説明

非開削掘削埋設装置

【課題】 筒状部材の引込みの際の筒状部材の継ぎ足しを容易に且つ簡単に行うことができる非開削掘削埋設装置を提供すること。
【解決手段】 先端に向けて縮径するリーマ体20と、リーマ体20の先端部に接続されるロッド部材6と、ロッド部材6を引き込むためのロッド駆動手段14と、ロッド駆動手段14によって引き込まれる筒状部材24と、筒状部材24の先端側に装着され、リーマ体20に連結機構22を介して連結される先端側治具25と、筒状部材24の後端側に装着される後端側治具27と、筒状部材24内を通して先端側治具25と後端側治具27とを解除自在に接続するワイヤ部材24と、を具備する非開削掘削埋設装置。後端側治具27は、筒状部材に装着される押込み体84と、ワイヤ部材88をグリップして押込み体84を押圧するためのグリップ体86とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤を開削することなく筒状部材を埋設することができる非開削掘削埋設装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を非開削で掘削して例えば鞘管の如き筒状部材を埋設する非開削掘削埋設装置として、地盤を掘削するドリルヘッドと、このドリルヘッドに接続されるロッド部材と、ロッド部材を駆動するためのロッド駆動手段と、掘削した掘削孔を拡径掘削するためのリーマ体と、このリーマ体の基部に連結機構を介して接続される筒状部材とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような非開削掘削埋設装置では、埋設孔を掘削する際には、ドリルヘッドが用いられ、このドリルヘッドがロッド部材の先端部に装着される。そして、ロッド駆動手段はロッド部材及びドリルヘッドを回動させながら推進し、このようにして掘削孔が形成される。その後、この掘削孔に鞘管としての筒状部材を埋設するときには、ドリルヘッドに代えてリーマ体が用いられ、このリーマ体の先端部がロッド部材に装着され、またリーマ体の基部に連結機構を介して筒状部材が連結される。そして、ロッド駆動手段はロッド部材及びリーマ体を回転させながら引き込み、このようにしてリーマ体により掘削孔が拡径掘削されるとともに、拡径された掘削孔に筒状部材が埋設される。
【0003】
このような非開削掘削埋設装置では、筒状部材がジャケットにより覆われ、リーマ体を引き込む際に、このジャケットを引っ張って筒状部材を引き込むように構成されており、それ故に、筒状部材を引き込む際の抵抗が大きくなると、ジャケットに大きな負荷が作用し、ジャケット自体が破損するおそれがあり、ジャケットが破損した場合、筒状部材を掘削孔に引き込んで埋設することができなくなる。
【0004】
このような問題を解消するために、筒状部材を先端側から引き込むのではなく、その後端側から押し込むようにしたものも提案されている(例えば、特許文献2)。この非開削掘削埋設装置は、リーマ体に連結機構を介して連結される先端側治具と、この先端側治具に先端部が装着される筒状部材と、筒状部材の後端部に装着される後端側治具と、筒状部材内に挿通される引張部材とを備え、引張部材の一端部が先端側治具に装着され、その他端部が後端側治具に支持される。
【0005】
このような非開削掘削埋設装置においては、リーマ体を引込み方向に移動すると、このリーマ体からの引込み力が連結機構、先端側治具及び引張部材を介して後端側治具に伝達し、この後端側治具から筒状部材の後端部に作用し、従って、後端側治具が筒状部材を後端側から押し込むように作用し、かくして、筒状部材を押し込みながら掘削孔に挿入埋設することができる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−293141号公報
【特許文献2】特開2001−311385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の非開削掘削埋設装置では、埋設される筒状部材は相互に接続されるように構成され、また引張部材も筒状部材を接続した際に相互に接続されるように構成され、筒状部材を引き込むにつれて筒状部材及び引張部材を継ぎ足して引き込むように構成されているが、上述した従来のものでは、筒状部材及び引張部材の継足し作業が煩雑であるという問題がある。即ち、引張部材には雄ねじが設けられ、引張部材を接続するのに雌ねじが設けられた接続治具が用いられ、また後端側治具は、筒状部材の後端部に装着されるベースと、このベースに作用するワッシャ及びナットとから構成されている。筒状部材及び引張部材を継ぎ足すには、まず、ワッシャ及びナットとともにベースを取り外し、次いで引張部材に接続治具を取り付けて継ぎ足すべき引張部材を取り付け、次いで筒状部材の後端部に継ぎ足すべき筒状部材を接続し、その後継ぎ足した筒状部材の後端部にベースを取り付け、しかる後にベースから突出する引張部材にワッシャ及びナットを取り付ければならず、その作業が煩雑となる。加えて、雄ねじ、雌ねじによる螺着を多用しているために、構成が複雑になるとともに、部材の製作費用が高くなる。
【0008】
本発明の目的は、筒状部材の引込みの際の筒状部材の継ぎ足しを容易に且つ簡単に行うことができる非開削掘削埋設装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に記載の非開削掘削埋設装置は、先端に向けて縮径するリーマ体と、前記リーマ体の先端部に接続されるロッド部材と、前記ロッド部材を引き込むためのロッド駆動手段と、前記ロッド駆動手段によって引き込まれる筒状部材と、前記筒状部材の先端側に装着され、前記リーマ体の基部に連結機構を介して連結される先端側治具と、前記筒状部材の後端側に装着される後端側治具と、前記筒状部材内を通して前記先端側治具と前記後端側治具とを解除自在に接続するワイヤ部材と、を具備する非開削掘削埋設装置であって、前記後端側治具は、前記筒状部材に装着される押込み体と、前記ワイヤ部材をグリップして前記押込み体を押圧するためのグリップ体とを備え、前記押込み体には、前記ワイヤ部材を横側から受け入れるための受け溝が設けられ、前記グリップ体は、前記ワイヤ部材を引込み方向に引っ張ったときには前記ワイヤ部材をグリップし、前記ワイヤ部材を前記引込み方向と反対方向に戻したときには前記ワイヤ部材のグリップ状態を解除可能とすることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項2記載の非開削掘削埋設装置では、前記押込み体は、前記グリップ体が当接する外側部材と、前記外側部材の内側に配設された内側部材とを備え、前記内側部材には、前記筒状部材を位置決め保持するための保持突部が設けられているとともに、前記ワイヤ部材を受け入れるための第1受け溝が設けられ、前記外側部材には前記ワイヤ部材を受け入れるための第2受け溝が設けられているとともに、前記内側部材の前記第1受け溝に挿入される突起が設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の非開削掘削埋設装置では、前記グリップ体は、円錐状の貫通孔が設けられた当接部材と、前記当接部材の前記貫通孔に挿入されて円錐状のグリップ体を構成する複数の割り部材とから構成され、前記押込み体と前記グリップ体の前記当接部材との間には、前記当接部材が前記筒状部材内に落下するのを防止するための落下防止部材が介在され、前記押込み体を取り外したときには、前記落下防止部材が前記筒状部材の開口を塞いで前記当接部材の落下を防止することを特徴とする。
【0012】
更に、本発明の請求項4に記載の非開削掘削埋設装置では、前記グリップ体は、円錐状の貫通孔が設けられた当接部材と、前記当接部材の前記貫通孔に挿入されて円錐状のグリップ体を構成する複数の割り部材とから構成され、前記当接部材には、前記筒状部材内に落下するのを防止するための落下防止用部材が取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の非開削掘削埋設装置によれば、リーマ体に連結部材を介して先端側治具が連結され、引き込むべき筒状部材の先端側に先端側治具が装着され、その後端側に後端側治具が装着され、この先端側治具と後端側治具とがワイヤ部材を介して解除自在に接続されるので、リーマ体を引き込みながら拡径掘削する際には、リーマ本体からの引込み力が連結機構、先端側治具及びワイヤ部材を介して後端側治具に伝達され、この後端側治具から筒状部材に作用し、これによって、筒状部材を後端側から押し込みながら拡径掘削された掘削孔に挿入することができる。また、後端側治具は、筒状部材に装着される押込み体と、ワイヤ部材をグリップして押込み体を押圧するためのグリップ体とを備え、押込み体には受け溝が設けられているので、この押込み体を横側が挿入するようにして筒状部材の後端部に装着することができる。また、後端側治具のグリップ体は、ワイヤ部材を引込み方向に引っ張ったときにはワイヤ部材をグリップし、ワイヤ部材を前記引込み方向と反対方向に戻したときには前記ワイヤ部材のグリップ状態を解除となるので、グリップ体によるグリップ及びグリップ解除を容易に行うことができ、これらによって、筒状部材の継足し作業を簡単に且つ短時間に行うことができる。
【0014】
また、本発明の請求項2記載の非開削掘削埋設装置では、内側部材に第1受け溝が設けられ、また外側部材に第2受け溝が設けられているので、内側部材及ぶ外側部材を横側から挿入するようにして筒状部材の後端部に装着することができる。また、内側部材に保持突部が設けられているので、筒状部材の後端部が内側部材に対して所定の位置関係に保持され、押込み体を筒状部材に確実に作用させることができる。更に、内側部材の第1受け溝に外側部材の前記第1受け溝に挿入される突起が設けられているので、この突起によって、内側部材と外側部材との相対的回転を防止することができる。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の非開削掘削埋設装置によれば、押込み体とグリップ体の当接部材との間に落下防止部材が介在されているので、押込み体を取り外したときには落下防止部材が筒状部材の開口を塞ぐようになり、これによって、当接部材の筒状部材内への落下を防止することができる。
【0016】
更に、本発明の請求項4に記載の非開削掘削埋設装置によれば、グリップ体の当接部材に落下防止用部材が取り付けられているので、この落下防止用部材によって、当接部材の筒状部材内への落下を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に従う非開削掘削埋設装置の一実施形態について説明する。図1は、一実施形態の非開削掘削埋設装置による掘削作業を説明するための簡略図であり、図2は、図1の非開削掘削埋設装置による拡径掘削作業を説明するための簡略図であり、図3は、図1の非開削掘削埋設装置による掘削作業を説明するための簡略図であり、図4は、図1の非開削掘削埋設装置による掘削作業が終了した状態を示す簡略図であり、図5は、図2の非開削掘削埋設装置による拡径掘削作業(及び引込み作業)を説明するための簡略図であり、図6は、図1の非開削掘削埋設装置のリーマ体及びそれに関連する構成を示す断面図であり、図7は、図1の非開削掘削埋設装置における先端側治具を示す断面図であり、図8は、図1の非開削掘削埋設装置における後端側治具を一部断面で示す断面図であり、図9は、図8の後端側治具を分解して示す斜視図であり、図10(a)及び(b)は、図8の後端側治具の内側部材を示す正面図及び側面図であり、図11(a)及び(b)は、図8の後端側治具の外側部材を示す正面図及び側面図であり、図12(a)及び(b)は、図8の後端側治具の緩衝部材を示す正面図及び側面図であり、図13は、筒状部材の継足し作業においてワイヤ部材を戻したときの状態を示す断面図であり、図14は、筒状部材の継足し作業において押込み体を外した状態を示す断面図であり、図15は、筒状部材の継足し作業において筒状部材を継ぎ足した状態を示す断面図である。
【0018】
図1及び図2において、図示の非開削掘削埋設装置2は、地中を非開削で掘削するためのドリルヘッド4と、このドリルヘッド4の推進に伴って順次に接続されるロッド部材6とから構成され、ドリルヘッド4の推進によって掘削孔を形成するときには、先端側のロッド部材6にドリルヘッド4が取り付けられる。
【0019】
ドリルヘッド4及びロッド部材6は、例えば、地盤8の表面から地中(土壌中)に挿入されて推進する。地上にはロッド部材6を介してドリルヘッド4を駆動するためのロッド駆動手段14が設置され、このロッド駆動手段14はロッド部材6を所要の通りに駆動し、ロッド部材6及びドリルヘッド4を所定の推進方向に押し込むとともに、軸線方向を中心として所定方向に回動する。このような非開削掘削埋設装置2では、ドリルヘッド4が進むにつれてその基部側、即ちロッド駆動手段14側に新しいロッド部材6が着脱自在に継ぎ足され、このようにロッド部材6を継ぎ足しながらドリルヘッド4が所定方向に推進し、このようにして掘削孔が形成される。また、ロッド駆動手段14に関連して、掘削液を供給するための掘削液供給手段16が設けられ、掘削液供給手段16からの掘削液(例えば、泥水など)が接続されたロッド部材6を通してドリルヘッド4に供給され、かく供給された掘削液がドリルヘッド4の噴射ノズル(図示せず)から掘削域に噴射される。
【0020】
また、形成した掘削孔を拡径掘削するときには、図2に示すように、ドリルヘッド4に代えてリーマ体20が用いられ、接続されたロッド部材6の先端部にリーマ体20が取り付けられ、このリーマ体20の基部に連結機構22(図6参照)を介して筒状部材24が連結される。筒状部材24の先端側には先端側治具25が配設され、この先端側治具25に連結機構22が連結される。また、筒状部材24の後端側には後端側治具27が装着される。鞘管として機能する筒状部材24を引き込むときにもロッド駆動手段14はロッド部材6を所要の通りに駆動し、ロッド部材6及びリーマ体20を所定の引込み方向(掘削推進方向と反対方向)に引き込むとともに、軸線方向を中心として所定方向と反対方向に回動する。そして、筒状部材24を引き込むにつれてその基部側、即ちロッド駆動手段14側にてロッド部材6が取り外されるとともに、筒状部材24の後端側に後述するようにして筒状部材24が継ぎ足され、このようにロッド部材6を取り外し、筒状部材24を継足しながらリーマ体20が所定方向に引き込まれ、このようにしてリーマ体20による拡径掘削が行われるとともに、筒状部材24の引込みが行われる。この拡径掘削のときにも、掘削液供給手段16からの掘削液が接続されたロッド部材6を通してリーマ体20に供給され、かく供給された掘削液が、リーマ体20の噴射ノズル(図示せず)から拡径掘削域に噴射される。尚、筒状部材26を直線状に保つために、地盤8に引込み架台29が設置され、継ぎ足された筒状部材26は、この引込み架台29に支持されながら拡径掘削孔に引き込まれる。
【0021】
次に、図1及び図2とともに、図3〜図5を参照して、上述した非開削掘削埋設装置2を用いて電気防食用電極体(図示せず)を埋設する非開削工法について説明する。
建造物30は建造物本体32を備え、この建造物本体32の底部が地中に埋設された多数の埋設鋼材34上に建造され、これら埋設鋼材34は建造物本体32を支持する。このような建造物30の埋設鋼材34に電気防食を施すには、図3〜図5に示すようにして電気防食用電極体が埋設設置される。尚、ロッド駆動手段14及び掘削液供給手段16は、例えば、自走可能な走行車両38,40に搭載され、掘削を行う作業現場まで走行して設置される。
【0022】
電気防食用電極体を埋設するには、まず、図1及び図3に示すように、建造物30の周囲近傍にロッド駆動手段14及び掘削液供給手段16を設置し、このロッド駆動手段14によって回転させながらからロッド部材6及びドリルヘッド4を矢印42で示す方向に推進させ、かかる推進によって掘削孔44を掘削する。そして、図4に示すように、地中に埋設された埋設鋼材34の間を通り、建造物本体32の下側を水平に建造物30の片側から他側に(図3及び図4において左から右に)ロッド部材6及びドリルヘッド4を推進させ、ドリルヘッド4を地盤8の表面に突出させる。このようにして建造物本体32の下側を実質上水平に貫通する掘削孔44を非開削で掘削する。
【0023】
次に、ドリルヘッド4に代えてリーマ体20を用い、接続されたロッド部材6の先端部にリーマ体20を取り付け、このリーマ体20に連結機構22(図7参照)を介して先端側治具25を連結する。また、筒状部材24の後端部に後端側治具27を装着し、先端側具25と後端側治具27との間に筒状部材24を介在させ、この筒状部材24内を通して延びるワイヤ部材88(図2参照)によって先端側治具25と後端側治具27とを後述する如く連結する。そして、矢印46で示すように、ロッド駆動手段14によって回転させながらロッド部材6及びリーマ体20を引き込み、かかる引き込みの際に形成された掘削孔44をリーマ体20によって拡径掘削するとともに、後述する如く、連結機構22、先端側治具25、ワイヤ部材88及び後端側治具27を介して筒状部材24を拡径掘削された掘削孔48(図6参照)内に引き込む。この引込みは、上述したように、接続したロッド部材6を取り外しながら、また筒状部材24を継ぎ足しながら、筒状部材24の先端がロッド駆動手段14側に露出するまで行われ、このように引込むと、引き込まれた筒状部材24は、拡径掘削孔48に埋設される。その後、電気防食用電極体(図示せず)を埋設した筒状部材24内に押込むようにして挿入し、このようにして電気防食用電極体を非開削でもって地盤8に埋設することができる。
【0024】
次に、主として図6及び図7を参照して、上述した被開削掘削埋設装置2により筒状部材24を引き込む際に用いるリーマ体20、連結機構22及び先端側治具25について説明する。図6及び図7において、リーマ体20は略円錐状のリーマ本体52を有し、その先端(矢印55で示す引込み側)に向けて縮径され、その先端部に接続部54が設けられ、この接続部54に一点鎖線で示すようにロッド部材6の先端部が接続される。従って、ロッド部材6を引き込むと、これと一体的にリーマ本体52も引き込まれる。このリーマ本体54の外周面には、周方向に間隔をおいて複数のブレード(図示せず)が設けられ、これらブレードによって、掘削孔44が拡径掘削される。
【0025】
このリーマ体20の基部と先端側治具25とを連結する連結機構22は、略U字状の第1及び第2連結部材62,64を備えている。リーマ体20の基部には第1接続部材66が設けられ、この第1接続部材66は、例えばスイベル継手67の如き継手手段を介してリーマ本体52に対して相対的に回転自在に装着されている。この第1接続部材66には連結孔が設けられ、第1連結部材62は、その両端部及び第1接続部材66の連結孔を通してピン部材68を装着することによって第1接続部材66に連結される。
【0026】
また、先端側治具25の一端側(図6及び図7において左側)には連結部70が設けられ、その他端側(図6及び図7において右側)に受け部72が設けられ、連結部70には連結孔74が設けられている。第1連結部材62と第2連結部材64とは、それらのU字状部が相互に係合するように連結され、かく連結された第2連結部材64は、その両端部の連結孔及び先端側治具25の連結孔74を通してピン部材76を装着することによって先端側治具25に連結される。
【0027】
このように連結機構22を介して連結されているので、リーマ体20が矢印55で示す方向に引き込まれると、これに伴って先端側治具25も一体的に拡散掘削孔48内に引き込まれる。また、この引込みのときにリーマ体20が回転されるが、この回動力は連結機構22を介して先端側治具25に伝達されず、従って、先端側治具25及び筒状部材24は回動することなく矢印55で示す方向に引き込まれる。
【0028】
先端側治具25の受け部72には、図6に示すように、中空円筒状のカバー部材78を設けるのが好ましい。このカバー部材78は、受け部72の基部部に例えば取付ねじ79によって取り付けられ、この受け部72からリーマ体20の基部に向けて延び、連結部70及び連結機構22を覆っている。また、このカバー部材78の先端部には補強リング80が設けられ、補強リング80がその先端部全周に設けられている。このようにカバー部材78を設けることによって、リーマ体20と先端側治具25との間の間隙(即ち、連結機構22が配設された空間)に土砂などが侵入するのを防止することができる。また、カバー部材78を先端側治具25側に設けているので、引込み時にリーマ体20が回動してもカバー部材78が回動することがなく、このカバー部材78による抵抗を少なくすることができる。
【0029】
筒状部材24の先端側は、図7に示すように先端側治具25に装着される。即ち、先端側治具25の受け部72は中空筒状に形成され、他端側に開口する円筒状の受け空間80を規定する。筒状部材24の先端部は、上記開口を通して受け空間80に挿入することによって、この受け部72に装着される。筒状部材24は例えば塩化ビニール(PVC)管から形成され、その外周を覆うようにジャケット82が予め装着されており、このような筒状部材24が好都合に用いられる。
【0030】
次いで、図8〜図12を参照して、後端側治具27について説明すると、図示の後端側治具27は、筒状部材24の後端側に装着される押込み体84と、この押込み体84を押圧するためのグリップ体86とを備え、上述の先端側治具25とこの後端側治具27とがワイヤ部材88を介して解除自在に接続されるように構成されている。押込み体84は、筒状部材24に装着される内側部材90と、この内側部材90の外側に配設される外側部材92とから構成されている。内側部材90は円形状に形成され、筒状部材24の外径よりも幾分大きい外径を有する。この内側部材90の片面(筒状部材24側の面であって、図8及び図9において左面、図10(b)において右面)には、周方向に間隔をおいて複数(図示の例では、4個)の保持突部94が設けられており、図8に示すように、これら保持突部94は筒状部材24の内側に挿入され、筒状部材24を位置決め保持する。この内側部材90には、外周縁からその中心を幾分超えて延びる第1受け溝96が設けられ、内側部材90を後述する如く横側から装着するときに、ワイヤ部材88がこの第1受け溝96に受け入れられる。尚、複数のピン状の保持突部94に代えて、リング状の保持突部を設けるようにしてもよい。
【0031】
また、外側部材92は内側部材90と同じ大きさの円形状であり、その片面(内側部材90側の面であって、図8及び図9において左面、図11(b)において右面)には、径方向に間隔をおいて一対の突起98が設けられているとともに、一対の突起98と対向する部位(180度の位置関係の部位)に、外周縁からその中心部を幾分超えて延びる第2受け溝100が設けられている。押込み体84を横側から筒状部材24に装着するときには、一対の突起98は内側部材90の第1受け溝96に挿入され、かく挿入することによって、外側部材92と内側部材90との相対的回転が防止され、またワイヤ部材88が外側部材92の第2受け溝100に受け入れられ、かく装着した状態においては、内側部材90の第1受け溝96と外側部材92の第2受け溝100とが異なる角度位置(この形態では、180度ずれた角度位置)に位置し、このような位置関係にすることによって、第1及び第2受け溝96,100を設けたことによる強度低下を小さく抑えることができる。尚、一対の突起98に代えて、径方向に延びる突起を設けるようにしてもよい。
【0032】
押込み体84の内側部材90と筒状部材24との間には、緩衝部材102を介在させるのが好ましい。緩衝部材102は、例えば硬質ゴムから形成され、内側部材90の各保持突部94に対応し挿通孔104が設けられているとともに、第1受け溝96に対応して第3受け溝106が設けられている。この緩衝部材102は、各保持突部94を挿通孔104に挿通することにより内側部材90の片面に装着され、かく装着した状態においては、緩衝部材102の第3受け溝106と内側部材90の第1受け溝96とが整合し、第1及び第3受け溝96,102を通してのワイヤ部材88の受入れが許容される。
【0033】
次に、グリップ体86について説明すると、図示のグリップ体86は、外側部材92の他面(内側部材90側とは反対側の面であって、図8及び図9において右面)に当接する当接部材108と、ワイヤ部材88をグリップするためのグリップ部材110を構成する複数(図示の具体例では、3つ)の割り部材112から構成されている。当接部材108には円錐状の貫通孔114が設けられ、複数の割り部材112は、ワイヤ部材88を周方向に覆うように円錐状に組み合わせて当接部材108の貫通孔114に挿入され、かく挿入した状態にて、ワイヤ部材88を後述する引込み方向に引っ張ると、複数の割り部材112が当接部材108に対して相対的に挿入方向に食い込むように移動してワイヤ部材88を周方向からグリップするように作用し、またワイヤ部材88を後述する引込み方向と反対方向に戻すと、複数の割り部材112が当接部材108に対して相対的に離脱方向に移動し、これによってワイヤ部材88のグリップ状態が解除される。
【0034】
ワイヤ部材88は、例えばPC鋼より線から構成され、その一端部は先端側治具25に取り付けられる。この形態では、先端側治具25の受け部72の底部114には挿通孔116が設けられ、ワイヤ部材88の一端部はこの挿通孔116を通して外部に導出され、かく導出された端部にグリップ金具118が圧着され、このグリップ金具118を係止するように止め金具120が受け部72の底部114に取り付けられる。このワイヤ部材88は筒状部材24内を通してその後端側に延び、筒状部材24の後端側においては、グリップ体86がワイヤ部材88に解除自在にグリップし、先端側治具25に伝達された引込み力は、ワイヤ部材88及びグリップ体96を介して押込み体84に伝達され、この押込み体84からの押込み力によって、筒状部材24は後端側からの押込み作用によって押込み挿入される。尚、先端側治具25の連結部70には、グリップ金具118及び止め金具120の装着を許容するための開口122が設けられる。
【0035】
次に、図13〜図15を参照して、筒状部材24を引き込む際の筒状部材24の継足し作業について説明する。筒状部材24を引き込む際には、ワイヤ部材88の一端部(先端部)を先端側治具25に上述した如くして装着し、かく装着したワイヤ部材88の他端側を埋設すべき複数の筒状部材24及びグリップ体86の当接部材108を通して延ばし、一つ目の筒状部材24の後端側の外側にグリップ体86の当接部材108を位置付けるとともに、この筒状部材24と当接部材108との間に押込み体84を装着し、更に当接部材108の挿通孔104に割り部材112を挿入する。そして、かかる状態にて、ロッド駆動手段14を駆動させ、ロッド部材6を回転させながら引き込み、このようにしてリーマ体20により拡径掘削が行われる(拡径掘削作業)とともに、筒状部材24が拡径掘削された掘削孔48に挿入される(引込み作業)。
【0036】
このようにして筒状部材24を挿入した後に次の筒状部材24を挿入するときには、まず、ロッド駆動手段14を引込み時とは反対方向に駆動し、ロッド部材6を引込み方向とは反対方向に戻し移動させる。かくすると、図13に示すように、ロッド部材6からの戻し方向の力が、リーマ体20、連結機構22及び先端側治具25を介してワイヤ部材88に伝達され、このワイヤ部材88を介してグリップ体86が戻し方向に移動され、このようにして押込み体84による押圧状態を解除する。そして、グリップ体86を当接部材108に対して相対的に移動させ、複数の割り部材112によるグリップ状態を開放してグリップ状態を解除する(尚、当接部材108と割り部材112との係合状態が弱いときには、ワイヤ部材88を戻し方向に移動させることによって、複数のグリップ体86によるグリップ状態が開放される)。
【0037】
次いで、図14に示すように、グリップ体86の当接部材108から複数の割り部材112を取り外し、この取り外した状態にて当接部材108をワイヤ部材88に沿って後端側に移動させる。そして、外側部材92を矢印124で示す戻し方向に幾分移動させて一対の突起98を内側部材94の第1受け溝96から外し、このように外した状態にて径方向外側に移動させて外側部材92の第2受け溝100をワイヤ部材88から外す。更に、内側部材90(この内側部材90には緩衝部材102が装着された状態になっている)を外側部材92と同様にして矢印124で示す戻し方向に幾分移動させて複数の保持突部94を筒状部材24の後端部から外し、このように外した状態にて径方向外側に移動させて内側部材90の第1受け溝96及び緩衝部材102の第3受け溝106をワイヤ部材88から外す。
【0038】
その後、図15に示すように、拡径掘削された掘削孔48挿入した筒状部材24の後端側に次に埋設する筒状部材24を位置付け、かかる筒状部材24の後端側にグリップ体86の当接部材108を位置付ける。そして、取外し時は反対に、筒状部材24と当接部材108との間隙を利用し、内側部材90及び緩衝部材102を外側から径方向に移動させて内側部材90の第1受け溝96及び緩衝部材102の第3受け溝106にワイヤ部材88を受け入れ、かかる状態にて、内側部材90の保持突部94を次に埋設する筒状部材24の後端部に挿入する。更に、外側部材92を外側から径方向に移動させて外側部材92の第2受け溝100内にワイヤ部材88を受け入れ、かかる状態にて、外側部材92の一対の突起98を内側部材90の第1受け溝96内に挿入する。
【0039】
その後、グリップ体86の当接部材108を外側部材92の外面に当接し、更に、この当接部材108の挿通孔104に割れ部材112を挿入し、このようにして、図8に示すような取り外し前の状態に組み付けることができ、筒状部材24の継足し作業を容易に且つ簡単に行うことができる。かく組み付けた状態にてロッド部材6を引き込むと、ロッドからの引込み力は、上述したと同様に、先端側治具25及びワイヤ部材88を介して後端側治具27に伝達され、この後端側治具27による押込み作用によって継ぎ足した筒状部材24を拡径された掘削孔48に所要の通りに挿入することができる。
【0040】
以上、本発明に従う非開削掘削装置の一実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形乃至修正が可能である。
【0041】
例えば、ワイヤ部材88を引き戻したときに、押込み体84とグリップ体86との間に存在する隙間が小さいときには、図16に示すように、押込み体84の外側部材92とグリップ体86の当接部材108との間に補助部材132を介在させるようにするのが好ましい。この補助部材132にも、径方向外周縁から中心を幾分超えて延びる第4受け溝134が設けられ、かかる第4受け溝134にワイヤ部材88が受け入れられ、外側から径方向に着脱自在に取り付けられる。
【0042】
また、筒状部材24の継足し作業時にグリップ体86の当接部材108が挿入埋設した筒状部材24内に落下するおそれがあり、このような落下を防止するために、図17に示すように、押込み体84の外側部材92とグリップ体86の当接部材108との間に落下防止部材142を介在させるのが好ましい。この落下防止部材142はプレート状部材から構成され、その中央部にワイヤ部材88が挿通される開口144が設けられる。このような落下防止部材142を設けることによって、押込み体84(内側部材90及び外側部材92)を取り外したときに、かかる落下防止部材142が筒状部材24の後端側の開口を塞ぐようになり、かくして、当接部材108が落下防止部材142に当接し、この当接部材108の筒状部材24内への落下が確実に防止される。尚、この落下防止部材142に取付突部146を設け、この取付突部146に落下防止用部材としてのワイヤ状部材148を取り付けるようにしてもよく、このようにワイヤ状部材148を取り付けることによって、落下防止部材142及び当接部材108をワイヤ部材88に沿って容易に移動させることができる。
【0043】
尚、落下防止部材142を設けることに代えて、当接部材108に直接的に落下防止用部材としてのワイヤ状部材を取り付けるようにしてもよく、このように構成した場合、仮に当接部材108が筒状部材24内に落下したとしても、このワイヤ状部材を引っ張ることによって当接部材を容易に拾い上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】一実施形態の非開削掘削埋設装置による掘削作業を説明するための簡略図。
【図2】図1の非開削掘削埋設装置による拡径掘削作業を説明するための簡略図。
【図3】図1の非開削掘削埋設装置による掘削作業を説明するための簡略図。
【図4】図1の非開削掘削埋設装置による掘削作業が終了した状態を示す簡略図。
【図5】図2の非開削掘削埋設装置による拡径掘削作業(及び引込み作業)を説明するための簡略図。
【図6】図1の非開削掘削埋設装置のリーマ体及びそれに関連する構成を示す断面図。
【図7】図1の非開削掘削埋設装置における先端側治具を示す断面図。
【図8】図1の非開削掘削埋設装置における後端側治具を一部断面で示す断面図。
【図9】図8の後端側治具を分解して示す斜視図。
【図10】図10(a)及び(b)は、図8の後端側治具の内側部材を示す正面図及び側面図。
【図11】図11(a)及び(b)は、図8の後端側治具の外側部材を示す正面図及び側面図。
【図12】図12(a)及び(b)は、図8の後端側治具の緩衝部材を示す正面図及び側面図。
【図13】筒状部材の継足し作業においてワイヤ部材を戻したときの状態を示す断面図。
【図14】筒状部材の継足し作業において押込み体を外した状態を示す断面図。
【図15】筒状部材の継足し作業において筒状部材を継ぎ足した状態を示す断面図。
【図16】後端側治具の第1の変形形態を示す分解斜視図。
【図17】後端側治具の第2の変形形態を示す分解斜視図。
【符号の説明】
【0045】
2 非開削掘削埋設装置
4 ドリルヘッド
6 ロッド部材
14 ロッド駆動手段
16 掘削液供給手段
20 リーマ体
22 連結機構
24 筒状部材
25 先端側治具
27 後端側治具
30 建造物
70 連結部
72 受け部
84 押込み体
86 グリップ体
88 ワイヤ部材
90 内側部材
92 外側部材
108 当接部材
110 グリップ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に向けて縮径するリーマ体と、前記リーマ体の先端部に接続されるロッド部材と、前記ロッド部材を引き込むためのロッド駆動手段と、前記ロッド駆動手段によって引き込まれる筒状部材と、前記筒状部材の先端側に装着され、前記リーマ体の基部に連結機構を介して連結される先端側治具と、前記筒状部材の後端側に装着される後端側治具と、前記筒状部材内を通して前記先端側治具と前記後端側治具とを解除自在に接続するワイヤ部材と、を具備する非開削掘削埋設装置であって、
前記後端側治具は、前記筒状部材に装着される押込み体と、前記ワイヤ部材をグリップして前記押込み体を押圧するためのグリップ体とを備え、前記押込み体には、前記ワイヤ部材を横側から受け入れるための受け溝が設けられ、前記グリップ体は、前記ワイヤ部材を引込み方向に引っ張ったときには前記ワイヤ部材をグリップし、前記ワイヤ部材を前記引込み方向と反対方向に戻したときには前記ワイヤ部材のグリップ状態を解除可能とすることを特徴とする非開削掘削埋設装置。
【請求項2】
前記押込み体は、前記グリップ体が当接する外側部材と、前記外側部材の内側に配設された内側部材とを備え、前記内側部材には、前記筒状部材を位置決め保持するための保持突部が設けられているとともに、前記ワイヤ部材を受け入れるための第1受け溝が設けられ、前記外側部材には前記ワイヤ部材を受け入れるための第2受け溝が設けられているとともに、前記内側部材の前記第1受け溝に挿入される突起が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の非開削掘削埋設装置。
【請求項3】
前記押込み体と前記グリップ体の前記当接部材との間には、前記当接部材が前記筒状部材内に落下するのを防止するための落下防止部材が介在され、前記押込み体を取り外したときには、前記落下防止部材が前記筒状部材の開口を塞いで前記当接部材の落下を防止することを特徴とする請求項1又は2に記載の非開削掘削埋設装置。
【請求項4】
前記グリップ体は、円錐状の貫通孔が設けられた当接部材と、前記当接部材の前記貫通孔に挿入されて円錐状のグリップ体を構成する複数の割り部材とから構成され、前記当接部材には、前記筒状部材内に落下するのを防止するための落下防止用部材が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の非開削掘削埋設装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−274617(P2008−274617A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−118421(P2007−118421)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000000284)大阪瓦斯株式会社 (2,453)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】