説明

非重合体カテキン類組成物の製造方法

【課題】 緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物を非重合体カテキン類の精製処理前の組成を損うことなくカフェイン量を低減し、精製処理された非重合体カテキン類組成物の製造法を提供する。
【解決手段】 緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物を、合成吸着剤を充填したカラムに、SV(空間速度)=0.5〜5[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜10[v/v] 吸着させ、次いで10〜14(v/v)%エタノール水溶液を合成吸着剤の充填体積量当り0.5〜10倍量通液し、さらにに15〜19(v/v)%エタノール水溶液を合成吸着剤の充填体積量当り0.5〜10倍量通液させる二段階の脱着工程により脱着させる非重合体カテキン類組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物を非重合体カテキン類の精製処理前の組成を損うことなくカフェイン量を低減し、精製処理された非重合体カテキン類組成物の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類の効果としてはαアミラーゼ活性阻害作用などが報告されている(例えば、特許文献1参照)。このような生理効果を発現させるためには、成人一日あたり4〜5杯のお茶を飲むことが必要であることから、より簡便に大量のカテキン類を摂取するため、飲料にカテキン類を高濃度配合する技術が望まれていた。
【0003】
この方法の一つとして、緑茶抽出物の濃縮物などの水溶性組成物を利用して、カテキン類を飲料に溶解状態で添加する方法が用いられている。しかしながら、カテキン類を高濃度に配合する対象となる飲料の種類によっては、例えば紅茶抽出液や炭酸飲料にカテキン類を添加する場合など、カフェイン及び緑茶由来の風味の残存が飲料の商品価値を大きく損ねることがわかっている。
そこでこの課題を解決する為に高純度に精製された非重合体カテキン類組成物を添加する方法を用いることとなるが、従来の精製法のいずれもが水溶性組成物の精製前後における非重合体カテキン類の組成維持に対しての考慮がなされておらず、精製前の水溶性組成物で検証された生理効果が精製による組成変化後においては保証できないという問題があった。またカフェイン低減においてもクロロホルム処理などの更なる処理が必要となる問題があった。
【0004】
このような背景の中、従来の精製法の中でも、緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物を、吸着剤に一旦吸着させ、その後溶剤等で脱着回収するという従来技術は多数試みられている(例えば、特許文献2〜6参照)。しかしながら、特許文献2は、ハイドロキシルプロピル化デキストランゲル又は親水性ビニルポリマーゲルを用いて精製する方法であるが、脱着に使用される有機溶媒濃度が常に20%以上と高い為に、精製後のカフェイン量が多くなるという問題があった。また特許文献3は、スチレン−ジビニルベンゼン或いはメタアクリル酸エステルを用いて精製する方法であるが脱着に使用される有機溶媒濃度が最終的に60%程度である為に、カラム処理後に別途クロロホルム処理による脱カフェイン処理を行う必要があった。同様に特許文献3、4及び5においても30%、40%以上あるいは50%以上の濃度の有機溶媒である為に同様の精製状態となっていた。
【0005】
またこれらのいずれの方法においても処理前後の組成維持という概念は見受けられない。
【特許文献1】特開平3−133928号公報
【特許文献2】特開平1−175978号公報
【特許文献3】特開平2−311474号公報
【特許文献4】特開平10−67771号公報
【特許文献5】特開平4−182479号公報
【特許文献6】特開平6−9607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物を非重合体カテキン類の精製処理前の組成を損うことなくカフェイン量を低減し、精製処理された非重合体カテキン類組成物の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物を非重合体カテキン類の精製処理前の組成を損うことなくカフェイン量を低減すべく検討した結果、特定の合成吸着剤に非重合体カテキン類を吸着・脱着させる工程において、使用するエタノール水溶液のエタノール濃度を制御することにより、従来よりもカフェイン含量が低く、処理前後での組成変化の小さい、緑茶風味の低減された非重合体カテキン類組成物を高収率で得られることを見出した。
【0008】
本発明は、緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物を、合成吸着剤を充填したカラムに、SV(空間速度)=0.5〜5[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜10[v/v] 吸着させ、次いで10〜14(v/v)%エタノール水溶液を合成吸着剤の充填体積量当り0.5〜10倍量通液し、さらにに15〜19(v/v)%エタノール水溶液を合成吸着剤の充填体積量当り0.5〜10倍量通液させる二段階の脱着工程により脱着させる非重合体カテキン類組成物の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、(A)カフェイン/非重合体カテキン類(重量比)が0.04未満であり、(B)緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物の非重合体カテキン類中の非重合体カテキンガレート体類率を1とした時のカテキンガレート体類率が80〜120%、(C)緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物の非重合体カテキン類中の非重合体ガロ体類率を1とした時の非重合体カテキン類中の非重合体ガロ体類率が85〜115%である非重合体カテキン類組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、従来よりもカフェイン含量が低く、処理前後での組成変化の小さい、緑茶風味の低減された非重合体カテキン類組成物を高収率で得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明で非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレートなどの非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどのエピ体カテキン類をあわせての総称である。
【0011】
本発明で非重合体カテキンガレート体類とは、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートなどをあわせての総称である。また非重合体ガロ体類とは、ガロカテキン、ガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピガロカテキンガレートなどをあわせての総称である。
【0012】
本発明に使用する緑茶葉としては、Camellia属、例えばC. sinensis、C. assamica及びやぶきた種、又はそれらの雑種から得られる茶葉から製茶された茶葉が挙げられる。例えば、蒸し製茶葉では普通煎茶、深蒸し煎茶、玉露、かぶせ茶、玉緑茶、番茶などが好ましい。また釜炒り製では玉緑茶や中国緑茶が特に好ましい。
【0013】
本発明で使用する水溶性組成物は通常の緑茶抽出条件で製造される。緑茶葉からの抽出時の温度は非重合体カテキン類の抽出効率を高くする観点から70℃〜沸騰水、さらに好ましくは80℃〜沸騰水を使っても差し支えない。緑茶葉からの抽出時の水の量は、緑茶葉に対して5〜60重量倍、特に5〜40重量倍が好ましい。緑茶葉からの抽出時間は1〜60分が好ましく、より好ましくは1〜40分、さらに好ましくは1〜30分である。抽出時間は短すぎると非重合体カテキン類の溶出が不十分であり、長すぎると非重合体カテキン類の熱変性異性化反応が進行してしまう。
【0014】
本発明に用いる水溶性組成物は、いわゆる緑茶抽出物を濃縮したものであって、特開昭59−219384号公報、特開平4−20589号公報、特開平5−260907号公報、特開平5−306279号公報、特願2002−114355、特願2002−020415などに詳細に例示されている方法で調製したものを使用しても良い。市販品としては、三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」などが挙げられる。そのほか、カラム精製品及び化学合成品でも使用できる。ここでいう茶抽出物の濃縮物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状など種々のものが挙げられるが、本発明の処理においては事前に水溶液の状態に調整する。
【0015】
本発明で用いる水溶性組成物のBrixは2〜25、好ましくは3〜25、更に好ましくは3〜20の範囲にすることで、非重合体カテキン類の回収率が高まり、脱カフェイン効率も改善される。ここで前記緑茶抽出物の濃縮物を使用する場合、そのBrixは10〜25、さらに15〜25が好ましい。
【0016】
本発明に用いる合成吸着剤としては、スチレン−ジビニルベンゼン、修飾スチレン−ジビニルベンゼン又はメタクリル酸メチルを母体とするものが挙げられる。スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着剤の例としては、三菱化学社製の商品名ダイヤイオンHP−20、HP−21、セパビーズSP70、SP700、SP825、SP−825やオルガノ社(供給元:米国ローム&ハース社)のアンバーライトXAD4、XAD16HP、XAD1180、XAD2000、住友化学(供給元:米国ローム&ハース社)のデュオライトS874、S876等が挙げられる。臭素原子を核置換して吸着力を強めた修飾スチレン−ジビニルベンゼン系の合成吸着剤の例としては、三菱化学社製の商品名セパビーズSP205、SP206、SP207等が挙げられる。メタクリル酸メチル系の合成吸着剤の例としては、三菱化学社製のセパビーズHP1MG、HP2MGやオルガノ社のXAD7HP、住友化学のデュオライトS877等が挙げられる。
合成吸着剤の中でも特に、特に修飾ポリスチレン系合成吸着剤及びメタクリル酸メチル系合成吸着剤が好ましい。前者はポリスチレン系合成吸着剤に比べ吸着容量が高く、また高比重である為に精製プロセスの中でアップフロー通液が可能となって好ましい。また後者は吸着量は少ないものの高極性有機物の吸着に有利な点が挙げられる。
【0017】
本発明に用いる合成吸着剤は具体的には、SP207などの修飾ポリスチレン系合成吸着剤(三菱化学社製)、HP2MGなどのメタクリル系合成吸着剤(三菱化学社製)が挙げられるが、前述の理由からSP207、HP2MGが好ましく、SP207がより好ましい。
【0018】
本発明においては、まず水溶性組成物を合成吸着剤を充填したカラムに通液するが、予めSV(空間速度)=1〜5[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数として2〜5[v/v] の通液条件で95(v/v)%エタノール水溶液で洗浄を行い、合成吸着剤の原料モノマーや原料モノマー中の不純物等を除去するのが良い。そして、その後SV(空間速度)=1〜5[h-1]、合成吸着剤に対する通液倍数として1〜4[v/v] の通液条件により水洗し、エタノールを除去して合成吸着剤の含液を水系に置換する方法が選択できる。
【0019】
水溶性組成物を、合成吸着剤を充填したカラムに通液する条件としては、SV(空間速度)=0.5〜5[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜10[v/v] で通液するのが好ましい。さらに、SV=1〜5[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として1〜8[v/v] で通液するのがより好ましい。
【0020】
水溶性組成物をカラムに吸着後、エタノール水溶液によって脱着する条件としては、まず10〜14(v/v)%エタノール水溶液を合成吸着剤の充填体積当り0.5〜10倍量通液し、次いで15〜19(v/v)%エタノール水溶液を合成吸着剤の充填体積量当り0.5〜10倍量通液する二段階のグラディエント方式を採用することが非重合体カテキン類の効率的な溶出及び精製ができる点で好ましい。
ここで、10(v/v)%未満のエタノール水溶液で溶出する場合、カフェイン/非重合体カテキン類比率は下がるものの、合成吸着剤に対する通液倍数が15[v/v]超となり、多量の溶出液を要しかつ非重合体カテキン類の回収率が低くなってしまう。一方、20(v/v)%以上のエタノール水溶液で溶出する場合、カフェインと非重合体カテキン類の分離が悪くなる。
【0021】
本発明で使用される合成吸着剤は精製処理後に所定の方法を用いることにより再使用できる。具体的には、90〜99.5(v/v)%エタノール水溶液を通液し吸着剤上に残存する水溶液組成物成分をすべて脱着させる。
【0022】
本発明により得られる非重合体カテキン類組成物は、(A)カフェイン/非重合体カテキン類(重量比)が0.04未満であり、カフェイン含量が低い。また、本発明方法によれば、水溶性組成物からの(B)非重合体カテキン類の回収率が75重量%以上、(C)非重合体カテキン類中の非重合体カテキンガレート体類率の濃度変化が20%未満、(D)非重合体カテキン類中の非重合体ガロ体類率の濃度変化が15%未満であり、処理前後の組成変化が極めて少ない。
【0023】
本発明で得られた非重合体カテキン類組成物はそのままで使用しても良く、減圧濃縮、薄膜濃縮などの方法によりエタノールを除去してもよい。通常飲料への配合に使用する場合、エタノールを完全に除去した方が好ましい。また非重合体カテキン類組成物の製品形態として粉体が望ましい場合は、噴霧乾燥や凍結乾燥等の方法によって粉体化できる。
【0024】
本発明で得られた非重合体カテキン類組成物は容器詰飲料に配合できる。使用される容器は一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶などの通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰飲料とは希釈せずに飲用できるものをいう。
【0025】
また上記の容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造される。PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器などで高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。
【実施例】
【0026】
(カテキン類の測定法)
フィルター(0.8μm)で濾過し、次いで蒸留水で希釈した容器詰めされた飲料を、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL-10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により行った。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0027】
(Brixの測定法)
測定試料をイオン交換水によってゼロ点調節したBrix計(RX−5000α(ATAGO社製))により、測定を行った。
【0028】
(殺菌後の風味評価)
各実施例で得られた非重合体カテキン類組成物をカテキン含有率が0.175%[w/v]となるように脱イオン水で希釈し、その40mLを50mLの耐圧製ガラス容器に入れた。そこにアスコルビン酸Naを0.1重量%添加し、5%重炭酸Na水溶液でpHを6.4に調整し、窒素置換を行い、オートクレーブで121℃、10分間加熱滅菌した。その後、評価パネラー5名によって緑茶由来の異味・異臭が感じられないか確認を行った。
【0029】
(沈殿の評価方法)
耐圧製ガラス容器に入っている評価サンプルを、55℃の恒温槽に入れて、濁りの発生状況を確認した。イルミネーター上で内容物の状態を観察し、澱の観察された時点を澱生成日とした。
【0030】
実施例1
宮崎産緑茶2番茶100gを85℃の脱イオン水1,500gで30分間抽出、冷却、搾汁後、2号ろ紙によりろ過し、Brix3.4の抽出液1,200gを得た。次いで、ガラスカラム(内径40mm×高さ400mm)に充填した合成吸着剤セパビーズSP−207(三菱化学(株)製)300mLを、予めSV=3(h-1)で95%(v/v)エタノール900mLによる洗浄を行い、SV=3(h-1)で600mLの水で洗浄した。その後、得られた抽出液1,200gをSV=3(h-1)で通液し、通過液は廃棄した。茶抽出液を吸着後、カラム内のSP−207に12%(v/v)エタノール水をSV=3(h-1)で1,800mL通液した後、17%(v/v)エタノール水をSV=3(h-1)で1,200mL通液した。得られた溶出液をロータリーエバポレーターによりBrix20まで減圧濃縮して非重合体カテキン類組成物100.1gを得た。
【0031】
実施例2
合成吸着剤にセパビーズSP−70(三菱化学(株)製)を使用した以外は実施例1と全く同様にして非重合体カテキン類組成物108.6gを得た。
【0032】
実施例3
合成吸着剤にセパビーズHP2MG(三菱化学(株)製)を使用した以外は実施例1と全く同様にして非重合体カテキン類組成物106.8gを得た。
【0033】
実施例4
実施例1と同様に抽出した抽出液をロータリーエバポレーターによりBrix20まで減圧濃縮して濃縮液103.5gを得た。その後、実施例1と同様にガラスカラム(内径40mm×高さ400mm)に充填した合成吸着剤セパビーズSP−207(三菱化学(株)製)300mLに通液させ、非重合体カテキン類組成物105gを得た。
【0034】
参考例1
宮崎産緑茶2番茶100gを85℃の脱イオン水1,500gで30分間抽出、冷却、搾汁後、2号ろ紙によりろ過し、Brix3.4の抽出液1,200gを得た。
【0035】
比較例1
実施例1の12%(v/v)エタノール水及び17%(v/v)エタノール水を通液する代わりに、5%(v/v)エタノール水をSV=3(h-1)で3,000mL通液した以外は全く同様にして行った。得られた非重合体カテキン類組成物は110.2gであった。
【0036】
比較例2
実施例1の12%(v/v)エタノール水及び17%(v/v)エタノール水を通液する代わりに、30%(v/v)エタノール水をSV=3(h-1)で900mLを通液した以外は全く同様にして行った。得られた非重合体カテキン類組成物は105.3gであった。
【0037】
比較例3
実施例1の12%(v/v)エタノール水及び17%(v/v)エタノール水を通液する代わりに、20%(v/v)エタノール水をSV=3(h-1)で900mLを通液した以外は全く同様にして行った。
【0038】
比較例4
宮崎産緑茶2番茶1000gを85℃の脱イオン水10Lで10分間抽出、冷却、搾汁後、2号ろ紙によりろ過し、その後、減圧濃縮してBrix21.3の茶抽出液1,500gを得た。次いで、ガラスカラム(内径40mm×高さ400mm)に充填した合成吸着剤デュオライトS−876(デュオライトインターナショナルINC社製)300mLを、予めSV=3(h-1)で60%(v/v)アセトン水溶液900mLによる洗浄を行い、SV=3(h-1)で600mLの水で洗浄した。その後、得られた茶抽出液1,500gをSV=3(h-1)で通液し、通過液は廃棄した。茶抽出液を吸着後、カラム内のS−876に10%(v/v)アセトン水溶液をSV=3(h-1)で1,800mL通液した後、60%(v/v)アセトン水溶液をSV=3(h-1)で1,200mL通液した。得られた溶出液をロータリーエバポレーターによりBrix20まで減圧濃縮して非重合体カテキン類組成物106.3gを得た。
【0039】
表1に分析並びに評価結果を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
実施例1〜4のいずれにおいても処理前後におけるカテキン類組成の変化を極力抑えるとともに回収率が高く、カフェイン濃度の低い非重合体カテキン類組成物を得ることができた。また容器詰飲料をモデル系とした殺菌後の風味評価において緑茶由来の異味・異臭が感じられず、55℃保存後の澱生成もみられなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物を、合成吸着剤を充填したカラムに、SV(空間速度)=0.5〜5[h-1]の通液速度で、合成吸着剤に対する通液倍数として0.5〜10[v/v] 吸着させ、次いで10〜14(v/v)%エタノール水溶液を合成吸着剤の充填体積量当り0.5〜10倍量通液し、さらに15〜19(v/v)%エタノール水溶液を合成吸着剤の充填体積量当り0.5〜10倍量通液させる二段階の脱着工程により脱着させる非重合体カテキン類組成物の製造方法。
【請求項2】
(A)カフェイン/非重合体カテキン類(重量比)が0.04未満であり、(B)緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物の非重合体カテキン類中の非重合体カテキンガレート体類率を1とした時のカテキンガレート体類率が80〜120%、(C)緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物の非重合体カテキン類中の非重合体ガロ体類率を1として時の非重合体カテキン類中の非重合体ガロ体類率が85〜115%である請求項1記載の非重合体カテキン類組成物の製造方法。
【請求項3】
緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物のBrixが2〜25である請求項1又は2記載の非重合体カテキン類組成物の製造方法。
【請求項4】
(A)カフェイン/非重合体カテキン類(重量比)が0.04未満であり、(B)緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物の非重合体カテキン類中の非重合体カテキンガレート体類率を1とした時のカテキンガレート体類率が80〜120%、(C)緑茶葉から水を用いて抽出した水溶性組成物の非重合体カテキン類中の非重合体ガロ体類率を1とした時の非重合体カテキン類中の非重合体ガロ体類率が85〜115%である非重合体カテキン類組成物。

【公開番号】特開2006−8580(P2006−8580A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187340(P2004−187340)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】