説明

面実装コイル部品

【課題】製品強度及び使用温度環境変化に対する信頼性が高く、低背化が可能な面実装コイル部品を提供する。
【解決手段】ドラム型フェライトコア14と、ドラム型フェライトコア14の下鍔13の下面に形成された少なくとも一対のコア直付けの外部電極15a,15bと、ドラム型フェライトコア14の巻芯11に巻回されるとともに両端部が外部電極15a,15bに導電接続された巻線17と、ドラム型フェライトコア14の上鍔12と下鍔13との間の巻線17を覆いつつ上鍔12と下鍔13との間の空間に充填された、熱硬化性樹脂及び無機フィラーを含有する無機フィラー含有外装樹脂18と、を有する面実装コイル部品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる面実装コイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用される面実装コイル部品としては、ドラム型フェライトコアと、ドラム型フェライトコアの下鍔の下面に形成された少なくとも一対のコア直付けの外部電極と、ドラム型フェライトコアの巻芯に巻回されるとともに両端部が前記外部電極に導電接続された巻線と、ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の巻線を覆いつつ前記上鍔と下鍔との間の空間に充填された外装樹脂と、を備える面実装コイル部品が知られている。
【0003】
このような面実装コイル部品を携帯型電話機やデジタルスチルカメラ等の携帯型電子機器のDC/DC電源用途等の電流対応コイル(チョークコイル等)に使用するには、所望のインダクタ特性を確保しつつ低背な外形寸法にすることが要請されている。
【0004】
ところで、携帯型電子機器は、常時持ち歩いて使用されることが多く、使用温度環境の変化が激しい。このため、携帯型電子機器の内部に収容された部品実装基板に搭載される面実装コイル部品は、使用温度環境変化に対する信頼性が高いことが望ましい。
【0005】
しかしながら、使用温度環境の変化に伴い外装樹脂は膨張収縮するので、その膨張収縮によりドラム型フェライトコアの鍔の部位に応力が加わる。このため、特に面実装コイル部品の外形寸法を低背にした場合、ドラム型フェライトコアの鍔の強度がその応力に対抗できなくなって、鍔の部位に割れ(クラック)が生じる場合があった。
【0006】
面実装コイル部品の使用温度環境変化に対する信頼性を向上させるにあたり、例えば、下記特許文献1には、ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の空間に、硬化時の物性として温度に対する剛性率の変化においてガラス状態からゴム状態に移行する過程におけるガラス転移温度が−20℃以下の磁性粉含有外装樹脂を充填した面実装コイル部品が開示されている。
【特許文献1】特開2005−210055号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラス転移温度が−20℃以下の樹脂は、概ねヤング率が高く、クッション性に富むので、使用温度環境の変化に伴い上記外装樹脂が膨張しても、顎の部位にかかる応力は小さくなる。このため、ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔とに挟まれた空間領域に、硬化時の物性として温度に対する剛性率の変化においてガラス状態からゴム状態に移行する過程におけるガラス転移温度が−20℃以下の外装樹脂を充填した、上記特許文献1の面実装コイル部品は、ヒートサイクル試験における鍔の割れの発生を防止でき、使用温度環境変化に対する信頼性は高い。
【0008】
しかしながら、上記外装樹脂は、クッション性に富むので、ドラム型フェライトコアの顎の部位に衝撃などの外部応力が加わると、変形してしまい、外部応力に鍔の強度が対抗しきれなくなって、鍔の部位に割れ(クラック)が生じる場合があった。
【0009】
したがって、本発明の目的は、製品強度及び使用温度環境変化に対する信頼性が高く、低背化が可能な面実装コイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するにあたって、本発明の面実装コイル部品の第一は、
実装面に対して巻軸が垂直に配置される巻芯と該巻芯の上下両端にそれぞれ前記巻芯と一体に形成された上鍔及び下鍔とからなり、上鍔の厚みが0.35mm以下であり、かつ、巻芯直径L1に対する上鍔の外形寸法L2の比がL2/L1の値で1.9以上であるドラム型フェライトコア(A)と、前記ドラム型フェライトコアの下鍔の下面に形成された少なくとも一対のコア直付けの外部電極(B)と、前記ドラム型フェライトコアの巻芯に巻回されるとともに両端部が前記外部電極に導電接続された巻線(C)と、前記ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の巻線を覆いつつ前記上鍔と下鍔との間の空間に充填された無機フィラー含有外装樹脂(D)と、を有する面実装コイル部品において、
前記無機フィラー含有外装樹脂(D)は、熱硬化性樹脂と、無機フィラー含有外装樹脂(D)100質量部に対して球状フィラーを20質量%以上含有する無機フィラーとを含み、かつ無機フィラー含有外装樹脂(D)100質量部に対して前記無機フィラーを70〜90質量部含有する、
ことを特徴とする。
【0011】
本発明の面実装コイル部品の第一によれば、ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の空間に、熱硬化性樹脂と、無機フィラーとを含む無機フィラー含有外装樹脂(D)を充填したことで、製品強度が向上し、外部からドラム型フェライトコアの上鍔部分に荷重が加わったとしても、上鍔部分の破損を防止できる。そして、無機フィラーとして、球状フィラーを20質量%以上含有するものを用い、かつ、無機フィラー含有外装樹脂(D)100質量部に対して無機フィラーを70〜90質量部含有させたことで、無機フィラー含有外装樹脂(D)の充填時における流動性を損なうことがないので、面実装コイル部品の生産性が良好である。更には、無機フィラー含有外装樹脂(D)とドラム型フェライトコア(A)との線膨張係数を近づけることができるので、ヒートサイクル試験において優れた耐久性が得られ、使用温度環境変化に対する信頼性が高い。したがって、携帯型電話機やデジタルスチルカメラ等の携帯型電子機器に、好適に用いることができる、低背な外形寸法の面実装コイル部品にすることができる。
【0012】
また、本発明の面実装コイル部品の第二は、実装面に対して巻軸が垂直に配置される巻芯と該巻芯の上下両端にそれぞれ前記巻芯と一体に形成された上鍔及び下鍔とからなり、上鍔の厚みが0.35mm以下であり、かつ、巻芯直径L1に対する上鍔の外形寸法L2の比がL2/L1の値で1.9以上であるドラム型フェライトコア(A)と、前記ドラム型フェライトコアの下鍔の下面に形成された少なくとも一対のコア直付けの外部電極(B)と、前記ドラム型フェライトコアの巻芯に巻回されるとともに両端部が前記外部電極に導電接続された巻線(C)と、前記ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の巻線を覆いつつ前記上鍔と下鍔との間の空間に充填された無機フィラー含有外装樹脂(D)と、を有する面実装コイル部品において、
前記無機フィラー含有外装樹脂(D)は、熱硬化性樹脂と、無機フィラーとを含み、かつ、線膨張係数が5〜20ppm/℃である、
ことを特徴とする。
【0013】
本発明の面実装コイル部品の第二によれば、ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の空間に、熱硬化性樹脂と、無機フィラーとを含む無機フィラー含有外装樹脂(D)を充填したことで、製品強度が向上し、外部からドラム型フェライトコアの上鍔部分に荷重が加わったとしても、上鍔部分の破損を防止できる。そして、無機フィラー含有外装樹脂(D)として線膨張係数が5〜20ppm/℃であるものを用いたことで、ヒートサイクル試験において優れた耐久性が得られ、使用温度環境変化に対する信頼性が高い。したがって、携帯型電話機やデジタルスチルカメラ等の携帯型電子機器に、好適に用いることができる、低背な外形寸法の面実装コイル部品にすることができる。
【0014】
本発明の面実装コイル部品の第一において、前記球状フィラーの少なくとも一部が非磁性体であることが好ましい。
【0015】
本発明の面実装コイル部品の第一及び第二において、前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度が、120℃以上であることが好ましい。コイル部品は、使用時に100℃程度に加熱されることがあるが、熱硬化性樹脂のガラス転移温度が、120℃以上であれば、使用時でもガラス状態を維持できるので、十分な強度が得られ、クラックの発生をより低減できる。
【0016】
本発明の面実装コイル部品の第一及び第二において、前記無機フィラーが、フェライトを含有するものであることが好ましい。フェライトを含有させることで、インダクタンス値を上昇させることができ、所望のインダクタ特性を備えた面実装コイル部品とすることができる。
【0017】
本発明の面実装コイル部品の第一及び第二において、前記無機フィラーのレーザ回折散乱法による平均粒径D50が、3〜50μmであることが好ましい。この態様によれば、外装樹脂(D)の粘度上昇を抑制できるので、ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の空間に充填し易くなり、面実装コイル部品を効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の空間に、熱硬化性樹脂と、無機フィラーとを含む無機フィラー含有外装樹脂(D)を充填したことで、製品強度が向上し、外部からドラム型フェライトコアの上鍔部分に荷重が加わったとしても、上鍔部分の破損を防止できる。また、この無機フィラー含有外装樹脂(D)の線膨張係数は、ドラム型フェライトコア(A)の線膨張係数に近いので、ヒートサイクル試験において、優れた耐久性を有し、使用温度環境変化に対する信頼性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る面実装コイル部品の実施の形態について図面に基づき説明する。
図1は、本発明の面実装コイル部品の構造を示す上方から見た斜視図であり、図2は、同面実装コイル部品の構造を示す下方から見た斜視図であり、図3は、同面実装コイル部品の構造を示す縦断面図である。
【0020】
図1〜3に示すように、本発明の面実装コイル部品は、基板実装面に対して巻軸が垂直に配置される巻芯11と該巻芯11の上下両端にそれぞれ巻芯11と一体に形成された上鍔12及び下鍔13とからなるドラム型フェライトコア14を有している。このドラム型フェライトコア14は、上鍔12の厚みdが0.35mm以下であり、かつ、巻芯直径L1に対する上鍔12の外形寸法L2(上鍔が円形の場合はその直径であり、矩形の場合は縦横長い方の一辺の寸法である)の比がL2/L1の値で1.9以上の外形寸法を有している。上鍔12の厚みdの要件は、面実装コイル部品の低背化に不可欠な要件であり、高さ寸法Hをより小径(好ましくは、高さ寸法Hが1.6mm以下)にできる。なお、上鍔12の厚みdの下限は、フェライト材の加工技術、焼結製造技術の進展によって変化すると考えられるが、強度上許容できる可及的に小さい寸法とすべきものである。そして、巻芯直径L1に対する上鍔の外形寸法L2の比L2/L1の値が1.9以上であれば、上鍔12の巻芯11外周からの径方向の最大張り出し寸法t(巻芯外周から上鍔最大外径までの寸法)を1.0mm以上にできるので、高さ寸法Hを抑えつつ、チョーク特性を得るに必要な巻き容積を確保することができる。
【0021】
ドラム型フェライトコア14の下鍔13の下面には、一対のコア直付けの外部電極15a、15bが形成されている。
ドラム型フェライトコア14の巻芯11には、巻線17が巻回されるとともに、該巻線17の両端部が外部電極15a、15bにハンダ付け或いは熱圧着等で導電接続されている。
そして、ドラム型フェライトコア14の上鍔12と下鍔13との間には、巻線17を覆いつつ上鍔12と下鍔13との間の空間には、無機フィラー含有外装樹脂18が充填されているが、本発明の面実装コイル部品は、無機フィラー含有外装樹脂18が、熱硬化性樹脂と無機フィラーとを含む樹脂組成物による硬化物で構成されている。
【0022】
無機フィラー含有外装樹脂18に用いられる熱硬化性樹脂は、硬化時の物性が、常温でガラス状態であることが必要であり、ガラス転移温度が120℃以上であることが好ましく、125〜170℃がより好ましい。常温でガラス状態の熱硬化性樹脂は強度が高いので、ドラム型フェライトコア14の上鍔12や下鍔13に衝撃などの外部応力が加わっても、上鍔12や下鍔13に割れが生じにくい。また、面実装コイル部品は、使用時に100℃程度に加熱されることがあるが、熱硬化性樹脂のガラス転移温度が、120℃以上であれば、使用時の温度環境下でも、ガラス状態を維持できるので、十分な強度を保持できる。
【0023】
熱硬化性樹脂の種類としては、特に限定はなく、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。なかでも常温で液状の樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好適である。
【0024】
熱硬化性樹脂の含有量は、10〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%がより好ましく、15〜20質量%がより好ましい。熱硬化性樹脂の含有量が上記範囲内であれば、面実装コイル部品の製品強度を良好にできる。
【0025】
無機フィラー含有外装樹脂18に用いられる無機フィラーは、球状フィラーを20質量%以上含有するものを用い、球状フィラーを40質量%以上含有するものが好ましく、50質量%以上含有するものがより好ましい。無機フィラーの含有量を増加させると、硬化前の無機フィラー含有外装樹脂18の粘度が高くなり、充填時における流動性が損なわれるが、球状フィラーを20質量%以上含有する無機フィラーを使用することで、無機フィラーの含有量を増加させても粘度上昇を抑制できる。球状フィラーの種類としては、特に限定はなく、球状シリカパウダー、球状フェライトパウダーなどが挙げられ、シリカパウダーなどの非磁性体の球状フィラーを少なくとも含有するものを用いることが好ましい。
【0026】
また、無機フィラーは、フェライトを含有するものが好ましい。無機フィラー含有外装樹脂18にフェライトを含有させることで、コイル部品のインダクタンス値を上昇させることができるので、所望のインダクタ特性を備えた面実装コイル部品が得られ易くなる。なお、フェライトは、球状フィラーとして使用してもよい。
【0027】
無機フィラーの平均粒径は、レーザ回折散乱法による平均粒径D50が3〜50μmであることが好ましく、5〜25μmであることがより好ましい。無機フィラーの平均粒径が上記範囲内であれば、硬化前の樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず流動性が良好であるので、ドラム型フェライトコア14の上鍔12と下鍔13との間の空間に無機フィラー含有外装樹脂18を充填し易いので、面実装コイル部品の生産性を良好にできる。
【0028】
無機フィラーは、無機フィラー含有外装樹脂100質量部に対して70〜90質量部含有し、75〜90質量部含有することが好ましく、80〜85質量部含有することがより好ましい。無機フィラーの含有量が、上記範囲内であれば、硬化前の樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず流動性が良好であるので、ドラム型フェライトコア14の上鍔12と下鍔13との間の空間に無機フィラー含有外装樹脂18を充填し易い。更には、硬化物の線膨張係数を5〜20ppm/℃(好ましくは5〜15ppm/℃)にできる。ドラム型フェライトコア14の線膨張係数は、およそ5〜20ppm/℃であるので、無機フィラー含有外装樹脂18の線膨張係数をドラム型フェライトコア14の線膨張係数に近づけることができ、ヒートサイクル試験において、優れた耐久性が得られ、使用温度環境変化に対する信頼性が高い面実装コイル部品にできる。
【0029】
このように、本発明の面実装コイル部品は、無機フィラー含有外装樹脂18として、熱硬化性樹脂と、無機フィラーとを含む樹脂組成物を充填して形成したので、製品強度が向上し、外部からドラム型フェライトコア14の上鍔12部分に荷重が加わったとしても、無機フィラー含有外装樹脂18が外部応力によって変形するのを防止でき、上鍔12部分が破損しにくくなる。そして、無機フィラーとして、球状フィラーを20質量%以上含有するものを用い、かつ、無機フィラー含有外装樹脂8の100質量部に対して無機フィラーを70〜90質量部含有させた場合、無機フィラー含有外装樹脂18の線膨張係数と、ドラム型フェライトコア14の線膨張係数を近づけることができるので、ヒートサイクル試験において、優れた耐久性が得られ、使用温度環境変化に対する信頼性が高い面実装コイル部品にできる。
【0030】
なお、無機フィラー含有外装樹脂18は、熱硬化性樹脂と、無機フィラーとを含む樹脂組成物の硬化物であって、該硬化物の線膨張係数が5〜20ppm/℃(好ましくは5〜ppm/℃)の物性を有するものであれば、上記したものに限定されず使用することができる。無機フィラー含有外装樹脂18の線膨張係数を5〜20ppm/℃に調整するには、熱硬化性樹脂や無機フィラーの種類や配合量を適宜変更して調整する方法などがある。
【0031】
なお、この実施形態において、ドラム型フェライトコア14の巻芯11の形状は、円柱状をなしているが、円柱状に限定されず略四角柱状でもよい。また、上鍔12及び下鍔13の形状も特に限定されず、円盤状或いは正方形や長方形の矩形板状のいずれの形状であってもよい。また、外部電極15a、15bは、下鍔13の下面13aに少なくとも一対或いは二対配設されていればよく、その位置、形状はとくに問わない。
【0032】
次に、本発明の面実装コイル部品の製造方法の一例について説明する。
【0033】
まず、Ni−Zn系フェライトを主成分とする磁性材料粉末と有機バインダと溶剤とを混合してスラリーを作成する。得られたスラリーをスプレードライヤーなどの方法を用いて造粒し、乾式成形プレスを用いて所定の形状に成型する。そして、得られた成形体を焼成して、ドラム型フェライトコア14を得る。
【0034】
次に、Agなどの導体金属を含む電極材料ペーストを、スクリーン印刷等の手法によりドラム型フェライトコア14の下鍔13の下面13aの巻線ガイド溝19を含む領域に塗布し、焼付けを行ってコア直付けの外部電極15a、15bを形成する。そして、必要に応じて、焼き付けした電極表面に、Niメッキ及び錫メッキ、或いは銅メッキ等を施す。
【0035】
次に、ドラム型フェライトコア14の巻芯11の外周に、ポリウレタン樹脂などの絶縁樹脂で被覆された銅線などからなる巻線17を巻回し、その両端部をそれぞれ巻線ガイド溝19上の外部電極15a、15b上に沿って折り曲げる。そして、巻線17の端部を覆うように外部電極15a、15b表面にフラックス成分含有ハンダペーストを孔版印刷し、乾燥した後、ハンダペーストを溶融させ、巻線17の絶縁樹脂を銅線から剥離除去すると共に、巻線17の銅線端部と外部電極15a、15bとのハンダ付けを行う。なお、巻線の巻回の前後にハンダ付けの工程を分割することもでき、また、巻線の巻回とハンダ付けとを別工程とすることもできる。
【0036】
次に、ドラム型フェライトコア14の巻芯11に巻回された巻線17の外周であって、上鍔12と該上鍔12と対向配置された下鍔13とで挟まれる空間領域に、常温でガラス状態の熱硬化性樹脂と、無機フィラーとを含む樹脂組成物を、ディスペンサーを用いて充填し、該樹脂組成物を硬化して外装樹脂18を形成する。このようにして、目的とする面実装コイル部品を製造することができる。
【実施例】
【0037】
図1に示すドラム型フェライトコア14(L1=1.3mm、L2=2.5mm、d=0.34mm、t=1.85mm、H=0.86mm)の上鍔12と下鍔13との間の空間に、表1に示す組成からなる無機フィラー含有外装樹脂18の前駆体となる樹脂組成物を、ディスペンサーを用いて充填し、硬化して、試料1〜9の面実装コイル部品を製造した。
【0038】
【表1】

【0039】
なお、熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂:硬化剤=80:20の質量比で混合した、ガラス転移温度が120℃のものを用いた。また、球状シリカパウダーとしては、レーザ回折散乱法による平均粒径D50が8μmのものを用いた。また、非球状のシリカパウダーとしては、レーザ回折散乱法による平均粒径D50が8μmのものを用いた。また、非球状のフェライトパウダーとしては、レーザ回折散乱法による平均粒径D50が、15μmのものを用いた。
【0040】
得られた面実装コイル部品の製品強度及びヒートサイクル性を評価した。また、無機フィラー含有外装樹脂18の前駆体となる樹脂組成物の塗布作業性及び線膨張係数も併せて評価した。結果を表2に示す。
【0041】
なお、製品強度は、上鍔12の角部に30Nの荷重をかけて、クラックの有無を確認した。クラックが発生しないものを○とし、クラックの発生が認められたものを×とした。
また、ヒートサイクル試験は、−40℃で30分保持した後、+85℃で30分保持し、再び−40℃に冷却する操作を100サイクル繰り返して行い、試験終了後の製品のクラックの有無を確認した。クラックが発生しないものを○とし、クラックの発生が認められたものを×とした。
また、樹脂組成物の塗布作業性は、流動性がよく、塗布作業性が良好であるものを○とし、流動性が悪く、塗布作業性に劣るものを×とし、塗布作業性が困難であるものを××とした。
【0042】
【表2】

【0043】
上記結果より、常温でガラス状態の熱硬化性樹脂と、球状フィラーを20質量%以上含有する無機フィラーとを含み、かつ無機フィラーの含有量が70〜90質量%である樹脂組成物を用いて得られた試料1〜3の面実装コイル部品は、当該面実装コイル部品を生産性よく製造でき、更には、製品強度及び使用温度環境変化に対する信頼性が高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の面実装コイル部品の構造を示す上方から見た斜視図である。
【図2】同面実装コイル部品の構造を示す下方から見た斜視図である。
【図3】同面実装コイル部品の構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0045】
11:巻芯
12:上鍔
13:下鍔
14:ドラム型フェライトコア
15a,15b:外部電極
17:巻線
18:無機フィラー含有外装樹脂
19:巻線ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装面に対して巻軸が垂直に配置される巻芯と該巻芯の上下両端にそれぞれ前記巻芯と一体に形成された上鍔及び下鍔とからなり、上鍔の厚みが0.35mm以下であり、かつ、巻芯直径L1に対する上鍔の外形寸法L2の比がL2/L1の値で1.9以上であるドラム型フェライトコア(A)と、前記ドラム型フェライトコアの下鍔の下面に形成された少なくとも一対のコア直付けの外部電極(B)と、前記ドラム型フェライトコアの巻芯に巻回されるとともに両端部が前記外部電極に導電接続された巻線(C)と、前記ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の巻線を覆いつつ前記上鍔と下鍔との間の空間に充填された無機フィラー含有外装樹脂(D)と、を有する面実装コイル部品において、
前記無機フィラー含有外装樹脂(D)は、熱硬化性樹脂と、無機フィラー含有外装樹脂(D)100質量部に対して球状フィラーを20質量%以上含有する無機フィラーとを含み、かつ無機フィラー含有外装樹脂(D)100質量部に対して前記無機フィラーを70〜90質量部含有する、
ことを特徴とする面実装コイル部品。
【請求項2】
前記球状フィラーの少なくとも一部が非磁性体である、請求項1に記載の面実装コイル部品。
【請求項3】
実装面に対して巻軸が垂直に配置される巻芯と該巻芯の上下両端にそれぞれ前記巻芯と一体に形成された上鍔及び下鍔とからなり、上鍔の厚みが0.35mm以下であり、かつ、巻芯直径L1に対する上鍔の外形寸法L2の比がL2/L1の値で1.9以上であるドラム型フェライトコア(A)と、前記ドラム型フェライトコアの下鍔の下面に形成された少なくとも一対のコア直付けの外部電極(B)と、前記ドラム型フェライトコアの巻芯に巻回されるとともに両端部が前記外部電極に導電接続された巻線(C)と、前記ドラム型フェライトコアの上鍔と下鍔との間の巻線を覆いつつ前記上鍔と下鍔との間の空間に充填された無機フィラー含有外装樹脂(D)と、を有する面実装コイル部品において、
前記無機フィラー含有外装樹脂(D)は、熱硬化性樹脂と、無機フィラーとを含み、かつ、線膨張係数が5〜20ppm/℃である、
ことを特徴とする面実装コイル部品。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂のガラス転移温度が、120℃以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の面実装コイル部品。
【請求項5】
前記無機フィラーが、フェライトを含有するものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の面実装コイル部品。
【請求項6】
前記無機フィラーのレーザ回折散乱法による平均粒径D50が、3〜50μmである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の面実装コイル部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−16217(P2010−16217A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175471(P2008−175471)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000204284)太陽誘電株式会社 (964)
【Fターム(参考)】