(i)の前にクックソン型誘導体化ビタミンDを生成するために十分な条件下でクックソン型誘導体化試薬に曝露される。一部の実施形態では、クックソン型誘導体化ビタミンDは、イオン化の前に抽出カラム及び分析カラムにかけられる。関連する実施形態では、分析カラムは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムであってよい。
【0011】
第1態様の一部の実施形態では、本方法は:(i)サンプルを乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)にかける工程、(ii)該サンプル由来のクックソン型誘導体化ビタミンDを質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のイオンを生成するために適合する条件下でイオン化源に曝露させる工程、(iii)1つ又はそれ以上の該クックソン型誘導体化ビタミンDイオンの量を質量分析法によって決定する工程、及び(iv)工程(iii)において決定されたクックソン型誘導体化ビタミンDイオンの量を該サンプル中のビタミンDの量と関連付ける工程を含んでいる。これらの実施形態では、サンプルは、クックソン型誘導体化試薬に、工程(i)の前に該サンプル中でクックソン型誘導体化ビタミンDを生成するために十分な条件下で曝露される。一部の実施形態では、サンプルは、工程(i)の後であるが工程(ii)の前に高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)にかけられる。
【0012】
一部の実施形態では、クックソン型誘導体化試薬は、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)である。これらの実施形態の一部では、1つ又はそれ以上の前駆体イオンは、572.4±0.5及び560.4±0.5の質量/電荷比(m/z)を備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含んでいる。これらの実施形態の一部では、1つ又はそれ以上のフラグメントイオンは、298.1±0.5の質量/電荷比(m/z)を備えるイオンを含んでいる。
【0013】
ビタミンDがビタミンDを含む実施形態では、1つ又はそれ以上のクックソン型誘導体化ビタミンDイオンは、572.3±0.5の質量/電荷比(m/z)を備える前駆体イオン及び298.1±0.5の質量/電荷比(m/z)を備えるフラグメントイオンを含むことができる。ビタミンDがビタミンDを含む実施形態では、1つ又はそれ以上のクックソン型誘導体化ビタミンDイオンは、560.3±0.5の質量/電荷比(m/z)を備える前駆体イオン及び298.1±0.5の質量/電荷比(m/z)を備えるフラグメントイオンを含むことができる。ビタミンDがビタミンD及びビタミンDを含む実施形態では、1つ又はそれ以上の前駆体イオンは572.4±0.5の質量/電荷比(m/z)を備えるビタミンD前駆体イオン及び560.4±0.5のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンを含むことができ、及び1つ又はそれ以上のフラグメントイオンは、298.1±0.5のm/zを備えるビタミンDフラグメントイオン及び298.1±0.5のm/zを備えるビタミンDフラグメントイオンを含むことができる。
【0014】
第2態様の一部の実施形態では、本発明は、サンプル中のビタミンDの量をタンデム質量分析法によって誘導体化ビタミンDのイオン化及び検出を行わずに決定する方法を提供する。一部の実施形態では、ビタミンDは、ビタミンDを含んでいる。これらの方法は:サンプル由来のビタミンDを397.2±0.5又は379.2±0.5の質量対電荷比(m/z)を備えるイオン(複数)からなる群から選択される質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上の前駆体イオンを生成するために適合する条件下でイオン化源に曝露させる工程、少なくとも1つの該前駆体イオンを、質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のフラグメントイオンを生成するためにフラグメント化する工程、(iii)工程(i)及び(ii)において生成された1つ又はそれ以上のイオンの量を質量分析法によって決定する工程、及び(iv)工程(iii)において決定されたビタミンDイオンの存在を該サンプル中のビタミンDの存在と関連付ける工程を含んでいる。これらの方法では、フラグメント化前駆体イオンが397.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、該フラグメントイオンは、159.0±0.5、146.9±0.5、133.1±0.5及び121.0±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含んでいる。これらの方法では、フラグメント化前駆体イオンが379.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、該フラグメントイオンは、283.2±0.5、187.3±0.5、175.2±0.5及び159.0±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含んでいる。一部の実施形態では、サンプル由来のビタミンDは、イオン化の前に抽出カラム、例えば固相抽出(SPE)カラム又は乱流液体クロマトグラフィー(THLC)カラムにかけることができる。一部の実施形態では、サンプル由来のビタミンDは、イオン化の前に分析カラム、例えば高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムにさらにかけられる。
【0015】
第2態様の他の実施形態では、ビタミンDは、ビタミンDを含んでいる。これらの方法は:(i)サンプル由来のビタミンDを385.2±0.5又は367.2±0.5の質量対電荷比(m/z)を備えるイオン(複数)からなる群から選択される質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上の前駆体イオンを生成するために適合する条件下でイオン化源に曝露させる工程、(ii)少なくとも1つの該前駆体イオンを、質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のフラグメントイオンを生成するためにフラグメント化する工程、(iii)工程(i)及び(ii)において生成された1つ又はそれ以上のイオンの量を質量分析法によって決定する工程、及び(iv)工程(iii)において決定されたビタミンDイオンの存在を該サンプル中のビタミンDの存在と関連付ける工程を含んでいる。これらの方法では、フラグメント化前駆体イオンが385.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、該フラグメントイオンは、159.0±0.5、147.0±0.5、133.1±0.5及び107.1±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含んでいる。フラグメント化前駆体イオンが367.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、該フラグメントイオンは、172.2±0.5、145.0±0.5及び119.1±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含んでいる。一部の実施形態では、サンプル由来のビタミンDは、イオン化の前に抽出カラム、例えば固相抽出(SPE)カラム又は乱流液体クロマトグラフィー(THLC)カラムへかけることができる。一部の実施形態では、サンプル由来のビタミンDは、イオン化の前に分析カラム、例えば高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムへさらにかけられる。
【0016】
本明細書に記載した方法では、質量分析法は、タンデム質量分析法であってよい。タンデム質量分析法を利用する実施形態では、タンデム質量分析法は、例えば、多重反応モニタリング、前駆体イオンスキャニング、又はプロダクトイオンスキャニングを含む当分野において公知の任意の方法によって実施することができる。
【0017】
抽出カラムを利用する実施形態では、抽出カラムは、固相抽出(SPE)カラム、例えば乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)カラムであってよい。抽出カラム、分析カラム及びイオン化源の2つ又はそれ以上を利用する一部の実施形態では、利用される構成要素は、自動サンプル処理及び分析を可能にするオンライン方式で結合することができる。
【0018】
特定の実施形態のために有用なクックソン型誘導体化試薬は、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)、4−メチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(MTAD)、4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQTAD)、4−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(NPTAD)及び4−フェロセニルメチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(FMTAD)、並びに同位体で標識されたそれらの変種からなる群から選択することができる。好ましい実施形態では、クックソン型誘導体化試薬は、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)又は同位体で標識されたそれらの変種である。特定の好ましい実施形態では、クックソン型誘導体化試薬は、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)又は同位体で標識されたそれらの変種である。
【0019】
本明細書で使用する用語「ビタミンD」は、代謝化されていない任意の1つ又はそれ以上の天然型又は合成アナログのビタミンDを意味する。これは、代謝中に発生する特異的化学修飾(例えば、25−ヒドロキシビタミンD及び1α,25−ジヒドロキシビタミンD)によって同定されるビタミンD代謝産物とは対照的である。非代謝化ビタミンDは、さらに代謝化形態から識別するために「栄養的」ビタミンDと言及することもできる。代謝化形を特定しないビタミンDへの言及は、非代謝化形への言及である。
【0020】
本明細書で使用する「誘導体化する工程」は、2つの分子を反応させて新規分子を形成する工程を意味する。従って、誘導体化剤は、他の物質と反応すると物質を誘導体化することのできる物質である。例えば、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)は、ビタミンDと反応するとPTAD−誘導体化ビタミンDを形成することのできる誘導体化試薬である。
【0021】
本明細書で使用するビタミンDの誘導体化形の名称は、誘導体化の性質に関する表示を含んでいる。例えば、ビタミンDのPTAD誘導体は、PTAD−ビタミンD(又はPTAD−誘導体化ビタミンD)と表示される。
【0022】
本明細書で使用する「クックソン型誘導体化剤」は、4−置換1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン化合物である。典型的なクックソン型誘導体化剤には、4−フェニル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(PTAD)、4−メチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(MTAD)、4−[2−(6,7−ジメトキシ−4−メチル−3−オキソ−3,4−ジヒドロキノキサリル)エチル]−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(DMEQTAD)、4−(4−ニトロフェニル)−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(NPTAD)及び4−フェロセニルメチル−1,2,4−トリアゾリン−3,5−ジオン(FMTAD)が含まれる。さらに、一部の実施形態においてはクックソン型誘導体化剤の同位体で標識された変種を使用できる。例えば、13−PTAD同位体変種は、標準PTADより6質量単位重く、一部の実施形態において使用することができる。クックソン型試薬によるビタミンD代謝産物の誘導体化は、任意の適切な方法によって実施できる。例えば、2007年12月28日に出願されたHolmquist, et al.による米国特許出願第11/946765号明細書、Yeung B, et al., J Chromatogr. 1993, 645 (1): 115-23、Higashi T, et al., Steroids. 2000, 65 (5): 281-94、Higashi T, et al., Biol Pharm Bull. 2001, 24 (7): 738-43、Higashi T, et al., J Pharm Biomed Anal. 2002, 29 (5): 947-55、Higashi T, et al., Anal. Biochanal Chem, 2008, 391: 229-38及びAronov, et al., Anal Bioanal Chem, 2008, 391: 1917-30を参照されたい。
【0023】
ビタミンDは、ビタミンDの1つ又はそれ以上の形態、例えばビタミンD及び/又はビタミンDを意味することができる。サンプルがビタミンDの複数の形態を含む実施形態では、ビタミンDの複数の形態を同時にイオン化することができる。例えば、一部の実施形態では、ビタミンD及びビタミンDの量は、同一サンプル内で決定される。これらの実施形態では、(誘導体化又は非誘導体化)ビタミンD及びビタミンDは、同時にイオン化することができる。
【0024】
サンプル由来の2つ又はそれ以上の分析物の量を同時に検出するために適用される用語「同時の」は、同一サンプル注入から該サンプル中の2つ又はそれ以上の分析物の量を反映するデータを獲得することを意味する。各分析物についてのデータは、使用される器械技術に依存して、連続的又は並行して獲得できる。例えば、2つの分析物を含有する単一サンプルをHPLCカラム内に注入することができ、次にこれは各分析物を順々に溶出させ、結果として質量分析計内への分析物の連続的な導入を生じさせることができる。これら2つの分析物各々の量を決定する工程は、本明細書の目的のためには、両方の分析物がHPLC内への同一サンプル注入の結果として生じるので、同時に行われる。
【0025】
ビタミンDは、動物の循環中に見いだすことができ、及び/又は生物有機体、例えば動物が生成することができる。従って、サンプルは、例えば患者、つまり生きている、男性又は女性の疾患又は状態の診断、予後診断、若しくは治療を受けるために医療環境にやってきたヒトから入手できる。好ましいサンプルは、生物学的サンプル、特に生物学的流体サンプル、例えば血清又は血漿であってよい。本明細書に提示した方法は、ヒトから採取された場合にサンプル中に存在するビタミンDの量を決定するために使用できる。
【0026】
本明細書に開示した方法の特定の好ましい実施形態では、質量分析法は正イオンモードで実施される。又は、質量分析法は、負イオンモードで実施される。例えば大気圧化学イオン化法(APCI)、レーザーダイオード熱脱離法(LDTD)又はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)を含む様々なイオン化源は、本発明の実施形態において使用できる。特定の好ましい実施形態では、ビタミンD代謝産物は、正イオンモードでAPCI又はLDTDを用いて測定される。
【0027】
好ましい実施形態では、1つ又はそれ以上の別個に検出可能な内部標準がサンプル中に提供され、これらの量もサンプル中で決定される。これらの実施形態では、サンプル中に存在する対象の分析物及び内部標準の両方の全部又は一部分が、質量分析計において検出可能な複数のイオンを生成するためにイオン化され、各々から生成された1つ又はそれ以上のイオンが質量分析法によって検出される。好ましくは、内部標準は、ビタミンD−[6,19,19]−、ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の内の1つ又はそれ以上である。
【0028】
1つ又はそれ以上の別個に検出可能な内部標準は、クックソン型誘導体化剤を用いた処理(適合する場合)又は該サンプルからの分析物の任意の精製前にサンプル内に提供することができる。これらの実施形態では、1つ又はそれ以上の内部標準は、内因性ビタミンDと共に誘導体化及び/又は精製を受けることができ、その場合には該誘導体化及び/又は精製された内部標準のイオンが質量分析法によって検出される。これらの実施形態では、対象の分析物から生成されたイオンの存在又は量を該サンプル中の対象の分析物の存在又は量と関連付けることができる。一部の実施形態では、内部標準はビタミンDの同位体標識形、例えばビタミンD−[6,19,19]−、ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−であってよい。
【0029】
質量分析計において検出可能なイオンは、上記に列挙した典型的な内部標準の各々について生成することができる。数種の典型的な内部標準について生成された典型的スペクトルについては、実施例8及び9において考察し、図6から7、9から10、12から13及び15から16に示す。
【0030】
本明細書で使用する「同位体標識」は、質量分析法技術によって分析した場合に未標識分子と比較して標識分子内では質量シフトを生成する。適切な標識の例には、ジュウテリウム(H)、13C及び15Nが含まれる。例えば、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[6,19,19]−は、各々ビタミンD及びビタミンDより約3質量単位高い質量を有する。同位体標識は、該分子の1つ又はそれ以上の位置で組み込むことができ、及び1つ又はそれ以上の種類の同位体標識を同一の同位体で標識された分子上で使用できる。
【0031】
他の実施形態では、ビタミンDイオンの量は、1つ又はそれ以上の外部参照標準と比較することによって決定することができる。典型的な外部参照標準には、1つ又はそれ以上のビタミンD−[6,19,19]−、ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−でスパイクされたブランク血漿又は血清が含まれる。外部標準は、通常は誘導体化ビタミンDが検出される実施形態において質量分析法の前に1つ又はそれ以上のクックソン型試薬を用いた処理を含む、分析対象の任意の他のサンプルと同一の処理及び分析を受けることになる。
【0032】
特定の実施形態では、ビタミンD及びビタミンDの定量下限(LLOQ)は、10ng/mL未満、好ましくは5ng/mL未満、好ましくは2ng/mL未満である。
【0033】
本明細書で使用するように、他に規定しない限り、単数形「1つの(a、an)」及び「その(the)」には複数形の言及が含まれる。従って、例えば「1つのタンパク質」という言及には複数のタンパク質分子が含まれる。
【0034】
本明細書で使用する用語「精製」又は「精製する工程」は、対象の分析物以外のサンプルから全物質を除去することを意味していない。その代りに、「精製」は、対象の分析物の検出を妨害する可能性があるサンプル中の他の成分と比較した1つ又はそれ以上の対象の分析物の量を濃縮する方法を意味する。様々な手段によるサンプルの精製は、1つ又はそれ以上の干渉物質、例えば質量分析法による選択された親又は娘イオンの検出を妨害する可能性がある、又は妨害しない可能性がある1つ又はそれ以上の物質の相対的減少を可能にする。この用語のような相対的減少は、精製すべき材料中の対象の分析物とともに存在する任意の物質が精製によって完全に除去されることを必要としない。
【0035】
本明細書で使用する用語「固相抽出」若しくは「SPE」は、その中若しくは周囲を溶液が通過させられる固体(即ち、固相)に対する化学的混合物が、溶液(即ち、移動相)中で溶解若しくは懸濁された成分の親和性の結果として成分に分離される方法を意味する。一部の例では、移動相が固相の中若しくは周囲を通過するにつれて、該移動相の望ましくない成分は、該固相によって保持され、該移動相内の分析物の精製を生じさせることができる。他の例では、分析物は固相によって保持することができ、移動相の望ましくない成分が該固相の中若しくは周囲を通過することを可能にする。これらの例では、次に第2移動相はそれ以上の加工処理又は分析のために保持された分析物を該固相から溶出させるために使用される。TFLCを含むSPEは、単一又は混合モード機序によって作動することができる。混合モード機序は、同一カラム内でのイオン交換及び疎水性滞留を利用する。例えば、混合モードSPEカラムの固相は強アニオン交換及び疎水性滞留を示す可能性があり、又は強カチオン交換及び疎水性滞留を示す可能性がある。
【0036】
本明細書で使用する用語「クロマトグラフィー」は、液体若しくは気体によって運ばれる化学的混合物が、それらが固定相液体若しくは固相の周囲若しくは上方を流れるにつれて化学実体の示差的分布の結果として複数の成分に分離される方法を意味する。
【0037】
本明細書で使用する用語「液体クロマトグラフィー」若しくは「LC」は、流体が一様に微細物質のカラムを通して、又はキャピラリー路を通って浸透するに従う流体溶液の1つ又はそれ以上の成分の選択的遅滞の方法を意味する。遅滞は、1つ又はそれ以上の固定相とバルク液(即ち、移動相)との間の混合物の、この流体が固定相に対して移動するに従う成分の分布の結果として生じる。「液体クロマトグラフィー」の例には、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)及び乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)(高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)又は高スループット液体クロマトグラフィーとして公知であることもある)が含まれる。
【0038】
本明細書で使用する用語「高性能液体クロマトグラフィー」若しくは「HPLC」(「高圧液体クロマトグラフィー」として公知であることもある)は、移動相を圧力下で固定相、通常は高密度に充填されたカラムに通して推し進めることによって分離度が増加する液体クロマトグラフィーを意味する。
【0039】
本明細書で使用する用語「乱流液体クロマトグラフィー」若しくは「TFLC」(高乱流液体クロマトグラフィー若しくは高スループット液体クロマトグラフィーとして公知であることもある)は、分離を実施するための基礎としてカラム充填を通して分析される物質の乱流を利用するクロマトグラフィーの形態を意味する。TFLCは、質量分析法による分析に先行して2つの不特定の薬物を含有するサンプルの調製において適用されてきた。例えば、Zimmer et al., J Chromatogr A 854: 23-35 (1999)を参照されたい。さらに、TFLCについて詳細に説明している米国特許第5,968,367号明細書、同第5,919,368号明細書、同第5,795,469号明細書及び同第5,772,874号明細書も参照されたい。当業者であれば、「乱流」を理解している。流体が緩徐及び平滑に流動する場合は、その流れは「層流」と呼ばれる。例えば、HPLCカラムを通して低流速で移動する流体は層流である。層流では、流体の粒子の運動は、概して直線で移動する粒子に従順である。より高速では、水の慣性が流体の摩擦力に勝り、結果として乱流が生じる。不規則な境界と接触していない流体は、摩擦によって緩徐化される、又は不均一な表面によって偏向させられる流れを「追い越す」。流体が乱流として流動する場合は、流れが層流の場合よりも「抗力」を伴って、流体は渦巻きながら流動する。流体の流れが層流又は乱流であるかを決定する際に役立つ多数の参考文献を利用できる(例えば、Turbulent Flow Analysis: Measurement and Prediction, P.S. Bernard & J.M. Wallace, John Wiley & Sons, Inc.,(2000)、An Introduction to Turbulent Flow, Jean Mathieu & Julian Scott, Cambridge University Press (2001))。
【0040】
本明細書で使用する用語「ガスクロマトグラフィー」若しくは「GC」は、サンプル混合物が気化させられ、液体若しくは粒子状固体から構成される固定層を含有するカラムを通って移動するキャリヤガス流(窒素又はヘリウムとして)内に注入され、固定相のための化合物の親和性に従ってその成分化合物に分離されるクロマトグラフィーを意味する。
【0041】
本明細書で使用する用語「大粒子カラム」若しくは「抽出カラム」は、約50μmより大きい平均粒径を含有するクロマトグラフィーカラムを意味する。
【0042】
本明細書で使用する用語「分析カラム」は、サンプル中で分析物の存在又は量の決定を可能にするために十分なカラムから溶出する材料の分離を実行するために十分なクロマトグラフィープレートを有するクロマトグラフィーカラムを意味する。好ましい実施形態では、分析カラムは、直径が約5μmの粒子を含有する。そのようなカラムは、その後の分析のために精製されたサンプルを得るために保持されていない物質から保持された物質を分離又は抽出するという一般的目的を有する「抽出カラム」とは識別されることが多い。
【0043】
本明細書で使用する用語「オンライン」及び「インライン」、例えば「オンライン自動法」又は「オンライン抽出」で使用される用語は、オペレータが介入する必要を伴わずに実施される手順を意味する。これとは対照的に、本明細書で使用する用語「オフライン」は、オペレータの手作業による介入を必要とする手順を意味する。従って、サンプルが沈殿させられ、次に上清がオートサンプラー内に手作業で充填される場合は、沈殿及び充填工程はその後の工程からオフラインである。本方法の様々な実施形態では、1つ又はそれ以上の工程は、オンライン自動法で実施することができる。
【0044】
本明細書で使用する用語「質量分析法」若しくは「MS」は、それらの質量によって化合物を同定するための分析技術を意味する。MSは、濾過し、検出し、及びそれらの質量対電荷比若しくは「m/z」に基づいてイオンを測定する方法を意味する。MSテクノロジーは、一般には(1)荷電化合物を形成するために化合物をイオン化する工程、及び(2)該荷電化合物の分子量を検出して質量対電荷比を計算する工程を含んでいる。化合物は、任意の適切な手段によってイオン化及び検出することができる。「質量分析計」は、一般にはイオン化装置及びイオン検出器を含んでいる。一般に、対象の1つ又はそれ以上の分子がイオン化され、該イオンは引き続いて質量分析器械内に導入され、そこで磁場と電場の組み合わせのために、該イオンは質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存する空間内の経路を辿る。例えば、「Mass Spectrometry From Surfaces」と題する米国特許第6,204,500号明細書、「Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry」と題する同第6,107,623号明細書、「DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry」と題する同第6,268,144号明細書、「Surface-Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desorption And Detection Of Analytes」と題する同第6,124,137号明細書、Wright et al., Prostate Cancer and Prostatic Diseases 1999, 2: 264-76及びMerchant and Weinberger, Electrophoresis 2000, 21: 1164-67を参照されたい。
【0045】
本明細書で使用する用語「負のイオンモードで操作する」は、負のイオンが生成されて検出される質量分析法を意味する。本明細書で使用する用語「正のイオンモードで操作する」は、正のイオンが生成されて検出される質量分析法を意味する。
【0046】
本明細書で使用する用語「イオン化」若しくは「イオン化する工程」は、1つ又はそれ以上の電子単位と同等の正味電荷を有する分析物イオンを生成する方法を意味する。負のイオンは、1つ又はそれ以上の電子単位の正味負電荷を有するイオンであり、一方、正のイオンは1つ又はそれ以上の電子単位の正味正電荷を有するイオンである。
【0047】
本明細書で使用する用語「電子イオン化」若しくは「EI」は、気相若しくは蒸気相内の対象の分析物が電子の流れと相互作用する方法を意味する。電子と分析物との衝撃は、次に質量分析技術を受けさせることができる分析物イオンを生成する。
【0048】
本明細書で使用する用語「化学イオン化」若しくは「CI」は、試薬ガス(例えば、アンモニア)が電子衝撃に曝露され、分析物イオンが試薬ガスイオンと分析物分子との相互作用によって形成される方法を意味する。
【0049】
本明細書で使用する用語「高速原子衝撃法」若しくは「FAB」は、高エネルギー原子ビーム(Xe又はArであることが多い)が、非揮発性サンプルに衝撃を与え、該サンプル中に含有される分子を脱離してイオン化する方法を意味する。試験サンプルは、様々な液体マトリックス、例えば、グリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン中に溶解される。化合物又はサンプルにとって適切なマトリックスの選択は、経験に基づく方法である。
【0050】
本明細書で使用する用語「マトリックス支援レーザー脱離イオン化法」若しくは「MALDI」は、非揮発性サンプルが、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化及びクラスタ崩壊を含む様々なイオン化経路によって該サンプル中の分析物を脱離及びイオン化するレーザー照射に曝露される方法を意味する。MALDIのためには、サンプルは、分析物分子の脱離を促進するエネルギー吸収マトリックスと混合される。
【0051】
本明細書で使用する用語「表面増強レーザー脱離イオン化法」若しくは「SELDI」は、非揮発性サンプルが、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化及びクラスタ崩壊を含む様々なイオン化経路によって該サンプル中の分析物を脱離及びイオン化するレーザー照射に曝露される又別の方法を意味する。SELDIのためには、サンプルは、通常は1つ又はそれ以上の対象の分析物を優先的に保持する表面に結合される。MALDIにおけるものと同様に、この方法もイオン化を促進するためにエネルギー吸収材料を使用することができる。
【0052】
本明細書で使用する用語「エレクトロスプレーイオン化」若しくは「ESI」は、溶液が長さの短いキャピラリーチューブに沿って通過させられ、その端部では正又は負の高電位が印加される方法を意味する。キャピラリーチューブの端部に達した溶液は、溶媒蒸気中の溶液の極めて小さな液滴のジェット又はスプレーに蒸気化(噴霧化)される。この液滴のミストは、凝縮を防止して溶媒を蒸発させるために僅かに加熱される蒸発チャンバを通って流動する。液滴がより小さくなるにつれて電気面電荷密度は、同電荷間の自然反発力がイオン並びに中性分子を遊離させるようになる時点まで増加する。
【0053】
本明細書で使用する用語「大気圧化学イオン化」若しくは「APCI」は、ESIに類似する質量分析法を意味するが、APCIは、大気圧下のプラズマ内で発生するイオン−分子反応によってイオンを生成する。プラズマは、スプレーキャピラリーと対電極との間の放電によって維持される。次にイオンは、通常は、1組の差動揚水スキマー段階の使用によって質量分析装置内へ抽出される。向流の乾性及び予熱Nガスを使用すると、溶媒の除去を改善することができる。APCIにおける気相イオン化は、低極性種を分析するためにはESIより有効な可能性がある。
【0054】
本明細書で使用する用語「大気圧光イオン化」若しくは「APPI」は、分子Mのイオン化のための機序が分子イオンMを形成するための光子吸収及び電子放出であるイオン化の形態を意味する。吸収された光子のエネルギーは、通常はイオン化電位より僅かに高いために、分子イオンは解離されにくい。多くの場合に、クロマトグラフィーを必要とせずにサンプルを分析することが可能であるので、時間及び費用を大きく節約することができる。水蒸気又はプロトン性溶媒の存在下では、分子イオンはHを抽出してMHを形成することができる。これは、Mが高プロトン親和性を有する場合に発生する傾向がある。これは、M及びMHの合計が一定であるために、定量正確性に影響を及ぼさない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は通常はMHであると観察されるが、非極性化合物、例えばナフタレン又はテストステロンは、通常はMを形成する。例えば、Robb et al., Anal. Chem. 2000, 72 (15): 3653-3659を参照されたい。
【0055】
本明細書で使用する用語「誘導結合プラズマ」若しくは「ICP」は、サンプルが、ほとんどの元素が霧化及びイオン化されるような十分に高温で不完全イオン化ガスと相互作用する方法を意味する。
【0056】
本明細書で使用する用語「脱離」は、表面からの分析物の除去及び/又は分析物の気相内への進入を意味する。レーザーダイオード熱脱離(LDTD)は、分析物を含有するサンプルがレーザーパルスによって気相内へ熱により脱離される技術である。レーザーは、金属基板を備える特別製作された96ウエルプレートの背部に衝突する。レーザーバルスは該基板を加熱し、この熱はサンプルが気相内へ移動するのを誘発する。次に気相サンプルは、イオン化源内へ引き入れられ、そこで気相サンプルは質量分析計内での分析の準備においてイオン化される。LDTDを使用する場合は、気相サンプルのイオン化は、当分野において公知の任意の適切な技術、例えばコロナ放電を用いる(例えば、APCIによる)イオン化によって実施することができる。
【0057】
本明細書で使用する用語「電場脱離」は、非揮発性試験サンプルがイオン化面に配置され、強電場が分析物イオンを生成させるために使用される方法を意味する。
【0058】
本明細書で使用する用語「選択的イオンモニタリング法」は、比較的に狭い質量範囲内、通常は約1質量単位のイオンだけが検出される質量分析器械のための検出モードである。
【0059】
本明細書で使用する用語「多重反応モード」は、「選択された反応モニタリング」として公知でありこともあり、前駆体イオン及び1つ又はそれ以上のフラグメントイオンが選択的に検出される質量分析器械のための検出モードである。
【0060】
本明細書で使用する用語「定量下限(lower limit of quantification、lower limit of quantitation)」若しくは「LLOQ」は、測定値が定量的に有意となるポイントを意味する。このLOQでの分析物反応は、20%未満の相対標準偏差(RSD(%))及び80%から120%の正確性で同定可能であり、個別的及び再現性である。
【0061】
本明細書で使用する用語「検出限界」若しくは「LOD」は、測定値がそれと関連する不確実性より大きいポイントである。LODは数値がその測定値と関連する不確実性を超えているポイントであり、ゼロ濃度での平均値のRSDの3倍であると規定されている。
【0062】
本明細書で使用する、体液サンプル中の分析物の「量」は、一般にサンプルの容積中で検出可能な分析物の質量を反映している絶対値を意味する。しかし、量は、さらに別の分析物の量と比較した相対量も企図している。例えば、サンプル中の分析物の量は、該サンプル中に通常存在する該分析物のコントロール若しくは正常レベルより大きい量であってよい。
【0063】
本明細書でイオンの質量の測定値を含まない量的測定値と関連して使用する用語「約」は、指示された数値±10%を意味する。質量分析器械は、特定の分析物の質量を決定する際に僅かに変動することがある。イオンの質量又はイオンの質量/電荷比の状況における用語「約」は、±0.50原子質量単位を意味する。
【0064】
上記で記載した本発明の概要は非限定的であり、本発明の他の特徴及び利点は、以下の本発明の詳細な説明及び特許請求の範囲から明白になる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1AからCは、PTAD−ビタミンD、PTAD−ビタミンD及びPTAD−ビタミンD−[6,19,19]−(内部標準)各々の典型的なクロマトグラムを示した図である。詳細については、実施例3で考察する。
【図2A】図2Aは、実施例3において記載した方法によって決定した、血清サンプル中のビタミンD及びビタミンDについての典型的な検量線を示した図である。
【図2B】図2Bは、実施例3において記載した方法によって決定した、血清サンプル中のビタミンD及びビタミンDについての典型的な検量線を示した図である。
【図3】図3は、ビタミンD及びビタミンDについての変動係数対濃度のプロットを示した図である。詳細については、実施例5で考察する。
【図4】図4は、様々なサンプルマトリックス内でのビタミンDの分析の比較試験の結果を示した図である。詳細については、実施例11で考察する。
【図5A】図5Aは、ビタミンDのイオン化についての典型的なQ1スキャンスペクトル(約300から450のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図5B】図5Bは、約397.2のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図5C】図5Cは、約379.2のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例14で考察する。
【図6A】図6Aは、ビタミンD−[6,19,19]−イオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約300から450のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図6B】図6Bは、約400.2のm/zを備えるビタミンD−[6,19,19]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図6C】図6Cは、約382.2のm/zを備えるビタミンD−[6,19,19]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例14で考察する。
【図7A】図7Aは、ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−イオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約300から450のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図7B】図7Bは、約403.2のm/zを備えるビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図7C】図7Cは、約385.2のm/zを備えるビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例14で考察する。
【図8A】図8Aは、ビタミンDのイオン化についての典型的なQ1スキャンスペクトル(約300から450のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図8B】図8Bは、約385.2のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図8C】図8Cは、約367.2のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例14で考察する。
【図9A】図9Aは、ビタミンD−[6,19,19]−イオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約300から450のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図9B】図9Bは、約388.2のm/zを備えるビタミンD−[6,19,19]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図9C】図9Cは、約370.2のm/zを備えるビタミンD−[6,19,19]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例14で考察する。
【図10A】図10Aは、ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−イオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約300から450のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図10B】図10Bは、約391.2のm/zを備えるビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図10C】図10Cは、約373.2のm/zを備えるビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約100から400のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例14で考察する。
【図11A】図11Aは、PTAD−ビタミンDイオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約500から620のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図11B】図11Bは、約572.2のm/zを備えるPTAD−ビタミンD前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約250から350のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例15で考察する。
【図12A】図12Aは、PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−イオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約500から620のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図12B】図12Bは、約575.2のm/zを備えるPTAD−ビタミンD−[6,19,19]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約250から350のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例15で考察する。
【図13A】図13Aは、PTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−イオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約500から620のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図13B】図13Bは、約578.2のm/zを備えるPTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約250から350のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例15で考察する。
【図14A】図14Aは、PTAD−ビタミンDイオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約500から620のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図14B】図14Bは、約560.2のm/zを備えるPTAD−ビタミンD前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約250から350のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例15で考察する。
【図15A】図15Aは、PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−イオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約500から620のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図15B】図15Bは、約563.2のm/zを備えるPTAD−ビタミンD−[6,19,19]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約250から350のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例15で考察する。
【図16A】図16Aは、PTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−イオンについての典型的なQ1スキャンスペクトル(約500から620のm/z範囲をカバーする)を示した図である。
【図16B】図16Bは、約566.2のm/zを備えるPTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−前駆体イオンのフラグメント化についての典型的な生成物イオンスペクトル(約250から350のm/z範囲をカバーする)を示した図である。詳細については、実施例15で考察する。
【発明を実施するための形態】
【0066】
サンプル中のビタミンDを測定するための方法について記載する。より詳細には、サンプル中のビタミンDを検出及び定量するための質量分析法について記載する。本方法は、クックソン型試薬、例えばPTADを使用して誘導体化ビタミンDを生成することができる。しかし一部の方法では誘導体化剤が使用されず、非誘導体化ビタミンD及び/又はビタミンDが質量分析法によって検出される。
【0067】
本方法は、非誘導体化若しくは誘導体化ビタミンD及び/又はビタミンDの精製を実施するために抽出クロマトグラフィー技術、例えば、乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)を質量分析(MS)の方法と組み合わせて使用することができ、それによってサンプル中のビタミンD及び/又はビタミンDを検出及び定量するための高スループットアッセイシステムを提供する。又は、一部の方法では、抽出クロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーがサンプル分析のために必要とされない。これらの方法では、非誘導体化又は誘導体化ビタミンD及び/又はビタミンDは、LDTDを用いてイオン化される。好ましい実施形態は、自動ビタミンD定量のための大規模臨床研究室において適用するために特に良好に適合する。
【0068】
本発明の方法において使用するための適切な試験サンプルには、対象の分析物を含有する可能性がある任意の試験サンプルが含まれる。一部の好ましい実施形態では、サンプルは、生物学的サンプル、即ち、任意の生物学的起源、例えば動物、細胞培養、臓器培養などから得られるサンプルである。特定の好ましい実施形態では、サンプルは、哺乳動物、例えばイヌ、ネコ、ウマなどから入手される。特に好ましい哺乳動物は、霊長類、最も好ましくはヒトの男性又は女性である。好ましいサンプルは、体液、例えば血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液若しくは組織サンプル、好ましくは血漿(EDTA及びヘパリン血漿を含む)及び血清、最も好ましくは血清を含んでいる。そのようなサンプルは、例えば、患者、つまり生きている、男性又は女性の、疾患又は状態の診断、予後診断、若しくは治療を受けるために医療環境に現れたヒトから入手できる。
【0069】
本発明は、ビタミンD定量アッセイのためのキットも企図している。ビタミンD定量アッセイのためのキットは、本明細書に提供した組成物を含むキットを含むことができる。例えば、キットは、充填材料及び測定量のクックソン型試薬及び同位体標識された内部標準を少なくとも1回のアッセイのために十分量で含むことができる。通常は、本キットは、さらにビタミンD定量アッセイにおいて使用するための包装された試薬を使用するための(例えば、紙又は電子媒体に含有される)有形で記録された取扱説明書も含むことになる。
【0070】
本発明の実施形態において使用するための較正及びQCプールは、好ましくは予定されるサンプルマトリックスに類似するマトリックスを使用して調製される。
【0071】
質量分析法による分析のためのサンプル調製
質量分析法による分析のための調製において、ビタミンDは、サンプル(例えば、タンパク質)中の1つ又はそれ以上の他の成分と比較して、例えば、液体クロマトグラフィー、濾過、遠心分離、薄層クロマトグラフィー(TLC)、キャピラリー電気泳動法を含む電気泳動法、免疫親和性分離を含む親和性分離法、酢酸エチル若しくはメタノール抽出を含む抽出法及びカオトロピック剤の使用又は上記のいずれかの組み合わせなどを含む当分野において公知の様々な方法によって濃縮することができる。
【0072】
タンパク質沈殿法は、試験サンプル、特に生物学的試験サンプル、例えば血清又は血漿を調製する1つの方法である。タンパク質精製法は、当分野において周知であり、例えば、Polson et al., Journal of Chromatography B 2003, 785: 263-275は、本発明の方法において使用するために適切なタンパク質沈殿法について記載している。タンパク質沈殿法は、サンプルから大部分のタンパク質を除去して上清中にビタミンDを残すために使用できる。サンプルは、遠心して液体上清を沈殿したタンパク質から分離することができる。又は、サンプルは、濾過して沈殿したタンパク質を除去することができる。次に、残っている上清若しくは濾液は、質量分析法による分析に直接に、又は、液体クロマトグラフィー及びその後の質量分析法による分析にかけることができる。特定の実施形態では、サンプル、例えば血漿若しくは血清は、ハイブリッドタンパク質沈殿/液−液抽出法によって精製することができる。これらの実施形態では、サンプルは、メタノール、酢酸エチル及び水と混合し、生じた混合液はボルテックスミキサーにかけて遠心させる。生じた上清は取り出し、完全に乾燥させ、アセトニトリル中で再構成される。次に、精製されたビタミンDは、任意のクックソン型試薬、好ましくはPTAD又はその同位体標識された変種を用いて誘導体化することができる。
【0073】
質量分析法の前に使用できるサンプル精製の又別の方法は、液体クロマトグラフィー(LC)である。HPLCを含む液体クロマトグラフィーの特定の方法は、比較的緩徐な層流技術に依存している。伝統的なHPLC分析は、カラム充填に依存しており、このとき該カラムを通るサンプルの層流が該サンプルから対象の分析物を分離するための基礎である。当業者であれば、そのようなカラム内での分離が拡散方法であることを理解し、HPLCを含むLC、誘導体化ビタミンDと共に使用するために適する器械及びカラムを選択することができる。クロマトグラフィーカラムは、通常は、化学成分の分離(即ち、分別)を促進するための媒質(即ち、充填材料)を含んでいる。媒質は微細粒子を含むことができ、又は多孔性チャネルを備えるモノリシック材料を含むことができる。媒質の表面は、通常は、化学成分の分離を促進するために様々な化学成分と相互作用する接合面を含んでいる。1つの適切な接合面は、疎水性接合面、例えばアルキル接合面、シアノ接合面、又は高純度シリカ表面である。アルキル接合面は、C−4、C−8、C−12、又はC−18接合アルキル基を含むことができる。好ましい実施形態では、カラムは高純度シリカカラム(例えば、Thermo Hypersil Gold Aqカラム)である。クロマトグラフィーカラムは、サンプルを受け入れるための入口ポート及び分別されたサンプルを含む流出物を放出するための出口ポートを含んでいる。サンプルは、入口ポートへ直接に、又は抽出カラム、例えばオンラインSPEカートリッジ若しくはTFLC抽出カラムから供給することができる。
【0074】
1つの実施形態では、サンプルは入口ポートでLCカラムへ提供し、溶媒若しくは溶媒混合液と共に溶出させ、出口ポートで放出することができる。対象の分析物を溶出するために様々な溶媒モードを選択することができる。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、アイソクラチックモード又は多型的(即ち、混合型)モードを用いて実施することができる。クロマトグラフィー中、材料の分離は変量、例えば溶離液(「移動相」としても公知である)、溶出モード、勾配条件、温度などの選択によって実施できる。
【0075】
特定の実施形態では、分析物は、サンプルをカラムへ、対象の分析物がカラム充填材料によって可逆的に保持されるが1つ又はそれ以上の材料が保持されない条件下で適用することによって精製できる。これらの実施形態では、対象の分析物がカラムによって保持される第1移動相条件を使用することができ、引き続いて、保持されなかった材料が洗い流されると保持された材料をカラムから除去するために第2移動層条件を使用することができる。又は、分析物は、サンプルをカラムへ、対象の分析物が1つ又はそれ以上の他の材料と比較して示差的速度で溶出する移動相条件下で適用することによって精製できる。そのような手順は、対象の1つ又はそれ以上の分析物の量を該サンプルの1つ又はそれ以上の他の成分と比較して濃縮することができる。
【0076】
1つの好ましい実施形態では、HPLCは、アルキル接合分析カラムクロマトグラフィーシステムを用いて実施される。特定の好ましい実施形態では、高純度シリカカラム(例えば、Thermo Hypersil Gold Aqカラム)が使用される。特定の好ましい実施形態では、HPLC及び/又はTFLCは、移動相AとしてHPLCグレードの水及び移動相BとしてHPLCグレードのエタノールを使用して実施される。
【0077】
バルブ及び連結配管を注意深く選択することによって、2つ又はそれ以上のクロマトグラフィーカラムを材料がいかなる手作業の工程も全く必要とせずに1つのカラムから次のカラムへ通過するように必要に応じて接続することができる。好ましい実施形態では、バルブ及び配管の選択は、必要な工程を実施するために前もってプログラムされたコンピュータによって制御される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムは、さらにオンライン方式で検出システム、例えばMSシステムへ接続される。従って、オペレータは、サンプルのトレイをオートサンプラーへ配置することができ、残りの作業はコンピュータ制御下で実施され、結果として選択された全サンプルの精製及び分析が行われる。
【0078】
一部の実施形態では、抽出カラムは、質量分析法の前にビタミンD代謝産物を精製するために使用できる。そのような実施形態では、サンプルは、分析物を捕捉する抽出カラムを用いて抽出し、次にイオン化の前に第2抽出カラム上又は分析用HPLCカラム上で溶出させてクロマトグラフィーにかけることができる。例えば、TFLC抽出カラムを用いたサンプル抽出は、粒径の大きな(50μm)充填カラムを用いて実施することができる。このカラムから溶出されたサンプルは、次に質量分析法の前にさらに精製するためにHPLC分析カラムへ移すことができる。これらのクロマトグラフィー法に含まれる工程は自動方式で連結することができるので、分析物の精製中にオペレータが関与する要件は最小限に抑えることができる。この特徴は、時間及び費用の節約を生じさせ、オペレータが操作を間違える可能性を排除することができる。
【0079】
一部の実施形態では、タンパク質沈殿法は、メタノールタンパク質沈殿法及び血清からの酢酸エチル/水による抽出を含む複合型タンパク質沈降法/液−液抽出法を用いて実施される。結果として生じるビタミンD代謝産物は、抽出カラムにかける前に誘導体化することができる。好ましくは、複合型タンパク質沈殿法/液−液抽出法及び抽出カラムはオンライン方式で接続される。好ましい実施形態では、抽出カラムは、C−8抽出カラム、例えばCohesive Technologies C8XLオンライン抽出カラム(粒径:50μm、0.5×50mm)又は同等物である。次に抽出カラムからの溶離液は、質量分析法による分析の前に、分析用LCカラム、例えばHPLCカラムへオンライン方式で適用することができる。これらのクロマトグラフィー法に含まれる工程は自動方式で連結することができるので、分析物の精製中にオペレータが関与する要件は最小限に抑えることができる。この特徴は、時間及び費用の節約を生じさせ、オペレータが操作を間違える可能性を排除することができる。
【0080】
質量分析法による検出及び定量
様々な実施形態では、誘導体化ビタミンDは、当業者には公知の任意の方法によってイオン化することができる。質量分析法は、分別されたサンプルをイオン化し、その後の分析のために荷電分子を作り出すためのイオン源を含む質量分析計を用いて実施される。例えば、サンプルのイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、レーザーダイオード熱脱離(LDTD)、高速原子衝撃法(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電場イオン化、電場脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)及び粒子ビームイオン化によって実施することができる。当業者であれば、イオン化法の選択は、測定対象の分析物、サンプルのタイプ、検出器のタイプ、正対負のモードの選択などに基づいて決定することができることを理解する。
【0081】
誘導体化ビタミンDは、正又は負のモードでイオン化できる。好ましい実施形態では、誘導体化ビタミンDは、正イオンモードでAPCI又はLDTDを用いてイオン化される。
【0082】
質量分析法の技術では、一般に、サンプルがイオン化された後、それにより作り出された正又は負の荷電イオンを分析して質量対電荷比を決定することができる。質量対電荷比を決定するために適するアナライザーには、四重極アナライザー、イオントラップアナライザー及び飛行時間アナライザーが含まれる。典型的なイオントラップ法は、Bartolucci, et al., Rapid Commun. Mass Spectrom. 2000, 14: 967-73に記載されている。
【0083】
イオンは、幾つかの検出モードを使用して検出することができる。例えば、選択されたイオンは、即ち選択的イオンモニタリングモード(SIM)を使用して検出でき、又は衝突誘起解離若しくは自然損失の結果として生じた質量変化は、例えば多重反応モニタリング(MRM)又は選択された反応モニタリング(SRM)によって監視することができる。好ましくは、質量対電荷比は、四重極アナライザーを使用して決定される。例えば、「四重極」若しくは「四重極イオントラップ」機器では、振動無線周波数電磁場内のイオンは電極間に印加されたDC電位に比例する力、RF信号の振幅及び質量/電荷比を経験する。電圧及び振幅は、特定質量/電荷比を有するイオンだけが四重極の全長を移動し、他の全てのイオンは偏向させられるように選択することができる。従って、四重極機器は、該機器内に注入されたイオンにとっての「質量フィルター」及び「質量検出器」の両方として機能できる。
【0084】
MS技術の解像度は、「タンデム質量分析法」若しくは「MS/MS」を使用することによって強化することができる。この技術では、対象の分子から生成された前駆体イオン(親イオンとも呼ばれる)はMS機器内で濾過することができ、該前駆体イオンは引き続いて第2MS法において分析される1つ又はそれ以上のフラグメントイオン(娘イオン又は生成物イオンとも呼ばれる)を産生するためにフラグメント化される。前駆体イオンの注意深い選択によって、特定の分析物によって生成されたイオンだけがフラグメント化チャンバへ通過させられ、そこでの不活性ガスの原子との衝突がフラグメントイオンを生成する。前駆体イオン及びフラグメントイオンはどちらも所定セットのイオン化/フラグメント化条件下で反復方法により生成されるので、MS/MS技術は極めて強力な分析用ツールを提供することができる。例えば、濾過/フラグメント化の組み合わせは、干渉物質を排除するために使用することができ、複雑なサンプル中、例えば生物学的サンプル中で特に有用な可能性がある。
【0085】
タンデム質量分析器械を操作する又別のモードには、生成物イオンスキャニング及び前駆体イオンスキャニングが含まれる。これらの操作モードの説明については、例えば、E. Michael Thurman, et al., Chromatographic-Mass Spectrometric Food Analysis for Trace Determination of Pesticide Residues, Chapter 8 (Amadeo R. Fernandez-Alba, ed., Elsevier 2005) (387)を参照されたい。
【0086】
分析物アッセイの結果は、当分野において公知の数多くの方法によって、原サンプル中の該分析物の量と関連付けることができる。例えば、サンプリング及び分析パラメータが注意深く制御されていることを前提にすると、所定のイオンの相対存在量は、相対存在量を原分子の絶対量へ変換する表と比較することができる。又は、サンプルと共に外部標準をランし、それらの標準から生成されたイオンに基づいて標準曲線を構築することができる。そのような標準曲線を使用すると、所定のイオンの相対存在量を原分子の絶対量へ変換することができる。特定の好ましい実施形態では、内部標準を使用して、ビタミンDの量を計算するための標準曲線を作成する。そのような標準曲線を作成及び使用する方法は当分野において周知であり、当業者であれば適切な内部標準を選択することができる。例えば、好ましい実施形態では、1つ又はそれ以上の同位体標識されたビタミンD(例えば、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[6,19,19]−)を内部標準として使用できる。イオンの量を原分子の量へ関連付けるための他の数多くの方法は、当業者には周知である。
【0087】
本方法の1つ又はそれ以上の工程は、自動機械を使用して実施することができる。特定の実施形態では、1つ又はそれ以上の精製工程はオンラインで実施され、より好ましくは精製及び質量分析法工程の全部をオンライン方式で実施することができる。
【0088】
特定の実施形態、例えばMS/MSでは、前駆体イオンがその後のフラグメント化のために単離され、衝突活性化解離(CAD)がその後の検出のためのフラグメントイオンを生成するために使用されることが多い。CADでは、前駆体イオンは不活性ガスとの衝突を通してエネルギーを獲得し、引き続いて「単分子分解」と呼ばれる方法によってフラグメント化する。前駆体イオン内には、該イオン内の特定の結合を増加した振動エネルギーに起因して崩壊できるように十分なエネルギーが堆積させられなければならない。
【0089】
一部の好ましい実施形態では、サンプル中のビタミンDは、以下のようにMS/MSを用いて検出及び/又は定量される。サンプルは、最初にタンパク質沈殿法又は複合型タンパク質沈殿/液−液抽出法によって精製される。次に、精製されたサンプル中のビタミンDは、場合によりクックソン型試薬、例えばPTADを用いて誘導体化される。次に、精製されたサンプルは、液体クロマトグラフィーに、好ましくは抽出カラム(例えば、TFLCカラム)、次の分析カラム(例えば、HPLCカラム)上でかけられる。クロマトグラフィーカラムからの液体溶媒の流れは、MS/MSアナライザーのネブライザー界面に進入し、及び溶媒/分析物混合液は、界面の加熱荷電チュービング内で蒸気に変換られる。溶媒中に含有される分析物(例えば、誘導体化又は非誘導体化ビタミンD)は、溶媒/分析物混合液へ大きな電圧を印加することによってイオン化される。分析物が界面の荷電チュービングから出て行くにつれて、溶媒/分析物混合液は霧状になり、溶媒は蒸発し、分析物イオンが残る。分析物イオン、例えば前駆体イオンは、器械の開口部を通過して第1四重極に進入する。四重極1及び3(Q1及びQ3)は、質量フィルターであり、それらの質量対電荷比(m/z)に基づいてイオンの選択(即ち、Q1及びQ3における「前駆体」イオン及び「フラグメント」イオン各々の選択)を可能にする。四重極2(Q2)は、イオンがフラグメント化される衝突セルである。質量分析計の第1四重極(Q1)は、対象の質量対電荷比を備えるイオンを選択する。正しい質量/電荷比を備える前駆体イオンは衝突チャンバ(Q2)を通過させられるが、一方、任意の他の質量/電荷比を備える望ましくないイオンは該四重極の側面に衝突し、排除される。Q2に進入する前駆体イオンは中性アルゴンガス分子及びフラグメントと衝突する。生成されたフラグメントイオンは四重極3(Q3)内に通過させられ、そこで誘導体化又は非誘導体化ビタミンDフラグメントイオンが選択され、その他のイオンが排除される。
【0090】
本方法は、正又は負いずれかのイオンモード、好ましくは正のイオンモードで実施されるMS/MSを含むことができる。当分野において周知の標準方法を用いると、当業者であれば、四重極3(Q3)において選択するために使用できる誘導体化ビタミンDの特定前駆体イオンの1つ又はそれ以上のフラグメントイオンを同定することができる。
【0091】
イオンが検出器と衝突するにつれて、イオンはデジタル信号に変換される電子パルスを生成する。獲得されたデータは、コンピュータへ中継され、コンピュータは収集されたイオン対時間の計数をプロットする。結果として生じる質量クロマトグラムは、伝統的HPLC−MS法において生成されたクロマトグラムに類似する。特定イオンに対応するピーク下の面積、又はそのようなピークの振幅を測定し、対象の分析物の量に関連付けることができる。特定の実施形態では、フラグメントイオン及び/又は前駆体イオンについての曲線下面積、又はピークの振幅は、ビタミンDの量を決定するために測定される。上述したように、所定のイオンの相対存在量は、内部分子標準の1つ又はそれ以上のイオンのピークに基づいて標準検量線を使用して原分析物の絶対量に変換することができる。
[実施例]
【実施例1】
【0092】
複合型タンパク質沈殿法/液−液抽出法及びクックソン型誘導体化
以下の自動複合型タンパク質沈殿法/液−液抽出法は、患者血清サンプルを対象に実施した。ゲル−バリヤ血清(即ち、血清分離剤チューブ内に収集された血清)並びにEDTA血漿及びヘパリン血漿も、このアッセイのために許容されることが確定されている。
【0093】
Perkin−Elmer社製Janus ロボット及びTomTec社製Quadra Tower ロボットを使用して以下の手順を自動化した。各サンプルについて、50μLの血清を96ウエルプレートのウエルに加えた。次に25μLの内部標準カクテル(同位体標識されたビタミンD−[6,19,19]−を含有する)を各ウエルに加え、プレートをボルテックスミキサーにかけた。次に75μLのメタノールを加え、さらに追加してボルテックスミキサーにかけた。次に300μLの酢酸エチル及び75μLの水を加え、追加してボルテックスミキサーにかけ、遠心し、生じた上清を新しい96ウエルプレートに移した。
【0094】
第2の96ウエルプレート内に移した液体は、流動する窒素ガスマニホールド下で完全に乾燥させた。誘導体化は、各ウエルにアセトニトリル中のクックソン型誘導体化剤PTADの0.1mg/mL溶液100μLを加えることによって実施した。誘導体化反応をおよそ1時間に渡り進行させ、反応混合液に水100μLを加えることによってクエンチさせた。
【実施例2】
【0095】
液体クロマトグラフィーを用いたビタミンDの抽出
サンプル注入は、Aria OS V1.5.1若しくはそれ以降のソフトウエアを使用してCohesive Technologies Aria TX−4 TFLCシステムを用いて実施した。
【0096】
TFLCシステムは、上記で調製したサンプルのアリコートを大粒子が充填されたCohesive Technologies C8XLオンライン抽出カラム(粒径:50μm、005×50mm、Cohesive Technologies社)内へ自動的に注入した。サンプルは、抽出カラム内で乱流を作り出すために高流速で装填した。この乱流は、カラム内での誘導体化ビタミンDの大粒子への最適な結合並びに廃棄するための過剰な誘導体化試薬及び破片の通過を保証した。
【0097】
装填後、サンプルは、水/エタノール溶出勾配を用いて、分析カラムThermo Hypersil Gold Aq分析カラム(粒径:5μm、50×2.1mm)へ溶出させた。ビタミンDをサンプル中に含有される他の分析物から分離するために、HPLC勾配を分析カラムへ適用した。移動相Aは水であり、移動相Bはエタノールであった。HPLC勾配は、35%有機勾配で開始し、およそ65秒間で99%へ増加させた。
【実施例3】
【0098】
誘導体化ビタミンDのMS/MSによる検出及び定量
MS/MSは、上記で生成されたサンプルを対象にFinnigan TSQ Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation社)を使用して実施した。全部がThermo Electron社製である以下のソフトウエアプログラムを本明細書に記載した実施例において使用した:Quantum Tune Master V1.5又はそれ以降、Xcalibur V2.07又はそれ以降、LCQuan V2.56(Thermo Finnigan社)又はそれ以降及びARIA OS v1.5.1(Cohesive Technologies社)又はそれ以降。分析カラムから出た液体溶媒/分析物はMS/MSアナライザーのネブライザー界面へ流動した。溶媒/分析物混合液は、界面のチュービング内で蒸気に変換された。噴霧化された溶媒の分析物は、APCIによってイオン化された。
【0099】
イオンは、質量対電荷比572.3±0.5のm/z及び560.3±0.5のm/zを各々備えるビタミンD及びビタミンD前駆体イオンを選択する第1四重極(Q1)を通過した。四重極2(Q2)に進入したイオンはアルゴンガスと衝突してイオンフラグメントを生成し、これらのイオンフラグメントはその後の選択のために四重極3(Q3)へ通過させられた。質量分析計の設定は表1に示す。同時に、同位体希釈質量分析法を用いる同一方法を内部標準であるビタミンD−[6,19,19]−を用いて実施した。正極性及び指示された衝突エネルギーでのバリデーション中の検出及び定量のために使用した質量変化は表2に示す。
【表1】


【表2】

【0100】
PTAD−ビタミンD、PTAD−ビタミンD、PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−(内部標準)の典型的なクロマトグラムは、各々図1A、1B及び1Cに示す。
【0101】
血清試料中のビタミンD及びビタミンDの決定についての典型的な検量線は、各々図2A及び2Bに示す。
【実施例4】
【0102】
MS/MSによる誘導体化ビタミンD検出についての反応の直線性
直線性は、実施例1から3の方法によって、ビタミンD又はビタミンDいずれかの高内因性濃度を備える血清の4つのプールを希釈し、75%、50%及び25%の希釈液を2回ずつ分析することによって決定した。試料を平均回収率102%で1:4で希釈すると、85%から115%CVの精度限界内で2から240ng/mLの臨床報告可能範囲(CRR)が可能になる。これらの試験からの測定値及び回収率は表3に示す。
【表3】

【実施例5】
【0103】
分析感度:定量下限(LLOQ)及び検出限界(LOD)
定量下限(LLOQ)は、測定値が定量的に有意となるポイントである。このLLOQでの分析物の反応は、20%より大きい精度(即ち、変動係数(CV))及び80%から120%の正確性を備えて同定可能、個別的及び再現性である。LLOQは、公知の分析物濃度(2ng/mL、5ng/mL、10ng/mL、15ng/mL、20ng/mL、40ng/mL及び60ng/mL)を備えるサンプルを実施例1から3の方法によって4例ずつ5回アッセイし、再現性を評価することによって決定した。収集されたデータの分析は、2ng/mL未満の濃度を備えるサンプルが両方の分析物について20%未満のCVを産生することを示している。従って、各分析物のLLOQは、<2ng/mLであると決定された。PTAD−ビタミンD及びPTAD−ビタミンDのLLOQを決定するために生成されたデータは、各々表4及び5に示す。両方の分析物に対するCV対濃度のグラフ表示は図3に示す。
【表4】


【表5】

【0104】
検出限界(LOD)は、測定値がそれに関連する不確定性より大きく、ゼロ濃度から4標準偏差(SD)として適宜に規定されているポイントである。選択性は、分析法がサンプル中の他の成分の存在下で分析物を識別して定量する能力である。ブランクは、実施例1から3の方法に従って20回ずつ分析され、結果として生じた面積比を統計学的に分析してビタミンD及びビタミンDの両方についてのLODが0.4ng/mLであると決定された。各分析物についてのLODを決定するために収集したデータは表6に示す。
【表6】

【実施例6】
【0105】
検出の特異性
数例のサンプルはビタミンD、ビタミンD及びスパイク量の潜在的干渉種(ビタミンD代謝産物及び関連化合物を含む)を用いて調製し、実施例1から3の方法に従って分析した。干渉可能性について試験された化合物は表7に列挙する。試験された化合物はいずれも、実施例1から3の方法に従うと、ビタミンD又はビタミンDの検出との交差反応性を示さなかった。
【表7】

【実施例7】
【0106】
ビタミンD及びビタミンDの定量の再現性
アッセイ間変動はアッセイ内のサンプルの再現性であると規定されており、実施例1から3の方法に従って3つのQCプール各々からのサンプルを20回ずつアッセイすることによって決定した。これらの分析から収集したデータは、ビタミンD及びビタミンD各々について表8及び9に示す。QCプール内の分析物の濃度は、ビタミンDについては6.6ng/mL、20.6ng/mL及び52.6ng/mL、ビタミンDについては4.9ng/mL、20.5ng/mL及び48.6ng/mLであると決定された。結果について実施した統計学的検定は、3つのQCプールに関してビタミンDについては5.1%、4.6%及び3.9%、並びにビタミンDについては6.4%、4.0%及び4.5%の再現性を生じた。
【表8】


【表9】

【0107】
アッセイ間変動は、アッセイ間のサンプルの再現性(CV)であると規定されている。実施例1から3の方法に従って5回のアッセイに渡って評価したアッセイの報告可能範囲に及ぶ3つのQCプールを使用して、これらのプールについてのアッセイ間変動(CV)をビタミンD及びビタミンDについて決定した。ビタミンDについては、CVは各々6.5ng/mL、21.1ng/mL及び50.5ng/mLの平均濃度を用いて6.7%、5.6%及び4.0%であると決定された。ビタミンDについては、CVは各々4.7ng/mL、20.8ng/mL及び46.8ng/mLの平均濃度を用いて6.5%、5.9%及び4.2%であると決定された。これらの分析から収集したデータは、ビタミンD及びビタミンDについて各々表10及び11に示す。全プールは、≦15% CVの許容される再現性要件を満たした。
【表10】


【表11】

【実施例8】
【0108】
ビタミンDを定量するための方法相関試験
実施例1から3の方法に従ってビタミンDを定量するための方法相関試験は、本明細書に記載した広範囲に及ぶオフライン抽出を用いるタンデム質量分析法に従って分析した20例の分割サンプルを比較し、その後に紫外線検出を用いるHPLCを行うことによって実施した。試料は、各方法について1回ずつ分析した。データは、線形及びデミング回帰によって分析した。相関分析は表12に要約する。
【表12】

【実施例9】
【0109】
干渉試験
溶血干渉:実施例1から3に記載したアッセイにおける溶血の作用は、上昇したビタミンD及びビタミンDを含有する血清プール中にヘモグロビンをスパイクすることによって評価した。新鮮血液サンプルを遠心して濃縮赤血球を産生した。血球を脱イオン水中で再構成し、細胞溶解を達成するために冷凍した。次にこの粗ヘモグロビン溶液をプール内へスパイクすると、軽度(100mg/dL)及び中等度(500mg/dL)に溶血したサンプルが生成された。試料は、実施例1から3の方法に従って2回ずつ分析し、コントロールプールの結果と比較し、相違率(%)を計算した。データは、ヘモグロビンスパイクがいずれも、いずれの分析物に対してもコントロールと15%を超えて相違しなかったことを証明している。このため、軽度から中等度の溶血試料は許容される。生データについては表13を参照されたい(相違率(%)=(スパイク−非スパイク)/非スパイク×100%)。
【表13】

【0110】
黄疸干渉:実施例1から3に記載したアッセイにおける黄疸の作用は、上昇したビタミンD及びビタミンDを含有する血清プール中にビリルビンをスパイクすることによって評価した。次にビリルビンの濃縮溶液をプール内へスパイクして、軽度(10mg/dL)及び中等度(50mg/dL)の黄疸性サンプルを生成した。試料は、実施例1から3の方法に従って2回ずつ分析し、結果を非黄疸性プールの結果と比較し、正確性を計算した。データは、どちらの分析物も黄疸による影響を受けないことを証明している(全数値が85から115%の許容される正確性範囲内にある)。このため、黄疸性試料は許容される。生データについては表14を参照されたい(相違率(%)=(スパイク−非スパイク)/非スパイク×100%)。
【表14】

【0111】
脂血症干渉:実施例1から3に記載したアッセイにおける脂血症の作用は、上昇したビタミンD及びビタミンDを含有する血清プール中にブタ脳抽出物をスパイクすることによって評価した。粉末状脂質サンプル(Avanti社製極性脂質)を各プール内に溶解させ、軽度(400mg/dL)及び中等度(2000mg/dL)の脂血症試料を生成した。試料は、実施例1から3の方法に従って2回ずつ分析し、結果をコントロールプールの結果と比較し、正確性を計算した。データは、どちらの分析物も脂血症による影響を受けないことを証明している(全数値が85から115%の許容される正確性範囲内にある)。生データについては表15を参照されたい(相違率(%)=(スパイク−非スパイク)/非スパイク×100%)。
【表15】

【0112】
実施例1から3に記載したアッセイにおける脂血症の作用は、上昇したビタミンD及びビタミンDを含有する血清プール中にIntralipidエマルジョンをスパイクすることによって評価した。血清プールに、Intralipid(20%エマルジョン)を加えて、軽度(400mg/dL)及び中等度(2000mg/dL)脂血症試料を生成した。試料は、実施例1から3の方法に従って2回ずつ分析し、結果をコントロールプールの結果と比較し、正確性を計算した。データは、どちらの分析物も脂血症による影響を受けないことを証明している(全数値が85から115%の許容される正確性範囲内にある)。生データについては表16を参照されたい。
【表16】

【0113】
ブタ脳抽出物及びIntralipidを使用した2つの脂血症実験に基づいて、脂血症試料は許容される。
【実施例10】
【0114】
試料タイプの試験
試料は、10種の起源から4つの異なるVacutainer(登録商標)容器内に収集した。使用したVacutainerは、Red−Top(シリコンコーティング血清用チューブ)、SST(ゲル−バリヤ血清を生じさせる血清分離剤チューブ)、EDTAチューブ及びヘパリンナトリウムチューブであった。
【0115】
これらの40例のサンプルは、実施例1から3の方法に従って栄養的ビタミンDについて分析した。比較結果は、図4に提示する。データは、全4種のサンプルタイプが分析のために適合することを証明している。
【実施例11】
【0116】
ビタミンDについてのルーチン範囲の証明
患者140例由来の血清試料は、ビタミンDを定量するために実施例1から3に記載した方法に従って分析した。結果の範囲は<2ng/mLから約63ng/mLのビタミンDに及び、結果の95%は<2ng/mLから約20ng/mLの範囲内に含まれた。これらの分析の結果は表17に提示する。
【表17】

【実施例12】
【0117】
回収試験
混合回収率試験は、自然に上昇したレベルの25−ヒドロキシビタミンD若しくは25−ヒドロキシビタミンDを備える試料の分析によって実施したので、一部の内因性循環中ビタミンD又はビタミンDも有していた。本試験のためには、6対の試料を選択した。各対の試料(一般的には試料A及び試料Bと呼ぶ)から、5例のサンプルを調製し、実施例1から3の方法に従って4回ずつ分析した。これらのサンプルは、100% A、80% A−20% B、50% A−50% B、20% A−80% B、及び100% Bに対応した。回収率試験の結果は表18及び19に提示する。
【表18】


【表19】

【実施例13】
【0118】
ビタミンD及びビタミンDのMS/MS分析からの典型的なスペクトル
ビタミンD、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−のタンデム質量分析法による分析からの典型的なQ1スキャンスペクトルは、各々図5A、6A及び7Aに示す。これらの分析は、対象の分析物を含有する標準溶液をFinnigan TSQ Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation社)内に直接的に注入することによって実施した。液体クロマトグラフィー移動相は、800μL/分の80%アセトニトリル、0.1%ギ酸を含む20%の水を分析物導入の上流でHPLCカラムに通過させることによってシミュレーションした。分析物は、上述したようにAPCIによってイオン化した。スペクトルは、約300から450のm/z範囲に渡ってQ1をスキャンすることによって収集した。
【0119】
ビタミンD、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の各々についての2つの異なる前駆体イオンから生成した典型的な生成物イオンスキャンは、各々図5BからC、6BからC及び7BからCに示す。Q1において選択された前駆体イオン及びこれらの生成物イオンスペクトルを生成するために使用された衝突エネルギーは表20に示す。
【0120】
ビタミンDを定量するための典型的なMRM変化には、約397.2のm/zを備える前駆体イオンから約159.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化、及び約379.2のm/zを備える前駆体イオンから約158.9のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。ビタミンD−[6,19,19]−を定量するための典型的なMRM変化には、約400.2のm/zを備える前駆体イオンから約147.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化、及び約382.2のm/zを備える前駆体イオンから約312.2のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−を定量するための典型的なMRM変化には、約403.2のm/zを備える前駆体イオンから約159.1のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化、及び約385.2のm/zを備える前駆体イオンから約159.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。しかし図5BからC、6BからC及び7BからCにおける生成物イオンスキャンから明らかなように、前駆体イオンがフラグメント化されると他の数種の生成物イオンが生成される。追加の生成物イオンは、典型的なフラグメントイオンを置換又は増強するために、図5BからC、6BからC及び7BからCに示されたイオンから選択することができる。例えば、約397.2のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンのフラグメント化によって生成された追加の生成物イオンには、約146.9、133.1及び121.0のm/zを備えるイオンが含まれる。約379.2のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンのフラグメント化によって生成された典型的な追加の生成物イオンには、約283.2、187.3及び175.2のm/zを備えるイオンが含まれる。
【表20】

【0121】
ビタミンD、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−のタンデム質量分析法による分析からの典型的なQ1スキャンスペクトルは、各々図8A、9A及び10Aに示す。これらの分析は、対象の分析物を含有する標準溶液をFinnigan TSQ Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation社)内に直接的に注入することによって実施した。液体クロマトグラフィー移動相は、800μL/分の80%アセトニトリル、0.1%ギ酸を含む20%の水を分析物の導入の上流でHPLCカラムに通過させることによってシミュレーションした。スペクトルは、約300から450のm/z範囲に渡ってQ1をスキャンすることによって収集した。
【0122】
ビタミンD、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の各々についての2つの異なる前駆体イオンから生成した典型的な生成物イオンスキャンは、各々図8BからC、9BからC及び10BからCに示す。Q1において選択された前駆体イオン及びこれらの生成物イオンスペクトルを生成するために使用された衝突エネルギーは表21に示す。
【0123】
ビタミンDを定量するための典型的なMRM変化には、約385.2のm/zを備える前駆体イオンから約147.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化、及び約367.2のm/zを備える前駆体イオンから約159.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。ビタミンD−[6,19,19]−を定量するための典型的なMRM変化には、約388.2のm/zを備える前駆体イオンから約147.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化、及び約370.2のm/zを備える前駆体イオンから約162.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−を定量するための典型的なMRM変化には、約391.2のm/zを備える前駆体イオンから約159.1のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化、及び約373.2のm/zを備える前駆体イオンから約159.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。しかし図8BからC、9BからC及び10BからCにおける生成物イオンスキャンから明らかなように、前駆体イオンがフラグメント化されると他の数種の生成物イオンが生成される。追加の生成物イオンは、典型的なフラグメントイオンを置換又は増強するために、図8BからC、9BからC及び10BからCに示されたイオンから選択することができる。例えば、約385.2のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンのフラグメント化によって生成された追加の生成物イオンには、約159.0、133.1及び107.1のm/zを備えるイオンが含まれる。約367.2のm/zを備えるビタミンD前駆体イオンのフラグメント化によって生成された典型的な追加の生成物イオンには、約172.9、145.0及び119.1のm/zを備えるイオンが含まれる。
【表21】

【実施例14】
【0124】
PTAD誘導体化ビタミンD及びビタミンDのMS/MS分析からの典型的なスペクトル
ビタミンD、ビタミンD−[6,19,19]−、ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−、ビタミンD、ビタミンD−[6,19,19]−及びビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−のPTAD誘導体は、各分析物のストック溶液のアリコートをアセトニトリル中のPTADで処理することによって調製した。誘導体化反応はおよそ1時間に渡り進行させ、反応混合液に水を加えることによってクエンチさせた。次に誘導体化分析物は、上記の実施例2から3で説明した手順に従って分析した。
【0125】
PTAD−ビタミンD、PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−及びPTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−を含有するサンプルの分析からの典型的なQ1スキャンスペクトルは、各々図11A、12A及び13Aに示す。これらの分析は、対象の分析物を含有する標準溶液をFinnigan TSQ(商標)Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation社)内に直接的に注入することによって実施した。液体クロマトグラフィー移動相は、800μL/分の80%アセトニトリル、0.1%ギ酸を含む20%の水を分析物導入の上流でHPLCカラムに通過させることによってシミュレーションした。分析物は、上述したようにAPCIによってイオン化した。スペクトルは、約500から620のm/z範囲に渡ってQ1をスキャンすることによって収集した。
【0126】
PTAD−ビタミンD、PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−及びPTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の各々について前駆体イオンから生成した典型的な生成物イオンスキャンは、各々図11B、12B及び13Bに示す。Q1において選択された前駆体イオン及びこれらの生成物イオンスペクトルを生成するために使用された衝突エネルギーは表22に示す。
【0127】
PTAD−ビタミンDを定量するための典型的なMRM変化には、約572.2のm/zを備える前駆体イオンから約297.9のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−を定量するための典型的なMRM変化には、約575.2のm/zを備える前駆体イオンから約301.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。PTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−を定量するための典型的なMRM変化には、約578.2のm/zを備える前駆体イオンから約297.9のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。しかし図11B、12B及び13Bにおける生成物イオンスキャンから明らかなように、前駆体イオンがフラグメント化されると他の数種の生成物イオンが生成される。追加の生成物イオンは、典型的なフラグメントイオンを置換又は増強するために、図11B、12B及び13Bに示されたイオンから選択することができる。例えば、約572.2のm/zを備えるPTAD−ビタミンD前駆体イオンのフラグメント化によって生成された追加の生成物イオンには、約280.1のm/zを備えるイオンが含まれる。
【表22】

【0128】
PTAD−ビタミンD、PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−及びPTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−を含有するサンプルの分析からの典型的なQ1スキャンスペクトルは、各々図14A、15A及び16Aに示す。これらの分析は、対象の分析物を含有する標準溶液をFinnigan TSQ Quantum Ultra MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation社)内に直接的に注入することによって実施した。液体クロマトグラフィー移動相は、800μL/分の80%アセトニトリル、0.1%ギ酸を含む20%の水を分析物導入の上流でHPLCカラムに通過させることによってシミュレーションした。スペクトルは、約500から620のm/z範囲に渡ってQ1をスキャンすることによって収集した。
【0129】
PTAD−ビタミンD、PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−及びPTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−の各々についての前駆体イオンから生成した典型的な生成物イオンスキャンは、各々図14B、15B及び16Bに示す。Q1において選択された前駆体イオン及びこれらの生成物イオンスペクトルを生成するために使用された衝突エネルギーは表23に示す。
【0130】
PTAD−ビタミンDを定量するための典型的なMRM変化には、約560.2のm/zを備える前駆体イオンから約298.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。PTAD−ビタミンD−[6,19,19]−を定量するための典型的なMRM変化には、約563.2のm/zを備える前駆体イオンから約301.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。PTAD−ビタミンD−[26,26,26,27,27,27]−を定量するための典型的なMRM変化には、約566.2のm/zを備える前駆体イオンから約298.0のm/zを備える生成物イオンへのフラグメント化が含まれる。しかし図14B、15B及び16Bにおける生成物イオンスキャンから明らかなように、前駆体イオンがフラグメント化されると他の数種の生成物イオンが生成される。追加の生成物イオンは、典型的なフラグメントイオンを置換又は増強するために、図14B、15B及び16Bに示されたイオンから選択することができる。例えば、約560.2のm/zを備えるPTAD−ビタミンD前駆体イオンのフラグメント化によって生成された追加の生成物イオンには、約280.0のm/zを備えるイオンが含まれる。
【表23】

【0131】
本明細書で言及又は引用した論文、特許及び特許出願、並びに他の全ての文献及び電子的に入手できる情報の内容は、各個別刊行物が参照により組み入れられると特別及び個別に指示された場合と同程度まで全体として参照により組み入れられる。出願人らは、いずれかのそのような論文、特許、特許出願、又は他の物理的及び電子的文献からのありとあらゆる材料及び情報を本出願に物理的に組み入れる権利を留保する。
【0132】
本明細書に具体的に記載した方法は、本明細書に特別にではなく開示したいずれかの要素、限度の非存在下で適切に実施することができる。従って例えば、用語「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などは、拡張的に、及び制限なく読まれるべきである。さらに、本明細書で使用した用語及び表現は、制限するためではなく説明の用語として使用されていて、そのような用語及び表現の使用においては図示及び記載した特徴又はそれらの部分のあらゆる同等物を排除することは意図されていない。様々な修飾が本明細書で要求した本発明の範囲内において可能であることが認識されている。従って、本発明を好ましい実施形態及び任意の特徴によって詳細に開示してきたが、本明細書で開示したその中で実施される本発明の修飾及び変形は当業者であれば用いることができること、及びそのような修飾及び変形は本発明の範囲内に含まれると見なされることを理解されたい。
【0133】
本発明を本明細書において幅広く一般的に記載してきた。一般的開示に含まれるより狭い種及び亜属分類の各々も本方法の一部を形成する。これには、切除材料が本明細書に特異的に列挙されているか否かとは無関係に、属からいずれかの主題を取り除く条件又は消極的限定を備える本方法の一般的説明が含まれる。
【0134】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。さらに、本方法の特徴又は態様がマーカッシュ群によって記載されている場合は、当業者であれば、本発明がマーカッシュ群の任意の個別構成員又は構成員の部分群によっても記載されることを理解する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のビタミンDの量をタンデム質量分析法によって決定するための方法であって、
(i)サンプル由来のビタミンDを397.2±0.5又は379.2±0.5の質量対電荷比(m/z)を備えるイオン(複数)からなる群から選択される質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上の前駆体イオンを生成するために適合する条件下でイオン化源に曝露させる工程、
(ii)少なくとも1つの前記前駆体イオンを、質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のフラグメントイオンを生成するためにフラグメント化する工程、
(iii)工程(i)及び(ii)において生成された1つ又はそれ以上の前記イオンの量を質量分析法によって決定する工程、及び
(iv)工程(iii)において決定されたビタミンDイオンの存在を前記サンプル中のビタミンDの存在と関連付ける工程
を含み、
ここで、前記フラグメント化前駆体イオンが397.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、前記フラグメントイオンが159.0±0.5、146.9±0.5、133.1±0.5及び121.0±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含み、及び前記フラグメント化前駆体イオンが379.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、前記フラグメントイオンが283.2±0.5、187.3±0.5、175.2±0.5及び159.0±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含む方法。
【請求項2】
前記フラグメント化前駆体イオンは、397.2±0.5のm/zを備えるイオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フラグメント化前駆体イオンは、379.2±0.5のm/zを備えるイオンである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルは、イオン化の前に抽出カラムにかけられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出カラムは、固相抽出(SPE)カラムである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出カラムは、乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)カラムである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルは、イオン化の前にさらに分析カラムにかけられる、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記分析カラムは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記抽出及び分析カラム並びに工程(i)の前記イオン化源は、オンライン方式で接続される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記イオン化源は、大気圧化学イオン化(APCI)源である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記タンデム質量分析法は、多重反応モニタリング、前駆体イオンスキャニング又は生成物イオンスキャニングとして実施される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプル中でビタミンDを検出する工程をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記ビタミンD及びビタミンDは、同時にイオン化される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプルは、生物学的サンプルを含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記生物学的サンプルはヒト由来であり、前記サンプル中で決定されたビタミンDの量は前記ヒトから採取された場合は前記サンプル中に存在する量である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルは、血清又は血漿を含む、請求項14から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
サンプル中のビタミンDの量をタンデム質量分析法によって決定するための方法であって、
(i)サンプル由来のビタミンDを385.2±0.5又は367.2±0.5の質量対電荷比(m/z)を備えるイオン(複数)からなる群から選択される質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上の前駆体イオンを生成するために適合する条件下でイオン化源に曝露させる工程、
(ii)少なくとも1つの前記前駆体イオンを、質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のフラグメントイオンを生成するためにフラグメント化する工程、
(iii)工程(i)及び(ii)において生成された1つ又はそれ以上の前記イオンの量を質量分析法によって決定する工程、及び
(iv)工程(iii)において決定されたビタミンDイオンの存在を前記サンプル中のビタミンDの存在と関連付ける工程
を含み、
ここで、前記フラグメント化前駆体イオンが385.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、前記フラグメントイオンが159.0±0.5、147.0±0.5、133.1±0.5及び107.1±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含み、及び前記フラグメント化前駆体イオンが367.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、前記フラグメントイオンが172.2±0.5、145.0±0.5及び119.1±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含む方法。
【請求項18】
前記フラグメント化前駆体イオンは、385.2±0.5のm/zを備えるイオンである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フラグメント化前駆体イオンは、367.2±0.5のm/zを備えるイオンである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルは、イオン化の前に抽出カラムにかけられる、請求項17から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記抽出カラムは、固相抽出(SPE)カラムである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記抽出カラムは、乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)カラムである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記サンプルは、イオン化の前にさらに分析カラムにかけられる、請求項20から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記分析カラムは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抽出及び分析カラム並びに工程(i)の前記イオン化源は、オンライン方式で接続される、請求項23から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記イオン化源は、大気圧化学イオン化(APCI)源である、請求項17から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記タンデム質量分析法は、多重反応モニタリング、前駆体イオンスキャニング又は生成物イオンスキャニングとして実施される、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記サンプル中でビタミンDを検出する工程をさらに含む、請求項17から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ビタミンD及びビタミンDは、同時にイオン化される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルは、生物学的サンプルを含む、請求項17から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記生物学的サンプルはヒト由来であり、前記サンプル中で決定されたビタミンDの量は前記ヒトから採取された場合に前記サンプル中に存在する量である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記サンプルは、血清又は血漿を含む、請求項30から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
サンプル中のビタミンD及びビタミンDの量をタンデム質量分析法によって決定するための方法であって、
(i)前記サンプル中のビタミンD及びビタミンDを397.2±0.5及び379.2±0.5の質量対電荷比(m/z)を備えるイオンの群から選択される質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のビタミンD前駆体イオン、並びに385.2±0.5及び367.2±0.5の質量対電荷比(m/z)を備えるイオンの群から選択される質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のビタミンD前駆体イオンを生成するために適合する条件下でイオン化源に曝露させる工程、
(ii)少なくとも1つの前記ビタミンD前駆体イオンを、質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のビタミンDフラグメントイオンを生成するためにフラグメント化する工程であって、
ここで、前記フラグメント化ビタミンD前駆体イオンが397.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、前記ビタミンDフラグメントイオンが159.0±0.5、146.9±0.5、133.1±0.5及び121.0±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含み、及び前記フラグメント化ビタミンD前駆体イオンが379.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、前記ビタミンDフラグメントイオンが283.2±0.5、187.3±0.5、175.2±0.5及び159.0±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含む工程、
(iii)少なくとも1つの前記ビタミンD前駆体イオンを、質量分析法によって検出可能な1つ又はそれ以上のビタミンDフラグメントイオンを生成するためにフラグメント化する工程であって、
ここで、前記フラグメント化ビタミンD前駆体イオンが385.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、前記ビタミンDフラグメントイオンは、159.0±0.5、147.0±0.5、133.1±0.5及び107.1±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含み、及び前記フラグメント化ビタミンD前駆体イオンが367.2±0.5のm/zを備えるイオンを含む場合は、前記ビタミンDフラグメントイオンは、172.2±0.5、145.0±0.5及び119.1±0.5のm/zを備えるイオン(複数)からなる群から選択される1つ又はそれ以上のイオンを含む工程、
(iv)工程(i)、(ii)及び(iii)において生成された1つ又はそれ以上の前記ビタミンD及びビタミンDイオンの量を質量分析法によって決定する工程、及び
(v)工程(vi)で決定されたビタミンD及びビタミンDイオンの量を前記サンプル中のビタミンD及びビタミンDの量と関連付ける工程
を含む方法。
【請求項34】
前記フラグメント化ビタミンD前駆体イオンは、397.2±0.5のm/zを備えるイオンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記フラグメント化ビタミンD前駆体イオンは、379.2±0.5のm/zを備えるイオンである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記フラグメント化ビタミンD前駆体イオンは、385.2±0.5のm/zを備えるイオンである、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記フラグメント化ビタミンD前駆体イオンは、367.2±0.5のm/zを備えるイオンである、請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記サンプルは、イオン化の前に抽出カラムにかけられる、請求項33から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記抽出カラムは、固相抽出(SPE)カラムである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記抽出カラムは、乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)カラムである、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記サンプルは、イオン化の前にさらに分析カラムにかけられる、請求項40から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記分析カラムは、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)カラムである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抽出及び分析カラム並びに工程(i)の前記イオン化源は、オンライン方式で接続される、請求項40から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記イオン化源は、大気圧化学イオン化(APCI)源である、請求項33から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記タンデム質量分析法は、多重反応モニタリング、前駆体イオンスキャニング又は生成物イオンスキャニングとして実施される、請求項33から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記サンプルは、生物学的サンプルを含む、請求項33から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記生物学的サンプルはヒト由来であり、前記サンプル中で決定されたビタミンD及びビタミンDの量は前記ヒトから採取された場合に前記サンプル中に存在する量である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記サンプルは、血清又は血漿を含む、請求項46から47のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【公表番号】特表2013−513802(P2013−513802A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543290(P2012−543290)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2010/059765
【国際公開番号】WO2011/072163
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(505063050)クエスト ダイアグノスティックス インヴェストメンツ インコーポレイテッド (20)
【Fターム(参考)】