説明

非適合性のオレフィン重合触媒系の間の移行を行う方法

1つの反応器、好ましくは気相反応器内でオレフィン重合反応のためのチーグラー・ナッタ触媒系からフィリップス触媒系に移行させる方法を記載する。本方法は、(a)チーグラー・ナッタ触媒系の存在下で行う第1のオレフィン重合反応を停止し;(b)それぞれ第1及び第2のポリオレフィンフラクションを生成させる触媒成分(A)及び(B)を含む更なる触媒系の存在下で第2のオレフィン重合反応を行い、ここで、第1のポリオレフィンフラクションのMは第2のポリオレフィンフラクションのMよりも小さく、触媒成分(A)の初期活性は触媒成分(B)の初期活性よりも高く;そして(c)フィリップス触媒系の存在下で第3のオレフィン重合反応を行う;工程を含む。この方法により、それぞれのオレフィン重合反応の後に反応器を空にする必要がなく、第1のものに続くそれぞれのオレフィン重合反応において得られるポリオレフィンの所望の品質を得るために必要な移行時間が、迅速で信頼できる製造の変更を可能にするのに十分に短い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つの反応器内においてオレフィンの重合のための非適合性のオレフィン重合触媒系の間で、特にチーグラー・ナッタ触媒系からフィリップス触媒系へ移行させる方法に関する。
【0002】
本明細書及び特許請求の範囲において、「触媒系」という用語は、少なくとも1つの触媒成分、即ちオレフィン重合反応を触媒する少なくとも1つの金属成分、並びに場合によっては、触媒成分を活性化する薬剤(共触媒又は活性化剤としても知られる)、担体、及び当該技術において周知の任意の他の成分のような更なる成分を含む系を示すように用いる。
【背景技術】
【0003】
当該技術において公知なように、チーグラー・ナッタ触媒系は一般に塩基性金属アルキル又はハロゲン化物と遷移金属塩とのコンプレックスを含み、一方、フィリップス触媒は一般に酸化クロムベースの触媒を含む。
【0004】
他に示さない限りにおいて、本明細書及び特許請求の範囲において、「重合」という用語は単独重合又は共重合を示すように用いる。
他に示さない限りにおいて、本明細書及び特許請求の範囲において、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、或いはモノマー及び少なくとも1種類のコモノマーを含むコポリマーを示すように用いる。
【0005】
本方法は、ポリオレフィン、特に(しかしながらこれに限らない)ポリエチレンの製造において上記に記載の移行を行うために有用である。
他に示さない限りにおいて、本明細書及び特許請求の範囲において、「ポリエチレン」という用語は、エチレンのホモポリマー、或いはエチレンと少なくとも1種類の更なるコモノマーのコポリマーを示すように用いる。
【0006】
他に示さない限りにおいて、本明細書及び特許請求の範囲において、「エチレンホモポリマー」という用語は、繰り返しエチレンモノマー単位を含み、場合によっては異なる種のコモノマーがいかなる場合においてもポリマーの融点T(ここで、融点Tは以下においてより良好に記載する溶融ピークの最大値における温度である)が約125℃以上になるような限定された量で存在するポリマーを示すように用いる。Tは、ISO−11357−3にしたがって、200℃の温度に到達するまで20℃/分の加熱速度で第1の加熱を行い、−10℃の温度に到達するまで20℃/分の冷却速度で動的結晶化を行い、そして200℃の温度に到達するまで20℃/分の加熱速度で第2の加熱を行うことによって測定する。これによれば、融点T(第2の加熱の溶融ピークの最大値)は第2の加熱のエンタルピーvs温度の曲線が最大値を有する温度である。
【0007】
他に示さない限りにおいて、本明細書及び特許請求の範囲において、「エチレンのコポリマー」という用語は、繰り返しエチレンモノマー単位、及び少なくとも1種類の異なる種の更なるコモノマーを含み、125℃より低い融点Tを有するポリマーを示すように用いる。
【0008】
上記に記載の方法は、特に(しかしながらこれに限らない)、気相中、好ましくは流動床反応器内で上記記載の移行を行うために有用である。
気相オレフィン重合プロセスはオレフィンを重合するための経済的なプロセスである。かかる気相重合プロセスは特に、適当な気体流を用いてポリマー粒子を浮遊状態に保持する気相流動床反応器内で行うことができる。このタイプのプロセスは、例えばヨーロッパ特許出願EP−A−0475603、EP−A−0089691、EP−A−0571826(その内容は全て参照として本明細書中に包含する)に記載されている。
【0009】
ポリオレフィンの製造においては、同じ反応器内で異なるポリマーグレードを製造するために時々触媒系を変更する必要がある。したがって、反応器に求められている柔軟性及び製造プラントによってある程度の頻度で、第1の触媒系を用いて第1のポリマーを製造し、その後に第2の触媒系を用いて第2のポリマーを製造することが必要である。この変更は、第1の触媒系と第2の触媒系が互いに適合性である、即ち両方の触媒系が活性を実質的に失うことなく実質的に同じプロセス条件(一般に、温度、圧力、プロセス助剤の濃度、モル質量調整剤等)の下で運転することができる場合には特に問題を含まない可能性がある。
【0010】
しかしながら、第1の触媒系から、第1の触媒系と非適合性である第2の触媒系へ変化させることは、生成物の量及び品質の両方の観点で製造の適当な連続性を確保する上で問題を含んでおり、したがって大きな努力の対象であった。
【0011】
本明細書及び特許請求の範囲において、2種類の触媒系は、それらがプロセス条件及び/又はモノマー若しくはプロセスにおいて用いる任意の薬剤(プロセス助剤)、例えば分子量調整剤(例えば水素)、コモノマー、又は帯電防止剤、或いは他の薬剤に対して異なる様相で応答する場合、及びこの異なる応答性のために、第1の触媒系から第2の触媒系へ移行させることによって得られるポリマーが許容できない特性(例えば、それぞれの目標値の範囲外の分子量及び/又はメルトフローレート及び/又はメルトフロー比、ゲル及び微粉の存在、不十分な耐環境亀裂性)を有するか、或いは(例えば反応器内における塊化又はシーティングのために)プロセスの生産性が許容できないほど低い場合に、互いに非適合性である。
【0012】
この定義は、上記に定義の触媒系を構成する任意の成分に適用される。したがって、本明細書及び特許請求の範囲において、2種類の触媒系は、第1の触媒系の少なくとも1つの成分が第2の触媒系の少なくとも1つの成分と非適合性である場合には、互いに非適合性である。
【0013】
例えば、チーグラー・ナッタ触媒系は、フィリップス触媒系を失活させる帯電防止剤の濃度(一例として、好ましくは10〜600ppm)で運転することが一般に必要であるので、チーグラー・ナッタ触媒系はフィリップス触媒系と適合性でない可能性がある。
【0014】
チーグラー・ナッタ触媒系は、フィリップス触媒と比較してより高い水素濃度で運転することが一般に必要であるので、チーグラー・ナッタ触媒系はフィリップス触媒系と適合性でない可能性がある。
【0015】
2種類の非適合性の触媒系の間の変更を行うためには、最新技術の最も通常的な方法は、失活剤を用いて第1の重合反応を停止し、反応器を空にし、それを清浄化し、第2の触媒系を導入することによってそれを再始動させることである。例えば、WO−00/58377においては、第1の重合反応を停止し、ポリマーを反応器から取り出し、反応器を速やかに窒素でパージし、ポリマー微粒子の新しい種床を反応器中に導入し、次に第2の重合反応を開始する、2種類の非適合性の触媒の間の変更を行う不連続法が開示されている。しかしながら、1つの側面においては、反応器の開放によって壁上への堆積物の形成が導かれ、これは反応器の新たな始動に悪影響を与え、他の側面においては、この方法は必然的に、重合プロセスの停止、並びに第1の重合反応と第2の重合反応との間の許容できないほど長い停止時間を必要とする。
【0016】
また、反応器にまず失活剤を加え、次にフィリップス触媒系を導入する前に金属アルキルを吸収するために共触媒吸着剤、例えばシリカを加えることによって、流動床反応器内でチーグラー・ナッタ触媒系からフィリップス触媒系へ移行させることも、文献WO−2006/069204から公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願EP−A−0475603
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願EP−A−0089691
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願EP−A−0571826
【特許文献4】WO−00/58377
【特許文献5】WO−2006/069204
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
従来技術の教示を考慮しても、チーグラー・ナッタ触媒系からフィリップス触媒系への有効な移行を得る必要性が未だ存在する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本出願人は、反応器の時間あたりの製造を最大にし且つ目標範囲外のポリマーの製造を最小にしながら、それから得られるポリマーの品質を損なわない、1つの反応器内においてチーグラー・ナッタ触媒系からフィリップス触媒系への有効でスムーズな移行を行う必要性を認識した。
【0020】
本出願人は、驚くべきことに、チーグラー・ナッタ触媒系の存在下で行うオレフィン重合とフィリップス触媒系の存在下で行うオレフィン重合との間の有効な移行を得て、反応器を有効に活用するためには、シングルサイト触媒成分及び非シングルサイト触媒成分を含む混合触媒系の存在下での中間の更なるオレフィン重合を構想することが好都合であることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0021】
混合触媒系は、それぞれ第1及び第2のポリオレフィンフラクションを生成させる第1の触媒成分(A)及び第2の触媒成分(B)を含む。
言い換えれば、本明細書及び特許請求の範囲において、「混合触媒系」という用語は、異なる特性、一般には異なる分子量を有するそれぞれのポリマーフラクションを生成させるように意図する少なくとも2種類の触媒成分(即ち複数の異なる種類の活性種)を含む触媒系を示すように用いる。
【0022】
メタロセン触媒のようなシングルサイト触媒は、チーグラー・ナッタ触媒と適合性でない。これは主として、例えば所定のメルトフローレートを有するポリエチレンを生成させるためには、チーグラー・ナッタ触媒は高い水素濃度(一例として、1のオーダーのエチレンに対する水素の比)で運転する必要があるからである。
【0023】
一例として、シングルサイト触媒はメタロセン触媒を含む。シングルサイト触媒には、例えばメタロセン(場合によっては環式化合物で置換されているシクロペンタジエニル誘導体など)、フェノキシイミン誘導体、並びに2又は3の配位窒素原子を有する中性又は荷電の二座若しくは三座窒素リガンドの群から選択される化合物を含ませることができる。
【0024】
本明細書及び特許請求の範囲において、「メタロセン触媒」という表現は、少なくとも1つのシクロペンタジエニル遷移金属コンプレックスを含む触媒成分、一般的には次式:
CpMR
(式中、Cpは置換又は非置換のシクロペンタジエニル環又はその誘導体であり;Mは遷移金属、好ましくは第4、5、又は6族の金属であり;Rは1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基又はヒドロカルボキシ基であり;Xはハロゲンである)
を有する化合物を示すように用いる。一般に、ここで示すメタロセン触媒成分は、少なくとも1つの金属原子に結合している1以上の嵩高のリガンドを有するハーフサンドイッチ及びフルサンドイッチ化合物を含む。代表的なメタロセン触媒成分は、一般に少なくとも1つの金属原子に結合している1以上の嵩高のリガンド及び1以上の離脱基を含むものと説明される。本明細書及び特許請求の範囲の目的のためには、「離脱基」という用語は、嵩高のリガンドのメタロセン触媒から取り除いて、1種類以上のオレフィンを重合することができるメタロセン触媒カチオンを形成することができる任意のリガンドである。
【0025】
嵩高のリガンドは、一般に1以上の開放環又は縮合環又は環系或いはこれらの組合せによって代表される。これらの1つ又は複数の環又は環系は、通常は第13〜16族の原子から選択される原子から構成され、好ましくはこの原子は、炭素、窒素、酸素、ケイ素、イオウ、リン、ホウ素、及びアルミニウム、或いはこれらの組合せからなる群から選択される。最も好ましくは、1つ又は複数の環又は環系は、シクロペンタジエニルリガンド又はシクロペンタジエニルタイプのリガンド構造、又はペンタジエン、シクロオクタテトラエンジイル、若しくはイミドリガンドのような他の同様の官能性リガンド構造など(しかしながらこれらに限定されない)のように炭素原子から構成される。金属原子は、好ましくは元素周期律表の第3〜16族及びランタニド又はアクチニド系列から選択される。好ましくは、金属は第4〜12族、より好ましくは第4、5、及び6族からの遷移金属であり、最も好ましくは、金属は第4族からのものである。
【0026】
しかしながら、例えばメタロセン触媒のようなシングルサイト触媒は、低い水素濃度(数センチモル%、例えば0.06モル%のオーダー)で運転しなければならない。
つまり、チーグラー・ナッタ触媒を低水素において運転すると、これらは非常に高い分子量のポリマーを生成させ、一方、メタロセン触媒を低水素において運転すると、これらは低い分子量のポリマーを生成させる。したがって、チーグラー・ナッタ触媒とメタロセン触媒を混合し、低い水素濃度において運転すると、超高分子量の鎖を含み、処理の後にゲルを生じさせるポリマーが生成する。
【0027】
反応器の最大製造容量を活用し且つ製造の所望の品質を確保しながらチーグラー・ナッタ触媒系及びフィリップス触媒系からの有効でスムーズな移行を確保するために、驚くべきことに、上記記載の混合触媒系の存在下で−この混合触媒系のシングルサイト触媒成分はチーグラー・ナッタ触媒系と適合性でないが、このオレフィン重合反応の開始時において、混合触媒系の2つの触媒成分の1つが他のものよりも活性になるように更なるオレフィン重合反応を行えば−更なるオレフィン重合反応を行うことができることを見出した。実際に、このようにしてチーグラー・ナッタ触媒系及び混合触媒系から、及び後者からフィリップス触媒系への有効な移行が両方とも達成される。
【0028】
混合触媒の2つの触媒成分の1つが所定の初期時間の間により活性である場合には、実際にはそれから得られるポリマーの目標の特性は、第1のオレフィン重合を停止した後の短い時間で達成することができる。言い換えれば、驚くべきことに、第2の重合反応の所定の初期時間の間に第2の触媒系の2つの触媒成分の相対活性を差異化することによって、チーグラー・ナッタ触媒系から混合触媒系へ、及びこれからフィリップス触媒系への改良されたより有効な移行が達成される。
【0029】
より詳しくは、本出願人は、驚くべきことに、更なる重合反応は好ましくは、当初は活性を有しないか、或いは、当初は相対的により低い分子量を有するポリマーフラクションを生成する触媒成分の活性と比較して相対的により低い活性の相対的により高い分子量を有するポリマーフラクションを生成する触媒成分を用いて開始することが好都合である可能性があることを見出した。
【0030】
特許請求の範囲の表現によれば、且つ以下においてより詳細に記載するように、好ましくは更なる重合反応の開始時において不活性であるか或いはいかなる場合においても他の触媒成分と比較してより活性が低くなければならないこの触媒成分は、混合触媒系の第2の触媒成分である。
【0031】
更に、本出願人は、驚くべきことに、更なる重合反応は、好ましくは、当初は活性化を行わないか、或いは、当初は相対的により広い分子量分布を有するポリマーフラクションを生成させる触媒成分の活性と比較して相対的により狭い分子量分布を有するポリマーフラクションを生成させる触媒成分の相対的により低い活性化を行って開始することが好都合である可能性があることを見出した。
【0032】
したがって、本発明は
(a)チーグラー・ナッタ触媒系の存在下で行う第1のオレフィン重合反応を停止し;
(b)それぞれ第1及び第2のポリオレフィンフラクションを生成させる触媒成分(A)及び(B)を含む更なる触媒系の存在下で第2のオレフィン重合反応を行い、ここで、第1のポリオレフィンフラクションのMは第2のポリオレフィンフラクションのMよりも小さく、触媒成分(A)の初期活性は触媒成分(B)の初期活性よりも高く;
(c)フィリップス触媒系の存在下で第3のオレフィン重合反応を行う;
工程を含む、1つの反応器内においてオレフィン重合のためのチーグラー・ナッタ触媒系からフィリップス触媒系へ移行させる方法を提供する。
【0033】
本明細書及び特許請求の範囲において、Mは「重量平均モル質量」(重量平均分子量)であり、Mは「数平均モル質量」(数平均分子量)であり、M/Mは多分散度であり、M及びMは詳細な例において定義するようにして求める。他に示されていないならば、「分子量」という用語はMとして理解される。
【0034】
言い換えれば、第2の重合反応は、初めは、混合触媒系の第1の触媒成分(A)及び第2の触媒成分(B)の間の相対的な活性を差異化するように、特に、所定の初期時間の間に、相対的に高い分子量を有するポリオレフィンフラクションを生成させる触媒成分(即ち触媒成分(B))が、相対的に低い分子量を有するポリオレフィンフラクションを生成させる触媒成分(即ち触媒成分(A))の活性と比較して相対的に活性が低くなるように行う。
【0035】
このようにして、初めは、第2の重合反応の結果として、相対的に低い分子量を有するポリマーフラクションが相対的に高い分子量を有するポリマーフラクション(存在する場合には)よりも多い多峰性ポリマーが得られる。
【0036】
有利には、本発明方法によって与えられる複数の工程の組合せにより、反応器を空にする必要がないだけでなく、反応器の最大製造容量を活用し、及び製造の所望の品質を達成し、並びに単峰性及び多峰性ポリマーなどの多様な種類の製造を可能にしながら、チーグラー・ナッタ触媒系及びフィリップス触媒系からの有効でスムーズな移行が行われる。
【0037】
混合触媒系の存在下で行う第2の重合を与えることにより、同じ反応器内において多峰性ポリマーが有利に製造される。
公知なように、1つのみの触媒成分を含む触媒系を用いて製造される単峰性ポリマーは、単峰性の分子量分布曲線、即ち所定の分子量を有する単一のポリマーフラクションの存在による単一のピークを有する曲線を有し、一方、例えば別個の分子量を有するそれぞれ異なるポリマーを生成させる少なくとも2つの異なる触媒成分を含む混合触媒系を用いて製造される多峰性ポリマーは、一般に、別個の分子量を有する複数のポリマーフラクションの存在による1より多い分子量ピークを有する分子量分布曲線を有する。
【0038】
後反応器又は溶融ブレンド、多段階反応器の使用などの多峰性ポリマーを製造するための公知の種々の他の方法とは異なり、多峰性ポリマーを生成させることができる混合触媒系を用いることによって単一の反応器内で接触重合を行うことが有利である。これは、単一の触媒系を用いて単一の反応器内において良好な混合品質を有するポリマーを製造することができるからである。
【0039】
例えば本発明の好ましいポリマー、即ちポリエチレンに関連して、本明細書及び特許請求の範囲において、「多峰性ポリエチレン」という表現は、異なる分子量を有する少なくとも2種類のポリマーフラクションの存在によって、少なくとも二峰性の分子量分布曲線を有し、少なくとも2つの分子量ピーク又は少なくとも最大ピークの1つの側部上の屈曲部分を有するポリエチレンを示すように用いる。また、多峰性ポリエチレンは、異なる分子量を有する少なくとも3種類のポリマーフラクションの存在による3つ以上の分子量ピーク(又は少なくとも2つの最大ピークの1つの側部上の屈曲部分)も示す可能性がある。
【0040】
更に、混合触媒系を用いて製造する多峰性ポリマーの所望の品質を得るために必要な移行時間は、第1の、好ましくは単峰性のポリマー、即ち第1の重合反応において得られるポリマーから、多峰性のポリマー、即ち第2の重合反応において得られるポリマーへの製造の迅速で信頼できる変更を可能にするのに十分に短い。
【0041】
更に、チーグラー・ナッタ触媒系から混合触媒へ移行させる他の方法と比較して微粉の減少が有利に達成され、これはフィルム用途において特に望ましい。
更に、フィリップス触媒系を用いて製造するポリマーの所望の品質を得るために必要な移行時間は、多峰性のポリマー、即ち第2の重合反応において得られるポリマーから、好ましくは単峰性のポリマー、即ち第3の重合反応において得られるポリマーへの製造の迅速で信頼できる変更を可能にするのに十分に短い。
【0042】
本発明方法の上記に記載の工程(a)、(b)、及び(c)は、好ましくは連続法で、即ちそれらの間の中間工程を行わないで、特に反応器を空にする工程を行わないで実施する。有利には、例えば流動床反応器を用いる好ましい態様を参照すると、触媒系を変更する度に新しい床を形成するために、反応器を空にしたり、新しいポリマー粉末を反応器に再充填する必要がない。
【0043】
好ましくは、第2の重合反応は、相対的により狭い分子量分布を有するポリマーフラクションを生成させる触媒成分を、所定の初期時間の間において、相対的により広い分子量分布を有するポリマーフラクションを生成させる触媒成分の活性と比較して相対的により低活性にするように行う。
【0044】
第1、第2、及び第3のポリマーは、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンである。好ましくは、3種類のポリオレフィンのそれぞれはポリエチレンである。好ましくは、第2のポリマーの少なくとも1つの第1及び少なくとも1つの第2のポリマーフラクションの両方はエチレンポリマーフラクションである。
【0045】
3つのオレフィン重合反応において製造する3種類のポリマーはいずれも、好ましくはポリエチレン、好ましくはエチレンと少なくとも1種類のコモノマー、好ましくはα−オレフィンとのコポリマーである。好ましいα−オレフィンは、3〜12個の炭素原子、好ましくは3〜10個の炭素原子を有するオレフィン、例えばプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンを含む。特に好ましいコモノマーは、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、更により好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンを含む。
【0046】
以下の考察は好ましい態様としてエチレンの単独重合又はエチレンと少なくとも1種類のコモノマーとの共重合に関するが、これらはオレフィンの任意の種類の重合にも適用されると意図される。
【0047】
反応器は、好ましくは気相反応器、好ましくは連続気相反応器、特に気相流動床反応器である。しかしながら、本発明方法は、例えばバルク中、懸濁液中、或いはオレフィンの重合のために用いられる任意の通常の反応器内での超臨界媒体中のような他の相又は反応器において適用することができる。言い換えれば、溶液法、懸濁法、撹拌気相法、及び気相流動床法が全て可能である。
【0048】
好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒系は、触媒成分、及び触媒成分を活性化する薬剤(共触媒)を含む。
好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒系は、1種類のみの触媒成分、即ち単峰性ポリマーを生成させることを意図する1種類のみの活性触媒成分を有する触媒成分を含む。
【0049】
好ましい態様によれば、チーグラー・ナッタ触媒系は、少なくとも1つのチーグラー・ナッタ触媒成分、例えば1つ又は2つのチーグラー・ナッタ触媒成分を含む。好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒系は1つのチーグラー・ナッタ触媒成分を含む。
【0050】
好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒系は、チーグラー・ナッタ触媒成分、及び更にチーグラー・ナッタ触媒成分を活性化する薬剤を含む。
好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒成分を活性化する薬剤は、有機金属化合物、好ましくは有機金属化合物、好ましくは第1、2、又は3族の金属の有機金属化合物を含む。好ましくは、第1の活性化剤は、有機金属アルキル、アルコキシド、及びハロゲン化物を含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0051】
好ましい有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウム又は亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハロゲン化物、アルミニウムアルキル、ケイ素アルキル、ケイ素アルコキシド、及びケイ素アルキルハロゲン化物を含む。より好ましくは、有機金属化合物はアルミニウムアルキル及びマグネシウムアルキルを含む。更により好ましくは、有機金属化合物は、アルミニウムアルキル、好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物を含む。好ましくは、アルミニウムアルキルは、例えばトリメチルアルミニウム(TMAL)、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)、及びトリ−n−ヘキシルアルミニウム(TNHAL)などを含む。
【0052】
好ましくは、混合触媒系はシングルサイト触媒成分及び非シングルサイト触媒成分を含む。
本明細書及び特許請求の範囲において、「シングルサイト触媒成分」という表現は、モノマー、特にオレフィンモノマー、好ましくはエチレン、及び場合によっては少なくとも1種類のコモノマー、好ましくはα−オレフィンを重合して狭い分子量分布を有するポリオレフィン、それぞれポリエチレンを得ることができる、配位金属コンプレックスを含む触媒成分を示すように用いる。
【0053】
本明細書及び特許請求の範囲において、ポリオレフィン、好ましくはポリエチレンは、ポリオレフィン、それぞれポリエチレンが5以下、好ましくは1.5〜5、より好ましくは1.5〜3、更により好ましくは2〜3の範囲の多分散度M/Mを有する場合に狭い分子量分布を有する。
【0054】
本明細書及び特許請求の範囲において、「非シングルサイト触媒成分」という表現は、5より大きい多分散度を有するポリオレフィンを生成させる触媒成分を示すように用いる。代表例として、非メタロセンタイプの少なくとも1つのリガンドを含む遷移金属配位化合物、チーグラー・ナッタ触媒、及びフィリップス触媒を、非シングルサイト触媒の例として考えることができる。
【0055】
好ましくは、混合触媒系は、非メタロセンタイプの少なくとも1つのリガンドを含む後周期遷移金属触媒成分、及びシングルサイト触媒成分、好ましくはメタロセン触媒成分を含む。
【0056】
好ましくは、混合触媒系は、第1の触媒成分として、配位重合によってオレフィンポリマーを生成させる後周期遷移金属触媒成分、より好ましくは元素周期律表の第8〜10族をベースとするもの、更により好ましくはFe、Ni、Pd、Coを含む群、好ましくはこれらからなる群から選択されるものをベースとするものを含む。
【0057】
好ましくは、混合触媒の第1の触媒成分は、好ましくは、好ましくは少なくとも2つのオルト,オルト−二置換アリール基を有する三座リガンドを有する鉄触媒成分を含む。
好ましい鉄触媒成分は、特許出願WO−2005/103100に記載されている鉄触媒成分であってよい。
【0058】
好ましい鉄触媒成分は、以下の一般式(I):
【0059】
【化1】

【0060】
(式中、変数は以下の意味を有する:
F及びGは、互いに独立して、
【0061】
【化2】

【0062】
を含む群、好ましくはこれからなる群から選択され;
〜Rは、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR12A、OR12A、ハロゲン、SiR11A、或いは、N、P、O、又はSからなる群からの少なくとも1つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を表し、ここで有機基R3A〜R10Aはまた、ハロゲン、NR12A、OR12A、又はSiR11Aによって置換されていてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R3A〜R5A及び/又はそれぞれの場合において2つの基R6A〜R10Aはまた、互いに結合して5、6、又は7員環を形成していてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R3A〜R5A及び/又はそれぞれの場合において2つの基R6A〜R10Aは、互いに結合して、N、P、O、又はSからなる群からの少なくとも1つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成し;
11Aは、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、及び/又は2つの基R11Aはまた、互いに結合して5又は6員環を形成していてもよく;
12Aは、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR11Aを表し、ここで、有機基R12Aはまたハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R12Aはまた、互いに結合して5又は6員環を形成していてもよく;
、Rは、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR11Aを表し、ここで有機基R、Rはまた、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R、Rはまた、互いに結合して5又は6員環を形成していてもよく;
、Rは、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR11Aを表し、ここで有機基R、Rはまた、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R、Rはまた、互いに結合して5又は6員環を形成していてもよく;
〜Eは、互いに独立して炭素又は窒素であり;
uは、互いに独立して、E〜Eが窒素である場合には0であり、E〜Eが炭素である場合には1であり;
Xは、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR13A、OR13A、SR13A、SO13A、OC(O)R13A、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PF、又は嵩高の非配位アニオンであり、ここで有機基Xはまた、ハロゲン及び/又は少なくとも1つの基R13Aによって置換されていてもよく、及び基Xは場合によっては互いに結合し;
基R13Aは、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR14Aを表し、ここで有機基R13Aはまた、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R13Aはまた、互いに結合して5又は6員環を形成していてもよく;
基R14Aは、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、ここで有機基R14Aはまた、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R14Aはまた、結合して5又は6員環を形成していてもよく;
sは、1、2、3、又は4であり;
tは、0〜4である)
の少なくとも1種類のリガンドを有する遷移金属コンプレックスである。
【0063】
好ましい態様によれば、少なくとも1種類の鉄触媒は、式(II):
【0064】
【化3】

【0065】
(式中、変数は以下の意味を有する:
〜Rは、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、或いは、N、P、O、又はSからなる群からの少なくとも1つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を表し、ここで有機基R〜Rはまた、ハロゲン、NR16、OR16、又はSiR17によって置換されていてもよく、及び/又は2つの基R〜Rはまた、R〜Rと結合して5、6、又は7員環を形成していてもよく;
〜R15は、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR16、OR16、ハロゲン、SiR17、或いは、N、P、O、又はSからなる群からの少なくとも1つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を表し、ここで有機基R〜R15はまた、ハロゲン、NR16、OR16、又はSiR17によって置換されていてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R〜Rは互いに結合していてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R〜R10も、互いに結合して、5、6、又は7員環を形成していてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R11〜R15も、互いに結合して5、6、又は7員環を形成していてもよく、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R〜Rは互いに結合し、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R〜R10は互いに結合して、5、6、又は7員の複素環を形成し、及び/又はそれぞれの場合において2つの基R11〜R15は、互いに結合して5、6、又は7員の複素環を形成し、この複素環はN、P、O、又はSからなる群から選択される少なくとも1つの原子を含み、ここで基R〜R15の少なくとも1つは塩素、臭素、ヨウ素、CF、又はOR11であり;
ここで、R〜R及びR11〜R13からなる群の少なくとも1つの基Rは、塩素、臭素、ヨウ素、CF、又はOR11であり;
16は、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR17を表し、ここで有機基R16はまた、ハロゲンによって置換されていてもよく、及びそれぞれの場合において2つの基R16はまた、結合して5又は6員環を形成していてもよく;
17は、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、それぞれの場合において2つの基R17はまた、結合して5又は6員環を形成していてもよく;
〜Eは、互いに独立して、炭素、窒素、又はリン、特に炭素を表し;
uは、E〜Eが窒素又はリンの場合には0であり、E〜Eが炭素の場合には1であり;
Xは、互いに独立して、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、ここで有機基Xはまた、R18、NR18、OR18、SR18、SO18、OC(O)R18、CN、SCN、β−ジケトネート、CO、BF、PF、又は嵩高の非配位アニオンによって置換されていてもよく、基Xは適当な場合には互いに結合しており;
18は、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、アルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキル、又はSiR19を表し、ここで有機基R18はまた、ハロゲン又は窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、及びそれぞれの場合において2つの基R18はまた、結合して5又は6員環を形成していてもよく;
19は、互いに独立して、水素、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アリール、又はアルキル基中に1〜10個の炭素原子及びアリール基中に6〜20個の炭素原子を有するアリールアルキルを表し、ここで有機基R19はまた、ハロゲン又は窒素−及び酸素−含有基によって置換されていてもよく、及びそれぞれの場合において2つの基R19はまた、結合して5又は6員環を形成していてもよく;
sは、1、2、3、又は4、特に2又は3であり;
Dは中性ドナーであり;
tは、0〜4、特に0、1、又は2である)
のものである。
【0066】
好ましくは、R〜R及びR11〜R13からなる群の少なくとも1つの基Rは、塩素、臭素、ヨウ素、CF、又はOR11である。
分子中の3つの原子E〜Eは同一であっても異なっていてもよい。Eがリンである場合には、E〜Eは好ましくはそれぞれ炭素である。Eが窒素である場合には、E及びEはそれぞれ好ましくは窒素又は炭素、特に炭素である。
【0067】
uは、互いに独立して、E〜Eが窒素又はリンである場合には0であり、E〜Eが炭素である場合には1である。
〜Rは広範囲に変化してよい。可能な炭素有機置換基R〜Rは例えば以下のものである:線状又は分岐であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐であってよく、二重結合が内部又は末端であってよいC〜C22アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニル。ここで、2つの基R〜Rはまた、結合して5、6、又は7員環を形成していてもよく、及び/又は2つの隣接する基R〜Rは、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも1つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成していてもよく、及び/又は有機基R〜Rはまた、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R〜R15はまた、アミノ:NR16、又はSiR17、アルコキシ又はアリールオキシ:OR16、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシ、或いはハロゲン、例えばフッ素、塩素、又は臭素であってもよい。更なる可能な基R16及びR17は以下により完全に記載する。2つのR16及び/又はR17はまた、結合して5又は6員環を形成していてもよい。SiR17基はまた、酸素又は窒素を介してE〜Eに結合していてもよい。R17に関する例は、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。
【0068】
置換基R〜R15は、R〜R15の少なくとも1つの基Rが塩素、臭素、及びヨウ素、CF、又はOR11である限りにおいて広範囲に変化してよい。可能な炭素有機置換基R〜R15は例えば以下のものである:線状又は分岐であってよいC〜C22アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アルキル基及び/又はC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐であってよく、二重結合が内部又は末端であってよいC〜C22アルケニル、例えばビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基によって置換されていてもよいC〜C22アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニル。ここで、2つの基R〜R及び/又は2つの隣接する基R〜R15はまた、結合して5、6、又は7員環を形成していてもよく、及び/又は2つの隣接する基R〜R及び/又は2つの隣接する基R〜R15は、結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも1つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成していてもよく、及び/又は有機基R〜R及び/又はR〜R15はまた、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。更に、R〜R15はまた、アミノ:NR16、又はSiR17、アルコキシ又はアリールオキシ:OR16、例えばジメチルアミノ、N−ピロリジニル、ピコリニル、メトキシ、エトキシ、又はイソプロポキシ、或いはハロゲン、例えばフッ素、塩素、又は臭素であってもよい。更なる可能な基R16及びR17は以下により完全に記載する。2つのR16及び/又はR17はまた、結合して5又は6員環を形成していてもよい。SiR17基はまた、酸素又は窒素を介してE〜Eに結合していてもよい。R17に関する例は、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、ブチルジメチルシリルオキシ、トリブチルシリルオキシ、又はトリ−tert−ブチルシリルオキシである。
【0069】
好ましい基R〜Rは、水素、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、オルト−ジアルキル−又は−ジクロロ−置換フェニル、トリアルキル−又はトリクロロ−置換フェニル、ナフチル、ビフェニル、及びアントラニルである。特に好ましい有機ケイ素置換基は、アルキル基中に1〜10個の炭素原子を有するトリアルキルシリル基、特にトリメチルシリル基である。
【0070】
好ましい基R〜R15は、水素、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、ビニル、アリル、ベンジル、フェニル、フッ素、塩素、及び臭素であり、基R〜R15の少なくとも1つは、塩素、臭素、ヨウ素、CF、又はOR11である。
【0071】
好ましくは、R〜R及びR11〜R13からなる群の少なくとも1つの基Rは、塩素、臭素、又はCFであり、R〜R及びR11〜R13からなる群の少なくとも1つの基Rは、水素、又は線状若しくは分岐であってよいC〜Cアルキル、特にメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、又はtert−ブチルである。
【0072】
特に、R〜R及びR11〜R13からなる群の少なくとも1つの基Rは塩素又は臭素であり、R〜R及びR11〜R13からなる群の少なくとも1つの基Rは水素又はメチルである。
【0073】
好ましくは、R及び/又はR11は塩素又は臭素であり、R、R、R12、及び/又はR13は水素又はメチルである。本発明の他の好ましい態様においては、RとR、及び/又はR11とR13は塩素又は臭素であり、R及び/又はR12は水素又はメチルである。更なる好ましい態様においては、RとR11は同一であり、及び/又はRとR12は同一であり、及び/又はRとR13は同一であり、同じ残りのRの少なくとも1つの対は塩素又は臭素である。他の好ましい態様においては、RとR11は異なり、及び/又はRとR12は異なり、及び/又はRとR13は異なり、少なくとも残りのRは塩素又は臭素である。少なくとも1つの残りのR:R〜R及び/又はR11〜R13が塩素である鉄成分が特に好ましい。
【0074】
特に、R、R10、R14、及びR15からなる群の少なくとも1つの基Rは、水素、又はハロゲンによって置換されていてもよいC〜C22アルキル、例えば、メチル、トリフルオロメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、又はビニルである。R、R10、R14、及びR15が、水素、又はメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、好ましくは水素であることが特に好ましい。特に、R、R10、R14、及びR15は同一である。
【0075】
基R16を変化させることによって、例えば溶解度のような物理特性を精細に調節することができる。可能な炭素有機置換基R16は、例えば以下のものである。線状又は分岐であってよいC〜C20アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、n−デシル、又はn−ドデシル;置換基としてC〜C10アリール基を有していてもよい5〜7員のシクロアルキル、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロドデシル;線状、環式、又は分岐であってよく、二重結合が内部又は末端であってよいC〜C20アルケニル、例えば、ビニル、1−アリル、2−アリル、3−アリル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、又はシクロオクタジエニル;更なるアルキル基及び/又はN−若しくはO−含有基によって置換されていてもよいC〜C20アリール、例えば、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラニル、o−、m−、p−メチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、又は2,6−ジメチルフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,5−、2,4,6−、又は3,4,5−トリメチルフェニル、2−メトキシフェニル、2−N,N−ジメチルアミノフェニル;或いは、更なるアルキル基によって置換されていてもよいアリールアルキル、例えば、ベンジル、o−、m−、p−メチルベンジル、1−又は2−エチルフェニル。ここで、2つの基R16はまた、結合して5又は6員環を形成していてもよく、及び、有機基R16はまた、フッ素、塩素、又は臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよい。
【0076】
有機ケイ素置換基SiR17中の可能な基R17は、R〜Rに関して上記したものと同じ基であり、ここで、2つの基R17はまた、結合して5又は6員環を形成してもよく、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、ブチルジメチルシリル、トリブチルシリル、トリアリルシリル、トリフェニルシリル、又はジメチルフェニルシリルである。基R17として、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルのようなC〜C10アルキル、並びに、ビニル、アリル、ベンジル、及びフェニルを用いることが好ましい。
【0077】
リガンドXは、例えば、鉄触媒成分の合成のために用いる適当な出発金属化合物の選択に由来するが、その後に変化させることもできる。可能なリガンドXは、特に、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素のようなハロゲン、特に塩素である。また、メチル、エチル、プロピル、ブチルのようなアルキル基、ビニル、アリル、フェニル、又はベンジルも、用いることのできるリガンドXであり、ここで有機基Xはまた、R18によって置換されていてもよい。更なるリガンドXとしては、純粋に例示の目的で且つ全く排他的ではなく、トリフルオロアセテート、BF、PF、及び、弱配位又は非配位アニオン(例えば、S. Strauss, Chem. Rev., 1993, 93, 927〜942を参照)、例えばB(Cを言及することができる。また、アミド、アルコキシド、スルホネート、カルボキシレート、及びβ−ジケトネートも、特に有用なリガンドXである。これらの置換リガンドXの幾つかは、安価で容易に入手できる出発物質から得ることができるので、特に好ましく用いられる。而して、特に好ましい態様は、Xが、ジメチルアミド、メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、フェノキシド、ナフトキシド、トリフレート、p−トルエンスルホネート、アセテート、又はアセチルアセトネートであるものである。
【0078】
リガンドXの数は鉄の酸化状態によって定まる。したがって、数値sは包括的な用語では与えることができない。触媒活性コンプレックス中の鉄の酸化状態は、当業者に通常的に知られている。しかしながら、その酸化状態が活性触媒のものに一致しないコンプレックスを用いることも可能である。かかるコンプレックスは、次に、好適な活性化剤を用いて適当に還元又は酸化することができる。+3又は+2の酸化状態の鉄コンプレックスを用いることが好ましい。
【0079】
Dは、非荷電のドナー、特に非荷電のルイス塩基又はルイス酸、例えば、アミン、アルコール、エーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、スルフィド、又はホスフィンであり、これは、鉄中心に結合していてもよく、或いは鉄触媒成分の製造からの残留溶媒として残存していてもよい。
【0080】
リガンドDの数tは0〜4であってよく、しばしば、その中で鉄コンプレックスを製造する溶媒、及び得られたコンプレックスを乾燥する時間によって定まり、したがって0.5又は1.5のような非整数であってもよい。特に、tは、0、1〜2である。
【0081】
好ましい式(II)の鉄触媒成分は、2,6−ビス[1−(2−クロロ−4,6−ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)クロリド;2,6−ビス[1−(2−クロロ−6−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,6−ジクロロフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,4−ジクロロ−6−メチルフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,6−ジフルオロフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、2,6−ビス[1−(2,6−ジブロモフェニルイミノ)エチル]ピリジン鉄(II)ジクロリド、又はそれぞれのジブロミド若しくはトリブロミドである。
【0082】
鉄コンプレックスの製造は、例えば、J. Am. Chem. Soc., 120, p.4049以下 (1998)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1998, 849、及びWO−98/27124に記載されている。
【0083】
好ましくは、混合触媒系は、第2の触媒成分として、配位重合によってオレフィンポリマーを製造するための前周期遷移金属触媒、より好ましくは元素周期律表の第4〜6族をベースとし、更により好ましくはTi、V、Cr、Zr、Hfからなる群から選択される触媒を含む。
【0084】
好ましくは、混合触媒系の第2の触媒成分は、そのシクロペンタジエニル系が好ましくは非荷電のドナーによって置換されている元素周期律表の第4〜6族の金属のモノシクロペンタジエニルコンプレックス又はハフノセンを含む。
【0085】
本発明の目的のためには、非荷電のドナーは周期律表の第15又は16族の元素を含む非荷電の官能基である。シクロペンタジエニルコンプレックスの例は特許出願WO−2005/103100に記載されている。
【0086】
混合触媒系の第2の触媒成分として好適な好ましいシングルサイト触媒成分は、元素周期律表の第4〜6族の金属のモノシクロペンタジエニルコンプレックスをベースとする重合触媒、好ましくはハフノセン触媒成分、例えばシクロペンタジエニルコンプレックスであってよい。シクロペンタジエニルコンプレックスは例えば、例えばEP−129368、EP−561479、EP−545304、及びEP−576970に記載されているような橋架又は非橋架ビスシクロペンタジエニルコンプレックス、例えばEP−416815に記載されている橋架アミドシクロペンタジエニルコンプレックスのようなモノシクロペンタジエニルコンプレックス、EP−632063に記載されているような多核シクロペンタジエニルコンプレックス、EP−659758に記載されているようなπリガンド置換テトラヒドロペンタレン、又はEP−661300に記載されているようなπリガンド置換テトラヒドロインデンであってよい。
【0087】
特に好ましいハフノセンは、以下の一般式:
【0088】
【化4】

【0089】
(式中、置換基及び指数は以下の意味を有する:
は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、水素、C〜C10アルキル、C〜C10アルケニル、C〜C15アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、−OR6B、又は−NR6B7Bであり、或いは2つの基Xは置換又は非置換ジエンリガンド、特に1,3−ジエンリガンドを形成し、基Xは同一か又は異なり、互いに結合していてもよく;
1B〜E5Bは、それぞれ炭素であるか、又はE1B〜E5Bの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素であり;
tは、1、2、又は3であり、Hfの価数によって一般式(I)のメタロセンコンプレックスが非荷電であるような値であり;
ここで、
6B及びR7Bは、それぞれ、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、それぞれアルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜20個の炭素原子を有するアルキルアリール、アリールアルキル、フルオロアルキル、又はフルオロアリールであり;
1B〜R5Bは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜16個の炭素原子及びアリール部分に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR8B、N(SiR8B、OR8B、OSiR8B、SiR8Bであり、ここで、有機基R1B〜R5Bはまた、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は2つの基R1B〜R5B、特に隣接する基はまた、結合して5、6、又は7員環を形成していてもよく、及び/又は2つの隣接する基R1D〜R5Dは結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも1つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成していてもよく;
ここで、
基R8Bは、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ、C〜C10アルキル、C〜C10シクロアルキル、C〜C15アリール、C〜Cアルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであってよく;
1Bは、X、又は
【0090】
【化5】

【0091】
(式中、
基R9B〜R13Bは、それぞれ、互いに独立して、水素、C〜C22アルキル、置換基としてC〜C10アルキル基を有していてよい5〜7員のシクロアルキル又はシクロアルケニル、C〜C22アルケニル、C〜C22アリール、アルキル部分に1〜16個の炭素原子及びアリール部分に6〜21個の炭素原子を有するアリールアルキル、NR14B、N(SiR14B、OR14B、OSiR14B、SiR14Bであり、ここで、有機基R9B〜R13Bはまた、ハロゲンによって置換されていてもよく、及び/又は2つの基R9B〜R13B、特に隣接する基はまた、結合して5、6、又は7員環を形成していてもよく、及び/又は2つの隣接する基R9B〜R13Bは結合して、N、P、O、及びSからなる群からの少なくとも1つの原子を含む5、6、又は7員の複素環を形成していてもよく;
基R14Bは、同一か又は異なり、それぞれ、C〜C10アルキル、C〜C10シクロアルキル、C〜C15アリール、C〜Cアルコキシ、又はC〜C10アリールオキシであり;
6B〜E10Bは、それぞれ炭素であるか、又はE6B〜E10Bの1つ以下はリン又は窒素であり、好ましくは炭素である)
であり;
或いは、ここで基R4B及びZ1Bは、一緒に−R15B−A1B−基を形成し、
ここで、R15Bは、
【0092】
【化6】

【0093】
=BR16B、=BNR16B17B、=AlR16B、−Ge−、−Sn−、−O−、−S−、=SO、=SO、=NR16B、=CO、=PR16B、又は=P(O)R16Bであり;
ここで、
16B〜R21Bは、同一か又は異なり、それぞれ、水素原子、ハロゲン原子、トリメチルシリル基、C〜C10アルキル基、C〜C10フルオロアルキル基、C〜C10フルオロアリール基、C〜C10アリール基、C〜C10アルコキシ基、C〜C15アルキルアリールオキシ基、C〜C10アルケニル基、C〜C40アリールアルキル基、C〜C40アリールアルケニル基、又はC〜C40アルキルアリール基であり、或いは2つの隣接する基は、それらを結合する原子と一緒に4〜15個の炭素原子を有する飽和又は不飽和環を形成し;
2B〜M4Bは、それぞれ、ケイ素、ゲルマニウム、又はスズ、好ましくはケイ素であり;
1Bは、−O−、−S−、>NR22B、>PR22B、=O、=S、=NR22B、−O−R22B、−NR22B、−PR22B、又は、非置換、置換、若しくは縮合複素環式環系であり;ここで、
基R22Bは、それぞれ、互いに独立して、C〜C10アルキル、C〜C15アリール、C〜C10シクロアルキル、C〜C18アルキルアリール、又はSi(R23Bであり;
23Bは、水素、C〜C10アルキル、置換基としてC〜Cアルキル基を有していてもよいC〜C15アリール、又はC〜C10シクロアルキルであり;
vは、1であるか、或いはA1Bが、非置換、置換、又は縮合複素環式環系である場合には0であってもよく;
或いは、ここで基R4B及びR12Bは一緒に−R15B−基を形成する)
のハフニウムコンプレックスである。
【0094】
1Bは、例えば橋架基R15Bと一緒に、アミン、エーテル、チオエーテル、又はホスフィンを形成していてもよい。しかしながら、A1Bはまた、環炭素に加えて酸素、イオウ、窒素、及びリンからなる群からのヘテロ原子を含んでいてよい非置換、置換、又は縮合の複素環式芳香環系であってもよい。炭素原子に加えて環員として1〜4個の窒素原子及び/又は1個のイオウ若しくは酸素原子を含んでいてよい5員のヘテロアリール基の例は、2−フリル、2−チエニル、2−ピロリル、3−イソオキサゾリル、5−イソオキサゾリル、3−イソチアゾリル、5−イソチアゾリル、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、5−ピラゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、1,2,4−オキサジアゾル−3−イル、1,2,4−オキサジアゾル−5−イル、1,3,4−オキサジアゾル−2−イル、及び1,2,4−トリアゾル−3−イルである。1〜4個の窒素原子及び/又は1個のリン原子を含んでいてよい6員のヘテロアリール基の例は、2−ピリジニル、2−ホスファベンゼニル、3−ピリダジニル、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル、2−ピラジニル、1,3,5−トリアジン−2−イル、及び1,2,4−トリアジン−3−イル、1,2,4−トリアジン−5−イル、並びに1,2,4−トリアジン−6−イルである。5員及び6員のヘテロアリール基はまた、C〜C10アルキル、C〜C10アリール、アルキル部分に1〜10個の炭素原子及びアリール部分に6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール、トリアルキルシリル、又はフッ素、塩素、若しくは臭素のようなハロゲンによって置換されていてもよく、或いは、1以上の芳香環又はヘテロ芳香環と縮合してもよい。ベンゾ縮合5員ヘテロアリール基の例は、2−インドリル、7−インドリル、2−クマロニル、7−クマロニル、2−チオナフテニル、7−チオナフテニル、3−インダゾリル、7−インダゾリル、2−ベンズイミダゾリル、及び7−ベンズイミダゾリルである。ベンゾ縮合6員ヘテロアリール基の例は、2−キノリル、8−キノリル、3−シンノリル、8−シンノリル、1−フタラジル、2−キナゾリル、4−キナゾリル、8−キナゾリル、5−キノキサリル、4−アクリジル、1−フェナントリジル、及び1−フェナジルである。複素環の命名及び付番は、L. Fieser及びM. Fieser, Lehrbuch der organischen Chemie, 第3改訂版, Verlag Chemie, Weinheim 1957からとった。
【0095】
一般式(III)中の基Xは、好ましくは同一であり、好ましくは、フッ素、塩素、臭素、C〜Cアルキル又はアラルキル、特に塩素、メチル、又はベンジルである。
かかるコンプレックスの合成は、それ自体公知の方法によって行うことができ、適当に置換された環式炭化水素アニオンとハフニウムのハロゲン化物との反応が好ましい。適当な製造法の例は、例えば、Journal of Organometallic Chemistry, 369 (1989), 359-370に記載されている。
【0096】
ハフノセンは、ラセミ又は偽ラセミ形態で用いることができる。偽ラセミという用語は、コンプレックスの全ての他の置換基を無視した場合に、2つのシクロペンタジエニルリガンドが互いに対してラセミ配列であるコンプレックスを指す。
【0097】
好適なハフノセンの例は、とりわけ、メチレンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、メチレンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、メチレンビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、メチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、メチレンビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(3−フェニルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、イソプロピリデンビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、エチレンビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、エチレンビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、テトラメチルエチレン−9−フルオレニルシクロペンタジエニルハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−tert−ブチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−イソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−tert−ブチルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジブロミド、ジメチルシランジイルビス(3−メチル−5−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(3−エチル−5−イソプロピルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、メチルフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2−メチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2−エチル−4,5−ベンズインデニル)ハフニウムジクロリド、ジフェニルシランジイルビス(2−メチルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−i−ブチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−(9−フェナントリル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−イソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2,7−ジメチル)−4−イソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[p−トリフルオロメチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[3’,5’−ジメチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジエチルシランジイルビス(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−エチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−プロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−n−ブチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイルビス(2−ヘキシル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニルインデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−(1−ナフチル)インデニル)(2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−エチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[3’,5’−ビス−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、ジメチルシランジイル(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[1’−ナフチル]インデニル)ハフニウムジクロリド、及びエチレン(2−イソプロピル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)(2−メチル−4−[4’−tert−ブチルフェニル]インデニル)ハフニウムジクロリド、並びに、対応するジメチルハフニウム、モノクロロモノ(アルキルアリールオキシ)ハフニウム、及びジ(アルキルアリールオキシ)ハフニウム化合物である。コンプレックスは、ラセミ形態、メソ形態で、或いはこれらの混合物として用いることができる。
【0098】
上記の一般式のハフノセンの中で、下式:
【0099】
【化7】

【0100】
のものが好ましい。
式(V)の化合物の中で、
が、フッ素、塩素、臭素、C〜Cアルキル、又はベンジルであるか、或いは2つの基Xが置換又は非置換ブタジエンリガンドを形成し;
tが1又は2、好ましくは2であり;
1B〜R5Bが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアリール、NR8B、OSiR8B、又はSi(R8Bであり;
9B〜R13Bが、それぞれ、水素、C〜Cアルキル、又はC〜Cアリール、NR14B、OSiO14B、又はSi(R14Bであり;
或いは、それぞれの場合において2つの基R1B〜R5B及び/又はR9B〜R13Bが、C環と一緒に、インデニル、フルオレニル、又は置換インデニル若しくはフルオレニル系を形成する;
ものが好ましい。
【0101】
シクロペンタジエニル基が同一である式(V)のハフノセンが特に有用である。
式(V)の特に好適な化合物の例は、とりわけ、
ビス(シクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(インデニル)ハフニウムジクロリド、ビス(フルオレニル)ハフニウムジクロリド、ビス(テトラヒドロインデニル)ハフニウムジクロリド、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(トリメトキシシリルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(イソブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(3−ブテニルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(1,3−ジ−tert−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(tert−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(フェニルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(N,N−ジメチルアミノメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(メチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(メチルシクロペンタジエニル)(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、(シクロペンタジエニル)(1−メチル−3−n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、ビス(テトラメチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド、及び対応するジメチルハフニウム化合物である。
【0102】
更なる例は、クロリドリガンドの1つ又は2つがブロミド又はヨージドによって置き換えられている対応するハフノセン化合物である。
更なる好適なメタロセンは、ハフニウムに変えて、前周期遷移金属化合物からなる群から選択される異なる遷移金属、例えばTi、Zr、V、Crが与えられている式(III)又は(V)に基づくものであってよい。
【0103】
例として、混合触媒系は、好ましくはシングルサイト触媒成分(B)として少なくとも1種類のメタロセン(例えばハフノセン又はジルコノセン)、及び非シングルサイト触媒(A)として、好ましくはそれぞれがハロゲン及び/又はアルキル置換基を有する少なくとも2つのアリール基を有する三座リガンドを有する、少なくとも1種類の非メタロセンタイプの遷移金属化合物、好ましくは後周期遷移金属、より好ましくは鉄触媒成分を含む。
【0104】
好ましくは、第1のオレフィン重合反応は、第1の所定の濃度の少なくとも1種類の例えば帯電防止剤のような助剤の存在下で行う。
好ましくは、第2のオレフィン重合は、0乃至第1の所定の濃度よりも低い値である第2の所定の濃度の助剤の存在下で行う。
【0105】
好ましくは、第3のオレフィン重合反応は、0乃至第2の所定の濃度よりも低い値である第3の所定の濃度の助剤の存在下で行う。
好ましくは、第1のオレフィン重合反応は、好ましくは2ppmより多く、好ましくは3ppmより多く、好ましくは4〜8ppmの第1の所定の濃度のモル質量調整剤、好ましくは水素の存在下で行う。
【0106】
好ましくは、第2のオレフィン重合反応は、好ましくはモル質量調整剤の第1の所定の濃度よりも低く、好ましくは1ppmより低く、好ましくは0.1ppmより低い第2の所定の濃度のモル質量調整剤の存在下で行う。
【0107】
好ましくは、第3のオレフィン重合反応は、好ましくはモル質量調整剤の第2の濃度より低く、好ましくは0.1ppmより低い第3の所定の濃度のモル質量調整剤の存在下で行う。より好ましくは、第3のオレフィン重合反応はモル質量調整剤の不存在下で行う。
【0108】
好ましくは、第1のオレフィン重合反応は、好ましくは10〜600ppm、より好ましくは10〜400ppm、より好ましくは20〜200ppm、より好ましくは30〜150ppmの第1の所定の濃度の第1の帯電防止剤の存在下で行う。
【0109】
好ましくは、第1の重合反応において用いる帯電防止剤(第1の帯電防止剤)は、アルコキシアミン(例えばAtmerから商業的に入手できるもの、例えばAtmer 163)を含む。
好ましくは、第2のオレフィン重合反応は、0乃至第1の所定の濃度よりも低い値である第2の所定の濃度の第1の帯電防止剤、好ましくは第1のオレフィン重合において用いるものと同じ帯電防止剤の存在下で行う。好ましくは、第2の重合反応における第1の帯電防止剤の第2の所定の濃度は、5〜50ppm、より好ましくは5〜40ppm、より好ましくは5〜30ppm、より好ましくは5〜20ppm、より好ましくは5〜15ppmであり、いずれの場合においても第1の所定の濃度よりも低い。或いは、第2のオレフィン重合は第1の帯電防止剤の不存在下で行う。
【0110】
好ましくは、第3のオレフィン重合反応は、0乃至第1の所定の濃度よりも低い値である第3の所定の濃度の第1の帯電防止剤、好ましくは第1のオレフィン重合において用いるものと同じ帯電防止剤の存在下で行う。第3の重合反応における第1の帯電防止剤の第3の所定の濃度は、好ましくは0乃至第1の所定の濃度よりも低く、好ましくは第2の所定の濃度よりも低い値であり、好ましくは0〜10ppm、より好ましくは0〜5ppm、好ましくは0.3〜5ppmである。
【0111】
好ましくは、第3のオレフィン重合反応は第1の帯電防止剤の不存在下で行う。
好ましくは、第2のオレフィン重合は、所定の濃度、好ましくは0〜100ppm、好ましくは5〜50ppm、好ましくは6〜20ppmの濃度の、第1の帯電防止剤とは異なる第2の帯電防止剤、好ましくは商業的に入手できるCostelan AS100の存在下で行う。
【0112】
好ましくは、第3のオレフィン重合は、所定の濃度、好ましくは第2の重合反応において用いる濃度よりも低い濃度、好ましくは0〜80ppm、好ましくは2〜20ppm、好ましくは3〜10ppmの濃度の、第2の帯電防止剤、好ましくは第2の重合反応において用いるものと同じ帯電防止剤の存在下で行う。
【0113】
好ましくは、第1の重合反応は、第1の所定の濃度の、好ましくは有機金属化合物、好ましくは有機金属化合物、好ましくは第1、2、又は3族の金属の有機金属化合物を含むチーグラー・ナッタ触媒成分を活性化する薬剤の存在下で行う。好ましくは、第1の活性化剤は、有機金属アルキル、アルコキシド、及びハロゲン化物を含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0114】
好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒成分を活性化する薬剤の第1の所定の濃度は、15ppmより高く、好ましくは20ppm〜500ppm、より好ましくは30〜400ppm、より好ましくは60〜400ppmである。
【0115】
好ましくは、第2の重合反応は、好ましくは第1の所定の濃度よりも低く、好ましくは30ppmより低く、好ましくは20ppmより低く、好ましくは15ppmより低く、好ましくは10ppmより低い第2の所定の濃度のチーグラー・ナッタ触媒成分を活性化する薬剤の存在下で行う。より好ましくは、第2の重合反応は、チーグラー・ナッタ触媒成分を活性化する薬剤の不存在下で行う。
【0116】
好ましくは、第3の重合反応は、好ましくは第1の所定の濃度よりも低く、好ましくは30ppmより低く、好ましくは25ppmより低く、好ましくは15ppmより低く、好ましくは10ppmより低い第3の所定の濃度のチーグラー・ナッタ触媒成分を活性化する薬剤の存在下で行う。より好ましくは、第3の重合反応は、チーグラー・ナッタ触媒成分を活性化する薬剤の不存在下で行う。
【0117】
上記した本発明方法によれば、チーグラー・ナッタ触媒系の存在下で行う第1のオレフィン重合反応を停止する(工程(a))。
この停止工程(a)は、好ましくは
(a1)チーグラー・ナッタ触媒系の反応器中への供給を停止し;そして
(a2)チーグラー・ナッタ触媒系を好ましくは不可逆的に失活させる;
工程を実施することによって行う。
【0118】
好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる工程(a2)は、チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤、好ましくは不可逆的失活剤を反応器中に供給することによって行う。
【0119】
本発明の目的のためには、チーグラー・ナッタ触媒系の成分の少なくとも1つと反応してチーグラー・ナッタ触媒系を不活性にすることができ、好ましくは不可逆的に不活性にすることができる物質又は複数の物質の混合物を含む任意の失活剤を用いることができる。
【0120】
チーグラー・ナッタ触媒系を不可逆的に失活させる失活剤、即ち、1種類又は複数のモノマーを重合する触媒の能力を不可逆的に不活性化する薬剤、即ち失活剤を除去するか又は活性化剤(共触媒)を供給した際においてもチーグラー・ナッタ触媒系の再活性化を観察することができない薬剤が好ましい。
【0121】
好ましくは、失活剤は、CO、CO、酸素、水、アルコール、グリコール、フェノール類、エーテル、カルボニル化合物、例えばケトン、アルデヒド、カルボン酸、エステル、脂肪酸、アルキン、例えばアセチレン、アミン、アルコキシアミン(例えば商業的に入手できるAtmer)、ニトリル、窒素含有化合物、ピリジン、ピロール、カルボニルスルフィド、メルカプタン、帯電防止剤(例えばCostenoble,ドイツから入手できるCostelan AS100)を含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0122】
好ましくは、チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤は、酸素、水、アルコール、グリコール、フェノール類、一酸化炭素、二酸化炭素、エーテル、カルボニル化合物、アルキン、窒素含有化合物を含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される。
【0123】
第1のオレフィン重合反応は、好ましくは、以下により詳細に記載するようにアルコールを供給するか、或いはCO、CO、希薄空気、即ち酸素の割合を減少させた空気を供給することによって停止する。
【0124】
好ましくは、反応器が気相反応器、特に気相流動床反応器である好ましい態様においては、チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤は重合条件下において揮発性である。
本発明の目的のためには、揮発性失活剤は、気相反応器の再循環気体系中の条件下において1000Paより高い蒸気圧を有する物質又は複数の物質の混合物である。蒸気圧は、好ましくは再循環気体系中に存在する触媒の完全な失活を確保するのに十分に高い。20℃において1500Paより高く、好ましくは2000Paより高い蒸気圧が好ましい。また、重合条件下において気相流動床反応器内の温度より低い沸点を有し、反応器中で完全に気化する揮発性失活剤も好ましい。
【0125】
特に好適な揮発性失活剤は、例えば、通常の重合条件下、及び好ましくは再循環気体系中の条件下においても気体形態において十分な量で存在することができるのに十分な蒸気圧を有する、低分子量アルコール及びそれらのエステル、低分子量エステル及びアミンである。C〜Cアルコールであるメタノール(沸点:65℃、128hPa)、エタノール(78℃、60hPa)、1−プロパノール(97.4℃、18.7hPa)、2−プロパノール(82℃、43hPa)、1−ブタノール(117℃、6.7hPa)、2−ブタノール(99℃、17hPa)、tert−ブタノール(82.2℃、41.3hPa)が好ましい。ここで、カッコ内に与える値は、それぞれ沸点及び20℃における蒸気圧である。また、C〜Cエーテルも好ましい。2−プロパノールが特に好ましい。
【0126】
失活剤に加えて、帯電防止剤、スキャベンジャー等のような更なる助剤を用いることもできる。失活剤を計量投入する容易さを向上させるために、後者には不活性溶媒、例えばヘキサンのような飽和炭化水素を含ませることができる。
【0127】
用いる失活剤の量は、反応器の寸法及び形状によって定まる。例えば、少量を用いて開始し、完全な失活が起こるまでそれを増加させることができる。
更に、帯電防止作用を有する失活剤が好ましい。
【0128】
その好ましい態様によれば、失活剤は過剰に計量投入する。
好ましい態様によれば、反応器内の第1のオレフィン重合反応を停止する工程(a)は、
(a1)チーグラー・ナッタ触媒系の反応器中への供給を停止し;そして
(a2)反応器の温度を上昇させる;
工程を実施することによって行う。
【0129】
好ましくは、反応器の温度を、第1のオレフィン重合反応を行う温度に対して約10〜20℃上昇させる。一例として、第1のオレフィン重合反応を約70℃〜110℃において行う場合には、第1の触媒系の反応器中への供給を停止した後に、反応器の温度を、好ましくは約80℃〜120℃、より好ましくは約90℃〜115℃に、いずれの場合においても、第1のオレフィン重合反応器のものよりも高い温度にセットしてチーグラー・ナッタ触媒系を失活させる。
【0130】
チーグラー・ナッタ触媒系を失活させるために、混合触媒系の性質によって、失活剤の使用及び温度の増減を組み合わせて、有利には、一方で失活剤の量を減少させ、他方で温度の増減を行うようにすることもできる。
【0131】
上記に定義の第1のオレフィン重合反応を停止する工程(a)、第2の重合反応を行う工程(b)、及び第3の重合反応を行う工程(c)は、好ましくは連続的に、即ちその間の中間工程を行わずに、特に反応器を空にする工程を行わずに、或いは例えば流動床反応器を想定する好ましい態様に関しては床の高さを減少させる工程を行わずに行う。言い換えれば、反応器が流動床反応器である場合には、反応器内に存在する粒子床を保持しながら、工程(b)を工程(a)の後に行うことができ、工程(c)を工程(b)の後に行うことができる。
【0132】
別の態様によれば、工程(a)の後で工程(b)の前に、好ましくは粒子床の質量を低下させる。このようにして、チーグラー・ナッタ触媒系を失活させるのに必要な失活剤の量を有利に減少させることができる。
【0133】
チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤を用いる場合には、この方法は、好ましくは過剰の失活剤を中和する工程を更に含む。
好ましくは、過剰の失活剤を中和する工程はスキャベンジャーを用いることによって行う。
【0134】
好ましくは、過剰の失活剤を中和する工程は、反応器中に、中和剤、好ましくは有機金属化合物、より好ましくは第1、2、又は3族の金属の有機金属化合物、より好ましくは有機金属アルキル、より好ましくは有機アルミニウム化合物を供給することによって行う。
【0135】
好ましくは、有機金属化合物は、リチウムアルキル、マグネシウム又は亜鉛アルキル、マグネシウムアルキルハロゲン化物、アルミニウムアルキル、ケイ素アルキル、ケイ素アルコキシド、及びケイ素アルキルハロゲン化物を含む群、好ましくはこれらからなる群から選択される。より好ましくは、有機金属化合物はアルミニウムアルキル及びマグネシウムアルキルである。更により好ましくは、有機金属化合物はアルミニウムアルキル、好ましくはトリアルキルアルミニウム化合物である。好ましくは、アルミニウムアルキルは、例えばトリメチルアルミニウム(TMAL)、トリエチルアルミニウム(TEAL)、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)、及びトリ−n−ヘキシルアルミニウム(TNHAL)などである。
【0136】
好ましくは、過剰の失活剤を中和する工程は、混合触媒系の第1の触媒成分を活性化させる薬剤として用いるものと同じ化合物、好ましくは有機金属化合物、好ましくは有機アルミニウム化合物によって行う。
【0137】
更なるオレフィン重合反応は、触媒成分(B)の初期活性よりも高い初期活性の触媒成分(A)を用いて、所定の時間行う。
この所定の時間は、好ましくは混合触媒系の触媒成分によって得ることができる分子量の差によって定まる。所定の時間は好ましくは、好ましくは約80000の所定の平均分子量が達成される時間である。所定の分子量が達成されたら、目標のポリオレフィンのタイプによって、2つの触媒成分(A)及び(B)の相対活性を自由に調節することができる。言い換えれば、所定の平均分子量が達成されたら、更なるオレフィン重合反応を継続し、混合触媒系の2つの触媒成分(A)及び(B)の間の相対活性を初期条件と比べて異なるように調節して、好ましくは両方の触媒成分の最大活性、或いは所望の目標生成物を確保するそれらの活性の間の所望の比を確保するようにすることができる。
【0138】
混合触媒系の2つの触媒成分の間の相対活性は、例えば物理的条件(例えば温度、圧力)、又は化学的条件のような混合触媒系の触媒成分の少なくとも1つの活性に影響を与える条件を変化させることによって調節することができる。
【0139】
好ましい態様によれば、第2のオレフィン重合反応は、初めは混合触媒系の触媒成分(B)を可逆的に失活させる薬剤の存在下で行う。
好ましくは、混合触媒系の触媒成分(B)を可逆的に失活させる薬剤は、チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤と中和剤との間の反応から誘導される。
【0140】
別の態様によれば、第2のオレフィン重合反応は、初めは混合触媒系の触媒成分(A)を活性化する薬剤の存在下で行う。
当業者のスキルの範囲内の工程(b)を行う数多くの方法が存在する。原理上は、混合触媒系の触媒成分(A)の初期の支配的な活性(即ち第2の触媒成分(B)の活性よりも高い活性)を導く任意の方法によって本発明の目的を達成することができる。例えば反応器中に触媒成分(A)を活性化するが触媒成分(B)の活性に対して実質的に作用しない薬剤を導入するか、或いは反応器中に触媒成分(B)よりも触媒成分(A)をより活性化する薬剤を導入するか、或いは反応器中に触媒成分(B)を失活させる薬剤を導入するか、或いは初めに触媒成分(A)の初期の支配的な活性に有利に働く重合条件をセットすることによって、触媒成分(A)は混合触媒系の触媒成分(B)と比較して相対的により活性になる。
【0141】
重合反応を気相中で行う場合には、この方法は好ましくは、工程(a2)を行った後、好ましくは工程(b)を行う前、及び場合によっては工程(c)を行う前にもう一度、気体の組成を調節する工程を更に含む。
【0142】
好ましくは、この方法は第1の重合反応の後に床の高さを減少させる工程を更に含む。
このようにして、有利には、失活剤の量を最小にするか、或いは第1のオレフィン重合反応から第2のオレフィン重合反応へ移行させるための時間を更に減少させることが可能である。
【0143】
好ましくは、第2のオレフィン重合反応を行う工程(b)の後で、第3のオレフィン重合反応を行う工程(c)の前に、温度を100〜125℃、より好ましくは110〜120℃の範囲にセットする。
【0144】
好ましくは、工程(c)を行う前に、反応器の温度を、工程(b)と実質的に同じ値に保持し、好ましくは第2のオレフィン重合反応を行う温度に対して約5〜15℃、好ましくは8〜12℃増加させる。一例として、第2のオレフィン重合反応を約100℃において行う場合には、混合触媒系の反応器中への供給を停止した後、反応器の温度を好ましくは100℃より高い温度、好ましくは約105℃、より好ましくは約110℃にセットして混合触媒系を失活させる。
【0145】
好ましくは、第2のオレフィン重合反応を行う工程(b)の後で、第3のオレフィン重合反応を行う工程(c)の前に、場合によっては上記に記載の温度の好ましい調節と組み合わせて、気体の組成を調節し、好ましくはコモノマー及び水素の濃度を減少させる。
【0146】
好ましくは、この方法は第2の重合反応の後に床の高さを減少させる工程を更に含む。
このように、有利には、第2のオレフィン重合反応から第3のオレフィン重合反応へ移行させるための時間を更に減少させることが可能である。
【0147】
また、フィリップス触媒から、好ましくは上記に記載の任意の好ましい混合触媒系の中から選択される混合触媒系への移行を構想することも可能である。この移行は、単独か、或いは本発明方法の工程(c)の後に連続して行って第4のオレフィン重合を可能にすることができる。いずれの場合においても、対応するオレフィン重合は、混合触媒、及び、フィリップス触媒系の存在下で行う重合中に用いる帯電防止剤の濃度よりも高い濃度の、好ましくは上記に記載の帯電防止剤の中から選択される帯電防止剤の存在下で行うことが好都合である。したがって、フィリップス触媒系から混合触媒系へ移行させる方法は、好ましくは帯電防止剤の濃度を増加させる工程を含む。好ましくは、場合によって行う第4のオレフィン重合は、5〜15ppm、より好ましくは8〜12ppmである第4の所定の濃度(いずれの場合においても第3の所定の濃度よりも高い)の帯電防止剤の存在下で行う。
【0148】
以下において、実施例を用いて本発明を限定することなく示す。
【実施例】
【0149】
本実施例は、連続気相流動床反応器内でのポリマーの製造を参照して本発明の好ましい態様を示す。ここでは、非メタロセン後周期遷移金属触媒成分及びメタロセン成分を含む混合触媒系を中間段階で用いることによるチーグラー・ナッタ触媒系からフィリップス触媒系への移行を記載する。より詳しくは、モノマーとしてエチレンとコモノマーとしてヘキセンの第1の重合反応を、55kg/時の生産量を有する気相流動床反応器内で行った。続いて、同じ反応器内において、モノマーとしてエチレンとコモノマーとしてヘキセンの第2の重合反応を行った。続いて、同じ反応器内において、モノマーとしてエチレンとコモノマーとしてヘキセンの第3の重合反応を行った。第1の重合反応は下記のチーグラー・ナッタ触媒系を用いて行い、第2の重合反応は下記の混合触媒系を用いて行い、第3の重合反応は下記のフィリップス触媒系を用いて行った。
【0150】
実施例1(チーグラー・ナッタ触媒系)
第1の触媒系として、触媒成分としてLyondellBasellから商業的に入手できるAvant Z218-1、及び活性化剤としてトリイソブチルアルミニウム(TIBAL、ヘキサン中10重量%溶液)を含むチーグラー・ナッタ触媒系を用いた。
【0151】
実施例2(混合触媒系)
混合触媒系として、非メタロセン成分として鉄−ビスイミドコンプレックス、及びメタロセン成分として以下に記載のハフノセンをベースとする混合触媒系を用いた。
【0152】
担体の予備処理として、Graceからの噴霧乾燥シリカゲルであるSylopol 2326を、600℃において6時間か焼した。
WO−98/27124の実施例2に記載のようにして2,6−ビス[1−(2−クロロ−4,6−ジメチルフェニルイミノ)エチル]ピリジンを調製し、これを用い、WO−98/27124の実施例8に記載のようにして鉄(II)クロリドを用いることによって2,6−ジアセチルピリジンビス(2−ジクロロ−4,6−ジメチルフェニルアニル)鉄ジクロリドを合成した。
【0153】
ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド[M=491.84g/モル]を、Crompton, Bergkamenから購入した。
上記のようにして調製した2,6−ジアセチルピリジンビス(2−クロロ−4,6−ジメチルフェニルアニル)鉄ジクロリド6.77g(11.98ミリモル)、及びビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリド82.67g(127.3ミリモル)、並びに5.31LのMAO(トルエン中4.75M、25.2モル、Albemarleから商業的に入手できる)の混合物を、雰囲気温度において60分間撹拌し、次に撹拌しながら、0℃において、(a)において記載したようにして予備処理した担体2400gに加えた。更に、供給ラインを通して5.5Lのトルエンを加えた。更に、溶液を20℃において更に2時間撹拌した((ΣFe+Hf):Alの比=1:140)。濾過した後、4.5Lのヘプタンを用いることによって洗浄工程を行った。濾過は、最大値として3barの窒素圧において行った。生成物を窒素流中において30分間予備乾燥した。キャリアガスとして窒素を用いることによって、主乾燥工程を35℃において真空下で行った。減少した撹拌下(5〜10U/分)において約100mbarの真空を保持した。最後に、自由流動粉末を篩別した(篩:240μm)。
【0154】
5.1kgの触媒が得られた。
実施例3(フィリップス触媒系)
フィリップス触媒系として、触媒成分としてLyondellBasellから商業的に入手できるAvant C220、及び活性化剤としてトリヘキシルアルミニウム(THA、ヘキサン中2重量%溶液)を含むクロム触媒系を用いた。
【0155】
実施例4(チーグラー・ナッタ触媒系を用いる第1の重合反応)
エチレン、水素、プロパン、及びブテンの供給流を、再循環気体ライン中に導入した。実施例1の触媒系を用いた。
【0156】
予備接触容器を介してチーグラー・ナッタ触媒成分を反応器中に導入した。また、液体プロパン及びTIBALも容器に連続的に供給した。エチレン、水素、及びブテンの供給速度を制御して、気体組成の目標値を保持した。全ての気体の濃度を、オンラインガスクロマトグラフによって測定した。
【0157】
触媒の供給速度を調節して製造速度を保持した。見かけの気体流速を0.45m/秒に保持して、反応器を流動状態に保持した。反応器は、25barの圧力、及び80℃の反応器出口温度において運転した。反応器から生成物を断続的に取り出すことによって、床の質量を実質的に一定に保持した。生成物を排出容器中に排出し、再循環気体ラインを通して気体を反応器に再循環して戻した。生成物を窒素によってパージして炭化水素を除去し、加湿窒素で処理して触媒残留物を失活させた。
【0158】
このようにして、2のMFR(190℃/5kg)、及び0.945g/cmの密度を有するポリマーが製造された。
定常状態における設定条件を表1に示す。
【0159】
【表1】

【0160】
実施例5(第1の重合反応から第2の重合反応への移行)
第1の触媒系、即ちAvant Z218-1及びTIBALの両方の供給を停止し、第1の触媒系を失活させる薬剤としてイソプロパノールを供給することによって、実施例4にしたがって行った第1の重合反応を停止した。用いるイソプロパノールの量を減少させるために、イソプロパノールを供給する前に床のレベルを100kgの質量に減少させた。続いて、40gのイソプロパノールを反応器中に2時間かけて供給した。イソプロパノールの供給を開始した直後に生産性が減少した。
【0161】
続いて、反応器条件を表2に示す目標値にセットした。
【0162】
【表2】

【0163】
エチレンを45モル%、水素を0.06モル%、ヘキセンを0.5モル%にセットした。TIBALの供給を5g/時で開始して、床に直接供給した。2時間後、実施例2の混合触媒系を8g/時の速度で供給し始めた。混合触媒系も、キャリアとして気体状プロパンを用いることによって床に直接供給した。TIBALの供給を1g/時に減少させた。混合触媒の供給は、16g/時の供給速度に達するまで2g/時でゆっくりと増加させた。2時間後に重合反応を検出することができた。製造速度はゆっくりと増加した。試料を3時間毎に反応器から採取した。ポリマーのメルトインデックスは150g/10分のMFR(190℃/2.16kg)の値に速やかに増加した。これは、この段階においては鉄触媒成分のみが活性であったことを示す。重合の約6時間後に、メルトインデックスが下降し始めた。更に、目標濃度を保持するためのプラントへのヘキセンの供給は着実に増加した。これは、この時点で混合触媒系のハフニウム成分がその活性を増加させていたことを意味する。水素及びヘキセン濃度を調節して生成物目標を達成した。混合触媒の供給を開始して36時間後、生成物は目標通りであった。定常状態における設定条件を表3に示す。気体の残りは窒素であった。
【0164】
【表3】

【0165】
実施例6(第2の重合反応から第3の重合反応への移行)
水素濃度を0.1モル%に増加させた。Atmer 163及びTIBALの供給を停止した。次に、混合触媒の供給を停止した。反応器からポリマーを排出し続けて反応器内の床の質量を保持した。6時間後、反応器条件を表4に示す目標値に調節した。
【0166】
【表4】

【0167】
トリヘキシルアルミニウム(THA)の供給を1g/時において開始し、床に直接供給した。2時間後、フィリップス触媒系を7g/時の速度で供給し始めた。フィリップス触媒系も、キャリアとして加圧窒素を用いることによって床に直接供給した。2時間後に第3の重合反応が検出できた。反応器とサイクロンとの間のラインへのAtmer 163の供給を0.7ppmの割合で開始した。THAの供給を0.5g/時にゆっくりと減少させた。製造速度は徐々に増加した。試料を3時間毎に反応器から採取した。重合の約12時間後、メルトインデックスがその目標値:MFR(190℃/21.6kg)=13に到達し始めた。定常状態における設定条件を表5に示す。
【0168】
【表5】

【0169】
本明細書及び特許請求の範囲においては、次の測定方法を参照されたい。
密度は、標準規格DIN−EN−ISO−1183−1:2004、方法A(浸漬)によるポリマー密度である。
【0170】
メルトフローレートMFR(190/2.16)は、DIN−EN−ISO−1133:2005、条件Dにしたがって、190℃の温度において2.16kgの負荷下で測定した。
【0171】
メルトフローレートMFR(190/5)は、DIN−EN−ISO−1133:2005、条件Tにしたがって、190℃の温度において5kgの負荷下で測定した。
メルトフローレートMFR(190/21.6)は、DIN−EN−ISO−1133:2005、条件Gにしたがって、190℃の温度において21.6kgの負荷下で測定した。
【0172】
は重量平均モル質量(重量平均分子量)であり、Mは数平均モル質量(数平均分子量)である。モル質量M、Mの測定は、1995年2月発行のDIN−55672−1:1995−02に記載されている方法を用いて高温ゲル透過クロマトグラフィーによって行った。言及したDIN標準規格による変更は以下の通りである。溶媒=1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB);装置及び溶液の温度=135℃;濃度検出器として、TCBと共に用いることができるPolymerChar(Valencia, Paterna 46980,スペイン)IR-4赤外検出器を用いた。直列に接続した以下のプリカラムSHODEX UT-G、並びに分離カラムSHODEX UT806M(3x)及びSHODEX UT807を備えたWATERS Alliance 2000を用いた。溶媒は窒素下で真空蒸留し、0.025重量%の2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノールで安定化した。用いた流速は1mL/分であり、注入量は500μLであり、ポリマー濃度は0.01%<濃度<0.05%w/wの範囲であった。分子量の較正は、Polymer Laboratories(現在はVarian, Inc., Essex Road, Church Stretton, Shropshire, SY6 6AX, 英国)からの580g/モル〜11600000g/モルの範囲の単分散ポリスチレン(PS)標準試料、及び更にヘキサデカンを用いることによって行った。次に、汎用較正法(Benoit H., Rempp P., 及びGrubisic Z., J. Polymer Sci., Phys. Ed., 5, 753 (1967))を用いて、較正曲線をポリエチレン(PE)に適合させた。ここで用いたMark-Houwingパラメーターは、TCB中135℃における有効値で、PSに関しては、kPS=0.000121dL/g、αPS=0.706であり、PEに関しては、kPE=0.000406dL/g、αPE=0.725であった。データの記録、較正、及び計算は、それぞれNTGPC-Control-V6.02.03及びNTGPC-V6.4.24(hs GmbH, Hauptstrasse 36, D-55437 Ober-Hilbersheim)を用いて行った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)チーグラー・ナッタ触媒系の存在下で行う第1のオレフィン重合反応を停止し;
(b)それぞれ第1及び第2のポリオレフィンフラクションを生成させる触媒成分(A)及び(B)を含む更なる触媒系の存在下で第2のオレフィン重合反応を行い、ここで、第1のポリオレフィンフラクションのMは第2のポリオレフィンフラクションのMよりも小さく、触媒成分(A)の初期活性は触媒成分(B)の初期活性よりも高く;
(c)フィリップス触媒系の存在下で第3のオレフィン重合反応を行う;
工程を含む、1つの反応器内においてオレフィン重合のためのチーグラー・ナッタ触媒系からフィリップス触媒系へ移行させる方法。
【請求項2】
第1のオレフィン重合反応を第1の所定の濃度の少なくとも1種類の助剤の存在下で行い、第2のオレフィン重合を第2の所定の濃度の助剤の存在下で行い、第2の所定の濃度が0乃至第1の所定の濃度よりも低い値であり、第3のオレフィン重合反応を第3の所定の濃度の助剤の存在下で行い、第3の所定の濃度が0乃至第2の所定の濃度よりも低い値である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(a)を、
(a1)チーグラー・ナッタ触媒系の反応器中への供給を停止し;そして
(a2)チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる;
工程によって行う、請求項1〜2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤を反応器中に供給することによって工程(a2)を行う、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
チーグラー・ナッタ触媒系が、触媒成分及び触媒成分を活性化する薬剤を含み、チーグラー・ナッタ触媒を活性化する薬剤が第1、2、又は3族の金属の有機金属化合物を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
更なる触媒系の触媒成分(A)が後周期遷移金属を含み、更なる触媒系の触媒成分(B)がメタロセンである、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
第1の触媒系を失活させる薬剤が、酸素、水、アルコール、グリコール、フェノール類、一酸化炭素、二酸化炭素、エーテル、カルボニル化合物、アルキン、窒素含有化合物を含む群から選択される、請求項4〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤を過剰に計量投入し、かかる方法が、中和剤を反応器中に供給することによってチーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤の過剰分を中和する工程を更に含む、請求項4〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
中和剤がチーグラー・ナッタ触媒系を活性化する薬剤として用いるものと同じ化合物である、請求項5に従属する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第2のオレフィン重合反応を、初めは更なる触媒系の触媒成分(B)を可逆的に失活させる薬剤の存在下で行う、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
更なる触媒系の触媒成分(B)を可逆的に失活させる薬剤が、チーグラー・ナッタ触媒系を失活させる薬剤と中和剤との間の反応から誘導される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
反応器が気相反応器である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2012−513506(P2012−513506A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542706(P2011−542706)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/009066
【国際公開番号】WO2010/072367
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】